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特許7219321圧力検知センサで技術設備をモニタリングするための安全デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】圧力検知センサで技術設備をモニタリングするための安全デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021162585
(22)【出願日】2021-10-01
(62)【分割の表示】P 2019503743の分割
【原出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2022001881
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】102016114384.7
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501493037
【氏名又は名称】ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルト,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】イブロセヴィック,オネディン
(72)【発明者】
【氏名】クチェラ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイカー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ノイシュヴァンダー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】テクダル,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】シェレイ,フィリップ
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-514276(JP,A)
【文献】特開2016-075672(JP,A)
【文献】特開平10-325847(JP,A)
【文献】特開2013-123773(JP,A)
【文献】特表2003-508779(JP,A)
【文献】特表平10-508943(JP,A)
【文献】特表2001-511516(JP,A)
【文献】特開2006-064408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0021136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
技術設備を監視するための安全デバイス(10,12)であって、
複数の第1電極(46)と複数の第2電極(48)とを有する圧力検知センサ(22)であって、各第1電極(46a~46h)が各連結部位(50)で各第2電極(48a~48e)に重なり、前記各連結部位(50)の前記各第1電極(46a~46h)が圧力検知材料(56)を介して前記各第2電極(48a~48e)から離間されており、いずれかの連結部位(50)に力が加わると、関連する第1電極(46g,52)と関連する第2電極(48d,54)との間の電気抵抗(58)が変化するようになされた前記圧力検知センサ(22)と、
前記複数の第1電極(46)と前記複数の第2電極(48)とに連結されて、前記関連する連結部位(50)で電気抵抗(58)を逐次判定するように構成されている測定回路と、
前記判定された電気抵抗(58)に応答して出力信号を提供するように構成されている評価ユニット(90)と、を備え、
前記測定回路は、第1選択素子(86;104)と第2選択素子(94)とを有し、
前記第1選択素子(86;104)は前記関連する第1電極(46g,52)を測定電位(64)を受ける端子に接続し、前記関連する第2電極(48d,54)を接地端子(66)に接続し、他の第1電極と他の第2電極とを所定の電位(70)を受ける端子に接続し、前記関連する第1電極(52)および前記関連する第2電極(54)を通して、前記連結部位(50)の前記電気抵抗(58)の隔離された測定を可能にするように構成され、
前記第1選択素子(104)は、個別に配置することができる3つの論理ユニット(104a、104b、104c)であって、前記関連する第1電極(46g、52)を前記測定電位(64)を受け取るための端子に接続し、前記関連する第2電極(48d、54)を前記接地端子(66)に接続し、前記他の第1電極および前記他の第2電極を前記所定の電位(70)を受け取るための端子に接続するように作用する、前記3つの論理ユニット(104a、104b、104c)を有し、
前記3つの論理ユニット(104a、104b、104c)のうちの第1論理ユニット(104a)および第2論理ユニット(104b)は、圧力検知センサ(22)に配置され、前記3つの論理ユニット(104a、104b、104c)のうちの第3論理ユニット(104c)は、追加のプラグインボードに配置されている、安全デバイス。
【請求項2】
前記所定の電位(70)を受ける端子は、前記所定の電位(70)が前記測定電位(74)と一致するように、前記測定電位(64)を受ける端子に連結されている、請求項1に記載の安全デバイス。
【請求項3】
前記測定回路は、入力側が前記測定電位(64)を受ける端子に接続されて、出力側が前記所定の電位(70)を受ける端子に接続されているインピーダンスコンバータ(78)を備える、請求項1または請求項2に記載の安全デバイス。
【請求項4】
前記インピーダンスコンバータは、反転入力(82)と、非反転入力(76)と、前記反転入力(82)に対するフィードバックである出力(80)とを有する演算増幅器(78)である、請求項3に記載の安全デバイス。
【請求項5】
前記第2選択素子(94)は、前記複数の第1電極(46)と前記複数の第2電極(48)とに連結されて、前記複数の第1電極(46)と前記複数の第2電極(48)とのそれぞれのうちの1つの電極を抵抗器(96)と並列に逐次接続するように構成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の安全デバイス。
【請求項6】
1スイッチング試験を行うために、前記第1選択素子(86;104)と前記第2選択素子(94)とを、前記複数の第1電極(46)と前記複数の第2電極(48)とのそれぞれのうちの同じ電極に周期的に切り換えるように構成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の安全デバイス。
【請求項7】
2スイッチング試験を行うために、前記第1選択素子(86;104)と前記第2選択素子(94)との間に連結部位(50)の各電気抵抗(58)が存在するように、前記第1選択素子(86;104)と前記第2選択素子(94)とを前記複数の第1電極(46)と前記複数の第2電極(48)とに周期的に切り換えるように構成されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の安全デバイス。
【請求項8】
前記評価ユニット(90)は、測定電圧から前記電気抵抗(58)を判定し、各連結部位(50)について、前記測定電圧に応じて第1、第2または第3の出力信号を提供するように構成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の安全デバイス。
【請求項9】
前記第1出力信号は、エラー信号に対応し、前記第2出力信号は、連結部位(50)の負荷状態を示す信号に対応し、前記第3出力信号は、前記連結部位(50)の無負荷状態を示す信号に対応する、請求項8に記載の安全デバイス。
【請求項10】
前記評価ユニット(90)は、前記測定電圧が第1閾値(110)未満になるか、または第2閾値(112)を超えると前記第1出力信号を出力し、前記測定電圧が前記第1閾値(110)を超え、かつ前記第1閾値(110)と前記第2閾値(112)との間にある第3閾値(114)未満になると前記第2信号を出力し、前記測定電圧が前記第3閾値(114)を超え、かつ前記第2閾値(112)未満になると前記第3出力を出力するように構成されている、請求項8または請求項9に記載の安全デバイス。
【請求項11】
前記評価ユニット(90)はマルチチャネル冗長性を有する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の安全デバイス。
【請求項12】
前記評価ユニット(90)は、第1マイクロコントローラ(90a)と第2マイクロコントローラ(90b)とを有し、
前記第1マイクロコントローラ(90a)は、前記第1選択素子(86;104)によって前記関連する第1電極(46g,52)に接続可能な第1アナログ/デジタルコンバータ(68)と、自己診断をするために第2選択素子(94)に接続可能な第2アナログ/デジタルコンバータ(98)とを有し、
前記第2マイクロコントローラ(90b)は、前記第1選択素子(86;104)によって前記関連する第1電極(46g,52)に接続可能な第3アナログ/デジタルコンバータ(68)と、前記自己診断をするために第2選択素子(94)に接続可能な第4アナログ/デジタルコンバータ(98)とを有する、請求項11に記載の安全デバイス。
【請求項13】
前記第2選択素子(94)、前記抵抗器(96)、前記評価ユニット(90)の少なくとも一部は、前記追加のプラグインボードに配置されている、請求項5に記載の安全デバイス。
【請求項14】
前記追加のプラグインボードは、外部接続を通して、前記圧力検知センサ(22)に接続されている、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の安全デバイス。
【請求項15】
複数の第1電極(46)と複数の第2電極(48)とを備える圧力検知センサ(22)を用いて技術設備を監視するための方法であって、
各第1電極(46a~46h)は、各連結部位(50)で各第2電極(48a~48e)に重なり、
前記各連結部位(50)で前記各第1電極(46a~46h)は、圧力検知材料(56)を介して前記各第2電極(48a~48e)から離間されており、いずれかの連結部位(50)に力が加わると、関連する第1電極(46g,52)と関連する第2電極(48d,54)との間の電気抵抗(58)が変化するようになされており、前記方法は、
前記複数の第1電極(46)と前記複数の第2電極(48)とに連結されて、前記関連する連結部位(50)の電気抵抗(58)を逐次判定する測定回路を提供するステップと、
評価ユニット(90)により前記判定された電気抵抗(58)の関数として出力信号を提供するステップと、を含み、
前記測定回路は、第1選択素子(86;104)と第2選択素子(94)とを有し、
前記第1選択素子(86;104)は、前記関連する第1電極(46g,52)を測定電位(64)を受ける端子に接続し、前記関連する第2電極(48d,54)を接地端子(66)に接続し、他の第1電極と他の第2電極とを所定の電位(70)を受ける端子に接続し、前記関連する第1電極(46g,52)および前記関連する第2電極(54)を通して、前記連結部位(50)の前記電気抵抗(58)の隔離された測定を可能にするように構成され、
前記第1選択素子(104)は、個別に配置することができる3つの論理ユニット(104a、104b、104c)であって、前記関連する第1電極(46g、52)を前記測定電位(64)を受け取るための端子に接続し、前記関連する第2電極(48d、54)を前記接地端子(66)に接続し、他の第1電極および他の第2電極を前記所定の電位(70)を受け取るための端子に接続するように作用する、前記3つの論理ユニット(104a、104b、104c)を有し、
前記3つの論理ユニット(104a、104b、104c)のうちの第1論理ユニット(104a)および第2論理ユニット(104b)は、圧力検知センサ(22)に配置され、前記3つの論理ユニット(104a、104b、104c)のうちの第3論理ユニット(104c)は、追加のプラグインボードに配置されている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の第1電極と複数の第2電極とを備える圧力検知センサで技術設備をモニタリングするための安全デバイスであって、各第1電極は、関連連結部位で各第2電極に重なり、関連連結部位の各第1電極は、圧力検知材料によって関連第2電極から離間されて、連結部位に力が加わると、関連第1電極と関連第2電極との間の電気抵抗が変化するようになされた安全デバイスに関する。当該安全デバイスは、複数の第1電極と複数の第2電極とに連結されて、関連連結部位の電気抵抗を逐次判定するように構成されている測定回路を備える。評価ユニットは、測定された電気抵抗に応じて出力信号を提供する。
【背景技術】
【0002】
このような安全デバイスは、たとえば特許文献1から公知である。
【0003】
信号取得と一次的な電子信号処理とにおける進歩は、長年にわたり、製造プロセスの自動化レベルを継続的に高めてきた。それにも関わらず、人による介入は製造プロセスの不可欠な部分であり、またそうであり続けているため、近年における開発では、人とマシンとの協働の最適化がますます重視されるようになってきている。特に、この協働は、人の健康を危険にさらしてはならない。そのため、マシンは、その作動範囲内のその環境を知覚し、物体または人がすぐ近くにいるかどうかを認識できるようにされなければならない。マシンがその環境を知覚する総合的なセンサ装置に加えて、これには、人とマシンとによる安全な連携作業を可能にするために記録される信号をエラーなく安全に評価する必要もある。
【0004】
たとえば、マシンへのアクセスまたはマシンとの接触を検出することのできるセンサが、上記の特許文献1に開示されている。特許文献1は、機械的負荷下で明確にその電気特性を変える複数の個々のセンサセルを相互接続することによって実現される大面積触覚センサを示す。
【0005】
センサセルは、行列に配置されている電極を介して個々に接触することができるので、表面全体にわたる圧力分布を個々のセルの電気特性の測定値から判定することができる。センサは、マシンへのアクセスエリアのステップマットとして使用することができ、または、人とマシンもしくは物体との衝突を検出するためにマシンの表面に人工皮膚として配置することができる。
【0006】
こうした圧力検知安全デバイスに関し、安全設計および試験についての一般的な原理および要求事項がEN ISO 13856-1に規定されている。特に、この規格は、性能、マーキングおよびドキュメンテーションに関する最低限の安全要求事項を規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第2528234号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
センサを形成するために互いに接続するセンサセルを多くすればするほど、センサの局所的な分解能が高くなるが、信号の評価に必要となる労力もそれに応じて多くなる。そのため、通常、より多くのセンサセルの評価を同時に並行して行うのではなく、順次行う。
すなわち、個々のセンサセルは、それぞれのステータスを判定するために、評価ユニットにより次から次に連続的にスキャンされる。調べなければならないセンサセルの数が多くなればなるほど、センサ全体を調べるのにかかる時間が長くなる。そのため、単一のセンサセルの測定の継続時間をできるだけ最小限にするのが望ましい。
【0009】
各電極がいくつかのセンサセルに連結されているマトリックス型のセンサの場合、いくつかのセルが同時に起動される場合にも、故障電流路が発生する可能性がある。これにより、負荷のかかっていないセルが起動されたと認識されることになりかねない。言い換えると、いくつかのセルが同時に起動される場合、対応するセンサセルがこの部位で起動されていなかったとしても、ある部位で接触が記録されかねない。「ゴースト(ghosting)」とも呼ばれるこの現象は、ある部位での負荷が実際の負荷によるものかまたは「ゴースト」により生じたものなのかをエラーなく判定することができないため、安全重視の用途には前述のタイプのセンサを限定された範囲でしか使用できないことを意味する。ゴーストは、影響を受ける場所によって異なる措置を行わなければならない場合に特に問題となる。
【0010】
上記の背景に照らし、本発明の目的は、迅速な評価を可能にし、かつ「ゴースト」により生じるエラーを防ぐ、前述のタイプの安全デバイスを実現することである。特に、フェイルセーフな空間分解能を可能にするために、各セルをフェイルセーフに評価することのできる安全デバイスを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、測定回路が、関連第1電極と関連第2電極とを介して連結部位の電気抵抗を判定するために、第1電極と第2電極とを所定の電位を受ける端子にさらに接続し、連結部位の電気抵抗の単独測定を可能にするように構成されている、前述したタイプの安全デバイスの改良によって解決される。
【0012】
さらに、この目的は、複数の第1電極と複数の第2電極とを備える圧力検知センサの出力信号を判定するための方法によって解決される。各第1電極は、関連連結部位で各第2電極に重なり、関連連結部位の各第1電極は、圧力検知材料を介して関連第2電極から離間されて、連結部位に力が加わると、関連第1電極と関連第2電極との間の電気抵抗が変化するようになされている。該方法は、複数の第1電極と複数の第2電極とに連結されて、関連連結部位の電気抵抗を逐次判定する測定回路を提供するステップと、評価ユニットにより測定された電気抵抗の関数としての出力信号を提供するステップと、を含む。該測定回路は、関連第1電極と関連第2電極とを介して連結部位の電気抵抗を判定するために、第1電極と第2電極とを所定の電位を受ける端子にさらに接続して、連結部位の電気抵抗の単独測定を可能にするように構成されている。
【0013】
本発明のアイデアは、1つのセルの測定中に、個々のセルの測定に影響を与えることのないように残りのセルを接続する、改良された測定回路を提供するというものである。これは、第1関連電極と第2関連電極とを介してセルが測定されるときに、残りの電極が所定の電位に接続されていることによって達成される。
【0014】
所定の電位とは、ここでは、一般的な接地端子とは異なる電位として定義され、たとえば、センサの供給電圧のプラス電位に対応する。
【0015】
前記所定の電位は、残留電流が、測定されるセルから所定の電位に占有されているセルに流れることができないように選択される。マトリックス状のセンサの場合、このことは、セルの測定に関与しない電極と列との両方が、測定中にこれらを適切な端子に接続することによって、所定の電位に接続されることを意味する。測定回路による測定に関与しな
いセルを通る故障電流路を排除することによって、「ゴースト」を確実かつ容易に回避することができる。
【0016】
同時に、残りのセルを抑制することは、好ましくは、センサセルの1回の測定の継続時間を短縮する。たとえば、セルは、容量に並列な抵抗器として等価回路図に図示することができ、それによって、顕著に、容量の充電にかかる時間で充電時間が判定される。隣接するセルの容量がそれ以上測定に影響しない場合、さらに迅速にセルを充電して読み取ることができる。したがって、センサ全体の読み取りを加速することができる。有利なことに、センサは、全体的な容積が小さくなるため、より低い供給電圧で動作することができ、全体的な電力消費量も削減される。
【0017】
したがって、上述した目的は完全に達成される。
【0018】
有利な改良形態において、測定回路は、電気抵抗を判定するために測定電位を受ける端子に関連第1電極を接続するとともに、関連第2電極を接地端子に接続するように構成されている第1選択素子を備える。第1選択素子は、1つのセルの測定に必要な電極を測定電位と接地端子とに接続することを可能にする。同時に、第1選択素子は、残りの電極を、接地端子に対応しない所定の電位に接続する。
【0019】
第1選択素子は、好ましくは、好適な構成を実施することのできる制御可能なスイッチング素子である。選択素子は、制御ユニットによって作動される複数の個別スイッチング素子から形成することができる。選択素子の使用により、本発明による回路を実施し、自動化するのが特に容易になる。
【0020】
さらに有利な改良形態において、所定の電位を受ける端子は、所定の電位が測定電位と量が一致するように、測定電位を受ける端子に連結されている。所定の電位と測定電位とが同じ大きさであるため、測定電位と接地とで切り換えられる1つのセルは、他のセルから特によく隔離することができる。他の電極の電位が同じであるため、測定中に、1つのセルの測定を誤らせかねない残留電流が流れ出ることはない。このコンテキストにおいて「量が一致する」とは、電位の高さが等しいことを意味するが、必ずしも測定電位が所定の電位に直接接続されていることを意味するわけではない。
【0021】
さらに有利な改良形態において、測定回路は、入力側が測定電位を受ける端子に接続されて、出力側が所定の電位を受ける端子に接続されているインピーダンスコンバータを備える。所定の電位および測定電位は、電位が互いに干渉しないように、インピーダンスコンバータによって互いに分離されている。好ましくは、インピーダンスコンバータは、入力側に高い入力抵抗を有し、出力側に、無視できるほど小さい出力抵抗を有する。
【0022】
さらに有利な改良形態において、インピーダンスコンバータは、反転入力と、非反転入力と、反転入力に対するフィードバックである出力とを有する演算増幅器である。演算増幅器は、目下のアプリケーションにほぼ理想的な状態を作り出すので、インピーダンスコンバータとして特によく適する。特に、入力抵抗はほぼ無限であり、出力抵抗はほぼゼロである。したがって、所定の電位は、それ自体に影響することなく量に関して測定電位に従う。
【0023】
すべてのセルの測定について所定の電位と測定電位とを分離するのに測定回路に演算増幅器が1つだけ必要であることが好ましい。このように、測定回路を特に経済的に実現してもよい。
【0024】
さらに有利な改良形態において、測定回路は第1アナログ/デジタルコンバータを備え
、第1選択素子は、関連第1電極を第1アナログ/デジタルコンバータに接続するように構成されている。関連第2電極を接地端子に接続しながら、関連第1電極を測定電位と第1アナログ/デジタルコンバータとに接続することにより、1つのセルの抵抗を電圧測定により容易に判定することができる。
【0025】
好ましくは、測定電位とアナログ/デジタルコンバータとの間に直列抵抗器が配置されて、直列抵抗器と、判定するべきセルの抵抗との間に分圧器が形成されるようにする。分圧器は、電圧を測定することによりセルの抵抗を正確に判定するのを容易にする。
【0026】
さらに有利な改良形態において、測定回路は、自己診断を行うために、第2選択素子と、抵抗器と、第2アナログ/デジタルコンバータとを含む試験手段を備える。自己診断は、センサの通常の動作中にエラーを検出することができる。第2選択素子は、第1選択素子とは独立して、第1および第2の電極を個々に扱うことができるので、第2アナログ/デジタルコンバータと、センサの抵抗が隠されている最小抵抗とを介して試験測定を行うことができる。そして、試験回路は、測定に必要な測定コンポーネントのみを含む。これにより、個々の測定コンポーネントの機能的能力を点検することが可能になり、エラー安全性を一層高める。
【0027】
さらに有利な改良形態において、第2選択素子は、複数の第1電極と複数の第2電極とに連結されて、複数の第1電極と複数の第2電極とのそれぞれのうちの1つの電極を抵抗器と並列に第2アナログ/デジタルコンバータに逐次接続するように構成されている。試験手段により、複数の第1電極と複数の第2電極との交差接続を検出することのできるマトリックス状のセンサで行列試験を行うことができる。
【0028】
特に好適な改良形態において、試験手段は、第1スイッチング試験を行うために、第1選択素子と第2選択素子とを、複数の第1電極と複数の第2電極とのそれぞれのうちの同じ電極に周期的に切り換えるように構成されている。第1スイッチング試験で、第1選択素子を、正確なスイッチングについて点検することができる。
【0029】
さらに有利な改良形態において、試験手段は、第2スイッチング試験を行うために、第1選択素子と第2選択素子との間に連結部位の各比抵抗が存在するように、第1選択素子と第2選択素子とを複数の第1電極と複数の第2電極とに周期的に切り換えるように構成されている。第2スイッチング試験で、有利なことに、電極間の交差接続を検出することができる。
【0030】
さらに有利な改良形態において、評価ユニットは、測定電圧から測定抵抗を判定し、各連結部位について、測定電圧に応じて第1、第2または第3の出力信号を提供するように構成されている。評価ユニットは、有利なことに、測定抵抗の関数として提供される3つの出力信号を区別することができる。各セルについて、3つの出力信号のうちの1つを生成することが有利である。同様に、個々のセルの測定値を合計して、出力信号がセンサ全体を表す出力になるようにすることができる。
【0031】
さらに有利な改良形態において、第1出力信号は、エラー信号に対応し、第2出力信号は、連結部位の起動状態を示す信号に対応し、第3出力信号は、連結部位の非起動状態を示す信号に対応する。一般的なエラー状態を示すエラー信号と、起動セルを表す信号と、非起動セルを示す信号と、の区別は、個々のセルの評価の区別およびフェイルセーフな空間分解能を可能にする。
【0032】
さらに有利な改良形態において、評価ユニットは、測定電圧が第1閾値未満になるか、または第2閾値を超えると第1出力信号を出力し、測定電圧が第1閾値を超え、かつ第1
閾値と第2閾値との間にある第3閾値未満になると第2信号を出力し、測定電圧が第3閾値を超え、かつ第2閾値未満になると第3出力を出力する。出力信号のタイプは、個々のセルの抵抗で下がる測定電圧に起因する。第1閾値は、適切な測定のために測定電圧レベルがその範囲になければならない下限に対応し、第2閾値は上限に対応する。測定電圧レベルが下限を下回ると、たとえばセンサに入り込んだ液体に起因する、電極と接地との交差接続が想定されるため、エラー反応がトリガされる。測定電圧レベルが上限を上回ると、システムは、やはりエラー状態に入る。この理由には、個々のセンサセルの老化、腐食または機械的な摩耗、およびドリフトが含まれる可能性がある。また、電極の接続不良または分離、および電極のスタックアットハイエラーも存在する可能性がある。
【0033】
さらに有利な改良形態において、評価ユニットはマルチチャネル冗長性である。冗長設計は、安全デバイスの故障安全性を高める。好ましくは、評価ユニットは、互いに通信するとともに互いをモニタリングすることのできる、機能的に同一の2つのコントローラから構成される。多様性も高めるために、異なる製造者製の機能的に同一のコントローラが特に有利である。
【0034】
上述した本発明の特徴およびこれから以下で説明する特徴は、示したそれぞれの組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせまたは単独でも使用できることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】新規な安全デバイスの実施例の可能な応用分野の模式図を示す。
図2】新規な安全デバイスの例示的な実施形態を平面図で示す。
図3】新規なセンサの例示的な実施形態の構造の簡略化した模式図を示す。
図4】新規なセンサの例示的な実施形態の等価回路図を示す。
図5】新規なセンサの例示的な実施形態の測定回路の簡略化した模式図を示す。
図6】新規な安全デバイスの第1の例示的な実施形態を示す。
図7】新規な安全デバイスの第2の例示的な実施形態を示す。
図8図6および図7に従う例示的な実施形態による測定回路の簡略化した等価回路図を示す。
図9】測定電圧と出力信号との関係の模式図を示す。
図10図6および図7の例示的な実施形態による新規な試験手段の等価回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態を以下の説明でより詳細に説明し、図面に示す。
【0037】
図1は、新規な安全デバイスが実施可能な応用分野における模式図を示す。
【0038】
図1は、符号10および12を付した安全デバイスの2つの実施形態を示す。どちらの安全デバイスも、ここでは自動ロボット16として示されている技術システム14をモニタリングする。ロボット16は、たとえば、生産ラインまたは組立ラインの切断ロボットまたは溶接ロボットとすることができる。
【0039】
図1に図示する実施形態において、モニタリング対象のロボット16は、末端に工具20を備え自由に動くことのできるロボットアーム18を有する。ロボットアーム18の回転・旋回範囲は、ロボット16の有効範囲を画定すると同時に、ロボット16の危険な範囲を表す。危険エリアへの進入は、無許可であっても許可があっても、ロボットを人または物体にとって安全な状態に移行することができるように検出されなければならない。ここでは、検出は、安全デバイス10および12によって行われ、これらは安全システム3
0に連結されている。
【0040】
安全システム30は、EN ISO 13856-1に定義される出力開閉装置、たとえば、単純な安全継電器、構成可能な安全コントローラまたはプログラマブルロジックコントローラとすることができる。安全システム30は、たとえば、技術システム14への電力をオフにすることによって、技術システム14を人にとって安全な状態にするように構成されている。
【0041】
新規な安全デバイス10の第1の実施形態は、技術システム14の周りのエリアの床に配置されているステップマットである。新規な安全デバイス12の第2の実施形態は、ロボットアーム18の塗装であり、ここではロボット16のタッチセンサ型「皮膚」として作用する。安全デバイス10,12はともに、複数の個々のセンサセル24から作られる圧力検知センサ22を備える。特に第2のアプリケーションの事例で示されるように、センサ22は、ここではロボットアームの形状など、さまざまな形状に適応できるように柔軟な材料から作られる。
【0042】
より詳細に以下で説明するように、センサ22は、センサセル24のうちの1つにおける圧力変化を検出し、対応する出力信号を生成するように設計されている。出力信号は、ライン26を経由して安全システム30の入力モジュール28に伝送され、そこで信号を評価し、それに応じて反応をトリガする。この実施形態では、安全システム30は、この目的のために、出力32経由で、ロボット16の電源38に配置されている作動接点36を有する接触器34と接続されている。
【0043】
技術システム14の危険エリア内でステップマット10のセンサセル24に負荷がかかる場合、またはロボットの皮膚12が物体もしくは人とのセンサ22の接触を検出する場合、安全システム30は、出力32をオフにして、作動接点36を開くことにより、接触器34が離れ、技術システム14がオフになるようにする。電源を切断することにより、技術システム14は、人または物体にとって安全な状態に移行する。
【0044】
言うまでもなく、技術システム14を電源から切断することは、技術システム14を安全な状態に移行する1つの方法にすぎない。あるいは、または追加で、別の実施形態において、安全システム30は、たとえばロボット16がロボットアーム18を後退させることによって、安全な状態をもたらすために、ロボット16の動きのシーケンスに制御的に介入することもできる。第1安全デバイス10および第2安全デバイス12のセンサ22の出力信号、または別の安全デバイスの出力信号を組み合わせて検討することも考えられ、また、安全システム30が概要からロボット16の制御に関する決定を行うことも考えられる。他の安全デバイスは、たとえば、光バリアもしくはライトグリッドなどの電気的検知保護設備(ESPE)、または安全カメラシステムとすることができる。
【0045】
図2は、新規な安全デバイス10の実施形態を平面図で示す。
【0046】
センサ22は、ここでは、マトリックス状に複数のセンサセル24に分割されている。さらに、センサ22は、異なるセンサセル24が割り当てられる異なるエリアに分割されている。第1エリア40(ここでは、中塗りなく示されている)は、センサ22の縁エリアを形成する。この第1エリアのセンサセル24に負荷をかけても、安全デバイス10は反応しない。第2エリア42(薄い灰色で示される)は警告エリアを形成する。警告範囲に割り当てられているセンサセル24に負荷がかけられると、安全デバイス10は、警告信号をトリガし、たとえば、警告表示を点灯させることができる。第3エリア44(濃い灰色で示される)は、保護フィールドを記す。保護フィールドに割り当てられているセンサセル24に負荷がかけられるとすぐに、安全機能がトリガされて、モニタリング対象の
技術システム14を安全な状態に切り換える。
【0047】
言うまでもなく、センサ22のこのような機能的な細分のために、各センサセル24にかかる負荷は、確実かつフェイルセーフに検出されなければならない。すなわち、センサ22は、フェイルセーフな空間分解能を保証しなければならない。ある範囲へのセルの割り当ては、対応する出力信号の優先度に応じて行う。セルが2つのエリアを含む場合、より高いレベルが各セルに割り当てられる。
【0048】
図3は、センサの構造の簡略化した模式図を示す。
【0049】
センサ22は、互いに重なっている複数の第1電極46と複数の第2電極48とを有する。すべての第1電極が、関連連結部位50ですべての第2電極に重なっている。ここでは拡大図で模式的に示されるように、各連結部位50に、センサセル24が形成されている。このように、センサセル24は、関連第1電極52および関連第2電極54、ならびに2つの電極52,54を互いから分離する圧力検知材料56を備える。
【0050】
例えば、圧力検知材料56は、セルに機械的負荷がかけられる場合に関連第1電極52と関連第2電極54との間の電気抵抗58が変化するように、力が加わるとその抵抗率が変化するように構成されている。あるいは、第1および第2の電極46,48ならびに圧力検知材料56は、関連第1電極52と関連第2電極54との間の電気抵抗58が変化するように、力が加わると相互作用するように構成されていてもよい。
【0051】
センサの圧力検知材料は、好ましくは導電性添加剤が交ぜられたポリマーから作られる。導電率に関して測定されたときに、この材料は、絶縁体と導体との中間に分類されるようにするべきであり、分類は、導電性添加剤のそれぞれの濃度に依存する。導電性粒子は、ほとんどが、すす、金属粒子、金属被覆粒子、または炭素繊維である。材料の導電率は浸透の原理に基づく。この結果、導電性ブリッジが材料全体に広がっている。ここで材料に圧力がかけられると、材料が圧縮し、導電性粒子の新たなブリッジが形成される。材料を触覚センサとして使用するために、個々のセルがポリマー材料から作られているマトリックス形のマットが設計される。抵抗評価のために、導電性糸の形態の電極が圧力検知材料の上側と下側とに装着されて、それらが重なっているエリアにセンサセルを形成する。
【0052】
図4は、新規なセンサ22の実施形態の等価回路図を示す。
【0053】
複数の第1電極46は、垂直方向に布線された導体路46a~46hによって示されている。複数の第2電極48は、水平方向の導体路48a~48eによって示されている。このように、第1電極はマトリックス状センサ22の列(columns)を形成し、第2電極
は行(rows)を形成する。導体路(46a~46h,48a~48e)の交点にはセンサセル24があり、等価回路図において、それらに対応する電気抵抗58によって示されている。
【0054】
センサセル24の電気抵抗58の測定のために、第1電極46a~46hおよび第2電極48a~48eは、異なる電位に交互に接続することができる。これは、図6および図7を参照して詳細に説明されるスイッチング素子(ここでは図示せず)を介して行われる。
【0055】
一実施例として、図4は、センサセル60の測定を示し、該センサセル60は、関連第1電極46g,52と関連第2電極48d,54との連結部位50に配置されている。測定のために、関連第1電極46g,52は、直列抵抗器62を介して、測定電位64を受ける端子に接続されている。同時に、関連第2電極48d,54は、接地端子66に接続
されている。センサセル60の直列抵抗器62および電気抵抗器58は、第1アナログ/デジタルコンバータ68を使用して電圧値を判定することのできる分圧器を形成する。測定された電圧値から、センサセル60の電気抵抗58を直接判定することができ、センサセル60の機械的負荷をこれから判定することができる。
【0056】
本発明によると、現在のセンサセル60の測定に関与していない残りの第1電極46a~46f,46hおよび残りの第2電極48a~48c,48eは、ここでは所定の電位70を受けるための共通端子を介して示されるように、測定中、所定の電位70に接続されている。所定の電位70は、好ましくは測定電位74に直接接続されていないが、所定の電位70は、測定電位74と量(amount)が一致する。所定の電位70と測定電位74との関係を、図5を参照してより詳細に説明する。
【0057】
図5は、新規なセンサの測定回路を簡略化した模式図を示す。同じ符号は、図4と同じ部品を示す。
【0058】
測定されるセンサセル60の電気抵抗58は、第1アナログ/デジタルコンバータ68で電圧を測定することにより判定される。好ましくは、抵抗58が大きく変化しても正確な測定ができるように、電気抵抗58で低下する電圧を、分圧器を介して測定する。したがって、測定電位64を受ける端子とセンサセル60の電気抵抗器58との間に直列抵抗器62を配置して、センサセル60の電気抵抗器58と直列抵抗器62との間で測定電位74を調整し、これを、第1アナログ/デジタルコンバータ68で受けて測定する。
【0059】
測定電位74は、演算増幅器78の非反転入力76にも存在する。演算増幅器78の出力80は、演算増幅器78の反転入力82に直接フィードバックされて、演算増幅器78がインピーダンスコンバータとして機能するようにする。
【0060】
出力80は所定の電位70に設定され、これは、測定電位74と大きさが一致するが、インピーダンスコンバータによって測定電位74とは分離されている。言い換えると、所定の電位70は測定電位74に従うが、測定電位74に影響は与えない。言うまでもなく、演算増幅器78の代わりに別のインピーダンスコンバータも使用することができる。しかし、演算増幅器は、入力の入力抵抗がほぼ無限で、出力の出力抵抗がほぼゼロであるため、ほぼ理想的な分離を可能にするという利点を有する。
【0061】
要するに測定電位74に連結されている所定の電位70は、他の電極に接続されている。したがって、測定対象のセンサセル60の電気抵抗58のみが、測定電位74と接地端子66とに接続されている。符号84で示される同じ直列の他の電気抵抗器58は、一方が接地端子66に、他方が所定の電位70に接続されている。同じ列の他の抵抗器(ここでは図示せず)は、一方が測定電位74に、他方が所定の電位80に接続されている。測定電位74および所定の電位70は量が等しく、同じ行および列のセンサセルに残留電流が流れることはないので、センサセル60の単独測定が可能になる。
【0062】
図6および図7は、新規な安全デバイスの2つの好適な例示的実施形態を示す。両図面において、同じ符号は同じ部品を表すので、以下、これらは1つの図面に関してのみ説明する。
【0063】
図6は、新規な安全デバイスの第1の実施形態を示す。圧力検知センサ22は、ここでは9つのセンサセル24で図示されており、3列および3行のマトリックス状に配置されている。行および列の異なる間隔は、センサ22がより多くの数の行および列も有することができることを示している。同様に、行および列の数は、必ずしも同じである必要はない。
【0064】
列のセンサセル24は、それぞれ第1電極を介して互いに接続されており、行のセンサセル24は、それぞれ第2電極を介して互いに接続されている。したがって、列の第1電極は複数の第1電極46を形成し、行の第2電極は複数の第2電極48を形成している。
【0065】
複数の第1電極46および複数の第2電極48は、第1選択素子86に接続されている。選択素子86は、ここでは、2つの論理ユニット86a,86bによって示される。第1論理ユニット86aは、入力側が複数の第1電極46に接続されており、出力側が、一方で測定電位74に、他方で所定の電位70に接続されており、該所定の電位70は、フィードバック演算増幅器78を介して測定電位74に連結されている。第2論理ユニット86bは、入力側が複数の第2電極48に、出力側が、一方で接地端子66に、他方で所定の電位70に接続されている。
【0066】
選択素子86は、入力側の電極46,48を任意選択的に出力側の接続部に接続するように構成されている。したがって、複数の第1電極46は、第1論理ユニット86aを介して所定の電位70または測定電位74に選択的に接続することができる。複数の第2電極48は、第2論理ユニット86bを介して所定の電位70または接地端子66に選択的に接続することができる。
【0067】
選択素子86の第1および第2のユニット86a,86bは、ハードウェア構成が合わせて論理的な第1および第2のユニット86a,86bを形成するいくつかのコンポーネントも備えることができるため、「論理」(logical)と呼ばれる。たとえば、第1選択
素子86は、いくつかの独立スイッチを有する、CMOS技術で実装される複数のスイッチング素子を備えることができる。このようなスイッチング素子の例は、アナログ・デバイセズ社のHDG788であり、これは、4つの独立したSPDT(単極双投)スイッチを含む。4つのこのようなスイッチング素子を用いて、8×8行列(64セル)の選択素子86を実現することができる。
【0068】
第1選択素子86は、データ入力88を介して駆動され、各スイッチは、好ましくは自己の論理入力を有する。対応する制御信号が制御ユニット90によって提供され、該制御ユニット90は、ここでは評価ユニットでもある。制御ユニット90は、デジタル回路もしくはアナログ回路、マイクロコントローラ、FPGA、ASICまたは任意の他の処理ユニットにすることができる。
【0069】
ここに図示する好適な実施形態において、制御/評価ユニット90は、2つの個別のマイクロコントローラ90a,90bを備え、これらは、通信インタフェース92、たとえば、直列UARTインタフェースを介して互いに連結されている。マイクロコントローラ90a,90bは、機能的に同一であるが、多様性を高めるために、同じタイプではないか、または同じ製造者製のものではないことが好ましい。通信インタフェース92を介して、マイクロコントローラ90a,90bは、互いに通信し、互いにモニタリングして制御することができる。このような構成を、冗長、マルチチャンネルともいう。
【0070】
制御/評価ユニット90は、センサ22のセンサセル24の各電気抵抗58を1サイクルで読み取ることができるように第1選択素子86を制御する。さらに、制御/評価ユニット90は、ここでは第1マイクロコントローラから出る点線矢印によって示されるように、より詳細に以下で説明される試験手段を制御する。第2マイクロコントローラ90bは、第1マイクロコントローラ90aの制御信号を第2マイクロコントローラ90bの入力に追加で送ることによって、制御をモニタリングする。これは、ここでは、第2マイクロコントローラ90bに達する点線矢印によって示される。
【0071】
この実施形態において、制御ユニット90は評価ユニットとしても機能し、第1アナログ/デジタルコンバータ68をこのために有する。制御ユニット90の冗長設計により、第1マイクロコントローラ90aおよび第2マイクロコントローラ90bは、ともに、対応する第1アナログ/デジタルコンバータ68を有する。第1アナログ/デジタルコンバータ68は、測定電位74に接続されており、該測定電位74は、ここでは直列抵抗器62を介して測定電位64を受けるための接続部に接続されている。端子64は、特に供給電圧端子とすることができる。
【0072】
図5で詳細に説明したように、制御ユニット90は、1サイクルですべてのセンサセル24を接続するので、各センサセル24の電気抵抗58は、第1アナログ/デジタルコンバータ68の測定電位74を測定することにより、直列抵抗器62と電気抵抗58との分圧器を介して判定することができる。同時に、制御ユニット90は、測定に関与していない電極が、測定に影響を与えないように所定の電位70に接続されるように、第1選択素子86を制御する。図6に図示するように、すべての電極に所定の電位70を提供するのに必要なのは、1つのインピーダンスコンバータ78だけである。
【0073】
図6に図示する測定回路は、測定回路の個々のコンポーネントの機能性を点検することのできる試験手段も有する。試験手段は、第2選択素子94と、抵抗器96と、第2アナログ/デジタルコンバータ98とを含む。第1アナログ/デジタルコンバータ68と同様に、第2アナログ/デジタルコンバータ98は、90aおよび90bの両マイクロコントローラにおいて冗長である。さらに、図6に図示するように、試験手段は、第1および第2のスイッチング素子100,102を有する。
【0074】
第2選択素子94は、入力側で、複数の第1電極46と複数の第2電極48とに接続されている。出力側では、第2選択素子94は、一方で第2アナログ/デジタルコンバータ98に、他方で、抵抗器96を介して接地端子66に接続されている。第1スイッチング素子100を介して、第1論理ユニット86aを測定電位74から分離させることができ、第2スイッチング素子102を介して、第2論理ユニット86bを接地端子66から分離させることができる。第2選択素子94は、複数の第1および第2の電極46,48を第2アナログ/デジタルコンバータ98に逐次接続し、第1選択素子86の適切な機能性を点検するように構成されている。このような試験のために、第1選択素子86および第2選択素子94は、センサセル24の電気抵抗58がブリッジされて、第1および第2の選択素子86,94が互いに直接接続されるように、同じ電極に同期接続されている。さらに、第1および第2の論理ユニット86a,86bは、入力側の第1電極46を測定電位74に、入力側の第2電極48を接地端子66に接続するように構成されている。
【0075】
試験の制御および評価も制御/評価ユニット90で行われ、該制御/評価ユニット90は、それに応じて第1および第2の選択素子86,94を制御し、第2アナログ/デジタルコンバータ98で電圧設定値を測定し、それを期待値と比較する。
【0076】
ここに示す試験に加えて、試験手段によって、または試験手段の個別のコンポーネントによって、別の試験を行うことができる。これらの試験のサンプルを、図10に関連して詳細に説明する。
【0077】
図7は、新規な安全ガードに係る第2の実施形態を示す。第2の実施形態は、第1選択素子のタイプおよび配置が異なり、ここでは符号104で示している。他の態様において、安全デバイスは、第1の実施形態による安全デバイスと同一であるため、図6に関連して同じ符号で説明したコンポーネントは、以下繰返し述べない。
【0078】
この実施例における第1選択素子104は、3つの論理ユニット104a,104b,
104cを有する。第1論理ユニット104aは、第1電極46を任意選択的に測定電位74に接続するように構成されている。第2論理ユニット104bは、第2電極48を任意選択的に接地端子66に接続するように構成されている。第3論理ユニット104cは、第1および第2の電極46,48を所定の電位70に接続するように構成されている。
【0079】
第1、第2および第3の論理ユニット104a,104b,104cは、第1電極が測定電位74に周期的に接続され、第2電極が接地端子66に周期的に接続されるのに対し、残りの第1および第2の電極が所定の電位70に接続されるように相互作用する。第1、第2および第3の論理ユニット104a,104b,104cは、第1の実施形態で示したように、複数の個別のスイッチング素子から構成することもできる。たとえば、選択素子は、アナログ・デバイセズ社のタイプADG711のスイッチング素子から構成することができ、そのそれぞれが4つの独立SPST(単極単投)スイッチを有する。4つのこのようなスイッチング素子を用いて、8×8センサセル(8個の第1電極、8個の第2電極、64セル)のセンサ22を制御することのできる選択素子104を実現することができるであろう。
【0080】
図6の実施形態による2つの論理ユニット86a,86bと比較した3つの論理ユニット104a,104b,104cの特徴は、論理ユニット104a,104b,104cを互いに独立して配置できるということである。特に、第1および第2の論理ユニット104a,104bは、ここでは接続部106a~106cで示される測定電子機器から切り離すことができる。特に、第1および第2の論理ユニット104aおよび104bは、センサ22内に統合されて、測定回路から分離されている。そのため、第1および第2の論理ユニット104a,104bは、既存のセンサ22の既存の選択素子とすることができるであろうが、これは、有利なことに、再利用でき、新規な測定回路によってのみ補うことができる。すると、すでに存在する論理素子104a,104bの制御は、接続部106a~106cで示される新規な測定回路によって行われることになろう。このことの利点は、新規な試験手段を含む新規な測定回路を、たとえば、センサの既存の電子機器を補うためのプラグインボードとして、分離ユニットの形態にすることができることである。このように、既存のセンサは、新規な機能、特に個々のセルの改良された測定を、容易に、かつ高い費用対効果で補うことができる。
【0081】
したがって、このような追加ボードは、第3論理ユニット104c、インピーダンスコンバータ78、および制御/評価ユニット90、ならびに第2選択素子94と抵抗器96とを備える試験手段のみを備えることになろう。追加回路基板は、外部接続部を介して既存のセンサの電子機器に接続することができるであろう。
【0082】
図8は、図6および図7に記載される測定回路の簡略化した等価回路図を示す。同じ符号は同じ部品を示す。
【0083】
第1選択素子86は、ここでは2つのマルチプレクサで表されている。マルチプレクサとは、複数の入力信号の中から1つを選択して、出力に接続することのできる選択回路である。
【0084】
マルチプレクサは、ある入力から次の入力に周期的に切り換え、センサセルの電気抵抗器58が直列抵抗器62と合わせて、測定電位64を受ける端子と接地端子66との間の分圧器を形成するようにする。
【0085】
地点74の電圧は、アナログ/デジタルコンバータ68によって測定され、センサセルの負荷に応じて電気抵抗58を判定するために使用される。地点74で測定される電圧に応じて、出力信号が判定され、これが、各センサセルの出力になる。第1アナログ/デジ
タルコンバータ68によって測定された電圧値と出力信号との関係を、図9を参照してより詳細に以下で説明する。
【0086】
図9は、測定電圧と出力信号との関係の模式図を示す。軸108は測定電圧を表し、隣接する面は出力信号のタイプを表す。符号110,112および114は、出力信号の状態が変わる第1、第2および第3の閾値を示す。測定電圧値が第1閾値110を下回ると、エラー反応がトリガされる。第1閾値110未満に下がる理由は、たとえば、電極と接地との交差接続、またはセンサへの液体の侵入である可能性がある。測定電圧値が第2閾値112を上回ると、やはりエラーが想定される。第2閾値112を超える理由には、センサセルの老化、腐食または機械的な摩耗、およびドリフトが含まれる可能性がある。さらに、電極の接続不良もしくは分離、または電極のスタックアットハイエラーの可能性がある。
【0087】
測定値が第1閾値110と第2閾値112との間である場合、正確な測定が想定され、第3閾値114に基づいて、起動されたセンサセルと起動されていないセンサセルとの区別が行われる。測定電圧値が第3閾値114未満になると(低抵抗)、センサセルの起動が想定される。測定電圧値が第3閾値114を超えると(高抵抗)、センサセルは起動されていないと見なされる。
【0088】
符号116は、無負荷のセンサセルを表す電圧値を示す。無負荷のセンサセルのこの値が下側に移動すると、センサセルは、感圧性がより高くなり、より少ない負荷で起動が早くも検出される。このことが安全性を損なうことは一切ない。電圧値が上側に移動すると、エラーが生じる前に第2閾値112が有効になる。
【0089】
図10は、図6および図7の実施形態による新規な試験手段の等価回路図を示す。
【0090】
ここで示す回路は、測定回路のさまざまなコンポーネントの機能性を点検するために、いくつかのスイッチング試験を行うために使用することができる。図10による回路の上半分に、第1論理ユニット86aと第2論理ユニット86bとに細分割されている第1選択素子86が示されている。第2の例示的実施形態による3つの論理ユニット104a,104b,104cへの同様な再分割も可能であることは理解される。図10に示す回路の下半分は、第2選択素子94と、第2アナログ/デジタルコンバータ98と、抵抗器96とを備える試験手段を示す。第1論理ユニット86aは第1電極46に接続され、第2論理ユニット86bは第2電極48に接続されている。第2選択素子94は、第1電極46と第2電極48との両方に接続されている。
【0091】
第1スイッチング試験において、このような配置により、第1選択素子86および第2選択素子94を、複数の第1電極46と複数の第2電極48とのうちの同じ電極に同時に接続されるように切り換えることができる。したがって、電気抵抗58は「除外」され、第1選択素子86および第2選択素子94は互いに直接接続される。すると、測定地点118では、端子120に存在する電圧と抵抗96とから生じる所定の電圧値が得られるはずであろう。第2アナログ/デジタルコンバータ98で判定される値がこの期待値から逸脱する場合、第1選択素子86のエラーまたは第1選択素子86の不正確なスイッチングが結論付けられることになる。
【0092】
第2スイッチング試験において、試験手段は、行または列間の交差接続があるかどうかを点検するために使用される。第1および第2の選択素子86,94は、電気抵抗器58と抵抗器96とを介して分圧器が設定されるように周期的に切り換えられる。第2アナログ/デジタルコンバータ98で測定される電圧値が低すぎる場合、これは電極の接続の欠落を示すため、エラーが想定される。測定地点118での過度に高い電圧値は、電極間の
交差接続、接地との交差接続、生産関連の電極の欠陥または液体の浸入を示すので、やはり故障状態が示される。
【0093】
第1および第2のスイッチング試験に加えて、試験手段によって、または試験手段の個別のコンポーネントによってさらなる試験が可能であることは理解される。たとえば、演算増幅器の機能性を、適切な配線および期待値のディポジットによって試験することができる。
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