(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】アンテナアパーチャにおけるRFリップル補正
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/24 20060101AFI20230131BHJP
H01Q 13/22 20060101ALI20230131BHJP
H01Q 3/44 20060101ALI20230131BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01Q3/24
H01Q13/22
H01Q3/44
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2020516635
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 US2018051811
(87)【国際公開番号】W WO2019060453
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516247177
【氏名又は名称】カイメタ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレル カグダス
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンソン ライアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンソン マイケル
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/106105(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
H01Q 13/22
H01Q 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶(LC)を有するアンテナ素子のアレイと、
前記アレイに結合され、各々が、前記アレイのアンテナ素子に結合されて前記アンテナ素子に駆動電圧を印加するように動作できる複数のドライバを有する駆動回路と、
前記駆動回路に結合されて、前記駆動電圧を調整してリップルを補償する無線周波数(RF)リップル補正論理回路と、
を備えるアンテナ。
【請求項2】
前記RFリップル補正論理回路は、前記アレイのアンテナ素子に対する駆動電圧を再調整して、正フレーム及び負フレームの両方に同じ差動電圧を印加するように動作できる、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記複数のドライバの各ドライバは、正フレーム及び負フレームの両方に対して複数のグレイシェードレベルの各グレイシェードレベルにおいて規定された出力を有し、ガンマ電圧が前記出力を制御する、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記RFリップル補正論理回路は、Nが整数である場合、N個のガンマ電圧レベルに対してN/2個のグレイシェードレベルでRFリップル補正を実行するように動作できる、請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
共通電圧が前記アレイ内のアンテナ素子に印加され、更に前記RFリップル補正論理回路は、前記共通電圧を調整してリップルを補償するように動作できる、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナ素子のLCに周期的に印加される差動電圧の極性を反転させるように前記駆動回路に結合されたコントローラを更に備える、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記コントローラは、前記駆動回路に対して、フレームごとに前記アンテナ素子のLCに印加される差動電圧の極性を反転させるように動作できる、請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記RFリップル補正論理回路は、自由空間試験(FST)測定システムで適用される電圧調整を適用するように動作できる、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記RFリップル補正論理回路は、前記アレイに結合された環境センサに応答して電圧調整を適用するように動作できる、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項10】
アンテナ内のアンテナ素子のアレイにおけるアンテナ素子用のドライバに対する駆動電圧の初期セットを決定するステップと、
前記駆動電圧のセットにおける駆動電圧を調整することにより、前記アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
動作中、前記アレイ内の前記アンテナ素子にRFリップル補正電圧を印加するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電圧の初期セットにおける電圧は、共通電圧に関する初期値に対して対称である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップは、
(a)第1の電圧レベルを使用してRFリップルを測定するステップと、
(b)測定されたRFリップルと所定基準との間の関係に基づいて前記共通電圧を調整するステップと、
(c)前記測定されたRFリップルが前記所定基準を満たすまで、前記ステップ(a)及び(b)を繰り返すステップと、
(d)前記共通電圧を前記調整された共通電圧に設定するステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の電圧レベルは、最高及び最低グレイシェードレベルに基づく、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記所定基準は、RFリップル閾値であり、更に前記RFリップルが前記閾値を下回るまで、前記共通電圧を調整するステップが繰り返される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
他のグレイシェードレベルに対して前記共通電圧の調整を繰り返すステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記駆動電圧は、前記アンテナ素子内の液晶(LC)の両端の差動電圧である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記共通電圧の差分を決定し、
前記差分に基づいてソース電圧補正値を計算し、
1又は2以上のガンマ電圧レベルを調整することにより前記ソース電圧補正値を適用する、
ことによって調整された駆動電圧を生成するステップを更に含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項19】
少なくともプロセッサ及びメモリを内部に有するシステムによって実行されたときに、前記システムに方法を実行させる命令が格納された非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記方法が、
アンテナ内のアンテナ素子のアレイにおけるアンテナ素子用のドライバに対する駆動電圧の初期セットを決定するステップと、
前記駆動電圧のセットにおける駆動電圧を調整することにより、前記アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップと、
を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
動作中、前記アレイ内の前記アンテナ素子にRFリップル補正電圧を印加するステップを更に含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
前記電圧の初期セットにおける電圧は、共通電圧に関する初期値に対して対称である、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
前記アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップは、
(a)第1の電圧レベルを使用してRFリップルを測定するステップと、
(b)測定されたRFリップルと所定基準との間の関係に基づいて前記共通電圧を調整するステップと、
(c)前記測定されたRFリップルが前記所定基準を満たすまで、前記ステップ(a)及び(b)を繰り返すステップと、
(d)前記共通電圧を前記調整された共通電圧に設定するステップと、
を含む、請求項
21に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項23】
前記第1の電圧レベルは、最高及び最低グレイシェードレベルに基づく、請求項22に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項24】
前記所定基準は、RFリップル閾値を含み、更に前記RFリップルが前記閾値を下回るまで、前記共通電圧を調整するステップが繰り返される、請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項25】
他のグレイシェードレベルに対して前記共通電圧の調整を繰り返すステップを更に含む、請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本特許出願は、「RF RIPPLE CORRECTION(RFリップル補正)」と題する2017年9月20日出願の対応の仮特許出願第62/561,110号、及び「DC OFFSET CORRECTION IN AN RF TFT ANTENNA APERTURE(アンテナアパーチャにおけるDCオフセット補正)」と題する2017年9月28日出願の仮特許出願第62/564,877号に対して優先権を主張し、これらを引用により組み込むものである。
【0002】
(技術分野)
本発明の実施形態は、液晶(LC)を有する無線周波(RF)デバイスの分野に関し、より具体的には、本発明の実施形態は、RFリップル、フリッカ又は他の観測が行われる液晶(LC)を有する無線周波(RF)デバイスの駆動及び制御に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶(LC)を使用する表示デバイスは通常、LCの両端に印加される駆動電圧の極性を一定の区間で反転させる駆動方法を用いている。これらの区間は通常、タイムフレーム又はフレームと呼ばれる。この方法は、LCデバイス内の電圧の蓄積をもたらす可能性があるLCデバイス内の電荷のトラップを防止又は最小化するために行われる。これらの電荷は、LCデバイス内の材料の汚染又は劣化に主として起因する、多くの発生源から生じる。所与の極性を持続的に適用することによって、汚染物質(有機酸など)の電荷が分離されて、これらをLCデバイスの境界に移動させ、電荷がそこに付着する場合がある。印加される電圧の極性を反転させることにより、これらの荷電種の分離及び移送を低減することができる。しかしながら、電圧を対称的に反転することは困難であるため、結果的に「正味のDCオフセット」が生じる。
【0004】
また、「フリッカ」と呼ばれる状態が生じる場合があり、この状態は、正フレーム及び負フレームにおけるLCの光学特性が異なって人間の目で視認できるような、正フレーム中に印加される電圧の絶対値と負フレーム中に印加されるものとの間に十分な差異がある場合に引き起こされる。ディスプレイでは、光検知デバイスにより、これらの光学特性を確認又は検出することができる。フリッカの原因となった正フレームと負フレームとの間の非対称性は、時間の経過に伴って蓄積電荷をもたらす。デバイス内に蓄積した電荷は、LCに印加されるように意図された電圧と実際に印加される電圧との間の差分を生じる場合がある。このことは、素子に印加される二乗平均平方根(RMS)電圧の低下をもたらす可能性がある。本明細書において「画像付着」と呼ばれるこの問題の別の兆候が生じる場合があり、これは、次の画像パターンへの以前に適用された画像パターンの影響である。
【0005】
印加される電圧の極性を定期的に反転させることは、電荷トラップを防止するのに効果的であるが、これだけでは、「フリッカ」のような問題を防ぐのに十分ではない。正の極性での印加電圧と負の極性での印加電圧との間に持続的な差分が存在する場合には、この差分は、フレーム間に「正味のDCオフセット」をもたらす可能性があり、これによって、時間の経過に伴ってLCデバイスの境界にて電荷の正味の蓄積がある。
【0006】
LCベースのデバイスでこれを防止するには、駆動極性の1つの区間中にLCデバイスに印加される電圧の絶対値と、反対の駆動極性の次の区間中に印加される電圧の絶対値との間のDCオフセットが可能な限りゼロに近いことが望ましい。
【0007】
LCディスプレイでは、DCオフセットの調整は、グレイレベルごとに極性ごとに各素子に送られる電圧値を補償することによって行われる場合がある。ディスプレイでは、選択されたグレイレベルでの各極性での補償電圧の量は、光学的に決定される場合があり、フリッカをゼロにするように選択される。すなわち、フレームの正の極性と負の極性との間の電圧差が、光学フリッカをもたらし、この光学フリッカが、光学センサ又はセンサのアレイ(カメラ)によって観測され、自動試験セットアップにおいて補正アルゴリズムを使用してゼロになる場合がある。次に、これらの補正値は、保存されて、オフセットを最小にするのに使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願第15/596,370号明細書
【文献】米国特許第9,887,455号明細書
【文献】米国特許出願第14/550,178号明細書
【文献】米国特許出願第14/610,502号明細書
【文献】米国特許公開第2015/0236412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記では、LCディスプレイに関するDCオフセット問題について説明した。LC駆動機構はディスプレイと同様であるため、同様の現象が、LC RFアンテナで観測される。この現象の影響は、受信機における搬送波対雑音比(C/N)を低下させるアンテナ性能のRCリップルとして観測される。LCディスプレイで使用されるDCオフセット補正方法は、アンテナ構造がLC応答の光学測定経路を遮断するということから、LCアンテナの電流状態に適用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
アンテナアパーチャにおけるRFリップル補正のための方法及び装置が記載される。1つの実施形態において、アンテナは、液晶(LC)を有するアンテナ素子のアレイと、該アレイに結合されており、各々が、アレイのアンテナ素子に結合されて該アンテナ素子に駆動電圧を印加するように動作できる複数のドライバを有する駆動回路と、該駆動回路に結合されて、駆動電圧を調整してリップルを補償する無線周波数(RF)リップル補正論理回路と、を備える。
【0011】
本発明は、以下に与えられる詳細な説明及び本発明の様々な実施形態の添付図面からより完全に理解されるであろうが、これらは、本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、単に説明及び理解のためのものであると解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電圧調整装置の1つの実施形態のブロック図である。
【
図2】無線周波数(RF)リップルのない経時的な伝送パラメータS21を示す。
【
図3】RFリップルを伴う経時的な伝送パラメータS21を示す。
【
図4】LCアンテナアパーチャにおけるRF単位セルに対する駆動電圧を示す。
【
図5】ガンマ電圧を使用したデータ(ソース)ドライバ出力制御を示す。
【
図6】RFリップル補正処理の一実施形態のフローチャートを示す。
【
図7A】RFリップル補正処理の1つの実施形態を使用した電圧調整例を示す。
【
図7B】RFリップル補正処理の1つの実施形態を使用した電圧調整例を示す。
【
図7C】RFリップル補正処理の1つの実施形態を使用した電圧調整例を示す。
【
図7D】RFリップル補正処理の1つの実施形態を使用した電圧調整例を示す。
【
図8】RFリップル補正処理の別の実施形態のフローチャートである。
【
図10】DCオフセット補正値を決定するための処理の1つの実施形態のフローチャートである。
【
図11】導波管領域の外側に配置された単一の試験構造に関する経路設定の1つの実施形態を示す。
【
図13】光学的に透明な試験構造に対するゲート及びソース線経路設定の一例を示す。
【
図14】それぞれアンテナアパーチャ用のパッチ及びアイリスを形成するパッチガラス(基板)及びアイリスガラス(基板)構造の例を示す。
【
図15】それぞれアンテナアパーチャ用のパッチ及びアイリスを形成するパッチガラス(基板)及びアイリスガラス(基板)構造の例を示す。
【
図16】パッチガラス基板上の経路設定の例を示す。
【
図17】アイリスガラス基板上の経路設定の例を示す。
【
図18】円筒状給電ホログラフィック放射状アパーチャアンテナの1つの実施形態の概略図を示す。
【
図19】グランドプレーンと再構成可能共振器層とを含む1列のアンテナ素子の斜視図を示す。
【
図20】同調可能共振器/スロットの1つの実施形態を示す。
【
図21】物理的アンテナアパーチャの1つの実施形態の断面図を示す。
【
図22A】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す。
【
図22B】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す。
【
図22C】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す。
【
図22D】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す。
【
図23】円筒状給電アンテナ構造の1つの実施形態の側面図を示す。
【
図24】アンテナシステムの別の実施形態を外向き波と共に示す。
【
図25】アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の1つの実施形態を示す。
【
図26】TFTパッケージの1つの実施形態を示す。
【
図27】同時送信及び受信経路を有する通信システムの1つの実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本発明のより完全な説明を提供するために数多くの詳細が示される。しかしながら、当業者であれば、本発明がこれらの特定の詳細なしに実施できることは明らかであろう。他の例では、本発明を不明確にすることのないように、公知の構造及びデバイスは、詳細にではなくブロック図の形で示される。
電圧補正の概要
【0014】
アンテナの駆動機構を制御するための方法及び装置が開示される。1つの実施形態において、アンテナは、例えば、以下に説明するアンテナ実施形態に限定されるものでないが、記載のものなどの平面アンテナ(flat panel antenna)を備える。本明細書で説明する技法は、このようなアンテナに限定されるものではないことに留意されたい。
【0015】
1つの実施形態において、駆動機構は、アンテナ内のアンテナ素子を制御するための電圧値の選択を伴う。1つの実施形態において、アンテナ素子は、RF放射アンテナ素子であるが、本明細書に開示する技法は、このようなアンテナ素子に限定されない。1つの実施形態において、RF放射アンテナ素子は、メタマテリアル液晶ベースのアンテナ素子である。1つの実施形態において、メタマテリアルアンテナ素子は、例えば、限定されるものではないが、以下により詳細に開示されるものなどの表面散乱メタマテリアルアンテナ素子である。
【0016】
1つの実施形態において、アンテナ用の駆動機構は、アンテナに関して行われた観測に基づいて修正される。試験装置、試験構造、及びセンサが、観測結果を得ることができる。1つの実施形態において、観測は、無線周波数(RF)リップル、フリッカ、及び/又は環境変化(例えば、温度変化、圧力変化など)に関する観測を含む。
【0017】
観測に基づいて、駆動機構の変更が行われる。1つの実施形態において、駆動機構に対する1又は2以上の変更は、アンテナの一部分の動作を制御する1又は2以上の電圧を調整することを伴う。1つの実施形態において、この調整は、トランジスタ(例えば、薄膜トランジスタ(TFT))のガンマ電圧、ゲート、ソース及び/又はドレイン電圧、基準電圧又は共通電圧(例えば、Vcom)などのうちの1又は2以上に対して行われる。
【0018】
RFリップル及び/又はフリッカ観測の場合には、本明細書に開示する技法は、このようなアンテナ素子用のドライバを含むアンテナ素子の制御に指定される電圧値を調整する。1つの実施形態において、ガンマ電圧値が調整される。別の実施形態では、共通電圧、例えばVcom値が、調整される。電圧調整は、これらの電圧に限定されるものではないことに留意されたい。
【0019】
図1は、電圧調整装置の一実施形態のブロック図である。1つの実施形態において、この装置はアンテナの一部分である。別の実施形態では、装置は、アンテナによって使用されるが、アンテナから切り離される。更に別の実施形態では、装置の一部分は、一部がアンテナの一部分であり、別の部分がアンテナから切り離されているが、アンテナによって使用されるように分散される。
【0020】
図1を参照すると、電圧調整コンポーネント100は、1又は2以上の駆動/制御電圧値101(例えば、トランジスタ(例えば、薄膜トランジスタ(TFT))のガンマ電圧値、ゲート、ソース及び/又はドレイン電圧、基準電圧又は共通電圧(例えば、Vcom)など)と、アンテナに対した行われた観測に関連する観測データ102を受け取る。1つの実施形態において、観測データ102は、RFリップル測定値又は情報、フリッカ測定値又は情報、環境測定値などのうちの1又は2以上を含む。これらは、試験器、試験構造、センサなどから得ることができる。
【0021】
これらの入力に応答して、電圧調整コンポーネント100は、アンテナによって使用される駆動電圧及び/又は制御電圧に対する電圧調整を実行する。1つの実施形態において、電圧調整コンポーネント100は、観測されたRFリップルに応答して電圧調整を実行する。別の実施形態では、電圧調整コンポーネント100は、観測されたフリッカに応答して電圧調整を実行する。更に別の実施形態では、電圧調整コンポーネント100は、観測されたRFリップル及びフリッカに応答して電圧調整を実行する。
【0022】
1つの実施形態において、電圧調整コンポーネント100は、RFリップル補正コンポーネント100Aを使用して観測されたRFリップルに応答して電圧調整を実行する。別の実施形態では、電圧調整コンポーネント100は、DCオフセット補正コンポーネント100Bを使用して観測されたフリッカに応答して電圧調整を実行する。更に別の実施形態では、電圧調整コンポーネント100は、RFリップルコンポーネントとDCオフセット補正コンポーネントとの組み合わせを使用して観測されたRFリップル及びフリッカに応答して電圧調整を実行し、ここで、RFリップルコンポーネント100A及びDCオフセット補正コンポーネント100Bは、組み合わされるか、又は順次動作する。1つの実施形態において、これら2つの方法が組み合わされて、光学DCオフセット補正/検出方法(100B)を使用して、予期されるガンマ電圧補正量が確立され、次に、リップル方法を用いたより精密な補正(100A)が、これらの予期された値の周りで実行されるようになる。100Bを使用して見つけられた電圧補正量は、試験構造が周辺にのみ配置されている場合、又はITO構造のキャパシタンスが、RF素子に近いが、それと異なる場合に、アレイ内のRF素子に必要なものと異なる場合がある。2つの方法の組み合わせは、電圧範囲全体をスキャンすることなく、より短い時間(100B)でより正確な補正(100A)を提供することができる。1つの実施形態において、電圧調整コンポーネント100は、基準電圧又は共通電圧Vcom調整コンポーネント100Cを備えて、共通電圧を調整する。この調整は、1又は2以上の観測(例えば、RFリップル、フリッカなど)に基づいて行うことができる。
【0023】
電圧調整コンポーネント100は、アンテナコントローラ104によってアクセスされるメモリ103(例えば、ルックアップテーブル(LUT))に格納された1又は2以上の新しい又は更新された駆動/制御電圧値110を出力し、このアンテナコントローラが、当該技術分野で公知の方法でアレイ105内のアンテナ素子を駆動及び制御することに使用される電圧値を使用する。
【0024】
電圧調整コンポーネント100によって実行される、又は他のアンテナの実施形態によって使用されるリップル補正及びDCオフセット補正の実施形態に関する例は、以下により詳細に説明される。
【0025】
リップル補正の概要
1つの実施形態において、LCベースのアンテナアパーチャは、液晶(LC)に周期的に印加される差動電圧の極性を反転させる駆動機構を使用する。LCベースのアンテナアパーチャは、限定されるものではないが、例えば、以下により詳細に説明されるアンテナアパーチャである。1つの実施形態において、LC差動電圧の極性は、本明細書でフレームと呼ばれる一定の時間区間で反転される。電圧極性の反転は、電極表面(例えば、LCベースのアンテナ素子(例えば、以下に説明する表面散乱アンテナ素子)のパッチ/スロットペアにおけるパッチ電極)上のLCでの電荷の蓄積を防止するために適用される。この蓄積は、LC層内の電圧の蓄積を引き起こし、デバイスの特性を阻害する。各フレームにおける電圧極性の反転は、各フレームにおいて電荷が動き回っているときにこの蓄積を防止する。これらの電荷は、主に汚濁又は材料劣化生成物に起因してLCに存在する。例えば、LC材料の劣化が存在し、この劣化は、このアンテナアパーチャセグメントの組み立てプロセスでのUVへの暴露、意図せずに露出した金属とのLCの反応、LCと整列層との反応などに起因する。
【0026】
印加される電圧の差異は、正フレームと負フレームとの間のLCの光学特性の差異として観測される。別の効果であるRFリップルは、正フレーム及び負フレームでLCに印加される差動電圧の間に顕著な差異がある場合に、LCアンテナアパーチャで観測される。液晶を有するアンテナ素子を有するアンテナアパーチャのおけるRFリップルは、液晶ディスプレイ(LCD)におけるフリッカに類似する。LCアンテナアパーチャでは、印加される電圧の差異が、LC誘電特性、最終的にはアンテナ周波数における差異として観測される。印加される差動LC電圧の差異は、トランジスタ又はLCを介した漏出量の差異、アレイにおけるRC遅延、素子間のクロストーク、及び正フレームと負フレームとの間の「キックバック」(又はフィードスルー)電圧の差異に起因する場合がある。このアンテナ周波数の差異は、時間的に周期的に変化するアンテナ応答をもたらす。アンテナの中心周波数、すなわち、最大利得が観測される周波数が、周期的に変化することが観測できる。試験ツールは、RFリップル効果を測定することができる。
【0027】
RFリップル現象は、中心周波数で実行される時間領域の連続波(CW)測定でより明確に観測される。理想的な事例では、伝送パラメータ(S21)は、LCベースのアンテナアパーチャの一実施形態に関して
図2に示されているように、時間の経過に伴って不変である必要がある。RFリップルが存在する場合に、S21の時間依存の周期的変化は、LCベースのアンテナアパーチャの一実施形態に関して
図3に示されているように、観測される。前述のように、印加される電圧の周期的変化は、中心周波数を変化させ、その結果、一定周波数で測定された伝送パラメータの周期的変化が引き起こされる。
【0028】
1つの実施形態において、本明細書に開示する電圧補正技法は、RFアンテナアパーチャにおけるRFリップルを補正する。1つの実施形態において、RFリップル効果を補正するために、電圧補正処理は、限定されるものではないが、例えば、「Free Space Segment Tester(自由空間セグメント試験器)」と題する2017年5月16日出願の米国特許出願第15/596,370号に開示されているツールなどのRF自由空間試験ツールを使用してガンマ電圧補正を自動化するのに使用される。ガンマ電圧補正の自動化は、RFリップル現象を低減、最小化、及び/又は排除するために使用される。この処理は、1回又は2回以上実行されることに留意されたい。1つの実施形態において、この処理は、例えば温度センサ及び/又は圧力センサの一方又は両方を使用して取り込まれた劇的な環境変化などの、有意の変化が生じた場合に、繰り返される。
【0029】
1つの実施形態において、電圧補正ユニットが、電圧調整方法を実行する。1つの実施形態において、この方法は、駆動電圧を再調整して正フレーム及び負フレームの両方に同じ差動電圧を印加することによって、RFリップルを低減し、場合によっては、それを最小にする。1つの実施形態において、RFリップル補正のための電圧調整方法は、自由空間試験(FST)測定システムに適用される。
【0030】
1つの実施形態において、アンテナのRF応答(伝送パラメータS21)は、周波数領域及び時間領域の両方で観測される。ガンマ電圧値は、「データ」電圧を生成するのに使用され、駆動電圧を再調整するのに使用される。ガンマ電圧は、典型的な「データ」ドライバチップに関して
図4に示されているように、出力「データ」電圧を制御する。
図4を参照すると、LCアンテナアパーチャ内のRF単位セルに対する駆動電圧は、RF素子412及び蓄積キャパシタ411に結合される基準電圧又は共通電圧Vcom402を含む。RF素子412及び蓄積キャパシタ411は更に、トランジスタ410のドレインに結合される。1つの実施形態において、トランジスタ410は、薄膜トランジスタ(TFT)である。トランジスタ410のゲート402は、スキャン/ゲートドライバ420からスキャン電圧を受け取る。トランジスタ410のデータ/ソース401は、ガンマ電圧基準生成器422からのガンマ電圧によって制御されるデータドライバ421から出力データ電圧を受け取るように結合される。
【0031】
ガンマ電圧ドライバは、セグメントに必要な周波数の測定された電力対電圧応答を「線形化」/「補正」する。各グレイレベル/極性に対して、新しいガンマ電圧が、そのグレイレベル/極性で見つけられたΔVcomを使用して計算される。これらの値は、コントローラ基板上のメモリ(例えば、EEPROM)内のルックアップテーブルにセットされる。1つの実施形態において、タイミングコントローラ430は、コントローラ基板である。これらの値は、ガンマ電圧生成器422をセットアップするのに使用される。ガンマ電圧生成器422は、ガンマ電圧がデータドライバ421内の抵抗ラダー上のノードに進む状態で、この抵抗ラダーに入力される。このガンマチップ情報、及びコントローラ基板からのグレイレベルデータを用いて、データドライバ421は、「成長」(ゲート)ラインがスキャンするときに各ソース線に補正されたソース電圧を書き込み、これによって、各フレームに関する新しい情報が更新される。
【0032】
タイミングコントローラ430は、データドライバ421及びスキャン/ゲートドライバ420を制御するように結合される。1つの実施形態において、タイミングコントローラ430は、データ電圧駆動のタイミングを制御するとともに、データドライバにデータを吐き出し、このデータドライバは、ガンマ電圧生成器を使用して適切なアナログ電圧をソース線に出力するものである。
【0033】
1つの実施形態において、データドライバチップ出力は、負フレーム及び正フレームの両方に対する各グレイシェードレベルで規定される。N個のガンマ電圧レベルの場合に、ガンマ電圧を用いて直接制御されるN/2個のグレイシェードレベルが存在する。1つの実施形態において、RFリップル補正は、これらのN/2個のグレイシェードレベルで行われる。
【0034】
1つの実施形態において、RFリップル補正は、ガンマ電圧補正論理回路423によって実行される。1つの実施形態において、ガンマ電圧補正論理回路423は、ソフトウェアを実行する回路を備える。代替的に、ガンマ電圧補正論理回路423は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらのうちの2又は3以上の組み合わせを備える。1つの実施形態において、RFリップルは、自由空間試験器(FST)を使用して測定され、ガンマ電圧補正論理回路423は、回路(例えば、プロセッサ、コントローラ、デジタル論理回路など)によって実行されるソフトウェアを使用してΔVcomを決定し、ソフトウェアを使用してガンマ電圧を計算し、ソフトウェアを使用して新しいガンマ電圧値をガンマ電圧生成器422に送る。
【0035】
1つの実施形態において、ガンマ電圧の初期セットが決定される。
図5は、このようなガンマ電圧曲線の例を示している。
図5を参照すると、電圧曲線は、hAVDDとして参照される中央の電圧レベルに対して対称である。1つの実施形態において、この電圧レベルはまた、共通電圧(Vcom)の初期値としても使用される。1つの実施形態において、最高グレイシェードは、可能な限り最大の電圧範囲を達成するように設定され、最低グレイシェードは、0Vの差動LC電圧を達成するように設定される。
【0036】
グレイシェードレベルが最大電圧範囲に設定された場合に、LCベースのアンテナ素子のRF応答がFSTで観測され、RFリップルが中心周波数で測定される。リップル量が基準値よりも大きい場合には、リップル量がこの基準値を下回るまで、Vcomが増加又は減少する。中心周波数は、このVcom値において再度周波数領域で決定される。時間領域におけるリップル測定は、新しい中心周波数で繰り返される。リップル量が基準値を下回る場合には、このVcom値は、新しいVcom値(Vcom_adj)として確立される。そうでない場合には、リップル量が基準値を下回るまで、Vcom調整処理が繰り返される。
【0037】
Vcom調整処理は、わずかな変更を伴って残り((N/2)-1)個のグレイシェードレベルに対して繰り返される。残りのグレイシェードの各々に対して、RF応答及び中心周波数が測定される。リップル量は、時間領域で測定され、Vcomは、リップル基準にマッチするように増加又は減少する。1つの実施形態において、基準値は閾値であり、この閾値を上回るRFリップルが、信号を歪ませるか、又はそれ以外の場合には、受信機における搬送波対雑音(C/N)に影響を与える。1つの実施形態において、閾値は、0.10dBに設定される。次に、RF応答測定が繰り返されて、新しい中心周波数が測定される。リップルは、新しい中心周波数で再測定される。この処理は、リップル量が基準値を満たすまで繰り返される。このステップにおけるVcomは、Vcom_tempと呼ばれる。
【0038】
この差分(ΔVcom)は、このグレイシェードレベルに関するガンマ電圧値から減算されて、このグレイシェードレベルに関する新しいガンマ電圧が計算される。この調整を適用するための幾つかの方法がある。1つの実施形態において、ΔVcomは、このグレイシェードレベルに関する新しいガンマ電圧を計算するためにこのグレイシェードで使用される正フレーム及び負フレームに関連する両方のガンマ電圧値から減算される。別の実施形態では、2*ΔVcomが、このグレイシェードにおけるガンマ電圧値のうちの1つから減算される。
【0039】
1つの実施形態において、Vcomレベルが、RFリップル補正の前に設定され、一時的なVcom再調整のみが許可される。次に、前の段落で説明したガンマ電圧調整はまた、最高グレイシェードレベルにも使用される。
【0040】
この調整処理が、残りのグレイシェードレベルに対して繰り返されて、ΔVcom及び更新されたガンマ電圧値が計算される。1つの実施形態において、更新されたガンマ電圧セットは、各グレイシェードレベルに関する新しい中心周波数で再度リップル量を測定して、リップル基準値を確認するのに、Vcom_adjとともに新しいVcomレベルとして使用される。測定されたリップル量がリップル基準を満たしている場合に、RFリップル補正処理は、完了したとみなされる。そうでない場合には、RFリップル基準が満たされるまで、ガンマ電圧調整処理が繰り返される。
【0041】
図6は、RFリップル補正ユニットの一実施形態の一部として実行される上記のRFリップル補正処理のフローチャートの1つの実施形態を示している。この処理は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれら3つの組み合わせで構成できる処理ロジックによって実行される。
【0042】
図7Aから
図7Dは、アンテナ用の疑似半Vdd駆動モードに関する電圧調整処理の一実施形態を示している。
図7Aを参照すると、Vsource電圧は、Vcom電圧と同様に0Vから7Vの間にある。このモードは、本明細書では、7V半Vdd(真の半Vdd)駆動モードと呼ばれる。このような場合、LC電圧(例えば、パッチ/スロットアンテナ素子のパッチ上の電圧)は、正フレーム及び負フレームで7Vから-7Vの間にあることになる。この事例は、2つの電圧が0Vに対して対称である理想的な事例を表す。
【0043】
図7Bは、2つの電圧レベルが電圧に対して対称ではない状況を示している。
図7Bを参照すると、ソース上の電圧であるVsourceは、0Vから6.5Vの間にあり、電圧の範囲は、6.5Vから-7Vの間にある。このことは、RFリップルをもたらす。これに対処するために、RF補正ユニットは、共通電圧Vcomを増加させるか(
図7Cに図示)、またVcomを減少させる(
図7Dに図示)。Vcomが、
図7Cに示されているように増加した後、リップルが測定され、RFリップルが増加すると判定された場合に、RFリップル補正ユニットは、電圧調整が不適切な移動方向に進んでいると判定し、Vcomを減少させることによってVcomを調整する。Vcomを減少させた結果がリップルの減少をもたらす場合には、RFリップル補正ユニットは、RFリップルがもはや減少しなくなるまでVcomを減少させ続ける。Vcomの減少がRFリップルの増加をもたらす場合には、Vcomが増加することがある点に留意されたい。
【0044】
1つの実施形態において、Vcomを調整することに使用されるステップサイズは、RFリップル補正処理全体を通して同じであり得る。別の実施形態では、Vcomを調整することに使用されるステップサイズは、RFリップル補正処理全体にわたって変化することができる。例えば、ステップサイズは、最初、均一であり得るが、リップルの量は、減少し(例えば、Vcomを下方調整することに起因して)、Vcomの調整の結果として突然増加するため、調整のサイズは、RFリップルが生じないか又は所定量のRFリップル(例えば、RFリップルが所定レベルを下回る)が生じるVcomを識別する処理が得られたときに、反対方向により小さくなることができる(例えば、Vcom上方調整)。
【0045】
規定されたRFリップル補正処理は、アンテナアパーチャの各セグメント(セグメントは、単一のアパーチャが形成されるように一緒に結合される)上のガンマ電圧の調整に使用することができる。1つの実施形態において、RFリップル補正処理は、評価されるアンテナ素子の各ロット/バッチからの少数のサンプルに関する調整結果を使用して、適切なガンマ電圧セットを計算する。
【0046】
図7Aから
図7Dに示されている駆動モードに対する1つの代替アンテナ駆動モードは、本明細書では9V半Vdd(疑似半Vdd)駆動モードと呼ばれる点に留意されたい。9V半Vdd(疑似半Vdd)と7V半Vdd(真の半Vdd)との間の駆動モードの重要な相違点は、Vcomが、9VモードでVcomHとVcomLとの間で切り替わり、Vcomが、7Vモードで定電圧であることである。
【0047】
図8は、RFリップル補正処理の別の実施形態のフローチャートである。この処理は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれら3つの組み合わせで構成できる処理ロジックによって実行される。1つの実施形態において、
図8に示されている動作は、RFリップル補正ユニットによって実行される。
【0048】
図8を参照すると、本処理は、処理ロジックが、Vcomの調整が許可されるか否かをチェックすることから開始する(処理ブロック801)。許可されている場合に、処理は、処理ブロック802に移る。そうでない場合には、本処理は、処理ブロック804に移る。
【0049】
処理ブロック802において、処理ロジックは、正及び負のフレームに関する対称電圧曲線の初期ガンマ電圧を生成する。最高及び最低ガンマ電圧値は、典型的に、駆動チップの規格によって定まる。
【0050】
処理ブロック802において、処理ロジックはまた、最低グレイシェードレベル場合のLC上の0Vを生成するのに可能な限り近い値として初期Vcom値を決定する。
【0051】
その後、処理ロジックは、最高及び最低ガンマ電圧に対応する最高グレイシェードレベルに進み、リップル基準を満たすようにVcomを再調整する(処理ブロック803A)。1つの実施形態において、処理ブロック803Aの一部として、処理ロジックは、Vcomを再調整して、新しい中心周波数(CF)をチェックして、新しいCFでリップルをチェックして、Vcomを再調整して、必要な場合に、中心周波数及びリップルのチェックを繰り返す。
【0052】
Vcomを再調整した後、処理ロジックは、測定の残りに関する初期Vcom値を調整されたVcom(Vcom_adj)値に置き換える。その後、本処理は、処理ブロック806Aに移る。
【0053】
処理ブロック804において、処理ロジックは、Vcomの周りの正及び負フレームに関する対称電圧曲線の初期ガンマ電圧を生成する。上述のように、1つの実施形態において、最高及び最低ガンマ電圧値は、典型的に、チップ規格値を駆動することによって決定される。1つの実施形態において、処理ロジックは、最高ガンマ電圧値と最低ガンマ電圧値との中間にあるガンマ電圧を、最低グレイシェードレベルの場合のLC上の0Vを生成するのに可能な限り近い値として設定する。
【0054】
次に、処理ロジックは、最高グレイシェードレベルに進み、リップルを測定して、Vcomを再調整する(処理ブロック805B)。1つの実施形態において、処理ロジックは、新しい中心周波数(CF)をチェックして、この新しいCFでリップルをチェックする。1つの実施形態において、一時的なVcom変更のみが許可され、公称Vcomは、Vcom_adjと呼ばれる。1つの実施形態において、Vcomは、リップル基準を満たすように一時的に再調整される。このVcom値は、Vcom_tempと呼ばれる。
【0055】
リップルが測定された後、本処理は、リップルが基準を満たしていない場合に、再度Vcomを調整して、Vcom_tempのチェック及び更新を繰り返す。リップル基準が満たされている場合には、処理ロジックは、以下を計算する。
【0056】
1つの実施形態において、処理ロジックは、以下を使用することにより新しいガンマ電圧を計算する。
【0057】
次に、処理ロジックは、次のグレイシェードレベルに進み、Vcom_adjでリップルを測定し、Vcomを再調整する(処理ブロック806B)。1つの実施形態において、処理ロジックは、新しい中心周波数(CF)をチェックして、この新しいCFでリップルをチェックする。Vcomは、リップル基準を満たすように一時的に再調整される。このVcom値は、本明細書ではVcom_tempと呼ばれる。Vcomは、リップルが基準を満たさない場合に、再度、再調整され、処理ロジックは、チェックを繰り返して、Vcom_temを更新する。
【0058】
リップル基準が満たされている場合に、処理ロジックは、以下を計算する。
【0059】
1つの実施形態において、処理ロジックは、以下の式のうちの1つを使用して新しいガンマ電圧を計算する。
及び
1つの実施形態において、この差分は、片側のみに適用され、
であることに留意されたい。
【0060】
現在のグレイシェードレベルを処理した後、処理ロジックは、Vcom値をその初期値に戻して変更し(処理ブロック806C)、本処理は、処理ブロック807に移る。
【0061】
図8からの上記の手順は、Vcomが切り替わらない場合の真の半Vddモードでガンマ電圧補正のためのものである。Vcomが、
図7Aから
図7Dに示されているように、Vcom HighレベルとVcom Lowレベルの間で切り替わる場合の異なる駆動モードである疑似半Vddの場合には、
図8の処理は、RFリップルが閾値を下回るまで、Vcom Highレベル及びVcom Lowレベルを変更することによってRFリップル補正が実行されるように変更することができる。この場合には、1つの実施形態において、新しいガンマ電圧は、以下の式に従って計算される。
Vcom_high_adj及びVcom_low_adjは、Vcom_adjと同様に、調整ステップで得られたVcom High/Lowレベルである。Vcom_high_temp及びVcom_low_tempは、Vcom_tempと同様に、RFリップル補正ステップで使用される一時的なVcom High/Lowレベルである。他の場合には、
図8に記載の処理は、同じ量のVcomの変更がVcom High及びLowレベルの両方に適用される場合に、全く変更なく適用することができる。
【0062】
処理ブロック807において、処理ロジックは、全てのグレイシェードレベルが完了したか否かをチェックする。そうでない場合には、本処理は、処理ブロック806Aに移り、本処理は、この処理ブロックにおいて残りのグレイシェードレベルに対して続行する。全てのグレイシェードレベルが完了した場合には、本処理は、処理ブロック808に移る。
【0063】
残りの全てのグレイシェードレベルが評価され、必要な場合に補正された後、処理ロジックは、グレイシェードレベルに関するガンマ電圧を含むガンマ電圧テーブルを新しい値で更新する(処理ブロック808)。
【0064】
1つの実施形態において、処理ロジックは、RFリップル測定を繰り返し(処理ブロック809)、RFリップル基準が満たされているか否かをチェックする(処理ブロック810)。RFリップル基準が満たされていない場合には、処理は、繰り返され、グレイシェードレベルが基準を満たさない場合の処理ブロック805Aに移って、全てのグレイシェードレベルに対して基準が満たされるまで、この処理ブロックから繰り返される。基準が満たされている場合には(処理ブロック810)、本処理は終了する。
【0065】
DCオフセット補正の概要
本発明の実施形態は、RFアンテナアパーチャにおいて直流(DC)オフセットを補正するための技法を含む。アンテナにおける正味のDCオフセットに寄与する可能性がある多くの要因が存在する。充電率、キックバック電圧、及び電荷漏出量は、通常、正フレームと負フレームとの間で等しくなく、更に、これらの値は、グレイレベルによって変化する場合がある。
【0066】
RF TFTアパーチャに対するDCオフセットを処理するための表示方法を適用するには、幾つかの問題がある。例えば、1つの問題は、素子の重要な領域でLCの観測を妨げる光学的に不透明な金属層が存在することである。
【0067】
本発明の実施形態は、RF TFTアパーチャにおける選択された場所でフリッカを光学的に観測して、補正技法を使用してRF TFTアパーチャにおけるDCオフセットを低減することを可能にするための構造及び方法を含む。本発明の実施形態は、RF放射に対する誘電率において異方性を有することに加えて、RF TFTアパーチャを構築するのに使用される液晶が、LC分子の進相軸(短軸)及び遅相軸(長軸)の屈折率の間の差異によって測定される光学異方性も有するという事実を活用する。
【0068】
通常、RF TFTアパーチャの目的で使用されるLCのデルタnは、ディスプレイ用に特性が最適になったLCのデルタnよりも大きい。RF最適なLCの電気光学曲線は、2.8μmのLCギャップで、偏波器に対して45度のラビング方向を有する交差偏波器の間で、0から7.5Vrmsの幾つかの最大値及び最小値を示す。
【0069】
図9は、透過率対電圧曲線の例を示している。
図9を参照すると、RFアンテナの使用に最適なLCの結果として、このLCの光学デルタnは、LCDに最適なLCよりもはるかに大きい。偏波器及びラビング方向が適切に選択された電気制御複屈折(ECB)セルの場合には、透過率対電圧曲線は、
図9におけるプロットのようなものに見えることになる。
【0070】
正フレームと負フレームとの間の光透過率の差異は、電圧による透過率の変化が急激な場合(急勾配)の光透過曲線の部分で強調される。これらの領域は、グレイレベルに関する補正電圧を決定するのに使用される必要がある。
【0071】
RF TFTアパーチャのグレイレベルの所定の所与の正及び負フレームに対して、電気光学曲線上の正及び負フレームに対応する光学状態が存在することになる。電気光学曲線上のこれらの対応する光学状態は、DCオフセットに起因して異なることになる。光透過値間のこの差分は、「フリッカ」として観測されることになる。1つの実施形態において、電気光学曲線上の正及び負フレームに関するこれらの光学状態は、DCオフセットを補正するのに使用される。本明細書に開示するDCオフセット補正技法は、「フリッカ」をゼロにすることによって決定できるDCオフセット補正電圧を生成する。
【0072】
1つの実施形態において、正味のDCオフセットは、Vcom電圧を調整することによって調整される。このDCオフセットは、異なる駆動モードのためのものである。例えば、1つの実施形態において、1/2VDDモードの駆動の場合(正フレームと負フレームとの間の電圧範囲が1/2VDDである場合)、正味のDCオフセットは、総計レベルで、Vcom電圧を調整することによって調整される。1つの実施形態において、DCオフセット補正は、DCオフセット補正論理回路によって実行される。1つの実施形態において、このような論理回路は、ソフトウェアを実行する回路を備え、
図4に示されているものなどの回路に結合されて、Vcom電圧を調整する。代替的に、DCオフセット補正論理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの2又は3以上の組み合わせを備える。
【0073】
処理の一実施形態では、フレームレートを低下させて(フレーム時間を長くして)、LCが正及び負フレームの電圧に応答する必要がある時間を長くすることが望ましい。このことは、LCが応答時間を有しており、電圧変化に対する光学応答が、この応答時間を待って観測される必要があるためである。フレーム時間が、LC応答を観測するのに十分に長くない場合には、DCオフセット校正中に使用されるフレーム時間は、長くすることができる。しかしながら、フレーム時間は、単純に長くすることができず、それは、フレーム時間の長さが、例えば充電率及び電圧漏出量などのDCオフセットの重要な要素に影響を与える場合があるためである。1つの実施形態において、LCが正及び負フレームの電圧に応答する必要がある時間を長くすることは、駆動モードで行われ、このモードでは、フレーム時間が同じ長さに保たれるが、ヌル測定が完了するまで、正の電圧の複数のフレームが連続して書き込まれ、その後、等しい数の負フレームが書き込まれることなどが行われる。1つの実施形態において、DCオフセット較正は、この増加したフレーム時間で実行されるが、初期フレーム時間は、依然としてアンテナ動作に使用される。
【0074】
図10は、DCオフセット補正値を決定するための処理の一実施形態のフローチャートである。この処理は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれら3つの組み合わせで構成できる処理ロジックによって実行される。1つの実施形態において、
図8に示されている動作は、DCオフセット補正論理回路又はDCオフセット補正ユニットによって実行される。1つの実施形態において、DCオフセット補正ユニット又は論理回路は、アンテナの生産ラインで使用される試験及び較正装置内に存在する。
【0075】
図10の処理は、正フレームと負フレームとの間の光透過率の差異に関連する観測に依存する。1つの実施形態において、正フレーム及び負フレームにおける光透過率は、光学構造を使用して取り込まれる。1つの実施形態において、これらの光学構造はまた、RF放射アンテナ素子(例えば、以下に説明するものなどの表面散乱メタマテリアルアンテナ素子)用のマトリクス行及び列ドライバの機能を試験するためにも使用される。
【0076】
図10を参照すると、補正値を得るための処理は、処理ロジックが、或るグレイレベルでTFT/ウィンドウ試験素子を駆動すること(処理ブロック1001)、及び正フレームと負フレームとの間の光透過率の差分を観測すること(処理ブロック1002)から開始する。
【0077】
次に、処理ロジックは、Vcomを調整することによってフレーム間のフリッカをゼロにする(処理ブロック1003)。
【0078】
Vcomが、フリッカをゼロにするレベルに調整された後、処理ロジックは、Vcom値を、調整された正フレーム電圧Vpos及び負フレーム電圧Vnegに変換する(処理ブロック1004)。
【0079】
次に、処理ロジックは、調整された電圧を正フレーム及び負フレームに適用して(処理ブロック1005)、フリッカをチェックする(処理ブロック1006)。
【0080】
フリッカがない場合には、処理ロジックは、調整された正フレーム電圧及び負フレーム電圧を補正ルックアップテーブルに格納する(処理ブロック1007)。
【0081】
フリッカが依然として生じる場合に、1つの実施形態において、本処理は、処理ブロック1003に戻って、処理が繰り返される。
【0082】
グレイレベルに関してフリッカがゼロにされた後、処理ロジックは、次のグレイレベルに移動して、処理が繰り返される(処理ブロック1008)。
【0083】
1つの実施形態において、各グレイレベル内で、1つの素子に対してフリッカをゼロにするための処理が実行され、この素子に対する処理が完了した後、処理は、次の素子に移動して、全ての素子が試験されるまで繰り返される。
【0084】
1つの実施形態において、測定されたRF TFT素子対して決定された補正値は、未測定のRF TFT素子の補正値を決定するのに使用される。1つの実施形態において、DCオフセット補正ユニットは、測定されたTFT/ウィンドウ試験素子の補正値を未測定のRF TFT素子に補間する。これらの未測定RF TFT素子は、試験されたRF TFT素子の間及び/又は試験されたRF TFT素子の近くに配置することができる。
【0085】
DCオフセットを補正する光学的に透明な試験構造
1つの実施形態において、光学的に透明な試験構造は、フリッカを観測して、DCオフセットを決定してフリッカをゼロにするのに使用される。1つの実施形態において、これらの構造は、RF TFT素子アレイの外側に配置され、アパーチャセグメント内のRF TFTアパーチャアレイに見つけられるものと同じ又は非常に類似した等価回路を含む。アンテナセグメントは組み合わされて、アンテナアレイ全体が形成される。アンテナセグメントに関する更なる情報については、「Aperture Segmentation of a Cylindrical Feed Antenna(円筒状給電アンテナアパーチャセグメント化)」と題する米国特許第9,887,455号を参照されたい。1つの実施形態において、このような構造の光学特性は、補正値を推定して生成し、RF素子アレイにおけるDCオフセットを低減するのに使用される。
【0086】
1つの実施形態において、試験構造に対する電圧に関連するゲート0及びソース0線は、導波路領域(例えば、導波路内の追加の穴部が性能に影響を与えないところのアパーチャの
図23の導波路)の外側に追加される。
図11は、導波管領域の外側に配置された単一の試験構造に関する経路設定の1つの実施形態を示している。
図11を参照すると、試験構造に対する電圧に関するゲート0、ソース0、及びVcom経路設定が、導波管の領域の外側に示されている。
【0087】
図12は、試験構造の1つの実施形態を示している。1つの実施形態において、試験構造の等価回路は、アレイ内のRF素子の等価回路を有するように設計されている。具体的には、ドレインでのデバイスのキャパシタンスは、パッチ素子とのアイリス素子の重なりのキャパシタンスとマッチするようにサイズ設定される。1つの実施形態において、限定されるものではないが、酸化インジウムスズ(ITO)などの光学的に透明な導体層が、そのキャパシタの両側の電極として使用される。金属層における観測ウィンドウが、LCの光学応答のために生成される。
【0088】
図12を参照すると、TFTボックス1252は、例えば、限定されるものではないが、
図4のものなどのTFT及び蓄積キャパシタを含む。ゲート金属1251は、TFTのゲート電圧のためのものであり、ソース1254は、TFTのソース電圧のためのものであり、ドレイン1255は、試験アンテナ素子(例えば、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子)に結合されたTFTのドレイン電圧のためのものである。1つの実施形態において、ゲート及びソースは、
図11のゲート0及びソース0に結合される。また、TFT1252に結合されたVcomに関する経路設定1253が示されている。
【0089】
図示のように、アイリス金属内の穴部1258は、アイリス(スロット)基板上のITO1256、及び以下により詳細に説明されるパッチ及びアイリス基板などのパッチ基板上のITO1257を使用してフリッカを確認するためのウィンドウとして使用される。
【0090】
上述のように、試験構造のゲート0及びソース0線が更に、アパーチャの導波路領域の外側に追加される。この実施形態では、ソース線が、アパーチャセグメントの外側のソースドライバからセグメントの内側(例えば、内側は、LCが存在する境界シールの内側である)に横切るときに、ゲート0線は、ソース線の全てを横切る。
【0091】
別の実施形態では、ゲート0は、ソース線の全てを横切るように延びることができ、ソース0は、ゲート線の全てを横切るように延びることができる。光学的に透明な試験構造は、ゲート0がソース線を横切り、ソース0が、ゲート線を横切るところに形成することができる。
【0092】
図13は、光学的に透明な試験構造に対するゲート及びソース線経路設定の一例を示している。1つの実施形態において、経路設定は、導波路領域、及びTFT/ウィンドウ試験素子のファンアウト内に形成された空間の可能な限り外側に移動する。1つの実施形態において、
図12に示されているものと同様のTFT/ウィンドウ試験構造が、各ソース/ゲート0接合部に配置され、ここで、ソースは、ソース0、ソース1、...ソースN(最後の試験トランジスタのソース)であり得る。
【0093】
図13を参照すると、ゲートドライバ1301は、ゲート0からNに対するゲート電圧を供給し、ソースドライバ1302は、ソース0からNに対するソース電圧を供給し、ここで、Nは、それぞれゲート及びソースの最後を示す。1つの実施形態において、ゲートドライバ1301及びソースドライバ1302は、アンテナアパーチャセグメントの縁部に存在する。
【0094】
図14及び
図15は、それぞれアンテナアパーチャ用のパッチ及びアイリスを形成するパッチガラス(基板)及びアイリスガラス(基板)構造の例を示している。ガラス及びアイリス基板の例は、以下で更に詳しく説明される。
【0095】
図14を参照すると、アンテナアパーチャセグメント用のパッチガラス基板1470は、アンテナ素子アレイの境界を表す(境界1471の左側にアンテナ素子を有する)アンテナ素子アパーチャ境界1471を含む。境界1471の右側には、関連するTFT(及び蓄積キャパシタ)、ソース、ゲート、及びそれらの構造に対するVcom経路設定を有する光学的に透明な試験構造(例えば、ITO穴部、又はウィンドウ)が存在する。
【0096】
図15を参照すると、パッチガラス基板上のITOドレインに対応するアイリス金属層に穴部1502のリングを有するアイリスガラス基板1501が示されている。アイリス金属層内の開口部の上のITOパッド1503は、パッチガラス基板上のITOに対応し、ITOは、Vcomに接続される。
【0097】
1つの実施形態において、これらの構造において、RF素子波形におけるDCオフセットは、光学的にゼロにされ、結果として生じる「ゼロ」値は、Vcomを設定して、アレイ内のRF素子におけるDCオフセットを補正するのに使用される。
【0098】
DCオフセットに関してアパーチャ駆動を補正するのに使用されることに加えて、1つの実施形態において、これらの構造はまた、光学機構を介してアレイの先頭でソースドライバ及びゲートドライバの機能を試験するためにも使用される。
【0099】
同様に、1つの実施形態において、ソース0は、ゲート線がセグメントに入るときに、ゲート線を横切るように経路設定される。
【0100】
1つの実施形態において、ゲート経路設定が移動し、空間が生成されて、TFT/ウィンドウ試験素子が、各ゲート/ソース0接合部に配置される。
図16及び
図17は、それぞれ、パッチガラス基板及びアイリスガラス基板上のこの経路設定の例を示している。
【0101】
図16を参照すると、パッチガラス基板1601は、アンテナアパーチャ境界1603を有するアンテナ素子アパーチャ1602を含む。そのTFT(蓄積キャパシタを有する)及びITO穴部(ウィンドウ)を有する試験構造1604は、ゲートドライバ1605及びソースドライバ1606に結合される。ゲート及びVcom経路設定は、試験構造1604からアンテナ素子アパーチャ1602に延びる。
【0102】
図17を参照すると、アイリス金属開口部上にITOパッド1704を有するアイリス金属層(パッチガラス基板上のITOドレインに対応)内にウィンドウ(開口部)のリング1703を有するアイリスガラス基板1701が示されている。パッド1704は、Vcomに接続される。
【0103】
1つの実施形態において、RF素子波形におけるDCオフセットは、これらの構造において光学的にゼロにされ、結果として生じる「ゼロ」値は、Vcomを設定して、アレイ内のRF素子におけるDCオフセットを補正するのに使用される。
【0104】
DCオフセットに関してアパーチャ駆動を補正するのに使用されることに加えて、1つの実施形態において、これらの構造はまた、光学機構によってアレイの先頭でソースドライバ及びゲートドライバの機能を試験するためにも使用される。
【0105】
光学的に透明な試験構造は、アンテナ素子アレイの外側に限定されるものではない点に留意されたい。一実施形態では、TFT/光学ウィンドウ試験素子は、アンテナアレイ内の幾つかのRF TFT素子と置き換わる。ビームを形成するホログラフィック性により、幾つかの少数の素子が欠落したアパーチャは、完全に機能するRF素子アレイを有するアンテナと比較して無視できる程度の性能低下を伴うビームを形成することができる。1つの実施形態において、特定の位置にあるRF素子は、TFT/ウィンドウ試験素子に置き換えられる。別の実施形態では、これらのTFT/ウィンドウ試験素子を光学的にゼロにするのに使用される電圧値は、RF素子アレイに関する補正値を補間するのに使用される補正値のマッピングを生成するのに使用される。1つの実施形態において、このマッピングは、ルックアップテーブルに格納される。
【0106】
別の実施形態では、これらのTFT/ウィンドウ試験素子は、それらの幾何学的位置に従ってRF素子アレイに配置されないが、アレイの等価回路としてのそれらの位置に従って配置される。1つの実施形態において、例えばフレーム反転において、最初にスキャンされた及び最後にスキャンされた「最初」及び「最後」の素子は、同じ時間長にわたってTFTにわたって同じバイアスを有しない。例えば、TFTに対するRC時定数は、同じでない。一部の場所は、非常に汚染されている場合がある(開口部をふさぐ)。従って、これらの場所では、DCオフセットが異なる場合がある。この場合、配置位置は、幾何学的な視点でなく、電子的な視点からの位置である。この位置は、最初のソース線及び最初のゲート線の素子、最初のソース線及び最後のゲート線の素子、最後のソース及び最初のゲートの素子、最後のソース及び最後のゲートの素子などを意味することができる。
【0107】
更に、フリッカに関する上記の試験は、透過型LCモードに関して説明されているが、本明細書で説明する技法は、このようなモードに限定されるものではない。別の実施形態では、LC光学応答は、透過型LCモードの代わりに反射型LCモードを使用して観測される。
【0108】
アンテナ実施形態の例
上述したRFリップル補正、DCオフセット補正、及び電圧調整技法は、限定されるものではないが、平面アンテナを含む幾つかのアンテナ実施形態で使用することができる。このような平面アンテナの実施形態が開示される。平面アンテナは、アンテナアパーチャ上にアンテナ素子の1又は2以上のアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナ素子は、液晶セルを備える。1つの実施形態において、平面アンテナは、行及び列状に配置されていないアンテナ素子の各々を一意的にアドレス指定してこれらのアンテナ素子を駆動するマトリクス駆動回路を含む円筒状給電アンテナである。1つの実施形態において、素子は、リング状に配置される。
【0109】
1つの実施形態において、アンテナ素子の1又は2以上のアレイを有するアンテナアパーチャは、共に結合された複数のセグメントから構成される。セグメントの組み合わせは、共に結合された場合に、アンテナ素子の閉じた同心リングを形成する。1つの実施形態において、同心リングは、アンテナ給電部に対して同心である。
【0110】
アンテナシステムの例
1つの実施形態において、平面アンテナは、メタマテリアルアンテナシステムの一部である。通信衛星地上局用のメタマテリアルアンテナシステムの実施形態について説明する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、民間商用衛星通信用のKa帯域周波数又はKu帯域周波数の何れかを使用して動作するモバイルプラットフォーム(例えば、航空、海上、陸上、その他)上で動作する衛星地上局(ES)のコンポーネント又はサブシステムである。アンテナシステムの実施形態はまた、モバイルプラットフォーム上ではない地上局(例えば、固定地上局又は可搬地上局)で使用することもできる点に留意されたい。
【0111】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、表面散乱メタマテリアル技術を使用して、別個のアンテナを介して送受信ビームを形成して誘導する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、ビームを電気的に形成して誘導するのにデジタル信号処理を使用するアンテナシステム(フェーズドアレイアンテナなど)とは対照的に、アナログシステムである。
【0112】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、3つの機能的サブシステム、すなわち、(1)円筒波給電アーキテクチャからなる導波構造、(2)アンテナ素子の一部である波散乱メタマテリアル単位セルのアレイ、及び(3)ホログラフィ原理を使用してメタマテリアル散乱素子からの調整可能な放射場(ビーム)の形成を命令する制御構造から構成される。
【0113】
アンテナ素子
図18は、円筒状給電ホログラフィック放射状アパーチャアンテナの1つの実施形態の概略図を示している。
図18を参照すると、アンテナアパーチャは、円筒状給電アンテナの入力給電部652の周りに同心リング状に配置されたアンテナ素子653の1又は2以上のアレイ654を有する。1つの実施形態において、アンテナ素子653は、RFエネルギーを放射する無線周波数(RF)共振器である。1つの実施形態において、アンテナ素子503は、アンテナアパーチャの全表面上に交互配置され分散されるRxアイリス及びTxアイリスの両方を備える。このようなアンテナ素子の実施例は、以下に更に詳細に説明される。本明細書で説明するRF共振器は、円筒状給電部を含まないアンテナで使用できる点に留意されたい。
【0114】
1つの実施形態において、アンテナは、入力給電部652を介して円筒波給電を供給するのに使用される同軸給電部を含む。1つの実施形態において、円筒波給電アーキテクチャが、給電点から円筒状に外向きに広がる励起を中心点からアンテナに供給する。すなわち、円筒状給電アンテナは、外向きに進む同心状給電波を生成する。それでも、円筒状給電部の周りの円筒状給電アンテナの形状は、円形、正方形、又は何らかの形状とすることができる。別の実施形態では、円筒状給電アンテナは、内向きに進む給電波を生成する。このような場合には、円形構造から生じる給電波が、最も自然である。
【0115】
1つの実施形態において、アンテナ素子653は、アイリスを備え、
図18のアパーチャアンテナは、同調可能液晶(LC)材料を通ってアイリスを放射させるための円筒状給電波からの励起を使用することによって形成される主ビームを生成するのに使用される。1つの実施形態において、アンテナは、所望の走査角で水平又は垂直に偏極した電界を放射するように励起することができる。
【0116】
1つの実施形態において、アンテナ素子は、パッチアンテナのグループを備える。このパッチアンテナのグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを備える。1つの実施形態において、アンテナシステムにおける各散乱素子は、下部導体、誘電体基板、及び上部導体からなる単位セルの一部であり、上部導体は、この上部導体にエッチング又は堆積された相補的電気誘導型容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んでいる。当業者には理解されるように、液晶とは対照的に、CELCの関連でのLCは、インダクタンス・キャパシタンスを指す。
【0117】
1つの実施形態において、液晶(LC)が、散乱素子の周りのギャップに配置される。このLCは、上述の直接駆動実施形態によって駆動される。1つの実施形態において、液晶は、各単位セル内に封入され、スロットに関連する下部導体をそのパッチに関連する上部導体から分離する。液晶は、この液晶を含む分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(及びひいては誘電率)は、液晶両端間のバイアス電圧を調節することによって制御することができる。1つの実施形態において、この特性を使用して、液晶は、誘導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチを統合する。スイッチオンになると、CELCは、電気的に小さいダイポールアンテナのような電磁波を放射する。本明細書での教示は、エネルギー伝達に関して2値的に動作する液晶を有することに限定されない点に留意されたい。
【0118】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの給電幾何形状は、アンテナ素子を波動給電の波動ベクトルに対して45度(45°)の角度で位置決めすることを可能にする。他の位置(例えば、40°の角度)が使用できる点に留意されたい。素子のこの位置は、素子によって受信されるか又は素子から送信/放射される自由空間波の制御を可能にする。1つの実施形態において、アンテナ素子は、アンテナの作動周波数の自由空間波長より短い素子間隔で配列される。例えば、1波長につき4つの散乱素子が存在する場合には、30GHz送信アンテナ内の素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の4分の1)となる。
【0119】
1つの実施形態において、2組の素子は、互いに垂直であり、同じ同調状態に制御される場合に、等しい振幅の励起を同時に有する。給電波の励起に対してこれらの素子をプラスマイナス45度回転させることにより、両方の所望の機能が同時に達成される。一方の組を0度回転させ、他方を90度回転させることによって、垂直目標は達成されるが、等振幅励起目標は達成されない。0度と90度を使用して、2つの側部から単一構造のアンテナ素子アレイを給電する場合に、分離が達成できる点に留意されたい。
【0120】
各単位セルから放射されるパワーの量は、コントローラを使用してパッチに電圧(液晶チャネルの両端の電位)を印加することによって制御される。各パッチに対するトレースは、パッチアンテナに電圧を供給するのに使用される。この電圧は、キャパシタンス及び従って個々の素子の共振周波数を同調又は離調させて、ビーム形成を達成するのに使用される。必要とされる電圧は、使用される液晶混合物に依存する。液晶混合物の電圧同調特性は、液晶が電圧の影響を受け始める閾値電圧と、それを超える電圧の増加が液晶の大きな同調をもたらさない飽和電圧とによって主として説明される。これら2つの特性パラメータは、液晶混合物が異なると変化する場合がある。
【0121】
1つの実施形態において、上述のように、マトリクス駆動を使用してパッチに電圧を印加して、各セルが、各セルに対して別個の接続を有することなく他の全てのセルから切り離して駆動されるようになる(直接駆動)。素子が高密度であるために、マトリクス駆動は、各セルを個別にアドレス指定するのに効率的な方法である。
【0122】
1つの実施形態において、アンテナシステム用の制御構造は、2つの主要な構成要素を有し、すなわち、アンテナシステム用の駆動電子機器を含むアンテナアレイコントローラは、波散乱構造の下方にあり、その一方、マトリクス駆動スイッチングアレイは、放射を妨害しないように放射RFアレイ全体にわたって散在している。1つの実施形態において、アンテナシステム用の駆動電子機器は、各散乱素子へのACバイアス信号の振幅又はデューティサイクルを調節することによって、この散乱素子に対するバイアス電圧を調節する市販のテレビジョン装置で使用される市販の既製LCD制御装置を備える。
【0123】
1つの実施形態において、アンテナアレイコントローラはまた、ソフトウェアを実行するマイクロプロセッサを包含する。制御構造はまた、プロセッサに位置及び方位情報を提供するセンサ(例えば、GPS受信機、3軸コンパス、3軸加速度計、3軸ジャイロ、3軸磁力計など)を組み込むこともできる。位置及び方位情報は、地上局内の他のシステムによってプロセッサに提供することができ、及び/又はアンテナシステムの一部でない場合がある。
【0124】
より具体的には、アンテナアレイコントローラは、作動周波数でどの素子がオフにされてどの素子がオンにされるか、並びにどの位相及び振幅のレベルにするかを制御する。素子は、電圧印加によって周波数作動に対して選択的に離調される。
【0125】
送信に関して、コントローラは、RFパッチに一連の電圧信号を供給して変調パターン又は制御パターンを生成する。制御パターンは、素子を異なる状態に変化させる。1つの実施形態において、多状態制御が使用され、そこでは、方形波(すなわち、正弦波グレイシェード変調パターン)とは対照的に、様々な素子が様々なレベルにオン及びオフにされ、更に正弦波制御パターンが近似される。1つの実施形態において、放射する素子もあれば放射しない素子もあるのではなく、一部の素子が他の素子よりも強く放射する。可変放射は、特定の電圧レベルを印加することによって達成され、これによって、液晶の誘電率が様々な量に調節され、これによって、素子を可変的に離調させて一部の素子を他の素子よりも多く放射させる。
【0126】
素子のメタマテリアルアレイによる集束ビームの生成は、建設的干渉及び相殺的干渉の現象によって説明することができる。個々の電磁波は、自由空間で遭遇するときに同じ位相を有する場合に加え合わされ(建設的干渉)、自由空間で遭遇するときに逆位相である場合に互いに打ち消し合う(相殺的干渉)。各連続するスロットが誘導波の励起点から異なる距離に位置決めされるように、スロット付きアンテナ内のスロットが位置決めされた場合に、その素子からの散乱波は、前のスロットの散乱波と異なる位相を有することになる。スロットが、誘導波長の4分の1離間している場合に、各スロットは、前のスロットから4分の1の位相遅延で波を散乱させることになる。
【0127】
このアレイを使用すると、生成できる建設的干渉及び相殺的干渉のパターン数が増加することができるので、ビームは、ホログラフィの原理を使用して、理論的にはアンテナアレイのボアサイトからプラスマイナス90度(90°)の任意の方向に向くことができる。従って、どのメタマテリアル単位セルがオン又はオフにされるかを制御することにより(すなわち、どのセルがオンにされてどのセルがオフにされるかについてのパターンを変更することにより)、建設的干渉及び相殺的干渉の異なるパターンが生成でき、アンテナは、主ビームの方向を変化させることができる。単位セルをオン及びオフにするのに必要な時間は、1つの位置から別の位置にビームを切り換えることができる速度によって定まる。
【0128】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、アップリンクアンテナ用の1つの誘導可能ビームと、ダウンリンクアンテナ用の1つの誘導可能ビームとを生成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、メタマテリアル技術を使用してビームを受信し、衛星からの信号を復号し、衛星に向けられる送信ビームを形成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、ビームを電気的に形成して誘導するのにデジタル信号処理を使用するアンテナシステム(フェーズドアレイアンテナなど)とは対照的に、アナログシステムである。1つの実施形態において、アンテナシステムは、特に従来型衛星ディッシュベースの受信機と比較した場合に、平面的で比較的薄型の「面」アンテナとみなされる。
【0129】
図19は、グランドプレーンと再構成可能共振器層とを含む1列のアンテナ素子の斜視図を示している。再構成可能共振器層1230は、同調可能スロット1210のアレイを含む。同調可能スロット1210のアレイは、アンテナを所望の方向に向けるように構成することができる。同調可能スロットの各々は、液晶両端間の電圧を変化させることによって同調/調節することができる。
【0130】
制御モジュール1280は、再構成可能共振器層1230に結合されて、
図20での液晶両端間の電圧を変化させることにより同調可能スロット1210のアレイを変調する。制御モジュール1280は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、マイクロプロセッサ、コントローラ、システム・オン・チップ(SoC)、又は他の処理論理回路を含むことができる。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、同調可能スロット1210のアレイを駆動するために論理回路(例えば、マルチプレクサ)を含む。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、同調可能スロット1210のアレイ上に駆動されるホログラフィック回折パターンに関する仕様を含むデータを受信する。ホログラフィック回折パターンは、この回折パターンがダウンリンクビーム(及び、アンテナシステムが送信を実行する場合には、アップリンクビーム)を通信に適した方向に誘導するように、アンテナと衛星との間の空間的関係に応じて生成することができる。各図には描かれていないが、制御モジュール1280に類似する制御モジュールが、本開示の図にて記載される同調可能スロットの各アレイを駆動することができる。
【0131】
更に、RF基準ビームがRFホログラフィック回折パターンに遭遇するときに所望のRFビームを生成することができる類似の技術を使用して、無線周波数(「RF」)ホログラフィが可能である。衛星通信の場合に、基準ビームは、給電波1205(幾つかの実施形態では、約20GHz)などの給電波の形態である。給電波を放射ビームに変換するために(送信目的又は受信目的の何れかで)、所望のRFビーム(目標ビーム)と給電波(基準ビーム)との間での干渉パターンが計算される。干渉パターンは、給電波が所望のRFビーム(所望の形状及び方向を有する)に「誘導される」ように、回折パターンとして同調可能スロット1210のアレイ上に駆動される。言い換えれば、ホログラフィック回折パターンに遭遇する給電波は、目標ビームを「再構成」し、このビームは、通信システムの設計要件に従って形成される。ホログラフィック回折パターンは、各素子の励起を包含し、導波路内の波動方程式としてのwinと、外向き波に関する波動方程式としてのwoutとを用いて、whologram=win*woutによって計算される。
【0132】
図20は、同調可能共振器/スロット1210の1つの実施形態を示している。同調可能スロット1210は、アイリス/スロット1212と、放射パッチ1211と、アイリス1212とパッチ1211との間に配置された液晶1213とを含む。1つの実施形態において、放射パッチ1211は、アイリス1212と同じ場所に配置される。
【0133】
図21は、物理的アンテナアパーチャの1つの実施形態の断面図を示している。アンテナアパーチャは、グランドプレーン1245と、再構成可能共振器層1230に含まれるアイリス層1233内の金属層1236とを含む。1つの実施形態において、
図21のアンテナアパーチャは、
図20の複数の同調可能共振器/スロット1210を含む。アイリス/スロット1212は、金属層1236内の開口部によって規定される。
図20の給電波1205などの給電波は、衛星通信チャネルと適合性のあるマイクロ波周波数を有することができる。給電波は、グランドプレーン1245と共振器層1230との間を伝播する。
【0134】
再構成可能共振器層1230はまた、ガスケット層1232及びパッチ層1231を含む。ガスケット層1232は、パッチ層1231とアイリス層1233との間に配置される。1つの実施形態において、スペーサは、ガスケット層1232に置き換えることができる点に留意されたい。1つの実施形態において、アイリス層1233は、金属層1236として銅層を含むプリント回路基板(PCB)である。1つの実施形態において、アイリス層1233はガラスである。アイリス層1233は、他のタイプの基板であってもよい。
【0135】
銅層において開口部をエッチングして、スロット1212を形成することができる。1つの実施形態において、アイリス層1233は、導電性接合層によって
図21の別の構造(例えば、導波路)に導電的に結合される。1つの実施形態において、アイリス層は、導電性接合層によって導電的に結合されず、代わりに非導電性接合層と接合される点に留意されたい。
【0136】
パッチ層1231はまた、放射パッチ1211として金属を含むPCBとすることもできる。1つの実施形態において、ガスケット層1232は、金属層1236とパッチ1211との間の寸法を規定する機械的離隔部(スタンドオフ)を提供するスペーサ1239を含む。1つの実施形態において、スペーサは75ミクロンであるが、他のサイズ(例えば、3mmから200mm)を使用することができる。上述のように、1つの実施形態において、
図21のアンテナアパーチャは、
図20のパッチ1211、液晶1213A、及びアイリス1212を含む、同調可能共振器/スロット1210などの複数の同調可能共振器/スロットを備える。液晶1213Aのためのチャンバは、スペーサ1239、アイリス層1233、及び金属層1236によって規定される。チャンバが液晶で満たされた場合に、パッチ層1231は、共振器層1230内に液晶をシールするようにスペーサ1239上に積層することができる。
【0137】
パッチ層1231とアイリス層1233との間の電圧を変調して、パッチとスロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)間のギャップ内の液晶を同調させることができる。液晶1213の両端間電圧を調節することにより、スロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)のキャパシタンスが変化する。従って、スロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)のリアクタンスは、このキャパシタンスを変化させることにより変化することができる。スロット1210の共振周波数はまた、次式:
【数1】
に従って変化し、ここで、fは、スロット1210の共振周波数であり、L及びCは、それぞれスロット1210のインダクタンス及びキャパシタンスである。スロット1210の共振周波数は、導波路を伝播する給電波1205から放射されるエネルギーに影響を与える。一例として、給電波1205が20GHzである場合に、スロット1210の共振周波数は、17GHzに調節されて(キャパシタンスを変化させることにより)、スロット1210が、給電波1205からのエネルギーを実質的に結合しないようにすることができる。或いは、スロット1210の共振周波数は、スロット1210が給電波1205からのエネルギーを結合してこのエネルギーを自由空間に放射するように、20GHzに調節することができる。所与の例は、2値的である(完全に放射するか又は全く放射しない)が、スロット1210のリアクタンス及び従ってこのスロットの共振周波数の完全グレイスケール制御は、多値範囲にわたって電圧を変化させることにより可能である。従って、各スロット1210から放射されるエネルギーが精密に制御されて、同調可能スロットのアレイが、精緻なホログラフィック回折パターンを形成できるようになる。
【0138】
1つの実施形態において、一列に並んだ同調可能スロットは、互いからλ/5だけ離間している。他の間隔を使用することもできる。1つの実施形態において、一列に並んだ各同調可能スロットは、隣接する列内の最も近い同調可能スロットからλ/2だけ離間しており、従って、異なる列にあって向きが共通の同調可能スロットは、λ/4だけ離間しているが、他の間隔が可能である(例えば、λ/5、λ/6.3)。別の実施形態では、一列に並んだ各同調可能スロットは、隣接する列内の最も近い同調可能スロットからλ/3だけ離間している。
【0139】
実施形態は、2014年11月21日出願の「Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna(誘導可能円筒給電式ホログラフィックアンテナからの動的偏波及び結合制御)」と題する米国特許出願第14/550,178号明細書、及び2015年1月30日出願の「Ridged Waveguide Feed Structures for Reconfigurable Antenna(再構成可能アンテナのためのリッジ型導波路給電構造)」と題する米国特許出願第14/610,502号明細書に説明されているような再構成可能メタマテリアル技術を使用する。
【0140】
図22Aから22Dは、スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示している。アンテナアレイは、
図18に示されている例示的なリングのようにリング状に位置決めされたアンテナ素子を含む。この実施例において、アンテナアレイは、2つの異なるタイプの周波数帯域に使用される2つの異なるタイプのアンテナ素子を有する点に留意されたい。
【0141】
図22Aは、スロットに対応する位置を有する第1のアイリス基板層の一部分を示している。
図22Aを参照すると、円は、アイリス基板の底部側におけるメタライゼーション内の開放エリア/スロットであり、給電部(給電波)との素子の結合を制御するためのものである。この層は、任意選択の層であり、全ての設計で使用されるとは限らない点に留意されたい。
図22Bは、スロットを包含する第2のアイリス基板層の一部分を示している。
図22Cは、第2のアイリス基板層の一部分の上のパッチを示している。
図22Dは、スロット付きアレイの一部分の上面図を示している。
【0142】
図23は、円筒状給電アンテナ構造の1つの実施形態の側面図を示している。このアンテナは、二重層給電構造(すなわち、2つの給電構造層)を使用して内向き進行波を生成する。1つの実施形態において、アンテナは、円形の外形を含むが、このことは、必須ではない。すなわち、非円形内向き進行構造を使用することができる。1つの実施形態において、
図23におけるアンテナ構造は、2014年11月21日出願の「Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna(誘導可能円筒給電式ホログラフィックアンテナからの動的偏波及び結合制御)」と題する米国特許公開第2015/0236412号明細書に記載のものなどの同軸給電部を含む。
【0143】
図23を参照すると、同軸ピン1601は、アンテナの下層の場を励起するのに使用される。1つの実施形態において、同軸ピン1601は、容易に入手できる50Ω同軸ピンである。同軸ピン1601は、導電性グランドプレーン1602であるアンテナ構造の底部に結合(例えば、ボルト締め)される。
【0144】
内部導体である浸入型導体1603は、導電性グランドプレーン1602から切り離される。1つの実施形態において、導電性グランドプレーン1602及び浸入型導体1603は、互いに平行である。1つの実施形態において、グランドプレーン1602と浸入型導体1603との間の距離は、0.1インチから0.15インチである。別の実施形態では、この距離は、λ/2とすることができ、ここで、λは、作動周波数での進行波の波長である。
【0145】
グランドプレーン1602は、スペーサ1604を介して浸入型導体1603から切り離される。1つの実施形態において、スペーサ1604は、発泡体又は空気状スペーサである。1つの実施形態において、スペーサ1604は、プラスチックスペーサを含む。
【0146】
誘電体層1605が、浸入型導体1603の上部に存在する。1つの実施形態において、誘電体層1605は、プラスチックである。誘電体層1605の目的は、自由空間速度に対して進行波を減速させることである。1つの実施形態において、誘電体層1605は、自由空間に対して30%だけ進行波を減速させる。1つの実施形態において、ビーム形成に適した屈折率の範囲は、1.2から1.8であり、ここで、自由空間は、定義により1に等しい屈折率を有する。例えばプラスチックなどの他の誘電体スペーサ材料が、この効果を達成するのに使用できる。プラスチック以外の材料は、これらの材料が所望の波減速効果を達成する限り、使用できる点に留意されたい。代替的に、例えば機械加工すること又はリソグラフィによって規定することができる周期的サブ波長金属構造などの分散構造を有する材料は、誘電体層1605として使用することができる。
【0147】
RFアレイ1606は、誘電体1605の上部に存在する。1つの実施形態において、浸入型導体1603とRFアレイ1606との間の距離は、0.1インチから0.15インチである。別の実施形態では、この距離は、λeff/2とすることができ、ここで、λeffは、設計周波数での媒体中の有効波長である。
【0148】
アンテナは、側部1607及び1608を含む。側部1607及び1608は、同軸ピン1601から供給される進行波を、反射によって浸入型導体1603の下の領域(スペーサ層)から浸入型導体1603の上の領域(誘電体層)に伝播させるように角度付けされる。1つの実施形態において、側部1607及び1608の角度は、45度の角度にある。代替実施形態では、側部1607及び1608は、反射を達成するための連続した半径に置き換えることができる。
図23は、45度の角度を有して角度付けした側部を示しているが、その他の角度は、下層給電部から上層給電部への信号伝達を達成して使用することができる。すなわち、下側給電部内の有効波長が、一般に、上側給電部内のものと異なることを考慮すると、理想的な45度の角度からの何らかの逸脱は、下側給電層から上側給電層への伝達を補助するのに使用することができる。例えば、別の実施形態では、45度の角度は、単一の段部に置き換えられる。アンテナの一端上の段部は、誘電体層、浸入型導体、及びスペーサ層の周りに延びる。同様の2つの段部が、これらの層の他端に存在する。
【0149】
動作中、給電波が、同軸ピン1601から供給される場合には、この給電波は、グランドプレーン1602と浸入型導体1603との間の領域で同軸ピン1601から同心状外向きに進む。同心状外向き波は、側部1607及び1608で反射して、浸入型導体1603とRFアレイ1606との間の領域で内向きに進む。円形外周の縁部からの反射は、この波を同相のままにする(すなわち、この反射は、同相反射である)。進行波は、誘電体層1605によって減速する。この時点で、進行波は、RFアレイ1606内の素子との相互作用及び励振を開始して、所望の散乱が得られる。
【0150】
進行波を終了させるための終端部1609が、アンテナの幾何学的中心でアンテナに含まれる。1つの実施形態において、終端部1609は、ピン終端(例えば、50Ωピン)を備える。別の実施形態では、終端部1609は、未使用エネルギーを終端させて、この未使用エネルギーがアンテナの給電構造を通って反射して戻ることを防止するRF吸収体を備える。この終端部は、RFアレイ1606の上部で使用することができる。
【0151】
図24は、アンテナシステムの別の実施形態を外向き波と共に示している。
図24を参照すると、2つのグランドプレーン1610及び1611は、これらのグランドプレーンの間にある誘電体層1612(例えば、プラスチック層など)と互いに実質的に平行であり得る。RF吸収体1619(例えば、抵抗器)は、2つのグランドプレーン1610及び1611を一緒に結合する。同軸ピン1615(例えば、50Ω)は、アンテナを給電する。RFアレイ1616は、誘電体層1612及びグランドプレーン1610の上部に存在する。
【0152】
動作中、給電波は、同軸ピン1615を介して給電され、同心円状外向きに進んでRFアレイ1616の素子と相互作用する。
【0153】
図23及び24の両アンテナにおける円筒形給電は、アンテナのサービス角度を改善する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、プラスマイナス45度の方位角(±45°Az)及びプラスマイナス25度の仰角(±25°El)からなるサービス角度の代わりに、ボアサイトから全方向に75度(75°)のサービス角度を有する。多数の個々の放射体から構成される何らかのビーム形成アンテナの場合と同様に、全体的なアンテナ利得は、それ自体が角度に依存するものである構成素子の利得に依存する。一般的な放射素子が使用される場合には、全体的なアンテナ利得は、通常、ビームがボアサイトから離れて向けられるにつれて減少する。ボアサイトから75度外れたところでは、約6dBの有意な利得低下が予期される。
【0154】
円筒状給電部を有するアンテナの実施形態は、1又は2以上の問題を解決する。これらは、統合分割器ネットワークを用いて給電されるアンテナと比較して給電構造を非常に簡単なものにし、従って、全体で必要とされるアンテナ及びアンテナ給電量を低減することと、より粗い制御(単純なバイナリ制御にまで拡張すること)で高ビーム性能を維持することによって製造誤差及び制御誤差に対する感度を低下させることと、円筒状配向給電波が遠距離場において空間的に多様なサイドローブをもたらすので、直線的給電部と比較してより好都合なサイドローブパターンを与えることと、偏波器を必要とせずに、左旋円偏波、右旋円偏波及び直線偏波を可能にすることを含めて偏波が動的であることを可能にすることと、を含む。
【0155】
波散乱素子のアレイ
図23のRFアレイ1606及び
図24のRFアレイ1616は、放射体として作用するパッチアンテナ(例えば、表面散乱体)のグループを含む波散乱サブシステムを備える。このパッチアンテナグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを備える。
【0156】
1つの実施形態において、アンテナシステムにおける各散乱素子は、下部導体、誘電体基板、及び上部導体からなる単位セルの一部であり、上部導体は、この上部導体にエッチング又は堆積された相補的電気誘導型容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んでいる。
【0157】
1つの実施形態において、液晶(LC)が、散乱素子の周りのギャップに注入される。液晶は、各単位セル内に封入され、スロットに関連する下部導体をそのパッチに関連する上部導体から分離する。液晶は、この液晶を含む分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(及びひいては誘電率)は、液晶両端間のバイアス電圧を調節することによって制御することができる。この特性を使用して、液晶は、誘導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチとして作用する。スイッチオンになると、CELCは、電気的に小さいダイポールアンテナのような電磁波を放射する。
【0158】
液晶の厚さを制御することによって、ビームスイッチング速度が増加する。下部導体と上部導体との間のギャップ(液晶の厚さ)の50パーセント(50%)の減少は、4倍の速度増加をもたらす。別の実施形態では、液晶の厚さは、約14ミリ秒(14ms)というビームスイッチング速度をもたらす。1つの実施形態において、液晶は、7ミリ秒(7ms)の要件を満たすことができるように応答性を高めるための当技術分野において公知の方法でドープされる。
【0159】
CELC素子は、CELC素子の平面に平行でCELCギャップ補完物に垂直に印加される磁場に応答する。電圧が、メタマテリアル散乱単位セル内の液晶に印加された場合に、誘導波の磁場成分は、CELCの磁気励起を誘導し、その結果、誘導波と同じ周波数の電磁波が生成される。
【0160】
単一のCELCによって生成される電磁波の位相は、誘導波ベクトル上のCELCの位置によって選択することができる。各セルは、CELCと平行な誘導波と同相の波を生成する。CELCは、波長よりも小さいので、出力波は、誘導波がCELCの下を通過するときのこの誘導波の位相と同じ位相を有する。
【0161】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの円筒状給電幾何形状は、CELC素子を波動給電の波動ベクトルに対して45度(45°)の角度で位置決めすることを可能にする。この素子位置は、この素子から生成される又はこの素子によって受信される自由空間波の偏波の制御を可能にする。1つの実施形態において、CELCは、アンテナの作動周波数の自由空間波長より短い素子間隔で配列される。例えば、1波長につき4つの散乱素子が存在する場合には、30GHz送信アンテナ内の素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の4分の1)となる。
【0162】
1つの実施形態において、CELCは、スロットの上に並置されたパッチを、それら両者の間に液晶を有して含むパッチアンテナを用いて実施される。この点において、メタマテリアルアンテナは、スロット付き(散乱)導波路のように作用する。スロット付き導波路に関して、出力波の位相は、誘導波に対するスロットの位置に依存する。
【0163】
セル配置
アンテナ素子は、系統的マトリクス駆動回路が可能となるように、円筒状給電アンテナアパーチャ)上に配置される。セルの配置は、マトリクス駆動のためのトランジスタの配置を含む。
図25は、アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の1つの実施形態を示している。
図25を参照すると、行コントローラ1701は、行選択信号Row1(行1)及びRow2(行2)それぞれを介してトランジスタ1711及び1712に結合され、列コントローラ1702は、列選択信号Column1を介してトランジスタ1711及び1712に結合される。また、トランジスタ1711は、パッチへの接続1731を介してアンテナ素子1721に結合され、トランジスタ1712は、パッチへの接続1732を介してアンテナ素子1722に結合される。
【0164】
単位セルが非正規グリッド内に配置されて円筒状給電アンテナ上でマトリクス駆動回路を実現する最初の手法では、2つのステップが実行される。第1のステップでは、セルが同心リング上に配置され、セルの各々は、セルの傍らに配置されたトランジスタ(例えば、TFT)に接続され、このトランジスタが、各セルを別々に駆動するスイッチとして機能する。第2のステップでは、マトリクス駆動回路は、このマトリクス駆動手法が必要とするときにあらゆるトランジスタを一意のアドレスで接続するように構築される。マトリクス駆動回路は、行及び列のトレースによって構築される(LCDと同様)が、セルは、リング上に配置されるので、各トランジスタに一意のアドレスを割り当てる系統的方法は存在しない。このマッピング問題は、全てのトランジスタをカバーするために極めて複雑な回路を生じさせ、経路設定を行う物理的トレースの数を著しく増加させることになる。セルが高密度であるので、これらのトレースは、カップリング効果に起因してアンテナのRF性能を妨げる。また、トレースが複雑であり実装密度が高いことに起因して、トレースの経路設定は、商業的に入手可能なレイアウトツールによって行うことができない。
【0165】
1つの実施形態において、マトリクス駆動回路は、セル及びトランジスタが配置される前に事前に規定される。このことにより、各々が一意のアドレスを有する全てのセルを駆動するのに必要な最小数のトレースが確保される。この方式は、駆動回路の複雑性を軽減して経路設定を簡素化し、これによって、アンテナのRF性能が高まる。
【0166】
より具体的には、1つの手法では、第1のステップにおいて、セルは、各セルの一意のアドレスを表す行及び列から構成された正方形グリッド上に配置される。第2のステップにおいて、セルは、第1のステップで規定さられたセルのアドレス並びに行及び列への接続性が維持されながら、グループ化されて同心円に変換される。この変換の目的は、セルをリング上に配置するだけでなく、アパーチャ全体にわたってセル間の距離及びリング間の距離を一定に保つことである。この目的を達成するために、セルをグループ化する幾つかの方法が存在する。
【0167】
1つの実施形態において、TFTパッケージは、マトリクス駆動における配置及び一意のアドレス指定を可能にするのに使用される。
図26は、TFTパッケージの1つの実施形態を示している。
図26を参照すると、TFT及び蓄積キャパシタ1803が、入力ポート及び出力ポートと共に示されている。トレース1801に接続された2つの入力ポート及びトレース1802に接続された2つの出力ポートが存在し、行及び列を使用してTFTが共に接続される。1つの実施形態において、行のトレース及び列のトレースは、90°の角度で交差して、行のトレースと列のトレースとの間の結合が、抑えられ、場合によっては最小になる。1つの実施形態において、行のトレース及び列のトレースは、異なる層上に存在する。
【0168】
全二重通信システムの例
別の実施形態では、複合アンテナアパーチャは、全二重通信システムで使用される。
図27は、同時送信及び受信経路を有する通信システムの一実施形態のブロック図である。1つの送信経路及び1つの受信経路のみが示されているが、通信システムは、1つより多い送信経路及び/又は1つより多い受信経路を含むことができる。
【0169】
図27を参照すると、アンテナ1401は、上述のように異なる周波数で同時に送信及び受信するように独立して動作可能な2つの空間的に交互配置されたアンテナアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナ1401は、ダイプレクサ1445に結合される。この結合は、1又は2以上の給電ネットワークによるものとすることができる。1つの実施形態において、放射状給電アンテナの場合に、ダイプレクサ1445は、2つの信号を組み合わせるものであり、アンテナ1401とダイプレクサ1445の間の接続は、両方の周波数を搬送できる単一の広帯域給電ネットワークである。
【0170】
ダイプレクサ1445は、低ノイズブロックダウンコンバータ(LNB)1427に結合され、このLNBは、当技術分野において公知の方法でノイズフィルタリング機能、ダウンコンバート機能、及び増幅機能を実行する。1つの実施形態において、LNB1427は、室外ユニット(ODU)に存在する。別の実施形態では、LNB1427は、アンテナ装置に組み込まれる。LNB1427は、コンピューティングシステム1440(例えば、コンピュータシステム、モデムなど)に結合されたモデム1460に結合される。
【0171】
モデム1460は、アナログデジタル変換器(ADC)1422を含み、このADCは、LNB1427に結合されて、ダイプレクサ1445から出力された受信信号をデジタル形式に変換する。デジタル形式に変換されると、信号は、復調器1423によって復調されて、デコーダ1424によって復号されて、受信波上に符号化されたデータが得られる。次に、復号されたデータは、コントローラ1425に送られ、このコントローラが、このデータをコンピューティングシステム1440に送る。
【0172】
モデム1460は更に、コンピューティングシステム1440から送信されたデータを符号化するエンコーダ1430を含む。符号化されたデータは、変調器1431によって変調され、次に、デジタルアナログ変換器(DAC)1432によってアナログに変換される。次に、アナログ信号は、BUC(アップコンバート及び高域増幅器)1433によってフィルタリングされて、ダイプレクサ1445の1つのポートに供給される。1つの実施形態において、BUC1433は、室外ユニット(ODU)に存在する。
【0173】
当技術分野において公知の方法で動作するダイプレクサ1445は、送信される送信信号をアンテナ1401に供給する。
【0174】
コントローラ1450は、単一の複合物理的アパーチャ上のアンテナ素子の2つのアレイを含むアンテナ1401を制御する。
【0175】
通信システムは、上述した結合器/アービタを含むように変更される。このような場合には、結合器/アービタは、BUC及びLNBの前ではなくモデムの後に存在する。
【0176】
図27に示されている全二重通信システムは、限定されるものではないが、インターネット通信、車両通信(ソフトウェア更新を含む)などを含む幾つかの用途を有する点に留意されたい。
【0177】
本明細書で説明する幾つかの例示的な実施形態が存在する。
【0178】
実施例1は、液晶(LC)を有するアンテナ素子のアレイと、アレイに結合され、各々が、アレイのアンテナ素子に結合されてアンテナ素子に駆動電圧を印加するように動作できる複数のドライバを有する駆動回路と、駆動回路に結合されて、駆動電圧を調整してリップルを補償する無線周波数(RF)リップル補正論理回路と、を備えるアンテナである。
【0179】
実施例2は、RFリップル補正論理回路が、アレイのアンテナ素子に対する駆動電圧を再調整して、正フレーム及び負フレームの両方に同じ差動電圧を印加するように動作できることを任意選択で含むことができる実施例1のアンテナである。
【0180】
実施例3は、複数のドライバの各ドライバが、正フレーム及び負フレームの両方に対して複数のグレイシェードレベルの各グレイシェードレベルにおいて規定された出力を有し、ガンマ電圧がこの出力を制御することを任意選択で含むことができる実施例2のアンテナである。
【0181】
実施例4は、RFリップル補正論理回路が、Nが整数である場合、N個のガンマ電圧レベルに対してN/2個のグレイシェードレベルでRFリップル補正を実行するように動作できることを任意選択で含むことができる実施例3のアンテナである。
【0182】
実施例5は、共通電圧がアレイ内のアンテナ素子に印加され、更にRFリップル補正論理回路が、共通電圧を調整してリップルを補償するように動作できることを任意選択で含むことができる実施例1のアンテナである。
【0183】
実施例6は、アンテナ素子のLCに周期的に印加される差動電圧の極性を反転させるように駆動回路に結合されたコントローラを任意選択で含むことができる実施例1のアンテナである。
【0184】
実施例7は、コントローラが、駆動回路に対して、フレームごとにアンテナ素子のLCに印加される差動電圧の極性を反転させるように動作できることを任意選択で含むことができる実施例6のアンテナである。
【0185】
実施例8は、RFリップル補正論理回路が、自由空間試験(FST)測定システムで適用される電圧調整を適用するように動作できることを任意選択で含むことができる実施例1のアンテナである。
【0186】
実施例9は、RFリップル補正論理回路が、アレイに結合された環境センサに応答して電圧調整を適用するように動作できることを任意選択で含むことができる実施例1のアンテナである。
【0187】
実施例10は、アンテナ内のアンテナ素子のアレイにおけるアンテナ素子用のドライバに対する駆動電圧の初期セットを決定するステップと、駆動電圧のセットにおける駆動電圧を調整することにより、アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップと、を含む方法である。
【0188】
実施例11は、動作中、アレイ内のアンテナ素子にRFリップル補正電圧を印加するステップを任意選択で含むことができる実施例10の方法である。
【0189】
実施例12は、電圧の初期セットにおける電圧が、共通電圧に関する初期値に対して対称であることを任意選択で含むことができる実施例11の方法である。
【0190】
実施例13は、アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップが、(a)第1の電圧レベルを使用してRFリップルを測定するステップと、(b)測定されたRFリップルと所定基準との間の関係に基づいて共通電圧を調整するステップと、(c)測定されたRFリップルが所定基準を満たすまで、(a)及び(b)を繰り返すステップと、(d)共通電圧を調整された共通電圧に設定するステップと、を含むことを任意選択で含むことができる実施例12の方法である。
【0191】
実施例14は、第1の電圧レベルが、最高及び最低グレイシェードレベルに基づくことを任意選択で含むことができる実施例13の方法である。
【0192】
実施例15は、所定基準がRFリップル閾値であり、更に、RFリップルがこの閾値を下回るまで、共通電圧を調整するステップが繰り返されることを任意選択で含むことができる実施例13の方法である。
【0193】
実施例16は、他のグレイシェードレベルに対して共通電圧の調整を繰り返すステップを任意選択で含むことができる実施例13の方法である。
【0194】
実施例17は、駆動電圧が、アンテナ素子内の液晶(LC)の両端の差動電圧であることを任意選択で含むことができる実施例10の方法である。
【0195】
実施例18は、共通電圧の差分を決定し、この差分に基づいてソース電圧補正値を計算し、1又は2以上のガンマ電圧レベルを調整することによりソース電圧補正値を適用することによって、調整された駆動電圧を生成するステップを任意選択で含むことができる実施例10の方法である。
【0196】
実施例19は、少なくともプロセッサ及びメモリを内部に有するシステムによって実行されたときに、このシステムに方法を実行させる命令が格納された非一時的コンピュータ可読記憶媒体であり、この方法は、アンテナ内のアンテナ素子のアレイにおけるアンテナ素子用のドライバに対する駆動電圧の初期セットを決定するステップと、駆動電圧のセットにおける駆動電圧を調整することにより、アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップと、を含む。
【0197】
実施例20は、動作中、アレイ内のアンテナ素子にRFリップル補正電圧を印加するステップを任意選択で含むことができる実施例19の非一時的コンピュータ可読記憶媒体である。
【0198】
実施例21は、電圧の初期セットにおける電圧が、共通電圧に関する初期値に対して対称であることを任意選択で含むことができる実施例19の非一時的コンピュータ可読記憶媒体である。
【0199】
実施例22は、アレイ内のアンテナ素子に対してRFリップル補正を実行するステップが、(a)第1の電圧レベルを使用してRFリップルを測定するステップと、(b)測定されたRFリップルと所定基準との間の関係に基づいて共通電圧を調整するステップと、(c)測定されたRFリップルが所定基準を満たすまで、(a)及び(b)を繰り返すステップと、(d)共通電圧を調整された共通電圧に設定するステップと、を含むことを任意選択で含むことができる実施例19の非一時的コンピュータ可読記憶媒体である。
【0200】
実施例23は、第1の電圧レベルが、最高及び最低グレイシェードレベルに基づくことを任意選択で含むことができる実施例22の非一時的コンピュータ可読記憶媒体である。
【0201】
実施例24は、所定基準がRFリップル閾値を含み、更に、RFリップルがこの閾値を下回るまで、共通電圧を調整するステップが繰り返されることを任意選択で含むことができる実施例22の非一時的コンピュータ可読記憶媒体である。
【0202】
実施例25は、他のグレイシェードレベルに対して共通電圧の調整を繰り返すステップを任意選択で含むことができる実施例19の非一時的コンピュータ可読記憶媒体である。
【0203】
以上の詳細説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する演算のアルゴリズム及び記号表現の観点で提示されている。これらのアルゴリズム的記述及び表現は、データ処理技術分野の当業者により、自らの作業の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるのに使用される手段である。アルゴリズムは、本明細書では一般的に、所望の結果に至る自己矛盾のない一連のステップであると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。必須ではないが、通常、これらの量は、格納、転送、結合、比較、及びそれ以外の方法での操作が可能な電気信号又は磁気信号の形式を取る。これらの信号をビット、値、要素、記号、文字、用語、又は数字などと言及することは、主として共通使用という理由で時に好都合であることが判明している。
【0204】
しかしながら、これらの用語及び類似の用語は、全て、適切な物理量に関連付けられるものとし、単に、これらの量に付与される好都合なラベルである点に留意されたい。以下の説明から明らかなように、別途明記しない限り、説明全体を通して、「処理する」又は「算出する」又は「計算する」又は「決定する」又は「表示する」などのような用語を利用する説明は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理的な(電子的な)量として表されるデータを操作して、このデータを、そのコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のこのような情報ストレージ、送信又は表示デバイス内の物理量として同様に表される別のデータに変換するコンピュータシステム又は類似の電子コンピュータデバイスの動作及び処理を指すことが認められる。
【0205】
本発明はまた、本明細書における動作を実行するための装置に関する。この装置は、必要とされる目的のために特別に構成することができ、或いはコンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって選択的に起動又は再構成される汎用コンピュータを備えることができる。このようなコンピュータプログラムは、限定されるものではないが、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、及び光磁気ディスクを含む任意タイプのディスク、読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気又は光カード、又は電子命令の格納に適する任意のタイプの媒体のようなコンピュータ可読ストレージ媒体に格納することができ、これら各々は、コンピュータシステムバスに結合される。
【0206】
本明細書に提示したアルゴリズム及び表示は、何れの特定のコンピュータ又は他の装置とも本質的に関連付けられたものではない。様々な汎用システムが、本明細書の教示によるプログラムと共に使用することができ、又は必要とされる方法ステップを実行するより特殊化された装置を構成することが有利であることが判明する場合がある。様々なこれらのシステムに必要な構造は、以下の説明から明らかであろう。これに加えて、本発明は、何れの特定のプログラミング言語に関連することなく説明されている。様々なプログラミング言語を使用して、本明細書に説明した本発明の教示を実施することができることが認められるであろう。
【0207】
機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)によって可読の形式の情報を格納又は送信するための何らかの機構を含む。例えば、機械可読媒体は、読取専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリデバイスなどを含む。
【0208】
本発明の多くの改変及び修正が、前述の説明を読んだ後で疑いなく当業者に明らかになるであろうが、例証によって図示され説明された何れの特定の実施形態も限定するものとして捉えられるものではない点を理解されたい。従って、様々な実施形態の詳細事項への言及は、本発明にとって基本的なものとみなされる特徴のみを記載する請求項の範囲を限定するものではない。