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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】貯蔵及び送達システム
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20230131BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20230131BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20230131BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20230131BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20230131BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20230131BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230131BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20230131BHJP
   A23L 33/00 20160101ALN20230131BHJP
   B05B 11/00 20230101ALN20230131BHJP
【FI】
B65D47/34 110
A23L29/25
A23L29/262
A23L29/256
A23L29/238
A23L29/244
A23L29/269
A23L29/20
A23L33/00
B05B11/00 101K
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019533259
(86)(22)【出願日】2017-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 AU2017050966
(87)【国際公開番号】W WO2018045419
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】2016903574
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519077713
【氏名又は名称】トリスコ アイキャップ プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】マイケル トリストラム
(72)【発明者】
【氏名】イアン トリストラム
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ モッセル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター スカーシェウスキ
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06455090(US,B1)
【文献】特表2006-516995(JP,A)
【文献】特表2013-526267(JP,A)
【文献】特表2005-507649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
A23L 29/25
A23L 29/262
A23L 29/256
A23L 29/238
A23L 29/244
A23L 29/269
A23L 29/20
A23L 33/00
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定液体組成物のための貯蔵及び送達システムであって、前記システムは:
(a)前記安定液体組成物を含む、容器であって、前記組成物が、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、前記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、前記多糖類又は多糖類の抽出物は、10~100,000超のサッカリド単位を含み、前記多糖類又は多糖類の濃度は、重量で15%~25%である、容器と;
(b)前記容器に封止状態で取り付けられた、ポンプディスペンサであって、前記ディスペンサが、前記容器内の前記組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含む、ポンプディスペンサと
を含む、安定液体組成物のための貯蔵及び送達システム。
【請求項2】
前記組成物が、前記食料に所定の体積からなる1回分又は2回分以上の用量で送達されるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記組成物の所定の体積からなる1回分、2回分、及び3回分の用量が、前記食料の粘度をそれぞれ第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルまで増大させ、そして前記第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルの間に非線形の関係が存在する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
水性液体食料又は水性液体固体混合食料に安定液体組成物を送達する方法であって、前記方法は:
(a)前記安定液体組成物を含有する容器を用意する工程であって、前記組成物が、前記食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、前記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、前記多糖類又は多糖類の抽出物は、10~100,000超のサッカリド単位を含み、前記多糖類又は多糖類の濃度は、重量で15%~25%であり、前記容器がさらにポンプディスペンサに封止状態で取り付けられており、前記ディスペンサが、前記容器内の前記組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含む、工程と;
(b)前記ポンプディスペンサに力を加えることにより、前記組成物の所定の体積からなる1回分又は2回分以上の用量を前記食料に送達する工程と
を含む、方法。
【請求項5】
前記組成物の所定の体積からなる1回分、2回分、及び3回分の用量が、前記食料の粘度をそれぞれ第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルまで増大させ、そして前記第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルの間に非線形の関係が存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物による前記食料の粘度の増大を促進するように前記食料及び前記組成物に低剪断混合を施す工程を更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記弁がセルフシーリング弁であるか又はセルフシーリング弁を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ディスペンサがディスペンサ先端部を含み、前記ディスペンサ先端部内に前記弁が配置されている、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記弁が、クロススリット弁、ボール弁、フラッパ弁、アンブレラ弁、ダックビル弁、リード弁、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記弁が閉位置へ付勢されており、前記ポンプディスペンサに力を加えると開位置へ作動され、前記組成物が強制的に弁を通流するようになる、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法であって、前記方法は:
(a)2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有する安定液体組成物を前記食料に添加する工程であって、前記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、前記多糖類又は多糖類の抽出物は、10~100,000超のサッカリド単位を含み、前記多糖類又は多糖類の濃度は、重量で15%~25%である、工程と;
(b)前記組成物による前記食料の粘度の増大を促進するように前記食料及び前記組成物に低剪断混合を施す工程と
を含む、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法。
【請求項12】
前記低剪断混合が、前記食料の最大粘度を達成するために30秒間以下にわたって施される、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記低剪断混合が、前記食料の最大粘度を達成するために10~30秒間にわたって施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記低剪断混合が、10rpm~40rpmの速度で前記組成物を攪拌することを含む、請求項6~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記食料の粘度が95cP超まで増大させられる、請求項5~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が室温で少なくとも6ヶ月にわたって安定である、請求項4~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
粘度が増大させられた前記食料が、咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態を有する対象者に供給するために使用される、請求項4~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態が、嚥下障害であるか又は嚥下困難を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記弁がセルフシーリング弁であるか又はセルフシーリング弁を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ディスペンサがディスペンサ先端部を含み、前記ディスペンサ先端部内に前記弁が配置されている、請求項1~3及び19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記弁が、クロススリット弁、ボール弁、フラッパ弁、アンブレラ弁、ダックビル弁、リード弁、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3、19及び20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記弁が閉位置へ付勢されており、前記ポンプディスペンサに力を加えると開位置へ作動され、前記組成物が強制的に弁を通流するようになる、請求項1~3及び19~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記組成物が室温で少なくとも6ヶ月にわたって安定である、請求項1~3及び19~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
粘度が増大させられた前記食料が、咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態を有する対象者に供給するために使用される、請求項1~3及び19~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態が、嚥下障害であるか又は嚥下困難を含む、請求項24に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯蔵及び送達システム及びこれを使用する方法に関する。具体的には、本発明は、液状又は半液状食料の粘度を増大させるのに適した、増粘剤と多糖類とを含む安定液体組成物のための貯蔵及び送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に高齢者及び回復期患者向けの市場のために、粘性を有するとろみ付け液体を提供することがしばしば望ましい。とろみ付け液体は、これらの市場に適用できるように特定の、既知の、且つ反復可能な粘度を有することが必要である。
【0003】
嚥下困難(dysphagia)患者の飲み込みを「減速(slowing down)」する上で臨床的に顕著な効力を有すると考えられている所定の液体粘度が数多くの規制機関によって明らかにされていて、これによりこの障害の一般的な併存疾患、例えば誤嚥性肺炎が予防されるようになっている。嚥下障害の種々の重篤度に照らして、次の専門ガイドライン、すなわち薄いとろみ(花蜜の稠度)、中間のとろみ(蜂蜜の稠度)、及びとろみ(プディングの稠度)というガイドラインが臨床的に概ね遵守されている。これらのガイドラインは典型的にはそれぞれ150、400、及び900mPa.sに相関する。
【0004】
これらの粘度レベルは現在、IDDSI(国際嚥下食基準化構想(International Dysphagia Diet Standardisation Initiative))フレームワークと呼ばれる新しい国際的な枠組みに含まれており、レベル2(薄いとろみ)、レベル3(中間のとろみ)、及びレベル3(濃いとろみ)と記載されている。IDDSIフレームワークは3つの稠度レベルの主観的属性を記載するだけでなく、達成されることが望まれる稠度の厳重な遵守を保証するために、厳しく定義された測定範囲を有する客観試験(IDDSIフロー試験(the IDDSI Flow Test))をも規定している。これらの稠度パラメータを遵守しないと、嚥下困難を有する者による安全でない飲み込みのリスクを増大させる。安全でない飲み込みは上述の重篤な合併症を招くおそれがあり、虚弱者及び高齢患者の場合には死を招くこともある。
【0005】
施設及び家庭における嚥下困難の管理のための飲料のとろみ付けは典型的には粉末状増粘剤を使用して達成される。これらの粉末状増粘剤は、物理的改質、例えば凝集によって「インスタント化」されている。
【0006】
しかしながら、このような粉末は制約を有することがある。第一に、とろみ付けされた食料を嚥下困難患者のために調製するには、適正な分散体を保証するのに充分な剪断力を得るために、典型的には、特殊化された混合設備が必要であり、それにもかかわらず分散体は理想を下回るのが典型的である。一例を挙げると、親水コロイドはこれらの粘性を発現させるために、一般にかなりの剪断力を必要とする。このような剪断力は、例えば高剪断ミキサ、又は例えば250mPaの圧力をもたらすことができる段階的圧力ホモジナイザを用いて均質化することにより提供することができる。しかしながら、施設及び患者の家庭では、均質化は典型的には単に手持ち式泡立て器を用いて、又は台所用品、例えばフォークを用いて手で攪拌することによって実施される。従って、結果としてできた分散体は理想的ではない。さらに、混合プロセス中に取り込まれた空気が、泡立てられた粘稠性を有する飲料をもたらすことがある。さらに、粉末状増粘剤がこれらの粘性を発現させるためにかかる時間は典型的には瞬時(すなわち<30秒)ではなく、それどころか食料をその最大又は所望の粘度にするまでに最大で数分かかることがある。濃縮溶液中で増粘剤の粘性を発現させ、そして希釈して所望の濃度に戻すことによって機能する商業的に入手可能なゲル増粘剤も、分散してこれらの粘性を発現させるために必要とされる剪断量によって同様に制約される。
【0007】
第二に、粉末状増粘剤は製造業者によって提供されたスクープを用いて体積測定される。粉末の嵩密度は、例えば充填度によって影響を受けるため、粉末の固有の性質に基づき、これらの送達される体積は著しく不正確である。充填度は、大気に晒されたときに粉末中に取り込まれる湿分、すくうときの圧縮度、及び/又はその振動効果によって更に影響を受ける。更に、粉末状増粘剤の送達に関して不正確度を定量化又は定量的に予測することは難しいことがある。しかしながら、不正確度は±20%もの大きさに近いことは明らかである。従って、このような増粘剤は、特定の食料に添加されるときに所定の粘性を一貫して且つ繰り返し送達することはできない。
【0008】
従って、商業的に利用可能なゲル及び/又は粉末状増粘剤の送達システムの固有の制約のうちの一つ又は二つ以上を克服する、咀嚼及び/又は嚥下障害、例えば嚥下困難の対象者に供給するために使用することができる液体増粘剤送達システムが依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、本発明は、安定液体組成物のための貯蔵及び送達システムであって、当該システムは:
(a)上記安定液体組成物を含む容器であって、上記組成物が、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)(Larix occidentalis)多糖類抽出物、アメリカカラマツ(Larix laricina)多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ(Larix decidua)多糖類抽出物、シベリアカラマツ(Larix sibirica)多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物
とを含む、容器と;
(b)上記容器に封止状態で取り付けられたディスペンサであって、上記ディスペンサが、上記容器内の上記組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含む、ポンプディスペンサと
を含む、安定液体組成物のための貯蔵及び送達システムを提供する。
【0010】
組成物が、食料に所定の体積からなる1回分又は2回分以上の用量で送達されるように構成されていることが好適である。組成物の所定の体積からなる1回分、2回分、及び3回分の用量が、上記食料の粘度をそれぞれ第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルまで増大させ、そして第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルの間に非線形の関係が存在することが好ましい。
【0011】
第2の態様では、本発明は、水性液体食料又は水性液体固体混合食料に安定液体組成物を送達する方法であって、前記方法は:
(a)安定液体組成物を含有する容器を用意する工程であって、上記組成物が、上記食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、容器がさらにポンプディスペンサに封止状態で取り付けられており、上記ディスペンサが、容器内の組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含む、工程と;
(b)ポンプディスペンサに力を加えることにより、組成物の所定の体積からなる1回分又は2回分以上の用量を食料に送達する工程と
を含む、水性液体食料又は水性液体固体混合食料に安定液体組成物を送達する方法を提供する。
【0012】
一実施態様において、組成物の所定の体積からなる1回分、2回分、及び3回分の用量が、上記食料の粘度をそれぞれ第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルまで増大させ、そして第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルの間に非線形の関係が存在する。
【0013】
具体的な実施態様では、この態様の方法は、組成物による上記食品の粘度の増大を促進するように食料及び組成物に低剪断混合を施す工程を更に含む。
【0014】
第1及び第2の態様の本発明に関連して、ディスペンサがディスペンサ先端部を含み、ディスペンサ先端部内に弁が配置されていることが好適である。
【0015】
前述の弁は、セルフシーリング弁であるか又はセルフシーリング弁を含むことが好適である。具体的な実施態様では、前述の弁は、クロススリット弁、ボール弁、フラッパ弁、アンブレラ弁、ダックビル弁、リード弁、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
第1及び第2の態様の具体的な実施態様の場合、弁は閉位置へ付勢されており、ポンプディスペンサに力を加えると開位置へ作動され、組成物が強制的に弁を通流するようになる。
【0017】
第3の態様では、本発明は、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法であって、この方法は:
(a)2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有する安定液体組成物を上記食料に添加する工程であって、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含む、工程と;
(b)組成物による上記食品の粘度の増大を促進するように食料及び組成物に低剪断混合を施す工程と
を含む、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法を提供する。
【0018】
前述の2つの態様の方法に関して、低剪断混合は、食料の最大粘度を達成するために約30秒間以下にわたって施されることが好適である。低剪断混合は、食料の最大粘度を達成するために約10~約30秒間にわたって施されることが好ましい。
【0019】
第2及び第3の態様の方法の具体的な実施態様の場合、低剪断混合は、約10rpm~約40rpmの速度で攪拌することを含む。
【0020】
第4の態様では、本発明は、2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有する安定液体組成物であって、組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、
組成物を水性液体食料又は水性液体固体混合食料に添加すると、上記食料の粘度を増大させる、安定液体組成物を提供する。
【0021】
上記態様に関して、食料の粘度は95cP超まで増大することが好適である。
【0022】
前述の態様のある特定の実施態様の場合、組成物は室温で少なくとも6ヶ月にわたって安定である。
【0023】
上記態様に関しては、粘度が増大した食料は、咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態を有する対象者に供給するのに好適である。咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態は嚥下困難(dysphagia)であるか又は嚥下困難を含むことが好ましい。
【0024】
文脈が他のものを必要とする場合を除き、本明細書中に使用される「comprise(含む)」という用語及びこの用語の変化形、例えば「comprising」「comprises」「comprises」及び「comprised」は、さらなる要素、成分、整数、又は工程を排除しようとするものではなく、言及されていない一つ又は二つ以上の要素、成分、整数、又は工程を含んでよい。
【0025】
不定冠詞「a」及び「an」は単数形不定冠詞として、又はその不定冠詞が関連する2つ以上の対象又は単数よりも多くの対象を排除するものとして読んではならない。例えば、"a" polysaccharideは、1種の多糖類、1種又は2種以上の多糖類、及び複数の多糖類を含む。本発明の理解を助けるために、そして当業者が本発明を実施するのを可能にするために、添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施態様を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、例えば液状及び/又は粉末状増粘剤によってとろみ付けられた液体の粘度の目標範囲を、Hadde ら(Int J Speech Lang Pathol, 2016)による3つの稠度レベルに対してミリパスカル秒(mPa.s)で示している。
図2図2は、本発明のポンプディスペンサの一実施態様を示す長手方向断面図及びクローズアップ図である。
図3図3は、本発明のポンプディスペンサのディスペンサ先端部の他の実施態様を示す長手方向断面図である。
図4図4は、世界平均年間相対湿度(出典:Centre for Sustainability and the Global Environment, University of Wisconsin- Madison. CRU 0.5 Degreeデータセット (New et al)から採用したデータ)を示す。
図5図5は、食品等級フィルム構造の典型的な水蒸気透過率(MVTR)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、水分活性が95%超の液体組成物のための貯蔵及び送達システムであって、液体組成物が増粘剤と多糖類とを含み、流動可能且つ安定である、貯蔵及び送達システムを提供する。このようなシステムは、例えばポンプディスペンサを使用することにより液体組成物の用量を、又は所定の単回供給体積を繰り返し、一貫して、且つ正確に提供することができる。驚くべきことに、低剪断混合力(例えばスプーンで静かに混合する)を用いて液体組成物が液状食料中又は半液状食料中に分散されると、液体組成物は制御放出され粘性発現されることにより、食料中にその粘性を迅速に(例えば<30秒)発現させることができる。本発明の貯蔵及び送達システムを使用すると、当該食料又は飲料の粘度を予測可能に且つ信頼性高く増大させることができる。
【0028】
一つの態様では、本発明は、安定液体組成物のための貯蔵及び送達システムであって、
(a)当該容器が上記安定液体組成物を含有しており、上記組成物が、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物
とを含む、容器と、
(b)当該ポンプディスペンサが上記容器に封止状態で取り付けられており、上記ディスペンサが、上記容器内の上記組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含む、ポンプディスペンサと
を含む、安定液体組成物のための貯蔵及び送達システムを提供する。
【0029】
本明細書中に使用される「増粘剤(thickening agent)」という用語は、液体混合物及び/又は溶液の粘度を増大させるために使用される上述の化合物、そして具体的には、食用ガム、植物ガム、及び食品等級多糖類を含む、食品用途に使用するための化合物を意味する。
【0030】
食料にとろみを付ける又は食料の粘度を増大させるためのゲル組成物が当業者に知られている。例えば米国特許出願公開第2004/0197456号明細書(以下Holahanと呼ぶ)には、嚥下障害を持つ人々に向けられたゲル増粘剤が記載されている。しかしながら、Holahanにおいて開示された発明は、その所期使用レベルの数倍に濃縮された増粘剤を有するゲル組成物を記載している。本明細書中に記載された制御放出技術とは異なり、Holahanのゲル増粘剤は、その粘性を既に完全に発現させた増粘剤であり、従って、この増粘剤は、食料への添加前にもかかわらず完全に水和され、その後、Holahanのゲル増粘剤は、今や希釈されたゲル増粘剤が所望の粘度を食料中で発現させるような体積で添加されるにすぎない。
【0031】
本発明は、上記のもののような1種又は複数種の多糖類を添加することにより、特定の程度の粘性抑制をもたらすように、特定の増粘剤の水結合能力を調節且つ/又は制御できるという発見に少なくとも部分的に基づいている。加えて、これらの多糖類は、液体組成物が希釈されると、これらの粘性抑制が解除され且つ/又は逆転される、その速度及び範囲を制御することもできる。
【0032】
本明細書中に使用される「多糖類(polysaccharide)」という用語は、一般的に、ヘミアセタール結合又はグリコシド結合によって互いに結合された約10~100,000超のサッカリド単位から形成されたポリマーを意味する。多糖類は直鎖状、単分枝状、複分枝状であってよく、各分枝は付加的な二次分枝を有してよく、そして単糖類は、ピラノース(6員環)又はフラノース(5員環)の形態の標準D-又はL-環状糖、例えばそれぞれD-フルクトース及びD-ガラクトースであってよい。加えて、これらは環状糖誘導体、デオキシ糖、糖、糖酸、又は多誘導糖であってよい。当業者には明らかなように、多糖類製剤、そして具体的には天然物から単離されたものは典型的には、分子量において異種の分子を含む。
【0033】
水分活性又はaは、材料中の水蒸気分圧と、同じ温度における標準状態水蒸気分圧との比として定義される。加えて、水は概ね、高水分活性領域から低水分活性領域へ移動する。例えば、本明細書中に提供された液体組成物は、95%を超える(例えば約95.5%、約96%、約96.5%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%又はこれらを超えるもの、及びこれらの中の任意の範囲)水分活性を有しており、この水分活性は典型的には、図4に示されているような95%未満の相対湿度を有する大気又は環境からの保護を必要とし、これにより液体組成物が貯蔵中且つ送達又は定量供給の前に乾燥するのを防止する。
【0034】
従って、本態様の貯蔵及び送達システムは、(1)使用時には、貯蔵及び送達システムの中に入った状態で販売されているその内容物全体又は体積全体にわたって、本明細書中に記載された液体組成物の一貫した用量又は体積(例えば±3重量%~±5重量%)を送達し、そして(2)貯蔵及び送達システム内部に含有又は貯蔵されている間には、95%未満の相対湿度を有する大気又は環境の乾燥効果から液体組成物を保護することができる、ポンプディスペンサ、又は当業者に知られている別の封止された送達システムを含むことが好ましい。
【0035】
従って、貯蔵及び送達システムは、液体組成物の相対的に正確且つ/又は精密な用量又は体積を所望の食料に提供することが好ましい。具体的な実施態様では、本発明の貯蔵及び送達システムによって液体組成物を食料に送達する結果、その粘度は、上記食料の所望の又は所定の粘度の少なくとも±7.5%(例えば±0.5%、±1%、±1.5%、±2%、±2.5%、±3%、±3.5%、±4%、±4.5%、±5%、±5.5%、±6%、±6.5%、±7%、±7.5%、及びこれらの中の任意の範囲)以内にあるようになる。本発明の貯蔵及び送達システムによって液体組成物を食料に送達する結果、その粘度は、上記食料の所望の又は所定の粘度の少なくとも±3.5%以内にあることがより好ましい。
【0036】
当業者に知られている、商業的に入手可能なポンプディスペンサは、嚥下困難の管理のために本明細書中に記載された液体組成物との組み合わせにおいて使用されるための精度を有していない。少なくとも±7.5%、より好ましくは少なくとも±3%の用量精度が、例えばIDDSIフレームワークの稠度要件を満たすのに通常必要とされるのに対して、商業的に入手可能なポンプディスペンサの精度は、より典型的には約±10~20%である。±3%の精度を達成するために具体的に構成されたポンプディスペンサでさえも、その動作中に液体組成物の逆流を防止するために組み込まれた頂部及び底部のボール弁のような特徴を有することが好ましい。
【0037】
この欠点は、このような従来技術のポンプによって定量供給される体積が、典型的に定量供給されるものよりも低い体積に制限されなければならない(例えば30mLディスペンサをむしろ20mL、15mL、10mL又は5mLの体積を定量供給するように制限する)場合にさらに際立たされる。これは本発明の機能にとっては重要であり、それというのもディスペンサは、好ましくは約15mL以下(例えば約15mL、約14mL、約13mL、約12mL、約11mL、約10mL、約9mL、約8mL、約7mL、約6mL、約5mL、約4mL、約3mL、約2mL、約1mL)の体積、より好ましくは約10mL以下、そしてさらに好ましくは約5mL以下の体積を定量供給するからである。
【0038】
加えて、従来技術のポンプディスペンサ、例えば国際公開第2003028898号パンフレット及び米国特許第5,579,959号明細書は、洗浄され再使用されるように構成されているため、本発明の貯蔵及び送達システム内で使用されるのには概ね適していない。逆に、本明細書中に記載されたポンプディスペンサは、これに含有される液体組成物の安定性が細菌汚染の導入の危険に晒されるのを防止するように、好ましくは使い捨てであり、又は単回使用のためのものである。当業者には明らかなように、このような汚染は高齢者のような脆弱な人々には受け入れられない。このような従来技術のポンプは、典型的には粘性製品の抵抗が適切に機能することを必要とするのに対して、本発明の液体組成物は粘性が抑制されており、したがって粘性ではない。
【0039】
従って、ポンプディスペンサは、例えば本明細書中に記載されたセルフシーリング弁を含むこと、単回使用のデザインにすること、及び/又は、微生物がディスペンサ及び/又は容器内へ侵入し得る一つ又は二つ以上の個所にシーリング係合部を設けることによって、液体組成物の微生物汚染を抑制且つ/又は防止するように構成されることが好ましい。
【0040】
好ましくは、本貯蔵及び送達システムは、全ポンプ、又は各稠度レベルに対応する特定数のポンプ(例えば1つ、2つ、3つなど)によって、例えばIDDIフレームワークの所要粘度レベル、又は使用者によって必要とされる所定のレベルに達するように構成されている。例えば、特定の体積の液体(例えば100mL)に投与される場合、本貯蔵及び送達システムに由来する液体組成物の単一のポンプは、約120mPa.s~約180mPa.sの粘度をもたらす。これに加えて液体組成物の2つ及び3つのポンプは、同じ特定の体積の液体に添加される場合、それぞれ約350mPa.s~約450mPa.s、及び約850mPa.s~約950mPa.sの粘度をもたらす。
【0041】
従って、液体組成物は、液状又は半液状食料の統一された体積に添加される場合、用量又は体積を二倍化及び/又は三倍化することによって、非線形様式での粘度を含む所定の粘度、例えば嚥下困難の管理のための国際標準(例えばIDDSIフレームワーク)によって必要とされる粘度がもたらされるように製剤されることが好ましい。
【0042】
従って、具体的な実施態様では、組成物は、食料に所定の体積からなる1回分又は2回分以上の用量で送達されるように構成されていて、これにより、組成物の所定の体積からなる1回分、2回分、及び3回分の用量が、上記食料の粘度をそれぞれ第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルまで増大させ、そして第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルの間に非線形の関係が存在するようになっている。一実施態様では、第1粘度レベルは、約120mPa.s~約180mPa.s(例えば、約120mPa.s、約125mPa.s、約130mPa.s、約135mPa.s、約140mPa.s、約145mPa.s、約150mPa.s、約155mPa.s、約160mPa.s、約165mPa.s、約170mPa.s、約175mPa.s、約180mPa.s、及びこれらの中の任意の範囲)であり、第2粘度レベルは約350mPa.s~約450mPa.s(例えば約350mPa.s、約355mPa.s、約360mPa.s、約365mPa.s、約370mPa.s、約375mPa.s、約380mPa.s、約385mPa.s、約390mPa.s、約395mPa.s、約400mPa.s、約405mPa.s、約410mPa.s、約415mPa.s、約420mPa.s、約425mPa.s、約430mPa.s、約435mPa.s、約440mPa.s、約445mPa.s、約450mPa.s、及びこれらの中の任意の範囲)であり、且つ/又は第3粘度レベルは約850mPa.s~約950mPa.s(例えば約850mPa.s、約855mPa.s、約860mPa.s、約865mPa.s、約870mPa.s、約875mPa.s、約880mPa.s、約885mPa.s、約890mPa.s、約895mPa.s、約900mPa.s、約905mPa.s、約910mPa.s、約915mPa.s、約920mPa.s、約925mPa.s、約930mPa.s、約935mPa.s、約940mPa.s、約945mPa.s、約950mPa.s、及びこれらの中の任意の範囲)である。
【0043】
図2には、好適なポンプディスペンサ100が示されている。ポンプディスペンサ100は、食料の粘度を増大させるように製剤された液体組成物を含有する貯蔵容器(図示せず)に螺合するための蓋105を含んでいる。図2から分かるように、貯蔵容器と流体連通するディスペンサシャフト106が、ポンプディスペンサ100の下端部102から蓋105を通って上端部101へ長手方向に延びている。ディスペンサシャフト106は、ばねに基づくポンプエレメント107を有している。ポンプエレメント107は、ポンプディスペンサ100が作動すると、ディスペンサシャフト107を通して液体組成物を引き上げ、移動させるように構成されている。ディスペンサシャフト106内には、ポンプディスペンサ100の上端部101に第1ボール弁110がさらに配置されており、そしてポンプディスペンサ100の下端部102に第2ボール弁120が配置されている。第1及び第2ボール弁110,120のこのような配置は、液体組成物の装入量又は用量が、ポンプディスペンサ100の上端部101又は下端部102から漏れることなく無期限に保持されるのを可能にする。このことは、ポンプディスペンサ100内へ引き込まれる液体組成物の体積又は用量が、これがその使用時と使用時との間に経過する時間とは無関係に、吐出されるときには一貫したものになることを保証する。
【0044】
これに関して、特定のタイプの弁110,120、例えばフラッパ弁及び軽量ボール弁は、時間とともに漏れ又は排液が生じやすくなる。軽量ボール弁、例えばガラス又はポリマー材料を含む弁に関しては、これらの弁は、ポンプディスペンサ内に含まれる液体組成物の1回分の用量を定量供給した後、ポンプディスペンサ100のそれぞれの上端部101及び下端部102と急速又は直ちに再係合するには重さが十分でないことがある。軽量ボール弁のこのような欠点は、液体組成物の液体特性によってさらに際立たせられる。従って、弁110,120の一方又は両方は、ポンプディスペンサの使用後にポンプディスペンサ100のそれぞれの上端部101及び下端部102と迅速に再係合するように構成されることが好ましい。一つの好ましい実施態様では、弁110,120の一方又は両方が、ディスペンサ100内に含むのに適した金属材料、例えばステンレス鋼又はこれに類するものを含む。
【0045】
図2を参照すると、ポンプディスペンサ100は、ディスペンサシャフト106と流体連通するディスペンサ先端部103を更に含む。ディスペンサ先端部103は可撓性ゴムのダックビル(duck bill)型第3弁109を、ディスペンサ先端部103の開いた遠位端部108に含んでいる。この第3弁は、これを通る液体組成物流がないときには閉じられたままであり、そして液体組成物流が第3弁109にこの弁を開くための圧力を加えたときにだけ開き、そして液体組成物を吐出又は定量供給するのを可能にする。液体組成物の流れが終わると、第3弁109は閉じ、これにより、ポンプディスペンサ100及び貯蔵容器の内部に残っている液体組成物を外部大気から保護し、そしてこの液体組成物がその内部で乾燥するのを防止する。従って、第3弁109は、ポンプディスペンサ100が使用されていないときには閉鎖位置に付勢されるように構成されているが、しかしながら、ポンプディスペンサ100に力を加えると開位置へ作動され、上記組成物が強制的に第3弁109を通流するようになる。
【0046】
本発明のために当業者に知られている他の弁を使用してもよい。このために、弁又は弁機構(例えば本明細書中に記載された第1、第2及び/又は第3弁)は、セルフシーリング弁であることが好ましい。具体的な実施態様では、弁はクロススリット弁、ボール弁、フラッパ弁、アンブレラ弁、ダックビル弁、リード弁、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
一つの特に好ましい実施態様では、弁は可撓性の成形された流量制御弁又は定量供給弁、例えばクロスヘア弁又はクロススリット弁であるか、又はこの弁を含む。これに関しては、クロススリット弁は典型的には、ほぼ偏平な且つ/又は凸面状(又は凹面状)の表面を含み、表面内部にはクロスヘア形態で互いにほぼ垂直に、又は所定の角度を成して一対の交差スリットが配置されている。このような配置は、使用者によってポンプディスペンサが作動されると、液体組成物をこれらのスリットを通して定量供給するのを可能にする。クロススリット弁はポンプディスペンサの先端部に残留物が蓄積することをも抑制又は防止するので有利である。
【0048】
上記に照らして、そして図3を参照すると、ディスペンサ先端部203の別の実施態様が示されている。ディスペンサ先端部203は、近位側の第1部分203aと遠位側の第2部分203bとを含む。これらの部分は締まり嵌めによって互いに係合されており、そして任意には機械的保持部材(図示せず)、例えばクリップ又は締め具がこれらの部分の周りでそれぞれの自由端に係合されている。近位側の第1部分203aと遠位側の第2部分203bとは、これらの部分を通って遠位端部208と流体連通して延びる定量供給チャネル又は定量供給コンジット215を画定している。遠位端部208は、これに隣接又は近接するクロススリット弁209を保持するための弁カラー208aを、弁の開口又はアパーチャを横切る適宜の位置に含んでいる。
【0049】
図3に示された実施態様の場合、第2部分203bと遠位端部208とは好ましくは封止状態で、そしてほぼ不可逆的に互いに係合されるように構成されている。提供された実施態様の場合、このことは少なくとも部分的には、クロススリット弁209のオーバーモールディングによって達成され、これによりクロススリット弁は弁カラー208aにフック状に固定され、これに係合する。弁カラーは次いで遠位側の第2部分203bに超音波溶接される。このような配置は、例えば残留物蓄積の清浄化中、又は定量供給コンジット215内部に高い圧力を発生させる使用時に、嚥下困難患者の弱者集団にとっては潜在的な窒息の危険を意味する、遠位端部208がディスペンサ先端部203から解離する可能性を抑制又は防止するように機能する。このような配置はさらに、ディスペンサ先端部203を気密にシーリングするのを助けることにより、内部の液体組成物の乾燥を抑制又は防止する。別の実施態様では、第1部分203a、第2部分203b、及び/又は遠位端部は互いに一体的に形成されてよい。好ましくは、第1部分203a、第2部分203b、及び/又は遠位端部208は、当業者に知られている接着剤、例えば食品等級の接着剤によって封止状態でほぼ不可逆的に互いに係合される。これを目的として、このような接着剤は典型的には液体組成物との親和性がなく、且つ/又は時間とともに分解し得る。
【0050】
液体組成物の乾燥を防止又は抑制する本発明の液体組成物の別の送達システムも考えられる。これらは例えば湿分バリア積層フィルムからなる容積測定小袋(volumetric sachets)を含んでよい。小袋は開いて所望の食料中に定量供給を行うことができる。いくつかの一般的なフィルムの典型的な水蒸気透過率が図5に挙げられている。このリストは包括的であるようには意図されていない。加えて当業者には明らかなように、水蒸気透過率は小袋に使用されたフィルムの厚さ、並びにフィルムの任意の積層の組み合わせにも関連する。
【0051】
関連する態様において、本発明は、水性液体食料又は水性液体固体混合食料に安定液体組成物を送達する方法であって、
(a)安定液体組成物を含有する容器を用意し、上記組成物が、上記食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、容器がさらにポンプディスペンサに封止状態で取り付けられており、上記ディスペンサが、容器内の組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含み、そして
(b)ポンプディスペンサに力を加えることにより、組成物の所定の体積を食料に送達する
工程を含む、水性液体食料又は水性液体固体混合食料に安定液体組成物を送達する方法を提供する。
【0052】
本態様の容器、ポンプディスペンサ及び/又は弁は、本明細書中に前述されたものであることが好適である。
【0053】
この方法はさらに、組成物による上記食品の粘度の増大を促進するように食料及び組成物に低剪断混合を施す工程を含むことが好適である。
【0054】
本明細書中に全般的に使用されるように、「低剪断混合(low shear mixing)」という用語は非乱流混合、又は乱流が最小限にしか生じない混合、例えば静かな混合又はスプーン又はこれに類するものによる攪拌を意味する。低剪断混合は、剪断速度の観点から定義され、典型的には数多くの変数、例えば混合容器の形態及び混合デバイス速度の関数である。
【0055】
従って、具体的な実施態様では、低剪断混合は、約10rpm~約40rpm(約10、約11rpm、約12rpm、約13rpm、約14rpm、約15rpm、約16rpm、約17rpm、約18rpm、約19rpm、約20rpm、約21rpm、約22rpm、約23rpm、約24rpm、約25rpm、約26rpm、約27rpm、約28rpm、約29rpm、約30rpm、約31rpm、約32rpm、約33rpm、約34rpm、約35rpm、約36rpm、約37rpm、約38rpm、約39rpm、約40rpm、又はその中の任意の範囲)の速度で攪拌することを含む。
【0056】
低剪断混合は、食料の粘度の最大の増大又は最大に近い増大に達するために約60秒間以下にわたって施されることが好適である。低剪断混合は、食料の最大粘度又は最大に近い粘度を達成するために約10秒間~約40秒間(例えば約10秒間、約11秒間、約12秒間、約13秒間、約14秒間、約15秒間、約16秒間、約17秒間、約18秒間、約19秒間、約20秒間、約21秒間、約22秒間、約23秒間、約24秒間、約25秒間、約26秒間、約27秒間、約28秒間、約29秒間、約30秒間、約31秒間、約32秒間、約33秒間、約34秒間、約35秒間、約36秒間、約37秒間、約38秒間、約39秒間、約40秒間、又はその中の任意の範囲)にわたって施されることが好ましい。
【0057】
別の態様では、本発明は、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法であって、この方法が、
(a)2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有する安定液体組成物を上記食料に添加し、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物
とを含み、そして
(b)安定液体組成物による上記食品の粘度の増大を促進するように食料及び組成物に低剪断混合を施す
工程を含む、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法を提供する。
【0058】
低剪断混合は、食料の最大粘度を達成するために、約60秒間以下、又はより好ましくは約30秒間以下にわたって施されることが好適である。低剪断混合は、食料の最大粘度を達成するために、約10秒間~約30秒間にわたって施されることが好ましい。
【0059】
低剪断混合は、1種又は複数種の増粘剤上の抑制相互作用部位から多糖類を物理的に除去するのを促進するのに充分な値を有することにより、上記増粘剤が当該液状又は半液状の食料の粘度を増大させるこれらの所望の効果を発揮するのを可能にすることが適切である。具体的な実施態様では、低剪断混合は、約10rpm~約40rpmの速度で上記組成物を攪拌することを含む。
【0060】
最後の態様では、本発明は、2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有する安定液体組成物であって、組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、
組成物を水性液体食料又は水性液体固体混合食料に添加すると、上記食料の粘度を増大させる、安定液体組成物を提供する。
【0061】
上記態様の液体組成物は、当業者に知られた任意の方法によって貯蔵且つ/又は送達することができる。具体的な実施態様では、液体組成物は、上記のもののような容器・ポンプディスペンサ装置によって貯蔵且つ/又は送達される。別の実施態様では、液体組成物は、本明細書中に示されたもののような小袋又はこれに類するものによって貯蔵且つ/又は送達される。
【0062】
本明細書中に記載された液体組成物は、水性液体食料又は水性液体固体混合食料に望ましい量で添加されたときに、食料の特定の望ましい特質、例えば食料の元の風味及び/又は色を変化させないことが好適である。このことは消費者にとっては魅力的である。これに関して、液体組成物は、望ましい量で食料に添加された時には、上記食料に対する風味及び/又は色の関与をほとんど又は全く行わないことが好ましい。加えて、食料の望ましい粘度を達成するために食料に添加されるべき液体組成物の量は、食料の風味及び/又は色の特性を希薄化するのを回避するようにできる限り小さいことも好ましい。これを目的として、Holahanにおいて記載されているもののような従来技術のゲル増粘剤は、所要の増粘レベルを達成するために、食料に添加されるべき本発明の液体組成物の体積よりも著しく大きい体積を必要とする。そしてそのようなものとして典型的には、上記食料の風味及び/又は色の特性を希薄化してしまう。
【0063】
本発明に関して、本明細書中に記載された液体組成物は流動可能であることが好適である。これを目的として、本発明の液体組成物の粘度は3000cP未満、そしてより好ましくは2000cP未満であることが好適である。このような粘度を有する液体組成物は、例えばポンプディスペンサ又は小袋から容易に定量供給することができ、また水性液体食料又は水性液体固体混合食料に所望の量で添加されると、攪拌をほとんど又は全く行うことなしに(すなわち低剪断混合力)分散させることができる。さらに、本発明の液体組成物は濃縮されて、組成物の流動特性を失うことなしに相対的に高いパーセンテージの増粘剤に対応することができる。このことはさらに、選ばれた食品中への液体組成物の容易且つ正確な定量供給を可能にする。
【0064】
前述の態様のある特定の実施態様では、液体組成物の粘度は約500cP、約550cP、約600cP、約650cP、約700cP、約750cP、約800cP、約850cP、約900cP、約950cP、約1000cP、約1050cP、約1100cP、約1150cP、約1200cP、約1250cP、約1300cP、約1350cP、約1400cP、約1450cP、約1500cP、約1550cP、約1600cP、約1650cP、約1700cP、約1750cP、約1800cP、約1850cP、約1900cP、約1950cP、約2000cP、約2050cP、約2100cP、約2150cP、約2200cP、約2250cP、約2300cP、約2350cP、約2400cP、約2450cP、約2500cP、約2550cP、約2600cP、約2650cP、約2700cP、約2750cP、約2800cP、約2850cP、約2900cP、約2950cP、約3000cP、又はこれらの中の任意の範囲である。好ましくは、液体組成物の粘度は約500cP~約1500cPである。より好ましくは、液体組成物の粘度は約800cP~約1400cPである。さらにより好ましくは、液体組成物の粘度は約1200cP~約1300cPである。一つの好ましい実施態様では、液体組成物はポンプで定量供給することができる粘度を有する。
【0065】
液体組成物の粘度は、当業者に知られている任意の手段によって測定することができる。例えば、Bostwick稠度計、Brookfield粘度計、レオメータ、又は同様のデバイスを使用して粘度を測定することができる。粘度は、粘度計によって測定される相対センチポアズではなく、レオメータによって提供される絶対センチポアズで測定されることが好ましい。当業者には明らかなように、レオメータ測定は、食料粘度を割り出すための最良の、したがって標準的な方法である。
【0066】
本明細書中に記載された液体組成物は、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を95cP超まで増大させることが好適である。このアプローチの利点は、増粘剤によるその粘性の発現を多糖類によって抑制する作用が、液体組成物を水性液体食料又は水性液体固体混合食料中に静かに混入することにより効果的に高められることである。このことは、増粘剤に対する多糖類の粘性抑制効果が制御された状態で解除されることに基づき、増粘剤がその粘性を迅速に発現させるのを可能にし、したがって食品中への容易且つ急速な取り込みを支援する。このことは、食品へ添加される前にほぼ完全に水和され、したがって、スムーズ且つ時間効率的に食品中へ取り込むのが難しい増粘剤、例えばHolahanにおいて記載されたものを凌ぐ利点である。さらに、完全に水和された増粘剤による粘性の完全な発現はそれ自体、増粘剤が水性液体食料又は水性液体固体混合食料で希釈された時に、粘度を容易且つ迅速に増大させることに対する障害となる。
【0067】
従って、上述の態様のいずれにおいても、組成物中の増粘剤が食料へのその添加前には、完全には水和されていないことが明らかになる。
【0068】
ある特定の実施態様では、上記食料の粘度は、液体組成物が添加されると、少なくとも95cP、100cP、110cP、120cP、130cP、140cP、150cP、175cP、200cP、250cP、300cP、350cP、400cP、450cP、500cP、550cP、600cP、650cP、700cP、750cP、800cP、850cP、900cP、950cP、1000cP、1050cP、1100cP、1150cP、1200cP、1250cP、1300cP、1350cP、1400cP、1450cP、1500cP、1550cP、1600cP、1650cP、1700cP、1750cP、1800cP、1850cP、1900cP、1950cP、2000cP、2050cP、2100cP、2150cP、2200cP、2250cP、2300cP、2350cP、2400cP、2450cP、2500cP、2550cP、2600cP、2650cP、2700cP、2750cP、2800cP、2850cP、2900cP、2950cP、3000cP、又はその中の任意の範囲まで増大させられる。
【0069】
本発明の目的では、増粘剤は液体組成物の重量で約3%~約30%の量、又はこれらの中の任意の範囲、例えば約5%~約15%又は約7%~約12%で存在してよい。本発明の具体的な実施態様では、増粘剤は液体組成物の重量で約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、約6.0%、約6.5%、約7.0%、約7.5%、約8.0%、約8.5%、約9.0%、約9.5%、約10.0%、約10.5%、約11.0%、約11.5%、約12.0%、約12.5%、約13.0%、約13.5%、約14.0%、約14.5%、約15.0%、約15.5%、約16.0%、約16.5%、約17.0%、約17.5%、約18.0%、約18.5%、約19.0%、約19.5%、約20.0%、約20.5%、約21.0%、約21.5%、約22.0%、約22.5%、約23.0%、約23.5%、約24.0%、約24.5%、約25.0%、約25.5%、約26.0%、約26.5%、約27.0%、約27.5%、約28.0%、約28.5%、約29.0%、約29.5%、約30.0%、又はその中の任意の範囲の量で存在している。ある特定の実施態様では、増粘剤は液体組成物の重量で約3%~約20%の量で存在している。
【0070】
本発明に関しては、多糖類は、液体組成物の粘度に顕著には関与しない程度に充分に高い濃度で存在することが好適である。これを目的として、本明細書中に記載された多糖類は液体組成物の重量で、約3%~約30%、又はその中の任意の範囲、例えば約5%~約20%、又は約7.5%~約17.5%で存在してよい。
【0071】
本発明の具体的な実施態様では、本明細書中に記載された多糖類は、液体組成物の重量で約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、約6.0%、約6.5%、約7.0%、約7.5%、約8.0%、約8.5%、約9.0%、約9.5%、約10.0%、約10.5%、約11.0%、約11.5%、約12.0%、約12.5%、約13.0%、約13.5%、約14.0%、約14.5%、約15.0%、約15.5%、約16.0%、約16.5%、約17.0%、約17.5%、約18.0%、約18.5%、約19.0%、約19.5%、約20.0%、約20.5%、約21.0%、約21.5%、約22.0%、約22.5%、約23.0%、約23.5%、約24.0%、約24.5%、約25.0%、約25.5%、約26.0%、約26.5%、約27.0%、約27.5%、約28.0%、約28.5%、約29.0%、約29.5%、約30.0%、又はこれらの中の任意の範囲の量で存在している。本発明のある特定の実施態様では、本明細書中に記載された多糖類は、液体組成物の約3重量%~約20重量%の量で存在する。多糖類の濃度がこの範囲を下回ると、液体組成物は典型的には粘性溶液を形成し、増粘剤が添加されたときに流動性を失う。
【0072】
多糖類は、安定液体組成物の粘度が、増粘剤が水又は別の適宜の水溶液だけしか含まない場合の液体組成物の粘度よりも低くなるような量で含まれることが好ましい。多糖類は、安定液体組成物の粘度を、増粘剤が水又は別の適宜の水溶液だけしか含まない場合の液体組成物の粘度の少なくとも3分の1に低減することがより好ましい。具体的な実施態様では、多糖類は安定液体組成物の粘度を、増粘剤が水又は別の適宜の水溶液だけしか含まない場合の液体組成物の粘度の少なくとも約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、又はこれらの中の任意の範囲に低減する。
【0073】
本明細書中で言及される組成物は室温で少なくとも6ヶ月、最大で少なくとも2年間にわたって安定であることが好適である。本発明の組成物は、増粘剤の性能の著しい劣化なしに安定性を有するので、粘度は商業的に妥当な期間にわたって一定であり続ける。従って、この製剤は例えば定量ポンプディスペンサ内、又は小袋内に含まれる、それ自体パッケージ型製品として提供することができる。これを目的として、末端使用者は、食品又は飲料の所望の最終粘度を達成するようにこれに添加するための本発明の液体組成物の量を信頼性高く計算することができる。本発明の液体組成物は次いで容易に定量供給され、そして容易に食料中に混入されることにより所望の最終生成物をもたらす。
【0074】
前述のように、液体組成物をこのようにパッケージングして使用することができるのは、増粘剤と、低剪断混合を施すことにより解除されるまで増粘剤の粘性発現を抑制する多糖類とが組み合わされて存在する結果である。多糖類は、粉末状又はゲル様増粘剤の伝統的な小袋を凌ぐ使用上の明確な利点をもたらす。粉末状又はゲル様増粘剤は、パックの実寸が適切でない場合に正確に測定するのが難しく、そして液体食料中に取り込むのが難しいことでよく知られている。
【0075】
本発明の液体組成物の経時的な安定性は、液体組成物の(もしあれば)色、(もしあれば)風味、(もしあれば)分離、(もしあれば)微生物学的腐敗、粘度及び/又は透明度によって示すことができる。これに加えて、又はこの代わりに、食料に添加されたときに粘性を一貫して且つ繰り返し所定のレベルまで付与する組成物の能力によって、液体組成物の安定性を割り出すこともできる。液体組成物の安定性は、微生物学的腐敗の程度及び速度を測定するための微生物学試験、物理的変化、例えば分離及び/又は沈降に対する目視検査、色、風味、及び/又は透明度の変化を割り出すための官能評価、及びBostwick稠度計、Brookfield粘度計、レオメータ、又は同様のデバイスを使用した粘度測定を含む、当業者が利用可能な技術のいずれかを用いて割り出すこともできる。
【0076】
安定性に関しては、本発明の液体組成物はさらに、当業者によく知られた食品等級保存料を含むことができる。好適な食品等級保存料の一例としては、ジェランガム、ビタミンE、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチルパラベン、EDTA、二酸化硫黄、ナイシン、及びプロピオン酸が挙げられる。一実施態様では、食品等級保存料はジェランガムであるか、又はジェランガムを含む。液体組成物中の保存料の量は、液体組成物の総重量の約0.001重量%~約0.1重量%であってよい。
【0077】
再び安定性に関して、本明細書中に記載された液体組成物のpHは、約3.0~約7.5(例えば、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、及びこれらの中の任意の範囲)である。液体組成物のpHは約4~約4.4であることが好ましい。これを目的として、液体組成物の酸性pHは、当業者に知られた任意の手段によって達成することができる。
【0078】
前述の態様の液体組成物は、咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態を有する患者に供給するために、水性液体食料又は水性液体固体混合食料に添加されることが好適である。咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態は嚥下困難であるか又は嚥下困難を含むことが好ましい。このようなものとして、液体組成物は適宜の個別の部分、例えば小袋に分離されるか、又はポンプで定量供給可能であることがこの用途にとっては好ましい。
【0079】
嚥下困難は飲み込む過程が障害されている状態である。摂食中、この状態は液体又は固体の食料が患者の気管、続いて肺の中に入るおそれがあり、このことは潜在的に誤嚥性肺炎を引き起こす。嚥下困難はいかなる年齢でも生じ得るが、しかし高齢者、特に脳卒中又は認知症の患者に最もよく見られる。嚥下困難に対する一つの管理戦略は、テクスチャが改質された食品(すなわち、とろみを付けられた食品及び飲料)を消費することである。このような食品は嚥下反射の速度を遅くし、食品が通過する前に気管に閉じる時間を許し、これにより誤嚥を防止する。
【0080】
本明細書全体を通して、本発明をいずれか一つの実施態様又は特定の態様群に限定することなしに、本発明の好ましい実施態様を記載することを目的としてきた。従って、当業者には明らかなように、本開示に照らして、本発明の範囲を逸脱することなしに、例示された具体的な実施態様において種々の改変及び変更を加えることができる。
【0081】
本明細書中で言及された全てのコンピュータプログラム、アルゴリズム、特許、及び科学文献は、参照することにより本明細書に援用される。
【0082】
本明細書中に示された刊行物のいかなる参照も、その開示内容がオーストラリア国における周知の一般知識を構成することを承認するものではない。
【0083】
本発明をより容易に理解し、実践することができるように、その一又は二以上の好ましい実施態様を一例として以下に説明する。
【0084】
例1:組成物及び製造・使用方法
西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物-20重量%
キサンタンガム-7重量%
クエン酸-0.3重量%
ソルビン酸カリウム-0.07重量%
水-72.63%
ジェランガム-0.08%
【0085】
西洋カラマツ(ラリックス・オッキデンタリス)多糖類抽出物を先ず水中に溶解し、続いてクエン酸及びソルビン酸カリウムを溶解する。次いでキサンタンガムを添加する。混合物を次いで、攪拌しながら80℃まで加熱し、そしてジェランガムを添加する。次いで液体増粘剤組成物を容器内部にホット充填し、気密封止部材を有する蓋を使用して容器を閉じることができる。
【0086】
容器を開けたときに、これに適切に封止されたポンプ、例えば図2に示されたポンプを取り付けることができる。このポンプは7g±3重量%の液体増粘剤を送達することができる。7gの上記液体増粘剤を100mlの水に添加し、30秒間にわたって静かに攪拌することにより、即時に多糖類の粘性抑制を解除すると、粘度160cpsのとろみ付きの水がもたらされた。同様に7gの上述の液体増粘剤濃縮物を100mlのミルク又はジュース又はコーディアル(cordial)又は他の飲料に添加し、30秒間にわたって静かに攪拌して即時に多糖類の粘性抑制を解除することにより、160cpsのとろみ付きのミルク又はジュース又はコーディアル又は他の飲料を製造した。
【0087】
例2:Uzuhashi実施態様と本発明との安定性比較
この例は、米国特許第6,455,090号明細書(以後「Uzuhashi」)の
Detailed Description of the Preferred Embodiments(好ましい実施態様の詳細な説明)(第4欄第26行)に記載された第2の方法に関し、これを本発明によって提供された、増粘剤と粘性抑制多糖類との酸性化されて保存料を含む溶液の上記例1の製剤と比較する。
【0088】
Uzuhashiは、液体増粘剤を製造する方法を記載しており、この液体増粘剤は、液体に添加されるととろみを付けることができ、粘性の溶液又はゲルを形成することが最初は抑制されている。発明者は、この発明のものを、咀嚼及び嚥下が困難な患者のために液状又は半液状食料に好適に添加することができると主張している。
【0089】
微生物学的安定性
【表1】
【0090】
物理的安定性
粘性抑制多糖類からの増粘剤の分離によって、それぞれの製剤の物理的安定性を証明した。これを目的として、所定の粘度(30秒間の流動後にBostwick稠度計によって測定した)の20gの液体増粘剤試料を、容器の底部から取り、そしてこれを100mlの水上に混合した(注:Bostwick読み取り値の増大は、粘度の低減(とろみの希薄化)を示す)。
【表2】
【0091】
4週後、Bostwick読み取り値は変化を示さないものの、Uzuhashi実施態様がもたらす粘度はますます希薄になり続けた。8週後、Uzuhashi実施態様の底部の分離層は粘性抑制多糖類の透明層を含むだけで、増粘剤を含まなかった。これに対して、例1の製剤は52週間を超えて物理的に安定なままである。
【0092】
従って、Uzuhashiにおいて開示された発明は、そこに記載された増粘剤が微生物的安定性も物理的安定性も示さないという点において制約される。このようなものとして、Uzuhashiの液体増粘剤は、嚥下障害(嚥下困難)を管理してこの状態の一般的な併存疾患を防止又は制限する上での実用性を有していない。実用性のこのような欠如は2つの要素から成っている。第一に、物理的安定性の欠如、及び結果としての溶媒とゲル化剤との分離は、Uzuhashiの液体増粘剤の正確な投与を妨げる。このようなものとして、開示された発明は、結果としてとろみを付けられた食品の所定の粘度に関して、所要のレベルを満たすことを一貫して保証することはできない。第二に、本明細書中に記載されているような患者は、典型的には弱者集団である。このようなものとして患者は、法的文書、例えばNSW Food Authority - Guidelines for food service to vulnerable persons(NSW食料局-弱者に対する食品提供のためのガイドライン)によって管理されている。Uzuhashiの液体増粘剤組成物は微生物学的に安定ではなく、したがって、記載された所期集団に臨床的に投与することはできなかった。
【0093】
例3:混合速度及び粘度形成の比較データ
【表3】
【0094】
上記表から判るように、例1製剤は、水に添加したときに、他の2種の従来技術の増粘剤組成物よりも著しく迅速に最大粘度に達する。以下の項目[1]~[18]に、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
安定液体組成物のための貯蔵及び送達システムであって、上記システムは:
(a)上記安定液体組成物を含む、容器であって、上記組成物が、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含む、容器と;
(b)上記容器に封止状態で取り付けられた、ポンプディスペンサであって、上記ディスペンサが、上記容器内の上記組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含む、ポンプディスペンサと
を含む、安定液体組成物のための貯蔵及び送達システム。
[2]
上記組成物が、上記食料に所定の体積からなる1回分又は2回分以上の用量で送達されるように構成されている、項目1に記載のシステム。
[3]
上記組成物の所定の体積からなる1回分、2回分、及び3回分の用量が、上記食料の粘度をそれぞれ第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルまで増大させ、そして上記第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルの間に非線形の関係が存在する、項目2に記載のシステム。
[4]
水性液体食料又は水性液体固体混合食料に安定液体組成物を送達する方法であって、上記方法は:
(a)上記安定液体組成物を含有する容器を用意する工程であって、上記組成物が、上記食料の粘度を増大させるために用いられ、そして2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有しており、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含み、上記容器がさらにポンプディスペンサに封止状態で取り付けられており、上記ディスペンサが、上記容器内の上記組成物の乾燥を抑制又は防止するための弁を含む、工程と;
(b)上記ポンプディスペンサに力を加えることにより、上記組成物の所定の体積からなる1回分又は2回分以上の用量を上記食料に送達する工程と
を含む、方法。
[5]
上記組成物の所定の体積からなる1回分、2回分、及び3回分の用量が、上記食料の粘度をそれぞれ第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルまで増大させ、そして上記第1粘度レベル、第2粘度レベル、及び第3粘度レベルの間に非線形の関係が存在する、項目2に記載の方法。
[6]
上記組成物による上記食料の粘度の増大を促進するように上記食料及び上記組成物に低剪断混合を施す工程を更に含む、項目4又は5に記載の方法。
[7]
上記弁がセルフシーリング弁であるか又はセルフシーリング弁を含む、項目1~6のいずれか一項に記載のシステム又は方法。
[8]
上記ディスペンサがディスペンサ先端部を含み、上記ディスペンサ先端部内に上記弁が配置されている、項目1~7のいずれか一項に記載のシステム又は方法。
[9]
上記弁が、クロススリット弁、ボール弁、フラッパ弁、アンブレラ弁、ダックビル弁、リード弁、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、項目1~8のいずれか一項に記載のシステム又は方法。
[10]
上記弁が閉位置へ付勢されており、上記ポンプディスペンサに力を加えると開位置へ作動され、上記組成物が強制的に弁を通流するようになる、項目1~9のいずれか一項に記載のシステム又は方法。
[11]
水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法であって、上記方法は:
(a)2000cP未満の粘度と95%超の水分活性とを有する安定液体組成物を上記食料に添加する工程であって、上記組成物が、(i)寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、トラガカントガム、ガティガム、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カラヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ペクチン、フルセララン、ジェランガム、こんにゃく、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の増粘剤と、(ii)スクレログルカン、デキストラン、エルシナン、大豆多糖類、レバン、アラビノガラクタン、アルテルナン、イヌリン、グルコオリゴ糖、プルラン、アラビノキシラン、カードラン、低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)、アカシアガム、西洋カラマツ多糖類抽出物、アメリカカラマツ多糖類抽出物、ヨーロッパカラマツ多糖類抽出物、シベリアカラマツ多糖類抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の多糖類又は多糖類の抽出物とを含む、工程と;
(b)上記組成物による上記食料の粘度の増大を促進するように上記食料及び上記組成物に低剪断混合を施す工程と
を含む、水性液体食料又は水性液体固体混合食料の粘度を増大させる方法。
[12]
上記低剪断混合が、上記食料の最大粘度を達成するために約30秒間以下にわたって施される、項目6~11のいずれか一項に記載の方法。
[13]
上記低剪断混合が、上記食料の最大粘度を達成するために約10~約30秒間にわたって施される、項目12に記載の方法。
[14]
上記低剪断混合が、約10rpm~約40rpmの速度で上記組成物を攪拌することを含む、項目6~13のいずれか一項に記載の方法。
[15]
上記食料の粘度が95cP超まで増大させられる、項目5~14のいずれか一項に記載の方法。
[16]
上記組成物が室温で少なくとも6ヶ月にわたって安定である、項目1~15のいずれか一項に記載のシステム又は方法。
[17]
粘度が増大させられた上記食料が、咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態を有する対象者に供給するために使用される、項目1~16のいずれか一項に記載のシステム又は方法。
[18]
上記咀嚼及び/又は嚥下の疾患、障害、又は状態が、嚥下障害であるか又は嚥下困難を含む、項目17に記載のシステム又は方法。
図1
図2
図3
図4
図5