(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20230131BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20230131BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20230131BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20230131BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20230131BHJP
H02J 7/16 20060101ALI20230131BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230131BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20230131BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230131BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230131BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B60W20/50 ZHV
B60K6/28
B60K6/48
B60K6/543
B60W10/26 900
H02J7/16 H
H02J7/00 302C
H02J7/02 F
H02J7/00 P
B60L50/16
B60L50/60
B60L1/00 L
(21)【出願番号】P 2021527538
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2020021620
(87)【国際公開番号】W WO2020255690
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2019115813
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西廣 義祐
(72)【発明者】
【氏名】田原 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】望月 政治
(72)【発明者】
【氏名】平野 拓朗
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-086988(JP,A)
【文献】特開2010-172137(JP,A)
【文献】特開2015-212127(JP,A)
【文献】特開2006-174619(JP,A)
【文献】特開2017-074911(JP,A)
【文献】特開2011-055581(JP,A)
【文献】特開2012-176730(JP,A)
【文献】特開2010-130877(JP,A)
【文献】特開2017-118755(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189902(WO,A1)
【文献】特開2016-195472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02J 7/00 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
リチウムイオン電池によって構成され、車両に搭載された電装品に電力を供給する第1バッテリと、
リチウムイオン電池によって構成され、前記第1バッテリよりも出力電圧が高い第2バッテリと、
前記第2バッテリから供給される電力によって動作し、前記車両を駆動するためのトルクを発生する第1回転電機と、
前記エンジンを始動するための第2回転電機と、を備え、
前記第1回転電機として、前記第2バッテリから電力が供給された場合には、前記エンジンを始動、または前記エンジンの駆動をアシストするためのトルクを発生し、前記エンジンから回転エネルギーを受けた場合には、前記第1バッテリ及び前記第2バッテリを充電するための電力を発生可能なスタータジェネレータを備え、
前記第2回転電機は、
前記エンジンが暖機されていない状態での前記エンジンの初回始動を行うエンジン始動専用の回転電機であって、前記第2バッテリから供給される電力によって動作するとともに、前記第2バッテリを介して前記第1バッテリに接続される、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記第1回転電機として、前記第2バッテリから電力が供給された場合には、駆動輪を駆動するためのトルクを発生し、前記駆動輪または前記エンジンから入力があった場合には、前記第1バッテリ及び前記第2バッテリを充電するための電力を発生可能なモータジェネレータをさらに備える、車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両であって、
前記第1バッテリと前記第2バッテリとを接続する電気回路上に設けられ、入力された電圧を変換して出力するDC-DCコンバータと、
前記第1バッテリの残容量を検知するバッテリ残容量検知手段と、
前記第1バッテリ及び前記第2バッテリの充電制御を行う制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、イグニッションがOFFのときに、前記バッテリ残容量検知手段によって検知された前記第1バッテリの残容量が所定値を下回ったことを検出した場合には、前記DC-DCコンバータを起動させて、前記第2バッテリの電力によって前記第1バッテリを充電する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧バッテリ及び低電圧バッテリを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2013-95246Aには、リチウムイオン電池からなる高電圧バッテリと鉛酸電池からなる低電圧バッテリとを備えた車両が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
自動運転等の機能を搭載する車両への要求として、低電圧系電源に対する高い信頼性の要求がある。そのため、低電圧バッテリを、鉛酸電池に代えて、信頼性の高いリチウムイオン電池によって構成することが考えられる。
【0004】
しかしながら、リチウムイオン電池の出力は、低温時に低下する特性がある。このため、例えば、極低温(例えば-20℃~-30℃)時には、リチウムイオン電池の出力が低下することで、エンジンを始動するモータの出力が不足してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、低電圧バッテリをリチウムイオン電池によって構成した場合でも、極低温時にエンジンを確実に始動できるようにすることを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、車両は、エンジンと、リチウムイオン電池によって構成され、車両に搭載された電装品に電力を供給する第1バッテリと、リチウムイオン電池によって構成され、第1バッテリよりも出力電圧が高い第2バッテリと、第2バッテリから供給される電力によって動作し、車両を駆動するためのトルクを発生する第1回転電機と、エンジンを始動するための第2回転電機と、を備え、第2回転電機は、第2バッテリから供給される電力によって動作することを特徴とする。
【0007】
本発明のある態様によれば、車両は、エンジンと、リチウムイオン電池によって構成され、車両に搭載された電装品に電力を供給する第1バッテリと、リチウムイオン電池によって構成され、第1バッテリよりも出力電圧が高い第2バッテリと、第2バッテリから供給される電力によって動作し、車両を駆動するためのトルクを発生する第1回転電機と、エンジンを始動するための第2回転電機と、を備え、第1回転電機として、第2バッテリから電力が供給された場合には、エンジンを始動、またはエンジンの駆動をアシストするためのトルクを発生し、エンジンから回転エネルギーを受けた場合には、第1バッテリ及び第2バッテリを充電するための電力を発生可能なスタータジェネレータを備え、第2回転電機は、エンジンが暖機されていない状態でのエンジンの初回始動を行うエンジン始動専用の回転電機であって、第2バッテリから供給される電力によって動作するとともに、第2バッテリを介して第1バッテリに接続されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る充電制御の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る車両の変形例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る車両100の概略構成である。車両100は、第1バッテリとしての低電圧バッテリ1と、第2バッテリとしての高電圧バッテリ2と、走行用駆動源としてのエンジン3と、エンジン3の始動に用いられる第2回転電機としてのスタータモータ5(以下、「SM5」という。)と、発電とエンジン3のアシスト及び始動とに用いられる第1回転電機としてのスタータジェネレータ6(以下、「SG6」という。)と、DC-DCコンバータ7と、インバータ8と、油圧発生源としてのメカオイルポンプ9及び電動オイルポンプ10と、パワートレインを構成するトルクコンバータ11、前後進切替機構12、無段変速機13(以下、「CVT13」という。)及びディファレンシャル機構14と、駆動輪18と、コントローラ20と、を備える。
【0011】
低電圧バッテリ1は、公称電圧がDC12Vのリチウムイオン電池である。低電圧バッテリ1は、車両100に搭載され、DC12Vで動作する電装品15(自動運転用カメラ15a及びセンサ15b、ナビゲーションシステム15c、オーディオ15d、エアコン用ブロア15e等)、電動オイルポンプ10等に電力を供給する。低電圧バッテリ1は、電装品15とともに低電圧回路16に接続される。
【0012】
高電圧バッテリ2は、低電圧バッテリ1よりも公称電圧(または出力電圧)が高いDC48Vのリチウムイオン電池である。高電圧バッテリ2の公称電圧は、これよりも低くても高くてもよく、例えばDC30VやDC100Vであってもよい。高電圧バッテリ2は、SM5、SG6、インバータ8等とともに高電圧回路17に接続される。
【0013】
DC-DCコンバータ7は、低電圧バッテリ1と高電圧バッテリ2とを接続する電気回路上に設けられる。これにより、低電圧回路16と高電圧回路17とは、DC-DCコンバータ7を介して接続される。DC-DCコンバータ7は、入力された電圧を変換して出力する。具体的には、DC-DCコンバータ7は、低電圧回路16のDC12VをDC48Vに昇圧して高電圧回路17にDC48Vを出力する昇圧機能と高電圧回路17のDC48VをDC12Vに降圧して低電圧回路16にDC12Vを出力する降圧機能とを有している。DC-DCコンバータ7は、エンジン3が駆動中か停止中かに関わらず、低電圧回路16にDC12Vの電圧を出力することができる。また、高電圧バッテリ2の残容量が少なくなった場合は低電圧回路16のDC12VをDC48Vに昇圧して高電圧回路17に出力し、高電圧バッテリ2を充電することができる。
【0014】
エンジン3は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、コントローラ20からの指令に基づいて回転速度、トルク等が制御される。
【0015】
トルクコンバータ11は、エンジン3と前後進切替機構12との間の動力伝達経路上に設けられ、流体を介して動力を伝達する。また、トルクコンバータ11は、車両100が所定のロックアップ車速以上で走行している場合にロックアップクラッチ11aを締結することで、エンジン3からの駆動力の動力伝達効率を高めることができる。
【0016】
前後進切替機構12は、トルクコンバータ11とCVT13との間の動力伝達経路上に設けられる。前後進切替機構12は、遊星歯車機構12aと、前進クラッチ12b及び後退ブレーキ12cで構成される。前進クラッチ12bが締結され後退ブレーキ12cが解放されると、トルクコンバータ11を介して前後進切替機構12に入力されるエンジン3の回転が、回転方向を維持したまま前後進切替機構12からCVT13に出力される。逆に、前進クラッチ12bが解放され後退ブレーキ12cが締結されると、トルクコンバータ11を介して前後進切替機構12に入力されるエンジン3の回転が、減速かつ回転方向を反転されて前後進切替機構12からCVT13に出力される。
【0017】
CVT13は、前後進切替機構12とディファレンシャル機構14との間の動力伝達経路上に配置され、車速やアクセルペダルの操作量であるアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更する。CVT13は、プライマリプーリ13aと、セカンダリプーリ13bと、両プーリに巻き掛けられたベルト13cと、を備える。CVT13は、プライマリプーリ13aとセカンダリプーリ13bの溝幅を油圧によって変更し、プーリ13a、13bとベルト13cとの接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更することができる。CVT13で必要とされる油圧は、メカオイルポンプ9又は電動オイルポンプ10が発生した油圧を元圧として図示しない油圧回路によって生成される。
【0018】
SM5は、エンジン3のフライホイール3aの外周ギヤ3bにピニオンギヤ5aを噛み合わせ可能に配置される。エンジン3を冷機状態から初めて始動(以下、「初回始動」という。)する場合は、高電圧バッテリ2からSM5に電力が供給され、ピニオンギヤ5aが外周ギヤ3bに噛み合わされ、フライホイール3a、さらにはクランク軸が回転される。
【0019】
なお、エンジン3を始動するのに必要なトルク、出力は、初回始動時が一番大きく、暖機状態からの始動、すなわち、再始動時は初回始動時よりも小さくなる。これは、初回始動時はエンジンオイルの温度が低く、エンジンオイルの粘性抵抗が大きいのに対し、初回起動後はエンジンオイルの温度が上昇し、エンジンオイルの粘性抵抗が低下するためである。後述するSG6は、ベルトを介して駆動されるため、大きなトルクを伝達することができない。このため、初回始動時には、SM5を用いてエンジン3を駆動する。
【0020】
SG6は、Vベルト22を介してエンジン3のクランク軸に接続され、エンジン3から回転エネルギーを受ける場合には発電機として機能する。このようにして発電された電力は、インバータ8を通じて高電圧バッテリ2に充電される。また、SG6は、高電圧バッテリ2からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作し、エンジン3の駆動をアシストするためのトルクを発生する。さらに、SG6は、アイドリングストップ状態からエンジン3を再始動するときに、エンジン3のクランク軸を回転駆動してエンジン3を再始動するために用いられる。SG6は、Vベルト22によってエンジン3のクランク軸に接続されているので、エンジン3を始動したとき、ギヤの噛み込み音がなく、静かでスムーズな始動が可能となる。このため、再始動時には、SG6を用いてエンジン3を駆動する。
【0021】
メカオイルポンプ9は、エンジン3の回転がチェーン23を介して伝達されることによって動作するオイルポンプである。メカオイルポンプ9は、オイルパンに貯留される作動油を吸い上げ、図示しない油圧回路を介してロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12及びCVT13に油を供給する。
【0022】
電動オイルポンプ10は、低電圧バッテリ1から供給される電力によって動作するオイルポンプである。電動オイルポンプ10は、アイドルストップ状態等、エンジン3が停止しておりエンジン3でメカオイルポンプ9を駆動できない場合に動作し、メカオイルポンプ9と同様にオイルパンに貯留される作動油を吸い上げ、図示しない油圧回路を介してロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12及びCVT13に油を供給する。特に、CVT13で必要な油圧を確保することで、ベルト13cの滑りを抑制する。電動オイルポンプ10は、高電圧バッテリ2から供給される電力によって動作するオイルポンプであってもよい。
【0023】
コントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。コントローラ20は、制御手段に対応し、ROM又はRAMに格納されたプログラムをCPUによって実行することで、エンジン3、インバータ8(SG6、電動オイルポンプ10)、DC-DCコンバータ7、SM5、ロックアップクラッチ11a、前後進切替機構12、CVT13等を統合的に制御する。
【0024】
また、コントローラ20は、第1残容量検出器31によって検出された低電圧バッテリ1の残容量SOC1と、第2残容量検出器32によって検出された高電圧バッテリ2の残容量SOC2と、に基づいて、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2の充電制御、及びSG6の発電制御を行う。なお、本実施形態では、第1残容量検出器31がバッテリ残容量検知手段に相当する。
【0025】
上述のように、本実施形態では、低電圧バッテリ1と高電圧バッテリ2をリチウムイオン電池によって構成している。
【0026】
一般的に、低電圧バッテリと高電圧バッテリとを備える車両では、走行中においては、低電圧系を低電圧バッテリとDC-DCコンバータの2重系で担保している。そして、従来では、このような低電圧バッテリとして鉛酸電池が用いられていた。
【0027】
例えば、自動運転を行う場合には、低電圧系に対しても高い信頼性が要求される。しかしながら、鉛酸電池は、リチウムイオン電池に比べて、電池の劣化や容量を把握しにくく、リチウムイオン電池に比べて信頼性が低い。このため、従来のように、低電圧バッテリ1として鉛酸電池を用いた場合には、DC-DCコンバータ7への信頼性の割り付けを高める必要があるため、高性能なDC-DCコンバータ7が必要となってしまう。これにより、コストが上昇する。
【0028】
そのため、本実施形態の車両100では、低電圧バッテリ1をリチウムイオン電池によって構成している。これにより、DC-DCコンバータ7への信頼性の割り付けを低下させることができるため、高性能なDC-DCコンバータ7を必要としない。これにより、コストの上昇を抑制できる。
【0029】
しかしながら、リチウムイオン電池は、極低温(例えば、気温-20℃~-30℃)環境下では、鉛酸電池に比べて性能が劣る。このため、SM5の電源を低電圧バッテリ1にすると、極低温時に出力が不足し、エンジン3が始動しないおそれがある。そこで、本実施形態では、SM5の電源を高電圧バッテリ2としている。これにより、極低温時に、エンジン3の始動に必要な電力を確保することができる。
【0030】
このように、低電圧バッテリ1をリチウムイオン電池によって構成し、さらに、SM5の電源を高電圧バッテリ2とすることで、電源系統に対する信頼性が要求される車両に適用できるとともに、極低温時にエンジン3を確実に始動できる。
【0031】
ところで、イグニッションがOFFのとき(例えば、駐車時)にも、電装品15(例えば、時計など)のバックアップのために低電圧バッテリ1の電力が用いられるため、時間経過とともに低電圧バッテリ1の残容量SOC1が低下する。このため、本実施形態における車両100では、コントローラ20は、イグニッションがOFFのときに、低電圧バッテリ1の残容量SOC1が低下した場合には、高電圧バッテリ2を用いて低電圧バッテリ1を充電する充電制御を実行する。以下に、この充電制御について、
図2に示すフローチャートを参照しながら具体的に説明する。
【0032】
ステップS1では、コントローラ20は、イグニッションがOFFであるか否かを判定する。イグニッションがOFFであれば、ステップS2に進み、イグニッションがONであれば、ステップS8に進み通常の充電制御を行う。
【0033】
ステップS2では、コントローラ20は、残容量SOC1が所定値E1以下であるか否かを判定する。コントローラ20は、第1残容量検出器31によって検出された低電圧バッテリ1の残容量SOC1が所定値E1以下であるか否かを判定する。残容量SOC1が所定値E1以下であれば、ステップS3に進み、残容量SOC1が所定値E1より大きければ、ENDへ進む。
【0034】
ステップS3では、コントローラ20は、DC-DCコンバータ7を起動する。イグニッションOFF時には、DC-DCコンバータ7は停止しているため、DC-DCコンバータ7を起動する。
【0035】
ステップS4では、コントローラ20は、充電を開始する。具体的には、コントローラ20は、DC-DCコンバータ7を制御して、高電圧バッテリ2を用いて低電圧バッテリ1への充電を開始する。DC-DCコンバータ7は、高電圧バッテリ2から高電圧回路17を通じて入力された電圧をDC12Vに変換して低電圧回路16に出力する。これにより、低電圧バッテリ1を充電することができる。
【0036】
ステップS5では、コントローラ20は、残容量SOC2が所定値E2以下であるか否かを判定する。コントローラ20は、第2残容量検出器32によって検出された高電圧バッテリ2の残容量SOC2が所定値E2以下であるか否かを判定する。残容量SOC2が所定値E2以下であれば、充電制御を中止してステップS7に進み、残容量SOC2が所定値E2より大きければ、ステップS6へ進む。
【0037】
ステップS6では、コントローラ20は、充電が完了したか否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、第1残容量検出器31によって検出された低電圧バッテリ1の残容量SOC1が所定値E3以上になったか否かを判定する。低電圧バッテリ1の残容量SOC1が所定値E3以上になっていればステップS7に進み、低電圧バッテリ1の残容量SOC1が所定値E3未満であれば、ステップS5に戻る。
【0038】
ステップS7では、コントローラ20は、DC-DCコンバータ7を停止する。これにより、充電制御が終了する。
【0039】
このように、本実施形態では、コントローラ20は、イグニッションがOFFのときにも、低電圧バッテリ1の残容量SOC1を監視する。そして、イグニッションがOFFのときに、低電圧バッテリ1の残容量SOC1が所定値E1を下回ったことを検出した場合には、コントローラ20は、DC-DCコンバータ7を起動させて、高電圧バッテリ2の電力によって低電圧バッテリ1を充電する。これにより、例えば、長時間駐車している場合に、電装品15のバックアップ等を継続して行うことができる。
【0040】
なお、コントローラ20は、イグニッションがOFFのときに、低電圧バッテリ1の残容量SOC1を常時監視する必要はなく、一定時間ごとに低電圧バッテリ1の残容量SOC1を検出するようにしてもよい。
【0041】
また、リチウムイオン電池は、過放電などの万が一の場合に備えて、回路を遮断するためのリレーを備えている。このリレーをラッチング式のリレーにすることでリレーに常時通電する必要がなくなるので、イグニッションがOFFのときに、低電圧バッテリ1の電力消費を抑制することができる。
【0042】
上記実施例では、低電圧バッテリ1の残容量SOC1が所定値E1を下回ったことを検出した場合に、高電圧バッテリ2の電力によって低電圧バッテリ1を充電することについて説明したが、高電圧バッテリ2の残容量SOC2が所定値E2を下回ったことを検出した場合に、低電圧バッテリ1の電力によって高電圧バッテリ2を充電するようにしてもよい。この場合、DC-DCコンバータ7は、低電圧バッテリ1から低電圧回路16を通じて入力された電圧をDC48Vに変換して高電圧回路17に出力する。これにより、高電圧バッテリ2を充電することができる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、低電圧バッテリ1をリチウムイオン電池によって構成し、さらに、SM5の電源を高電圧バッテリ2とすることで、電源系統に対する信頼性が要求される車両に適用できるとともに、極低温時にエンジン3を確実に始動できる。
【0044】
また、本実施形態では、バッテリ(低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2)をリチウムイオン電池のみによって構成しているので、電源系統の信頼性が向上する。
【0045】
さらに、イグニッションがOFFのときにも、高電圧バッテリ2によって低電圧バッテリ1を充電することができるので、例えば、長時間駐車している場合に、電装品15のバックアップ等を継続して行うことができる。
【0046】
ここで、
図3を参照して、本実施形態の変形例について説明する。
【0047】
なお、以下では、
図1示す構成と異なる点を中心に説明し、
図1に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0048】
図3に示す車両100は、走行用駆動源としてモータジェネレータ4(以下、「MG4」という。)をさらに備える。
【0049】
MG4は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型回転電機である。MG4は、MG4の軸に設けられたスプロケットとプライマリプーリ13aの軸に設けられたスプロケットとの間に巻きつけられるチェーン21を介してプライマリプーリ13aの軸に接続される。MG4は、コントローラ20からの指令に基づいてインバータ8により作り出された三相交流を印加することにより制御される。
【0050】
MG4は、高電圧バッテリ2からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作し、車両100を駆動するためのトルクを発生する。また、MG4は、ロータがエンジン3や駆動輪18から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、高電圧バッテリ2を充電することができる。なお、MG4は、第1回転電機に相当する。
【0051】
MG4の軸に設けられたスプロケットとプライマリプーリ13aの軸に設けられたスプロケットは、後者の歯数が多くなるように構成され(例えば、歯数=1:3)、MG3の出力回転が減速してプライマリプーリ13aに伝達されるようにする。これにより、MG4に要求されるトルクを下げてMG4を小型化し、MG4の配置自由度を向上させる。なお、チェーン21に代えてギヤ列を用いてもよい。
【0052】
続いて、上記実施形態の作用効果をまとめて説明する。
【0053】
本実施形態の車両100は、エンジン3と、リチウムイオン電池によって構成され、車両100に搭載された電装品15に電力を供給する第1バッテリ(低電圧バッテリ1)と、リチウムイオン電池によって構成され、第1バッテリ(低電圧バッテリ1)よりも出力電圧が高い第2バッテリ(高電圧バッテリ2)と、第2バッテリ(高電圧バッテリ2)から供給される電力によって動作し、車両100を駆動するためのトルクを発生する第1回転電機(SG6、MG4)と、エンジン3を始動するための第2回転電機(SM5)と、を備え、第2回転電機(SM5)は、第2バッテリ(高電圧バッテリ2)から供給される電力によって動作する。
【0054】
この構成によれば、第1バッテリ(低電圧バッテリ1)がリチウムイオン電池によって構成されていても、エンジン3を始動するための第2回転電機(SM5)が、第1バッテリ(低電圧バッテリ1)よりも出力電圧が高い第2バッテリ(高電圧バッテリ2)に接続されるので、極低温時においても、エンジン3を確実に始動することができる。
【0055】
さらに、第1バッテリ(低電圧バッテリ1)及び第2バッテリ(高電圧バッテリ2)をリチウムイオン電池によって構成しているので、電源系統の信頼性が向上する。
【0056】
また、車両100では、第1回転電機として、高電圧バッテリ2から電力が供給された場合には、エンジン3を始動またはエンジン3の駆動をアシストするためのトルクを発生し、エンジン3から回転エネルギーを受けた場合には、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2を充電するための電力を発生可能なSG6を備える。
【0057】
SG6は、ギヤの噛み込み音がないので、再始動時にSG6を用いてエンジン3を駆動することにより、静かでスムーズな始動が可能になる。
【0058】
車両100では、第1回転電機として、高電圧バッテリ2から電力が供給された場合には、駆動輪18を駆動するためのトルクを発生し、駆動輪18またはエンジン3から入力があった場合には、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2を充電するための電力を発生可能なMG4を備える。
【0059】
MG4を備えた車両100は、いわゆるストロングハイブリッド車両であり、高電圧バッテリ2を装備しているので、MG4とSM5のバッテリを共用することができる。
【0060】
車両100は、低電圧バッテリ1と高電圧バッテリ2とを接続する電気回路上に設けられ、入力された電圧を変換して出力するDC-DCコンバータ7と、低電圧バッテリ1の残容量SOC1を検知する第1残容量検出器31(バッテリ残容量検知手段)と、低電圧バッテリ1及び高電圧バッテリ2の充電制御を行うコントローラ20(制御手段)と、をさらに備える。
【0061】
コントローラ20は、イグニッションがOFFのときに、第1残容量検出器31によって検知された低電圧バッテリ1の残容量SOC1が所定値E1を下回ったことを検出した場合には、DC-DCコンバータ7を起動させて、高電圧バッテリ2の電力によって低電圧バッテリ1を充電する。
【0062】
イグニッションがOFFのとき(例えば、駐車時)にも、電装品15(例えば、時計など)のバックアップのために低電圧バッテリ1の電力が用いられるので、低電圧バッテリ1の残容量SOC1が低下する。このため、コントローラ20は、イグニッションがOFFのときに、低電圧バッテリ1の残容量SOC1が低下した場合には、高電圧バッテリ2を用いて低電圧バッテリ1を充電する。これにより、例えば、長時間駐車している場合に、電装品15のバックアップ等を継続して行うことができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0064】
本願は、2019年6月21日に日本国特許庁に出願された特願2019-115813号に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。