(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】トウモロコシ事象MON87429及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/82 20060101AFI20230131BHJP
A01G 22/20 20180101ALI20230131BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20230131BHJP
A01H 1/02 20060101ALI20230131BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20230131BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20230131BHJP
A01H 6/46 20180101ALI20230131BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20230131BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230131BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20230131BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20230131BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20230131BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20230131BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20230131BHJP
C12N 15/60 20060101ALI20230131BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20230131BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20230131BHJP
C12Q 1/6895 20180101ALI20230131BHJP
A01M 21/04 20060101ALN20230131BHJP
【FI】
C12N15/82 154Z
A01G22/20
A01H1/00 A
A01H1/02 Z
A01H5/00 A
A01H5/10
A01H6/46
A01N25/00 102
C12N5/10
C12N15/29 ZNA
C12N15/31
C12N15/52 Z
C12N15/53
C12N15/54
C12N15/60
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6895 Z
A01M21/04 C
(21)【出願番号】P 2020537747
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 US2019015429
(87)【国際公開番号】W WO2019152316
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-07-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-12
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・エム・エリス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・イー・ゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ジンタイ・ホアン
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー・イー・クリンガマン
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン・ティ・ラルー
(72)【発明者】
【氏名】ユーリン・チー
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・シー・スパークス
(72)【発明者】
【氏名】ブルック・エム・バン・スコヨック
(72)【発明者】
【氏名】ヘピン・ヤン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】上條 肇
【審判官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512497(JP,A)
【文献】特表2015-519051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00 - 17/00
C12N 1/00 - 7/08
C12Q 1/00 - 3/00
A01N 1/00 - 65/48
A01P 1/00 - 23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号10、配列番号8、配列番号7、配列番号6、配列番号5、配列番号4、配列番号3、配列番号2、及び配列番号1から成る群から選択される配列を含む組換えDNA分子。
【請求項2】
前記組換えDNA分子が、トウモロコシ事象MON87429を含む植物体、種子、または細胞に由来し、前記事象を含む種子の代表的な試料がATCC受託番号PTA-124635として寄託されている、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項3】
前記組換えDNA分子がトウモロコシ事象MON87429を含む植物体、細胞、種子、または植物体の一部にあり、前記事象を含む種子の代表的な試料がATCC PTA-124635として寄託されている、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項4】
請求項1に記載の組換えDNA分子を含むアンプリコンであって、前記アンプリコンの存在が、トウモロコシ植物、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞由来のDNAの試料中におけるトウモロコシ事象MON87429の
存在を示す、請求項1に記載の組換えDNA分子
を含むアンプリコン。
【請求項5】
4つの発現カセットを含むDNA構築物であって
(a)第1の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)Erianthus ravennaeに由来するユビキチンのプロモーター、リーダー、イントロンと、(II)ホスフィノトリシンN―アセチルトランスフェラーゼのコーディング配列と、(III)Setaria italicaに由来するフルクトース-ビスリン酸アルドラーゼの3’UTRとを含み;
(b)第2の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)Coix lacryma-jobi由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、及びイントロンと、(II)Arabidopsis thaliana由来のアルビノ及び淡緑色6葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列と、(III)ジカンバモノオキシゲナーゼのコーディング配列と、(IV)Oryza sativa由来のメタロチオネイン様タンパク質の3’UTRとを含み;
(c)第3の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)Arundo donax由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、及びイントロンと、(II)Arabidopsis thaliana由来のリンゴ酸脱水素酵素葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列と、(III)FT_Tタンパク質のコーディング配列と、(IV)Oryza sativa由来の無頂端分裂組織タンパク質の3’UTRとを含み;
(d)第4の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)CaMV 35Sのプロモーターとリーダーと、(II)Triticum aestivum由来のクロロフィルa/b結合タンパクの質のリーダーと、(III)Oryza sativa由来のアクチン1のイントロンと、(IV)Arabidopsis thaliana由来のShkG葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列と、(V)Agrobacterium sp株CP4由来のグリホサート耐性5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼのコーディング配列と、(VI)Zea mays由来の雄性組織特異的siRNAの標的と、(VII)Oryza sativa由来のグリシンリッチRNA結合タンパク質の3’UTRとを含む、
前記DNA構築物。
【請求項6】
配列番号1、配列番号2または配列番号13を含むDNAプローブ。
【請求項7】
トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞に由来するDNAの試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在を検出する方法であって、前記方法が、
(a)試料を請求項6に記載のDNAプローブと接触させることと;
(b)前記試料及び前記DNAプローブをストリンジェントなハイブリッド形成条件に供することと;
(c)前記試料における前記DNA分子との前記DNAプローブのハイブリッド形成を検出することとを含み、
その際、前記DNAプローブの前記DNA分子との前記ハイブリッド形成がDNAの前記試料におけるトウモロコシ事象MON87429の存在を示す、前記方法。
【請求項8】
トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞に由来するDNAの試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在を検出する方法であって、前記方法が、
(a)前記試料を
第1のDNAプライマー及び第2のDNAプライマーを含む一対のDNAプライマーと接触させること、
但し、前記第1のDNAプライマーがDNAプライマーとして機能するために十分な長さの配列番号10内の連続ヌクレオチドを含み、前記第2のDNAプライマーがDNAプライマーとして機能するために十分な長さの配列番号10内の連続ヌクレオチドを含み、増幅反応においてトウモロコシ事象MON87429を含むDNAと一緒に使用されるとき、これらDNAプライマーが配列番号10、配列番号8、配列番号7、配列番号6、配列番号5、配列番号4、配列番号3、配列番号2、及び配列番号1から成る群から選択される配列を含むDNAアンプリコンを生成する、;
(b)
前記DNAアンプリコンを生成するのに十分な増幅反応を実施することと;
(c)前記DNAアンプリコンの存在を検出することと、を含み、
その際、前記DNAアンプリコンの存在が試料におけるトウモロコシ事象MON87429の存在を示す、前記方法。
【請求項9】
請求項6に記載のDNAプローブを含む、トウモロコシ事象MON87429の存在を検出するためのキット。
【請求項10】
配列番号10を含むDNA分子を含む細胞または商品生産物。
【請求項11】
前記細胞が、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対する耐性を含む、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
前記細胞がキザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D、グルホシネート及びグリホサートに対して耐性がある、請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
作物栽培区域の雑草を防除する方法であって、
(a)前記作物栽培区域にて
配列番号10を含む組換えDNA分子を含むトウモロコシを植えることと;
(b)アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤の有効量を前記作物栽培区域またはその一部に施用して、トウモロコシに薬害を与えることなく雑草を防除することと、を含む、前記方法。
【請求項14】
前記有効量の少なくとも1つの除草剤を施用することが、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤から成る群から選択される少なくとも2以上の除草剤を生育期全体にわたって施用することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有効量の少なくとも1つの除草剤を施用することが、キザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D、グルホシネート及びグリホサート、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される除草剤を施用することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ジカンバの前記有効量が、生育期全体にわたる約0.5ポンド酸当量/エーカーから約2ポンド酸当量/エーカーまでのジカンバである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グルホシネートの前記有効量が生育期全体にわたる約0.4ポンド活性成分/エーカーから約1.59ポンド活性成分/エーカーまでである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
2,4-Dの前記有効量が生育期全体にわたる約0.75ポンド酸当量/エーカーから1.0ポンド酸当量/エーカーまでである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ギザロホップの前記有効量が生育期全体にわたる約0.034ポンド活性成分/エーカーから約0.083ポンド活性成分/エーカーまでである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ハロキシホップの前記有効量が生育期全体にわたる約0.018ポンド活性成分/エーカーから約0.07ポンド活性成分/エーカーまでである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
区画にて
配列番号10を含む組換えDNA分子を含む自生トウモロコシを防除する方法であって、除草剤として有効な量の少なくとも1つのシクロヘキサンジオン(DIM)除草剤を施用することを含み、その際、前記除草剤の施用は
配列番号10を含む組換えDNA分子を含むトウモロコシの生育を阻止する、前記方法。
【請求項22】
前記除草剤として有効な量の少なくとも1つのシクロヘキサンジオン(DIM)除草剤を施用することが、クレトジム、セトキシジム及びトラルコキシジムから成る群から選択されるシクロヘキサンジオン(DIM)除草剤を施用することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対する耐性を含む植物を生産する方法であって、
(a)
配列番号10を含む組換えDNA分子を含む植物をそれ自体とまたは第2の植物と交配して種子を生産することと;
(b)
配列番号10を含む組換えDNA分子を含む子孫種子を同定することと、を含む、前記方法。
【請求項24】
配列番号10を含む組換えDNA分子を含む子孫種子を同定することが、
(a)前記子孫種子を生育させて子孫植物を生産することと;
(b)キザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D、グルホシネート及びグリホサート、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤の有効量で前記子孫植物を処理することと;
(c)アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対して耐性がある子孫植物を選択することと、を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
配列番号10を含む組換えDNA分子を含む子孫種子を同定することが、前記子孫種子に由来する試料にて
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号10の存在を検出することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
配列番号10を含む組換えDNA分子を含む子孫種子を同定することが、前記子孫種子に由来する試料にてトウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1つのタンパク質の存在を検出することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
雑種種子を生産する方法であって、
(a)
配列番号10を含む組換えDNA分子を含む植物を生育させることと;
(b)前記植物の雄性生殖組織が発達するのに先立って、またはその最中に有効量のグリホサートを施用し、それによって前記植物にて雄性不稔を誘導することと;
(c)前記植物を第2の植物由来の花粉と受粉させることと;
(d)前記植物から雑種種子を収穫することと、を含む、前記方法。
【請求項28】
前記有効量のグリホサートを施用することが、前記発達に先立ってまたはその最中に約0.5ポンド酸当量/エーカーから約2.5ポンド酸当量/エーカーまでの有効量でグリホサートを施用することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記有効量のグリホサートを施用することが、トウモロコシ植物発達のV4期、V5期、V6期、V7期、V8期、V9期、V10期、V11期、V12期、V13期及びV14期から成る群から選択される発達期でグリホサートを施用することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が配列番号10を含む、請求項27に記載の方法によって生産される雑種種子の細胞。
【請求項31】
トウモロコシ事象MON87429について植物の接合性を判定する方法であって、前記植物が
配列番号10を含む組換えDNA分子を含み、前記方法が、
(a)
前記植物由来のDNAを含む試料を、第1のアンプリコンと第2のアンプリコンを作り出すことができるプライマーのセットに接触させること、但し、前記第1のアンプリコンは請求項4に記載のアンプリコンであり、前記第2のアンプリコンの存在はトウモロコシ事象MON87429を含まない野生型トウモロコシのゲノムDNAの
存在を示し;
(b)核酸の増幅反応を実施することと;
(c)第1のアンプリコン及び第2のアンプリコンを検出することと、を含み、その際、試料中における第1の
アンプリコンと第2のアンプリコンの存在は前記試料がトウモロコシ事象MON87429についてヘテロ接合性であることを示し、
試料中における第1のアンプリコンのみの存在は前記試料がトウモロコシ事象MON87429についてホモ接合性であることを示す、前記方法。
【請求項32】
前記プライマーのセットが配列番号11及び配列番号12を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対して耐性を含むトウモロコシ植物にて耐性を改善する方法であって、
(a)請求項5に記載のDNA構築物を得ること;
(b)トウモロコシ細胞のゲノムに前記DNA構築物を挿入することと;
(c)トウモロコシ細胞をトウモロコシ植物にて再生させることと;
(d)前記DNA構築物を含むトウモロコシ植物を選択することと、を含む、前記方法。
【請求項34】
前記選択することが、キザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D、グルホシネート及びグリホサートから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤の有効量でトウモロコシ植物を処理することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞であって、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対する耐性を含み、請求項33に記載の方法によって入手可能であり、その際、前記トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞は前記DNA構築物を含む、前記トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年2月2日出願の米国仮出願第62/625,537号の優先権の利益を主張し、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
44.2KBであり(MS Windowsにおいて測定された)、2019年1月17日に作成されたファイル名「MONS430WO-seq.txt」中に含有されている配列表は、電子申請によって本明細書と共に提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、トウモロコシ事象MON87429の組換えDNA分子に関する。本発明はまた、トウモロコシ事象MON87429を含有するトランスジェニックトウモロコシの植物体、一部、種子、細胞、及び農産物、ならびにトウモロコシ事象MON87429を含有するトランスジェニックトウモロコシの植物体、一部、種子、細胞、及び農産物を使用し、トウモロコシ事象MON87429を検出する方法にも関する。トウモロコシ事象MON87429を含有するトランスジェニックトウモロコシの植物体、一部、種子、及び細胞は、例えば、キザロホップやハロキシホップのようなアリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤;ジカンバ及び2,4-Dのような合成オーキシン;グルホシネートのようなグルタミン合成酵素の阻害剤;ならびにグリホサートのような5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤に対する耐性を示す。
【背景技術】
【0004】
トウモロコシ(Zea mays)は世界の多くの区域で重要な作物であり、作物生産における雑草防除のための除草剤の使用は十分に確立されたツールである。バイオテクノロジーの方法を使用して、導入遺伝子としても知られる異種遺伝子の発現に起因して特定の除草剤に対して耐性があるトランスジェニックトウモロコシを生産してきた。除草剤耐性形質は、単独で使用することができ、または別の除草剤に対する耐性もしくは害虫や病原体に対する抵抗性のような他の形質と組み合わせることができる。除草剤耐性形質の組み合わせは、栽培者の自由度を高め、困難な雑草を防除するための行動の複数の除草剤モードの使用を可能にする雑草防除の選択肢を提供することが望ましい。形質の組み合わせは、個々の形質を一緒に交配させることによって達成することができる。トウモロコシの個々の形質を一緒に交配し、精鋭で構成される生殖質の多様なプールと共に交配中にこの組み合わせを維持することは、時間と費用がかかるプロセスである。形質の組み合わせは、ゲノムの1つの場所または遺伝子座にて複数の形質を組み合わせることによっても達成でき、それによって交配プロセスが簡素化される。これを達成する方法の1つは複数の導入遺伝子を含有する単回のトランスジェニック挿入を介する。トウモロコシにおける単一遺伝子座での複数の除草剤耐性形質の組み合わせは、精鋭で構成される生殖質の多様なプールと共に交配中に維持するのにはるかに単純で安価な雑草防除における有用なツールを提供する。
【0005】
トランスジェニックの植物体、一部、種子、または細胞における導入遺伝子の発現、したがってその有効性は、導入遺伝子の発現カセットで使用される要素やそれらの要素の相互作用のような多くの異なる因子によって影響を受けてもよい。これは、2以上の発現カセットを含有するトランスジェニック挿入についてさらに複雑であり、各発現カセットは、多重遺伝子トランスジェニック事象としても知られる別個の形質を付与する導入遺伝子を有する。商業的に有用な多遺伝子トランスジェニック事象は、トランスジェニック挿入における各導入遺伝子が各形質に必要な方法で発現することを必要とする。これを達成するために、個々の発現カセットが先ず設計され、植物体で試され、各形質について最良の発現カセットが選択される。次に、形質1つについて選択された発現カセットを1つの構築物にて他の形質(複数可)について選択された発現カセットと組み合わせ、その構築物を調べて、すべての発現カセットがうまく一緒に機能し、各導入遺伝子が適切に発現することを確認する。次いで、発現カセットの選択した組み合わせを単一のトランスジェニック挿入断片として使用して、何百もの多遺伝子トランスジェニック事象を作り出し、各事象は異なるゲノム位置における外来DNAの無作為挿入の結果である。
【0006】
各トランスジェニック事象は独特である。次いで、複数世代の植物体を介して独特の事象を分析し、商業用途に優れた事象を選択する。トランスジェニックの植物体、一部、種子、または細胞における事象の成績、したがってその有効性はトランスジェニック挿入のゲノム位置によって影響を受けてもよい。事象は同じトランスジェニック挿入を有することができるが、それでも組織や発生段階にわたって、種々の生殖質にて、または特定の生育条件下で異なる導入遺伝子発現のレベル及び成績を有することができる。商業用途のための多遺伝子事象の生成は、厳密な分子特性評価、温室試験、及び複数年にわたる複数の場所での及び種々の条件下での野外試験を必要とするので、広範な農学、表現型、及び分子のデータが収集されてもよい。次いで、得られたデータを科学者や農学者が分析して、商業目的に有用である事象を選択しなければならない。次いで、商業的多遺伝子事象は、植物育種法を用いて、複数の除草剤耐性形質を有する単一の遺伝子座として新しい生殖質に遺伝子移入することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、配列番号10、配列番号9、配列番号8、配列番号7、配列番号6、配列番号5、配列番号4、配列番号3、配列番号2、及び配列番号1から成る群から選択される配列を含む組換えDNA分子を提供する。一実施形態では、組換えDNA分子は、トウモロコシ事象MON87429を含む植物体、種子、または細胞に由来し、事象を含む種子の代表的な試料はATCC受託番号PTA-124635として寄託されている。別の実施形態では、組換えDNA分子はトウモロコシ事象MON87429を含む植物体、細胞、種子、または植物体の一部にあり、事象を含む種子の代表的な試料はATCC PTA-124635として寄託されている。別の実施形態では、組換えDNA分子は、トウモロコシ事象MON87429の存在の診断に役立つアンプリコンである。
【0008】
本発明は、4つの発現カセットを含むDNA構築物を提供し、その際、第1の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)Erianthus ravennae由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、及びイントロンと、(II)ホスフィノトリシンN-アセチルトランスフェラーゼのコーディング配列と、(III)Setaria italica由来のフルクトース-ビスリン酸アルドラーゼ3’UTRとを含み;第2の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)Coix lacryma-jobi由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、イントロンと、(II)Arabidopsis thaliana由来のアルビノ及び淡緑色6葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列と、(III)ジカンバモノオキシゲナーゼのコーディング配列と、(IV)Oryza sativa由来のメタロチオネイン様タンパク質の3’UTRとを含み;第3の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)Arundo donax由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、及びイントロンと、(II)Arabidopsis thaliana由来のリンゴ酸脱水素酵素葉緑体輸送ペプチドコーディング配列と、(III)FT_Tタンパク質コーディング配列と、(IV)Oryza sativa由来の無頂端分裂組織タンパク質の3’UTRとを含み;及び、第4の発現カセットは、操作可能な連結にて(I)CaMV35Sのプロモーター及びリーダーと、(II)Triticum aestivum由来のクロロフィルa/b結合タンパク質のリーダーと、(III)Oryza sativa由来のアクチン1のイントロンと、(IV)Arabidopsis thaliana由来のShkG葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列と、(V)Agrobacterium sp株CP4由来のグリホサート耐性5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼのコーディング配列と、(VI)Zea mays由来の男性組織特異的siRNAの標的と、(VII)Oryza sativa由来のグリシンリッチRNA結合タンパク質の3’UTRとを含む。
【0009】
本発明は、トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞に由来するDNAの試料において配列番号10に特異的なDNAプローブとして機能するのに十分な長さの配列番号10の隣接するヌクレオチドを有するDNA分子を提供する。1一実施形態では、DNAプローブは配列番号13を含む。
【0010】
本発明は、第1のDNA分子及び第2のDNA分子を含む一対のDNA分子を提供し、第1のDNA分子及び第2のDNA分子はそれぞれ、配列番号10の断片を含み、トウモロコシ事象MON87429を含有するDNAとの増幅反応において一緒に使用されるとき、DNAプライマーとして機能して、試料にてトウモロコシ事象MON87429の診断に役立つアンプリコンを生成する。一実施形態では、少なくとも一方のDNAプライマーは配列番号7及び配列番号8から成る群から選択される配列の断片を含む。別の実施形態では、第1のDNA分子は配列番号11を含み、第2のDNA分子は配列番号12を含む。
【0011】
本発明は、トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞に由来するDNAの試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在を検出する方法を提供し、該方法は、試料をDNAプローブと接触させることと、試料とDNAプローブをストリンジェントなハイブリッド形成条件に供することと、試料にてDNAプローブのDNA分子とのハイブリッド形成を検出することとを含み、その際、DNAプローブのDNA分子とのハイブリッド形成はDNAの試料におけるトウモロコシ事象MON87429の存在を示す。
【0012】
本発明は、トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞に由来するDNAの試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在を検出する方法を提供し、該方法は、DNAプライマーとして機能する一対のDNA分子に試料を接触させることと;配列番号10、配列番号9、配列番号8、配列番号7、配列番号6、配列番号5、配列番号4、配列番号3、配列番号2、及び配列番号1から成る群から選択される配列を含むDNAアンプリコンを生成するのに十分な増幅反応を実施することと;DNAアンプリコンの存在を検出することとを含み、その際、DNAアンプリコンの存在は試料におけるトウモロコシ事象MON87429の存在を示す。
【0013】
本発明は、トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞に由来する試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在を検出する方法を提供し、該方法は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1以上のタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体と試料を接触させることと、試料におけるタンパク質への抗体の結合を検出することとを含み、その際、抗体のタンパク質への結合は試料におけるトウモロコシ事象MON87429の存在を示す。別の実施形態では、方法は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされる第2のタンパク質に特異的な少なくとも第2の抗体と試料をさらに接触させることを含む。別の実施形態では、方法は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされる第2のタンパク質及び第3のタンパク質にそれぞれ特異的な少なくとも第2の抗体及び第3の抗体と試料をさらに接触させることを含む。別の実施形態では、方法は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされる第2のタンパク質、第3のタンパク質及び第4のタンパク質にそれぞれ特異的な少なくとも第2の抗体、第3の抗体及び第4の抗体と試料をさらに接触させることを含む。
【0014】
本発明は、配列番号10に特異的なDNAプローブ、トウモロコシ事象MON87429の診断に役立つアンプリコンを生成する一対のDNAプライマー、またはトウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1つタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体を含む、トウモロコシ事象MON87429の存在を検出するためのキットを提供する。
【0015】
本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10から成る群から選択される配列を含むDNA分子を含む植物体、種子、細胞、植物体の一部、または商品生産物を提供する。一実施形態では、植物体、種子、細胞、または植物体の一部は、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対して耐性がある。別の実施形態では、植物体、種子、細胞、または植物体の一部は、キザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D及びグルホシネートに対して耐性がある。
【0016】
本発明は、作物栽培区域にてトウモロコシ事象MON87429を含むトウモロコシを植えることと、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤の有効量を作物栽培区域またはその任意の部分に施用して、トウモロコシを傷つけることなく区域の雑草を防除することと、を含む、作物栽培区域にて雑草を防除する方法を提供する。一実施形態では、方法は、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤から成る群から選択される少なくとも2以上の除草剤を生育期にわたって施用することを含む。別の実施形態では、方法は、キザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D、グルホシネート、及びグリホサート、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される除草剤を施用することを含む。一実施形態では、ジカンバの有効量は生育期にわたって約0.1ポンド酸当量/エーカーから約16ポンド酸当量/エーカーである。一実施形態では、ジカンバの有効量は、生育期 にわたって約0.5ポンド酸当量/エーカーから約2ポンド酸当量/エーカーである。一実施形態では、グルホシネートの有効量は、生育期にわたって約0.1ポンド酸当量/エーカーから約16ポンド酸当量/エーカーである。一実施形態では、グルホシネートの有効量は、生育期 にわたって約0.4ポンド酸当量/エーカーから約1.59ポンド酸当量/エーカーである。一実施形態では、2,4-Dの有効量は生育期にわたって約0.1ポンド酸当量/エーカーから約10ポンド酸当量/エーカーである。一実施形態では、2,4-Dの有効量は、生育期にわたって約0.75ポンド酸当量/エーカーから約1.0ポンド酸当量/エーカーである。一実施形態では、FOP除草剤の有効量は生育期にわたって約0.01ポンド活性成分/エーカーから約1.0ポンド活性成分/エーカーである。一実施形態では、FOP除草剤の有効量は生育期にわたって約0.034ポンド活性成分/エーカーから約0.083ポンド活性成分/エーカーのキザロホップである。一実施形態では、FOP除草剤の有効量は生育期にわたって約0.018ポンド活性成分/エーカーから約0.07ポンド活性成分/エーカーである。
【0017】
本発明は、除草剤として有効な量の少なくとも1つのシクロヘキサンジオン(DIM)除草剤を施用することを含む区域にてトウモロコシ事象MON87429を含む自生トウモロコシを防除する方法を提供し、その際、除草剤の施用はトウモロコシ事象MON87429を含むトウモロコシの生育を阻止する。一実施形態では、シクロヘキサンジオン(DIM)除草剤は、クレトジム、セトキシジム、及びトラコキシジムから成る群から選択される。
【0018】
本発明は、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対して耐性がある植物を生産する方法を提供し、該方法はトウモロコシ事象MON87429を含む植物を自家受粉させ、または第2の植物と交配させ、種子を生産することと、トウモロコシ事象MON87429を含む子孫種子を同定することと、を含む。一実施形態では、トウモロコシ事象MON87429を含む子孫種子を同定することは、子孫種子を生育させて子孫植物を生産することと、キザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D、グルホシネート、及びグリホサート、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤の有効量で子孫植物を処理することと、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤から成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対して耐性がある子孫植物を選択することと、による。一実施形態では、トウモロコシ事象MON87429を含む子孫種子を同定することは、子孫種子に由来する試料におけるトウモロコシ事象MON87429の存在を検出することによる。一実施形態では、トウモロコシ事象MON87429を含む子孫種子を同定することは、子孫種子に由来する試料にてトウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1つのタンパク質の存在を検出することによる。
【0019】
本発明は、配列番号10を含む植物を生育させることと、植物の雄性生殖組織の発達前または発達中に有効量のグリホサートを施用し、それによって植物の雄性不稔を誘導することと、第2の植物からの花粉で植物を受精させることと、植物から雑種種子を収穫することとを含む、雑種種子を生産する方法を提供する。一実施形態では、グリホサートは、発達前または発達中に約0.25ポンド酸当量/エーカーから約11.0ポンド酸当量/エーカーの有効量で施用される。一実施形態では、グリホサートは、発達前または発達中に1以上の施用にて合計約0.5ポンド酸当量/エーカーから約2.5ポンド酸当量/エーカーの有効量で施用される。一実施形態では、有効量のグリホサートは、トウモロコシ植物発達のV4期、V5期、V6期、V7期、V8期、V9期、V10期、V11期、V12期、V13期、及びV14期から成る群から選択される発達段階で施用される。本発明は、配列番号10を含む植物を生育させることと、植物の雄性生殖組織の発達前または発達中に有効量のグリホサートを施用し、それによって植物の雄性不稔を誘導することと、第2の植物体からの花粉で植物を受精させることと、植物から雑種種子を収穫することとを含む、配列番号10を含み、且つ雑種種子を生産する方法を使用することによって生産される雑種種子を提供する。
【0020】
本発明は、植物に由来するDNAを含む試料を、トウモロコシ事象MON87429の存在の診断に役立つ第1のアンプリコン及びトウモロコシ事象MON87429を含まない野生型トウモロコシゲノムの診断に役立つ診断する第2のアンプリコンを生成することができるプライマーセットと接触させることと、核酸の増幅反応を行うことと、第1のアンプリコン及び第2のアンプリコンを検出することとを含む、トウモロコシ事象MON87429について植物の接合性を判定する方法を提供し、その際、双方のアンプリコンの存在は試料がトウモロコシ事象MON87429についてヘテロ接合性であることを示し、第1のアンプリコンのみの存在は試料がトウモロコシ事象MON87429についてホモ接合性であることを示す。一実施形態では、プライマーのセットは、配列番号11及び配列番号12を含む。
【0021】
本発明は、(a)第1の発現カセットが操作可能な連結で(I)Erianthus ravennae由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、及びイントロン、(II)ホスフィノトリシンN-アセチルトランスフェラーゼのコーディング配列、及び(III)Setaria italica由来のフルクトース-ビスリン酸アルドラーゼ3’UTRを含み;第2の発現カセットが操作可能な連結で(I)Coix lacryma-jobi由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、イントロン、(II)Arabidopsis thaliana由来のアルビノ及び淡緑色6葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列、(III)ジカンバモノオキシゲナーゼコーディング配列、及び(IV)Oryza sativa由来のメタロチオネイン様タンパク質の3’UTRを含み;第3の発現カセットが操作可能な連結で(I)Arundo donax由来のユビキチンのプロモーター、リーダー、及びイントロン、(II)Arabidopsis thaliana由来のリンゴ酸脱水素酵素葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列、(III)FT_Tタンパク質コーディング配列、及び(IV)Oryza sativa由来の無頂端分裂組織タンパク質の3’UTRを含み;ならびに、第4の発現カセットが操作可能な連結で(I)CaMV35Sのプロモーター及びリーダー、(II)Triticum aestivum由来のクロロフィルa/b結合タンパク質のリーダー、(III)Oryza sativa由来のアクチン1イントロン、(IV)Arabidopsis thaliana由来のShkG葉緑体輸送ペプチドのコーディング配列、(V)Agrobacterium sp株CP4由来のグリホサート耐性5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼのコーディング配列、(VI)Zea mays由来の雄性組織特異的siRNA標的、及び(VII)Oryza sativa由来のグリシンリッチRNA結合タンパク質の3’UTRを含む、4つの発現カセットを含むDNA構築物を得ることと、(b)トウモロコシ細胞のゲノムにDNA構築物を挿入することと、(c)トウモロコシ植物体の中でトウモロコシ細胞を再生することと、(d)DNA構築物を含むトウモロコシ植物体を選択することとを含む、トウモロコシ植物体にてアリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対する耐性を改善する方法を提供する。一実施形態では、選択することは、キザロホップ、ハロキシホップ、ジカンバ、2,4-D、グルホシネート、またはグリホサートから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤の有効量でトウモロコシ植物を処理することによる。一実施形態では、本発明は、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤、合成オーキシン、グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤に対して耐性があり、且つ本方法によって入手できるトウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞を提供し、その際、トウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞はDNA構築物を含む。さらなる実施形態では、本方法によって産生されるトウモロコシ植物体、トウモロコシ種子、またはトウモロコシ細胞は配列番号10を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】トウモロコシ事象MON87429の配列を表す図である。横線は、配列番号10と比べた配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9の位置に対応し;水平の矢印で標識したSQ51062(配列番号11)及びSQ51053(配列番号12)はトウモロコシ事象MON87429を検出するために使用できる一対のプライマーのおおよその位置を表し;横線で標識したPB50370(配列番号13)はトウモロコシ事象MON87429を検出するのに使用できるDNAプローブのおおよその位置を表す。
【
図2】表1に記載されているように標識されたそれぞれの遺伝因子を持つ配列番号9と比較したトウモロコシ事象MON87429の4つの発現カセットを表す図である。
【
図3】本明細書に記載されているようなMON87429事象の作成、試験、特性評価、及び選択を表す図である。時間はすべて概算である。
【0023】
配列の簡単な説明
配列番号1は、トウモロコシのゲノムDNAと導入遺伝子挿入断片の5’接合部を表す30ヌクレオチドのDNA配列である。配列番号1は、配列番号10のヌクレオチドの1015位~1044位に対応する。
【0024】
配列番号2は、トウモロコシのゲノムDNAと導入遺伝子挿入断片の3’接合部を表す30ヌクレオチドのDNA配列である。配列番号2は、配列番号10のヌクレオチドの15023位~15052位に対応する。
【0025】
配列番号3は、トウモロコシのゲノムDNAと導入遺伝子挿入断片の5’接合部を表す60ヌクレオチドのDNA配列である。配列番号3は、配列番号10のヌクレオチドの1000位~1059位に対応する。
【0026】
配列番号4は、トウモロコシのゲノムDNAと導入遺伝子挿入断片の3’接合部を表す60ヌクレオチドのDNA配列である。配列番号4は、配列番号10のヌクレオチドの15008位~15067位に対応する。
【0027】
配列番号5は、トウモロコシのゲノムDNAと導入遺伝子挿入断片の5’接合部を表す100ヌクレオチドのDNA配列である。配列番号5は、配列番号10のヌクレオチドの980位~1079位に対応する。
【0028】
配列番号6は、トウモロコシのゲノムDNAと導入遺伝子挿入断片の3’接合部を表す100ヌクレオチドのDNA配列である。配列番号6は、配列番号10のヌクレオチドの14988位~15087位に対応する。
【0029】
配列番号7は、5’隣接トウモロコシゲノムDNAの1029ヌクレオチドと導入遺伝子挿入断片の5’末端の321ヌクレオチドとを表す1350ヌクレオチドDNA配列である。
【0030】
配列番号8は、導入遺伝子挿入断片の3’末端の38ヌクレオチドと5’隣接トウモロコシゲノムDNAの1031ヌクレオチドとを表す1069ヌクレオチドのDNA配列である。
【0031】
配列番号9は、トウモロコシMON87429事象の導入遺伝子挿入断片に対応する14008ヌクレオチドのDNA配列である。
【0032】
配列番号10は、トウモロコシMON87429事象に対応する16068ヌクレオチドのDNA配列であり;該配列は、1~1029位の5’隣接ゲノムDNA配列と、1030~15037位のトランスジェニックDNA挿入断片と、15038~16068位の3’隣接ゲノムDNA配列とを含有する。
【0033】
配列番号11は、SQ51062と呼ばれるプライマーに対応する29ヌクレオチドのDNA配列であり、試料にてトウモロコシMON87429事象のDNAを同定するのに使用され;それは配列番号10の15038位~15066位に対応する。
【0034】
配列番号12は、SQ51053と呼ばれるプライマーに対応する17ヌクレオチドのDNA配列であり、試料にてトウモロコシMON87429事象のDNAを同定するのに使用され;それは配列番号10の14987位~15003位に対応する。
【0035】
配列番号13は、PB50370と呼ばれるプローブに対応する16ヌクレオチドのDNA配列であり、試料にてトウモロコシMON87429事象のDNAを同定するのに使用され;それは、配列番号10の15009位~15024位に対応する。
【発明の詳細な説明】
【0036】
以下の定義及び方法は、本発明をより確実に定義し、本発明の実施において当業者を導くために提供される。特に明記されない限り、用語は、関連技術分野の当業者による従来の使用法に従って理解されるべきである。
【0037】
植物の形質転換技法は、外来DNA(トランスジェニックDNAとも呼ばれる)を細胞のゲノムの染色体に無作為に挿入して、「トランスジェニック」細胞または「組換え」細胞とも呼ばれる遺伝子操作された細胞を生成するために使用される。この技法を使用して、多くの個々の細胞が形質転換され、ゲノムへの外来DNAの無作為な挿入のせいで、それぞれが独特のトランスジェニック事象を生じる。次いで、トランスジェニック植物は、各個々のトランスジェニック細胞から再生される。これは、そのゲノムの安定した部分として独自に挿入されたトランスジェニック事象を含有するトランスジェニック植物のあらゆる細胞を生じる。次いで、このトランスジェニック植物を使用して、それぞれが独特のトランスジェニック事象を含有する子孫植物を生産することができる。トウモロコシ事象MON87429は、(i)4つの発現カセットを含むDNA構築物による数千のトウモロコシ細胞の形質転換(各発現カセットは、個別の試験とそれに続く他の3つの発現カセットと組み合わせた試験の後、選択されている)と、(ii)それぞれが独特のトランスジェニック事象を含有するトランスジェニック植物の個体群の再生と、(iii)数万の植物体を介した数千の事象についてのさまざまな遺伝的背景における分子特性、除草剤耐性の有効性、及び農業特性の試験と分析を含む厳格な多年事象の選択とによって生産される。トウモロコシ事象MON87429は、このようにして生産され、大規模な農業的商業目的に有用な独自に優れた事象として選択された。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「トランスジェニック事象」または「事象」は、当該技術分野で既知の植物形質転換法を使用して植物細胞のゲノムDNAにトランスジェニックDNA分子を挿入する行為によって作り出されるDNA分子である。この挿入により、挿入された外来DNA(「トランスジェニック挿入断片」と呼ばれる)と、挿入位置のいずれかの側にあるトランスジェニック挿入断片に直接隣接する、または「隣接する」ゲノムDNA(「隣接DNA」と呼ばれる)とから成る新しいトランスジェニックゲノムDNA配列が作り出される。事象のDNA配列は、事象について独特で特異的であり、他の事象の配列または非形質転換トウモロコシのゲノムDNAの配列のような他のDNA配列と比較すると容易に同定することができる。トウモロコシ事象MON87429は、配列番号10として提供される新しい且つ独特のDNA配列を有し、それは配列番号9として提供されるトランスジェニック挿入断片配列と、それぞれ配列番号7及び配列番号8で提供される5’及び3’の隣接DNA配列とを含有する。したがって、トウモロコシ事象MON87429は、トランスジェニックトウモロコシ細胞の染色体と事象を含む植物との一体となっている部分であるDNA分子であり、そのようなものとして静的であり、子孫細胞及び子孫植物に順送りされてもよい。
【0039】
本発明はまた、トウモロコシ事象MON87429を含む初めて形質転換された細胞及び植物体の子孫も提供する。そのような子孫は、細胞組織培養によって、トウモロコシ事象MON87429を含むトウモロコシ植物の自殖によって、またはトウモロコシ事象MON87429を含むトウモロコシ植物とその事象を含有するまたは含有しない別の植物との間の有性異系交配によって生産されてもよい。そのような他の植物は、同じもしくは異なる事象(複数可)を含むトランスジェニック植物、または異なる品種由来のもののような非トランスジェニック植物であってもよい。トウモロコシ事象MON87429は、元の親から各世代を通じて子孫に渡される。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「トウモロコシ」は、Zea mays(コーンもと呼ばれる)を意味し、Zea maysと交配することができるすべての植物品種を含む。
【0041】
本発明は、トウモロコシ事象MON87429を提供し、それは事象を含むトウモロコシの細胞、植物体、及び種子にキザロホップやハロキシホップのようなアリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤;ジカンバ及び2,4-Dのような合成オーキシン;グルホシネートのようなグルタミン合成酵素の阻害剤;ならびに5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤であるグリホサートに対する耐性を提供する。トウモロコシ事象MON87429は4つの発現カセットを含有する。本明細書中で使用されるとき、「発現カセット」または「カセット」は、形質転換された細胞によって発現されるべきである別個の要素の組み合わせを含む組換えDNA分子である。表1は、配列番号10に含有され、且つ
図2で説明されるような要素のリストを提供する。
表1:トウモロコシ事象MON87429の説明
【表1-1】
【表1-2】
【0042】
本明細書で使用されるとき、「組換え」という用語は、通常は自然界には見いだされず、ヒトの介入によって作り出された非天然のDNA、タンパク質、または生物を指す。本明細書で使用されるとき、「組換えDNA分子」は、自然には一緒に存在しないであろう且つヒトの介入の結果であるDNA分子の組み合わせを含むDNA分子、例えば、互いに異種の少なくとも2つのDNA分子の組み合わせで構成されるDNA分子、例えば、導入遺伝子と導入遺伝子に隣接する植物ゲノムDNAとを含むDNA分子である。組換えDNA分子の例は、配列番号1~10から選択される少なくとも1つの配列を含むDNA分子である。本明細書で使用されるとき、「組換え植物」は、通常自然界には存在しない、ヒトの介入の結果であり、トランスジェニックDNA分子を含有する植物である。そのようなゲノム改変の結果として、組換え植物は何か新しいものであり、関連する野生型植物とは明らかに異なる。組換え植物の例は、トウモロコシ事象MON87429を含有するトウモロコシ植物である。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「導入遺伝子」という用語は、例えば、植物形質転換法によるヒトの介入の結果として、生物のゲノムに人工的に組み込まれたDNA分子を指す。導入遺伝子は生物にとって異種であってもよい。本明細書で使用されるとき、「トランスジェニック挿入断片」という用語は、植物形質転換技法によってトウモロコシゲノムに挿入されてトウモロコシ事象MON87429を生成する外来DNAを指す。トウモロコシ事象MON87429のトランスジェニック挿入断片の配列は、配列番号9として提供される。「トランスジェニック」という用語は、導入遺伝子を含むことを指し、例えば「トランスジェニック植物」は導入遺伝子を含む植物を指す。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「異種の」という用語は、通常、自然界での第2の分子または生物と関連していない第1の分子を指す。例えば、DNA分子は、第1の種に由来し、第2の種のゲノムに挿入されてもよい。このようにして、DNA分子はゲノムや生物にとって異種であろう。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「キメラ」という用語は、第1のDNA分子を第2のDNA分子に融合することによって生成される単一のDNA分子を指し、第1のDNA分子または第2のDNA分子のどちらも通常、他と融合したその構成では見いだされない。したがって、キメラDNA分子は、通常自然界には見いだされない新しいDNA分子である。キメラDNA分子の例は、配列番号1~10から選択される少なくとも1つの配列を含むDNA分子である。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「単離された」という用語は、そのネイティブな状態または天然の状態でそれに通常関連している他の分子から分子を分離することを指す。したがって、「単離された」という用語は、そのネイティブな状態または天然の状態でそれと関連している他のDNA分子(複数可)から分離されているDNA分子を指してもよい。そのようなDNA分子は、組換えDNA分子のような組換えられた状態で存在してもよい。したがって、その天然の状態から取り除かれ、それが通常関連しない別のDNA分子に融合されたDNA分子は、単離されたDNA分子であるということになる。そのような単離されたDNA分子は、組換えDNAを作成すること、または細胞、植物体、または種子の染色体に外来DNA分子を組み込むことのようなバイオテクノロジー技術の使用から生じ得る。
【0047】
本発明は、DNA分子及びそれらの対応するDNA配列を提供する。本明細書で使用されるとき、「DNA」及び「DNA分子」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)分子を指す。DNA分子は、ゲノム起源または合成起源のものであってもよく、5’(上流)末端から3’(下流)末端までの通常型による。本明細書で使用されるとき、「DNA配列」という用語は、DNA分子のヌクレオチド配列を指す。使用される専門語は、米国連邦規則集のタイトル37、§1.822によって要求され、WIPO標準ST.25(1998)、付録2、表1及び3の表に記載されているものである。慣例として、本発明のDNA配列及びその断片は2つの相補的DNA配列鎖のうちの一方の鎖のみを参照して開示される。暗示及び意図により、ここで提供される配列の相補配列(相補鎖の配列)は、当該技術分野では逆相補配列とも呼ばれ、本発明の範囲内であり、請求される主題の範囲内にあることが明確に意図される。したがって、本明細書中で使用されるとき、配列番号1~10及びその断片への言及は、相補鎖及びその断片の配列を含み、それを指す。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「断片」という用語は、全体のさらに小さな小片を指す。例えば、配列番号10の断片は、配列番号10の完全配列のうち少なくとも約10個の連続したヌクレオチド、少なくとも約11個の連続したヌクレオチド、少なくとも約12個の連続したヌクレオチド、少なくとも約13個の連続したヌクレオチド、少なくとも約14個の連続したヌクレオチドである配列を含む。少なくとも約15の連続したヌクレオチド、少なくとも約16の連続したヌクレオチド、少なくとも約17の連続したヌクレオチド、少なくとも約18の連続したヌクレオチド、少なくとも約19の連続したヌクレオチド、少なくとも約20の連続したヌクレオチド、少なくとも約25の連続したヌクレオチド、少なくとも約30の連続したヌクレオチド、少なくとも約35の連続したヌクレオチド、少なくとも約40の連続したヌクレオチド、少なくとも約45の連続したヌクレオチド、少なくとも約50の連続したヌクレオチド、少なくとも約60の連続したヌクレオチド、少なくとも約70の連続したヌクレオチド、少なくとも約80の連続したヌクレオチド、少なくとも約90の連続したヌクレオチド、または少なくとも約100の連続したヌクレオチドである配列を含むことになる。
【0049】
トウモロコシ事象MON87429のトランスジェニック挿入断片のDNA配列は配列番号9として提供される。トランスジェニック挿入断片とトランスジェニック挿入断片の各側面に隣接するトウモロコシゲノムDNAとのDNA配列は配列番号10として提供される。隣接するDNAの一部及びトランスジェニック挿入断片の5’末端のDNA配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7として提供される。隣接するDNAの一部及びトランスジェニック挿入断片の3’末端のDNA配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、及び配列番号8として提供される。
【0050】
トランスジェニック挿入断片の一方の末端の隣接するトウモロコシゲノムDNAへのホスホジエステル結合の結合による接続にまたがる領域のDNA配列は、本明細書では「接合部」と呼ばれる。接合部は、トランスジェニック挿入断片と隣接するDNAとの1つの切れ目のない分子としての接続点である。一方の接合部はトランスジェニック挿入断片の5’末端で見いだされ、他方はトランスジェニック挿入断片の3’末端で見いだされ、本明細書ではそれぞれ5’接合部及び3’接合部と呼ぶ。「接合部配列」は、事象の5’または3’の接合部にわたる任意の長さのDNA配列を指す。トウモロコシ事象MON87429の接合部配列は、配列番号10を使用して当業者に明らかである。トウモロコシ事象MON87429の接合部配列の例は、配列番号1~8として提供されている。
図1は、5’から3’に配置された配列番号1~10の物理的配置を図示する。トウモロコシ事象MON87429の接合部配列は、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体、種子、または細胞のゲノムの一部として存在してもよい。植物体、植物体の一部、種子、または細胞由来の試料における配列番号1~8または10のいずれか1以上の同定は、DNAがトウモロコシ事象MON87429を含有するトウモロコシから得られ、トウモロコシ事象MON87429の存在の診断に役立つことを示す。
【0051】
本発明の植物体、種子、細胞、植物体の一部、及び商品生産物は、トウモロコシ事象MON87429の存在を示すDNA分子またはタンパク質分子の検出に使用されてもよい。提供されるのは、試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在を検出するためのプライマーまたはプローブのいずれかとして使用することができる例示的なDNA分子である。そのようなプライマーまたはプローブは、標的核酸配列に特異的であり、したがって、ここに記載されている方法によるトウモロコシ事象MON87429の同定に有用である。トウモロコシ事象MON87429の存在の検出は、核酸の熱増幅または核酸ハイブリッド形成技法(例えば、ノーザンブロッティング及びサザン解析)のような当該技術分野で既知の方法を使用することによって行われてもよい。
【0052】
「プライマー」は、増幅反応を伴うアニーリング法またはハイブリッド形成法で使用するために設計されるDNA分子である。増幅反応は、鋳型DNAを増幅してアンプリコンを生成する試験管内反応である。本明細書中で使用されるとき、「アンプリコン」は、増幅技術を使用して合成されているDNA分子である。本発明のアンプリコンは、配列番号1~10の1以上またはその断片を含むDNA配列を有する。一対のプライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅反応においてトウモロコシのゲノムDNAの試料のような鋳型DNAとともに使用してアンプリコンを生成してもよく、生成されたアンプリコンは、プライマーが鋳型とハイブリッド形成した2つの部位の間に位置する鋳型DNAの配列に相当するDNA配列を有する。プライマーは通常、相補的な標的DNA鎖とハイブリッド形成して、プライマーと標的DNA鎖との間に雑種を形成するように設計される。プライマーの存在は、標的DNA鎖を鋳型として使用してプライマーの伸長を開始するためのポリメラーゼによる認識の点である。プライマー対は、それらの間のヌクレオチドセグメントを増幅する目的で二本鎖ヌクレオチドセグメントの反対側の鎖を結合する2つのプライマーの使用を指す。プライマー配列の例は、配列番号11(SQ51062)及び配列番号12(SQ51053)として提供されている。配列番号11及び配列番号12として提供されているプライマー対は第1のDNA分子及び第2のDNA分子として有用であり、その際、第1のDNA分子は配列番号10のトランスジェニック挿入断片DNA配列の断片であり、第2のDNA分子は配列番号10の隣接DNA配列の断片であり、それぞれトウモロコシ事象MON87429を含有するDNAとの増幅反応にて一緒に使用されるとDNAプライマーとして機能するのに十分な長さのものあり、試料にてトウモロコシ事象MON87429の診断に役立つアンプリコンを生じる。本発明のプライマー対は特定の実施形態では、第1のDNA分子及び第2のDNA分子を含むとして定義されてもよく、その際、第1のDNA分子は配列番号10のトウモロコシゲノム部分の断片であり、第2のDNA分子は配列番号10の導入遺伝子部分の断片であり、それぞれトウモロコシ事象MON87429を含有するDNAとの増幅反応にて一緒に使用されるとDNAプライマーとして機能するのに十分な長さのものであり、試料にてトウモロコシ事象MON87429の診断に役立つアンプリコンを生じる。
【0053】
「プローブ」は、標的核酸の鎖に相補性であり、ハイブリッド形成検出法に有用である核酸分子である。本発明に係るプローブは、デオキシリボ核酸またはリボ核酸だけでなく、標的DNA配列に特異的に結合するポリアミド及び他のプローブ物質も含み、そのような結合の検出は、標的DNA配列の存在または非存在の検出に有用であることができる。プローブは、放射性同位元素、リガンド、化学発光剤、または酵素のような従来の検出可能な標識またはレポーター分子に付着させてもよい。トウモロコシ事象MON87429を検出するためのプローブとして有用な例示的なDNA配列は配列番号13(PB50370)として提供される。
【0054】
プライマー及びプローブを設計する及び使用する方法は、当該技術分野で周知である。配列番号1~10の完全長または断片を含むDNA分子は、トウモロコシ事象MON87429を検出するためのプライマー及びプローブとして有用であり、本明細書で提供されている配列を使用して当業者が容易に設計することができる。
【0055】
標的配列と優先的にハイブリッド形成する能力を保持する、標的配列とは異なるプライマー及びプローブが従来の方法によって設計されてもよいけれども、本発明に係るプローブ及びプライマーは、標的配列と完全な配列同一性を有してもよい。核酸分子がプライマーまたはプローブとして機能するためには、それは採用される特定の溶媒及び塩濃度のもとで安定した二本鎖構造を形成できるように配列が十分に相補性であることのみを必要とする。任意の従来の核酸ハイブリッド形成法または増幅法を使用して、試料にてトウモロコシ事象MON87429由来のトランスジェニックDNAの存在を同定することができる。プローブ及びプライマーは一般に、長さが少なくとも約11ヌクレオチド、少なくとも約18ヌクレオチド、少なくとも約24ヌクレオチド、または少なくとも約30ヌクレオチド以上である。そのようなプローブ及びプライマーは、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で標的DNA配列と特異的にハイブリッド形成する。従来のストリンジェントな条件は、MR Green及びJ Sambrook、Molecular cloning:a laboratory manual、4th Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(2012)によって記載されている。本明細書で使用されるとき、2つの核酸分子は、2つの分子が逆平行の二本鎖核酸構造を形成することができるならば、互いに特異的にハイブリッド形成することができる。核酸分子は、完全な相補性を示すならば、もう1つの核酸分子の「相補体」である。本明細書で使用されるとき、整列したときに第1の分子のすべてのヌクレオチドが第2の分子のすべてのヌクレオチドに相補性であるならば、2つの分子は「完全な相補性」を示す。2つの分子は、少なくとも従来の「低ストリンジェントな」条件下で互いにアニーリングしたままにするのに十分な安定性で互いにハイブリッド形成できるならば、「最小限に相補性」である。同様に、分子は、従来の「高ストリンジェントな」条件下で互いにアニーリングしたままにするのに十分な安定性で互いにハイブリッド形成できるならば、「相補性」である。したがって、逸脱が二本鎖構造を形成する分子の能力を完全に排除しない限り、完全な相補性からのそのようなそのような逸脱は許容される。
【0056】
DNAのハイブリッド形成を促進する適切なストリンジェントな条件、例えば、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、その後の50℃での2.0×SSCの洗浄は、当業者に既知であるか、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見いだすことができる。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃での約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃での約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択することができる。加えて、洗浄工程の温度は、室温(約22℃)での低ストリンジェンシー条件から約65℃での高ストリンジェンシー条件に上げることができる。温度と塩の双方を変更してもよいし、または温度もしくは塩濃度のいずれかを一定に保ってもよいが、他の変数を変更する。
【0057】
提供されるのは、試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在を検出するための抗体を作成するのに使用することができるタンパク質である。そのような抗体は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされるタンパク質の1以上に対して特異的である。そのようなタンパク質をコードするDNA配列は配列番号10で提供され、コーディング配列の開始位置と停止位置は表1に示されている。各タンパク質をコードするDNA配列及び配列によってコードされるタンパク質は、ここに記載されている方法によってトウモロコシ事象MON87429の存在を検出するための抗体を作成するのに有用である。トウモロコシ事象MON87429の存在の検出は、例えば、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、検出可能な標識またはレポーター分子(例えば、放射性同位元素、リガンド、化学発光剤、酵素など)への抗体の結合、またはレポーター分子に対する酵素作用のような当該技術分野で既知のタンパク質検出技法を使用することによって行われてもよい。1つの方法は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされるDMO、PAT、FT_T、またはCP4-EPSPSのタンパク質に結合する抗体と試料を接触させることと、次いで抗体結合の存在または非存在を検出することとを提供する。そのような抗体の結合は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされる1以上のタンパク質の存在についての診断に役立つ。
【0058】
トウモロコシ事象MON87429の存在を検出するためのタンパク質及び核酸の検出キットが提供されている。そのようなキットの多様性も、本明細書で開示されている組成物及び方法、ならびにタンパク質及び核酸の検出の技術分野で周知の方法を使用して開発することができる。タンパク質及び核酸の検出キットは、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物と交配する方法に適用することができる。そのようなキットは、配列番号1~10の断片を含むプライマーもしくはプローブ、またはトウモロコシ事象MON87429によってコードされるタンパク質に特異的な抗体を含有する。
【0059】
検出キットの一例は、試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在または非存在を検出するのに有用なDNAプローブとして機能するのに十分な長さの配列番号10の隣接するヌクレオチドの少なくとも1つのDNA分子を含む。プローブとして使用するのに十分な例示的なDNA分子は、配列番号13として提供されている配列を含むものである。他のプローブは当業者によって容易に設計されてもよい。検出キットの別の例は、試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在または非存在を検出するのに有用なアンプリコンを生成するのに有用な少なくとも1つのプライマー対を含む。そのような方法はまた、アンプリコンまたはその断片の配列決定を含んでもよい。プライマー対としての使用に十分な例示的なDNA分子は、それぞれ配列番号11及び配列番号12として提供されている配列を含むものである。他のプライマー対は当業者によって容易に設計されてもよい。本発明のキットはまた任意で、本明細書に記載されている検出反応または診断反応を行うための試薬も含んでもよい。検出キットの別の例は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1つのタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体を含む。例えば、そのようなキットは、細片の先端が水溶液と接触すると活性化される試薬を含む側方流動細片を利用してもよい。抗体産生に使用するのに十分な例示的なタンパク質は、配列番号10として提供される配列によってコードされるもの、またはその任意の断片である。
【0060】
本発明は、トウモロコシ事象MON87429を含有するトウモロコシの植物体、子孫、種子、細胞、及び植物体の一部、ならびにこれらを使用して生産される商品生産物を提供する。本発明の植物体、子孫、種子、細胞、植物体の一部、及び商品生産物は、配列番号1~8及び配列番号10として提供されている配列の少なくとも1つを有する検出可能な量のDNAを含有する。
【0061】
本発明の植物体、子孫、種子、細胞、及び植物体の一部は、1以上の追加のトランスジェニック形質、特にトウモロコシ事象MON87429を含有するトウモロコシ植物を追加のトランスジェニック形質(複数可)を含有する別の植物と交配することによって導入される形質も含有してもよい。そのような形質には、虫害抵抗性の向上、水利用効率の向上、収量成績の向上、耐乾性の向上、種子品質の向上、栄養品質の改善、雑種種子生産、及び/または除草剤耐性の向上が挙げられるが、これらに限定されず、形質はそのようなトランスジェニック形質を欠くトウモロコシ植物に関して測定される。
【0062】
本発明の植物を使用して、トウモロコシ事象MON87429を含有する子孫を生産してもよい。本明細書で使用されるとき、「子孫」には、配列番号1~8及び配列番号10から選択される少なくとも1つの配列を有するDNA分子を含む植物によって示され、先祖植物体から受け継がれたトウモロコシ事象MON87429を含む任意の植物体、種子、及び細胞が含まれる。植物体、種子、及び細胞は、トウモロコシ事象MON87429についてホモ接合型またはヘテロ接合型であってもよい。子孫植物は、トウモロコシ事象MON87429を含有するトウモロコシ植物によって生産された種子から、またはトウモロコシ事象MON87429を含有する花粉で受精させたトウモロコシ植物によって生産された種子から生育させてもよい。
【0063】
本明細書で使用されるとき、本発明の「植物体の一部」は、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体に由来する任意の部分である。植物体の一部には、組織試料、花粉、胚珠、鞘、花、根、茎、繊維、及び葉の全体または一部が挙げられるが、これらに限定されない。植物体の一部は成長できてもよいし、または成長できなくてもよい。
【0064】
本発明は、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物から生産される商品生産物を提供する。本発明の商品生産物は、配列番号1~10から成る群から選択されるDNA配列を含む検出可能な量のDNAを含有する。本明細書で使用されるとき、「商品生産物」は、トウモロコシ事象MON87429を含む植物体、種子、細胞、または植物体の一部に由来する材料から構成される任意の組成物または生産物を指す。商品生産物には、加工された種子、穀物、植物体の一部、及び食べ物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の商品生産物は、トウモロコシ事象MON87429に対応する検出可能な量のDNAを含有するであろう。試料におけるこのDNAの1以上の検出は、商品生産物の内容または供給源を決定するのに使用されてもよい。本明細書で開示されている検出方法を含む、DNA分子の任意の標準的な検出方法が使用されてもよい。
【0065】
トウモロコシ事象MON87429は、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤;合成オーキシン;グルタミン合成酵素の阻害剤、及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤に対する耐性を一緒に提供する4つの発現カセットを含有する。
【0066】
本明細書で使用されるとき、アリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤(「FOP除草剤(複数可)」と呼ばれる)には、クロジナホップ、クロジナホップ-エチル、クロジナホップ-プロパルギル、シハロホップ、シハロホップ-ブチル、ジクロホップ、ジクロホップメチル、ジクロホップ-P、ジクロホップ-P-メチル、フェノキサプロップ、フェノキサプロップ-P、フェノキサプロップ-P-エチル、フェンチアプロップ、フルアジホップ、フルアジホップ-ブチル、フルアジホップ-P、フルアジホップ-Pブチル、フルロキシピル、ハロキシホップ、ハロキシホップ.エトチル、ハロキシホップ-メチル、ハロキシホップ-P、ハロキシホップ-P-メチル、イソキサピリホップ、メタミホップ、プロパキザホップ、キザロホップ、キザラホップ-エチル、キザロホップ-P、キザラホップ-P-エチル、キザロホップ-P-テフリル、及びトリホップが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用されるとき、合成オーキシンには、安息香酸除草剤、フェノキシ酸除草剤、アリールピコリネート除草剤、及びピリジニルオキシ酸除草剤が挙げられるが、これらに限定されない。安息香酸除草剤の例には、ジカンバ(3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸)、ジカンバ塩、ジカンバ-ブトチル、ジカンバ-ジグリコールアミン塩、ジカンバ-ジメチルアンモニウム、ジカンバ-ジメタノールアンモニウム、ジカンバージエタノールアンモニウム、ジカンバーイソプロピルアンモニウム、ジカンバーカリウム、ジカンバーナトリウム、ジカンバートロラミンが挙げられるが、これらに限定されない。フェノキシ酸除草剤の例は、2,4-D(2,4―ジクロロフェノキシ酢酸)、2,4-D―ブトチル、2,4-D―ブチル、2,4-D―コリン、2,4-D-ジメチルアンモニウム、2,4-D―ジオラミン、2,4-D―エチル、2,4-D-2-エチルヘキシル、2,4-D―イソブチル、2,4-D―イソオクチル、2,4-D-イソプロピル、2,4-D-イソプロピルアンモニウム、2,4-D-カリウム、2,4-D-ナトリウム、2,4-D-トリイソプロパノールアンモニウム、2,4-D-トロラミン、クロメプロップ、ジクロロプロップ、フェノプロップ、MCPA、MCPA-ブトチル、MCPA-ジメチルアンモニウム、MCPA-2-エチルヘキシル、MCPA-イソプロピルアンモニウム、MCPA-カリウム、MCPA-ナトリウム、MCPA-チオエチル、2,4-DB、MCPB、MCPB-メチル、MCPB-エチル-ナトリウム、及びメコプロップである。アリールピコリネート除草剤の例は、ハラウキシフェン、ハラウキシフェン-メチル、及びフロルピラウキシフェン-ベンジルである。ピリジニルオキシ酸除草剤の例は、トリクロピル、フルロキシピル、アミノピラリド、クロピラリド、及びピクロラムである。
【0068】
本明細書で使用されるとき、グルタミン合成酵素の阻害剤には、ホスフィノトリシン、グルホシネート、グルホシネート塩、グルホシネートーアンモニウム、グルホシネートーナトリウム、グルホシネート-P,L-グルホシネート-アンモニウム、及びL-グルホシネート-ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用されるとき、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の阻害剤には、グリホサート、グリホサート塩、グリホサート-イソプロピルアンモニウム、グリホサート-アンモニウム、グリホサート-ジメチルアンモニウム、グリホサート-トリメシウム(=スルホサート)、グリホサート二アンモニウム、グリホサート-カリウム、及びグリホサート-ナトリウムが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0070】
本明細書で使用されるとき、「除草剤に耐性がある」または「除草剤耐性」または「耐性」は、1以上の除草剤(複数可)の存在または施用によって全体的にまたは部分的に影響を受けない能力、例えば、施用された場合除草剤の毒性作用に抵抗する能力を意味する。細胞、種子、または植物体は、1以上の除草剤(複数可)の存在下で少なくともある程度の正常な生育または表現型を維持できれば、「除草剤に耐性がある」、または「改善された耐性」を有する。形質は、野生型または対照の細胞、植物体、または種子と比較して、その存在が細胞、植物体、または種子への除草剤に対して改善された耐性を付与することができれば、除草剤耐性形質である。除草剤耐性形質を含む作物は、除草剤の存在下で生育し続けることができ、除草剤の存在による影響を最小限に抑えられてもよい。タンパク質の発現が野生型または対照の細胞、植物体、または種子と比較して、細胞、植物体、または種子への除草剤に対する改善された耐性を付与することができれば、タンパク質は「除草剤耐性」である。除草剤耐性タンパク質の例は、ホスフィノトリシン N-アセチルトランスフェラーゼ、ジカンバモノオキシゲナーゼのコーディング配列、FT_Tタンパク質、及びAgrobacterium sp株CP4由来のグリホサート耐性5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼのコーディング配列である。除草剤耐性は、特定の除草剤に対する完全にまたは部分的に非感受性であってもよく、特定の除草剤に対するパーセント(%)耐性または非感受性として表されてもよい。
【0071】
本明細書中で使用されるとき、「雑草」は、任意の望ましくない植物である。植物は一般に農業もしくは園芸の目的には望ましくないと見なされてもよく(例えば、Amaranthus種)、または特定の状況では望ましくないと見なされてもよい(例えば、自生植物としても知られる異なる種の圃場にある1つの種の作物)。雑草は当該技術分野で一般に知られており、地理、シーズン、生育環境、及び時間によって変化する。雑草種のリストは、農業及び科学の団体及び取り組み(例えば、アメリカ雑草学会、カナダ雑草学会、ブラジル雑草学会、国際雑草学会、及び除草剤耐性雑草の国際調査など)、政府機関(例えば、米国農務省、オーストラリア環境エネルギー省など)、及び産業と農民団体(例えば、全米コーン生産者協会など)から入手できる。
【0072】
本発明は、(i)キザロホップ及びハロキシホップのようなアリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤;(ii)ジカンバ及び2,4-Dのような合成オーキシン;(iii)グルホシネートのようなグルタミン合成酵素の阻害剤;及び(iv)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)阻害剤グリホサートから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤を施用することによってトウモロコシ栽培区域にて雑草を防除する方法を提供し、その際、除草剤を施用する前、施用時、または施用した後にトウモロコシ事象MON87429を含む種子または植物体が区域に植えられ、除草剤施用が雑草の生育を防止または抑制し、トウモロコシ植物体を傷つけない。植物生育区域は、除草剤施用時に雑草植物を含んでもよいし、または含まなくてもよい。本発明の方法で使用される除草剤(複数可)は、生育期の間に単独で、または1以上の除草剤(複数可)と組み合わせて施用することができる。本発明の方法で使用される除草剤(複数可)は、1以上の除草剤(複数可)と組み合わせて、時間的に(例えば、タンク混合物として、または逐次施用で)、空間的に(例えば、トウモロコシ種子の種まきの前後を含む生育期の間での異なる時間に)、またはその双方で施用することができる。例えば、区域にトウモロコシ事象MON87429を含む種子を植えることと、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物を傷つけずに区域の雑草を防除する目的で、ジカンバ、グルホシネート、グリホサート、2,4-D、またはFOP除草剤の1以上の除草剤として有効な量を単独でまたは別の除草剤と組み合わせて生育期にわたって施用することとから成る雑草を防除する方法が提供される。除草剤(複数可)のこのような施用は、種まき前(絶滅目的を含めて、トウモロコシ事象MON87429を含有する種子を植える前であればいつでも、すなわち、種子の成長に先立って出現するまたは生存する雑草に対する施用)、発芽前(トウモロコシ事象MON87429を含有する種子が植えられた後、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体が出現する前のいつでも)、または発芽後(トウモロコシ事象MON87429を含む植物体が出現した後のいつでも)であってもよい。1以上の除草剤または除草剤の組み合わせの複数回の施用、例えば、2回の施用(例えば、種まき前の施用と発芽後の施用、または発芽前の施用と発芽後の施用)、または3回以上の施用(例えば、種まき前の施用と2回の発芽後の施用)は生育期にわたって一緒にまたは個々に使用されてもよい。
【0073】
本発明の方法を実践することにおける除草剤の施用は、推奨される商業的割合またはその任意の割合もしくは倍数、例えば、推奨される商業的割合の2倍であってもよい。除草剤の割合は、除草剤及び処方に応じて、1エーカー当たり1ポンド当たりの酸当量(ポンド酸当量/エーカー)または1エーカー当たり1ポンド当たりの活性成分(ポンド活性成分/エーカー)として表されてもよい。除草剤の施用は、推奨される商業的割合またはその割合もしくは倍数であってもよい。本明細書で提供されているような除草剤施用割合におけるエーカーの使用は、単に指示的であるにすぎず;本明細書で提供される任意の割合と同等の投与量での除草剤施用割合は、1エーカーよりも大きいまたは小さい区画に使用されてもよい。除草剤の施用は、(i)キザロホップ及びハロキシホップのようなアリールオキシフェノキシプロピオン酸(FOP)群のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害剤;(ii)ジカンバ及び2,4-Dのような合成オーキシン;(iii)グルホシネートのようなグルタミン合成酵素の阻害剤;及び(iv)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)阻害剤グリホサートから成る群から選択される少なくとも1つの除草剤を含む。植物生育区域は除草剤施用時に雑草植物を含んでもよいし、または含まなくてもよい。雑草を防除する区域で使用するためのFOP除草剤の除草剤として有効な量は、生育期にわたって約0.01ポンド活性成分/エーカーから約1.0ポンド活性成分/エーカーまでの範囲から成るべきである(例えば、キザロホップは約0.034ポンド活性成分/エーカーから約0.083ポンド活性成分/エーカーまでの割合で施用されてもよく、ハロキシホップは約0.018ポンド活性成分/エーカーから約0.07ポンド活性成分/エーカーまでの割合で施用されてもよい)。雑草を防除する区域で使用するための合成オーキシンフェノキシ酸除草剤の除草剤として有効な量は、生育期にわたって約0.1ポンド酸当量/エーカーから約10ポンド酸当量/エーカーまでの範囲から成るべきである(例えば、2,4-Dは約0.75ポンド酸当量/エーカーから約1.0ポンド酸当量/エーカーまでの割合で施用されてもよい)。雑草を防除する区域で使用するための合成オーキシンピリジニルオキシ酸除草剤の除草剤として有効な量は、生育期にわたって約0.05ポンド酸当量/エーカーから約5.0ポンド酸当量/エーカーまでの範囲から成るべきである(例えば、フルロキシピルは約0.14ポンド酸当量/エーカーから約0.49ポンド酸当量/エーカーまでの割合で施用されてもよい)。雑草を防除する区域で使用するための合成オーキシン安息香酸除草剤の除草剤として有効な量は、生育期にわたって約0.1ポンド酸当量/エーカーから約16ポンド酸当量/エーカーまでの範囲から成るべきである(例えば、ジカンバは約0.5ポンド酸当量/エーカーから約2.0ポンド酸当量/エーカーまでの割合で施用されてもよい)。雑草を防除する区域で使用するためのグルタミン合成酵素阻害剤の除草剤として有効な量は、生育期にわたって約0.1ポンド酸当量/エーカーから約10ポンド酸当量/エーカーまでの範囲から成るべきである(例えば、グルホシネートは約0.4ポンド活性成分/エーカーから約1.59ポンド活性成分/エーカーまでの割合で施用されてもよい)。雑草を防除する区域で使用するためのEPSPS阻害剤の除草剤として有効な量は、生育期にわたって約0.5ポンド酸当量/エーカーから約12ポンド酸当量/エーカーまでの範囲から成るべきである(例えば、グリホサートは約0.75ポンド酸当量/エーカーから約2.25ポンド酸当量/エーカーまでの割合で施用されてもよい)。
【0074】
本発明は、除草剤として有効な量の少なくとも1つのシクロヘキサンジオン(DIM)除草剤、例えば、クレトジム、セトキシジム、及びトラコキシジムを施用することによって作物栽培用の区域にてトウモロコシ事象MON87429を含む自生トウモロコシを防除する方法を提供し、その際、除草剤の施用はトウモロコシ事象MON87429を含むトウモロコシの生育を阻止する。自生トウモロコシを防除する区域で使用するためのDIM除草剤の除草剤として有効な量は、生育期にわたって約0.03ポンド活性成分/エーカーから約2.75ポンド活性成分/エーカーまでの範囲から成るべきである(例えば、クレトジムは約0.0625ポンド活性成分/エーカーから約0.125ポンド活性成分/エーカーまでを施用されてもよく、セトキシジムは約0.188ポンド活性成分/エーカーから約0.281ポンド活性成分/エーカーまでを施用されてもよい)。
【0075】
トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体及び種子を生産する方法が提供されている。植物体は、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、WR Fehr,in Breeding Methods for Cultivar Development,Wilcox J.ed.,American Society of Agronomy,Madison WI(1987)にて見いだすことができる一般に使用される育種法の記載を使用して交配してもよい。植物体は自家受粉(「自殖」としても知られる)または他家受粉(「交配」としても知られる)させてもよい。トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体は、自家受粉させて、トウモロコシ事象MON87429についてホモ接合性である植物体の真の育種系統を生成してもよい。自殖は「近交系」として知られている子孫を生じ、遺伝的に均一である近交系を生成するために使用することができる。あるいは、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体を他花受粉(トランスジェニックまたは非トランスジェニックである別の植物体と交配)させて、変種または雑種の種子を生産してもよい。本発明の方法によって作製される種子及び子孫植物は、トウモロコシ事象MON87429を含有する。トウモロコシ事象MON87429が耐性を付与する1以上の除草剤の施用を使用して、トウモロコシ事象MON87429を含有する子孫を選択してもよい。あるいは、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体または種子を選択するために診断方法を使用して子孫を分析してもよい。子孫は変種または雑種の植物体であってもよく;トウモロコシ事象MON87429を含有する植物体によって生産された種子から、またはトウモロコシ事象MON87429を含有する植物体由来の花粉で受精させた植物体によって生産された種子から生育させてもよく;トウモロコシ事象MON87429についてホモ接合性またはヘテロ接合性であってもよい。
【0076】
トウモロコシ事象MON87429を使用して雑種種子を生産する方法が提供される。トウモロコシ事象MON87429を含む植物体は、雄性生殖組織を除くすべての組織でグリホサート耐性タンパク質CP4-EPSPSの発現を有する。これは、植物組織及び雌性生殖組織におけるグリホサート耐性及び雄性生殖組織におけるグリホサート感受性を生じる。このグリホサート感受性を使用して、グリホサートの適切な施用を介して雄性不妊を誘発することができる。グリホサートは、植物にて供給源からシンク組織に移行する浸透性の除草剤である。トウモロコシにおけるグリホサート代謝の速度に起因して、雄性生殖組織の発達に先立つトウモロコシ事象MON87429を含む植物への施用は、花粉の発達、花粉の脱落、または葯の突出を阻止してもよい。このグリホサート誘発性の雄性不稔を使用して、例えば、雑種種子生産の間に所与の交配にてメスとして使用されるトウモロコシ植物の雄しべを物理的に取り去る必要性を排除または低減することによって雑種種子生産の効率を高めることができる。
【0077】
本発明は、(a)トウモロコシ事象MON87429を含む植物体を生育させることと;(b)有効量のグリホサートを植物体に施用して雄性不稔を誘導し、その際、除草剤の施用は植物体の雄性生殖組織の発達前またはその最中であり、それによって植物体にて雄性不稔を誘導することと;(c)第2の植物体由来の花粉で植物体を受精させることと;(d)植物体から雑種種子を収穫することとを含む、雑種種子を生産する方法を提供する。一実施形態では、グリホサートは、発達前または発達中に1回以上の施用にて合計約0.25ポンド酸当量/エーカーから約11.0ポンド酸当量/エーカーまでの有効量で施用される。別の実施形態では、受精させる工程は、受動受精(例えば、風力受粉を介した)を可能にすることによって、機械的受粉もしくは手受粉のような他の手段によって、またはこれらの組み合わせによって達成されてもよい。除草剤の施用は、トウモロコシ植物の発達のV4期、V5期、V6期、V7期、V8期、V9期、V10期、V11期、V12期、V13期、及びV14期から成る群から選択される段階のような雄性生殖組織の発達前にまたは発達中に1回以上の施用で施用してもよく、少なくとも花粉の発達、花粉の脱落、または葯の突出を阻止してもよい。雄性不稔は部分的であってもよく、または完全であってもよい。一実施形態では、グリホサートの有効量は、V4期からV8期まででまたは開花前の100成長度単位(GDU)までで施用される合計で約0.5ポンド酸当量/エーカーから約2.5ポンド酸当量/エーカーまで(1回の施用または2回以上にわけた施用)ということになる。
【0078】
本発明の植物体、子孫、種子、細胞、及び植物体の一部は、1以上の追加のトウモロコシ形質(複数可)またはトランスジェニック事象、特にトウモロコシ事象MON87429を含有するトウモロコシ植物を追加の形質(複数可)またはトランスジェニック事象を含有する別のトウモロコシ植物と交配することによって導入されるものも含有してもよい。そのような形質(複数可)には、虫害抵抗性の向上、水利用効率の向上、収量成績の向上、耐乾性の向上、種子品質の向上、栄養品質の改善、雑種種子生産、及び除草剤耐性が挙げられるが、これらに限定されず、形質はそのようなトランスジェニック形質を欠くトウモロコシ植物に関して測定される。トウモロコシのトランスジェニック事象は当業者に既知であり;例えば、そのような形質のリストは、米国農務省(USDA)の動植物健康検査サービス(APHIS)によって提供され、www.aphis.usda.govでのそのWebサイトにて見いだすことができる。したがって、それぞれが1以上のトランスジェニック事象(複数可)を含む2つの親植物を交配し、子孫種子を収集し、2以上のトランスジェニック事象を含有する子孫の種子または植物を選択することによって、2以上のトランスジェニック事象を子孫の種子または植物体にて組み合わせることができ;次いで、これらの工程は、子孫にてトランスジェニック事象の望ましい組み合わせが達成されるまで繰り返されてもよい。親植物への戻し交配及び非トランスジェニック植物体との異系交配も、栄養繁殖と同様に企図されている。
【0079】
トウモロコシ事象MON87429を含む種子の代表的な試料の寄託はブダペスト条約に従って、10801 University Boulevard,Manassas,Virginia USA,Zip Code 20110にて住所を有するアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC(登録商標))とで行われた。トウモロコシ事象MON87429を含む種子のATCC特許寄託指定(受託番号)はPTA-124635であり、寄託日は2018年1月12日であった。寄託は、30年間、または最後の請求から5年間、または特許の有効期間のどちらか長い方の期間、寄託機関で維持される。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「を含む(comprises)」という用語は、「を含む(includes)が、これに限定されない」を意味する。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本発明をさらに完全に説明するために含まれる。要約されるのは、トウモロコシ事象MON87429の創出と最終的な選択のために必要とされる35の発現構築物の構築と試験、15,000を超える独特の事象の生成、ならびに厳密な分子的試験、農学的試験、及び野外試験を介した7年間にわたる数十万の個々の植物の分析である。
【0082】
開示されている特定の例において多くの修正を行うことができ、それでも同様の結果が得られることが当業者によって十分に理解されるべきである。化学的に及び生理学的にその双方に関連する特定の作用物質は、同一または類似の結果を達成しながら本明細書に記載される作用物質に置き換えられてもよい。当業者に明らかなそのような置換及び修正はすべて本発明の範囲内にあるとみなされる。
実施例1:発現カセット試験、構築物の設計、及びR0植物の試験
【0083】
この実施例では、35の異なる構築物のトウモロコシ植物体の設計及び試験を記載する。各構築物は4つの発現カセットを含有し、各発現カセットは異なる導入遺伝子を発現するために使用された。この試験は、トウモロコシで4つの導入遺伝子すべてを発現させるために使用する最良の構築物を選択するために行った。各構築物は、発現カセットの方向性と発現要素によって異なる独特の構成を有した。
【0084】
さまざまな発現要素の組み合わせと導入遺伝子を持つ種々の個々の発現カセットを設計し、植物形質転換ベクターにクローニングし、トウモロコシ植物における形質有効性を調べて、最良の個々の発現カセットのプールを作り出した。この個々の発現カセットのプールを使用して、それぞれが4つの発現カセット(各発現カセットはPAT、DMO、CP4-EPSPS、またはFTの導入遺伝子を有する)を含有し、異なる発現カセットの4方向組み合わせを調べるのに使用できるように35の異なる構築物を設計した。発現カセットの組み合わせは、発現要素、タンパク質のコーディング配列、及び方向性によって異なった。これは、2つのPAT発現カセット、6つのDMO発現カセット、5つのFT発現カセット、18のCP4-EPSPS発現カセットの試験を生じた。
【0085】
35の4発現カセット構築物を植物形質転換ベクターにクローニングし、これらのベクターを、当該技術分野で知られている方法を用いてLH244トウモロコシ未成熟胚のAgrobacteriumが介在する形質転換に使用し、それぞれ導入遺伝子のトウモロコシゲノムへの無作為挿入によって作られた15,326の独特の形質転換事象を生成した。次いで、R0植物体をトランスジェニック細胞から再生し、生育とさらなる評価のために正常な表現型の特徴を持つ発根した植物体を土壌に移した。
【0086】
15,326のR0植物を、トランスジェニック挿入断片の単一のコピーを有し、ベクター骨格配列が存在しないことについて分析した。挿入断片の単一コピーを持つ植物を除草剤耐性の有効性試験に進めた。単一コピーのR0植物を、V1/V2生育期で散布されたキザロホップ(0.16ポンド活性成分/エーカーのAssureII(登録商標)除草剤)、続いてグルホシネート(0.98ポンド酸当量/エーカーのIgnite(登録商標)280除草剤)、ジカンバ(2.0ポンド酸当量/エーカーのClarity(登録商標)除草剤)、または2,4-D(2.0ポンド酸当量/エーカーの2,4-D Amine4(登録商標)除草剤)(またはこれらのいずれかの組み合わせ)のタンクミックスに対する耐性について温室で評価した。>30%の損傷を示した植物は廃棄した。
【0087】
35の形質転換ベクターを使用して生成された最初の15,326の独特の形質転換事象から、コピー数と除草剤散布データを分析した後、1,945の独特の事象を選択した。データを表2にて提供する。選択した事象のR0植物を自家受粉させてR1種子を生産し、または交配してF1種子を生成して、第1のシーズンの野外試験に進めた。
表2:第1のシーズンの野外試験の近交系の有効性
【表2】
【0088】
実施例2:第1のシーズンの野外試験
35の構築物のそれぞれについてのR0分析から進められた事象と共に野外試験は長年にわたって実施され、野外試験の第1のシーズンにおける各構築物について植物体ごとに成績をセットとして分析した。したがって、各構築物は多くの独特の事象によって表された。これは、多数の構築物が第1のシーズンの野外試験で調べられるようにした一方で、第1のシーズンの試験を超えて進んだのは一番成績の良い構築物のみだった。(1)グルホシネート+ジカンバ、キザロホップ、及び2,4-D耐性についての近交系の有効性、(2)ラウンドアップ交雑システム(RHS)の有効性、及び(3)除草剤キザロホップ、2,4-D、グルホシネート、及びジカンバのさらに高い施用率に対する耐性に対する除草剤圧力試験についてR2植物(各事象についてホモ接合性)で別個の第1のシーズンの野外試験を行った。
【0089】
グルホシネート+ジカンバ、キザロホップ、及び2,4-Dについての除草剤耐性を評価するための植物の近交系有効性評価を実施した。除草剤処理は:0.8ポンド活性成分/エーカーのグルホシネート+2.0ポンド酸当量/エーカーのジカンバ;0.16ポンド活性成分/エーカーのキザロホップ;または2.0ポンド活性成分/エーカーの2,4-Dのタンクミックス施用から成った。区画は、除草剤処理の10~14日後に0~100の尺度にて薬害について目視で格付けしたが、「0」は薬害なし、及び「100」は完全な作物の破壊である。植物体の高さ(PHT)、穂の高さ(EHT)、50%トウモロコシの毛までの日数(S50D)、50%花粉までの日数(P50D)、殻の重量(SHW)、試験重量(TWT)、水分(MST)、及び穀物収量(YLD)も収集した。すべてのデータを分散分析及びp<0.05での平均値分離に供した。同じ事象を含有する複数の植物体の全体的な平均が使用され、近交系有効性はグルホシネート+ジカンバ、キザロホップ、及び2,4-Dについて、優秀(4)、良好(3)、普通(2)、または不良(1)、または該当なし(NA)として要約した。データを表3に示す。
表3:第1のシーズンの野外試験の近交系の有効性
【表3】
【0090】
植物のRHS有効性評価を実施して、近交系材料のグリホサート耐性及びグリホサート誘発雄穂不稔性における差異を同定した。単一の除草剤処理をスクリーニングに使用し、それは、V2に施用した1.5ポンド酸当量/エーカーのグリホサート、続いてほぼV8(875成長度日)、その後ほぼV10(1025成長度日)に施用した0.75ポンド酸当量/エーカーのグリホサートから成った。区画は、除草剤施用の10~14日後の薬害%(CIPV2、CIPV8、CIPV10、及びCIPVT)について0~100の尺度で目視にて格付けし、加えて、VT(雄穂の出現後)にて最終的な損傷を格付けした。区画は、トウモロコシの毛の出現率%[(SES9A(S90)及びSES9C(S90+4日)SES9E(S90+8日)]及び葯突出%[(AES9A(S90)、AES9C(S90+4日)、及びAES9E(S90+8日)]についても0から100の同様の尺度で目視にて格付けし、「0」はトウモロコシの毛の出現または葯の突出がないことを示し、「100」はトウモロコシの毛の完全な出現または葯の完全な突出を示す。近交系有効性評価のように、他の農業的パラメーターを収集した。同じ事象を含有する複数の植物の全体的な平均を使用し、グリホサート耐性、雄穂不稔性及び収量について、優秀(4)、良好(3)、普通(2)、または不良(1)、または該当なし(NA)として要約した。データを表4に示す。
表4:第1のシーズンの野外試験のRHS有効性
【表4】
【0091】
除草剤圧力試験を実施して、以下のように、除草剤キザロホップ、2,4-D、グルホシネート、及びジカンバのさらに高い施用率に対する構築物レベルの作物耐性を評価した。キザロホップ処理は、(1)VE~V2に続いてV4、その後V8に施用した0.32ポンド活性成分/エーカー(4X)でのキザロホップと0.25%v/vの非イオン性界面活性剤(NIS);(2)VE~V2に続いてV4、その後V8に施用した0.64ポンド活性成分/エーカー(8X)のキザロホップと0.25%v/vのNIS;または(3)VE~V2に続いてV4、その後V8に施用した1.28ポンド活性成分/エーカー(16X)のキザロホップと0.25%v/vのNISから成った。2,4-D処理は、(1)VE~V2、続いてV4、その後V8を施用した2ポンド活性成分/エーカーの2,4-Dアミンと0.25%v/vの非イオン性界面活性剤(NIS);(2)VE~V2、続いてV4、その後V8を施用した4ポンド活性成分/エーカーの2,4-Dアミンと0.25%v/vのNIS;(3)VE~V2、続いてV4、その後V8を施用した8ポンド活性成分/エーカーの2,4-Dアミンと0.25%v/vのNIS;または(4)VE~V2、続いてV4、その後V8を施用した16ポンド活性成分/エーカーの2,4-Dアミンと0.25%v/vのNISから成った。グルホシネート処理は、(1)V2に続いてV4、その後V8に施用した1.0ポンド活性成分/エーカーのグルホシネート;(2)V2に続いてV4、その後V8に施用した2.0ポンド活性成分/エーカーのグルホシネート;(3)V2に続いてV4、その後V8に施用した4.0ポンド活性成分/エーカーのグルホシネート;または(4)V2に続いてV4、その後V8に施用した8.0ポンド活性成分/エーカーのグルホシネートから成った。ジカンバ処理は、(1)V2に続いてV4、その後V8に施用した2.0ポンドのジカンバ;(2)V2に続いてV4、その後V8に施用した4.0ポンドのジカンバまたは(3)V2に続いてV4、その後V8に施用した8.0ポンドのジカンバ、(4)V2に続いてV4、その後V8に施用した16ポンドのジカンバから成った。区画は薬害について目視で格付けし、近交系有効性評価のように、農業的パラメーターを収集した。同じ事象を含有する複数の植物の全体的な平均を使用し、4つの除草剤のそれぞれについて、優秀(4)、良好(3)、普通(2)、または不良(1)、または該当なし(NA)として除草剤耐性の有効性を要約した。データを表5に提供する。
表5:第1のシーズンの野外試験の除草剤圧力試験
【表5】
【0092】
35の構築物のそれぞれで生産されたR2植物の複合成績のデータは、(1)グルホシネート+ジカンバ、キザロホップ、及び2,4-D耐性についての近交系有効性試験、(2)グリホサート耐性、雄穂不稔性、及び収量についてのRHS有効性試験、ならびに(3)除草剤キザロホップ、2,4-D、グルホシネート、及びジカンバのよりさらに高い施用率に対する耐性についての除草剤圧力試験についてまとめ、且つ分析した。このデータを使用して、調べた35の構築物からの進行について3つの構築物(HT4-14、HT4-32、及びHT4-34)を選択した。これら3つの構築物についての事象を第2のシーズンの野外試験に進めた。
【0093】
実施例3:分子分析
分子分析は進められた事象で野外試験と同時に行われた。DNAの増幅と配列決定を用いて、挿入配列、挿入コピー数、及び挿入における主鎖の非存在を確認した。各事象についてのトウモロコシゲノムにおける挿入部位をマッピングした。ノーザン解析を行って、pat、dmo、ft_t、cp4-epspsの遺伝子のmRNA転写物を検出し、測定した。トランスジェニック植物から精製したPAT、DMO、FT_T、及びCP4-EPSPSのタンパク質のN末端タンパク質の配列決定を行って、組換えタンパク質配列を確認した。PAT、DMO、FT_T、及びCP4-EPSPSのタンパク質を検出するためのウエスタンブロット解析は、トランスジェニック植物試料で行われた。R1植物由来のゲノムDNAで詳細なサザン解析を実施し、コピー数及び主鎖の非存在を確認した。
【0094】
実施例4:進んだ野外試験
構築物HT4-14、HT4-32、及びHT4-34についての第1のシーズンの野外試験から進んだ事象で、進んだ野外試験(第2のシーズンの試験以降)が長年にわたって行われた。各野外試験における各事象について多くの個々の植物の成績をセットとして分析した。したがって、各事象は多くの独特の植物によって表された。これにより、さまざまな場所や区域で、種々の特性について、多数の条件下にて各事象の成績を分析できるようになった。
【0095】
野外試験は近交系植物(事象についてホモ接合性)及び雑種植物(事象について半接合性)で行い、(1)グルホシネート、ジカンバ、キザロホップ、及び2,4-D耐性の商業的割合についての形質有効性、(2)農業的成績、(3)ラウンドアップ交雑システム(RHS)の有効性及びグリホサート、ならびに(4)除草剤キザロホップ、2,4-D、グルホシネート、及びジカンバのさらに高い施用率に対する耐性についての除草剤圧力試験を評価した。
【0096】
野外シーズン1の試験では、構築物HT4-14について30の事象を調べ、構築物HT4-32について41の事象を調べ、構築物HT4-34について21の事象を調べた。これらの試験に由来する複合データを使用して、進歩について事象を選択した。野外シーズン2の試験では、HT4-14構築物について15の事象、HT4-32構築物について38の事象、HT4-34構築物について38の事象を調べた(この数には、そのシーズンの種子不足のために起因して野外シーズン1で調べなかった幾つかの事象が含まれた)。構築物HT4-14についての事象は、実施例3に記載されているように分子分析によって特徴付けられ、このデータも事象を選択するのに使用された。これらの試験に由来する複合データとHT4-14構築物についての事象の詳細な分子特性評価を使用して、HT4-14の構築物についての進歩に向けて3の事象を選択した。これらの試験の複合データを使用して、HT4-32構築物についての進歩に向けて24の事象を選択し、HT4-34構築物についてのどんな事象も進めないことに決めた。野外シーズン3の試験では、構築物HT4-14についての3つの事象及びHT4-34構築物についての24の事象を調べた。これらの試験に由来する複合データを使用して、HT4-14構築物についての進歩に向けて2つの事象を選択し、HT4-32についてはどんな事象も進めないことに決めた。優れた事象を選択するために必要なデータを生成するために、野外シーズン4の試験を使用して、多数の場所で、さまざまな条件下で、雑種及び近交系の遺伝資源にて最終的な2つの事象を比較した。表6は、各シーズンの間で実施された野外試験にて各構築物について調べた独特の事象の数を提供する。
表6:進んだ野外試験の概要
【表6】
【0097】
農学的成績の野外試験は、形質有効性の野外試験と同じシーズンに実施した。野外試験はすべて、無作為化された完全なブロック設計を使用し、複数の場所で実施された。野外試験北米と南米の各地で行われた。有効性と農学的野外試験の双方について、野外試験のシーズン全体を通して農学的得点を収集し、シーズンの終了時に収量を決定した(有効性収率または農学的収率)。有効性野外試験を行って、除草剤施用後10~14日での薬害を評価した。目標の薬害の採点は事象の進歩について10%未満の得点だった。農業的野外試験については、区画は雑草を含まない状態に維持され、試験用除草剤はいずれも生育期には施用されなかった。雑種の農業的野外試験には、トランスジェニック雑種交配を行うのに使用された同じ親トウモロコシ系統を使用して生産されたが、トランスジェニック事象を含有していない比較可能な雑種(雑種対照)の対照が含まれた。近交系対照は、トランスジェニック近交系と比較可能な近交系であった。
【0098】
野外試験のデータを比較するために、多くのシーズン、多くの場所の野外試験データにおける植物すべての集計を使用してメタ解析を実施した。例として、表7は、複数のシーズンにわたって、選択された2つのHT4-14の事象について観察が繰り返された反復(reps)の数と、各事象について各試験で調べた個々の植物の総数とを説明している。
表7:野外試験の反復
【表7】
【0099】
雑種の薬害採点の比較のために、複数の雑種有効性の野外試験のメタ解析を完了させた。例として、表8は、V8で採点された2つの選択されたHT4-14の事象(V8での分析はV2、V4、V6、及びV8での除草剤施用に由来する累積薬害を包含する)についての複数のシーズンにわたる薬害の採点を95%信頼水準での統計的最小有意差(LSD、p<0.05)と共に提供する。トウモロコシ事象MON87429を含有する植物と事象2を含有する植物は双方とも、これらの試験で良好に機能した。
表8:雑種有効性の野外試験に由来する薬害採点のメタ解析
【表8】
【0100】
ブッシェル/エーカー(Bu/ac)としての収量の比較のために、複数の雑種有効性の野外試験のメタ解析を完了させた。例として、表9は、2つの選択されたHT4-14事象についての複数シーズンにわたる雑種由来の収量を95%の信頼水準での統計的最小有意差(LSD p<0.05)とともに提供する。トウモロコシ事象MON87429を含有する植物と事象2を含有する植物は双方ともこれらの試験で良好に機能した。
表9:雑種有効性の野外試験に由来する収量のメタ解析
【表9】
【0101】
商業的使用よりも高い施用率で施用した除草剤による圧力試験の野外試験は、単一のトランスジェニック事象を含有する雑種植物及び近交系植物で行った。除草剤グルホシネート(1.6~6.4ポンド活性成分/エーカーの範囲にわたる)、ジカンバ(2.0~16ポンド活性成分/エーカーの範囲にわたる)、キザロホップ(0.32~1.28ポンド活性成分/エーカーの範囲にわたる)、2,4-D(2.0~8.0ポンド活性成分/エーカーの範囲にわたる)及びグリホサート(3.0ポンド酸当量/エーカー)は、除草剤耐性形質の有効性の圧力試験のための野外試験で施用された。シーズンの終了時に、雑種圧力試験の野外試験が収穫され、収量(Bu/ac)が決定された。例として、表10は、2つの選択されたHT4-14の事象についての異なる試験における雑種及び近交系に由来する収量データを95%の信頼水準での統計的最小有意差(LSD p<0.05)とともに提供する。トウモロコシ事象MON87429を含有する植物と事象2を含有する植物は双方とも、除草剤処理すべてについての雑種及び近交系の収量試験で良好に機能した。結果は、さらなる野外試験により事象2を超えるトウモロコシ事象MON87429についての近交系収量の利点が同定され得ることを示唆した。
表10:雑種/近交系の圧力試験有効性の野外試験からの収量
【表10】
【0102】
雑種の農業的野外試験を実施し、シーズン全体を通して農業測定を収集し、シーズンの終了時に農業収量を決定した。雑種対照と雑種の収量を比較するために、多くのシーズン、多くの場所での雑種の農業的野外試験にわたってメタ解析を使用した。例として、表11は、2つの選択されたHT4-14の事象についての収量データ(Bu/ac)を95%の信頼水準での統計的最小有意差(LSD p<0.05)とともに提供する。トウモロコシ事象MON87429を含有する植物と事象2を含有する植物の双方はこれらの試験で良好に機能し、対照植物と比較した場合、これらの事象のいずれかを含有する植物について雑種収量に統計的差異は見いだされなかった。
表11:雑種の農業的野外試験に由来する収量のメタ解析
【表11】
【0103】
近交系有効性の野外試験は、グリホサート耐性及びラウンドアップ交雑システム(RHS)について行い、収量はシーズンの終了時に決定した。グリホサートは、雑草防除のために1.5ポンド酸当量/エーカーの割合で施用され、ほぼV8での0.75ポンド酸当量/エーカーのグリホサートの2回の不稔性施用がそれに続き、その後ほぼV10での0.75ポンド酸当量/エーカーの施用が続いた。植物の収量を比較するために、多くのシーズン、多くの場所での近交系有効性の野外試験にわたってメタ解析を使用した。例として、表12は、2つの選択されたHT4-14事象についての収量データ(Bu/ac)を95%の信頼水準での統計的最小有意差(LSD p<0.05)とともに提供する。野外シーズン2及び野外シーズン3の試験は双方とも、事象MON87429を含有する植物と比較した場合、事象2を含有する植物での収量で統計的に有意な低下を示した。これらのデータは、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物の近交系有効性の収量試験にて優れた成績を示した。
表12:グリコサート処理した近交系有効性の野外試験に由来する収量のメタ解析
【表12】
【0104】
近交系の農学的野外試験を行い、未処理の植物についてシーズンの終了時に収量を決定した。試験はトランスジェニック近交系と比較可能な近交系の対照を含んだ。多くのシーズン、多くの場所での近交系の農業的野外試験にわたるメタ解析を行って、対をなす対照とトランスジェニック近交系とについて収量を比較した。例として、表13は、2つの選択されたHT4-14事象についての収量データ(Bu/ac)を95%の信頼水準での統計的最小有意差(LSD p<0.05)とともに提供する。対照植物とトウモロコシ事象MON87429を含有する植物の間で近交系の農業収量に統計的な差異は見いだされなかった。対照的に、野外シーズン3の試験については、対照植物と事象MON87429を含有する植物とを比較した場合、事象2を含有する植物における収量で統計的に有意な低下があった。これらのデータは、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物の近交系農業収量試験における優れた成績を示した。
表13:近交系の農業的野外試験に由来する収量のメタ解析
【表13】
【0105】
アルゼンチンの4つの場所で雑種有効性試験を行い、グルホシネート、ジカンバ、キザロホップ、ハロキシホップ、2,4-D、及びグリホサートに対する植物体の耐性を評価した。MON87429を含有する植物を、トウモロコシ事象MON88017及びトウモロコシ事象MON89034の双方を含有する植物と交配して、3つの事象すべて(MON87429×MON88017×MON89034)を含有する子孫を生成した。除草剤処理は、(1)未処理の対照;(2)V2期で施用する0.448kg活性成分/ヘクタールのグルホシネートとその後のV6期での同じ施用;(3)V2期で施用する0.896kg活性成分/ヘクタールのグルホシネート、とその後のV6期での同じ施用;(4)V2期で施用する0.56ポンド酸当量/エーカーのジカンバ、とその後のV6期での同じ施用;(5)V2期で施用する1.12ポンド酸当量/エーカーのジカンバ、とその後V6期での同じ施用;(6)V2期で施用する0.09kg酸当量/ヘクタールのキザロホップ、とその後のV6期での同じ施用;(7)V2期で施用する0.18kg酸当量/ヘクタールのキザロホップとその後のV6期での同じ施用;(8)V2期で施用する0.1kg酸当量/ヘクタールのハロキシホップ、とその後のV6期での同じ施用;(9)V2期に施用する0.2kg酸当量/ヘクタールのハロキシホップ、とその後のV6期での同じ施用;(10)V2期で施用する1.12ポンド活性成分/エーカーでの2,4-D、とその後のV6期での同じ施用;(11)V2期で施用する2.24ポンド酸当量/エーカーの2,4-Dとその後のV6期での同じ施用;または(12)V2期で施用す2.24ポンド酸当量/エーカーのグリホサートとその後のV6期での同じ施用から成った。データ収集は、V2とV6での除草剤施用後10~14日の薬害とVTでの最終採点、花粉50%までの日数、トウモロコシの毛50%までの日数、植物体の高さ、穂の高さ、殻の重量、試験重量、水分、及び穀物収量から成った。すべてのデータを分散分析及びp<0.05での平均値分離に供した。
【0106】
MON87429×MON88017×MON89034を含有する植物の除草剤耐性は、調べたグリホサート、グルホシネート、ジカンバ、キザロホップ、ハロキシホップ、及び2,4-Dのすべての割合で優れていた(10%未満の薬害)。除草剤の処理速度は、目視による薬害に関して差異を生じなかった。穂の高さは、標準の除草剤処理12(2.24ポンド酸当量/エーカーでのグリホサート)と比較して処理のいずれについても有意差はなかった。未処理の植物のそれに対する処理の範囲内でMON87429×MON88017×MON89034を含有する植物の植物体の高さまたは試験重量の有意な減少、穀物水分の増加、成熟の遅延(花粉またはトウモロコシの毛が50%になるまでの日数の増加として測定)、穀物収量の低下はなかった。MON87429を含有する植物と雄性組織でグリホサート耐性を提供する事象を含有する植物(市販のトウモロコシ事象MON88017またはNK603など)との交配を介して生産された雑種植物は、商業的なラベル割合で施用した場合グリホサート、グルホシネート、ジカンバ、キザロホップ、ハロキシホップ、及び2,4-Dに対して優れた生育耐性を提供する。
【0107】
3年間の野外試験を用いて、クレトジムを使用したトウモロコシ事象MON87429を含む植物の防除について調べた。これらの試験は、自生防除法にてトウモロコシ事象MON87429を含有する植物と共にDIM除草剤を使用することを評価した。植物を商業的なラベル割合にてクレトジムで処理し、トウモロコシ事象MON87429を含む植物の完全な防除が観察された。
【0108】
(1)グルホシネート、ジカンバ、キザロホップ、及び2,4-D耐性の商業的割合についての形質有効性、(2)農業的成績、(3)ラウンドアップ交雑システム(RHS)の有効性及びグリホサート耐性、ならびに(4)除草剤キザロホップ、2,4-D、グルホシネート、及びジカンバのさらに高い施用率に対する耐性についての除草剤圧力試験を評価している分子分析から及び近交系植物と雑種植物による野外試験から蓄積したデータを、構築物HT4-14、HT4-32、及びHT4-34について調べた事象すべてに関して分析した。累積データの分析は、他の事象と比較してトウモロコシ事象MON87429の全体的に優れた成績を実証し、この事象を商業目的で選択する結果となった。
【0109】
実施例5:トウモロコシ事象MON87429の分子特性評価
トウモロコシ事象MON87429は商業事象として選択される際、広範な分子特性評価に供された。トウモロコシ事象MON87429のトランスジェニック挿入断片は表1に記載されている要素及び配列を含有する。
【0110】
トウモロコシ事象MON87429のDNA配列解析を行った。サザンブロット解析を行って、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物が、どんな形質転換ベクター主鎖も含まずにトランスジェニック挿入断片全体の単一の完全なコピーを含有することを確認した。隣接DNAは、挿入断片の5’及び3’末端の双方で配列決定し、それぞれの接合部は、配列捕捉、濃縮、配列決定、逆PCR、及びゲノムウォーキング法を使用して決定した。トウモロコシ事象MON87429の隣接DNAの配列は、既知のトウモロコシゲノムの物理的アセンブリにマッピングした。挿入部位の配列情報は事象の染色体位置のバイオインフォマティクス分析に使用した。挿入部位の完全性は、トウモロコシ事象MON87429の隣接領域に特異的なプライマーを使用して、野生型対立遺伝子全体のPCRによって決定した。野生型挿入部位を使用して、トウモロコシ事象MON87429の導入遺伝子統合の独特の部位をトウモロコシ参照ゲノムにマッピングした。形質転換の間に導入遺伝子のどの領域にも変化または変異が導入されないことを保証するために、トウモロコシ事象MON87429のトランスジェニック挿入断片全体を植物から単離し、配列決定した。5’接合部、3’接合部、及びトランスジェニック挿入断片の配列情報は、配列番号1~10として本明細書で提供されている。
【0111】
トウモロコシ事象MON87429の構築物を含む植物のRNA解析を行った。ノーザン解析は、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物の穀物から単離した全RNAで行った。これによって、pat、dmo、ft_t、及びcp4-epspsのmRNA産物の転写物のサイズ及び数が確認された。CP4-EPSPSのRNA発現レベルも、トウモロコシ事象MON87429を含有する植物組織由来の試料を用いたリアルタイムPCRによって測定した。cDNA末端の迅速な増幅(RACE)を使用してCP4-EPSPS切断産物を同定し、CP4-EPSPS転写物の切断がトウモロコシ事象MON87429を含む植物の雄穂でのみ発生し、これがトウモロコシの内在性の雄性特異的な低分子干渉RNA(siRNA)によって配列特異的にもたらされることを確認した。低分子量ノーザン解析を実施して、雄穂以外の組織にてグリホサート耐性を損ない得るCP4-EPSPSのsiRNAがないことを実証した。
【0112】
トウモロコシ事象MON87429の構築物を含む植物のタンパク質分析を行った。穀物から免疫精製したタンパク質抽出物を用いて、発現されたPAT、DMO、FT_T、及びCP4-EPSPSタンパク質のN末端タンパク質配列決定を行い、本物のN末端アミノ酸配列を確認した。トウモロコシ事象MON87429を含有する穀物からのタンパク質抽出物でウエスタンブロット解析を行い、PAT、DMO、FT_T、及びCP4-EPSPSのそれぞれについて、予想されるサイズの単一のタンパク質が生成されていることを確認した。ELISAを用いて、PAT、DMO、FT_T、及びCP4-EPSPSのタンパク質について植物の葉、種子、根、及び花粉におけるタンパク質のレベルを決定した。
【0113】
実施例6:トウモロコシ事象MON87429の検出
試料におけるトウモロコシ事象MON87429の検出は、DNA、RNA、またはタンパク質の検出技法を使用して行うことができる。例示的な検出方法及び材料を以下に提供する。検出は、試料にてトウモロコシ事象MON87429の存在または非存在を判定してもよい。検出は、ゲノムDNAの試料におけるトウモロコシ事象MON87429(すなわち、半接合、ホモ接合、またはヘテロ接合)のゲノムコピーの数を示してもよい。
【0114】
事象特異的なエンドポイントであるApplied Biosystems(商標)TAQMAN(登録商標)熱増幅法(Thermo Fisher Scientific)を開発して、試料におけるトウモロコシ事象MON87429を同定した。エンドポイントアッセイで使用されるDNAプライマーとプローブは、プライマーSQ51062(配列番号11)、SQ51053(配列番号12)、及び6-FAM(商標)標識プローブPB50370(配列番号13)である。6-FAMは、DNAプローブに接続されたApplied Biosystems(Foster City,CA)の蛍光色素製品である。TAQMAN MGB(商標)プローブについては、Taq DNAポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性が、蛍光色素分子と消光剤との間の5’末端からプローブを切断する。標的DNA鎖とハイブリッド形成すると、消光剤と蛍光色素分子が蛍光シグナルを生成するのに十分に分離されるので、蛍光を放出する。SQ51062とSQ51053はこれらの反応方法及びPB50370と共に使用される場合、トウモロコシ事象MON87429の診断に役立つDNAアンプリコンを生成する。この分析用の対照には、トウモロコシ事象MON87429を含有する陽性対照と、非トランスジェニックトウモロコシ由来の陰性対照と、鋳型DNAを含有しない陰性対照とを含めるべきである。さらに、PCR反応の対照には最適には、トウモロコシのゲノムにおける単一コピー遺伝子に特異的な内部対照プライマー及び内部対照プローブを含めるべきである。これらのアッセイは、最高速度で実行されるApplied BiosystemsGeneAmp(登録商標)PCRシステム9700(Thermo Fisher Scientific)での使用のために最適化されるが、他の機器が使用されてもよい。
【0115】
トウモロコシ事象MON87429を検出するためのTAQMAN法で有用な条件の例は以下のとおりである。工程1:5μlの最終容量に調整された18メガオームの水。工程2:2×ユニバーサルマスターミックス(dNTP、酵素、緩衝液)2.28μlを1×最終濃度にする。工程3:0.05μlの事象プライマー1(SQ51062)と事象プライマー2(SQ51053)(18メガオームの水に再懸濁して各プライマーを100uMの濃度にする)を0.9μMの最終濃度にする。工程4:0.01μlの事象6-FAM MGBプローブPB50370(18メガオームの水に100μMの濃度で再懸濁)を0.2μMの最終濃度にする。工程5:0.05μlの内部対照プライマー1と内部対照プライマー2のミックス(18メガオームの水に再懸濁して各プライマーを100uMの濃度にする)を0.9μMの最終濃度にする。工程6:0.01μlの内部対照VIC(商標)プローブ(18メガオームの水に100μMの濃度で再懸濁)を0.2μMの最終濃度にする。工程7:各試料について抽出されたDNA(鋳型)2.5μlには、以下のそれぞれ1つが含まれる:(a)分析される葉試料;(b)陰性対照(非トランスジェニックDNA);(c)陰性水対照(鋳型なし);(d)トウモロコシ事象MON87429のDNAを含有する陽性対照トウモロコシ。工程8:熱サイクラーの条件は以下のとおりである:95℃で20秒間を1サイクル;95℃で3秒間、次に60℃で20秒間を40サイクル;そして10℃の最終サイクル。
【0116】
接合性アッセイを開発して、トウモロコシ事象MON87429を含む植物が事象または野生型対立遺伝子についてヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを判定する。本明細書で提供される配列情報を用いて増幅反応アッセイを設計することができる。例えば、そのようなPCRアッセイには少なくとも3つのプライマー:プライマー1、プライマー2、及びプライマー3の設計が含まれ、プライマー1はトウモロコシ事象MON87429の3’側隣接のトウモロコシゲノムDNAに特異的であり;プライマー2はトウモロコシ事象MON87429トランスジェニック挿入断片に特異的であり;プライマー3は野生型対立遺伝子に特異的である。増幅反応でプライマー対として使用される場合、プライマー1とプライマー2はトウモロコシ事象MON87429に特異的なPCRアンプリコンを生成するであろう。増幅反応でプライマー対として使用される場合、プライマー1とプライマー3は、野生型対立遺伝子に特異的なPCRアンプリコンを生成するであろう。トウモロコシのゲノムDNAで実施されるPCR反応では、プライマー1+プライマー2から生成された各PCRアンプリコン及びプライマー1+プライマー3から生成された各PCRアンプリコンは、アンプリコンの配列とサイズが異なるであろう。3つのプライマーがトウモロコシ事象MON87429のホモ接合性植物から抽出されたDNAでのPCR反応に含まれる場合、プライマー1+プライマー2のアンプリコン(トウモロコシMON87429挿入断片に特異的)のみが生成されるであろう。3つのプライマーがトウモロコシ事象MON87429のヘテロ接合性植物から抽出されたDNAでのPCR反応に含まれる場合、プライマー1+プライマー2のアンプリコン(トウモロコシMON87429挿入に特異的)及びプライマー1+プライマー3のアンプリコン(野生型対立遺伝子に特異的またはトウモロコシMON87429挿入なしに特異的)の双方が生成されるであろう。3つのプライマーがトウモロコシ事象MON87429についてヌルである(野生型である)植物から抽出されたDNAでのPCR反応に含まれる場合、プライマー1+プライマー3のアンプリコン(野生型対立遺伝子に特異的)のみが生成されるであろう。PCR反応を用いて生成されるアンプリコンは、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて同定されてもよいし、または区別されてもよい。
【0117】
トウモロコシ事象MON87429についてのもう1つの接合性アッセイはTAQMAN熱増幅反応である。この種のアッセイについは、上述のようなプライマーに加えて、アッセイには2つの蛍光標識プローブが含まれる。プローブ1はトウモロコシ事象MON87429に特異的であり、プローブ2はトウモロコシ事象MON87429(野生型)についてヌルである(野生型)トウモロコシ植物に特異的であり、2つのプローブは異なる蛍光標識、例えば、6-FAM標識またはVIC(商標)標識を含有する。TAQMAN反応で使用される場合、プライマー1+プライマー2+プローブ1はトウモロコシ事象MON87429に特異的な第1の蛍光シグナルを生成し、プライマー1+プライマー3+プローブ2は野生型トウモロコシに特異的な第2の蛍光シグナルを生成するであろう。3つのプライマー及び2つのプローブがトウモロコシ事象MON87429についてホモ接合性植物から抽出されたDNAとのTAQMAN反応に含まれる場合、第1の蛍光シグナル(プライマー1+プライマー2+プローブ1に特異的な)のみが生成されるであろう。3つのプライマーがトウモロコシ事象MON87429のヘテロ接合性植物から抽出されたDNAとのTAQMAN反応に含まれる場合、第1の蛍光シグナル(プライマー1+プライマー2+プローブ1に特異的な)及び第2の蛍光シグナル(プライマー1+プライマー3+プローブ2に特異的な)の双方が生成されるであろう。3つのプライマーがトウモロコシ事象MON87429についてヌルである(野生型)植物から抽出されたDNAとのTAQMAN反応にて一緒に混合される場合、第2の蛍光シグナル(プライマー1+プライマー3+プローブ2に特異的な)のみが生成されるであろう。
【0118】
植物試料におけるトウモロコシ事象MON87429の存在を検出する別の方法はサザン解析である。当業者は、トウモロコシ事象MON87429に特異的なサザンハイブリッド形成プローブ(複数可)及びトウモロコシ事象MON87429についてヌルである(野生型)トウモロコシ植物に特異的な第2のサザンハイブリッド形成プローブを設計する方法を理解するであろう。サザン解析では、第1のサザンハイブリッド形成プローブからのみ検出されるシグナルはトウモロコシ事象MON87429についてホモ接合性植物を示し;第1のサザンハイブリッド形成プローブと第2のサザンハイブリッド形成プローブの双方から検出されるシグナルはトウモロコシ事象MON87429についてヘテロ接合性植物を示し;第2のサザンハイブリッド形成プローブからのみ検出されるシグナルはトウモロコシ事象MON87429についてヌルである(野生型)植物からDNAが抽出されたことを示すであろう。
【0119】
検出キットの別の例は、トウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1つのタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体を含む。例えば、そのようなキットは、細片の先端が水溶液と接触すると活性化される試薬を含む側方流動細片を利用してもよい。抗体産生に使用するのに十分な例示的なタンパク質は、配列番号10として提供される配列によってコードされるもの、またはその任意の断片である。
【0120】
タンパク質検出法を開発して、試料がトウモロコシ事象MON87429を含む植物体、種子、細胞、または植物体の一部に由来するかどうかを判定する。トウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1つのタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体を用いて、試料にてトウモロコシ事象MON87429によってコードされるタンパク質を検出する。トウモロコシ事象MON87429によってコードされる1以上のタンパク質に特異的な1以上の抗体を含む検出キットは、細片の先端が水溶液と接触すると活性化される試薬を含有する側方流動細片を利用してもよい。トウモロコシ組織の試料を粉砕し、水または水性緩衝液(例えば、界面活性剤とウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝生理食塩水)を用いて分析のためにタンパク質を抽出してもよい。遠心分離に続いて、吸収性パッドを含有する側方流動細片にてサンドイッチ形式でELISA法を使用して水性上清を分析する。検出は、調べられる試料を含有する水溶液に細片の先端を浸すことによって活性化される。水溶液は毛細管作用によって細片に運ばれ、細片上にて金で標識した抗体を可溶化する。金で標識した抗体はトウモロコシ事象MON87429によってコードされる少なくとも1つのタンパク質に特異的であり、試料におけるそのタンパク質のエピトープに結合して、抗体・抗原複合体を形成する。次いで、金で標識した抗体・抗原複合体は細片上でニトロセルロース膜まで運ばれる。膜はトウモロコシ事象MON87429によってコードされるタンパク質上の第2の別個のエピトープに結合する不動化された抗体の試験ラインを含み、トウモロコシ事象MON87429によってコードされるタンパク質が試料に存在すれば、試験細片を横切って一目瞭然のラインを出現させる。
【配列表】