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特許7219273化学強化薄板ガラス基材、修正された湾曲のための新規なパラダイム、及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】化学強化薄板ガラス基材、修正された湾曲のための新規なパラダイム、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
C03C21/00 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020522326
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 US2018056222
(87)【国際公開番号】W WO2019079400
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】15/786,343
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520132780
【氏名又は名称】ピージービーシー インテレクチュアル ホールディングス, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PGBC INTELLECTUAL HOLDINGS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルダー リチャード アシュレイ
(72)【発明者】
【氏名】アルダー ラッセル アシュレイ
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-223845(JP,A)
【文献】特表2011-527661(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157008(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学強化薄板ガラス基材を製造する方法であって、
その表面領域に配置される平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを含む化学構造を有する薄板ガラス基材を用意する工程;
前記ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きな平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含むイオン交換媒体を、前記基材の表面領域に適用する工程;及び
イオン交換媒体を前記表面領域に適用しながらイオン交換を行い、それによってイオン交換表面領域に、処理が優勢の表面領域と対向する処理が劣勢の表面領域の間で非対称となる圧縮応力を生成させて、該処理が優勢の表面領域の非対称性の圧縮応力と、対向する該処理が劣勢の表面領域の非対称の圧縮応力とが、表面におけるより高いレベルでの該圧縮応力、より大きな圧縮層の深さ、又は該表面と圧縮層の深さの間の拡散勾配内におけるより大きい圧縮応力のうちの一つかそれ以上で異なる、化学強化ガラス基材を生成させる工程;
前記イオン交換媒体中に含まれる前記侵入性アルカリイオンの平均イオン半径よりも小さい平均イオン半径を有するアルカリイオンを含む逆イオン交換媒体を用意する工程;及び
(1)前記逆イオン交換媒体を処理が優勢の表面領域に適用し、前記逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、表面領域の圧縮応力を減少させ、それによって逆イオン交換の前に前記化学強化ガラス基材中に存在するよりも小さい湾曲を有する化学強化基材を生成させる工程;又は
(2)処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域に逆イオン交換媒体を適用し、前記逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、表面領域の圧縮応力を減少させ、それによって逆イオン交換の前に前記化学強化ガラス基材中に存在しない所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材を生成させる工程;
を含み、
前記逆イオン交換媒体が塩水溶液であり、該逆イオン交換媒体が前記化学強化ガラス基材の片面のみに適用され、次に乾燥して、前記表面領域を、逆アルカリイオンを含む塩化合物でコーティングする、
上記方法。
【請求項2】
前記イオン交換媒体としてホストイオン流出液によって前もって汚染されていない新しいものが適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
逆イオン交換中に、時間、温度、又は前記逆イオン交換媒体の構成のうちの少なくとも1つを変化させることによって前記薄板ガラス基材の湾曲を調節することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
逆イオン交換中に、時間、温度、又は前記逆イオン交換媒体の構成のうちの少なくとも1つを変えて、表面領域の圧縮応力を減少させることによって前記薄板ガラス基材の湾曲を調節することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
逆イオン交換中に、前記逆イオン交換媒体の体積、前記逆イオン交換媒体中に含まれる逆アルカリイオンの種、前記逆イオン交換媒体中に含まれる逆アルカリイオンの種の濃度のうちの少なくとも1つを変化させること、又は逆イオン交換の速度を変化させる添加剤を前記逆イオン交換媒体中に含ませることによって、前記薄板ガラス基材の湾曲を調節することを更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ホストアルカリイオン、前記侵入性アルカリイオン、又は前記逆アルカリイオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
処理が優勢の表面領域の物理特性と、対向する処理が劣勢の表面領域とが、スズイオン注入、アニール履歴、フッ素化、イオン注入、脱アルカリ化、金属バリア膜被覆、セラミックフリットコーティング、及び熱湾曲形状のうちの一つかそれ以上で異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域に逆イオン交換媒体を適用する前に、前記化学強化薄板ガラス基材を湾曲に関して測定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
化学強化薄板ガラス基材を製造する方法であって、
その化学構造中に平均イオン半径を有する元のホストアルカリイオンを含む化学強化薄板ガラス基材であって、前記ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンによってイオン交換にかけられている表面領域を含んでおり、それによって圧縮応力が生成され、該圧縮応力は処理が優勢の表面領域と、対向する処理が劣勢の表面領域との間で非対称となっており、該処理が優勢の表面領域の非対称性の圧縮応力と、対向する該処理が劣勢の表面領域の非対称の圧縮応力とが、表面におけるより高いレベルでの該圧縮応力、より大きな圧縮層の深さ、又は該表面と圧縮層の深さの間の拡散勾配内におけるより大きい圧縮応力のうちの一つかそれ以上で異なる、化学強化薄板ガラス基材を得る工程;
前記侵入性アルカリイオンの平均イオン半径よりも小さい平均イオン半径を有するアルカリイオンを含む逆イオン交換媒体を用意する工程;及び
(1)前記逆イオン交換媒体を処理が優勢の表面領域に適用し、前記逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、表面領域の圧縮応力を減少させ、それによって逆イオン交換の前に前記化学強化ガラス基材中に存在するよりも小さい湾曲を有する化学強化基材を生成させる工程;又は
(2)処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域に逆イオン交換媒体を適用し、前記逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、表面領域の圧縮応力を減少させ、それによって逆イオン交換の前に前記化学強化ガラス基材中に存在しない所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材を生成させる工程;
を含み、
前記逆イオン交換媒体が塩水溶液であり、該逆イオン交換媒体が前記化学強化ガラス基材の片面のみに適用され、次に乾燥して、前記表面領域を、逆アルカリイオンを含む塩化合物でコーティングする、
上記方法。
【請求項10】
逆イオン交換中に、時間、温度、又は前記逆イオン交換媒体の構成のうちの少なくとも1つを変えることによって前記薄板ガラス基材の湾曲を調節することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
逆イオン交換中に、時間、温度、又は前記逆イオン交換媒体の構成のうちの少なくとも1つを変えて前記表面領域の圧縮応力を減少させることによって前記薄板ガラス基材の湾曲を調節することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
逆イオン交換中に、前記逆イオン交換媒体の体積、前記逆イオン交換媒体中に含まれる逆アルカリイオンの種、前記逆イオン交換媒体中に含まれる逆アルカリイオンの種の濃度のうちの少なくとも1つを変化させること、又は逆イオン交換の速度を変化させる添加剤を前記逆イオン交換媒体中に含ませることによって、前記薄板ガラス基材の湾曲を調節することを更に含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記ホストアルカリイオン、前記侵入性アルカリイオン、又は前記逆アルカリイオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、又はそれらの混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
処理が優勢の表面領域の物理特性と、対向する処理が劣勢の表面領域とが、スズイオン注入、アニール履歴、フッ素化、イオン注入、脱アルカリ化、金属バリア膜被覆、セラミックフリットコーティング、及び熱湾曲形状のうちの一つかそれ以上で異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
化学強化薄板ガラス基材を製造する方法であって、
その表面領域に配置される平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを含む化学構造を有する薄板ガラス基材を用意する工程;
前記ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きな平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含むイオン交換媒体を、前記基材の表面領域に適用する工程;及び
イオン交換媒体をガラス表面領域に適用しながらイオン交換を行い、それによってイオン交換表面領域に圧縮応力を生成し、化学強化ガラス基材を生成させる工程;これによって処理が優勢の表面領域と対向する処理が劣勢の表面領域の間に圧縮応力が非対称となる;該処理が優勢の表面領域の非対称性の圧縮応力と、対向する該処理が劣勢の表面領域の非対称の圧縮応力とが、表面におけるより高いレベルでの該圧縮応力、より大きな圧縮層の深さ、又は該表面と圧縮層の深さの間の拡散勾配内におけるより大きい圧縮応力のうちの一つかそれ以上で異なる;
前記イオン交換媒体中に含まれる前記侵入性アルカリイオンの平均イオン半径よりも小さい平均イオン半径を有するアルカリイオンを含む逆イオン交換媒体を用意する工程;及び
(1)前記逆イオン交換媒体を処理が優勢の表面領域のみに適用し、前記逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、表面領域の圧縮応力を減少させ、それによって逆イオン交換の前に前記化学強化ガラス基材中に存在するよりも小さい湾曲を有する化学強化基材を生成させる工程;又は
(2)処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域の1つのみに逆イオン交換媒体を適用し、前記逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、対向する前記表面領域に関連した表面領域の圧縮応力を減少させ、それによって逆イオン交換の前に前記化学強化ガラス基材中に存在しない所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材を生成させる工程;
を含む上記方法。
【請求項16】
前記用意される薄板ガラス基材が、スズフロート法によって製造される、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月17日出願の米国特許出願15/786,343の一部継続出願である。上記の出願の全内容は、参照により明白に本出願中に包含される。
【0002】
本発明は、概して、時には化学テンパー薄板ガラスとも呼ばれる化学強化薄板ガラスに関する。より詳しくは、本発明は、イオン交換によって化学的に強化され、その少なくとも表面領域を逆イオン交換プロセスにかけることによって湾曲が修正された薄板ガラス基材に関する。本発明はまた、減少した湾曲又はゼロの湾曲を有する化学強化薄板ガラス基材、所定の湾曲プロファイルを有する化学強化薄板ガラス基材、及びかかる化学強化薄板ガラス基材の有利な製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
当該技術においてよく認識されているように、イオン交換プロセスによって化学的に強化された薄板ガラス基材は、主としてスマートホン及びタブレットのディスプレイ上のカバーガラスとして、電子機器において広く用いられている。イオン交換は、ガラス内のより小さいイオン半径のホストアルカリ金属原子、通常はナトリウム又はリチウムを、より大きいイオン半径の侵入性アルカリ金属原子、通常はカリウムによって原子レベルで置換する化学プロセスである。イオン交換は、従来は硝酸カリウム(KNO)を含む塩の浴又は溶融塩のタンク内にガラス基材を浸漬することによって行われる。ホストアルカリ金属イオンはガラス表面領域から追い出され、より大きい侵入性アルカリ金属イオンが空孔中に割り込んで、ガラス表面領域の体積が膨張する。温度が、ガラスのネットワーク構造を緩和できる温度よりも低いならば、ガラス表面領域中に、浅いが高いレベルの圧縮応力が形成される。この圧縮応力により、表面硬度が増加して引掻傷の形成に抵抗し、閉ざされた微視的な欠陥が表面又はその付近に押し止められ、それによって衝撃又は負荷によって亀裂が伝搬する傾向が減少し、ガラス強度が大きく向上する。
【0004】
イオン交換によって化学強化するためのガラス基材は、より小さいホストアルカリ金属イオンが置換のためにガラス表面領域中において利用できる数多くのアルカリ含有ガラス組成(recipe)のいずれかであってよい。通常の窓ガラスにおいて見られる伝統的なソーダ石灰ガラスは、イオン交換によって化学強化することができる。アルカリ-アルミノシリケートガラス、アルカリ-ホウケイ酸ガラス、アルカリ-アルミノホウケイ酸ガラス、アルカリ-ボロンガラス、アルカリ-ゲルミネートガラス、及びアルカリ-ボロゲルマネートガラスなどの他のアルカリ含有ガラス組成もまた、イオン交換によって化学強化することができる。アルカリ-アルミノシリケートガラスは、ナトリウムアルカリ-アルミノシリケート、或いは迅速な置換のために表面領域において容易に利用できるナトリウム又はリチウムホストアルカリ金属原子と「高イオン交換」するように特別に配合されているあまり一般的でないリチウムアルカリ-アルミノシリケートであってよい。かかるアルカリ-アルミノシリケートガラス組成は、イオン交換プロセス中の高レベルの表面領域圧縮応力(compressive stress: CS)及び高い圧縮層深さ(depths of compressive layer: DOL)をより迅速に達成する。
【0005】
薄板アルカリ含有ガラス基材は、現在、2種類の主要な方法又はその変形法であるフュージョン法及びフロート法によって製造されている。
【0006】
Corning New YorkのCORNING(登録商標)Incorporatedによって最初に開発されたフュージョン法は、0.4mm~2.0mmの範囲の厚さで市販されているアルカリ含有ガラス、即ちナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラス組成の薄板基材を製造するために用いられている。これらの基材は、総合的に、イオン交換による化学強化にかけられた後にGORILLA(登録商標)ガラスの商標名で知られている。フュージョン法は、溶融したガラスを成形構造体又はアイソパイプの周囲に流して、ガラスの2つの下向きに移動するリボンを生成させ、これを成形構造体の底部又はアイソパイプの底部において融合させて単一のガラスリボンにするオーバーフローダウンドロー法である。融合したガラスリボンを、冷却しながら、ガイドローラーのシステムによってアイソパイプから垂直方向に下向きに牽引する。ドローの底端部において冷却したら、個々のガラス基材を、移動アンビル法によって垂直に移動している融合したガラスリボンから切断して、次元造形及びイオン交換による強化のために好適な生シート(raw sheet)にする。
【0007】
フュージョン法は、良好な平坦度及び優れた光学品質の薄板ガラス基材を製造する。アイソパイプの両側面上を下向きに進行し、融合したガラスリボンの主外表面領域になる溶融したガラスリボンの対向する上表面領域は、溶融状態で接触しないで加工されて、最終的に無傷(pristine)で維持される。しかしながら、フュージョン法は低速で高価なプロセスであり、より大きな幅、例えば2,000mmより大きな幅にわたって、或いはより大きな基材(アイソパイプの下側に懸下するガラスの重量が増加する)を製造する場合には制御するのが困難である。下向きに移動するガラスリボンの切断には、リボンが軟化状態で維持される箇所まで上流で移動する力を最小にする工程をとることが必要である。ガラスリボンは、幅広か又は薄い場合には、フュージョンプロセス中に意図的に湾曲させて延伸を簡単にすることができるが、対向するガラス表面領域に差異のあるアニーリングの履歴が与えられるという不利益がある。その後のイオン交換中において、この差異により、対向する表面領域の間の塩イオンの拡散の小さな非対称がもたらされる。1つの表面領域は、いずれもガラス表面領域に侵入する塩イオンの量、及び塩イオンが進む深さにおいて他の表面領域と比べて、僅かに「処理が優勢である(treatment-advantaged)」か、又は僅かに「処理が劣勢である(treatment-disadvantaged)」。
【0008】
アルカリ含有ガラスの薄板基材を製造するために、フロート法も用いられている。日本の日本板硝子(Nippon Sheet Glass Co. Ltd.: NSG)の子会社のPilkingtonは、3.0mm未満で厚さ1.0mmの薄さまでの厚さのソーダ石灰シリケートガラス組成の薄板基材を製造している。1.6mmの厚さ及びより薄いこれらの基材は、それらの組成中に存在する鉄の量によって、MICROFLOAT(登録商標)及びMICROWHITE(登録商標)の彼らの商標名によって総合的に知られている。更に、日本の旭硝子(Asahi Glass o., Ltd.: AGC)は、「高イオン交換」ナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラス組成の薄板基材を製造するためのフロート法の使用を開発し、これは0.4mmより薄い厚さから2.0mmより厚い厚さの範囲の厚さで市販されている。これらの基材は、イオン交換による化学強化にかけた後にDRAGONTRAIL(登録商標)及びLEOFLEX(登録商標)の彼らの商標名によって総合的に知られている。フロート法は、溶融したガラスを堰を超えて液体スズ金属又はフロート浴の上に流し、そこからリボンとして牽引して、これを更なる延伸によって更に薄くすることができる水平製造法である。水平に移動するガラスは、アニーリングレア(即ち、ガラス体をアニールするための温度制御窯)を通過し、次に次元製造及びイオン交換による強化のために好適な生シートに切断される。
【0009】
フロート法は、優れた平坦度及び良好な光学品質の薄板ガラス基材の製造を可能にする。ガラスリボンはより大きな幅、例えば3,300mmにすることができ、切断プロセスは軟化したガラスのリボンがフロート浴から排出される位置の下流の離れた位置で行われるので、基材は上流のガラスに影響を与えることなくより長い長さに容易に切断することができる。更に、フロート法は、多量トン数のガラスを低コストで効率的に製造することを可能にする。しかしながら、フロート法によって製造される基材は、特異的な随所に現れる問題であるガラス内に埋封状態で残留するスズの微視的な層を引き起こす。浴からのスズはフロート法で製造されたガラスの主表面領域の両方で見ることができる一方で、金属スズ浴と直接接触するより低い表面領域(スズ側)は、より上側の表面領域(当該技術において非スズ側として知られる)よりも実質的に多いスズ混入を受ける。その後のイオン交換中において、この差異により、対向する表面領域の間で実質的に非対称の塩イオン拡散がもたらされる。而して、非混入フロート法によって製造される薄板ガラスに関しては、非スズ側の表面領域は、いずれもガラス表面領域に侵入する塩イオンの量、及び塩イオンが進む深さにおいて「処理が劣勢である(treatment-disadvantaged)」スズ側表面領域と比べて「処理が優勢である(treatment-advantaged)」。
【0010】
より大きな侵入性塩イオンは、イオン交換中にガラス基材の表面領域中に入り込み、表面領域を圧縮し、同時にそれらの体積の膨張を引き起こす。塩イオンの吸収が対向する主表面領域の間で非対称である場合には、量が異なることによってそれぞれの主表面領域の膨張が起こる。膨張した表面領域は両方とも張力の中心領域の周りを旋回していて、得られる寸法の差異によって、薄板ガラス基材が変形して湾曲体になる(ボウ又は屈曲又はワープとも呼ばれる)。即ち、イオン交換中の塩イオンの拡散の非対称性によって、薄板化学強化ガラス基材の湾曲が大きくなり、形状が真に平坦な面のものから逸脱する。
【0011】
湾曲は、厚さの中心線を二等分する仮想平坦面からの基材上のより高い点とより低い点との間のガラス厚さの距離を超えるz軸上の距離の差として規定することができる。フロート法で製造された薄板ガラスにおける表面領域の相違するスズの混入により、溶融延伸ガラスの表面領域に対する相違するアニーリング履歴によって起こるものよりも大きな桁数の湾曲がもたらされる。実際に、通常は十分な寸法の薄板基材をフロート法によって製造し、続いてイオン交換する場合には、顕著に、スズ側上の形状が凹面、非スズ側上の形状が凸面になり、それにより浅皿状になる。
【0012】
平坦度に関する明らかな審美的要求とは別に、化学強化薄板基材における面外の湾曲の制御は、多くのガラス用途に関する最終的な機能要件である。タッチディスプレイに関しては、薄板ガラス基材は、一般に一部品として組み立てられて多層積層体にされ、ここでは湾曲は、層の間に間隙を引き起こして、輝度又はニュートンリングの不規則性をもたらし得る。エレクトロニクス用途又はソーラー用途に関しては、湾曲は、インジウムスズオキシドのような適用される膜又はコーティングの接着性及び品質レベルを悪化させ得る。建築及び輸送用途においては、通常は、薄板化学強化ガラス基材を、ガラスの他の基材に積層するか、又は対象物に接着することが必要であり、これに関しては湾曲によってエッジのカール化又はリップルの形成が引き起こされ得る。薄板ガラスを断熱ガラスユニット(insulating glass unit: IGU)又は真空断熱ガラス(vacuum insulating glass: VIG)内の層として用いて更なる密封された空隙を生成させる場合であっても、湾曲した基材は、湾曲方向が負荷下で逆転するか、又は空隙部の側壁が許容できない程接触する洗濯板効果を起こす可能性がある。
従来技術方法:
【0013】
従来技術は、イオン交換中の主ガラス表面領域の不平衡な膨張によって引き起こされる湾曲、特にフロート法で製造されるガラスに関して生じる大きさの湾曲を減少させる数多くの努力を含む。かかる努力は、2つのグループに分けることができる。第1に、処理が優勢の表面領域、即ちフロート法で製造されるガラス基材に関して最小のスズ混入を有する非スズ側の中の塩イオンの吸収を減少させることを目的とする開示された一群の方法が存在する。第2に、処理が劣勢の表面領域、即ちフロート法で製造されるガラス基材に関して最大のスズ混入を有するスズ側の中の塩イオンの吸収を増加させる目的の一群の方法が存在する。これらの方法は、異なるアプローチの組によるものであるが、これらの方法のそれぞれの目標は、イオン交換中の対向する表面領域中への侵入性イオンの吸収におけるより大きなバランスを促進して、湾曲のレベルを減少させることができるようにすることである。
【0014】
従来技術は、種々のアプローチを用いる化学強化薄板ガラス基材における湾曲を制御する広範囲の方法を反映する。幾つかの従来技術を開示する文献を下記に列記する。
【0015】
US-9,302,938(KreskiらのUS‘938)は、化学強化ガラス、及び面密度差を用いて製造する方法を開示する。この方法は、侵入性アルカリイオンの面密度を有することを特徴とするイオン交換媒体、及び侵入性アルカリイオンの修正された面密度を有することを特徴とする改質イオン交換媒体を用意すること、及びイオン交換を行って強化基材を生成させることを含む。
【0016】
KreskiのUS‘938においては、演繹的アプローチが提供される。その密度差法は、クレイ粒子を含む塩ペーストを使用して、処理が優勢の表面領域に対して示される侵入性塩イオンの全濃度を減少させることを提案している。しかしながら、イオン交換中にかかるクレイ粒子を塩ペースト内に均一に拡散して維持することが非常に困難であることは言及されていない。かかるクレイ粒子は、ガラス表面領域に向かって移動するか、又はそれから離れて移動して、不均一な結果を生成する可能性がある。更に、クレイ粒子はガラス表面領域の外面に接着する可能性があり、これによりイオン交換後に取り除くことが困難である。最後に、処理が優勢の表面領域においてペーストに加えられるクレイ粒子の量が必然的に予測される。侵入性イオンの吸収速度はイオン交換される表面領域に関して変動することがあり得るので、かかるゼロポイントは動的であり、イオン交換表面領域に差異を伴って適用されるクレイ粒子の濃度を一定に調節することが必要である。更に、かかる調節は、この方法が、イオン交換時間に加えて、長い時間の塩ペーストの調製、適用、乾燥の時間が必要であることを考慮すると、時間がかかり且つ経済的でない。
【0017】
US-2014/0178691(KreskiのUS‘691)は、化学強化ガラス、及び化学組成の差を用いる製造方法を開示する。この方法は、侵入性アルカリイオンのイオン交換速度に関連する組成を有するイオン交換媒体、及び侵入性アルカリイオンの修正されたイオン交換速度に関連する修正された組成を含む修正イオン交換媒体を用意すること、及びイオン交換を行って強化基材を生成させることを含む。
【0018】
KleskiのUS‘691は、その差分化学法の開示において、処理が優勢の表面領域に適用される塩ペーストに「毒」を加えることを公開している。例えば、この文献は、硝酸カリウム(KNO)ペースト内に硝酸ナトリウム(NaNO)又は硝酸カルシウム(Ca(NO)の「被毒」添加剤を混合して、イオン交換プロセス中のより大きなカリウムイオンの吸収を減少させることを提供する。密度差の特許と同様に、ペースト中でレオロジー調整剤として用いられるクレイ粒子は、イオン交換後に除去するのが困難である可能性がある。ここでも、この演繹法は、より大きい侵入性イオンの対称的な吸収のゼロポイントをイオン交換前に正確に予測することができることを前提としている。しかしながら、完了の前のイオン交換された表面領域の間の侵入性イオンの吸収における実際の差異の知識なしで行うかかる予測の正確性は、かかる予測が不正確であることが判明する場合には、改善のための簡単又は経済的な工程を与えない。
【0019】
US-2016/0200629(IkawaらのUS‘629)は、形成工程において、フッ素原子を有する分子を含む流体をガラスリボン上にスプレーする、フロートガラスを製造する方法を開示する。即ち、フッ素を含む分子を適用することは、イオン交換中におけるフロートガラスの処理によって処理が優勢の表面領域中の塩イオンの吸収を減少させるために提案されている他の方法である。
【0020】
IkawaらのUS‘629は、フッ素原子をフロート浴中の非スズ側に加えて、イオン交換プロセス中における塩イオンとのその後の反応性を減少させることを開示する。この開示は、圧縮応力のフッ素で促進される緩和、イオン交換の抑制、脱アルカリ化、ガラス構造への分子変化、及び脱水の複合現象であると発明者らによって述べられているものを記載する。しかしながら、例えばフッ化水素ガスによってフッ素を適用すると、ガラス内の適当なフッ素濃度と、ガラス表面への孔食損傷との間の二律背反が導かれる。フッ素含有化合物は、スズ浴の耐熱ライニングに対して腐食性であり、溶融したガラス内における石状物の形成を誘発する可能性がある。また、フッ素原子の添加は、連続的に延伸されているガラスリボンの形成段階中に起こり、したがって遙かに後段のイオン交換プロセスから、時間及び量の両方によって除去される。フッ素濃度が、その後の化学強化中にイオン交換した表面領域の間の対称性を達成するために不適当であることが分かった場合には、最良の場合には将来の製造を調節することができ、最悪の場合には大量のガラスを廃棄する必要がある可能性がある。
【0021】
US-2011/0293928(ChuらのUS‘928)は、湾曲を制御する意図で、ガラスを強化し、それによってバリア膜をガラス表面領域上に形成して、イオン交換強化中に導入されるイオンの量を制限する方法を開示する。かかる膜は、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、又は酸化ニオブ(Nb)から構成されると教示されている。
【0022】
しかしながら、処理が優勢の表面領域の全部又は一部の上に金属バリア膜を形成してイオン交換中に導入されるイオンの量を減少させることはまた、あまり望ましくない。金属バリア膜は、コーティング後のガラス基材の取扱いによる損傷に対して弱い。また、金属バリア膜は、イオン交換中にガラスが曝露される温度における時点の熱プロファイルによって分解する可能性がある。更に、他のコーティング又は膜をイオン交換後に非スズ側上に適用する場合があり、金属バリア層はそれらの適用又は寿命を損なう可能性がある。最終的に、バリア膜法、及び実際にはこの群内の任意の他の方法は、必然的にガラス基材の表面領域に導入される塩イオンの全量に基づいて演繹的であり、したがって表面領域の圧縮応力が不十分又は均一でない可能性があり、局所的な脆弱性及び満足できない湾曲制御がもたらされる一定のリスクが残る。
【0023】
US-2014/0178689(KreskiのUS‘689)は、化学強化ガラス、及び時間差を用いて製造する方法を開示する。この方法は、侵入性アルカリイオンを含むイオン交換媒体を処理が豊富な体積の表面領域に一定時間適用し、イオン交換媒体を処理が乏しい体積の表面領域に修正された時間適用して、イオン交換を行って強化基材を生成させることを含む。
【0024】
KreskiのUS‘689は、その時間差法の開示において、処理が劣勢の表面領域を他の方法として侵入性イオンにかけてその塩イオン吸収を増加させる時間を延ばすことを教示している。これは、硝酸カリウム及びクレイを含む塩ペーストをスズ側に適用し、これを次に非スズ側がかけられる時間を超える延長された時間のイオン交換にかけることを開示する。しかしながら、かかる方法では、必然的にイオン交換プロセスを完了するのに必要な時間がクレイ塩ペーストの長い適用時間及び乾燥時間を超えて延びる。更に、この方法は、クレイ粒子自体の移動性に帰する変動を起こし、イオン交換後にガラスからクレイ粒子を洗浄することは問題がある。最後に、KreskiのUS‘691及びKreskiのUS‘938に与えられている彼の他の2つの方法と同様に、主な批判は、かかる方法が本質的に、起こす湾曲の量及びそのために必要な更なる時間が偏ることが本質的に予測されることである。かかる予測が不正確であることが判明したならば、改善のための簡単で経済的な手段は示されない。
【0025】
US-2014/0178663(VarshneyaらのUS‘663)は、減少した湾曲が誘発されている化学強化ガラスを製造する方法、及び熱処理を用いて製造する方法を開示する。この方法は、用意された基材を熱処理時間の間熱処理温度に加熱して熱処理基材を生成させ、次に侵入性アルカリイオンを含むイオン交換媒体を適用してイオン交換を行って、減少した湾曲が誘発されている強化基材を生成させることを含む。
【0026】
Varshneyaらの‘663は、処理が劣勢の表面領域内の塩イオンの吸収を増加することを目的とする、その熱処理の開示における方法を提案する。この方法は、フロート法で製造されたガラス中のスズ金属を酸化するために、薄板ガラス基材を所定時間高温において浸漬することができることを教示している。かかる熱処理は、最良の場合には後のイオン交換中に受けた湾曲の量を減少させることのみが可能であると注記されている。この方法では、湾曲(反り)を排除することは可能でない。更に、規定時間の熱処理は更なるエネルギーを消費し、製造時間を延ばす。更に、表面領域に破損又は損傷を受けることなく、イオン交換の前に、薄板ガラス基材を熱処理炉により弱く装填及び取出する(強化しない)必要性のために、製造環境内で行うのが困難である。
【0027】
US-2014/0120335(YamanakaらのUS‘335)は、移送速度を遅延させ、ガラスリボンを研磨又はエッチングし、再加熱したフロートガラスに対してアニーリング処理を行うことによって、フロートガラス自体におけるスズ側と非スズ側との圧縮応力の間の差を減少させることによって、化学強化フロートガラスにおける湾曲を減少させる方法を開示する。
【0028】
フロート法で製造されるガラスにおける表面領域のスズで侵入された層を物理的に除去することは、イオン交換中の処理が劣勢の表面領域内の塩イオンの吸収を増加させるために提案されている方法である。この方法においては、金属質のスズ金属を含む表面領域の部分を苦心して研削及び研磨して除去する。しかしながら、侵入しているスズが、ガラス表面領域中に、5μm以下の深さにはより多い量で、及び20μm程度の大きな深さにはより少ない量で存在する。ガラス基材の全表面領域を全体をかかる深さまで研削及び研磨することは、破損せずに達成するのが困難である。第2に、ガラス表面領域中に欠陥が導入される可能性があり、イオン交換は単にこれを排除させようとする追加の欠点をガラス表面領域がもたらす。第3に、表面領域層の物理的除去により、ガラス基材の厚さに意図しない変動がもたらされる可能性がある。最後に、及び最も好ましくないことには、かかる方法は高価であり、フュージョン法で製造される薄板ガラス基材の代替としては実用的ではない。
【0029】
WO-2015/156262(NakagawaらのWO‘262)は、塩ペーストをガラス基材の全ての表面領域に同時に適用し、その後基材を炉内で焼成して、ガラスのそれぞれの表面領域に異なる熱プロファイルを適用して、変動するレベルのイオン交換を与えて圧縮応力を平衡化して湾曲を減少させる、化学強化ガラスを製造する方法を開示する。
【0030】
イオン交換中に表面領域温度差を使用することは、イオン交換中の処理が劣勢の表面領域中の塩イオンの吸収を増加させることが開示されている他の方法である。カリウムを含む塩ペーストをガラスの全表面領域の全体に適用し、基材を、一方又は両方の主ガラス表面領域に対して配置される異なる熱容量のプレートを有する炉中に移動させて、それぞれの表面領域を、その温度において異なる熱プロファイルの時間に曝露する。塩イオンの吸収はより高い温度において増加するので、最終目標は、それぞれの主表面領域を異なる熱プロファイルに同時に曝露することによって表面領域間のイオンの全体的な吸収を平衡化することである。しかしながら、ガラス表面領域にプレートを適用することにより、引掻傷又は摩耗が引き起こされる可能性がある。更に、かかる方法は、それぞれのイオン交換された表面領域に関する温度の正確な制御に頼っており、これは特に薄板基材における表面間の小さな距離を考慮すると、炉環境内で達成するのは困難である。
【0031】
WO2014/130515(AllanらのWO‘515)は、イオン交換強化にかけた後に特定の製造プロセスによって製造されたガラス基材の非対称性を定量する方法を開示する。
【0032】
而して、イオン交換のプロセスによって化学強化された薄板ガラス基材における平坦度を完全にする数多くの従来の試みにもかかわらず、湾曲(又はボウ又は屈曲又はワープ)の問題が残る。
【0033】
背景技術の開示において上記で議論した以下の米国特許及び米国特許公開のそれぞれは、それらの全部を参照として本明細書中に包含する。
【0034】
US-9,302,938(KreskiのUS‘938)。
【0035】
US-2011/0293928(ChuらのUS‘928)。
【0036】
US-2014/0120335(YamanakaらのUS‘335)。
【0037】
US-2014/0178663(VarchneyaらのUS‘663)。
【0038】
US-2014/0178691(KreskiのUS‘691)。
【0039】
US-2014/0178689(KreskiのUS‘689)。及び
【0040】
US-2016/0200629(IkawaらのUS‘629)。
【発明の概要】
【0041】
当該技術における上記に記載の欠点に基づき、本発明においては、かかる欠点を克服するための本発明の種々の非限定的な目的を示す。この非限定的な目的は、少なくとも以下のものを包含する。
【0042】
本発明の1つの目的は、フロート法で製造される基材に関する湾曲の量を、イオン交換によって化学強化した後に減少させることである。本発明の1つの目的は、フロート法で製造された基材に関して、湾曲の量を、修正にかけていないフュージョン法で製造された基材に関する湾曲と同等のレベルまで桁単位で減少させることである。本発明の1つの目的は、フロート法で製造された基材に関する湾曲の量を、修正にかけていないフュージョン法で製造された基材に関する湾曲未満のレベルまで減少させることである。本発明の1つの目的は、フュージョン及びフロート法で製造された基材に関する湾曲の量を、修正にかけていないフュージョン法で製造された基材に関する湾曲未満のレベルまで減少させることである。
【0043】
更に、本発明の1つの目的は、かかる湾曲の減少を、時間及びコストの両方に関して効率的に達成するである。また、湾曲の減少が、湾曲を軽減する試みを行っていない場合に達成しうるものと比べて、表面領域圧縮応力のレベル及び深さに対する最小の不利益しか与えないようにすることも本発明の1つの目的である。更に、本発明の1つの目的は、湾曲の減少の量が不十分であることが分かった場合に、更なる修正にかけるために簡単で経済的な手段を利用できるようにすることである。更に、本発明の1つの目的は、化学強化基材を、逆イオン交換の前に化学強化ガラス基材中に存在していなかった所定の湾曲プロファイルを有して意図的に製造することができるようにすることである。本発明の更なる目的は、湾曲を示す化学強化薄板ガラスシートを、かかる湾曲の原因に関係なく、同等の条件下で減少した湾曲(向上した平坦度)、ゼロの湾曲(平坦)、又は所定の湾曲プロファイル(所定の寸法許容範囲内の形状までの湾曲)を示すように永久的に変化させるのに好適な有用性を有する方法である。最後に、本発明の目的は、改善された化学強化薄板ガラス基材の製造、及びその中で逆イオン交換を用いるそれらを製造するための有利な方法である。
【0044】
本発明の一態様においては、薄板ガラス基材の1以上の表面領域の化学構造を変化させることを含む、化学強化薄板ガラス基材を製造するための本発明方法が提供される。薄板ガラス基材の化学構造は、表面領域中に存在する平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを含み、基材は、通常はフロート法による薄板ガラス基材の形成のために、互いに対向している「処理が優勢の表面領域」及び「処理が劣勢の表面領域」の両方を含む。
【0045】
本発明方法においては、ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きな平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含むイオン交換媒体をガラス表面領域に適用し、薄板ガラス基材のガラス表面領域にイオン交換媒体を適用しながらイオン交換を行って、それによって化学強化ガラス基材を生成させる。
【0046】
本発明方法においては、逆イオン交換媒体を、化学強化ガラス基材の少なくとも表面領域に適用する。逆イオン交換媒体は、イオン交換前のホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等か、又はそれよりも小さい平均イオン半径を有するアルカリイオンを含む。より好ましくは、本発明方法において、逆イオン交換媒体を、化学強化ガラス基材の少なくとも1つの主表面領域に適用する。更により好ましくは、本発明方法において、逆イオン交換媒体を、少なくとも、化学強化ガラス基材の1つの表面領域全体に適用する。更により好ましくは、本発明方法において、逆イオン交換媒体を、切断及び/又は穿孔の付加のような次元製造にかけていない化学強化ガラス基材の少なくとも1つの主表面領域に適用する。最も好ましくは、本発明方法において、逆イオン交換媒体を、少なくとも、化学強化ガラス基材の1つの表面領域全体(しかしながら、切断及び/又は穿孔の付加のような次元製造にかけた領域を除外する)に適用する。
【0047】
特に、本発明方法は、逆イオン交換媒体を、少なくとも処理が優勢の表面領域に適用すること、及び逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、減少したか又はゼロの湾曲を有する、即ち逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在していたよりも小さな湾曲(又はボウ又は屈曲又はワープ)を有する化学強化基材を生成させることを含む。
【0048】
別の形態においては、本発明方法は、逆イオン交換媒体を、化学強化ガラス基材上の処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域の少なくとも1つに適用すること、及び逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、逆イオン交換を行う前の化学強化ガラス基材中に存在するものと異なる所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材を生成させることを含む。
【0049】
本発明の他の態様においては、イオン交換によって化学強化され、次に、逆イオン交換媒体を適用し、少なくともイオン交換によって化学強化されたその処理が優勢の表面領域に対して逆イオン交換を行うことによって、選択強化圧縮応力を僅かに緩和させた、減少した湾曲又はゼロの湾曲を有する薄板ガラス基材の物品が提供される。
【0050】
本発明の他の態様においては、イオン交換によって化学強化され、次に、逆イオン交換媒体を適用し、少なくともイオン交換によって化学強化されたその処理が優勢の表面領域に対して逆イオン交換を行うことによって、選択強化圧縮応力を僅かに緩和させた、減少した湾曲又はゼロの湾曲を有する薄板ガラス基材の物品であって、ガラス基材はアルカリ金属イオンを含む化学構造を有する物品が提供される。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれ、表面領域中において残りのガラス基材中よりも高い濃度で拡散深さまで広がるアルカリ金属イオンを含む。物品の一態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域中よりも高い濃度のスズイオンを含む。物品の他の態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域と異なるアニーリング履歴を有する。表面から約5μmまで広がる(extending)深さにおいては、処理が劣勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径は、処理が優勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径よりも大きく、約5μmから拡散深さまで広がる深さにおいては、処理が優勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径は、処理が劣勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径よりも大きい。
【0051】
本発明の他の態様においては、イオン交換によって化学強化され、次に、逆イオン交換媒体を適用し、少なくともイオン交換によって化学強化されたその処理が優勢の表面領域に対して逆イオン交換を行うことによって、選択強化圧縮応力を僅かに緩和させた、減少した湾曲又はゼロの湾曲を有する薄板ガラス基材の物品であって、ガラス基材はアルカリ金属イオンを含む化学構造を有する物品が提供される。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。フロート法で製造されたガラス基材においては、処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれスズイオンを含む。物品の一態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域中よりも高い濃度のスズイオンを含む。物品の他の態様においては、フロート法で製造されたガラス基材はまた、対向する表面領域のそれぞれの中にフッ素イオンも含み、より高い濃度のスズイオンを含む表面は、より高い濃度のフッ素イオンを含む表面に対向する。表面から約5μmまで広がる深さにおいては、処理が劣勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量は、処理が優勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量よりも大きく、約5μmから拡散深さまで広がる深さにおいては、処理が優勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量は、処理が劣勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量よりも大きい。
【0052】
本発明の他の態様においては、イオン交換によって化学強化され、次に、逆イオン交換媒体を適用し、少なくともイオン交換によって化学強化されたその処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域に対して逆イオン交換を行うことによって、選択強化圧縮応力を僅かに緩和させた、所定の湾曲プロファイルを有する薄板ガラス基材の物品が提供される。
【0053】
本発明の他の態様においては、イオン交換によって化学強化され、次に、逆イオン交換媒体を適用し、イオン交換によって化学強化されたその処理が優勢の表面領域に対して逆イオン交換を行うことによって、選択強化圧縮応力を僅かに緩和させた、所定の湾曲プロファイルを有する薄板ガラス基材の物品であって、ガラス基材はアルカリ金属イオンを含む化学構造を有する物品が提供される。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれ、残りのガラス基材中よりも表面領域においてより高い濃度で拡散深さまで広がるアルカリ金属イオンを含む。物品の一態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域中よりも高い濃度のスズイオンを含む。物品の他の態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域と異なるアニーリング履歴を有する。表面から約5μmまで広がる深さにおいては、処理が劣勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径は、処理が優勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径よりも大きく、約5μmから拡散深さまで広がる深さにおいては、処理が優勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径は、処理が劣勢の表面領域中に配置されるアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい。
【0054】
本発明の他の態様においては、イオン交換によって化学強化され、次に、逆イオン交換媒体を適用し、イオン交換によって化学強化されたその処理が優勢の表面領域に対して逆イオン交換を行うことによって、選択強化圧縮応力を僅かに緩和させた、所定の湾曲プロファイルを有する薄板ガラス基材の物品であって、ガラス基材はアルカリ金属イオンを含む化学構造を有する物品が提供される。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。フロート法で製造されたガラス基材においては、処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれスズイオンを含む。物品の一態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域中よりも高い濃度のスズイオンを含む。物品の他の態様においては、フロート法で製造されたガラス基材はまた、対向する表面領域のそれぞれの中にフッ素イオンも含み、より高い濃度のスズイオンを含む表面は、より高い濃度のフッ素イオンを含む表面に対向する。表面から約5μmまで広がる深さにおいては、処理が劣勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量は、処理が優勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量よりも大きく、約5μmから拡散深さまで広がる深さにおいては、処理が優勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量は、処理が劣勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量よりも大きい。
【0055】
本発明の更なる態様においては、本明細書に記載するプロセスによって製造される、逆イオン交換の前の化学強化ガラス基材中に存在していたよりも小さい湾曲を有する化学強化薄板ガラス基材を含む製造品が提供される。
【0056】
本発明の更なる態様においては、本明細書に記載するプロセスによって製造される、逆イオン交換の前の化学強化ガラス基材中に存在していなかった所定の湾曲プロファイルを有する化学強化薄板基材を含む製造品が提供される。
【0057】
上記の概要は、本発明のそれぞれの態様又は全ての実施形態を記載することは意図しない。更なる特徴及び種々の有利性は、添付の図面及び本発明の下記の詳細な説明において概説する。
【0058】
本発明の一部を形成する本出願に付随する図面は、例示のみであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではなく、かかる範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、本発明の代表的な方法を示すフローチャートである。
【0060】
図2図2は、所定温度において規定の熱プロファイル時間において逆イオン交換を行う前及び行った後の両方の代表的な化学強化薄板ガラス基材の反りを示すグラフである。
【0061】
図3図3は、本発明による化学強化薄板ガラス基材を製造する代表的な方法を示すフローチャートである。
【0062】
図4図4Aは、スズフロート法によって製造されたガラスシートの断面を示し、イオン交換による従来のガラスシートの化学強化を示す。
【0063】
図4Bは、スズフロート法によって製造された化学強化ガラスシートの断面を示し、化学強化ガラスシートの非スズ側である処理が優勢の表面領域に施される逆イオン交換を示す。
【0064】
図5図5は、スズフロート法によって製造された本発明の化学強化薄板ガラスシートの断面を示し、本発明の化学強化薄板ガラスシート中に存在する仮想相対イオン濃度及び圧縮力を示し、薄板ガラスシートはスズフロート法によって製造されたものである。
【0065】
図6図6は、大型タッチスクリーンパネルを含む大型ゲームコンソールの代表的な態様を示す略図であり、タッチスクリーンの形成において、所定の湾曲プロファイルを有する本発明の化学強化薄板ガラス基材を用いている。
【発明を実施するための形態】
【0066】
簡潔さ及び例示の目的のために、本発明を、主としてその態様、原理、及び例を参照することによって記載する。以下の記載においては、例の完全な理解を与えるために、数多くの具体的な詳細を示す。しかしながら、複数の態様をこれらの具体的な詳細に限定することなく実施することができることは容易に理解される。他の場合においては、記載を不必要且つ過度に限定しないように、幾つかの態様は詳細に記載していない。
更に、下記においては異なる態様を記載する。当業者に容易に認識されるように、これらの態様は別々に用いることができ、又は異なる組合せで一緒に実施することができる。
【0067】
本発明は、特に利点のある、より小さい湾曲を有する(即ち、ゼロの湾曲又は減少した湾曲を有する)化学強化薄板ガラス基材を製造するために有用な方法を提供する。提供される方法はまた、化学強化薄板ガラス基材中に存在する湾曲を修正して、それによって所定の湾曲プロファイルに到達させることを可能にする。更に、提供される本発明方法にしたがって逆イオン交換プロセスで処理されて、減少した湾曲又はゼロの湾曲を有するか、或いは所定の湾曲プロファイルを有する化学強化薄板ガラス基材の製造において従来遭遇していた問題及び困難性の多くを完全に回避する化学強化ガラス基材が提供される。
【0068】
図1は、本明細書内で記載する実施形態の代表的な概要を示すフローチャートである。
【0069】
図1に示されるように、工程101において、処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を含む薄板ガラス基材が用意される。
【0070】
薄板ガラス基材は、表面領域中に配置される平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを有する。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。置換されるホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含むイオン交換媒体が用意される。
【0071】
工程102において、イオン交換媒体を表面に適用し、イオン交換を行って薄板ガラス基材を化学強化する。イオン交換媒体は、通常はエッジ及びガラス表面領域の両方(即ち、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域)に適用され、イオン交換が行われるので、通常はその寸法特性において湾曲が示される化学強化薄板ガラス基材が製造される。
【0072】
工程103において、逆イオン交換媒体を少なくとも処理が優勢の表面領域に適用して、逆イオン交換を行う。逆イオン交換媒体は、イオン交換前のホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等か又はそれよりも小さい平均イオン半径を有する逆(reversing)アルカリイオンを含み、これは通常は、化学強化基材における湾曲を減少させるために、「処理が優勢の表面領域」に適用して逆イオン交換を行う。
【0073】
工程103において逆イオン交換媒体を適用している間、処理が優勢の表面領域の最初の約5μm以下において圧縮応力の僅かな緩和が起こる。得られる化学強化基材は、逆イオン交換プロセスのために、イオン交換の工程から得られる誘発された湾曲がより小さくなる。理論に縛られることは望まないが、化学強化ガラス基材の処理が優勢の表面領域に対して逆イオン交換プロセスを行うことにより、処理が優勢の表面領域内の圧縮応力の合計が、処理が劣勢の表面領域中の圧縮応力のより低いレベルまで減少し、それによって、この操作を行わなければ化学強化ガラス基材中に存在しているであろうイオン交換工程によって加えられる湾曲が除去される。図5は、ガラス基材におけるかかる圧縮応力を示す略図である。
【0074】
或いは、本発明方法を用いて化学強化薄板ガラス基材中の湾曲を減少させるのとほぼ同じ方法で、本発明方法を用いて、従前に化学強化された薄板ガラス基材に所定の湾曲プロファイルを与えることができ、この場合、逆イオン交換プロセスを、化学強化ガラス基材の処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域の少なくとも一方に対して行う。薄板ガラス基材は更に、ガラスの軟化点より高い温度に加熱して、モールド又はツールの形状に熱屈曲させて、イオン交換及び逆イオン交換の工程の前の当初の湾曲プロファイルを与えることができる。
【0075】
幾つかの態様の操作及び効果は、下記に記載する例からより完全に理解することができる。これらの例に基づく態様は単なる代表例である。本発明の原理を示すためにこれらの態様を選択することは、例において記載していない材料、成分、反応物質、条件、技術、構成、及び設計等が使用するのに好適でなく、或いは例において記載されていない主題が添付の特許請求の範囲又はそれらの均等範囲から排除されることを示すものではない。例の重要性は、そこで得られた結果を、対照実験として働かせるか、又は比較のためのベースを与えるようにデザインすることができるか、又はそのようにデザインされたかもしれない試験又は実験から得ることができる可能性のある結果と比較することによって、より良好に理解することができる。
代表的な薄板ガラス基材:
【0076】
本明細書において用いるガラス基材とは、任意の種類のイオン交換可能なガラスを意味する。イオン交換可能であるとは、ホストアルカリイオン、又は表面又はその付近のガラス構造体中に配置されるアルカリ金属イオンを交換することができるガラスを意味するように定義される。アルカリ-アルミノシリケートガラス、ソーダ石灰シリケートガラス、アルカリ-ホウケイ酸ガラス、アルカリ-アルミノホウケイ酸ガラス、アルカリ-ボロンガラス、アルカリ-ゲルミネートガラス、及びアルカリ-ボロゲルマネートガラスなどの代表的なアルカリ含有ガラスを、イオン交換によって化学強化することができる。アルカリ-アルミノシリケート組成(recipe)のガラスは更に、ガラス化学構造体中に存在しているホストアルカリイオンの種によって、ナトリウムアルカリ-アルミノシリケート又はリチウムアルカリ-アルミノシリケートと呼ぶことができる。
【0077】
本開示の対象であるかかるアルカリ含有ガラス基材は、薄く、通常は厚さ3.0mm未満、より好ましくは厚さ2.0mm未満、或いはそれより薄いものとして更に定義することができる。薄板ガラス基材は、例えば、2.7mm、2.5mm、2.0mm、1.6mm、1.5mm、1.3mm、1.1mm、1.0mm、0.85mm、0.8mm、0.7mm、0.55mm、0.4mmの厚さを有していてよく、更には0.1mm(100μm)及び0.05mm(50μm)のように薄く製造することができる。3.0mmより大きい厚さにおいては、ガラス基材は、通常は、イオン交換による化学強化中に湾曲が誘発されるのを止めるのに十分な剛性を獲得することができる。1.5mm又はそれより薄い厚さにおいては、撓みに耐えるガラスシートの剛性が基材厚さの三乗の関数として減少するので、湾曲は通常は相当な大きさの問題になる。
【0078】
ナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラスに関する組成/配合の代表的な態様は、60~65モル%のSiO、10~15モル%のNaO、10~15モル%のAl、6~9モル%のMgO、4~8モル%のKO、及び0.5~2.0モル%のZrOを含む。
【0079】
ナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラスに関する他の好適な組成/配合は、66.7モル%のSiO、13.8モル%のNaO、10.5モル%のAl、5.5モル%のMgO、2.06モル%のKO、0.64モル%のB、0.46モル%のCaO、0.34モル%のAs、0.01モル%のZrO、及び0.007モル%のFeを含む。
【0080】
他の好適な態様においては、ナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラスに関する組成/配合は、66.9モル%のSiO、10.1モル%のAl、8.39モル%のKO、7.45モル%のNaO、5.78モル%のMgO、0.58モル%のB、0.58モル%のCaO、0.2モル%のSnO、0.01モル%のZrO、及び0.01モル%のFeを含む。
【0081】
他の態様においては、リチウムアルカリ-アルミノシリケート基材に関する組成は、61モル%のSiO、18モル%のAl、10モル%のNaO、5モル%のLiO、3モル%のZrO、1モル%のKO、1モル%のCaO、及び1モル%のBである。
【0082】
更なる態様においては、リチウムアルカリ-アルミノシリケート基材に関する他の好適な組成/配合は、67.2モル%のSiO、20.1モル%のAl、3.2モル%のLiO、2.7モル%のTiO、1.7モル%のZnO、1.7モル%のZrO、1.1モル%のMgO、0.9モル%のBaO、0.4モル%のNaO、0.23モル%のKO、及び0.05モル%のCaOである。
【0083】
他の代表的な態様においては、ソーダ石灰シリケートガラスの組成/配合は、70モル%のSiO、13モル%のNaO、10モル%のCaO、4モル%のMgO、2モル%のAl、及び1モル%のKOである。
【0084】
更なる態様においては、透明なソーダ石灰シリケートガラスの組成/配合は、72.0~73.0モル%のSiO、13.0~13.5モル%のNaO、8.6~8.9モル%のCaO、4.1~4.3モル%のMgO、0.5~0.7モル%のAl、0.2~0.4モル%のKO、及び0.07~0.13のFeである。
【0085】
更なる代表的な態様においては、低鉄超透明ソーダ石灰シリケートガラスの組成/配合は、72.3モル%のSiO、13.3モル%のNaO、8.8モル%のCaO、4.3モル%のMgO、0.5モル%のAl、0.4モル%のKO、及び<0.02のFeである。
【0086】
上記記載の態様は単に、アルカリ-アルミノシリケートガラス、例えばナトリウム及びリチウムアルカリ-アルミノシリケートガラス、ソーダ石灰シリケートガラス、及び低鉄超透明ソーダ石灰シリケートガラスの製造において用いられる通常及び/又は従来の配合の例示である。したがって、かかる配合は、本明細書に記載する本発明の概念を限定するものとは決してみなされない。
【0087】
ガラスシートを選択したら、1以上の製造工程にかけることができる。かかる製造工程としては、所定寸法への切断、穿孔、エッジ処理、熱屈曲及び/又は熱アニーリング又は強化或いはテンパリング、及び/又は表面処理を挙げることができる。切断及び随意的な穿孔の付加は、フィラメント形成又は直接アブレーションのものなどのレーザー切断、ウォータージェット切断、スコアリング/破断、及び砥石研磨のような任意の数多くのプロセスを用いて行うことができる。エッジ処理としては、エッジの少なくとも一部に対する、出隅(arris)を伴うか又は伴わないエッチング及び/又は砥石研磨を挙げることができる。熱屈曲には、ガラスをその軟化点より高い温度に加熱し、ツール又はモールドによってプレス又は真空の補助を用いるか又は用いないで成形して、冷却後にガラスシートの形状への永久的な変化を与えることを含ませることができる。熱屈曲の後、又はその代わりに平坦な状態において、ガラスシートをガラスネットワークを再構成するのに十分な温度に加熱し、次にそれぞれガラスネットワーク中の圧縮応力及び引張応力を軽減又は獲得するために制御冷却又は急速冷却することを含む、熱アニーリング又は強化又はテンパリング工程を行うことができる。表面処理には、表面の少なくとも一部を砥石研磨及び/又はエッチングすることを含ませることができる。
【0088】
ガラスシートを所定寸法に切断し、必要な場合には孔又はノッチなどの穿孔を付加するのに好ましい製造方法は、超短パルスピコ秒又はフェムト秒レーザーを用いるフィラメント形成によるものであってよい。フィラメント形成法は、そのようなレーザーからの指向エネルギーパルスを用いて、所望の切断線に沿ってフィラメントの列を入れることができる。かかるフィラメントは、直径1~2ミクロンであってよく、ガラス表面に対して垂直で、ガラス厚さの大部分を通って透過し、1~12ミクロンの間、好ましくは5ミクロン離隔させることができる。フィラメントは、ガラスがより厚い場合には、フィラメントを厚さにおいてレベルとして配することができる。フィラメントの列は、切断部を折って割裂するために機械的引張応力にかけることができる。穿孔又は形状切断のために特に有用な別の方法は、フィラメントに沿ってCOレーザーのような局在化熱を適用して、切断部を割裂するための熱引張応力を生成させることであってよい。割裂後に得られるエッジは、切れ端を存在させなくすることができ、フラットグラインドに似た仕上げ面を有するが、その先端が比較的鋭利なままである可能性がある。
【0089】
所望の切断線に沿ってフィラメント形成の列を割裂することによって得られるエッジは、更なるエッジ処理にかけて、エッジの先端に沿って特に多く存在する可能性があるマイクロクラックを最小にすることが好ましい。かかるエッジ処理には、バルクのエッジに沿って研磨砥石又はベルトで「C形状」に研磨することを含ませることができる。しかしながら、エッジを平坦面の研磨砥石にかけて、エッジに沿った交差面によって生成する角度を二等分する微細出隅(micro arris)形状を生成させて、それによって鋭利な先端を緩やかにすることがより好ましい。かかる交差面は、エッジと主表面、エッジと他のエッジ、又はエッジと他のエッジと主表面によって形成される場合がある。かかる微細出隅は、好ましくは平坦面であるプロファイルを有していてよく、或いは平坦面が僅かな丸みを示すプロファイルを有していてよい。かかる微細出隅は、200グリットより滑らかで、好ましくは600グリットに等しい研磨媒体によって得られるものと同等の表面粗さを有していてよい。その斜交面に沿って測定される微細出隅は、0.01mm未満、0.01mm乃至0.025mm未満の間、0.025mm乃至0.05mm未満の間、0.05mm乃至0.1mm未満の間、0.1mm乃至0.2mm未満の間、0.2mm乃至0.3mm未満の間、0.3mm乃至0.5mm未満の間、0.5mm~1.0mmの間、或いは1.0mmより大きい寸法を有していてよい。
【0090】
コーナーポイントなど(corner points)におけるエッジと主表面との間の微細出隅を与えることができるエッジ処理のための好ましい方法は、第1の特殊な砥石研磨機を構成することである。かかる研磨機は、モーターによって回転する2つの隣接する摩耗ベルト又はディスクから構成される。かかる研磨機はまた、コンベヤ、空気浮上装置、又はホイールから構成することができる支持表面を含む。かかる研磨機の設計に関しては、2つのベルト又はディスクの摩耗面を、互いに対して45~135°で開放されたハサミの配置で配向することができるが、好ましくは90°である。この研磨機上の台を、2つの摩耗面の間の角度を概して二等分する面内に配向させることができる。摩耗ベルト又はディスクの面は炭化ケイ素であってよく、200グリットより滑らかで好ましくは600グリットに等しい摩耗値を有していてよい。ガラスシートを、この特殊磨耗機の台の上に配置して、ガラスシートの1つの主表面が台の上面上に配され、処理されるガラスエッジが摩耗面と平行になるように配向する。
【0091】
エッジ処理のために好ましいプロセスを継続し、ガラスシートを摩耗面中に押し入れ、次にエッジと面が交差する先端を緩やかにするのに十分な力及び速度で横向きに移動させる。かかる工程は、それぞれがエッジと主表面との間の角度をほぼ二等分する面を有する1以上の微細出隅構造を与えることができる。好ましいサブステップは、ガラスエッジを前記コーナーポイントの後に引き出して、次にガラスシートを回転させることである。かかる回転は、最適には、エッジの交差面とコーナーポイントにおけるエッジによって生成する角度の半分であってよい。次に、ガラスシートのエッジを押し戻して、エッジと表面とエッジとが交差する先端を緩やかにするのに十分な力で摩耗面に当接させることができる。かかる工程は、エッジとエッジと主表面との間の角度をほぼ二等分する面を有し、外観を切子面のようにすることができる1以上の微細出隅構造を与えることができる。
【0092】
前記コーナーにおけるエッジとエッジの間に微細出隅を与えることができるエッジ処理のために好ましい方法は、第2の特殊な砥石研磨機を構成することである。かかる研磨機は、モーターによって回転する1つの摩耗ベルト又はディスクから構成される。かかる研磨機はまた、コンベヤ、空気浮上装置、又はホイールから構成することができる支持表面を含む。かかる研磨機の設計に関しては、ベルト又はディスクの摩耗面を、横向きの移動の前記の方向に対して0~90°の間、しかしながら好ましくは45°の間に配向させることができる。この研磨機上の台を、摩耗面に対して概して垂直の面内に配向させることができる。摩耗ベルト又はディスクの面は炭化ケイ素であってよく、200グリットより滑らかで好ましくは600グリットに等しい摩耗値を有していてよい。ガラスシートを、この特殊磨耗機の台の上に配置して、ガラスシートの1つの主表面が台の上面上に配され、処理されるガラスのコーナーが摩耗面によって二等分されるように配向する。
【0093】
エッジ処理のために好ましいプロセスを継続し、エッジとエッジとが交差する先端を緩やかにするのに十分な力でガラスシートを摩耗面中に押し入れる。かかる工程は、エッジとエッジとの間の角度をほぼ二等分する面を有する微細出隅構造を与えることができる。穿孔を伴ってエッジ処理を継続し、それによってノッチ及び切欠部の先端を、先に概説したものと同じ方法で摩耗させることができる。小さな開口内部での操作を可能にする小型の回転摩耗ツールを用いて、内部の切欠部又はスロットを先端及びコーナーポイント上で摩耗させることができる。円錐の断面の形状の面取りしたドリルを用いてリムの先端を摩耗させることができる。かかる小型回転摩耗ツール又は面取りしたドリルは、200グリットより滑らかで、好ましくは600グリットに等しい摩耗値を有していてよい。孔又は他の穿孔は、一般に高いレベルの機械力に曝露されるので、かかる構造に対しては、砥石研磨に加えてエッチング工程を行って、そのような強度が重要な領域において微視的欠陥が存在する可能性を減少させることが好ましい。
【0094】
エッジの砥石研磨を行うかどうかに関係なく、エッジ処理には、エッジの少なくとも一部を、酸又はアルカリエッチング媒体、例えば所定濃度のフッ化水素酸又は水酸化ナトリウムを含むものに所定時間曝露することを含ませることができ、又は含ませなくてもよい。1以上のエッチング工程は、好ましくはマイルドであり、エッジの寸法又は美観に測定しうる変化を生成しないで微視的欠陥上の先端を滑らかにするのに十分なだけである。しかしながら、1以上のエッチング工程を強度及び位置において調節して、エッジに沿った先端もエッチング処理し、及び/又は艶消しのエッジ仕上げ面を生成させるようにすることもできる。エッチング媒体は、ローラースポンジ又はブラシを用いてガラスのエッジ又はその一部にエッチング反応が起こる時間だけ適用し、続いて洗浄工程を行ってエッチング媒体を除去して、エッチング反応が更に進行するのを阻止することができる。
【0095】
開示する切断及びエッジ処理プロセスは、コスト効率が良く、微細出隅構造が審美的に好ましく且つ機能的になり、微細クラックが最小になり、高いレベルの寸法の正確性を達成することができるので好ましい。開示するこのプロセス工程は、フィラメント形成によるレーザー切断プロセスに適用されるが、アブレーションによるレーザー切断プロセスに同じように適用されると意図される。開示する切断及びエッジ処理プロセスはイオン交換による強化の前に行うことが好ましいが、1以上の工程をイオン交換後、又は実際には逆イオン交換後に行うことができることが可能である。開示する切断及びエッジ処理プロセスは、ほぼ例外なく所望の切断部に沿ってフィラメントの列をレーザーによってガラス中に入れることができることによる正確性により、寸法公差を決定することが可能になる。実際に、フィラメントの列に沿って割裂した後は、それぞれエッジのバルク(その先端から離れるエッジの中心領域)に沿って配される2つの点の間で測定されるガラスシートの寸法特性に対する更なる変化を回避することが目的である。開示するエッジ処理は、寸法の変化を交差面の先端におけるエッジの領域にのみ限定する。実際に、かかる方法によれば、±0.2mm、±0.1mm、又は実際には±0.05mmより良好な公差を示すガラスにおける外辺及び穿孔のサイズを得ることが可能である。
【0096】
他の製造工程は、開示される切断及びエッジ処理プロセスを用いて行うことができ、又は行わなくてもよい。熱間曲げ、並びに熱アニーリング又は強化又はテンパリングは、一般に化学強化の前のみに行う。これは、ガラスネットワークの再構成が必然的に、イオン交換によって誘発された表面圧縮応力に対して完全な損失でない場合でも大きな減少を与えるからである。限定されないが、本開示の好ましい態様は、熱間曲げの後に熱強化又はテンパリングを行わない。本開示に関する好ましい態様は、熱間曲げを行い、次にタイトな半径又は複雑な幾何形状のようなより大きな所定の湾曲プロファイルを有するガラスシートを得るために必要な場合にのみ熱アニーリングの工程を行う。限定されないが、本開示の好ましい態様は、フラット状態の熱アニーリング又は強化又はテンパリング工程を行わない。
【0097】
限定されないが、本開示の好ましい態様はまた、表面処理の形成工程(表面の少なくとも一部の研磨及び/又はエッチングを含む可能性がある)も行わない。かかる表面処理工程としては、高価であり欠陥を導入しやすいものとして既に議論した1以上の金属スズ混入表面領域の研磨を挙げることができる。かかる表面処理は、表面の少なくとも一部を、酸又はアルカリエッチング媒体、例えば一定濃度のフッ化水素酸又は水酸化ナトリウムを含むものに一定時間曝露することを含む可能性があり、含まない場合もある。かかるエッチング工程は、寸法又は美観に対して測定できる変化を与えないで、微視的な欠陥上の先端を滑らかにするだけのために十分に穏やかであってよく、中程度のエッチングは表面上に反射防止も与える可能性があり、又は強いエッチングは表面に艶消しも与える可能性がある。
【0098】
ガラスシート製造の可能な上述の工程の幾つかによって導入される可能性がある変化に加えて、基材ガラスはまた、化学強化中においてイオンがイオン交換する傾向に影響を与えるそれらの対向表面領域内の変化も有する。変化は、「ブロッカー」として作用するフロート法によるガラス基材の製造から引き継がれるスズ混入の量における差異のために、対向する表面領域の間に存在する可能性がある。フロート法によって製造されるガラス基材は、1つの主表面領域において、その対向する主表面領域と比べて多い量のスズ金属を有する。ガラスの物理特性に対する更なる操作、又は化学強化中に対向する表面領域に関するイオン交換パラメーターの目的のある変更を行わない場合、より多い量の金属スズイオンを含むガラスシートの主表面は、「処理が優勢の」表面領域である対向する主表面と比べて「処理が劣勢の」表面領域である。
【0099】
変化はまた、より密に連結されているガラスネットワーク構造を形成するフュージョン法によるガラス基材の製造から残留するアニーリング履歴における差異によって、対向する表面領域の間にも存在する可能性がある。ガラスの物理特性に対する更なる操作、又は化学強化中に対向する表面領域に関するイオン交換パラメーターの目的のある変更を行わない場合、アニーリング履歴におけるかかる変化の結果は、ガラスシートの1つの主表面を化学強化によってより容易に処理することができ、これは「処理が優勢の」表面領域と呼ぶことができる。これとは逆に、ガラスシートの対向する主表面は、化学強化によってあまり容易に処理されず、したがって反対に「処理が劣勢の」表面領域と呼ぶことができる。
【0100】
既に言及した、処理が劣勢の表面領域と比べた処理が優勢の表面領域の配向は、基本的製造方法によって与えられる物理特性から変化する可能性がある。かかる変化は、更なる製造プロセスの結果である可能性がある。例えば、イオン交換による化学強化の前に、ガラス表面領域上にセラミックフリットコーティングを焼成することができる。かかる焼成は高温で行って、セラミックフリットコーティングをガラスネットワークに融合させてガラス基材の一部になるようにする。かかるコーティングの例は、セラミックフリット真空断熱ガラスシーラント又はセラミックフリット装飾着色塗料である。殆どオンセラミックフリットコーティングはその後のイオン交換をブロックするが、セラミックフリットコーティング、又は実際には他のコーティングは、既にガラス基材中に存在するホストアルカリイオンと同等の種の一定濃度のアルカリイオンを含む状態であってよい。ガラス基材に融合させたら、セラミックフリット中のこれらのアルカリイオンは、ガラス基材中に存在するホストアルカリイオンと同様に挙動し、イオン交換を強化することができる。しかしながら、化学強化をなお可能にしながら通常は単一の側に適用されるかかるコーティングは、対向する表面領域の間に更に他の変化を加える。
【0101】
かかる変化は、それらの目標として減少した湾曲又は所定の湾曲プロファイルの獲得も有する当該技術において記載される他の手段の結果である可能性がある。例えば、フロート法で製造されたガラスシートの非スズ表面上に金属バリア膜を加える場合には、かかる表面は、概して金属バリア膜によってカバーしていない対向するスズ側と比べて処理が劣勢のものになる可能性がある。他の例においては、スズフロート法で製造されたガラスは、非スズ側上への脱アルキル化のプロセスにかけて、イオン交換による化学強化中により大きな侵入性イオンで置換するために表面領域において得られるホストアルカリイオンの量を、対向するスズ側と比べて減少させることができる。脱アルカリは、場合によって二酸化イオン(SO)ガスを非スズガラス表面領域上に適用することによって、主として外側の5ミクロンにおけるホストアルカリイオンを除去するか、又は少なくともその量を減少させることができる。
【0102】
湾曲を無効にする見込みが示されており、大型の研究投資の対象である他のバリエーションは、主としてフロートガラスの非スズ表面上にフッ素イオンを適用することである。かかるフッ素イオンは、フロート法の形成段階中に、ガラスを非常に高い温度においてフッ素を含む流体、通常はフッ化水素ガスに曝露することによって適用される。脱アルカリとバリヤ膜の複合概念であるフッ素イオンは、アルカリではなくハロゲンである。ガラス基材中へのフッ素イオンの注入は、イオン交換によるガラスシートの化学強化の前に行われるので、フッ素イオンがガラス表面領域中の圧縮応力に対する緩和を引き起こすという前提は、ガラス表面領域内のフッ素イオンの存在はイオン交換中の強化性の圧縮応力の生成を抑止するとより正しく言い直すことができる。
【0103】
限定されないが、本開示の好ましい態様においては、ガラス基材はフッ素イオンを実質的に含まない。実際に、ガラスシートを、主としてその非スズ側上において、化学強化の前にフッ素イオンで意図的に処理する場合には、より多い量の金属スズを含むよりフッ素化されていないスズ側は、イオン交換による化学強化によって、少なくともよりフッ素化されている「処理が劣勢の」非スズ側と比べて「処理が優勢の」スズ側になる傾向を有すると述べることができる。而して、かかるフッ素化されたガラス基材は、少なくとも他の条件は同等の短時間のイオン交換によって本質的に反対の湾曲を示し、よりフッ素化されていないスズ表面側はより大きな体積を有し、相対的により小さい体積を有するよりフッ素化されている非スズ表面に向かって湾曲する。しかしながら、イオン交換による化学強化の前に意図的に導入するフッ素イオンの量は、濃度及び深さの点で調整して、他の条件は同等のより長時間のイオン交換を行うと、より典型的な湾曲が出現して、よりフッ素化されていないスズ表面がよりフッ素化されている非スズ表面の後ろに徐々に落ち込む。
【0104】
イオン交換による化学強化の後に約5μmまでの深さにおいて既に誘発された表面圧縮応力を緩和するために侵入性イオンよりも小さいアルカリイオンを用いる逆イオン交換のプロセスとは異なり、フッ素化のプロセスは、イオン交換による化学強化中の表面圧縮応力の増加を抑止するために、好ましくは深さ30μm~40μmまでの表面中に存在するハロゲンイオンを用いる。より短時間の化学強化においては、フッ素イオンの挙動は多くの点で金属スズイオンのものに類似する。しかしながら、フッ素イオンは、ガラス表面領域中のより深い深さへ向かう侵入性アルカリイオンの浸透に対する非効率的なブロッカーである。而して、より長時間のイオン交換を行うと、侵入性アルカリイオンは、フッ素化非スズ側において、より多い量のブロック性スズを含むよりフッ素化されていない側と比べてより深い深さへより多い量で次第に浸透する。この増大した浸透は、フッ素イオンの存在によって得られる「処理の劣勢」を徐々に無効にする。その結果、フッ素化された非スズ側の「処理の劣勢」は所謂「当量」点を通って弱まって理論的にゼロの湾曲になり、それを超えるとよりフッ素化されていないスズ側は、再び「処理が劣勢の」表面領域になる。
【0105】
而して、ガラス基材がフッ素を含む場合には、本明細書に開示する逆イオン交換は、当量点より前、又はおそらくはより重要なことにはその後に示される湾曲を無効にする有効な手段であることが意図される。実際に、かかる当量点は、少なくとも任意の寸法を有する片に対して達成すべき挑戦的な技術目標であり、かかる方法は、同時に、表面領域のスズ含量、表面領域のフッ素含量、及び侵入性イオン交換における変動(全て圧縮応力の規定レベル及び深さの範囲内である)の間のバランスをうまく両立させなければならない。而して、逆イオン交換は、フッ素を含むガラス基材に対する短時間の強化イオン交換の後に、よりフッ素化されていないスズ表面における圧縮を、よりフッ素化されている非スズ表面と比べて緩和することによって、「湾曲を前進させる」手段として用いることができる。或いは、逆イオン交換は、フッ素を含むガラス基材に対するより長時間の強化イオン交換の後に、よりフッ素化されている非スズ表面における圧縮を、よりフッ素化されていないスズ表面と比べて緩和することによって、「湾曲を後退させる」手段として用いることができる。
【0106】
処理が劣勢の他の表面領域に対して処理が優勢の1つの表面領域は、ガラスシートの物理特性、及び行われるイオン交換による化学強化の具体的なパラメーターの全部によって生成する。標準(default)では、かかる物理特性は、シート製造の基本方法、フロート法かヒュージョン法か、より大きなスズブロック層の存在、及び/又は他の領域に対する1つの表面領域に関するアニール履歴差によって生成する。これらを明細書全体において議論する。より多い量の金属スズを含むガラスシートの側は、通常はフロート法で製造された化学強化薄板ガラスの「処理が劣勢の」表面であるが、1以上の他のファクターの可能性のある導入によって、「処理が優勢の」及び「処理が劣勢の」の定義をより広くする必要がある。かかるファクターとしては、例えばバリヤ被覆、イオン注入、フッ素化、脱アルカリ化等のような化学強化の前にガラスシートに物理特性を加えることを挙げることができる。かかるファクターとしてはまた、或いはそれに代えて、例えば時間、温度、イオン交換媒体への被毒添加剤の添加、及び/又はイオン交換媒体の面密度に対する変化のような、対向する表面領域に対して異なって適用されるイオン交換による化学強化の具体的なパラメーターを挙げることができる。
【0107】
本明細書において用いる「処理が優勢の」及び「処理が劣勢の」という用語は、広義には、イオン交換による化学強化の前、その間、及びその後に、より小さいホストアルカリイオンの代わりにより大きい侵入性アルカリイオンによる置換における対向する表面領域の間の比較的な非対称性を指すように定義することができる。イオン交換による化学強化の前においては、この用語は、未だ起こっていない対向する表面の間の相対的な非対称性の可能性を指す。イオン交換による化学強化中においては、この用語は、少なくともその時点までに起こっている対向する表面の間にそれまでに現れた非対称性を指す。イオン交換による化学強化の後においては、この用語は、ガラスシートにおいて実際に得られている対向する表面の間の実際の非対称性を指す。かかる定義は、イオン交換による化学強化の前、その間、及び最も重要にはその後に得られる対向する表面領域の間の非対称性を変化させ得るファクターの導入の可能性を包含する。より小さいホストアルカリイオンの代わりにより大きい侵入性アルカリイオンによる置換の量及び深さにおける対向する表面の間の相対的な差に関係なく、かかる比較的な非対称性は、ガラスシートの物理的形状において現れる。処理が優勢の表面領域は比較的により大きい体積を有し、それにより比較的により小さい体積の処理が劣勢の表面領域に向かって湾曲する。
【0108】
所定の湾曲プロファイルを導入する目的のために、薄板ガラス基材を、更にガラスの軟化点より高い温度で加熱し、金型又は加工具の形状に熱湾曲させて、当初の湾曲プロファイルを与えることができる。湾曲後の意図的な熱アニール工程にかかわらず、薄板ガラス基材を成形具と接触させること、及び冷却速度に対する形状(凹型か凸型か)の効果によって、更に他のアニール履歴差を有する熱湾曲した薄板ガラス基材を与えることができる。かかる熱湾曲後のアニール履歴差は、基本的製造方法がフロート法によるか又はフュージョン法によるかに関係なく起こり得る。フュージョン法で製造されたシートにおいては、かかる変化の結果は、湾曲の後に1つの表面領域が化学強化によってより容易に処理されることであり、これを「処理が優勢の」と呼ぶことができる。これとは逆に、対向する表面領域は、化学強化によってあまり容易に処理されず、したがって逆に「処理が劣勢の」と呼ぶことができる。フロート法で製造されたシートにおいては、熱湾曲からのアニール履歴による変化は、スズ濃度差によって与えられるものよりも小さい大きさである。しかしながら、熱湾曲によるアニール履歴における変化によって、非スズ表面領域の「処理の優勢」の程度、及び対向するスズ表面領域の「処理の劣勢」の程度が減少又は増大し得る。
代表的なイオン交換媒体:
【0109】
本明細書において用いるイオン交換媒体とは、侵入性のアルカリ金属イオンを含む、化学強化のために用いられる固体、液体、又は気体を意味する。侵入性アルカリイオンは、イオン交換前の基材ガラス中のホストアルカリ金属イオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有するアルカリ金属イオンとして定義される。イオン交換媒体には、1以上の異なる種類の侵入性アルカリイオンを含ませることができる。ホストナトリウムアルカリイオンを含むガラス表面領域を強化するために好ましい侵入性アルカリイオンはカリウムであり、これは、カリウムはナトリウムの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有しているからである。或いは、ホストリチウムアルカリイオンを含むガラス表面領域を強化するために好ましい侵入性アルカリイオンはナトリウム又はカリウムであり、これは、これらは両方ともリチウムの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有しているからである。しかしながら、ルビジウム又はセシウムのようなイオン半径が更により大きい周期律表の他のアルカリイオンを、侵入性イオンとしてイオン交換媒体中に含ませることができる。
【0110】
かかるイオン交換媒体は、非限定的な方法の任意の1つ又はその組合せを用いてガラスシート上に付与することができる。ガラスにイオン交換媒体を付与するための一般的に許容される方法は、高温の溶融塩液をタンク内に収容し、その中にガラスを所定時間浸漬してイオン交換を行う形態であってよい。かかる浸漬は、通常はガラスシートを溶融塩の液面ラインより下に保持することと同じであるが、液面ラインをガラスより下に維持して、高温再循環ポンプを用いて溶融塩を上方に移送してガラスの上にほぼ連続的に流す他のバリエーションが可能である。
【0111】
ガラスにイオン交換媒体を付与する他の方法は、ガラスに固体ペーストを適用し、次に場合によって冷却及び/又は乾燥工程を行い、次に所定時間炉内に配置してイオン交換を行う形態であってよい。ガラスにイオン交換媒体を付与する更に他の方法は、ガラスに気体状の化学物質の蒸気又はプラズマを堆積させ、次に場合によって冷却及び/又は乾燥工程を行い、次に所定時間炉内に配置してイオン交換を行う形態であってよい。ガラスにイオン交換媒体を付与する最後の他の方法は、溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョン、或いは塩水溶液のいずれかであってよい液体を、カーテンコート、噴霧コート、浸漬コート、ロールコート、スロットコート、及び/又はスプレーコートによって適用し、次に場合によって冷却及び/又は乾燥工程を行い、次に所定時間炉内に配置してイオン交換を行う形態であってよい。
【0112】
ここで開示するカーテンコート、噴霧コート、浸漬コート、ロールコート、スロットコート、及び/又はスプレーコートによってガラスにイオン交換媒体を付与する方法には、以下の特徴を有する液体の交換媒体を適用することを含ませることができる。液体のイオン交換媒体は、溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンとしてガラスに付与することができる。かかる溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンには、少なくとも1以上のアルカリ塩化合物(会合の共融状態(eutectic state of association)であってもそうでなくてもよい)を含ませることができる。かかる溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンは、その融点若しくはそれよりも高い温度を有していてよい。液体のイオン交換媒体は、上記の方法に代えて、水を含む塩水溶液としてガラスに付与することができる。塩水溶液には、少なくとも1以上のアルカリ塩化合物(水中に完全に溶解していても、完全に溶解していなくてもよい)を含ませることができる。塩水溶液は、その沸点若しくはそれよりも低い温度を有していてよい。液体のイオン交換媒体には、全てのイオン交換媒体と同様に、例えばクレイ、溶媒、ガラス中のホストアルカリイオンと同等か又はそれよりも小さいアルカリイオンを含む塩、金属イオン、又はアルカリ土類イオンのような1以上の添加剤などの他の成分を含ませることができる。
【0113】
更に、かかる液体のイオン交換媒体は、カーテンコート、噴霧コート、浸漬コート、ロールコート、スロットコート、及び/又はスプレーコートなどの1以上の方法によってガラスに付与することができる。かかる付与は、大気に曝露しながらか、或いは筺体(空気又は窒素及び/又はアルゴンを含んでいてよい不活性雰囲気も含んでいてよい)内で行うことができる。液体のイオン交換媒体は、溶融塩混合物又は溶液又はエマルジョン、或いは塩水溶液のいずれであっても、それをガラスに付与する前に撹拌手段にかけることができる。液体のイオン交換媒体は、溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョン、或いは塩水溶液のいずれであっても、カーテンコート、噴霧コート、浸漬コート、ロールコート、スロットコート、及び/又はスプレーコートによって、ガラスシート全体か、少なくとも1つの主表面(例えばスズ側のみ)か、少なくとも1つの縁部か、主表面の少なくとも一部か、又は縁部の少なくとも一部に適用することができる。
【0114】
溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンの形態である液体のイオン交換媒体に関しては、ガラスに付与する時点で、ガラスシートの温度、液体溶融塩の温度、及び液体溶融塩が固化する既知の温度の1以上の組合せが存在し得る。ガラスシートは、400℃未満、400℃乃至450℃未満の間、450℃~500℃の間、又は500℃より高い温度を有していてよい。溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンは、400℃未満、400℃乃至450℃未満の間、450℃~500℃の間、又は500℃より高い温度を有する液体であってよい。更に、液体の溶融塩が固化する既知の温度が存在しうる。即ち、溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンは、冷却することによりその相が液体から固体に変化する固化温度を有し得る。固化温度は、400℃未満、400℃乃至450℃未満の間、450℃~500℃の間、又は500℃より高くてよい。溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンは、二元又は三元又は四元系における塩化合物の共融会合(eutectic association)に由来する液体温度及び/又は固化温度を有していてもよく、又は有していなくてもよい。
【0115】
塩水溶液の形態の液体イオン交換媒体に関しては、ガラスに付与する時点で、ガラスシートの温度、塩水溶液の温度、及び塩水溶液における飽和点のパーセントとしての1以上のイオン性アルカリ塩の濃度の1以上の組合せが存在し得る。ガラスシートは、60℃未満、60℃乃至80℃未満の間、80℃乃至100℃未満の間、100℃~塩水溶液の沸点の間、塩水溶液の沸点より高く140℃までの間、又は140℃より高い温度を有していてよい。塩水溶液は、60℃未満、60℃乃至80℃未満の間、80℃乃至100℃未満の間、又は100℃~塩水溶液の沸点の間の温度を有していてよい。濃度は、飽和点における水溶液中の当量比のイオン性アルカリ塩の全質量のパーセントとしての塩水溶液中のイオン性アルカリ塩の全質量として表すことができ、20%未満、20%乃至40%未満、40%乃至60%未満、60%乃至80%未満、80%より高く100%まで、或いは100%より高い値であってよい(過飽和を伴っていてもいなくてもよく、沈澱形成を伴っていてもいなくてもよい)。
【0116】
塩水溶液の形態の液体イオン交換媒体に関しては、ガラスに付与する時点において、構成成分の間の特定の質量比が存在し得る。水溶液の全質量のパーセントとしての水溶液中に含まれる水(HO)の質量は、20%未満、20%乃至40%未満、40%乃至60%未満、60%乃至80%未満、又は80%より多くてよい。全水溶液の質量のパーセントとしての水溶液中に含まれる全てのイオン性アルカリ塩化合物の質量は、20%未満、20%乃至40%未満、40%乃至60%未満、60%乃至80%未満、又は80%より多くてよい。塩水溶液中に含まれる全てのイオン性アルカリ塩化合物の全質量のパーセントとしての少なくとも第1のイオン性アルカリ塩化合物の質量は、100%、100%乃至90%超、90%~80%未満超、80%~60%超、60%~40%超、40%~20%超、又は20%以下であってよい。第1のイオン性アルカリ塩化合物の質量と、塩水溶液中に含まれる全てのイオン性アルカリ塩化合物の全質量との間の差分は、第1のイオン性アルカリ塩化合物と異なる第2のイオン性アルカリ塩化合物から構成されていてよく、或いは代わりに、互いと、且つ第1のイオン性アルカリ塩化合物と異なる1つより多い他のイオン性アルカリ塩化合物から構成されていてよい。
【0117】
ガラスに液体のイオン交換媒体を付与した後、得られる交換媒体が被覆されたガラスを、随意的な冷却工程にかけることができる。かかる冷却は、固化温度又はそれより低い温度に行うことができる。かかる冷却により、液体の交換媒体をより好ましい固体又は半固体状態に変化させることができる。好ましい冷却方法としては、所謂自由冷却、ファンを用いる強制冷却、冷却ガスを用いる強制冷却、又は輻射、伝導、若しくは対流熱を用いる制御冷却が挙げられる。かかる冷却は、ガラスシートを大気に開放状態で曝露しながらか、或いは空気若しくは窒素及び/又はアルゴンを含んでいてよい不活性雰囲気を含む筺体内で行うことができる。冷却されたイオン交換媒体は、会合の共融状態であっても、そうでなくでもよい1つより多いアルカリイオン塩を含んでいても、又は含んでいなくてもよい。随意的な冷却の後においては、ガラス基材の温度は、40℃未満、40℃乃至60℃未満の間、60℃乃至80℃未満の間、80℃~100℃未満の間、100℃乃至120℃未満の間、120℃乃至140℃未満の間、140℃~250℃の間、又は250℃より高くてよい。
【0118】
冷却工程を行うかどうかに関係なく、交換媒体が被覆されたガラスは、随意的な乾燥工程にかけることができる。かかる乾燥によって、液体の交換媒体をより固体又は半固体状態に変化させることができる。可能な乾燥方法としては、放射、伝導、及び/又は対流熱伝達への曝露が挙げられる。かかる乾燥は、ガラスシートを大気に開放状態で曝露しながらか、或いは乾燥空気若しくは窒素及び/又はアルゴンを含んでいてよい不活性雰囲気を含む乾燥オーブンのような筺体内で行うことができる。かかる乾燥工程には、60℃未満、60℃乃至80℃未満の間、80℃乃至100℃未満の間、100℃乃至120℃未満の間、120℃乃至140℃未満の間、140℃~250℃の間、又は250℃より高い温度に所定時間保持することを含ませることができる。時間は、5分未満、5分より長く15分未満、15分乃至30分未満、30分乃至1時間未満、1時間乃至2時間未満、2時間~6時間、又は6時間より長くすることができる。乾燥工程には、1以上の温度において1以上の時間保持することを含ませることができる。乾燥したイオン交換媒体は、会合の共融状態の1つより多いイオン性アルカリ塩を含んでいても、含んでいなくてもよい。随意的な冷却及び/又は乾燥工程を行うかどうかに関係なく、イオン交換媒体中で被覆されたガラスは、次に高温においてイオン交換を行う手段に所定時間かける。
【0119】
可能な場合には、イオン交換による化学強化の後に現れる湾曲の量に影響を与えるイオン交換パラメーターに対する変化を最小にすることが重要である。この動きの1つの源は溶融塩タンクの伝統的な操作であり、タンク内でホストイオンをガラスシートから塩に繰り返し交換するにつれてホストイオンの流出物の蓄積が起こる。全てのパラメータが同等であるならば、溶融塩内のホストイオン流出物の濃度が増加すると、イオン交換によって化学強化された薄板ガラス基材において現れる湾曲の量が累進的に変化する。而して、ホストイオン流出物の混入の安定性を与えるイオン交換媒体を使用することが好ましい。好ましい態様は、流出物が混入した塩の量をより低コストで交換するために再循環ポンプと共にガラスシートの下側の液面まで充填した溶融塩を用いる塩タンクプロセスのバリエーションを用いることである。他の好ましい態様は、固体塩ペースト、ガス化学蒸着又はプラズマ堆積の方法の一部としてホストイオン流出液によって前もって汚染されていない新しいイオン交換媒体のみを用いること、又はカーテンコート、噴霧コート、浸漬コート、ロールコート、スロットコート、及び/又はスプレーコートによってガラスに施される、溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョンの形態の液体交換媒体を適用することである。
【0120】
液体イオン交換媒体に関する代表的な態様は、塩浴又は溶融塩を含む筺体内に含まれる硝酸カリウム(KNO)であり、この中にガラス基材を浸漬して、温度における時間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用する。塩浴内に含まれる液体イオン交換媒体は、同時にガラス基材の全ての表面(その縁部を含む)と接触する。この非限定的な例においては、カリウムの侵入性アルカリイオンは、硝酸カリウム液体媒体からガラス基材の表面中に移動し、ナトリウムのようなホストアルカリイオンは、ガラス基材の表面から液体媒体中に移動する。かかる液体イオン交換媒体は、イオン交換によってアルカリ含有ガラス基材を強化するための代表的な態様である。
【0121】
固体イオン交換媒体に関する他の代表的な態様は、硝酸カリウム、及びカオリンクレイのような流動剤を含む塩ペーストであり、これをガラス基材の全ての表面(その縁部を含む)に適用し、次に温度における時間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用することができる。イオン交換媒体はまた、通常は、ガラス基材の全ての外表面を化学強化するように、周縁部及び孔の縁部にも適用する。しかしながら、ガラス基材の縁部にイオン交換媒体を適用するか又は適用しないかは、ここで開示する発明の概念を限定するものとは決してみなされない。この非限定的な例においては、カリウムの侵入性アルカリイオンは、硝酸カリウム固体ペースト媒体からガラス基材の表面中に移動し、ナトリウムのようなホストアルカリイオンは、ガラス基材の表面から固体ペースト媒体中に移動する。かかるイオン交換媒体は、イオン交換によってアルカリ含有ガラス基材を強化するための代表的な態様である。
【0122】
また、液体および固体イオン交換媒体に加えて、気体イオン交換媒体も意図される。例えば、塩化カリウム(KCl)のような塩化合物をガス蒸着によってガラス表面上に堆積させ、温度における時間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用する。かかる方法は、ガラス基材の全ての表面(その縁部を含む)を接触する塩化カリウム蒸気を生成させるために、高温エアロゾル発生器を用いることができる。この非限定的な例においては、カリウムの侵入性アルカリイオンは、塩化カリウム蒸気からガラス基材の表面中に移動し、ナトリウムのようなホストアルカリイオンは、ガラス基材の表面から蒸気媒体中に移動する。かかる気体イオン交換媒体は、イオン交換によってアルカリ含有ガラス基材を強化するための代表的な態様である。
【0123】
イオン交換媒体の構成は、より高いか又はより低い侵入性アルカリイオンの1以上の種を用いて、密度において変化させることができる。侵入性アルカリ金属イオンの濃度は、どのアルカリ金属塩化合物又はその組合せを用いるかを調節することによって変化させることができることが注記される。1つより多い塩を用いる場合には、かかる塩は会合の共融状態であってよく、そうでなくてもよい。かかる化合物の例は、異なる密度の侵入性アルカリ金属イオンを含む、アルカリ金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩、炭酸塩、及び塩化物である。イオン交換中に用いることができるアルカリ塩化合物のより通常的な例の幾つかは、硝酸カリウム(KNO)、硫酸カリウム(KSO)、臭化カリウム(KBr)、ヨウ化カリウム(KI)、リン酸一カリウム(KHPO)、リン酸二カリウム(KHPO)、リン酸三カリウム(KPO)、炭酸カリウム(KCO)、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、及び硝酸ルビジウム(RbNO)である。
【0124】
例えば、硝酸カリウム(KNO)は101.10g/モルのモル質量を有し、その単一のカリウムイオンはそのモル質量の38.7%に相当する。20℃における硝酸カリウムの密度は2.11g/cmであり、而してカリウムイオンの濃度はその温度において0.817g/cmである。これに対して、塩化カリウム(KCl)は74.55g/モルのモル質量を有し、その単一のカリウムイオンは質量の52.4%に相当する。20℃における塩化カリウムの密度は1.98g/cmであり、しかして質量基準のカリウムイオンの濃度はその温度において1.038g/cmである。密度は温度に応じて変動するが、硝酸カリウム塩のイオン交換媒体は、同じ温度における同じ体積の塩化カリウムのイオン交換媒体中に含まれるものと異なる濃度の侵入性アルカリ金属イオンを含むと言うことができる。
【0125】
イオン交換媒体中の侵入性アルカリ金属イオンの濃度、及び相互拡散へのその可用性はまた、イオン交換媒体中に、特定の特性も付与することができる他の添加剤を含ませることによっても変化する。イオン交換媒体には、例えばカオリンのようなクレイの添加剤、水、又は例えばグリセロール又はジエチレングリコールのような溶媒を含ませることができ、これにより侵入性アルカリ金属イオンの濃度を低下させることができる。イオン交換媒体には、イオン交換前のガラス基材中のホストアルカリイオンと同等か又はそれよりも小さい平均イオン半径の所定割合のアルカリイオンを含ませることができる(即ち、所謂当該技術において公知の「混合塩浴」)。例えば、イオン交換媒体にナトリウムイオンを含ませることができ、この場合、かかる種は、ナトリウム及びカリウムが両方ともナトリウムアルカリアルミノシリケートガラスに適用されるイオン交換媒体の構成成分である場合などには、実際には侵入性アルカリイオンではない。イオン交換媒体に、例えばそれぞれ銅イオン又は銀イオンのような色又は細菌抵抗性を加える所定割合の金属イオンを含ませることができる。最後に、イオン交換媒体に、マグネシウム(Mg)イオン、カルシウム(Ca)イオン、ストロンチウム(Sr)イオン、又はバリウム(Ba)イオンのような所定割合の低移動度のアルカリ土類イオンを含ませることができる。
代表的なイオン交換ガラス:
【0126】
イオン交換ガラスとは、イオン交換処理によって化学強化されている任意のアルカリ含有基材を意味する。本明細書で用いるイオン交換処理とは、温度における時間の熱プロファイルによって規定し得る熱の存在下でイオン交換媒体に曝露することによって、ガラス基材の表面領域を強化するための圧縮応力の化学的誘導として定義される。イオン交換中においては、ガラス基材中のホストアルカリ金属イオンがガラス表面領域から追い出され、イオン交換媒体中に存在するより大きい侵入性アルカリ金属イオンがボイド中に入り込んで、ガラス表面領域の体積の膨張を引き起こす。温度が、ガラスのネットワーク構造を緩和させることができるガラス基材のアニール温度よりも低いならば、ガラス表面領域中に浅いが高レベルの圧縮応力が形成される。この圧縮応力によって引掻傷の形成に抵抗する表面領域の硬度が増加して、表面又はその付近における微視的欠陥が塞がれ、衝撃又は荷重による亀裂伝搬の可能性が減少し、それによりガラスの強度が大きく増大する。
【0127】
与えられたガラス基材に関するイオン交換速度は、所定時間の間にガラス基材中のより小さなホストアルカリイオンに代わって置換するより大きな侵入性アルカリイオンの正味の量であり、温度、イオン交換媒体、及びガラス基材の化学構造の関数である。イオン交換を行う時間は、圧縮応力、及びしたがって必要な強化の深さ及びレベルに応じて、数分程度の短い時間から24時間以上の長い時間の範囲であってよい。イオン交換を行う温度は変化させることができるが、好ましくは400℃より高い。しかしながら、通常はイオン交換媒体の安全安定温度、又はガラス基材のアニール温度(ガラスネットワーク構造を緩和させて、表面領域中の侵入性アルカリイオンの増加した体積に適合させることができ、その結果圧縮応力が失われる)は超えない。印加電圧補助又は周波数誘導加熱(両方とも当該技術において公知である)を用いてイオン交換速度を増加させることもできることが注記される。イオン交換媒体の組成は変化させることができるが、イオン交換前のガラス基材中のホストアルカリ金属イオンよりも大きい平均イオン半径を有するアルカリ金属イオンを、ガラス基材の表面領域中における正味のイオン交換を誘発する(即ち圧縮応力を発生させる)のに好適に高い濃度で含ませることが必要である。
【0128】
イオン交換ガラスの代表的な態様は、435℃の温度の100%液体硝酸カリウムを含む塩浴中に4時間浸漬することによるイオン交換によって化学強化されたナトリウムアルミノシリケートガラスである。得られる化学強化ガラスは、表面において最も大きく、侵入性アルカリ金属イオンの拡散深さを通して減少勾配を示して、圧縮層深さ(DOL)において終了する圧縮応力を示し、ゼロの圧縮応力の位置は引張応力が発生する位置を超える。かかる代表的な態様においては、表面の圧縮応力は少なくとも600MPaであり、圧縮層深さ(DOL)は少なくとも40μmである。化学強化ガラスの他の代表的な態様は、435℃の温度の100%液体硝酸カリウムを含む塩浴中に4時間浸漬することによるイオン交換によって化学強化されたソーダ石灰シリケートガラスである。得られる化学強化ガラスは、表面において最も大きく、侵入性アルカリ金属イオンの拡散深さを通して減少勾配を示して、圧縮層深さ(DOL)において終了する圧縮応力を示す。かかる代表的な態様においては、表面の圧縮応力は少なくとも300MPaであり、圧縮層深さ(DOL)は少なくとも15μmである。
【0129】
イオン交換による強化は、好ましくは表面圧縮応力のより大きいレベル及び深さを与える。イオン交換後のガラス基材の両面領域における表面圧縮応力のレベルは、好ましくは少なくとも100MPa、好ましくは少なくとも200MPa、好ましくは少なくとも300MPa、好ましくは少なくとも400MPa、好ましくは少なくとも500MPa、好ましくは少なくとも600MPa、好ましくは700MPa又はそれ以上、好ましくは800MPa又はそれ以上、好ましくは900MPa又はそれ以上、及び好ましくは1,000MPa又はそれ以上である。欠陥の先端部において亀裂が伝搬して破損をもたらすためには、衝撃又は荷重からの引張応力が表面圧縮応力よりも大きくなければならないので、より大きなレベルの表面圧縮応力はより大きな強度をもたらす。イオン交換後のガラス基材の両方の表面領域における圧縮応力の深さは、好ましくは少なくとも10μm、好ましくは少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、好ましくは少なくとも30μm、好ましくは少なくとも40μm、好ましくは50μm以上、好ましくは60μm以上、好ましくは75μm以上、好ましくは100μm以上である。圧縮応力のより大きな深さは、十分に深い場合には引張領域に入って破損をもたらす可能性がある擦過又は引掻による表面圧縮の軽減に対する抵抗性を増加させる。
【0130】
しかしながら、ガラスシ-トの残りの中央領域内の対応する引張力である内部引張応力をモニターするために注意を払わなければならない。内部引張応力は、圧縮された表面領域と同等で反対の力である引張応力である。内部引張応力のレベルが特定の組成(recipe)のガラスに関して好ましいそのレベルを超えて増加すると、過度の脆性がもたらされる可能性がある。言い換えれば、ガラスシートは、特にガラスシートが代表的な薄いものであり、対向する圧縮表面領域の間の距離が小さい場合には、過度に脆性になる可能性がある。ガラスシートにおける内部引張応力のレベルは、好ましくは70MPa未満、好ましくは60MPa未満、より好ましくは50MPa未満、最も好ましくは40MPa未満である。より高いレベルの内部引張応力は、引張応力が欠陥の先端部において圧縮応力を超える場合に破損を伝搬する蓄積エネルギーを与える。
【0131】
而して、特定の組成及び特定の厚さのガラスシートは、表面圧縮応力、表面圧縮応力の深さ、及び内部引張応力のレベルの好ましい組合せを有すると言うことができる。例えば、0.55mmの厚さを有するアルカリ-アルミノシリケートガラスの配合は、少なくとも600MPaである両方の表面領域における表面圧縮応力のレベル、少なくとも400μmである両方の表面領域における圧縮応力の深さ、及び40MPa未満である内部引張応力のレベルの好ましい組合せを有し得る。かかる配合及び厚さに関するより好ましい組合せは、700MPa以上である両方の表面領域における表面圧縮応力のレベル、50μm以上である両方の表面領域における圧縮応力の深さ、及び50MPa未満である内部引張応力のレベルである。かかる組合せは非限定的であり、特定のガラスの厚さ及び配合に関して最適の強度、耐用年数、及び破砕性の最適の組合せを達成し、且つ特定のガラス用途の要求を満足するために、1以上の表面領域又はその一部において調節することができる。
【0132】
イオン交換速度は、ガラス基材の処理が優勢の表面領域と、処理が劣勢の表面領域との間で相違する。かかる特徴は、イオン交換による化学強化の同等の条件下でアルカリイオンの拡散が起こる速度に関連し、最小でも基本製造法(フュージョン法かフロート法か)によって与えられるガラス基材における物理特性によって影響を受ける。実際に、化学強化の同じパラメーターにかけると、処理が優勢の表面領域は、合計で処理が劣勢の表面領域よりも大きな圧縮応力を得る。処理が優勢の表面領域は、処理が劣勢の表面領域と比べて、表面においてより高いレベルの圧縮応力、より大きな圧縮層の深さ(DOL)、又は表面と圧縮応力が終了する圧縮層のゼロポイント深さとの間の拡散勾配内におけるより大きい圧縮応力の1以上を示すことができる。かかる表面領域は、ガラス基材の最も外側の面が、侵入性アルカリイオンに関する拡散勾配を通って圧縮層の深さまで内部に向かって継続することを意味するように定義することができる。
【0133】
更に、イオン交換工程は、基本製造法(フュージョン法かフロート法か)によってガラスに与えられる物理特性によって他の形態で得られるものを超えてより大きいか又はより小さい湾曲を与えるように意図的に変化させることができる。これは、1つの表面領域又はその一部と対向する表面領域又はその一部との間で、バリヤフィルム、温度、時間、又はイオン交換媒体の構成、例えばイオン交換媒体の体積、その中に含まれる侵入性アルカリイオンの種類、その中に含まれる侵入性アルカリイオンの種の濃度、及びイオン交換速度を変化させる添加剤をその中に含ませること等が相違するイオン交換を行うことによって達成することができる。1つの表面領域又はその一部と対向する表面領域又はその一部との間での異なるイオン交換を選択的に用いて、表面領域の体積の膨張差を誘発して、より大きいか又はより小さい湾曲を誘発させることができる。
【0134】
更に、湾曲の所定のプロファイルを得る際の工程として、より大きいか又はより小さい湾曲をガラスシート中に意図的に導入することができることが意図される。例えば、表面圧縮応力を、表面領域の1以上の領域において特定の次元軸に沿って増大させることができる。例えば、ここでも侵入性アルカリイオン、例えばより大きいルビジウムイオンを含むイオン交換媒体を用いるイオン交換の第2工程を、それらの間にイオン交換媒体を有しない交互の空間を有するドット又はラインのような幾何的パターンでガラス表面領域の全部又は一部に選択的に適用して、局在化した指向性圧縮を誘発することができる。
【0135】
更に、開示する本発明方法において更に概説する逆イオン交換の工程中の更なる変性のための圧縮応力の「リザーバー」を生成させるためにガラス用途によって他の形態で必要なものよりも大きい圧縮応力を有するイオン交換で化学強化されたガラスを製造することができる。或いは、上記で言及したようにより極端な湾曲のプロファイルを故意に誘発する目的で、ガラス基材を、イオン交換の前に、ガラスの軟化点より高い温度に加熱して、金型又は加工具の形状に熱湾曲させて、当初の湾曲プロファイルを付与することが可能である。しかしながら、かかる工程は、必然的に湾曲したガラス基材にアニール履歴差を与える可能性があり、これにより、フロート法で製造された基材における対向する表面領域のスズ混入差に起因し得る表面領域の間の非対称に加えて、イオン交換中に湾曲のプロファイルが変化する。
【0136】
イオン交換工程中により大きいか又はより小さい湾曲を意図的に与えるためにどの工程を採用したかに関係なく、処理が優勢の表面領域と処理が劣勢の表面領域との膨張が異なる量だけ起こる。イオン交換、即ちスズの混入又はアニール履歴差の前に基材中に存在する物理特性によって、イオン交換工程中において、処理が優勢の表面領域と処理が劣勢の表面領域とにおける非対称の体積膨張が誘発される。実際に、通常は高いレベルの圧縮応力及び深い拡散深さのようなイオン交換によって与えられる有益な特性によって、表面領域間のイオンの吸収差が拡大され、したがって平坦、即ち減少したか又はゼロの湾曲が望ましいシートにおいてより大きな湾曲が誘発される。表面領域の体積の膨張差、及びしたがって基材の湾曲への望ましくない変化は、存在する場合にイオン交換中に湾曲を所定のレベルに減少又は増大させるためにどの更なる方法を用いるかに関係なく、イオン交換中に起こる。
【0137】
イオン交換中の塩イオンのかかる吸収差の原因に関係なく、膨張した表面領域は引張の中央領域の周りで回転し、得られる寸法差によって薄板化学強化ガラス基材の形状に対する変形がもたらされる。かかる変形は、イオン交換前に薄板ガラス基材によって示される湾曲(これは、イオン交換前の熱湾曲の随意的な工程、又はフロート法又はフュージョン法による一次製造の公差によって得られる平坦からの小さな偏差によって付与される湾曲のプロファイルである)に加えて起こる。例えば、平坦な薄板ガラス基材は、イオン交換による化学強化中に、真の平坦面から逸脱する湾曲体に変形する。実際にフロート法で製造されたガラス基材に関しては、化学強化されたガラス基材は、イオン交換後に浅皿形状になるくらいに変形する可能性がある。熱湾曲工程によって予め成形された化学強化ガラス基材であっても、イオン交換後に湾曲のプロファイルへの更なる変化を示す。上述したように、湾曲は、厚さの中心線を二分する仮想平坦面からの基材のより高い点とより低い点との間のガラス厚さの距離を超えるz軸上の距離の差である。湾曲のプロファイルは、湾曲体の寸法形状を画定する空間内のかかる点の蓄積である。
代表的な逆イオン交換媒体:
【0138】
本明細書で用いる逆イオン交換媒体とは、逆(reversing)アルカリイオンを含む逆イオン交換のために用いる固体、液体、又は気体を意味する。逆アルカリイオンは、イオン交換前の基材ガラス中のホストアルカリ金属イオンの平均イオン半径と同等か又はそれより小さい平均イオン半径を有するアルカリ金属イオンと定義される。逆イオン交換媒体には、1種類以上の逆アルカリイオンを含ませることができる。イオン交換前にナトリウムホストアルカリイオンを含むガラス表面領域を緩和するために好ましい逆アルカリイオンはナトリウムであり、これは、ナトリウムはイオン交換前のガラス表面領域中のナトリウムのホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等の平均イオン半径を有しているからである。しかしながら、イオン交換前にナトリウムホストアルカリイオンを含むガラス表面領域を緩和するための逆アルカリイオンはまたリチウムであってもよく、これは、リチウムはイオン交換前のガラス表面領域中にナトリウムホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも小さい平均イオン半径を有しているからである。或いは、イオン交換前にリチウムホストアルカリイオンを含むガラス表面領域を緩和するのに好ましい逆アルカリイオンはリチウムであり、これは、リチウムはイオン交換前のガラス表面領域中のリチウムホストアルカリイオンと同等の平均イオン半径を有しているからである。
【0139】
かかる逆イオン交換媒体は、イオン交換を強化するための上述の非限定的な方法のいずれか又はその組合せを用いてガラスシートに付与することができる。ガラスに逆イオン交換媒体を付与する1つの方法は、高温の液体溶融塩をタンク内に収容して、その中にガラスを所定時間浸漬して逆イオン交換を行う形態であってよい。かかる浸漬は、通常はガラスシートを溶融塩の液面ラインより下に保持することと同じであるが、液面ラインをガラスより下に維持して、高温再循環ポンプを用いて溶融塩を上方に移送してガラスの上にほぼ連続的に流す他のバリエーションが可能である。
【0140】
ガラスに逆イオン交換媒体を付与する他の方法は、ガラスに固体ペーストを適用し、次に場合によって冷却及び/又は乾燥工程を行い、次に所定時間炉内に配置して逆イオン交換を行う形態であってよい。ガラスに逆イオン交換媒体を付与する更に他の方法は、ガラスに気体状の化学物質の蒸気又はプラズマを堆積させ、次に場合によって冷却及び/又は乾燥工程を行い、次に所定時間炉内に配置して逆イオン交換を行う形態であってよい。ガラスに逆イオン交換媒体を付与する最後の他の方法は、溶融塩の混合物又は溶液又はエマルジョン、或いは塩水溶液のいずれかであってよい液体を、カーテンコート、噴霧コート、浸漬コート、ロールコート、スロットコート、及び/又はスプレーコートによって適用し、次に場合によって冷却及び/又は乾燥工程を行い、次に所定時間炉内に配置して逆イオン交換を行う形態であってよい。
【0141】
ガラスシートに逆イオン交換媒体を付与する間においては、その上に逆イオン交換媒体を付与するガラスの表面領域に制御を与えることができることは、この方法の重要な特徴である。かかる制御を与えることによって、逆イオン交換媒体を付与するかどうかに応じて、特定の表面領域を、逆イオン交換を行うために好適な温度に所定時間曝露することによって緩和逆イオン交換にかけることができる。実際には、表面領域の特定の制御を与えるためのかかる方法は、イオン交換による化学強化に関して本開示内で従前に示した方法と同じように適用することができる。しかしながら、好ましい方法は、高温炉中に所定時間移した後に特定の領域内で逆イオン交換が起こるのを阻止するために、逆イオン交換媒体の付与が望ましくないガラスの部分をマスクで遮蔽することである。これよりは好ましくない方法は、逆イオン交換を行う前に特定の領域から逆イオン交換媒体を水で洗浄除去することである。
【0142】
マスクは、一時的な物理的バリヤから構成することができる。例えば、好ましい方法は、高温ガスケット又は接着テープ若しくはフィルムから構成されるマスクを形成し、これを、逆イオン交換媒体によって覆うことが望ましくないガラス表面領域に適用することである。実際、かかるマスクは、それを通して逆イオン交換媒体を適用するシルクスクリーンの形態をとることができる。マスクを用いてガラスシートの表面領域の1以上の領域内で特定の寸法軸に沿って逆イオン交換媒体を適用することができることが意図される。逆イオン交換媒体は、マスクを用いて、逆イオン交換媒体を有しない交互の空間を有するドット又はラインのような幾何的パターンでガラス表面領域の全部又は一部に選択的に適用して、局在化した指向性緩和を誘発することができる。
【0143】
マスクによる遮蔽の他の方法は、縁部領域及びそれぞれの対向するガラスシートの主表面が付与中に逆イオン交換媒体の適用からシールされるように、真空吸引を用いて、2つの対向する同じ寸法のガラスシートを、高温シリコーンの周縁ガスケット(T字形のものであってよい)に沿って一緒に吸引することである。マスクの更に他の方法は、内部表面チャネルを含むシリコーンゴムシートを用いて、それを通して真空を引いて、それによりゴムシートを特定のガラス表面領域に結合させ、逆イオン交換媒体の付与中にマスクを形成することである。一時的な物理的バリヤとして作用するかかるマスクは、逆イオン交換媒体を所望のガラス表面領域に適用した後に除去することができる。或いは、マスクは、逆イオン交換媒体で被覆されたガラスを所定時間高温炉中に移して逆イオン交換を行った後に所定位置に残留するように設計又は構成されているものであってよい。
【0144】
マスクの他の好ましい方法は化学マスクである。例えば、ガラスの特定の表面領域に一時的な被覆を適用して、ガラスに付与された塩水溶液を付着させることなく単純に流去するか、或いはその残部をその後に容易に拭い取る。かかる被覆の例は、Glenview, ILのIllionis Tool Works (ITW)ディビジョンであるITW Global Brandsによって製造されているRAIN-X(登録商標)である。この合成疎水性被覆は、塗布又は噴霧によってガラス表面に適用することができる。かかる被覆は水をガラス表面上でビーズ状にし、かかるビーズ化を塩水溶液から水を除去する前に起こすと、逆イオン交換媒体によるガラスの被覆を、ガラスの特定の表面領域内に限定することができる。更に、かかる被覆は有機性であり、而して、炉内で逆イオン交換を行う時間中に単純に燃焼除去することができる。
【0145】
液体逆イオン交換媒体に関する代表的な態様は、熱水中に完全に溶解する硝酸ナトリウム(NaNO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の1対1(w/w)混合物を含む塩水溶液である。かかる液体逆イオン交換媒体は、アルカリ含有基材の処理が優勢の表面領域の逆イオン交換による緩和の代表的な態様である。周縁領域の周囲のテープを用いてガラス基材をマスクして、従前に切除及び縁部処理にかけられたより弱い領域が逆イオン交換媒体に曝露されるのを回避するようにする。次に、ガラスシートを予備加熱して、スプレーコートによって処理が優勢の表面領域上へ水性液体塩を付与する。冷却工程及び乾燥工程に続いて、テープマスクを周縁領域の周囲から除去する。得られるガラス基材を、除外された弱い周縁領域を除く全ての処理が優勢の表面領域全体に付与される、それぞれ逆アルカリイオンを含む2種類の塩化合物の共融混合物によって被覆する。
【0146】
固体逆イオン交換媒体に関する他の代表的な態様は、硝酸ナトリウム及びカオリンクレイのような流動剤を含む塩ペーストであり、これはガラス基材の処理が優勢の表面領域に適用して、次に乾燥することができる。次に、ガラス基材に、温度における時間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用する。かかる固体逆イオン交換媒体は、逆イオン交換によって、化学強化されたガラス基材の処理が優勢の表面領域を緩和することに関する代表的な態様である。また、液体及び固体逆イオン交換媒体に加えて、気体及びプラズマ逆イオン交換媒体も意図される。
【0147】
逆イオン交換媒体の構成は、密度において変化させて、より高いか又はより低い濃度の1種類以上の逆アルカリイオンが表面領域に付与されるようにすることができる。逆アルカリ金属イオンの濃度は、どのアルカリ金属塩化合物又はその組合せを用いるかを調節することによって変化させることができることが注記される。1種類以上の塩を用いる場合には、かかる塩は、会合の共融状態であっても、なくても良い。塩化合物の例は、異なる密度の逆アルカリ金属イオンを含む、アルカリ金属硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩、炭酸塩、及び塩化物である。逆イオン交換中に用いることができるアルカリ塩化合物のより通常的な例の幾つかは、硝酸ナトリウム(NaNO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、リン酸一ナトリウム(NaHPO)、リン酸二ナトリウム(NaHPO)、リン酸三ナトリウム(NaPO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、及び硝酸リチウム(LiNO)である。
【0148】
例えば、硝酸ナトリウム(NaNO)は84.99g/モルのモル質量を有し、その単一のナトリウムイオンはそのモル質量の27.0%に相当する。20℃における硝酸ナトリウムの密度は2.26g/cmであり、而してナトリウムイオンの濃度はその温度において0.610g/cmである。これに対して、炭酸ナトリウム(NaCO)は105.988g/モルのモル質量を有し、その2つのナトリウムイオンは質量の43.4%に相当する。20℃における炭酸ナトリウムの密度は2.54g/cmであり、しかして質量基準のナトリウムイオンの濃度はその温度において1.102g/cmである。密度は温度に応じて変動するが、硝酸ナトリウム塩の逆イオン交換媒体は、同じ温度における同じ体積の炭酸ナトリウムの逆イオン交換媒体中に含まれるものと異なる濃度の逆アルカリ金属イオンを含むと言うことができる。
【0149】
逆イオン交換媒体中の逆アルカリ金属イオンの濃度、及び相互拡散へのその可用性はまた、特定の特性も付与することができる他の添加剤を含ませることによって変化させることもできる。逆イオン交換媒体には、例えばカオリンのようなクレイの添加剤、水、又は例えばグリセロール又はジエチレングリコールのような溶媒を含ませることができ、これにより逆アルカリ金属イオンの濃度を低下させることができる。必須ではないが、逆イオン交換媒体に、イオン交換前のガラス基材中のホストアルカリイオンよりも平均イオン半径が大きい所定割合のアルカリイオンを含ませることができると意図される。例えば、逆イオン交換媒体に、逆イオン交換プロセスを遅延させる割合のカリウムイオンを含ませることができる。逆イオン交換媒体に、例えばそれぞれ銅イオン又は銀イオンのような色又は細菌抵抗性を加える所定割合の金属イオンを含ませることができる。逆イオン交換媒体に、マグネシウム(Mg)イオン、カルシウム(Ca)イオン、ストロンチウム(Sr)イオン、又はバリウム(Ba)イオンのような所定割合の低移動度のアルカリ土類イオンを含ませることができる。
代表的な逆イオン交換処理:
【0150】
図4A及び図4Bは、本発明において用いられ、本明細書に記載される処理工程に関する略図である。
【0151】
本明細書において用いる逆イオン交換処理は、温度における時間の熱プロファイルによって規定し得る熱の存在下で逆イオン交換媒体に曝露することによって、ガラス基材の化学強化された表面領域内の圧縮応力の化学的に誘発される緩和として定義される。逆イオン交換処理中においては、ガラス基材中のより大きいアルカリ金属イオンがガラス表面領域から追い出され、逆イオン交換媒体中のより小さいアルカリ金属イオンがボイド中に入り込んで、ガラス表面領域の体積を僅かに収縮させる。温度が、逆イオン交換を起こすことができる温度よりも高いならば、表面から好ましくは深さ15μm未満、好ましくは深さ10μm未満、最も好ましくは深さ5μm未満までの表面領域内の圧縮応力に対する僅かな緩和を誘発することができる。実際、逆イオン交換した表面領域内の表面圧縮応力のレベルは、逆イオン交換中に10%以下、より好ましくは7.5%以下、最も好ましくは5.0%以下減少することが好ましい。
【0152】
逆イオン交換を行う際には、ガラスネットワーク構造に対する緩和、及び/又は表面領域内における拡散深さの大きさを横切るより大きな侵入性アルカリイオンの再分散が最小になるように、温度をより低く、より短い時間維持することが好ましい。具体的には、より高い温度及び/又はより長い時間においては、より大きな侵入性アルカリ金属イオンが拡散深さ中に更に拡散して、それらの濃度勾配がより大きな拡散率の体積にわたって平らになるので、圧縮応力のレベルは表面領域の拡散深さ全体にわたって減少する可能性がある。かかる温度における時間の例は、400℃より高い温度において数時間の薄板ガラス基材のアニール中、例えば400℃~500℃の6~8時間の熱プロファイル中に起こるものである。減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを達成する目的のためとは異なり、表面からより好ましくは深さ約10μm以下、最も好ましくは深さ約5μm以下で圧縮応力の制御された緩和が誘発されるように、温度をより低く、時間をより短く維持することが好ましい。このようにして、ガラスネットワークの再緩和又はイオンの再分配(非対称性を更に変化させる)による表面領域の幅全体にわたる圧縮応力のレベル及び深さに対する変化が回避される(即ち、したがって必要な応力緩和の量は固定されたままであり、「変化する目標」ではない)。
【0153】
与えられたガラス基材に関する逆イオン交換速度は、所定時間の間に化学強化されたガラス基材中のより大きなイオンの代わりに置換するより小さいイオンの正味の量であり、温度、逆イオン交換媒体、及びガラス基材の化学構造の関数である。逆イオン交換を行う時間は、圧縮応力の減少、及びしたがって必要な応力緩和強さのレベルに応じて、好ましくは30分未満、より好ましくは20分未満、より好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満である。逆イオン交換を行う温度は変化させることができるが、好ましくは400℃未満、より好ましくは380℃未満、より好ましくは360℃未満、最も好ましくは340℃未満である。本発明方法及び与えられる物品において減少したか又はゼロの湾曲又は所定の湾曲プロファイルを達成する目的のためには、逆イオン交換に関する熱プロファイルは、圧縮された表面領域全体にわたって圧縮応力のレベル及び深さの全体としての測定しうる変化を回避するのに好適な温度における時間の特定の組合せである(即ち、逆イオン交換の浅い深さに加えて、圧縮された表面領域を変化しない状態に維持することが好ましい)。印加電圧補助又は周波数誘導加熱(両方とも当該技術において公知である)を用いて逆イオン交換速度を局所的に増加させて、それによって時間及び/又は温度に対する更なる減少を可能にすることもできると意図される。
【0154】
減少したか又はゼロの湾曲を有する逆イオン交換されたガラスの代表的な態様は、処理が優勢の表面領域を逆イオン交換によって緩和したナトリウムアルミノシリケートガラスである。熱水中に完全に溶解する硝酸ナトリウム(NaNO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の1対1(w/w)混合物を含む塩水溶液を、予備加熱されたガラス基材の処理が優勢の表面領域上にスプレーコートによって付与する。冷却及び乾燥工程を行い、得られるガラス基材を、除外された弱い周縁領域を除く全ての処理が優勢の表面領域全体に付与される、それぞれ逆アルカリイオンを含む2種類の塩化合物の共融混合物によって被覆する。次に、330℃の温度における4分間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用することによって、ガラス基材を逆イオン交換にかける。かかる代表的な態様においては、得られる逆イオン交換された化学強化ガラスは、表面から深さ約5μmの処理が優勢の表面領域における圧縮応力の僅かな緩和を示し、一方で逆イオン交換後の表面圧縮応力のレベルは少なくとも600MPaに維持され、圧縮層の深さは少なくとも40μmに維持される。得られる化学強化された基材は、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在するよりも小さい湾曲を有する。
【0155】
減少したか又はゼロの湾曲を有する逆イオン交換したガラスの他の代表的な態様は、処理が優勢の表面領域を逆イオン交換によって緩和したソーダ石灰シリケートガラスである。硝酸ナトリウム(NaNO)及び炭酸ナトリウム(NaCO)、並びにカオリンクレイのような流動剤を含む個体塩ペーストを、ガラス基材の処理が優勢の表面領域に適用し、次に乾燥工程を行う。硝酸ナトリウムのみ及びより高い濃度のカオリンクレイを含む塩ペーストを、ガラス基材の処理が劣勢の表面領域に適用し、次に乾燥工程を行う。この代表的な例においては、逆イオン交換媒体は面密度の異なる構成を有し、処理が劣勢の表面領域よりも高い濃度の逆アルカリイオンを、処理が優勢の表面領域に付与する。次に、330℃の温度における4分間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用することによって、ガラス基材を逆イオン交換にかける。かかる代表的な態様においては、得られる逆イオン交換された化学強化ガラスは、それぞれの表面から深さ約5μmの処理が優勢の表面領域において圧縮応力の比較的により大きい緩和を示し、一方で逆イオン交換後の表面圧縮応力のレベルは少なくとも300MPaに維持され、圧縮層の深さは少なくとも15μmに維持される。得られる化学強化された基材は、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在するよりも小さい湾曲を有する。
【0156】
所定の湾曲プロファイルを有する逆イオン交換されたガラスの更なる代表的な態様は、逆に処理が劣勢の表面領域を逆イオン交換によって緩和したナトリウムアルミノシリケートガラスである。熱水中に完全に溶解する硝酸ナトリウム(NaNO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の1対1(w/w)混合物を含む塩水溶液を、予備加熱されたガラス基材の処理が優勢の表面領域上にスプレーコートによって付与する。次に、314℃の温度における6分間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用することによって、ガラス基材を逆イオン交換にかける。かかる代表的な態様においては、得られる逆イオン交換された化学強化ガラスは、表面から深さ約5μmの処理が劣勢の表面領域における圧縮応力の僅かな緩和を示し、一方で逆イオン交換後の表面圧縮応力のレベルは少なくとも600MPaに維持され、圧縮層の深さは少なくとも40μmに維持される。得られる化学強化された基材は、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在するよりも大きい湾曲を有する。得られる化学強化基材は、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在しない所定の湾曲プロファイルを有する。
【0157】
所定の湾曲プロファイルを有する逆イオン交換されたガラスの更なる代表的な態様は、その軟化点に加熱し、金型の形状に熱湾曲させ、次に化学強化を行い、その後、処理が優勢の表面領域を逆イオン交換によって緩和したナトリウムアルミノシリケートガラスである。熱水中に完全に溶解する硝酸ナトリウム(NaNO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の1対1(w/w)混合物を含む塩水溶液を、予備加熱されたガラス基材の処理が優勢の表面領域上にスプレーコートによって付与する。冷却及び乾燥工程を行い、次に、330℃の温度における4分間の熱プロファイルによって規定し得る熱を適用することによって、ガラス基材を逆イオン交換にかける。かかる代表的な態様においては、得られる逆イオン交換された化学強化ガラスは、表面から深さ約5μmの処理が優勢の表面領域における圧縮応力の僅かな緩和を示し、一方で逆イオン交換後の表面圧縮応力のレベルは少なくとも600MPaに維持され、圧縮層の深さは少なくとも40μmに維持される。得られる化学強化された基材は、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在するよりも小さい湾曲を有する。得られる化学強化基材は、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在しない所定の湾曲プロファイルを有する。
【0158】
逆イオン交換による少なくとも1つの表面領域における圧縮応力の緩和は、好ましくは、従前の強化イオン交換中に達成される表面圧縮応力のレベル及び深さに大きな減少を与えずに達成される。逆イオン交換後のガラス基材の両方の表面領域における表面圧縮応力のレベルは、好ましくは少なくとも100MPa、好ましくは少なくとも200MPa、好ましくは少なくとも300MPa、好ましくは少なくとも400MPa、好ましくは少なくとも500MPa、好ましくは少なくとも600MPa、好ましくは700MPa以上、好ましくは800MPa以上、好ましくは900MPa以上、好ましくは1,000MPa以上である。表面圧縮応力レベルに対する減少によってより低い強度がもたらされる。これは、衝撃又は荷重からの引張応力が欠陥の先端における表面圧縮応力よりも大きくなって、亀裂を伝搬させて破損をもたらす可能性があるからである。逆イオン交換後のガラス基材の両方の表面領域における圧縮応力の深さは、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、好ましくは少なくとも30μm、好ましくは少なくとも40μm、好ましくは50μm以上、好ましくは60μm以上、好ましくは75μm以上、好ましくは100μm以上である。圧縮応力の深さに対する減少によって、擦過又は引掻による表面圧縮の緩和に対する抵抗がより小さくなり、十分に深い場合には引張領域に入って破損をもたらす可能性がある。
【0159】
より通常的には、逆イオン交換プロセスは、イオン交換工程の完了後に薄板ガラス基材内に存在する湾曲の測定によって開始される。通常は、その起源に関係なくイオン交換ガラス基材によって示される湾曲の量を装置によって測定した後に手順を行う。かかる装置としては、イオン交換ガラス基材によって示される湾曲の量を定量的に定める非接触型の光学スキャナー又はレーザーマイクロメーターを挙げることができる。実際に、より高性能の三次元光学表面スキャンを用いて、面から外れる(又は所望の)湾曲の量を、ガラス基材上の局所領域を横切って定量することができる。例えば、三次元ポイントスキャンレーザーを用いて「ポイントクラウド」データを得て、これをCADソフトウエアに転送して、薄板ガラス基材の寸法特性の再付与を構築することができる。それにより測定を行う手段に関係なく、湾曲変化の正味の量を、イオン交換後の薄板ガラス基材中に存在し望ましいものから減ずることができる。
【0160】
逆イオン交換のパラメーターを、逆イオン交換前のイオン交換されたガラス基材中に存在する湾曲の量に関連して調節して、逆イオン交換後に減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルの状態をもたらすことができる。イオン交換後の薄板ガラス基材の1つ、全部、又は一部の寸法特性の量的規定から、イオン交換されたガラス基材によって既に示されている湾曲の量に基づいて予測を行うことができ、減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを達成するためにより正確な予測が得られるように、逆イオン交換プロセスに関するパラメーターを必要に応じて調節することができる。しかしながら、表面体積の非対称の膨張から得られるものを含む湾曲の修正も、計装測定及び予測式によって常に解明することができるものではなく、製造環境における実際の問題の1つであることを注意することが重要である。したがって、逆イオン交換は、プロセスとして多くのパラメーターを有する柔軟な手段を与え、それによって、減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを有する化学強化薄板ガラス基材が製造されるように、作業現場において迅速に調節を行って、対向する表面領域の間の圧縮応力の差の合計に対する正味の変化を達成することができる。
【0161】
減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルが達成されるように、逆イオン交換中の薄板ガラス基材の湾曲の修正に対して調節を行うことができる幾つかのパラメーターが存在する。これらは、場合によって、有効性、簡単さ、及びコスト有効性に関する基準によって選択することができ、時間、温度、及び逆イオン交換媒体の構成の少なくとも1つに対する変更を挙げることができる。製造効率は、逆イオン交換を、通常の処理が優勢の表面領域に通常適用される単一の構成の逆イオン交換媒体による単一の熱プロファイルで好ましく実施することができることを確実にする。しかしながら、1つより多い温度における熱プロファイルを含むパラメーターを用い、及び/又は1つより多い構成の逆イオン交換媒体を用いて逆イオン交換を行うことができる。例えば、湾曲の修正が従前の工程中に満足できないものであることが分かった場合には、逆イオン交換の工程を、同じか又は異なるパラメーターを用いて1回以上繰り返すことができる。逆イオン交換に対する主要な制限ファクターは、逆イオン交換された表面中の圧縮応力のレベルが、ガラス用途に関する最小の要件よりも下方に減少するかどうかである。しかしながら、かかる稀な事象の場合においても、基材は明らかにイオン交換によって再び再強化することができ、勿論、(減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを達成するために)逆イオン交換に再びかけることができる。
【0162】
温度における時間の変更は、逆イオン交換中の薄板ガラス基材の湾曲の修正を調節するための変化の1つの手段である。例えば、温度における時間の熱プロファイルによって規定することができる熱の適用を調節して、より高いか又はより低い温度におけるより短いか又はより長い時間を含ませることができる。より低い温度における逆イオン交換の実施は、所定の逆イオン交換媒体でより大きな応力緩和を達成するためにはより長い時間が必要であるが、かかる緩和のレベルの制御においてより大きな有効性を与える。ここでも、逆イオン交換を行う際には、ガラスネットワーク構造に対する緩和、及び/又は逆イオン交換の工程にかけられる浅い表面領域の下側の拡散深さ内のイオンの再分配を最小にし、並びに逆イオン交換にかけられない表面領域の全拡散深さに対する実質的な変化を回避するために、温度をより低く、時間をより短くすることが、一般に好ましい。実際に、逆イオン交換に直接かけられない表面領域において、圧縮応力のレベル及び深さに対して、何れかの有意の変化(例えば、測定装置の解像正確性よりも大きい変化)を回避するのが好ましい。
【0163】
逆イオン交換媒体の構成への変更は、逆イオン交換中における薄板ガラス基材の湾曲の修正を調節するための変化の他の手段である。これは、製造環境において好ましい手段であり、連続機械化ライン又はバッチプロセスの1つであり、これにより、減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを達成するために、逆イオン交換中における薄板ガラス基材の湾曲の修正に対して小さな進行する調節が行われる。実際に、製造は、好ましくは設定された温度における設定時間において逆イオン交換を行い、その結果として、逆イオン交換媒体を変化させることによって進行する小さな修正を逆イオン交換工程に行って、個々の薄板ガラス基材の間の処理が優勢の表面領域と処理が劣勢の表面領域の間のより小さい差を無効にするようにすることができる。実際に、逆イオン交換媒体の体積、その中に含まれる逆アルカリイオンの種、その中に含まれる逆アルカリイオンの種の濃度、及び逆イオン交換の速度を変化させる添加剤をその中に含ませるかどうかの少なくとも1つを変化させることによって、湾曲の修正を調節することができる。
【0164】
最初に、逆イオン交換媒体の体積をより大きな体積又はより小さな体積に変化させて、逆イオン交換中にガラス表面領域へより多い量又はより少ない量の逆アルカリイオンを付与することができる。ガラス表面領域に適用される逆イオン交換媒体をより薄く適用すると、与えられた時間及び温度において、逆イオン交換中にガラス表面領域から拡散されるより大きなアルカリ金属イオンによってより迅速に飽和されるようになり、而して緩和に関するその有効性がより迅速に失われる。ガラス表面領域に適用される逆イオン交換媒体をより厚く適用すると、逆イオン交換中にガラス表面領域から拡散されるより大きいアルカリ金属イオンによるより低い有効性から生起する変動が殆どの部分に関して検出できない状態に維持されるのに十分な逆アルカリ金属イオンを含むことができる。その結果、ガラス表面領域に適用される逆イオン交換媒体の体積に対する変化(薄い適用対厚い適用)を用いて、逆イオン交換中の圧縮応力の緩和を変化させ、それによって薄板ガラス基材における湾曲の修正に対する調節を与えることができる。
【0165】
第2に、逆イオン交換媒体中に逆アルカリイオンの種類を変化させて、逆イオン交換中に異なる平均イオン半径の逆アルカリイオンをガラス表面領域に付与することができる。与えられた濃度のリチウムイオンを含む逆イオン交換媒体は、与えられた濃度のナトリウムイオンを含む逆イオン交換媒体とは対照的に、ナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラスのガラス表面領域に適用すると、与えられた時間及び温度において、逆イオン交換中にガラス表面領域の表面体積をより迅速に減少させる。更に、逆アルカリイオンは、例えばリチウムイオンとナトリウムイオンの両方の混合物のような、2種類の逆アルカリイオンの組合せであってよい。その結果、ガラス表面領域に適用される逆イオン交換媒体中に含まれる逆アルカリイオンの種に対する変化を用いて、逆イオン交換中の圧縮応力の緩和を変化させ、それによって薄板ガラス基材における湾曲の修正に対する調節を与えることができる。
【0166】
第3に、逆イオン交換媒体中の逆アルカリイオンの種の濃度を変化させて、逆イオン交換中にガラス表面領域により多い量又はより少ない量の逆アルカリイオンを付与することができる。逆アルカリ金属イオンの濃度は、逆イオン交換媒体中においてどのアルカリ金属塩化合物又はその組合せを用いるかを調節することによって、逆イオン交換媒体中で変化させることができることは既に注記している。塩化合物の例は、異なる密度の逆アルカリ金属イオンを含むアルカリ金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩、炭酸塩、及び塩化物である。例えば、炭酸ナトリウムの塩化合物中のナトリウムイオンの密度は、硝酸ナトリウムの塩化合物中のナトリウムイオンの密度とは異なる。而して、与えられた体積中により大きな濃度のナトリウムイオンを含む(即ちより大きな密度の)逆イオン交換媒体は、ガラス表面領域に適用すると、与えられた時間及び温度において、逆イオン交換中のガラス表面領域の表面体積をより迅速に減少させる。その結果、ガラス表面領域に適用される逆イオン交換媒体中に含まれる逆アルカリイオンの1以上の種の濃度に対する変化を用いて、逆イオン交換中の圧縮応力の緩和を変化させ、それによって薄板ガラス基材における湾曲の修正に対する調節を与えることができる。
【0167】
最後に、逆イオン交換媒体中の添加剤の含有物を変化させて、逆イオン交換中にガラス表面領域へ付与される逆イオン交換アルカリイオンの逆イオン交換の速度を修正することができる。逆イオン交換媒体の速度は、例えば、カオリンのようなクレイの添加剤、水、又は例えばグリセロール若しくはジエチレングリコールのような溶媒を含ませて、逆イオン交換媒体中の表面領域に付与される逆アルカリイオンの濃度を減少させることによって調節することができる。更に、逆イオン交換媒体を化学的に修正して、カルシウムのようなアルカリ土類イオンのような添加剤、或いはカリウムのような侵入性アルカリイオンを含ませることができることも意図される。例えば、より小さい割合のカルシウムのようなアルカリ土類イオン又はカリウムのような侵入性アルカリイオンの添加を用いて、ガラス表面領域から追い出されるより大きいイオンの逆イオン交換の正味の速度を減少させることによって、逆イオン交換媒体の逆イオン交換速度を遅延させることができる。しかしながら、かかる添加剤の濃度は、正味のイオン交換(即ち圧縮応力の構築)又は逆イオン交換(即ち圧縮応力緩和の防止)の排除を回避するように好適に低く維持する必要がある。本発明の好ましい態様は、適用する際にアルカリ土類イオンを含まず、侵入性アルカリイオンを含まない逆イオン交換媒体を用いて逆イオン交換を行うことである。
【0168】
更に、1以上の表面領域又はその部分的な区域に対するパラメーターを変化させることは、減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルが達成されるように、逆イオン交換中における薄板ガラス基材の湾曲の修正に対して行うことができる他の調節である。例えば、時間及び温度によって規定される熱の適用をガラス基材全体に特定して行うことができるが、特定の区域(特定の表面領域又はこれらの表面領域内の複数の区域)に対して異なって適用することもできる。他の例は、特定の区域(特定の表面領域又はこれらの表面領域内の複数の区域)に対して異なって適用し得る逆イオン交換媒体の構成に対する変化である。上述したように、逆イオン交換の工程は、同じか又は異なるパラメーターを用いて1回以上繰り返すことができ、これは特定の区域(特定の表面領域又はこれらの表面領域内の複数の区域)を含むように拡張することができる。逆イオン交換の工程は、同時か、逐次的か、又は他の順序若しくは複数の順序の組合せで行うことができる。その結果、特定の区域(特定の表面領域又はこれらの表面領域内の複数の区域)を含むパラメータの変化を用いて、逆イオン交換中の圧縮応力に対する緩和を変化させ、それによって表面領域の局所的な区域における湾曲の修正に対する異なる量の更なる調節を与えることができる。
【0169】
逆イオン交換中に薄板ガラス基材の湾曲を修正する好ましい表面領域又はその部分的区域が存在する。逆イオン交換は、勿論ガラスシートの全主表面にわたって行うことができる。逆イオン交換は、1以上のガラスの縁部又はその一部について、意図的か、又は逆イオン交換媒体の混入の結果として行うことができる。逆イオン交換は、対向する主表面について、ここでも意図的か、又は特に周縁端及び/又は穿孔縁付近の逆イオン交換媒体の混入の結果として行うことができる。開示する逆イオン交換方法によって、圧縮応力のレベルが好ましくは最小量のみ減少するが、縁部及びかかる縁部に直接隣接する主表面領域は、強化に関するガラスシートの最も重要な領域である。実際、外部衝撃、機械的力から得られるか、又は切断若しくは縁部処理のような製造工程によって誘発される欠陥から得られる破損の起源になる傾向が最も大きいのは、ガラスシートのこれらの領域である。
【0170】
而して、本発明の好ましい態様は、主表面の全領域(しかしながら縁部、並びに切断又は穿孔の付加にかけられた弱い表面領域は排除される)にわたって逆イオン交換を行うことである。而して、これらの排除された領域においては逆イオン交換後に圧縮応力の大きな非対称性が残留するが、これらの排除された領域の寸法は、全体としてガラスシートにおける湾曲の修正に過度に影響を与えないように好適に小さい(即ち、切断又は穿孔を行った表面領域は、目に見える湾曲を示すか、又はガラスシート全体として示される湾曲に影響を与えるのには不十分な寸法のものである)。逆イオン交換工程中に排除される主表面の領域としては、0.1mm未満、0.1mm乃至1.0mm未満の間、1.0mm乃至3.0mm未満の間、3.0mm乃至6.0mm未満の間、6.0mm乃至12.0mm未満の間、12.0mm~25.0mmの間、又は25.0mmより大きい幅を有する縁部に隣接する帯状部を挙げることができる。
【0171】
而して、逆イオン交換媒体は、好ましくは、化学強化ガラス基材の少なくとも表面領域に適用する。より好ましくは、逆イオン交換媒体は、化学強化ガラス基材の少なくとも1つの主表面領域に施す。更により好ましくは、逆イオン交換媒体は、少なくとも化学強化ガラス基材の1つの主表面領域全体に適用する。更により好ましくは、逆イオン交換媒体は、切断及び/又は穿孔の付加のような寸法変化にかけた領域を除く化学強化ガラス基材の少なくとも1つの主表面領域に適用する。最も好ましくは、逆イオン交換媒体は、少なくとも、切断及び/又は穿孔の付加のような寸法変化にかけられた領域を除く化学強化ガラス基材の1つの主表面領域全体に適用する。
【0172】
本開示の好ましい態様においては、減少したか又はゼロの湾曲を有する化学強化薄板ガラス基材を製造する方法が存在する。その表面領域中にある化学構造を有する薄板ガラス基材を用意する。ガラスの化学構造は、薄板ガラス基材の表面領域内に配置されるある平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを含む。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。この方法は、イオン交換媒体を用意することを含む。イオン交換媒体は、ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含む。この方法は、好ましくは同じ構成のイオン交換媒体を、ガラス表面領域及び縁部の両方に適用することを含む。この方法は、イオン交換媒体を適用する間に、好ましくは時間及び温度のような同じパラメーターを用いてイオン交換を行って化学強化基材を生成させることを含む。この方法は、逆イオン交換媒体を用意することを含む。逆イオン交換媒体は、イオン交換前のホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等か又はそれよりも小さい平均イオン半径を有する逆アルカリイオンを含む。この方法は、逆イオン交換媒体を、少なくとも処理が優勢の表面領域に適用することを含む。この方法はまた、逆イオン交換媒体を適用する間に逆イオン交換を行って、減少した湾曲又はゼロの湾曲を有する化学強化基材を生成させることも含む。
【0173】
逆イオン交換の工程後に減少したか又はゼロの湾曲を有する化学強化薄板ガラス基材を生成させるために、逆イオン交換の工程に対する更なる修正が可能である。減少したか又はゼロの湾曲を得るために、好ましい方法は、逆イオン交換を、主として薄板ガラス基材の処理が優勢の表面領域について行う。しかしながら、逆イオン交換はまた、応力の緩和が合計で処理が優勢の表面について起こるものよりも小さく、したがって従前にイオン交換によって化学強化されたガラス基材における湾曲が減少するならば、処理が劣勢の表面にも行ってその圧縮応力の一部も緩和することができる。両方の表面領域の逆イオン交換は、同時、逐次的、又は他の順序で行うことができる。例えば、処理が優勢の表面に関する圧縮応力が過度に大きく減少し、湾曲がゼロの湾曲を超えて減少してマイナスになった場合には、逆イオン交換を処理が劣勢の表面領域について行って反対の方向の湾曲を誘発させ、それによってマイナスの湾曲状態を除去することができる。処理が劣勢の表面の逆イオン交換は、時間、温度、及び逆イオン交換媒体の構成の少なくとも1つを変化させることによって、処理が優勢の表面領域について当初に行われたものよりも好適に小さく維持して、更に減少したか又はゼロの湾曲が達成されるようにすることができる。
【0174】
本開示の他の態様においては、所定の湾曲プロファイルを有する化学強化薄板ガラス基材を製造する方法が存在する。その表面領域中にある化学構造を有する薄板ガラス基材を用意する。ガラスの化学構造は、薄板ガラス基材の表面領域内に配置されるある平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを含む。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。ガラス基材は、場合により、イオン交換前にその軟化点に加熱して次に工具又は金型の形状に熱湾曲させることができる。この方法は、イオン交換媒体を用意することを含む。イオン交換媒体は、ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有する逆アルカリイオンを含む。この方法は、好ましくは同じ構成のイオン交換媒体を、ガラス表面領域及び縁部の両方に適用することを含む。この方法は、イオン交換媒体を適用する間に、好ましくは時間及び温度のような同じパラメーターを用いてイオン交換を行って化学強化基材を生成させることを含む。この方法は、逆イオン交換媒体を用意することを含む。逆イオン交換媒体は、イオン交換前のホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等か又はそれよりも小さい平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含む。この方法は、逆イオン交換媒体を、少なくとも1つの表面領域に適用することを含む。この方法はまた、逆イオン交換媒体を適用する間に逆イオン交換を行って、所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材を生成させることも含む。
【0175】
逆イオン交換の工程の後に所定の湾曲プロファイルを有する化学強化薄板ガラス基材を生成させるために、逆イオン交換の工程に対する更なる修正が可能である。例えば、逆イオン交換媒体を逆に処理が劣勢の表面領域に適用し、逆イオン交換を行ってイオン交換後に存在する湾曲を穏やかに拡大することができる。更に、逆イオン交換媒体を、それらの間に逆イオン交換媒体を有しない交互の空間を有するドット又はラインのような幾何的パターンの被覆でガラス表面領域の全部又は一部に適用することができると意図される。かかる適用は、特定の寸法軸に沿ってか又は表面領域の1つの区域内において、異なる体積縮小、及びそれにより他よりも多い湾曲の穏やかな修正を誘発させることができる。更に、あまり好ましくはないが、同時に他の表面領域又はその一部について強化イオン交換を行いながら、1つの表面領域又はその一部について逆イオン交換を行うことができることが意図され、これは例えば対向する表面領域について行う場合には、逆イオン交換の工程のみが与えるよりも大きな湾曲を付与するために用いることができる。
【0176】
上記で議論したように、イオン交換工程は、基本製造法(フュージョン法vsフロート法)によって付与されるものを含むガラス基材の物理特性によってもたらされるものを超えてより大きいか又はより小さい湾曲を付与するように意図的に修正することができる。イオン交換プロセス後の薄板ガラス基材中の湾曲の原因とは関係なく、逆イオン交換の工程を用いて、湾曲を所定の湾曲プロファイルに「微調整」することができる。例えば、イオン交換の工程中に付与された球状の湾曲プロファイルを、逆イオン交換の工程によって更に平坦化又は強化して、所定の湾曲プロファイルに関する規定の公差(tolerance)を満足させることができる。所定の湾曲プロファイルを意図的に減少/増大させる目的のためには、逆イオン交換を1以上の表面領域について行うことができ、或いは勿論、基材の局所領域のみに適用することもできる。更に、逆イオン交換は、対向する表面領域において僅かに異なる量の応力緩和を誘発して、単一の表面領域のみに逆イオン交換を行った場合に可能であり得るよりも微細なレベルの湾曲の「微調整」に対する解決を達成するように、時間、温度、及び逆イオン交換媒体の構成の少なくとも1つのパラメーターを僅かに変化させる他は、対向する表面領域又はその一部について同時に行うことができる。
【0177】
逆イオン交換の工程の後に更により極端な所定の湾曲プロファイルを示す化学強化薄板ガラス基材を製造するために、逆イオン交換の工程に対する更なる修正が可能である。薄板ガラス基材を、イオン交換の前に熱湾曲の工程にかけることができる。次に、逆イオン交換を用いて、イオン交換後の薄板ガラス基材の形状を所定の湾曲プロファイルに「微調整」することができる。例えば、逆イオン交換を用いて、形状を付与するために用いた工具又は型、及び/又は薄板ガラス基材を成形具又は型と合致させた際の欠陥の両方における湾曲公差によって引き起こされる所定の形状からの偏差を修正することができる。更に、逆イオン交換の工程を用いて、熱湾曲工程から残留する表面領域のアニール履歴における変動から引き起こされる所定の湾曲プロファイルからの偏差を調整することができる。最後に、逆イオン交換工程は、更には処理が劣勢の表面領域に適用して、フロート法で製造された基材に関する金属スズによる表面領域の汚染のようなガラスの物理特性から引き起こされる対称性における変動を除去することもできる。而して、逆イオン交換の工程は、イオン交換前に熱湾曲の工程にかけられた薄板ガラス基材における所定の湾曲プロファイルに関する規定の公差を満足するための更なる修正のために有用な方法を提供する。
【0178】
図6は、大型ゲームコンソールのタッチスクリーンパネルを形成するのに用いられる所定の湾曲プロファイルを有する本発明の化学強化薄板ガラス基材を示す概略図である。
【0179】
本発明はまた、従前に得られた化学強化薄板ガラス基材を逆イオン交換にかけて、従前に得られた化学強化薄板ガラス基材には現れていない次の特性:減少した湾曲又はゼロの湾曲、或いは所定の湾曲プロファイル:の少なくとも1つを付与する別の態様も意図し且つ提供する。この方法は、化学強化された逆イオン交換媒体を用意することを含む。逆イオン交換媒体には、(得られる化学強化薄板ガラス基材の)イオン交換前のホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等か又はそれより小さく、及び/又は(得られる化学強化薄板ガラス基材の)イオン交換中に適用される侵入性イオンの平均イオン半径よりも小さいイオン交換平均イオン半径を有する逆アルカリイオンを含ませることができる。この方法には、薄板ガラス基材の表面領域に逆イオン交換媒体を適用することを含ませることができる。この方法にはまた、逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、減少したか、ゼロの湾曲又は所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材を生成させることを含ませることもできる。
【0180】
本発明において提案する方法は、特定のガラス用途(優れた平坦度が望まれるもの)に適するか、又は所定の湾曲プロファイルに関する規定の公差を満足する高品質の化学強化ガラス基材になるガラス基材を可能にする。
代表的な化学強化ガラス:
【0181】
逆イオン交換の後において、イオン交換ガラスにおいて存在する圧縮応力は、減少したか又はゼロの湾曲が所望の場合に、ガラス基材の処理が優勢の表面領域と処理が劣勢の表面領域の間の増大した対称度を示す。逆イオン交換は、これを行わない場合にはイオン交換による化学強化の同等の条件下で起こる表面領域における異なるアルカリイオン拡散速度を無効にすることができる。これは、かかる湾曲が何に由来するか(ガラス基材製造の基本方法(例えばフュージョン法かフロート法か)によって付与される物理特性の結果であり得るものを含む)に関係なく行うことができる。これはまた、例えばバリヤコーティング、イオン注入、フッ素化、脱アルキル化等のような化学強化前のガラスシートの物理特性に対する意図的な変化に由来する湾曲に関して行うこともできる。これはまた、例えば時間、温度、イオン交換媒体への被毒添加剤の添加、及び/又はイオン交換媒体の面密度に対する変更等を操作する従来技術のもののような、対向する表面領域に異なって適用されるイオン交換による化学強化の特定のパラメーターに由来する湾曲に関して行うこともできる。
【0182】
要するに、処理が優勢の表面領域を、処理が劣勢の表面領域と比べてより大きな圧縮応力のその優勢を失うように調節することができる。処理が優勢の表面と処理が劣勢の表面との間のより大きな均質化の状態が総体的に達成されるが、表面における圧縮応力の絶対レベル、圧縮層の深さ(DOL)、及び表面と圧縮層のゼロ点深さ(DOL)(圧縮応力が終了する箇所)の間の層における圧縮応力は、それとは関係なく、しばしば表面領域の間でなお相違する。更に、最終目標が減少したか又はゼロの湾曲である場合には、対向する表面領域における圧縮応力の対称性を僅かに偏らせて、一時的製造(フュージョン法かフロート法か)の公差から残留する絶対的な平坦度からの小さな偏差を相殺することもできる。
【0183】
処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域の体積の膨張は、減少したか又はゼロの湾曲が望ましい場合には、逆イオン交換の工程後に全体でより大きな平衡状態であるか又は対象であるように示すことができる。引張の中央領域の周囲の表面領域の膨張はイオン交換中は非対称であるが、逆イオン交換の工程によって表面領域の体積を減少させて、対向する表面領域の間の平衡状態を達成することができる。得られる表面領域間の寸法差は全体で最小になり、薄板化学強化ガラス基材の湾曲体への変形が無効になる。実際、減少したか又はゼロの湾曲が望ましい場合には、イオン交換中の塩イオンの拡散の非対称性を逆イオン交換の工程によって最小にすることができるので、化学強化薄板ガラス基材は、真の平面のものからの減少したか又はゼロレベルの湾曲を示す。
【0184】
薄板化学強化ガラスシートに関して許容し得る湾曲は、用途の特定の美的及び機能的要件にしたがって変化する。本開示の目的のための減少した湾曲は、広範には、短辺の中心点の間を接続するガラスシートの長さと平行に引いた線を横切って求められる山から谷への高さにおいて逆イオン交換後に示される減少として規定することができる。而して、逆イオン交換のプロセスの前に測定されるガラスシートの湾曲は、その後の湾曲と比較して大きく減少した湾曲を示すことが出来、形状は平坦化されたと容易に観察される。かかる減少した湾曲は、山から谷への高さにおける絶対的な減少として定量することができる(即ち、ガラスシートは真の平面に対してより接近して平行である)。かかる山から谷への高さ、即ち真の平面からのZ軸にそった偏差の測定値はまた、相当半径としてか、又は線形スパンの割合として表すこともできる。
【0185】
減少した湾曲は、逆イオン交換後の薄板化学強化ガラスシートにおいて、好ましい半径と同等か又はそれよりも大きい湾曲の相当半径として規定することができる。ガラスシートの相当半径は、短辺の中心点の間を接続するガラスシートの長さと平行に引いた弦線の長さを測定し、次にかかる弦線に沿った山から谷への高さである深さを測定することによって計算することができる。深さ測定の精度は、ガラスシートを短辺上で支持し、主表面を横切る山から谷への高さを測定し、次にシートをひっくり返して対向する主表面に関する山から谷への高さを測定することによって向上させることができる。深さは、2つの測定値の間の差を2で割ったものとして計算することができる。しかしながら、相当半径は、式:半径=(弦+4・深さ)/8・深さによって計算することができる。この半径は、好ましくは、7,500mm(295インチ)より大きく、150,000mm(591インチ)より大きく、22,500mm(886インチ)より大きく、30,000mm(1,181インチ)より大きく、37,500mm(1,476インチ)より大きく、45,000mm(1,771インチ)より大きく、52,500mm(2,067インチ)より大きく、60,000mm(2,362インチ)より大きく、67,500mm(2,657インチ)より大きく、75,000mm(2,953インチ)より大きく、82,500mm(3,248インチ)より大きく、90,000mm(3,543インチ)より大きく、97,500mm(3,839インチ)より大きく、105,000mm(4,134インチ)より大きく、112,500mm(4,429インチ)より大きく、120,000mm(4,724インチ)より大きく、最も好ましくは127,500mm(5,020インチ)より大きい。
【0186】
減少した湾曲は、逆イオン交換後の薄板化学強化ガラスシートにおいて、特定の産業において及び/又は特定のガラス用途に関して一般的に許容し得ると規定される量に合致する湾曲を示すものとして規定することができる。かかる一般的に許容し得る量は、最大の山から谷への高さ、又は線状スパンの割合として表すことができる。携帯電話上のカバーガラスのような携帯電子機器用途に関しては、許容し得る湾曲は、線状スパンの約0.10%以下であり、これは100mmのスパンに対して0.1mmの許容し得る湾曲に相当する。ゲーム機タッチスクリーンのような携帯機器よりも大型の電子機器に関しては、許容しうる湾曲は、線状スパンの約0.15%未満以下であり、これは100mmのスパンに対して約0.15mmの許容しうる湾曲に相当する。米国における建築用途に関しては、一般に許容しうる湾曲は、1200mmの線状スパンに対して約2.0mm(0.167%)以下、1500mmに対して3.0mm(0.200%)以下、1800mmに対して5.0mm(0.278%)以下、2100mmに対して6.0mm(0.286%)以下、2400mmに対して7.0mm(0.292%)以下、2700mmに対して8.0mm(0.296%)以下、及び3000mmに対して10.0mm(0.333%)以下である。
【0187】
ゼロの湾曲は、厳密な規定によれば、重力の影響及び支持手段を取り除いた際に平面として存在するガラスシートとして規定される。より実際的な規定は、測定装置の解像度及び精度内で測定しうるものとしてゼロの山から谷への絶対高さを示すガラスシートである。しかしながら、ゼロの湾曲の好ましい規定は、特定の産業及び/又はガラス用途において一般に許容し得るとして規定される湾曲のレベルよりも10倍平坦である湾曲のレベルと少なくとも同等か、又はそれよりも小さい湾曲(即ち、最大許容湾曲を1/10減少した値以下の湾曲測定値)を示すガラスシートである。而して、携帯電子機器用途に関しては、「ゼロの湾曲」は、線状スパンの約0.01%(100mmのスパンに対して約0.01mmの湾曲に相当)以下の湾曲に等しい。携帯型であるものよりも大型の電子機器に関しては、「ゼロの湾曲」は、線状スパンの約0.015%(100mmのスパンに対して約0.015mmの湾曲に相当)以下の湾曲に等しい。米国における建築用途に関しては、「ゼロの湾曲」は、1200mmのスパンに対して約0.2mm(0.017%)以下の湾曲に等しい。
【0188】
減少したか又はゼロの湾曲を達成する方法として逆イオン交換を用いることにより、化学強化ガラス基材に対して特定の物理的特徴が与えられる。具体的には、かかる物理的特徴は、逆イオン交換ガラスの表面領域の種々の深さ内の特定のアルカリ金属イオン種の濃度を求めることによって分析することができる。かかる分析のために用いられる装置は、表面アブレーションセル(surface ablation cell: SAC)として当該技術において公知である。表面アブレーションセルは、ガラス表面領域を横切ってエッチング溶液を移動させて、それによってガラスネットワーク及びその構成成分を漸進的に分解するポンプから構成される実験装置である。かかる溶解は順次の層内で起こり、場合によって圧縮層の深さに到達するまで拡散深さを通って進行する。ガラスネットワークが溶解するにつれて、得られる流出液を迂回させ、定性及び定量分析のために、それが得られるガラスネットワーク内からの特定の深さによって分類することができる。例えば、流出液を分析して、表面領域の特定の深さ内のアルカリ金属イオンの濃度を求めて、それによって本発明の物品の特定の特性を明らかにすることができる。
【0189】
平坦さに加えて、減少したか又はゼロの湾曲を付与する方法として逆イオン交換を用いると、以下のように要約することができる、他の方法においては見られない化学強化ガラスにおける特定の物理特性が得られる。第1に、逆イオン交換によって、表面から通常は深さ約5μm未満までのみからより大きなアルカリ金属イオンの濃度が減少する。逆イオン交換は、好ましくは逆イオン交換した表面領域上に関する表面圧縮応力のレベルまでの実質的な(即ち10%より多い)変化をもたらすには不十分な熱プロファイル(温度における時間)で迅速に行う。第2に、場合によっては減少したか又はゼロの湾曲が所望の逆イオン交換を両方の表面について行うことができるが、それは、常にではないが通常は処理が劣勢の表面領域よりも処理が優勢の表面領域についてより大きな程度まで行う。
【0190】
これらの2つのパラダイムの結果は、これらの表面領域において示される構成成分のアルカリイオンの組成がシフトすることである。実際、1つの表面は処理が優勢であり、他方は処理が劣勢であるので、より大きいアルカリイオンの絶対量を、2つの表面の間で拡散深さ全体で相違させることができる。しかしながら、より重要なことには、逆イオン交換は、処理が劣勢の表面領域におけるよりも、表面から約5μmに広がる深さにおいて処理が優勢の表面領域からより大きなアルカリ金属イオンを追い出す(その平均イオン半径が減少する)(その平均イオン半径はまた、逆イオン交換にもかけるかどうかによっても減少する可能性があるが、減少したか又はゼロの湾曲は一般に処理が劣勢の表面についての逆イオン交換をより少ない程度まで行うことが必要であるので、その減少は通常はあまり急ではない)ので、アルカリイオンの組成におけるシフトを行う必要がある。
【0191】
ここでも、逆イオン交換は、好ましくは、逆イオン交換された表面領域の分散区域の残り、又は逆イオン交換にかけられていない表面領域における圧縮応力のレベル及び深さなどのイオンの組成に有意な変化(即ち測定装置の解像精度よりも大きい変化)を引き起こすのには不十分な熱プロファイル(温度における時間)で迅速に行う。その結果、約5μmから拡散深さまでの領域は、大部分が逆イオン交換ではなくイオン交換からのこれらの領域中に存在する構成成分のアルカリイオンの組成を保持する。ここでも、1つの表面は処理が優勢であり、他は処理が劣勢であるので、より大きなアルカリイオンの絶対量は、実際には約5μmより大きな拡散深さ中において2つの表面の間で相違し得る。しかしながら、この領域中のアルカリイオンの組成は、最初のイオン交換処理の偏りを反映しており、即ちより大きなアルカリ金属イオンが、ブロックするスズイオンが存在しないこと(スズフロートガラス製造プロセスに関する)、又はマイナスのアニール履歴(フュージョンガラス製造プロセスに関係する)のために、処理が優勢の表面領域の約5μmより大きなより深い深さの中に沈降し得、したがってこの領域中のアルカリイオンの平均イオン半径は処理が劣勢の表面領域におけるよりも大きい。実際に、かかる現象が存在しなかった場合には、化学強化ガラス基材が本発明の有利な態様にしたがって減少したか又はゼロの湾曲を示すことはできないであろう。
【0192】
本発明とは対比的に、従来技術においてこれまで公知の全ての他の方法は、イオン交換工程中に、より小さいホストアルカリ金属イオンと比べてより大きい侵入性のアルカリイオンの濃度の全体的な差を減少させることを試みることを指向する。具体的には、これらの方法は、それぞれの表面領域において最も外側の表面から拡散深さまでで起こる相互拡散の相対速度を変化させることを試みるものである。例えば、KreskiのUS‘689(US-2014/0178689)はその時間差の発明において、及びVarshneyaらのUS‘663’(US-2014/0178663)はその熱処理の開示において、それぞれ、表面間の相互拡散の相対時間を延長するか、又はブロックするスズイオンを酸化することによって、「処理が乏しい」表面領域の拡散の全幅にわたってより大きな侵入性アルカリイオンの量を増加させることを試みる。同様に、密度差の特許の開示であるKreskiのUS‘938(US-9,302,938)、並びに化学組成の差の開示であるKreskiのUS‘691(US-2014/0178691)(これらは、金属表面バリヤ膜の開示を包含するように拡張することができる)は、それぞれ、ガラス基材の「処理が豊富な」表面領域における拡散の全幅にわたってより大きな侵入性アルカリイオンの量を減少させることを試みる。実際に、これらの先の開示のいずれも、イオン交換による強化の後に湾曲を調節するために表面領域における圧縮応力を緩和することの議論はない。
【0193】
その代わりにそれらに関するイオン交換中の表面領域の間の拡散速度差を許容し、それらを定量し、次にここに開示する本発明の一態様においてより大きな侵入性アルカリイオンを「処理が優勢の」表面領域から浅い深さまで僅かに且つ選択的に除去して、2つの表面領域の間の総計でより大きな膨張の対称性を達成することが、本発明開示において示される唯一の逆イオン交換の概念及び構成である。更に、湾曲の望ましい減少又は不存在を達成するために、逆イオン交換の概念及び構成により、かかる対称性に対する変化を意図的に偏らせて、イオン交換前のガラス基材中に存在する望ましくない湾曲を相殺することが可能である。最後に、本発明開示において示される逆イオン交換の概念及び構成により、逆イオン交換前にガラス中に存在していない所望の所定湾曲プロファイルを達成するために、表面領域の間のかかる対称性の操作を利用することも可能である。
【0194】
逆イオン交換後に対向する表面領域を処理が優勢のか又は処理が劣勢のとして識別することは、イオン交換による化学強化の後であって逆イオン交換の前に示される湾曲によって規定することができる。実際、対向する表面領域を処理が優勢のか又は処理が劣勢のかを識別するためには、イオン交換による化学強化の後に示されるものと比較した、イオン交換による化学強化の前に示されるガラスシートの物理的形状(湾曲の方向)において示される相対的な非対称性を測定することしか必要でない場合がある。処理が優勢の表面領域は相対的により大きい体積を有し、それによってより小さい体積の処理が劣勢の表面領域に向かって更なる湾曲を示す。かかる観察から、処理が優勢のとして識別される表面領域は、より小さいホストアルカリイオンに対するより大きい侵入性アルカリイオンの置換が更に進行したと容易に結論づけることができる。しかしながら、対向する表面領域についての湾曲差を無効にして、減少した湾曲又はゼロの湾曲を示す薄板化学強化ガラスシートの物品を与える、逆イオン交換を使用する本発明の工程は、逆イオン交換前のそれらの状態の知識なしに相対的な表面領域の識別を必要とし得る。
【0195】
逆イオン交換による修正に関係なく、基本的製造方法によって付与される相違する物理特性に主として起因するイオン交換による化学強化後の処理が優勢の表面領域と処理が劣勢の表面領域の間の従前の非対称性は、逆イオン交換の後の薄板化学強化ガラスシートにおいて容易に確認できる状態で保持される。実際に、同等のパラメーターの化学強化イオン交換にかけた純粋なガラス基材については、イオン交換による化学強化の後に処理が劣勢であった表面領域は、その後においても基本製造法によって付与された物理特性を維持する。フロート法で製造されたシートの場合には、逆イオン交換後に、処理が劣勢の表面領域中においては、対向する処理が優勢の表面領域と比べて、より高濃度の金属スズイオンが未だ存在する。フュージョン法で製造されたシートの場合には、逆イオン交換後に、対向する表面領域中にアニール履歴の差が未だ存在する。
【0196】
更に、イオン交換による化学強化後にどの表面領域を逆イオン交換によって修正するかの決定も、イオン交換による更なる化学強化によって侵入性のアルカリイオンを受容する対向する表面領域の傾向によって、容易に確定することができる。例えば、逆イオン交換後の薄板化学強化ガラスシートを再び、対向する表面領域について同等のパラメーターによるイオン交換による化学強化にかけると、逆イオン交換の前の処理が優勢のか又は処理が劣勢のものとしての対向する表面領域の状態に速やかに戻る。例えば、処理が優勢の表面領域(又は実際に処理が劣勢の表面領域)への逆イオン交換中に先に適用されたより小さい逆イオンは、速やかに交換されてガラス中への通常は浅いそれらの浸透深さから排出されて、それによって逆イオン交換による修正の前に存在する表面領域の偏差が速やかに現れる。
【0197】
而して、アルカリ金属イオンを含む化学構造を有する、減少した湾曲又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを有する化学強化ガラス基材を含む物品も提供される。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を含む。処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれ、残りのガラス基材中よりも表面領域中において高い濃度であるアルカリ金属イオンの拡散深さまで延在する。フロート法で製造されたガラス基材においては、処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれスズイオンを含む。物品の一態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域中よりも高い濃度のスズイオンを含む。物品の他の態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域と異なるアニール履歴を有する。表面から約5μmまで広がる深さにおいては、処理が劣勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径は、処理が優勢の表面領域中に配置されるアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きく、約5μmから拡散深さまで広がる深さにおいては、処理が優勢の表面領域中に配置されるアルカリ金属イオンの平均イオン半径は、処理が劣勢の表面領域中に配置されるアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい。
【0198】
或いは、逆交換は、別の態様として、侵入性アルカリイオン種、即ちホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有するガラス基材中に存在するアルカリイオン又はガラス基材中の逆アルカリイオン、の質量にしたがって議論することができる。イオン交換による化学強化の後は、1つの圧縮された表面領域は、処理が優勢であり、より大きな全質量の侵入性アルカリイオン種が侵入しており、したがってより大きな物理的体積を示し、処理が劣勢であり、より小さい全質量の侵入性アルカリイオンが侵入していて、より小さい物理的体積を示す対向する表面領域に向かって湾曲している。目的が減少した湾曲又はゼロの湾曲を得ることである場合には、逆交換を行って、処理が優勢の表面領域内の侵入性のアルカリイオン種の質量の表面から内側への目標とする減少を得て、それによってその物理的体積を減少させることができる。而して、逆交換は、処理が優勢の表面領域に関して表面から深さ約5μmまでの厚さ内の侵入性アルカリイオン種の質量を、処理が劣勢の表面領域に関して表面から深さ約5μmまでの厚さ内の侵入性アルカリイオン種の質量に対する対応する減少を超える量減少させるように行うことができる。
【0199】
処理が優勢の表面領域に関して約5μmの深さまでの表面中の侵入性アルカリイオン種の質量を減少させることによって、この領域の物理的体積の調和した減少が引き起こされる。この物理的体積の減少によって、より深い表面領域内に残留する体積差の結果として未だ存在する湾曲を超える、軸の有効釣合点において付与される反対側に向かう湾曲の強い力が生成する。かかる残留する体積差は、処理が優勢の表面領域に関する約5μmから拡散深さまでの厚さ内の侵入性アルカリイオン種の質量が、処理が劣勢の表面領域に関する約5μmから拡散深さまでの厚さ内の侵入性アルカリイオン種の質量よりも大きいためである。而して、一態様においては、処理が劣勢の表面領域は、表面から約5μmの深さまでにおいて、表面から約5μmの深さまでの対向する処理が優勢の表面領域よりも多い質量の侵入性アルカリイオン種を含み得る。更に、約5μmからその拡散深さまでの処理が優勢の表面領域は、約5μmからその拡散深さまでの対向する処理が劣勢の表面領域と比べてより多い質量の侵入性アルカリイオン種を含み得る。
【0200】
而して、アルカリ金属イオンを含む化学構造を有する、減少した湾曲又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを有する化学強化ガラス基材を含む物品も提供される。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を含む。処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれ、残りのガラス基材中よりも表面領域中において高い濃度であるアルカリ金属イオンの拡散深さまで延在する。フロート法で製造されたガラス基材においては、処理が劣勢の表面領域及び処理が優勢の表面領域は、それぞれスズイオンを含む。物品の一態様においては、処理が劣勢の表面領域は、処理が優勢の表面領域中よりも高い濃度のスズイオンを含む。表面から約5μmまで広がる深さにおいては、処理が劣勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量は、処理が優勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量よりも大きく、約5μmから拡散深さまで広がる深さにおいては、処理が優勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量は、処理が劣勢の表面領域中に配置される侵入性アルカリイオン種の質量よりも大きい。
【0201】
しかしながら、かかる本発明の物品の上記の定義は、処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域が基本製造法によって付与される物理的特徴を超えて意図的に操作される場合に包含される幾つかの場合を適切にカバーしない場合がある。かかる意図的な操作としては、例えばバリヤ被覆、イオン注入、フッ素化、脱アルカリ化等のような化学強化の前にガラスシートに他の物理特性を意図的に加えることを挙げることができる。実際、フロート法で製造されたガラス基材を含む本発明の物品のこれらの態様はまた、対向する表面領域のそれぞれの中にフッ素イオンを含み得、フッ素イオンを含むその表面は、より高い濃度のスズイオンを含む表面に対向する。かかる意図的な操作としてはまた、例えば時間、温度、イオン交換媒体への被毒添加剤の添加、及び/又はイオン交換媒体の面密度に対する変化のような、対向する表面領域に対して異なって適用されるイオン交換による化学強化の具体的なパラメーターを挙げることができる。
【0202】
本明細書全体にわたって示す「表面から約5μmまで広がる(extending)深さ」という用語は、逆イオン交換のプロセスの後に総計で通常最も異なって影響を受ける最も外側の表面から呼び(nominal)深さまでの対向する表面における同等の深さの領域を定めるように用いられる。これとは逆に、明細書全体にわたって「約5μmから拡散深さまで広がる深さ」という用語は、逆イオン交換のプロセスの後に総計で通常は最も少なく異なって影響を受ける呼び深さから拡散深さまでの対向する表面における同等の深さの領域を定めるように用いられる。しかしながら、逆イオン交換のプロセスの後に最も多く異なるか又は最も少なく異なって影響を受ける対向する表面の深さ領域の間を区別する実際の深さは、イオン交換の特定のパラメーター、逆イオン交換の特定のパラメーター、及びガラスシートの物理的特徴などの多くのファクターによって定まる。これは、化学強化の前のガラスシート内の他の物理的特徴の付加、又は対向する表面領域に異なって適用されるイオン交換による化学強化の特定のパラメーターなどの意図的な操作の後には特に当てはまり得る。実際、かかる呼び深さは、上述のファクターに対する調節によって、逆イオン交換のプロセスの後に総計で最も多く異なって影響を受けるものvs最も少なく異なって影響を受けるものの同等の深さ領域に対して、特にアルカリ金属イオンの平均イオン半径、又は侵入性アルカリイオン種の相対的により大きい質量に関して予期しない変化を与えるので、好ましくはその代わりに3ミクロン、4ミクロン、6ミクロン、7ミクロン、8ミクロン、9ミクロン、10ミクロン、又は15ミクロン、或いはそれ以上であり得る。
【0203】
而して、ここに記載するような方法によって製造される化学強化基材を含む製造品が存在する。この方法には、化学構造を有する薄板ガラス基材を用意することを含ませることができる。ガラスの化学構造には、表面領域に配置される平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを含ませることができる。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を含み得る。この方法には、イオン交換媒体を用意することを含ませることができる。イオン交換媒体には、ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含ませることができる。この方法には、イオン交換媒体をガラスの表面領域に適用することを含ませることができる。この方法には、イオン交換媒体を適用しながらイオン交換を行って化学強化基材を生成させることを含ませることができる。この方法には、逆イオン交換媒体を用意することを含ませることができる。逆イオン交換媒体には、イオン交換前のホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等か又はそれよりも小さい平均イオン半径を有する逆アルカリイオンを含ませることができ、及び/又はそれには、イオン交換中に適用される侵入性イオンの平均イオン半径よりも小さい逆アルカリイオンを含ませることができる。この方法には、逆イオン交換媒体を少なくとも処理が優勢の表面領域に適用して、逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在していたよりも小さい湾曲を有する化学強化基材を生成させることを含ませることができる。この方法には、その代わりに、逆イオン交換媒体を、処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域の少なくとも1つに適用し、逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行って、逆イオン交換前の化学強化ガラス基材中に存在していなかった所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材を生成させることを含ませることができる。
【実施例
【0204】
以下の実施例は、逆イオン交換法を用いて減少したか又はゼロの湾曲或いは所定の湾曲プロファイルを有する化学強化ガラスを製造する方法を示す。実施例においては、図2におけるグラフを参照する。このグラフは、逆イオン交換を規定の温度における時間の熱プロファイルで行う前及び行った後の両方の代表的な化学強化基材の撓みを示す。温度における時間の値は、それぞれグラフの右側及び下のスケールとして示される。412mmのスパンを有する平板ガラスに関する撓みの測定値は、グラフの左軸に示すようにミリメートルで与える。撓みは、光学非接触マイクロメーターによって測定された表面プロファイルから求めて、短辺の中心点の間を接続する長さと平行に引いた線を横切って求められる山から谷への高さとして撓みを得る。
【0205】
次表において、CSは表面圧縮応力のレベルであり、DOLは圧縮層の深さであり、CTは内部引張応力のレベルである。本実施例セクション内の表全体にわたって、以下の方法を用いた。表面圧縮応力、層の深さ、及び内部引張応力のレベルは、日本国東京のLuceo Co., Ltd.から購入したFSM-7000H表面応力計を用いて測定した。
実施例1:逆イオン交換:
【0206】
試料の調製:フロート法によって製造された薄板ガラス基材の異なる母材シートから、幅412mm×長さ127mmで0.55mmの厚さを有するナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラスクーポンを切り出した。縁部及び両方の表面領域-即ち処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を、432℃の温度の硝酸カリウム(KNO)の均一な液体イオン交換媒体中に210分間浸漬して、イオン交換による強化を行った。イオン交換の直後に、加温した脱イオン水を用いてクーポンを洗浄した。結果は次の通りであった。
【0207】
試料A:
ガラスクーポンにおいて測定された湾曲は、412mmに対してプラス7.1mmの撓みであった。
【表1】
【0208】
試料B:
ガラスクーポンにおいて測定された湾曲は、412mmに対してプラス5.6mmの撓みであった。
【表2】
【0209】
試料C:
ガラスクーポンにおいて測定された湾曲は、412mmに対してプラス3.2mmの撓みであった。
【表3】
【0210】
イオン交換による強化の後であるが、逆イオン交換による選択的表面緩和の前の試料A、B、及びCの25℃における撓みの測定値を、左側のデータ点において示す。これらのデータ点は、図2のグラフにおいて「x」を含む黒色の円によって示す。
【0211】
試料の処理:イオン交換によって既に化学強化されている同じナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラスクーポンを、次に異なる構成の逆イオン交換にかけた。
【0212】
1対1の比(w/w)の硝酸ナトリウム(NaCO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の共融塩混合物を生成させ、脱イオン水中に溶解して塩水溶液を生成させた。ガラスクーポンを約150℃の温度に予備加熱し、塩水溶液をスプレー法によってイオン交換で処理が優勢の表面(非スズ側)のみの上に適用した。溶液中の水を表面から迅速に蒸発させて、スプレーされた表面領域の全面を覆うナトリウムの逆アルカリイオンを含む2種類の結晶化塩化合物のガラス表面上の共融被覆として特徴付けられる固体逆イオン交換媒体を残留させた。結晶化塩化合物は、自動車の風防の表面上の氷の出現と似たコンシステンシーを有するとして良好に記載することができる。スプレーされた表面上に存在するナトリウム塩の量は、約16.1グラム/平方メートルであることが分かった。その直後に、クーポンを炉中に挿入して、温度における時間の熱プロファイルによって規定し得る熱の適用による逆イオン交換を行った。クーポンを曝露する温度における時間は、次の通りであった。
【0213】
試料A
371℃で8分間。
【0214】
試料B
349℃で4分間。
【0215】
試料C
310℃で4分間。
【0216】
上記の時間及び温度は温度における時間であり、短時間の加熱及び冷却は排除される。熱プロファイルは、図2のグラフにおいて温度における時間を表す縦の黒色の線によって示される。
【0217】
結果:逆イオン交換の直後において、加温した脱イオン水を用いてクーポンを洗浄した。結果は次の通りであった。
【0218】
試料A:
ガラスクーポンにおいて測定された湾曲は、412mmに対してマイナス1.6mmの撓みであった。
【表4】
【0219】
試料B:
ガラスクーポンにおいて測定された湾曲は、412mmに対してプラス0.8mmであった。
【表5】
【0220】
試料C:
ガラスクーポンにおいて測定された湾曲は、412mmに対してマイナス0.8mmであった。
【表6】
【0221】
温度における時間の特定の熱プロファイルに曝露することによって、処理が優勢の表面(即ち、ガラスの非スズ側に対応する表面領域)に逆アルカリイオンを含む2種類の結晶化塩化合物の共融被覆を適用して逆イオン交換を行った。表から、逆イオン交換後に処理が優勢の表面領域について表面圧縮応力における実質的な減少、即ち10%より多い減少はなかったことを留意することは重要である。実際に、最も大きな変化は試料「B」に関する-48MPaであり、これは穏やかな応力緩和(約6.5%)を示しており、それぞれの装置の読み値に関する±20MPaの分解精度よりも大きい。しかしながら、逆イオン交換にかけなかったが、逆イオン交換工程中の熱プロファイルに曝露した処理が劣勢の表面領域については、有意な変化(即ち測定装置の分解精度よりも大きい変化)はなかった。実際に、最も大きい変化は試料「C」に関する+10MPaであり、これはそれぞれの装置の読み値に関する±20MPaの分解精度内であった。更に、いずれの表面領域の拡散深さにおける変化にも有意な変化はなく、最も大きな変化は試料「C」に関する-2.3μmであり、これはそれぞれの装置の読み値に関する±5μmの分解精度内であった。
【0222】
次に、試料A、B、及びCに関して得られた撓みを測定し、右側のデータ点に示す。これらのデータ点は、図2のグラフ上で中実の黒色の円によって示す。ここでも撓みは、光学非接触マイクロメーターによって測定された表面プロファイルから求めて、短辺の中心点の間を接続する長さと平行に引いた線を横切って求められる山から谷への高さとして撓みを得る。温度における時間の熱プロファイルから得られた撓みを、図2のグラフ上で中実の黒色の円として示す。より低い温度において行う逆イオン交換は、与えられた逆イオン交換媒体を用いてより大きな応力緩和(即ち湾曲における正味の変動)を達成するためには、より長い時間を必要とすることが留意される。
【0223】
グラフから、理想的な平坦度であるゼロの湾曲は、逆イオン交換工程を330℃の温度において約4分間行うことによってほぼ達成されることに留意されたい。勿論、この理想的な時間及び温度は、イオン交換による強化の後にガラス基材において現れる正味の湾曲に応じて調節することができる。しかしながら、原理は変わらないままであり、同一のイオン交換媒体に関する理想的な温度及び時間は、図2のグラフ上の端部における矢印を有する細い点線によって示される。勿論、データ点をまた逆イオン交換後に誘発された撓みを用いてプロットするならば、4分間以外の時間又は330℃以外の温度を用いることができる。更に、ここでもこの時間は短く、ここで与える実施例においては8分以下であることを留意することは重要である。また、温度はより低く、ここで与える実施例においては371℃以下である。371℃における試料「A」の正味の移動は、イオン交換後の+7.1mmの撓みから-1.6mmに移動し、これは-8.7mmの実質的に正味の移動であったことが留意される。
実施例2:先に誘発された湾曲の減少:
【0224】
出発材料は、スズフロートガラス法によって形成されたより大きなシートから切り出した、50mm×長さ50mmで1.0mmの厚さを有するソーダ石灰シリケートガラスである。試料を、432℃の溶融硝酸カリウム(KNO)中に4時間浸漬することによって化学強化する。次に、試料を冷却し、水ですすいで固化した塩を除去する。化学強化ガラス試料の撓みは61ミクロンである。
【0225】
硝酸ナトリウム(NaNO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の1:1(w/w)の比の混合物を80℃の水中に溶解する。溶液を、150℃に予備加熱した化学強化ガラス試料の非スズ側上にスプレーする。水を蒸発させ、塩の平滑な層を試料の非スズ側(処理が優勢の表面領域)上に全面にわたって堆積させる。塩は、ガラス表面1平方メートルあたり16グラムの塩の密度を与えるような量でスプレーする。ガラスを349℃に加熱し、その温度において4分間維持する。次に、被覆されたガラスに加温した水をスプレーすることによって、塩をガラスから洗浄除去する。ガラス試料の5ミクロンへの約92%の湾曲の減少がある。
【0226】
携帯電話上のカバーガラスのような電子用途に関しては、許容し得る湾曲は線状スパンの約0.1%であり、これは試料クーポンが満足する50mmのスパンに関して50ミクロンの許容できる湾曲に対応する。更に、クーポンの示される湾曲は線状スパンの0.01%(5ミクロン)以下であり、したがって、本実施例においては、示される湾曲は線状スパンの0.01%以下であり、これは、湾曲が携帯電話上のカバーガラス用途において用いるために電子産業において一般的に許容されるものとして規定されている0.1%未満の桁数(10倍)であるレベルであるので、クーポンは「ゼロの湾曲」に関する規定も満足する。
実施例3:先に誘発された湾曲の減少:
【0227】
出発材料は、スズフロートガラス法によって形成されたより大きなシートから切り出した、50mm×長さ50mmで0.55mmの厚さを有するナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラス試料である。試料を、432℃の溶融硝酸カリウム(KNO)中に4時間浸漬することによって化学強化する。次に、試料を冷却し、水ですすいで固化した塩を除去する。化学強化ガラス試料の撓みは82ミクロンである。
【0228】
硝酸ナトリウム(NaNO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の1:1(w/w)の比の混合物を80℃の水中に溶解する。溶液を、150℃に予備加熱した化学強化ガラス試料の非スズ側上にスプレーする。水を蒸発させ、塩の平滑な層を試料の非スズ側(処理が優勢の表面領域)上に全面にわたって堆積させる。塩は、ガラス表面1平方メートルあたり16グラムの塩の密度を与えるような量でスプレーする。ガラスを349℃に加熱し、その温度において4分間維持する。次に、被覆されたガラスに加温した水をスプレーすることによって、塩をガラスから洗浄除去する。ガラス試料の11ミクロンへの約87%の湾曲の減少がある。
【0229】
携帯電話上のカバーガラスのような電子用途に関しては、許容し得る湾曲は線状スパンの約0.1%であり、これは試料クーポンが満足する50mmのスパンに関して50ミクロンの許容できる湾曲に対応する。
実施例4:逆イオン交換によって意図的に誘発された湾曲プロファイル:
【0230】
出発材料は、スズフロートガラス法によって形成されたより大きなシートから切り出した、幅412mm×長さ127mmで0.55mmの厚さの測定値を有するナトリウムアルカリ-アルミノシリケートガラス試料である。試料を、432℃の溶融硝酸カリウム(KNO)中に4時間浸漬することによって化学強化する。次に、試料を冷却し、水ですすいで固化した塩を除去する。化学強化ガラス試料の撓みは6.7mmである。
【0231】
硝酸ナトリウム(NaNO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の1:2(w/w)の比の混合物を80℃の水中に溶解する。溶液を、150℃に予備加熱した化学強化ガラス試料の非スズ側上にスプレーする。水を蒸発させ、塩の平滑な層を試料のスズ側(処理が劣勢の表面領域)上に全面にわたって堆積させる。塩は、ガラス表面1平方メートルあたり16グラムの塩の密度を与えるような量でスプレーする。ガラスを314℃に加熱し、その温度において6分間維持する。次に、被覆されたガラスに加温した水をスプレーすることによって、塩をガラスから洗浄除去する。ガラス試料の14.7mmへの約119%の湾曲の増加がある。
【0232】
ラージフォーマットゲームコンソールにおけるタッチスクリーンディスプレイの一例の態様に関しては、必要な所定の湾曲のプロファイルは半径1,500mmの球面であり、これは412mmのスパンに対して14.2mmの曲げ深さに等しい。所定の湾曲のプロファイルに関する許容し得る規定の許容範囲は、試料クーポンが満足する曲げ深さについて+/-1.0mmである。
実施例5:代表的なプロセス:
【0233】
図3は、本発明開示において与えられる有利な態様にしたがって化学強化基材を製造する代表的なプロセスを示すフロー図である。図3の工程301において、ある化学構造を有する薄板ガラス基材を用意する。ガラスの化学構造は、表面領域中に位置する平均イオン半径を有するホストアルカリイオンを含む。ガラス基材は、互いに対向して配置される処理が優勢の表面領域及び処理が劣勢の表面領域を有する。工程302において、ホストアルカリイオンの平均イオン半径よりも大きい平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含むイオン交換媒体を用意する。工程303において、イオン交換媒体をガラス表面の全部に適用し、イオン交換媒体を適用しながらイオン交換を行って化学強化基材を生成させる。
【0234】
代表的なプロセスは工程304で継続され、ここでガラス基材の湾曲を非接触型スキャナーによって測定し、次に、湾曲を最も好ましくは単一の最初の試みで(しかしながら、それに具体的に限定されない)無効にするように逆イオン交換の変数を定量的に調節する。逆イオン交換の工程は、パラメーターを変化させて行うことができる。工程304において、時間、温度、及び逆イオン交換媒体の構成の少なくとも1つに対する変化によって、1以上の表面領域又はその部分的な区域について、逆イオン交換中の薄板ガラス基材の湾曲の修正に対して調節を行うことができる。
【0235】
工程305において、逆イオン交換媒体を用意する。工程305において、逆イオン交換媒体の体積、その中に含まれる逆アルカリイオンの種、その中に含まれる逆アルカリイオンの種の濃度、及び逆イオン交換の速度を変化させる添加剤をその中に含ませるかどうかの少なくとも1つに対する変化によって、逆イオン交換中の薄板ガラス基材の湾曲の修正に対して調節を行うことができる。
【0236】
工程306において、逆イオン交換媒体は、イオン交換前のガラス基材中のホストアルカリイオンの平均イオン半径と同等か又はそれよりも小さい平均イオン半径を有する侵入性アルカリイオンを含む。工程307において、逆イオン交換媒体は、イオン交換前のガラス基材中の侵入性アルカリイオンの平均イオン半径よりも小さい平均イオン半径を有する逆アルカリイオンを含む。
【0237】
工程308において、逆イオン交換媒体を少なくとも処理が優勢の表面領域に適用し、逆イオン交換媒体が適用されている間に逆イオン交換を行う。好ましい方法は、ガラス基材の処理が優勢の表面領域のみについて逆イオン交換を行うことである。
【0238】
しかしながら、工程309において、応力の緩和が合計で処理が優勢の表面よりも小さいならば、逆イオン交換を処理が劣勢の表面領域についても行って、その圧縮応力の一部も緩和することができる。1つの表面領域、両方の表面領域、又はその一部の逆イオン交換は、同時に、逐次的に、及び他の順番又は複数の順番の組合せで行うことができる。
【0239】
工程310において、逆イオン交換媒体を適用しながら、ある熱プロファイルの構成で逆イオン交換を行って、表面から好ましくは深さ約5μmまでの処理が優勢の表面領域についての圧縮応力を穏やかに緩和して、化学強化ガラス基材において減少したか又はゼロの湾曲を達成する。逆イオン交換は、1つより多い温度における時間の熱プロファイルを用いて、及び/又は1つより多い逆イオン交換媒体の構成を用いて行うことができる。しかしながら、逆イオン交換に関する熱プロファイルは、好ましくは、圧縮された表面領域全体にわたって圧縮応力のレベル及び深さに対する全体としての変化を最小にするのに好適な温度における時間の特定の組合せである。
【0240】
プロセスの別の工程311においては、化学強化基材における湾曲の減少が不十分であるとみなされる場合に、同じか又は異なる変数を用いて逆イオン交換のプロセスを繰り返すことができる。処理が優勢の表面領域に関する圧縮応力が過度に大きく減少し、湾曲がマイナスになった場合には、処理が劣勢の表面領域について逆イオン交換を行って反対側の方向の湾曲を誘発し、それによってマイナスの湾曲の状態を取り除くことができる。結論として、逆イオン交換の前の化学強化ガラス基材中に存在していたよりも小さい湾曲を有する化学強化基材が存在する。
【0241】
このプロセスにおける他の別の工程として、逆イオン交換媒体を処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域の少なくとも1つに適用し、逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を行う。逆イオン交換はまた、対向する表面領域について行うこともできる。1以上の表面領域又はその一部の逆イオン交換は、同時に、逐次的に、及び他の順番又は複数の順番の組合せで行うことができる。
【0242】
このプロセスにおける他の別の工程として、逆イオン交換媒体を適用しながら逆イオン交換を1つの熱プロファイルの構成で行って、表面から好ましくは深さ約5μmまでの処理が優勢の表面領域又は処理が劣勢の表面領域の少なくとも1つに関する圧縮応力を穏やかに緩和して、それによって化学強化ガラス基材における所定の湾曲プロファイルを達成するように湾曲を穏やかに小さくするか又は増大させる。逆イオン交換は、1つより多い温度における時間の熱プロファイルを用いるか、及び/又は1つより多い逆イオン交換媒体の構成を用いて行うことができる。しかしながら、逆イオン交換に関する熱プロファイルは、好ましくは、圧縮された表面領域全体にわたって圧縮応力のレベル及び深さに対する全体としての変化を最小にするのに好適な温度における時間の特定の組合せである。
【0243】
このプロセスにおける他の別の工程として、化学強化基材における湾曲プロファイルに対する減少又は増加が不十分であるとみなされる場合に、同じか又は異なる変数を用いて逆イオン交換のプロセスを繰り返すことができる。逆イオン交換された領域に関する圧縮応力が過度に大きく減少した場合には、対向する表面領域について逆イオン交換を行って反対側の方向の湾曲を誘発し、それによって所定の湾曲プロファイルを更に達成することができる。結論として、逆イオン交換の前の化学強化ガラス基材中に存在していなかった所定の湾曲プロファイルを有する化学強化基材が存在する。
【0244】
本明細書の全体にわたって具体的に記載したが、代表例は広範囲の用途にわたって有用性を有しており、上記の議論は限定するものとは意図されず、そのように解釈すべきではない。本明細書において用いる用語、記述、及び図は、例示のみの目的で示すものであり、限定としては意図しない。当業者であれば、本発明の原理の精神及び範囲内で多くのバリエーションが可能であることを認識する。図面を参照して例を記載したが、当業者であれば、特許請求の範囲及びそれらの均等物から逸脱することなく、記載されている例に対して種々の修正を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6