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  • 特許-海洋スライドリングシール配列体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】海洋スライドリングシール配列体
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20230131BHJP
   B63H 23/36 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
F16J15/34 J
B63H23/36
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021553313
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2020054855
(87)【国際公開番号】W WO2020182459
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】102019203454.3
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510151348
【氏名又は名称】イーグルブルクマン ジャーマニー ゲセルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】ファイル,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー,ユルゲン
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/007791(WO,A1)
【文献】特開平05-033871(JP,A)
【文献】特開昭52-119753(JP,A)
【文献】特開2002-005071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34-15/38
B63H 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋メカニカルシール配列体であって、
第1回転スライドリング(21)と、第1固定スライドリング(22)とを含み、これらは、それらの2つの摺動面(21a,22a)の間に第1シールギャップ(23)を規定する、第1メカニカルシール(2)と、
第2回転スライドリング(31)と、第2固定スライドリング(32)とを含み、これらは、それらの2つの摺動面(31a,32a)の間に第2シールギャップ(33)を規定する、第2メカニカルシール(3)と、
前記第1メカニカルシール(2)と前記第2メカニカルシール(3)との間に配置され、バリア流体で満たされているバリア流体キャビティ(8)を含むバリア回路(10)と、
を備え、
前記バリア流体キャビティ(8)は、第1サブキャビティ(81)と第2サブキャビティ(82)に分割されており、
前記第1サブキャビティ(81)と前記第2サブキャビティ(82)は、柔軟なリップシール(7)によって分離されており、
前記第2サブキャビティ(82)は、前記第2メカニカルシール(3)上に配置されており、
前記リップシール(7)は、前記第1サブキャビティ(81)から前記第2サブキャビティ(82)へのバリア流体の流れが許容され、前記第2サブキャビティから前記第1サブキャビティへのバリア流体の流れが阻止されるように配置されている、
海洋メカニカルシール配列体。
【請求項2】
前記第1メカニカルシール(2)が、第1プレテンション装置(24)によって軸方向にプレテンションがかけられ、軸方向(X-X)において軸方向に移動可能に配置された第1スライドリングキャリア(4)を備える、請求項1に記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項3】
前記第1スライドリングキャリア(4)が、前記第1回転スライドリング(21)を保持する、請求項2に記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項4】
前記第2メカニカルシール(3)が、第2プレテンション装置(34)によって軸方向にプレテンションがかけられ、前記軸方向(X-X)において軸方向に移動可能に配置された第2スライドリングキャリア(5)を備える、請求項2又は3記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項5】
前記第2スライドリングキャリア(5)が、前記第2固定スライドリング(32)を保持する、請求項4に記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項6】
前記第2メカニカルシール(3)の前記第2回転スライドリング(31)を保持する第3スライドリングキャリア(6)を更に備え、前記リップシール(7)が前記第3スライドリングキャリア(6)の部分でシールする、請求項1~5のいずれか一項に記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項7】
前記第3スライドリングキャリア(6)が、前記リップシール(7)がシールする、半径方向外側を向いた表面(60)を備える、請求項6に記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項8】
前記第1スライドリングキャリア(4)上に、第1二次シール要素(25)が配置されており、前記第1二次シール要素(25)には、第1軸方向変形空間(26)が直接隣接して設けられている、請求項2~5のいずれか一項記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項9】
前記第2スライドリングキャリア(5)上に、第2二次シール要素(35)が配置されており、前記第2二次シール要素(35)には、第2軸方向変形空間(36)が直接隣接して設けられている、請求項4又は5記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項10】
前記バリア回路(10)が、バリア流体リザーバ(11)とポンプ(14)とを備えており、前記第2サブキャビティ(82)が戻りライン(13)を介して前記バリア流体リザーバ(11)に接続されて、前記第2サブキャビティ(82)から前記バリア流体リザーバにバリア流体を戻すようになっており、前記バリア流体リザーバ(11)が供給ライン(12)を介して前記第1サブキャビティ(81)に接続されて、前記バリア流体リザーバ(11)から前記第1サブキャビティ(81)にバリア流体を供給するようになっている、請求項1~9のいずれか一項に記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項11】
油分離器(15)及び/又は水分離器(16)を更に備える、請求項10に記載の海洋メカニカルシール配列体。
【請求項12】
ドライブシャフト(40)と、請求項1~11のいずれか一項に記載の海洋メカニカルシール配列体(1)とを備える海洋推進装置であって、前記海洋メカニカルシール配列体(1)は、潤滑媒体用のキャビティ(44)を環境(45)からシールする、海洋推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋メカニカルシール配列体と、そのようなメカニカルシール配列体を備える船舶や掘削装置等の海洋車両に関するものである。更に、本発明は、本発明に係る海洋メカニカルシール配列体を備える海洋推進システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋用途において、1つの問題領域は、塩水の攻撃性である。本明細書における別の問題領域は、水の汚染である。海洋推進システム等では、特に、通常は油で満たされている軸受を、海水からシールすることが求められる。環境規制の継続的な強化に伴い、ドライブシャフトや軸受等にそのようなシールを行う場合にも、最高水準の要求が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、最大の安全度で環境中への油の漏出を防止することができ、特に、シールが損傷又は故障した場合でも周囲の水に油を放出することがなく、単純な構造、並びに簡単で安価な製造性を有する海洋メカニカルシール配列体及び海洋駆動装置を提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する海洋メカニカルシール配列体と、請求項12の特徴を有する海洋アクチュエータとによって解決される。本発明の更なる実施形態は、従属請求項に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の特徴を有する本発明に係る海洋メカニカルシール配列体は、推進装置のあらゆる油又は潤滑剤が、メカニカルシール配列体の周囲の水中へ漏出することを防止できるという利点がある。更に、推進装置が故障又は停止した場合でも、信頼性の高いシールを確保することができる。本発明によれば、これは、第1及び第2メカニカルシールを備える海洋メカニカルシール配列体によって達成される。この2つのメカニカルシールは、シールするシャフト上に直列に配置される。第1メカニカルシール配列体は、第1回転スライドリングと、第固定スライドリングとを備え、これらは、それらの2つの摺動面の間に第1シールギャップを規定する。第2メカニカルシール配列体は、第2回転スライドリングと、第2固定スライドリングとを備え、これらは、それらの2つの摺動面の間に第2シールギャップを規定する。また、海洋メカニカルシール配列体は、バリア流体キャビティと、洗浄液又はバリア流体とを含むバリア流体回路を含んでいる。バリア流体回路は、メカニカルシールの洗浄にも使用される。バリア流体キャビティは、直列に接続された第1及び第2メカニカルシールの間に配置され、バリア流体で満たされている。バリア流体は、環境適合性のある流体であり、例えば、グリコールを含む流体である。第1及び第2メカニカルシール配列体の間のバリア流体キャビティは、第1サブキャビティと第2サブキャビティに分離されており、この分離は、柔軟なリップシールを用いて行われる。この場合、第2サブキャビティは、第2メカニカルシール上に配置される。リップシールは、第1サブキャビティから第2サブキャビティへのバリア流体の流れは許容されるが、第2サブキャビティから第1サブキャビティへのバリア流体の流れは阻止されるように配置されている。そのため、第1及び第2サブキャビティの間に大きな圧力差が生じた場合でも、リップシールは一方の流れ方向にのみ開き、他方の流れ方向には閉じたままとなる。
【0006】
第1及び第2メカニカルシールの間に配置され、従って水に囲まれた外部と、潤滑剤として水に混入する可能性のある油等との間に配置されたバリア流体キャビティ内にバリア流体が存在するため、バリア流体をバリア回路に循環させる通常運転時には、バリア流体キャビティ内の圧力は水の外圧よりも高く、第2メカニカルシールでの潤滑剤の圧力よりも高くなる。そのため、通常運転時には、バリア流体の水中への漏出が最小限となることがあるが、これは、バリア流体として環境的に許容される流体を用いれば問題ない。更に、通常運転時には、潤滑剤領域へのバリア流体の漏出も最小限に抑えられるが、潤滑剤に少量のバリア流体が含まれていても、潤滑剤の潤滑性に影響を与えないため、これも重要ではない。ドライブシャフトが停止している場合でも、第1及び第2メカニカルシールによって信頼性の高いシールが確保される。
【0007】
特に好ましくは、第1メカニカルシールは、第1プレテンション要素を用いて軸方向にプレテンションがかけられた第1スライドリングキャリアを有し、第1スライドリングキャリアは軸方向に移動可能に配置されていることである。これにより、運転中に起こりうるシャフトの軸方向の移動に際して、第1メカニカルシールを軸方向に即座に再調整することができ、軸方向のシャフトの移動を行う際に過剰な漏出が発生しないようにすることができる。
【0008】
好ましくは、第1スライドリングキャリアは、回転スライドリングを保持する。
【0009】
更に好ましくは、メカニカルシールはまた、第2プレテンション要素によって軸方向にプレテンションがかけられ、メカニカルシールの軸方向において軸方向に移動可能に配置された第2スライドリングキャリアを備える。この可動式の第2スライドリングキャリアは、動作時に第2メカニカルシールが軸方向のシャフトの移動にスムーズに追従することも可能にする。第2スライドリングキャリアは、固定スライドリングの上に配置され、固定されるのが好ましい。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、海洋メカニカルシール配列体は、第2メカニカルシールの第2回転スライドリングを保持する第3スライドリングキャリアを備える。これにより、リップシールは第3スライドリングキャリアの部分でシールする。これにより、特にコンパクトでシンプルなデザインを実現することができる。
【0011】
第3スライドリングキャリアは、好ましくは、リップシールがシールする、半径方向外側を向いた表面を有する。好ましくは、半径方向外側を向いた表面は、海洋メカニカルシール配列体の中心軸に平行である。特に好ましくは、リップシールがシールする接触面は、硬質層でコーティングされている。好ましくは、硬質層は、クロムからなる。
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、第1スライドリングキャリア上に、第1二次シール要素が配置されている。第1二次シール要素は、好ましくはOリングである。第1二次シール要素は、第1二次シール要素に直接隣接する第1軸方向変形空間を有する。この第1二次シール要素に直に隣接する第1軸方向変形空間は、圧力反転に適したメカニカルシールを提供することができる。従って、例えば、水の外圧がバリア流体キャビティ内の圧力よりも大きくなるようなメカニカルシールにおける圧力条件のいかなる反転も、海洋メカニカルシール配列体のシール特性に影響を与えることができない。例えば、そのような海洋用途におけるそのような圧力反転は、船舶の積載時に、船舶の推進システムが積載により水の中により深く沈んでいるときに生じる可能性がある。しかしながら、そのような圧力反転では、第1軸方向変形空間は、外部の水圧が増加した場合でも、第1二次シール要素が即座に変形することを可能にし、それによって、第1メカニカルシール上のシールギャップが即座に前進及び閉鎖することを確実なものとする。
【0013】
また、第2メカニカルシールを圧力反転に適したものとするために、第2メカニカルシールキャリア上に第2二次シール要素、特にOリングが配置され、第2二次シール要素に直に隣接して第2軸方向変形空間が設けられている。これにより、バリア流体キャビティ内の圧力が、シールすべき潤滑媒体の圧力を下回る圧力反転の場合にも、第2メカニカルシールは確実にシールすることができる。例えば、このようなケースは、バリア流体回路に外部(水)への漏れが発生した場合や、第1メカニカルシールが故障し、その後、バリア流体キャビティ内の圧力が外部の水圧まで低下した場合、例えば第1メカニカルシールの摺動面が損傷した場合に発生する可能性がある。
【0014】
バリア流体回路は、好ましくは、バリア流体リザーバとポンプとを備え、バリア流体キャビティの第2サブキャビティが戻りラインを介してバリア流体リザーバに接続されており、バリア流体リザーバが供給ラインを介してバリア流体キャビティの第1サブキャビティに接続されている。好ましくは、ポンプは、バリア流体リザーバと第1サブキャビティの間の供給ラインに設置される。
【0015】
更に好ましくは、リップシールは、固定リングと、ネジ等の複数の固定手段とによって、海洋メカニカルシール配列体のハウジングに固定される。これにより、リップシールのベースボディは、固定リングとハウジングとの間にクランプされる。
【0016】
更に好ましくは、バリア回路は、水分離器及び/又は潤滑剤分離器を更に備える。水分離器は、第1シールギャップを介してバリア流体キャビティに入った水を分離することができる。潤滑剤分離器は、第2シールギャップを介してバリア流体キャビティに入った潤滑剤を分離することができる。
【0017】
特に好ましくは、ポンプを一定速度で作動させないようにするのではなく、所定の時間間隔で再循環を行うように、バリア流体回路を構成する。
【0018】
更に、本発明は、海洋推進システム、例えば船舶や掘削装置用のスラスタやプロペラ、あるいはプロペラナセル等に関するものである。例えば、好ましい適用分野は深海掘削装置であり、これはもはや海底にしっかりと固定されておらず、複数の推進装置を用いて所定の位置に保持されている。
【0019】
本発明に係る海洋メカニカルシール配列体は、海水だけでなく、勿論淡水でも使用可能であり、海洋推進ユニット等のシャフトをシールすることができる点に留意すべきである。
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態による海洋メカニカルシール配列体及び海洋推進システムの実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、海洋推進システムの概略図である。
図2図2は、図1の海洋メカニカルシール配列体を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の好ましい実施形態に係る海洋メカニカルシール配列体1について、図1及び図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0023】
図1は、海洋推進システムのプロペラナセル46への海洋メカニカルシール配列体1の使用を模式的に示している。
【0024】
この場合、海洋メカニカルシール配列体1は、ドライブシャフト40の部分でシールする。ドライブシャフト40は、船舶47のプロペラ41を駆動する。プロペラナセル46は、通常の方法で船体上のその下側に配置されている。参照符号48は、水線を示す。
【0025】
従って、メカニカルシール配列体1は、潤滑媒体で満たされたキャビティ44を水環境45からシールしなければならない。
【0026】
図2は、海洋メカニカルシール配列体1を詳細に示している。図2から分かるように、海洋メカニカルシール配列体1は、軸受42において、水環境45と潤滑剤で満たされたキャビティ44との間をシールする。軸受42は、それによって、プロペラ41のためのドライブシャフト40を支持し、海洋メカニカルシール配列体1は、ドライブシャフト40とハウジング43との間に位置している。
【0027】
海洋メカニカルシール1は、第1メカニカルシール2と第2メカニカルシール3とを備える。2つのメカニカルシール2,3は、ドライブシャフト40上に直列に配置されており、軸方向X-Xにおいて2つのメカニカルシールの間にバリア流体キャビティ8が存在している。
【0028】
第1メカニカルシール2は、第1回転スライドリング21と、第1固定スライドリング22とを備え、これらは、それらの摺動面21a,22aの間に第1シールギャップ23を規定する。
【0029】
更に、第2メカニカルシール3は、第2回転スライドリング31と、第2固定スライドリング32とを備え、これらは、それらの摺動面31a,32aの間に第2シールギャップ33を規定する。
【0030】
第1メカニカルシール2は、第1プレテンション装置24を更に備えており、円周状に配置された複数のバネ要素からなる。第1回転スライドリング21は、第1スライドリングキャリア4によって保持されている。第1スライドリングキャリア4は、スリーブ80を介してドライブシャフト40に接続されている。第1スライドリングキャリア4とスリーブ80との間には、Oリングの形状をした第1二次シール25が設けられている。
【0031】
図2から分かるように、第1二次シール25には、第1軸方向変形空間26が直接隣接して設けられている。この第1軸方向変形空間26は、ドライブシャフト4の軸方向の移動中に第1二次シール25が第1軸方向変形空間26に変形して移動することにより、第1メカニカルシール2の軸方向前進を直ちに可能にするためのものである。
【0032】
第1固定スライドリング22は、ハウジング43に接続され、これに回転可能に固定されている。
【0033】
第2メカニカルシール3は、第2プレテンション装置34を更に備えており、これも、円周方向に配置された複数のバネ要素からなる。図2から分かるように、第2二次シール35は、第2スライドリングキャリア5とハウジング43との間をシールするように配置されている。ここで、第2スライドリングキャリア5は、複数のピン50を介して軸方向に移動可能に配置されている。ピン50と第2スライドリングキャリア5との間には、クリアランスフィットが設けられている。
【0034】
また、第2次シール35に設けられた第2軸方向変形空間36は、第2次シール35を第2軸方向変形空間36に変形させて移動させることで、第2メカニカルシール3をドライブシャフト44の軸方向の移動に容易に追従させることができる。
【0035】
このように、第1メカニカルシール2と第2メカニカルシール3は、圧力反転が可能である。
【0036】
図2から更に分かるように、第1及び第2メカニカルシール2,3の間のバリア流体キャビティ8は、リップシール7によって第1サブキャビティ81及び第2サブキャビティ82に分割されている。第1及び第2サブキャビティ81,82は、洗浄回路又はシール回路10の一部であり、リザーバ11及びポンプ14を更に備える。ここでは、環境に適合した媒体が、バリア媒体として使用される。
【0037】
図2から分かるように、リザーバ11は、供給ライン12を介してバリア流体キャビティ8の第1サブキャビティ81に接続されている。第2サブキャビティ82は、戻りライン13を介してリザーバ11に接続されている。
【0038】
また、図2には、油分離器15と水分離器16が模式的に示されている。
【0039】
リップシール7は、固定リング70と、ネジの形状をした複数の固定要素71とによって、ハウジング43に固定されている。ここで、リップシール7は、シールリップが第1サブキャビティ81から第2サブキャビティ82への流れを許容するように配置されている。これは、図2に矢印Aで示されている。リップシール7のシールリップは、それによって、半径方向外側を向いた表面60上の第3スライドリングキャリア6の部分でシールする。第3スライドリングキャリア6は、更に、複数のねじ83を用いて、ドライブシャフト40と共回りするスリーブ80に固定される。これにより、第3スライドリングキャリア6は、図2に示すように、第2回転スライドリング31を保持する。
【0040】
そのため、特にコンパクトなデザインを実現することができる。
【0041】
ポンプ14が作動する通常運転では、環境45、即ち水中では第1圧力P1がかかる。バリア流体キャビティ8では第2圧力P2がかかり、潤滑剤が満たされたキャビティ44では第3圧力P3がかかる。ここで、通常運転時の第2圧力P2は、ポンプ14による圧力上昇により、水中の第1圧力P1及びキャビティ44内の第3圧力P3よりも大きくなる。従って、通常運転では、第1サブキャビティ81から第1シールギャップ23を介して環境45に最小限の漏出が発生する可能性があり、同様に第2サブキャビティ82から第2シールギャップ33を介してキャビティ44に最小限の漏出が発生する可能性がある。シール回路10のポンプ14は、恒常的に作動する必要はないが、間隔をおいて圧力上昇を起こすことができ、それにより、まず、第1サブキャビティ81内の圧力を第2サブキャビティ82内の圧力よりも上昇させ、次に、リップシール7を開かせて、第1サブキャビティ81と第2サブキャビティ82との間で圧力平衡を確立させるようにする。
【0042】
本発明によれば、海洋メカニカルシール配列体1の部品に故障や損傷が発生した場合に、キャビティ44内の潤滑媒体の環境45からの確実なシールが、どのような状況でも確保され得る。
【0043】
図2は、ポンプ14が作動していない海洋メカニカルシール配列体1の状態を示している。このとき、第2圧力P2は、第1圧力P1よりも小さく、第3圧力P3よりも小さくなっている。例えば、第2メカニカルシール3が損傷した場合、第2圧力P2が第3圧力P3よりも小さいので、潤滑剤がキャビティ44から開いた第2シールギャップ33を介して第2サブキャビティ82に入る可能性がある。リップシール7は、第1サブキャビティ81から第2サブキャビティ82に向かう流れのみを許容するので、第2サブキャビティ82に位置する潤滑剤は、第1サブキャビティ81に向かって移動することができない。潤滑媒体がリザーバ11に向かって拡散し続けると、油分離器15によってバリア媒体から除去されてしまう。また、必要に応じて、潤滑媒体がリザーバ11に蓄積されることになるが、その場合には、例えば、潤滑媒体を検出するためのセンサを用いて、ポンプ14がもはや作動しないようにすることができる。
【0044】
例えば、今度は第1メカニカルシール2が損傷し、第2圧力P2が第1圧力P1よりも小さくなった場合、環境45からの水が第1サブキャビティ81に入る可能性がある。適切な圧力条件の場合、例えば、ポンプ14の再起動時には、水が第2サブキャビティ82に流入し続けるように、リップシール7が開く可能性がある。第2メカニカルシール3はまだ機能しているので、第2メカニカルシール3は、水が潤滑媒体用のキャビティ44に入るのを防ぐだろう。その後、水は、水分離器16を介してバリア媒体から除去することができるだろう。
【0045】
ポンプ14を駆動している通常運転では、リップシール7は、安全シールとしてのシール機能の他に、更に、第1サブキャビティ81と第2サブキャビティ82との間のバリア流体の絞り弁としても動作可能である。
【0046】
前述の本発明の書面による説明に加えて、図1及び図2における本発明の図表による表示を明確に参照して、本発明を補足的に説明する。
【符号の説明】
【0047】
1 海洋メカニカルシール配列体
2 第1メカニカルシール
3 第2メカニカルシール
4 第1スライドリングキャリア
5 第2スライドリングキャリア
6 第3スライドリングキャリア
7 リップシール
8 バリア流体キャビティ
10 バリア流体回路
11 リザーバ
12 供給ライン
13 戻りライン
14 ポンプ
15 油分離器
16 水分離器
21 第1回転スライドリング
21a 第1回転スライドリングの摺動面
22 第1固定スライドリング
22a 第1固定スライドリングの摺動面
23 第1シールギャップ
24 第1プレテンション装置
25 第1二次シール
26 第1軸方向変形空間
31 第2回転スライドリング
31a 第2回転スライドリングの摺動面
32 第2固定スライドリング
32a 第2固定スライドリングの摺動面
33 第2シールギャップ
34 第2プレテンション装置
35 第2二次シール
36 第2軸方向変形空間
40 ドライブシャフト
41 プロペラ
42 軸受
43 ハウジング
44 潤滑剤のための空間
45 環境/海水
46 ナセル
47 船舶
48 水線
50 ピン
60 リップシールのための半径方向外側を向いたシール面
70 固定リング
71 ネジ/固定要素
80 スリーブ
81 第1サブキャビティ
82 第2サブキャビティ
83 ネジ
A リップシールの開方向
X-X メカニカルシール配列体の軸方向
P1 周囲の圧力
P2 バリア流体キャビティ内の圧力
P3 潤滑剤キャビティ内の圧力
図1
図2