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特許7219351光学系、光学系の製造方法、および内視鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】光学系、光学系の製造方法、および内視鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20230131BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230131BHJP
   A61B 1/055 20060101ALI20230131BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230131BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G02B13/00
A61B1/00 R
A61B1/00 730
A61B1/055
G02B7/02 C
G02B7/02 Z
G02B23/26 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021554449
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043370
(87)【国際公開番号】W WO2021090378
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】三木 健寛
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138245(JP,A)
【文献】特表2001-507251(JP,A)
【文献】特表2018-516391(JP,A)
【文献】米国特許第6631220(US,B1)
【文献】国際公開第2019/134953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 6/24 - 6/43
G02B 7/00 - 7/24
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 23/24 - 23/26
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸と直交する方向において変化する屈折率分布をそれぞれ有する複数のレンズを備えており、
前記複数のレンズのそれぞれの前記光軸は、同一直線上に配置され、
前記複数のレンズのそれぞれは、軸上屈折率と屈折率分布定数に関して同じ設計値に基づいて製造されたものであり、
前記複数のレンズの全体の収差量が最大になる前記複数のレンズの前記光軸回りの各回転位置を前記複数のレンズのそれぞれに対する基準回転位置とするとき、前記複数のレンズのうちのいずれかは、その前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転した位置に配置されている、
光学系。
【請求項2】
前記複数のレンズは、それぞれ互いに小数点以下2桁目まで等しい軸上屈折率を有しており、
前記複数のレンズのうち、屈折率分布係数が最小のレンズの屈折率分布係数に対する最大のレンズの屈折率分布係数の比をηとするとき、ηは1以上1.1以下である、
請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記複数のレンズの合計ピッチPが次式(1)を満たしている、
請求項2に記載の光学系。
【数1】
ここで、λ[nm]は観察波長、NAは開口数、D[mm]は外径、N00は、前記複数のレンズの平均の軸上屈折率である。
【請求項4】
前記複数のレンズのうち、長さが最も短いレンズのピッチPの前記複数のレンズの合計ピッチPに対する比γ(=P/P)が、次式(2)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学系。
【数2】
ここで、λ[nm]は設計波長、NAは開口数、D[mm]は外径、N00は、前記複数のレンズの平均の軸上屈折率である。
【請求項5】
前記複数のレンズのうち、長さが最も短いレンズのピッチが0.5以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
前記複数のレンズのうちの2つのレンズにおける前記光軸回りの互いの相対回転角の大きさをφ[deg]とすると、φが次式(3)または(4)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学系。
【数3】
【請求項7】
前記複数のレンズのうちの2つのレンズにおける前記光軸回りの互いの相対回転角の大きさをφ[deg]とすると、φが次式(5)を満たす、
請求項1~5のいずれか1項に記載の光学系。
【数4】
【請求項8】
前記複数のレンズのうちの2つのレンズにおける前記光軸回りの互いの相対回転角の大きさをφ[deg]とすると、φが次式(6)、(7)および(8)のいずれかを満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学系。
【数5】
【請求項9】
前記複数のレンズのうちの2つのレンズにおける前記光軸回りの互いの相対回転角の大きさをφ[deg]とすると、φが次式(9)、(10)、および(11)のいずれかを満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学系。
【数6】
【請求項10】
前記複数のレンズのうち、いずれか2つのレンズの合計ピッチが次式(12)を満たす、
請求項1~9のいずれか1項に記載の光学系。
【数7】
ただし、nは0以上の整数である。
【請求項11】
前記複数のレンズは、互いに等しい外径を有しており、前記複数のレンズの各外径をD、前記複数のレンズの合計の長さをLとするとき、次式(13)を満たす、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学系。
【数8】
【請求項12】
光軸と直交する方向において変化する特定の屈折率分布を有するレンズ母材を前記光軸に交差する方向に切断して複数のレンズを形成することと、
前記複数のレンズの全体の収差量が最大になる前記複数のレンズの前記光軸回りの各回転位置をそれぞれに対する基準回転位置とするとき、前記複数のレンズのうちのいずれかをその前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転している状態となり、かつ前記複数のレンズをそれぞれの光軸が同一直線上に位置するように、前記複数のレンズを配置することと、
を備える、光学系の製造方法。
【請求項13】
前記複数のレンズを形成する前に、前記レンズ母材の波面収差を測定し、前記基準回転位置を特定することと、
前記波面収差における収差の種類の応じた収差量を評価することと、
をさらに備え、
前記複数のレンズを配置する際に、前記収差の種類のうち、軸対称性を有しない非軸対称収差が打ち消し合うように、前記基準回転位置に対する前記複数のレンズの各回転位置を決定する、
請求項12に記載の光学系の製造方法。
【請求項14】
前記収差量を評価する際に、前記収差の種類に対応するゼルニケ係数を用いる、
請求項13に記載の光学系の製造方法。
【請求項15】
前記複数のレンズのうちのいずれかをその前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転する間、または相対回転させた後に、前記全体の収差量を測定することをさらに備え、
前記複数のレンズを配置する際に、
前記全体の収差量が、予め決められた収束判定条件を満たすまで、前記複数のレンズのうちのいずれかをその前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転させる、
請求項12に記載の光学系の製造方法。
【請求項16】
前記複数のレンズのうちのいずれかをその前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転する間、または相対回転させる前後に、前記複数のレンズを含む光学系において、画像評価チャートの画像を観察することをさらに備え、
前記複数のレンズを配置する際に、
観察された前記画像の鮮明さが良好になるように、前記複数のレンズのうちのいずれかをその前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転させる、
請求項12に記載の光学系の製造方法。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光学系を備える、内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系、光学系の製造方法、および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内視鏡において、挿入部が湾曲可能な軟性鏡と、挿入部がほとんど湾曲しない硬性鏡と、が知られている。
軟性鏡は、被検体の奥深くに挿入することができるように、長尺の挿入部を有する。軟性鏡においては、外部から操作可能な湾曲部の先端に観察光学系を有する先端部が設けられている。軟性鏡は、外部から操作可能な湾曲部を有するので、挿入部の外径をあまり細くできない。
これに対して、硬性鏡は、湾曲部を有しないため、細径の光学系を用いることによって、軟性鏡よりも挿入部の外径を小さくできる。
例えば、光学系としては、リレーレンズ光学系、多数の光ファイバーを束ねたファイバーバンドル、および光軸と直交する方向において変化する屈折率分布を有する屈折率分布型レンズ(Gradient Index lens, GRIN lens)などが知られている。
リレーレンズ光学系は、画質において優れているが、細径化が難しいので細径硬性鏡には向いていない。
屈折率分布型レンズは、光路長があまり長くなければ、ファイバーバンドルよりも画質および製造コストにおいて優れているので、細径硬性鏡に適している。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の径方向屈折率分布型レンズを含む光学リレイにおいて、負アッベ数を有する径方向屈折率分布型レンズを備えることが記載されている。ここで、「径方向屈折率分布型レンズ」とは、光軸と直交する方向において変化する屈折率分布を有する屈折率分布型レンズを意味している。
この光学リレイにおいては、負アッベ数を有するレンズによって、軸方向の色収差が補正されるので、カラー画像の画質が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開平7-146435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような関連技術には、以下のような問題がある。
特許文献1に記載の技術によれば、色収差は低減できるが、単色の波面収差は低減されない。径方向屈折率分布型レンズによって生じる収差の一部は、径方向屈折率分布型レンズの屈折率分布の製造誤差に起因する。しかし、屈折率分布の製造誤差が少ない屈折率分布型レンズを製作すると、その製造コストが増大してしまう。
屈折率分布型レンズの収差量は、レンズの長さに応じて増大することが知られている。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、屈折率分布型レンズの分布精度を高めることで収差量を低減したり,他の光学素子により屈折率分布型レンズの収差を補正したりすることなく、画質の劣化を低減することができる光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の光学系は、光軸と直交する方向において変化する屈折率分布をそれぞれ有する複数のレンズを備えており、前記複数のレンズのそれぞれの前記光軸は、同一直線上に配置され、前記複数のレンズのそれぞれは、軸上屈折率と屈折率分布定数に関して同じ設計値に基づいて製造されたものであり、前記複数のレンズの全体の収差量が最大となるような前記複数のレンズの前記光軸回りの各回転位置をそれぞれに対する基準回転位置とするとき、前記複数のレンズのうちのいずれかは、その前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転した位置に配置されている。
【0008】
本発明の第2の態様の光学系の製造方法は、光軸と直交する方向において変化する特定の屈折率分布を有するレンズ母材を前記光軸に交差する方向に切断して複数のレンズを形成することと、前記複数のレンズの全体の収差量が最大となるような前記複数のレンズの前記光軸回りの各回転位置をそれぞれに対する基準回転位置とするとき、前記複数のレンズのうちのいずれかをその前記基準回転位置に対して前記光軸回りに相対回転している状態となり、かつ前記複数のレンズをそれぞれの光軸が同一直線上に位置するように、前記複数のレンズを配置することと、を備える。
【0009】
本発明の第3の態様の内視鏡は、上記第1の態様の光学系を備える。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様の光学系および第2の態様の光学系の製造方法によれば、屈折率分布型レンズの分布精度を高めることで収差量を低減したり,他の光学素子により屈折率分布型レンズの収差を補正したりすることなく、画質の劣化を低減することができる。
第3の態様の内視鏡によれば、観察画像の画質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の光学系および内視鏡の例を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態の光学系における屈折率分布型レンズ群を示す模式的な正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態における屈折率分布型レンズの模式的な左側面図である。
図4図2におけるA-A断面図である。
図5】屈折率分布型レンズの目標とする理想的な屈折率分布の例を示す模式的なグラフである。
図6】屈折率分布型レンズにおける模式的な光線追跡図である。
図7】屈折率分布型レンズにおける製造誤差を含む屈折率分布の例を示す模式的なグラフである。
図8】本発明の第1の実施形態の光学系における複数のレンズと、それらを製造するレンズ母材との関係を示す模式的な斜視図である。
図9】標準ゼルニケ多項式で表される波面収差を示す模式図である。
図10】屈折率分布型レンズの波面収差を表すゼルニケ係数の例を示す模式的な棒グラフである。
図11】本発明の第1の実施形態の光学系の製造方法の例を示す模式図である。
図12】本発明の第1の実施形態の光学系の製造方法における波面収差の変化の例を示す模式図である。
図13】本発明の第1の実施形態の光学系の製造方法の例を示す模式図である。
図14】本発明の第2の実施形態の光学系の製造方法の例を示す模式図である。
図15】本発明の第3の実施形態の光学系の製造方法の原理を示す模式図である。
図16】屈折率分布の誤差を有する屈折率分布型レンズにおける光線追跡の一例を示す光線追跡図である。
図17】屈折率分布型レンズの波面収差を表すゼルニケ係数の例を示す模式的な棒グラフである。
図18】本発明の第3の実施形態の光学系の製造方法の作用を示す模式的なグラフである。
図19】収差の種類が複数の場合の例における収差低減効果を示す模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の内視鏡について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の光学系および内視鏡の例を示す模式的な断面図である。
【0014】
図1に示す本実施形態の内視鏡100は、被検体Tの内部を観察する目的で用いられる硬性鏡である。内視鏡100の被検体Tは特に限定されない。例えば、内視鏡100によって観察される被検体Tは、人体、生体組織などであってもよいし、工業製品、橋梁、航空機などであってもよい。
内視鏡100は、筐体2、ディスプレイ10、および挿入部1を備える。
【0015】
筐体2は、被検体Tの外部に配置される。筐体2の内部には、光源3、結像光学系7(光学系)、イメージセンサ8、および画像形成部9が収容されている。
【0016】
光源3は、内視鏡100による観察対象を照明する照明光ILを発生させる。照明光ILの波長は特に限定されない。照明光ILの波長帯域は観察対象の種類等に応じて設定されればよい。例えば、照明光ILは単色光でもよいし、白色光でもよい。照明光ILは、適宜の中心波長を有する狭帯域光であってもよい。
照明光ILの波長または中心波長は、可視域にあってもよいし、赤外などの非可視域にあってもよい。
光源3の装置構成は、照明光ILを発生させることができれば、特に限定されない。例えば、光源3としては、LED、レーザー素子、ハロゲン光源、キセノン光源などが用いられてもよい。
【0017】
光源3には、照明光ILを伝送するライトガイド4が連結されている。光源3は、照明光ILを集光する集光光学系(図示略)を備えており、照明光ILをライトガイド4の第1端面4aに光結合させる。
ライトガイド4は、例えば、光ファイバーまたは光ファイバーバンドルを有する。第1端面4aに光結合した照明光ILは、ライトガイド4の内部を通って伝送され、ライトガイド4の長手方向における第1端面4aと反対側の第2端面4bから第2端面4bの前方に出射される。ただし、例えばレーザー共焦点内視鏡、OCT内視鏡などのように結像光学系および屈折率分布レンズ群が照明光の伝播も兼ねる場合には、ライドガイド4は必ずしも必須ではない。
【0018】
結像光学系7は、後述する挿入部1内の光学系によって伝送された画像光IMを集光する。結像光学系7の構成は、画像光IMを後述するイメージセンサ8の撮像面に結像できれば、特に限定されない。例えば、結像光学系7としては、全体として適宜の屈折力を有する1以上のレンズが用いられる。
【0019】
イメージセンサ8は、結像光学系7によって集光された画像光IMを光電変換して画像信号を生成する。イメージセンサ8としては、例えば、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサなどが用いられてもよい。
イメージセンサ8によって生成された画像信号は、後述する画像形成部9に送出される。
【0020】
画像形成部9は、イメージセンサ8から送出される画像信号を出力用画像データに変換する。画像形成部9は、画像信号を出力用画像データに変換する際、必要に応じて画像処理を行ってもよい。画像データは、後述するディスプレイ10に送出される。
ディスプレイ10は、画像形成部9と通信可能に接続されている。ディスプレイ10は表示画面を有しており、画像形成部9から送出される画像データを表示画面上に表示する。ディスプレイ10の装置構成は特に限定されない。例えば、ディスプレイ10としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどが用いられてもよい。
【0021】
挿入部1は、被検体Tの内部に挿入される。挿入部1の外形は、筐体2から外方に延びる棒状である。
図1に示す例では、挿入部1は、外筒11と、内筒12と、を有する。
外筒11は、例えば、金属等の硬質な材料で形成されている。外筒11の第1端部11aは、筐体2の内部に開口している。外筒11の長手方向において第1端部11aと反対側の第2端部11bは、外部に向けて開口している。
外筒11の内部には、外筒11の内径よりも小径の外径を有する内筒12が配置されている。
内筒12の第1端部12aは、筐体2の内部に位置する。内筒12の長手方向において第1端部12aと反対側の第2端部12bは、外筒11の第2端部11bの開口に臨んでいる。
【0022】
図1に示す例では、第2端部11b、12bは、長手方向に直交する開口を形成しているように描かれている。しかし、第2端部11b、12bは、長手方向に対して斜めに傾斜する針状の開口を形成していてもよい。
【0023】
内筒12は、後述する屈折率分布型レンズ群6(複数のレンズ、光学系)および対物光学系5(光学系)を内部に保持する。屈折率分布型レンズ群6および対物光学系5の各光軸は、内筒12の中心を通る中心軸線C上に配置されている。
内筒12の形状は、屈折率分布型レンズ群6および対物光学系5を内部に保持できる筒状であれば特に限定されない。
内筒12の内周部は、屈折率分布型レンズ群6を中心軸線C回りに回転可能に収容できる形状を有する。内筒12の外周部は、外筒11の内部に配置可能な形状であれば特に限定されない。
例えば、内筒12は円筒部材であってもよいし、円筒の一部が加工された部材であってもよい。例えば、内筒12は、円筒の側面に開口が形成された形状に形成されてもよい。例えば、内筒12は、円筒の内周面および外周面が凹凸状に加工された形状に形成されてもよい。
例えば、内筒12は、多角柱状の筒部材で構成されてもよい。
【0024】
内筒12の材料は、特に限定されない。例えば、内筒12の材料としては、プラスチック、金属などが用いられてもよい。内筒12の材料は、樹脂接着剤によってガラス材料を接着可能な材料であることがより好ましい。
以下では、一例として、内筒12が円筒であるとして説明する。この場合、中心軸線Cは、円筒の内周面の中心軸線に一致している。
【0025】
外筒11の内部において、内筒12の隣には、上述のライトガイド4が並行して配置されている。図1に示す例では、筐体2の外部に延出したライトガイド4は、第1端部11aの近傍における外筒11の側部から外筒11の内側に挿入されている。外筒11内のライトガイド4は、内筒12と並行して第2端部11bに向かって延びている。ライトガイド4の第2端面4bは、外筒11の第2端部11bにおける開口に臨んでいる。第2端部11bの近傍において、ライトガイド4の光軸と内筒12の中心軸線とは互いに平行である。
【0026】
対物光学系5は、内筒12の内部における第2端部12bの近傍に保持されている。
対物光学系5は、被検体Tにおける観察対象の表面Sに照射された照明光ILの反射光LRを集光する。対物光学系5の構成は、反射光LRを集光して後述する屈折率分布型レンズ群6に光結合させることができれば、特に限定されない。例えば、対物光学系5としては、全体として適宜の屈折力を有する1以上のレンズが用いられる。
ただし、結像光学系7と後述する屈折率分布型レンズ群6とによって、内視鏡100として必要な光学性能、例えば、倍率、視野の大きさ、解像度、作動距離などが得られる場合には、対物光学系5は省略されてもよい。
【0027】
屈折率分布型レンズ群6は、光軸と直交する方向において変化する屈折率分布をそれぞれ有する複数のレンズを備える。屈折率分布型レンズとして、光軸に沿う方向(光軸方向)に屈折率が変化するレンズ(軸方向屈折率分布型レンズ)も知られている。しかし、屈折率分布型レンズ群6に用いるレンズは、上述のように光軸に直交する方向に変化する屈折率分布を有するレンズ(径方向屈折率分布型レンズ)である。本明細書では、特に断らない限り「屈折率分布型レンズ」は径方向屈折率分布型レンズを意味する。
屈折率分布型レンズ群6に用いる複数のレンズは、その屈折率分布が、光軸と直交する方向において変化し、かつ光軸方向に変化しないことを目標として製造された屈折率分布型レンズである。このような屈折率分布型レンズは、製造誤差によるバラツキを除くと、光軸に直交する断面において光軸回りに軸対称な屈折率分布を有する。この屈折率分布は、製造誤差によるバラツキを除くと、光軸方向において変化しない。
【0028】
これに対して、製造誤差を除いて一定の屈折率を有する光学材料を用いて製造されるレンズ(定屈折率型レンズと称する)では、光軸から径方向に離れるにつれてレンズ面の面間距離が変化することにより、光路長が径方向に変化している。これにより、屈折率が一定の光学材料によって、レンズとしての屈折力が形成される。この場合、製造誤差に起因するレンズ単体の非軸対称の収差は、主として、非軸対称に発生するレンズ面の形状誤差、レンズ面の偏心などによって発生する。このため、定屈折率型レンズの非軸対称の収差は個々のレンズに固有である。
【0029】
屈折率分布型レンズ群6におけるレンズの個数は特に限定されず、2以上の適宜の個数のレンズが使用される。
図1に示す例では、屈折率分布型レンズ群6における屈折率分布型レンズの個数は2個である。具体的には、屈折率分布型レンズ群6は、物体側(第2端部12b側)から像側(第1端部12a側)に向かって、第1レンズ6A(レンズ)と、第2レンズ6B(レンズ)とが、この順に配置されている。第2レンズ6Bの像側の端部は、第1端部12aよりも像側に延出している。
図1には、第1レンズ6A、第2レンズ6B、および対物光学系5の間には、隙間がない例が記載されている。しかし、第1レンズ6A、第2レンズ6B、および対物光学系5の間には、適宜の空気間隔または接着剤層が設けられていてもよい。
本実施形態において、対物光学系5、屈折率分布型レンズ群6、および結像光学系7は、光学系を構成している。
【0030】
次に、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの詳細構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態の光学系における屈折率分布型レンズ群を示す模式的な正面図である。ただし、図2は物体側を左側、像側を右側として描かれているため、図1とは向きが異なる。図3は、本発明の第1の実施形態における屈折率分布型レンズの模式的な左側面図である。図4は、図2におけるA-A断面図である。
【0031】
図2に示すように、第1レンズ6Aの外形は、光軸Oを中心とする円柱であり、第1端面6a、第2端面6b、および外周面6cを有する。第1端面6aおよび第2端面6bは、それぞれ、第1レンズ6Aにおける物体側および像側の端面である。第1端面6aおよび第2端面6bは、いずれも光軸Oに直交する平面である。第1端面6aおよび第2端面6bは、例えば研磨加工などによって平滑化されている。
第1レンズ6Aの長さ(第1端面6aと第2端面6bとの間のスパン)はL6Aである。
図3に示すように、外周面6cは、光軸Oを中心とする円筒面である。外周面6cの外径の値Dは、内筒12の内周面と摺動可能に嵌合できるように、内筒12の内周面の内径よりもわずかに小さい。
【0032】
図2に示すように、第2レンズ6Bの外形は、光軸Oを中心とする円柱であり、第1端面6d、第2端面6e、および外周面6fを有する。第1端面6dおよび第2端面6eは、それぞれ、第2レンズ6Bにおける物体側および像側の端面である。第1端面6dおよび第2端面6eは、いずれも光軸Oに直交する平面である。第1端面6dおよび第2端面6eは、例えば研磨加工などによって平滑化されている。
第2レンズ6Bの長さ(第1端面6dと第2端面6eとの間のスパン)はL6Bである。
図3に示すように、外周面6fは、光軸Oを中心とする円筒面である。外周面6fの外径は、第1レンズ6Aの外径と同様のDである。
【0033】
図2に示すように、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bは、第2端面6bと第1端面6dとが互いに当接した状態で、互いに隣接して同軸に配置されている。すなわち、光軸O、Oは、同一直線上に配置されている。
本実施形態では、屈折率分布型レンズ群6は、対物光学系5および結像光学系7とも同軸である。このため、物光学系5、屈折率分布型レンズ群6、および結像光学系7は、同軸光学系を構成しており、それぞれの光軸は、全光学系の光軸Oと同軸である。
【0034】
以下では、屈折率分布型レンズ群6における位置関係を説明する際に、屈折率分布型レンズ群6に固定されたxyz右手直交座標系(以下、xyz座標系)を参照する場合がある。
z軸は、光軸Oに沿って物体側から像側に延びる座標軸である。x軸、y軸は互いに直交するとともに、それぞれz軸と直交する座標軸である。xyz座標系の原点は、例えば、第1端面6aと光軸Oとの交点に配置される。
【0035】
第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bからなる屈折率分布型レンズ群6は、全体として、長さがL(=L6A+L6B)の円柱状の屈折率分布型レンズになっている。
第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bは、同一の屈折率分布を有することを目標として製造された屈折率分布型レンズが用いられる。すなわち、製造誤差がない場合には、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの屈折率分布は互いに同一になる。このため、図1に示すように第2端面6bおよび第1端面6dが隙間なく当接されている場合には、屈折率分布型レンズ群6は、長さLの1本の屈折率分布型レンズと同様の光学性能を有する。
しかし、後述するように、本実施形態では、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの光軸O回りの回転位置を調整することによって、収差低減を図っている。
屈折率分布型レンズ群6が3以上の屈折率分布型レンズを備える場合にも、各レンズは、同一の屈折率分布を有することを目標として製造された屈折率分布型レンズが用いられる。
【0036】
屈折率分布型レンズ群6における複数のレンズの長さの合計Lと、外径Dとは、次式(13)を満たすことがより好ましい。
【0037】
【数1】
【0038】
屈折率分布型レンズ群6が医療用または工業用の内視鏡に用いられる場合、被検体Tに挿入しやすく、挿入後に被検体Tの内奥に先端を位置させ易いことが重要である。L/Dが60未満であると、挿入に必要なD以上の開口の大きさに比べて、先端の届く範囲Lが短くなりすぎる。
より好ましいDの値は、1mm以下である。このとき、Lは60mm以上になり、狭い開口を通して、被検体Tの内部の観察対象に近づきやすくなる。
屈折率分布型レンズ群6において、外径Dは一定でなくてもよいが、外径Dが一定であると、組立が容易になるためより好ましい。
【0039】
ここで、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bに用いられる屈折率分布型レンズの屈折率分布について説明する。
図5は、屈折率分布型レンズの目標とする理想的な屈折率分布の例を示す模式的なグラフである。図5において、横軸のx軸、y軸は、xyz座標系のx軸、y軸を表す。縦軸は屈折率を表す。図6は、屈折率分布型レンズにおける模式的な光線追跡図である。
【0040】
屈折率分布型レンズの光軸に直交する断面における屈折率分布n(x,y)は、次式(a)に示すように、光軸を中心軸線とする回転放物面で表される。r=√(x+y)と置けば、n(x,y)は、極座標(r,θ)において、変数rのみに依存し、次式(b)のように表される。
【0041】
【数2】
【0042】
ここで、N00は軸上屈折率、√Aは屈折率分布係数である。
【0043】
このように、屈折率分布型レンズの屈折率分布は、製造誤差を有しない場合には、軸上屈折率N00と、屈折率分布係数√Aとによって、規定される。
このため、製造誤差を有する屈折率分布型レンズ同士においては、軸上屈折率N00と、屈折率分布係数√Aと、を測定し、それぞれの値が製造誤差程度の差異しかない場合には、同一の設計値に基づいて製造された屈折率分布を有すると見なすことができる。
【0044】
例えば、屈折率分布係数√Aは、日本国特開2005-289775号公報に記載されているような方法で測定できる。まず必要に応じて屈折率分布型レンズを適当な長さに切断し、両端面を平行に鏡面研磨する。この後、屈折率分布型レンズの片側端面に光学チャート等を接触させる。屈折率分布型レンズの反対側の端面から光学チャートの像を観察し、その位置から1周期相当の長さ(1ピッチ)mを求める。屈折率分布係数√Aは、√A=2π/mの関係を用いて算出される。
鏡面研摩後の屈折率分布型レンズが0.5周期相当の長さより短いために、片側端面に接触させたチャートを結像させることができない場合には、以下のようにして√Aを求めればよい。屈折率分布型レンズに平行光を入射し、その光がスポットを形成する位置を測定する。スポットの位置から0.25周期相当の長さを求めて、求めた長さを1周期相当の長さmに換算すればよい。
【0045】
同一の設計値に基づいて製造された屈折率分布型レンズの屈折率分布係数√Aであっても、実際には屈折率分布係数√Aは製造誤差を有することが広く知られている。屈折率分布係数√Aの製造誤差は屈折率分布型レンズの長さを調整することで吸収されるため、屈折率分布係数√Aの製造誤差の程度はメーカーの長さ公差から知ることができる。
例えば、GRINTECH社のカタログには屈折率分布型レンズの長さに関して±5%(幅10%)の公差すなわち製造誤差があると記されている。屈折率分布型レンズの長さに幅10%の誤差を持つということは、すなわちmが幅10%の誤差を持っているということである。
この場合、製造誤差上のmの最小値をmmin、最大値をmmaxとしたとき、mmax=1.1×mminである。これにより、製造誤差上の√Aの最小値√Aは、√A=2π/(1.1×mmin)最大値√Aは√A=2π/mminとなる。
√A/√A=1.1であるから、複数の屈折率分布型レンズが存在した場合に、屈折率分布係数が最小なレンズの屈折率分布係数に対する最大なレンズの屈折率分布係数の比ηが1以上1.1以下であれば、これら複数の屈折率分布型レンズは同一の設計値に基づいていると考えられる。
【0046】
屈折率分布型レンズの軸上屈折率N00は、日本国特開2005-289775号公報に記載されているように理想的には母材の屈折率と等しいが、実際には製造誤差を有する。製造誤差を有する場合でも日本国特開2005-289775号公報に記載されているように小数点以下二桁目までは同一になると考えることができる。すなわち複数の屈折率分布型レンズがあるときそれらの軸上の屈折率を測定し、小数点以下二桁目まで等しければ、それらは同一の設計値に基づいているといえる。測定方法は、屈折率分布型レンズの径方向中心部の屈折率が測定できる方法であれば特に限定されない。例えば日本国特開2005-289775号公報に記載されている臨界角法や日本国特開平8-146236号公報に記載の干渉顕微鏡によるものなどがある。また、正確な測定位置の制御が難しい場合は、面内複数の位置で測定を行い最も大きな測定値を選択することで軸上屈折率をする方法も考えられる。
【0047】
図5に示すように、このような軸対称の屈折率分布では、zx平面上の屈折率分布n(x,0)と、yz平面上の屈折率分布n(0,y)は、互いに同形の放物線である。
このような軸対称の屈折率分布であると、光軸上で屈折率が最大となり、軸外の屈折率は、光軸からの距離の2乗に比例して低下する。この場合、図6に、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bと同様の屈折率分布を有する屈折率分布型レンズであるレンズ母材60の例を示すように、例えば、光軸O60を中心として発散する軸上光束Fは、光軸を中心とする正弦波の光路を進む。以下、この正弦波の1周期に相当する長さをピッチ長と称し、pで表す。
例えば、光軸O60上の点hから発散する軸上光束Fは、光軸方向にp/2だけ離れた点h’において、光軸O上に集光される。軸上光束Fは、点h’からさらに光軸方向にp/2だけ離れた点h’’において、光軸O60上に集光される。
同様に、第1端面6aにおける像高がhの点から発散する軸外光束Fは、距離p/2、pだけ離れた位置において、それぞれ、像高h’、h’’に集光される。
レンズ母材60によれば、例えば、線分hhの画像は、距離p/2の位置で倒立等倍像h’h’に結像され、距離pの位置で正立等倍像h’’h’’に結像される。
レンズ母材60の長さがpより長い場合、同様の結像が光軸方向において繰り返されることによって、線分hhの画像が伝送されていく。このため、1本のレンズ母材60は、リレー光学系として使用可能である。
【0048】
このようなレンズ母材60は、全長が長いほど、結像回数が増えるので、屈折率分布の誤差に起因する収差も増えていく。
屈折率分布型レンズを製造するには、例えば、ロッド紡糸、直接紡糸などによってロッド状のガラス母材を形成する。この後、ガラス母材を高温の溶融塩に浸漬させるイオン交換法を用いて、ガラス母材に含まれる屈折率に寄与する成分に径方向の濃度勾配を形成する。製造プロセスにおいて濃度勾配がばらつくと、屈折率分布に誤差が生じる。
そのほかにも例えば屈折率の異なる複数の樹脂層を同心円状に複合紡糸し、ロッド状のプラスチック母材を形成した後、光重合により屈折率勾配を付与する方法も知られている。この場合には、例えば紡糸時のノズル形状誤差や光重合時のモノマー濃度勾配のばらつき等により屈折率分布に誤差を生じる。
図7は、屈折率分布型レンズにおける製造誤差を含む屈折率分布の例を示す模式的なグラフである。横軸および縦軸の意味は、図5と同様である。図8は、本発明の第1の実施形態の光学系における複数のレンズと、それらを製造するレンズ母材との関係を示す模式的な斜視図である。
【0049】
図7に模式的に示すように、屈折率分布型レンズの屈折率分布の誤差は、非軸対称の誤差が発生することが多いと考えられる。この場合、光軸を含む多くの断面における屈折率分布は、目標の放物線からずれた曲線になる。例えば、屈折率分布係数が周方向において変化したり、放物線の中心軸が傾斜したりしていると考えられる。
本発明者は、このような屈折率分布の誤差が使用するレンズ長さに比べると長い領域で、略一定であると考えられることに着眼して、本発明に到った。
例えば、図8に示すように、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの全長と同程度の長さの範囲で光軸方向には屈折率分布がほとんど変化しない場合、レンズ母材60において光軸方向に隣り合う領域から切り出した第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの屈折率分布は、光軸方向においてはほとんど変化しないと考えられる。
【0050】
本発明者は、屈折率分布の誤差と、屈折率分布型レンズを透過した波面収差との間に高い相関があると考えて、屈折率分布型レンズにおける波面収差を分析した。波面収差の分析には、標準ゼルニケ(Zernike)多項式を用いた波面収差による解析が有効である。
まず、標準ゼルニケ多項式について簡単に説明する。
図9は、標準ゼルニケ多項式で表される波面収差を示す模式図である。
【0051】
標準ゼルニケ多項式は、軸対称光学系における波面収差を近似する近似多項式として用いられる。図9(1)~(15)は、それぞれ第1項から第15項までの標準ゼルニケ多項式が表す波面を模式的に示している。各図で記号+は、正値を取り、記号-は負値をとることを意味する。以下、波面収差において正値、負値をとる領域を、それぞれ正値領域、負値領域と称する。
以下、簡単のため、特に断らない限り、標準ゼルニケ多項式を、単にゼルニケ多項式と称する。
下記[表1]に、ゼルニケ多項式の第1項から第15項までの極座標表示であるW(r,θ)(k=1,2,…,15)を示す。ここで、kはゼルニケ多項式の項番を表す。(0,0)は軸対称光学系の光軸の位置に対応する。
【0052】
【表1】
【0053】
ゼルニケ多項式が表す波面は、光軸に関して軸対称であるか、またはN回回転対称(ただし、Nは自然数。以下同じ)である。
軸対称の波面となる例としては、k=1,5,13(図9(1)、(5)、(13)参照)が挙げられる。k=13の波面は、3次の球面収差を表す。
ゼルニケ多項式におけるN回回転対称性は、θの関数がsin(Nθ)またはcos(Nθ)関数からなることに起因しているので、N回回転対称の波面と、この波面を光軸回りに(2M+1)×(360/2N)度(ただし、Mは整数)回転させた波面と、の和が至る所で0になるという性質を有している。
【0054】
N=1の例としては、k=2,3,8,9(図9(2)、(3)、(8)、(9)参照)が挙げられる。k=2,3の波面は、それぞれx方向、y方向に傾いた波面を表す。k=8,9の波面は、それぞれx方向、y方向における3次のコマ収差を表す。
【0055】
N=2の例としては、k=4,6,12,14(図9(2)、(3)、(12)、(14)参照)が挙げられる。k=4,6の波面は、それぞれ0度および90度方向と、±45度方向の非点収差を表す。k=12,14の波面は、secondary astigmatismを表す。
【0056】
N=3の例としては、k=7,10(図9(7)、(10)参照)が挙げられる。k=7,10の波面は、それぞれトレフォイルを表す。
【0057】
N=4の例としては、k=11,15(図9(11)、(15)参照)が挙げられる。k=11,15の波面は、それぞれクアドラフォイルを表す。
【0058】
屈折率分布型レンズにおける透過波面収差W(r,θ)をゼルニケ多項式で近似するには、次式(c)に示すように、W(r,θ)をゼルニケ多項式の第1項から第K項(Kは自然数)の線形和で表し、例えば、最小2乗法などによって、W(r,θ)の係数a(k=1,…,K)を決定する。以下では、係数aをゼルニケ係数と称する。
【0059】
【数3】
【0060】
図10は、屈折率分布型レンズの波面収差を表すゼルニケ係数の例を示す模式的な棒グラフである。図10において、横軸は項番k、ゼルニケ係数a[waves]の大きさを表す。
【0061】
図10に示すのは、外径Dが0.35mm、長さLが60mm、結像回数が8回の市販の屈折率分布型レンズの波面収差の測定結果である。測定光束としては、軸上光束を用いられた。測定器としては、シャックハルトマンセンサが用いられた。
この測定例によれば、球面収差に対応するa13等の軸対称収差成分も含まれているが、例えば、非点収差(a、a)、トレフォイル(a、a10)、コマ収差(a、a)等の、非軸対称の収差成分が多く含まれていることが分かる。
本発明者が検討したところ、屈折率分布型レンズの波面収差には、程度の差はあっても、非軸対称の収差成分が含まれている。
本発明者は、屈折率分布型レンズを複数に切断し、複数の屈折率分布型レンズの相対的な回転位置を調整することによって非軸対称の収差成分を低減することに想到し、本発明に到った。
【0062】
本実施形態の屈折率分布型レンズ群6における第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの詳細構成について、本実施形態の製造方法とともに説明する。
図8に示すように、レンズ母材60から、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bを切り出す。以下では、レンズ母材60における光軸方向の位置に関して、レンズ母材60の外周面とx軸の正領域とが交差して形成される直線60a上の点で表す。
第1レンズ6Aは、点Q1および点Q2の位置で切り出される切断片60Aの長手方向の両端部が研摩されて製造される。このため、線分Q1Q2の長さはL6Aよりも長い。
第1レンズ6Aにおいて第1端面6a、第2端面6bの外縁と直線60aとの交点は、点Qa、Qbで表される。
第2レンズ6Bは、切断片60Bに隣接したレンズ母材60から切り出される。例えば、切断片60Bは、点Q2および点Q3の位置で切り出される。ここで、線分Q2Q3の長さはL6Bよりも長い。第2レンズ6Bは、切断片60Bの長手方向の両端部が研摩されて製造される。
第2レンズ6Bにおいて第1端面6d、第2端面6eの外縁と直線60aとの交点は、点Qd、Qeで表される。
【0063】
図11は、本発明の第1の実施形態の光学系の製造方法の例を示す模式図である。図12は、本発明の第1の実施形態の光学系の製造方法における波面収差の変化の例を示す模式図である。図13は、本発明の第1の実施形態の光学系の製造方法の例を示す模式図である。
【0064】
レンズ母材60から第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bを切り出した後、図11に示すように、第1端面6aが第2端部12bの方に向く姿勢で第1レンズ6Aが内筒12の内部に固定される。第1端面6aと第2端部12bとの間には、図示略の対物光学系5を配置するスペースが形成されている。
第1レンズ6Aの固定方法は、特に限定されない。例えば、第1レンズ6Aは内筒12に接着されてもよい。
第1端面6aと第2端部12bとの間の内筒12の内部には、第2レンズ6Bが挿入される。本実施形態では、第2レンズ6Bの第1端面6dが第2端面6bと当接する状態で、第2端面6eが第1端部12aよりも外方に突出している。
内筒12には、第2レンズ6Bを接着するための接着固定部12cが設けられる。図11に示す例では、接着固定部12cは、内筒12の側面に貫通し、外周面6fと対向する貫通孔からなる。ただし、例えば、内筒12の第1端部12aと外周面6fとを接着剤によって固定することによって、第1端部12aが接着固定部を兼ねるようにしてもよい。この場合、接着固定部12cは不要である。
【0065】
こうして構成された、内筒12と、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bとの組立体Uは、調整治具90における図示略の保持部に保持される。
調整治具90は、光源部91、第1集光レンズ92、レンズ回転部93、第2集光レンズ94、および波面測定器95を備える。
光源部91は、測定用光束として用いる平面波を形成する。第1集光レンズ92は、測定用光束を第1端面6a上に集光する。レンズ回転部93は、第2レンズ6Bの第2端面6e近傍の端部を保持して、第2レンズ6Bを光軸回りに回転させる。第2集光レンズ94は、第2端面6eから出射された光を平行光束に変換する。
波面測定器95は、第2集光レンズ94からの平行光束の波面を測定する。波面測定器95は、波面収差の全体の収差量を測定できれば特に限定されない。
【0066】
この後、レンズ回転部93を用いて、第2レンズ6Bを光軸回りに回転させながら、波面測定器95によって、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bからなる光学系の波面収差を測定する。測定用光束は、波面収差を有しないため、波面Wは、平面である。これに対して、波面測定器95に入射する光束の波面W’は、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bからなる光学系の波面収差が重畳されている。
【0067】
第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bは、それぞれ同様の非軸対称な収差を有する。点Qa、Qbと、点Qd,Qeと、がそれぞれ同一直線上に位置する状態では、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bは、長さLのレンズ母材60とまったく同様の光学性能を有している。このため、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bのおける全体の波面収差は、レンズ母材60の波面収差と同等である。
これに対して、例えば、光軸回りにおいて点Qa(Qb)と、点Qd(Qe)とがずれていると、その相対回転量に応じて、それぞれの非軸対称の波面の正値領域と負値領域とが重なり合うことによって、非軸対称の収差の少なくとも一部が低減される。
図12に組立体Uにおける第2レンズ6Bの回転角を横軸にとり波面収差の収差量を縦軸にとった収差量の変化の一例を示す。図12に示す例では、回転角がφ0からφ0+φに変化すると、収差量が最大値wmaxから最小値wmin(ただし、wmin<wmax)に変化している。ここで後述する特定の場合を除き最大値wmaxをとる状態は、光軸回りにおける点Qa(Qb)と、点Qd(Qe)との位置が一致している(相対回転角が0度)の状態に対応している。
回転角φ0は、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの全体の収差が最大となる回転位置を表しており、基準回転位置と称する。これに対して、φは、基準回転位置を基準とした回転角を表している。φは、回転方向を一方向に固定した上で、0度から360度の範囲の数値で表される。この場合、φは常に正値をとるのでその大きさを表している。
さらに本実施形態の場合、φは、屈折率分布型レンズ群6のうちの2つのレンズである第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bにおける互いの相対回転角も表している。このため、以下では、回転角φを相対回転角φと称する。
【0068】
ここで、収差低減効果と、レンズ長との関係について考察する。簡単のため、レンズ母材60が、第8項(図9(8)参照)の収差のみを有する場合を考える。この収差は1回回転対称であるため、第1レンズ6Aに対する第2レンズ6Bの相対回転角φが180度の時、最大の収差低減効果が得られる。
屈折率分布型レンズの屈折率分布が光軸方向において変化しない場合、収差量は、屈折率分布型レンズの長さに比例する。例えば、単位長さ当たりの収差量をbとすると、長さLのレンズ母材60の収差量w60は、次式(d)、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bの単体の収差量w6A、w6Bは、次式(e)、(f)で表される。
【0069】
【数4】
【0070】
相対回転角φが180度(=π)の場合の収差量をwπとすると、第2レンズ6Bの収差は第1レンズ6Aの収差を打ち消す位置に位置しているため、次式(g)のように表せる。
【0071】
【数5】
【0072】
ここで、式(g)の1行目より、L6A=L6Bの場合、wπは0になる。ただし、2行目から分かるように、L6A≠L6Bであっても、wπは、w60よりも小さくなることが分かる。
相対回転角が180度未満の場合の収差量w<πは、最小値が0より大きくなる以外は同様の結果になる。
このように、レンズ母材60から合計長さがLの第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bを形成して、光軸回りに相対回転させる場合、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bのレンズの長さL6A、L6Bの比は特に限定されないが、L/2またはL/2に近い長さにすることがより好ましい。
以上の説明は、レンズ母材60から合計長さがLとなるように、3以上のレンズを形成して屈折率分布型レンズ群6を構成する場合に、このうちの任意の2つのレンズの間でも成り立つ。この場合、すべてのレンズが基準回転位置に整列されている場合を除くと、レンズ母材60から形成された長さLの1本の屈折率分布型レンズよりも収差量が低減される。
【0073】
本発明者による検討の結果、上述の回転調整において特定の合計長さLのレンズ母材において特定の屈折率分布のずれまたは特定項の収差の低減を図る場合に、最大値wmaxをとる状態が、光軸回りにおける点Qa(Qb)と、点Qd(Qe)との位置が一致している(相対回転角が0度)状態と対応しない場合もあることがわかっている。
しかし、このような場合であっても、レンズ母材のピッチPが次式(12)を満足すれば、最大値wmaxをとる状態と、上述の相対回転角が0度の状態と、を対応させることができることも分かっている。したがって、レンズ母材のピッチPが次式(12)を満足することがより好ましい。
【0074】
【数6】
【0075】
ここで、nは0以上の整数である。
【0076】
レンズ母材のピッチPは、式(12)を満足するように設計してもよいし、上記式(12)を満たさない大きさに設計してもよい。
レンズ母材のピッチPが式(12)を満たさない場合には、レンズ母材をピッチPが式(12)を満たすような複数のレンズ母材に分割した後、それぞれにおいて上述の回転調整をすればよい。
【0077】
上述の回転調整は、予め決められた収束判定条件を満たすまで繰り返される。収束判定条件としては、例えば、[A]収差量が最小値になる、[B]収差量が予め決められた目標値以下になる、などの条件が挙げられる。
例えば、収束判定条件が[A]の場合、最小値wminになったら、レンズ回転部93の駆動を停止する。
この状態で、第2レンズ6Bが内筒12に固定される。例えば、図13に示すように、接着固定部12cに接着剤96を塗布後、接着剤96を硬化させることによって、第2レンズ6Bと内筒12とを接着する。硬化方法は、接着剤96の種類に応じた適宜の硬化方法が用いられる。
例えば、接着剤96がUV硬化型接着剤の場合には、予め接着固定部12cに接着剤96を塗布した状態で上述の回転調整を行い、その後、接着剤96にUV光を照射することによって、接着剤96を硬化させることができる。
【0078】
このようにして、内筒12に第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bが固定される。このような固定状態では、図3に示すように、第1レンズ6Aの点Qaがx軸上にあるとき、図4に示すように、第2レンズ6Bの点Qdは、x軸からy軸に向かって光軸Oを中心として図示時計回りにφだけ相対回転された位置に配置されている。
後述するように、第2レンズ6Bの相対回転角φは、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bが有する非軸対称の収差の種類およびその収差量によって異なる。
【0079】
この後、組立体Uの内部に対物光学系5を配置して、対物光学系5を内筒12に固定する。さらに、屈折率分布型レンズ群6および対物光学系5が固定された内筒12を外筒11の内部に固定する。このとき、必要に応じて、筐体2の内部に配置された結像光学系7および屈折率分布型レンズ群6の相対位置が調整される。
このようにして、対物光学系5、屈折率分布型レンズ群6、および結像光学系7からなる光学系を有する内視鏡100が製造される。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の光学系は、互いに同一の屈折率分布を有する第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bを同軸に配置し、波面収差が最小になるように、光軸回りの相対回転角φが調整されている。このような第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bからなる光学系は、それぞれと同一の屈折率分布を有するレンズ母材60から切り出された長さLの1本の屈折率分布型レンズに比べて、収差量を低減されている。すなわち、屈折率分布型レンズの分布精度を高めることで収差量を低減したり,他の光学素子により屈折率分布型レンズの収差を補正したりすることなく、第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bからなる光学系全体の収差量を低減されている。
これにより、対物光学系5および結像光学系7の収差が一定の場合には、光学系としての収差が低減される。この結果、光学系によって伝送される画質の劣化が低減される。
また、仮に対物光学系5および結像光学系7を含めて全体的な収差が低減されるような相対回転角φがある場合には、そのような相対角度に調整してもよい。
【0081】
屈折率分布型レンズでは、その長さが長くなるほど、収差量が増大することを考慮すると、上述した本実施形態の構成の効果は、屈折率分布型レンズ群6の長さLが長いほど顕著になる。
日本国特開2007-176764等に述べられているように、屈折率が精度よく測定できるのは、小数点以下5桁程度である。このような測定精度の下では、屈折率分布の製造精度は、屈折率値の誤差で5×10-6程度である。そこで、屈折率分布の製造上の誤差の大きさΔnは、5×10-6と見積もることができる。
1本の屈折率分布型レンズの収差は屈折率の誤差に起因する光路長の誤差であるため、屈折率分布型レンズの長さをL’とすると、収差量は、Δn×L’程度である。
一方、光学系が回折限界に達していると見なせる目安としては、設計波長をλとして、波面収差のPV値が0.25λ以下であるという条件が挙げられる。
よって、1本の屈折率分布型レンズとして使用可能長さL’は、L’≦0.25λ/Δnのように見積もることができる。
したがって、同様の屈折率分布を有する1本の屈折率分布型レンズに比べて顕著に画質を向上することができる点で、屈折率分布型レンズ群6の全長Lは、L’の最大値よりも長いことがより好ましい。
すなわち、屈折率分布型レンズ群6は、次式(h)を満足することがより好ましい。
【0082】
【数7】
【0083】
屈折率分布型レンズ群6においては、下記式(i)が成り立つので、これを用いると、式(h)は、下記式(j)のように変形される。
【0084】
【数8】
【0085】
ここで、Pは、屈折率分布型レンズ群6の合計ピッチであり、NAは、屈折率分布型レンズ群6の軸上の開口数である。N00、Dは、上述した屈折率分布型レンズ群6の軸上屈折率、外径である。
合計ピッチPとは、屈折率分布型レンズ群6の全長Lを、屈折率分布型レンズ群6内で正弦波状に進む軸上光束の1周期に対応する長さで割った比を意味する。
【0086】
式(j)において、Δnに5×10-6を代入し、さらに、λ、Dの単位としてそれぞれ[nm]、[mm]を用いると、次式(1)が得られる。屈折率分布型レンズ群6は、次式(1)を満たすことがより好ましい。
【0087】
【数9】
【0088】
次に、波面収差のPV値を0.25λ以下にする場合に、屈折率分布型レンズ群6を構成する複数のレンズの条件について説明する。
上述のように、屈折率分布型レンズにおいて相対回転するレンズのレンズ長が短すぎると収差量を十分に低減できないおそれがある。屈折率分布型レンズ群6の合計ピッチをP、屈折率分布型レンズ群6のうち最も短いレンズのピッチをPsとすると、基準回転位置における全体の収差LΔnは、式(g)と同様に、次式(k)で表される。
【0089】
【数10】
【0090】
γ>0なので、式(k)より、w<LΔnである。
が0.25λ未満になる条件は、上記式(i)を式(k)に代入すると次式(p)のように表される。
【0091】
【数11】
【0092】
式(p)において、Δnに5×10-6を代入し、さらに、λ、Dの単位としてそれぞれ[nm]、[mm]を用いると、次式(2)が得られる。屈折率分布型レンズ群6は、次式(2)を満たすことがより好ましい。
【0093】
【数12】
【0094】
さらに屈折率分布型レンズ群6のうち最も短いレンズのピッチPsは0.5以上であることがより好ましい。この条件を満たす場合には、屈折率分布型レンズ群6内の各レンズ内で少なくとも1つの実像が形成されるので、屈折率分布型レンズ群6全体として、実像のリレー回数が増える。
回転調整が行われない場合には、リレー回数に応じて収差も増大する。しかし、本実施形態の光学系の製造方法によれば、これらの収差を低減できるので、リレー回数が増えるほど収差低減効果が大きくなる。
【0095】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の光学系の製造方法について説明する。
図14は、本発明の第2の実施形態の光学系の製造方法の例を示す模式図である。
【0096】
本実施形態の製造方法は、内視鏡100に用いる光学系のうち、屈折率分布型レンズ群6の調整方法が第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0097】
図14に示すように、本実施形態の製造方法では、調整治具90に代えて、調整治具190が用いられる。調整治具190は、波面測定器95に代えて、光学チャート191(画像評価チャート)が用いられる。光学チャート191としては、屈折率分布型レンズ群6の収差に関する光学性能を評価できる適宜のチャートが用いられる。例えば、光学チャート191としては、解像力チャート、ラインチャート、ドットチャートなどが用いられてもよい。例えば、屈折率分布型レンズ群6の観察対象となる生体組織や工業製品自体を画像評価チャートとして用いて見え具合が調整されてもよい。
図14に示す例では、屈折率分布型レンズ群6の物体面に光学チャート191が配置され、屈折率分布型レンズ群6の光学系を通して、測定者Mが目視で光学チャート191の画像を観察する。ただし、光学チャート191と第2レンズ6Bの間および第1レンズ6Aと測定者Mとの間には、画像観察用に適宜の対物光学系、結像光学系が配置されてもよい。ただし、チャートの目視観察は、このような直接的な目視および画像観察用の光学系を通した目視には限定されない。例えば、測定者Mは、撮像素子等の画像取得素子を用いて出力したチャートの画像を目視してもよい。
測定者Mは、レンズ回転部93を操作して、第2レンズ6Bを回転させることにより、光学チャート191が最も鮮明に見えるように第2レンズ6Bの回転位置を調整する。
その際、画像の鮮明度変化が分かりやすいように、第2レンズ6Bを回転させる間に、測定者Mが光学チャート191を観察することがより好ましい。しかし、測定者Mは、第2レンズ6Bの回転前および回転後に光学チャート191を観察してもよい。
第2レンズ6Bの回転位置の調整が終了したら、第1の実施形態と同様にして、第2レンズ6Bを内筒12に固定する。さらに、第1の実施形態と同様にして、内視鏡100を製造する。
【0098】
このように、本実施形態によれば、目視によって、第2レンズ6Bの回転調整が行われる。本実施形態によれば、高価な波面測定器95などを用いることなく、第2レンズ6Bの回転調整が行える。
本実施形態の製造方法によって、製造された光学系は第1の実施形態と同様、屈折率分布型レンズ自体の収差量を低減することなく、画質の劣化を低減することができる。
【0099】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の光学系の製造方法について説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態の光学系の製造方法の原理を示す模式図である。
【0100】
本実施形態は、内視鏡100に用いる光学系のうち、屈折率分布型レンズ群6の製造方法が第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0101】
本実施形態の製造方法では、予め、レンズ母材60の収差の種類ごとの収差量を測定し、収差量に応じて、第2レンズ6Bの相対回転角φを決定する。
レンズ母材60の収差の測定は、レンズ母材60から適宜の長さを切り出した屈折率分布型レンズを用いて測定される。レンズ母材60の収差の測定は、第1レンズ6Aまたは第2レンズ6Bを用いて測定されてもよい。
レンズ母材60の収差の測定は、例えば、シャックハルトマンセンサなどを用いて行うことができる。
レンズ母材60の収差の測定は、屈折率分布が略一定であると考えられるレンズ母材60の長さの範囲において、少なくとも1回測定されればよい。例えば、レンズ母材60の収差の測定は、レンズ母材60の製造ロットごとに少なくとも1回測定されてもよい。
【0102】
第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bが、N回回転対称の収差を有する場合、相対回転角φを(2M+1)×(360/2N)度(ただし、Mは自然数)とすれば、屈折率分布型レンズ群6全体の収差が低減される。特に、L6A=L6Bの場合、N回回転対称の収差は相殺される。
N回回転対称の収差において、Nが複数存在する場合には、収差量が大きいNを低減するような相対回転角φが選択されることがより好ましい。
【0103】
例えば、レンズ母材60の収差において、図15に示すように、ゼルニケ多項式の項番kが4の非点収差が卓越している場合、項番kの収差は2回回転対称なので、第2レンズ6Bの相対回転角φの最適値は90度の奇数倍である。このような相対回転角φであると、波面の正値領域と、負値領域とが重なり合うため、非点収差が低減される。
【0104】
レンズ母材60の収差において、N回回転対称(Nが一定)の収差の種類が複数存在する場合には、相対回転角φの相対回転によって、それぞれの収差の種類に応じた収差量が、同様に低減される。
例えば、N=2の収差の種類の他例としては、項番kが、6,12,14等の収差が挙げられる。この場合、相対回転角φを90度の奇数倍とすることで、各項番kに対応する収差がそれぞれ同程度に低減される。
【0105】
ここで、相対回転角φによる収差量の低減量を数値シミュレーションした結果について説明する。
図16は、屈折率分布の誤差を有する屈折率分布型レンズにおける光線追跡の一例を示す光線追跡図である。図17は、屈折率分布型レンズの波面収差を表すゼルニケ係数の例を示す模式的な棒グラフである。図17において、横軸は項番k、縦軸はゼルニケ係数aの大きさを表す。ゼルニケ係数aの単位[waves]は設計波長λを表す。図18は、本発明の第3の実施形態の光学系の製造方法の作用を示す模式的なグラフである。図18において、横軸は相対回転角φ、縦軸はストレール比を表す。
【0106】
項番kに対応する非点収差が卓越するような屈折率分布n(x,y)として、下記式(q)を用いた。
【0107】
【数13】
【0108】
ここで、N00、√A、√Aをそれぞれ1.5、0.595、0.605とした。さらに、D=0.4(mm)、L=10(mm)として、光線追跡を行い、レンズ母材60の波面収差を計算した。この場合、P=0.96、NA=0.1であった。
【0109】
図16に光線追跡結果を示す。図16には、yz平面内における軸上光束Fと、像高0.05mmの軸外光束F0.05とが記載されている。第1端面6aにおける画像hhは、第2端面6eの外側の像面Ipにおいて、画像h’’h’’として等倍正立像として結像されている。
像面Ipにおける波面収差のゼルニケ係数が図17の棒グラフで示されている。図17において、黒色の棒線は軸上光束Fの波面収差を示し、白色棒線は軸外光束F0.05の波面収差を示す。
いずれの波面収差も、棒線202、203で示すように項番4の非点収差が卓越していた。
【0110】
次に、このようなレンズ母材60から第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bを切り出して、それぞれの配置を回転調整する場合の光学性能の変化をストレール比によって表した。
ストレール比は、点像強度分布の最大強度比である。ストレール比は1に近いほど波面収差が良好である。ストレール比は、0.8以上であることが実用上好ましいとされている。
本シミュレーションでは、第1レンズ6A、第2レンズ6Bの長さL6A、L6Bは、それぞれL/2=5(mm)とした。
第2レンズ6Bに対応する領域の屈折率分布に関して、式(q)の分布を、0度から180度まで増分10度で回転させて光線追跡を行った。光線追跡から算出されたそれぞれの波面収差から、ストレール比を算出した。この結果が図18に示されている。
【0111】
図18に示すように、相対回転角φが90度のとき、ストレール比は略1になり、略無収差になっていることが分かる。ストレール比の最小値は、相対回転角φが0度および180度であった。本シミュレーションの条件下では、軸上光束Fと、軸外光束F0.05との差はほとんど見られなかった。
項番4の波面収差の対称性から、図18のグラフは、相対回転角φが180度以上360度以下の範囲でもまったく同様になると考えられる。
本結果によれば、レンズ母材60の波面収差と、第2レンズ6Bを90度の偶数倍の角度で回転した場合に収差が最大になることが分かる。これに対して、2レンズ6Bを90度の奇数倍の角度で回転した場合には、波面収差が最小になることが分かる。
【0112】
本シミュレーションの結果によれば、ストレール比が0.8以上になった相対回転角φは、70度以上110度以下であった。したがって、相対回転角φは、90度の奇数倍から±20度の範囲でずれていても、実用上十分な光学性能が得られることが分かる。
すなわち、波面収差測定によって、2回回転対称の収差が卓越していることが知られた場合、相対回転角φは、次式(3)または(4)を満たすことがより好ましい。
【0113】
【数14】
【0114】
1回回転対称の収差が卓越していることが知られた場合、相対回転角φは、次式(5)を満たすことがより好ましい。
【0115】
【数15】
【0116】
3回回転対称の収差が卓越していることが知られた場合、相対回転角φは、次式(6)、(7)、(8)のいずれかを満たすことがより好ましい。
【0117】
【数16】
【0118】
4回回転対称の収差が卓越していることが知られた場合、相対回転角φは、次式(9)、(10)、(11)のいずれかを満たすことがより好ましい。
【0119】
【数17】
【0120】
また、あらかじめ特定の収差の低減を目的とすることが決まっている場合は、事前の測定を行わず式(3)から(11)に則って、相対回転角φを決めてよい。
【0121】
次に、収差の種類が複数の場合の例における収差低減効果について数値シミュレーションに基づいて説明する。
図19は、収差の種類が複数の場合の例における収差低減効果を示す模式的なグラフである。図19において、横軸は相対回転角φ、縦軸は全体のRMS波面収差量[waves]を表す。単位[waves]は設計波長λを表す。
【0122】
複数の種類の波面収差を発生しうる屈折率分布n(x,y)として、下記式(s)を用いた。
【0123】
【数18】
【0124】
式(s)に基づいて、互いに異なる屈折率分布を有するモデル1、2、3を作成した。各モデルに用いたパラメータを下記[表2]に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
モデル1、2、3のそれぞれのレンズ母材60に関して、光線追跡を行い、各レンズ母材60の波面収差を計算した。下記[表3]にモデル1、2、3の項番kごとの波面収差(RMS)を示す。記載のない項番の波面収差は0である。
【0127】
【表3】
【0128】
[表3]に示すように、モデル1において卓越する波面収差は、k=8の収差(3次のコマ収差、1回回転対称)であった。モデル2において卓越する波面収差は、k=4の収差(非点収差、2回回転対称)であった。モデル3において卓越する波面収差は、k=4、8の収差の両方であった。それぞれの卓越する波面収差の収差量は、約0.024であり、それぞれ略等しかった。
モデル1~3は、共通して、略等しい球面収差(k=13)を有していた。
【0129】
次に、このようなレンズ母材60から第1レンズ6Aおよび第2レンズ6Bを切り出して、それぞれの配置を回転調整する場合の光学性能の変化をシミュレーションした。ただし、第1レンズ6A、第2レンズ6Bの長さL6A、L6Bは、それぞれL/2=12.5(mm)とし、回転角の増分は30度とした。
回転調整のシミュレーション方法は、図18と同様とした。この結果を図19に示す。図19において、曲線211、212、213は、それぞれモデル1、2、3の結果を示す。
【0130】
曲線211に示すように、モデル1では相対回転角φが180度のとき、収差量が最小になった。これは、k=8のコマ収差が1回回転対称だからであると考えられる。収差量が0にならなかったのは、モデル1が球面収差を有しているためである。球面収差は軸対称収差なので、第2レンズ6Bの回転によって収差量が変化することはない。
【0131】
曲線212に示すように、モデル2では相対回転角φが90度および270度のとき、収差量が最小になった。これは、k=4の非点収差が2回回転対称だからであると考えられる。収差量が0にならなかったのは、モデル1と同程度の球面収差を有しているためである。
【0132】
曲線213に示すように、モデル3は、k=4、8の収差を同程度有するので、相対回転角φが0度および360度(基準回転位置)のときの収差量がモデル1、2よりも大きくなった。
相対回転角φが90度および270度の収差量はモデル2の収差量と略一致した。これはφが90度および270度の場合、コマ収差の収差量が略0になったからであると考えられる。
相対回転角φが180度の収差量はモデル1の収差量と略一致した。これはφが180度の場合、非点収差の収差量が略0になったからであると考えられる。
さらに、曲線213が示す収差量は、各相対回転角φにおける曲線211、212の収差量の和に略等しくなっている。
このため、モデル3のように、Nが異なる複数のN回回転対称の収差を有する場合、個々の収差が卓越する場合の収差量の分布を重ね合わせればよいことが分かる。
このため、モデル3において、収差量が最小となるのは、曲線211、212の交点の角度の近傍であると予想できる。図19の場合には、曲線211、212の交点は、120度および240度の近傍に形成され、曲線213の最小値を与える相対回転角φと略一致している。
したがって、複数の種類の収差が混在する場合、全体の収差を最小化する相対回転角φは、混在する収差のみが卓越する場合の収差の変化量を数値シミュレーションなどによって求めた後、それを合成することによって、予測できる。
【0133】
屈折率分布型レンズにおいてコマ収差と非点収差は製造上特に発生しやすい非軸対称の収差であり、それぞれが同程度発生する場合も多い。このような場合、相対回転角φを、例えば、120度または240度とすれば、全体の収差を最小値に近づけることができることが分かる。
【0134】
以上説明したように、本実施形態の光学系の製造方法によれば、予めレンズ母材60において卓越する収差の種類を測定などして調べておき、その収差の種類に応じて収差を最小化可能な相対回転角φに基づいて第2レンズ6Bを配置する。これにより、屈折率分布型レンズ群6の収差が最小値または最小値の近傍まで低減される。
本実施形態の製造方法によれば、回転調整を行うことなく屈折率分布型レンズ群6の収差を低減できるので、製造コストを低減することができる。
その際、図18に基づいて検討したように、相対回転角φの設定精度は、±20度程度の余裕がある。このため、例えば、第2レンズ6Bの基準回転位置をマーキングしておけば、目視によって回転位置を設定することも容易である。
【0135】
本実施形態の光学系の製造方法によれば、第1の実施形態と同様、屈折率分布型レンズ自体の収差量を低減することなく、画質の劣化を低減することができる。
【0136】
なお、上記各実施形態では、屈折率分布型レンズ群6を含む光学系が硬性鏡に分類される内視鏡100に用いられた場合の例で説明した。しかし、屈折率分布型レンズ群6は、内視鏡以外の適宜の光学装置、針型顕微鏡、光ファイバーのカップリング装置、ファイバコリメーターなどに用いられてもよい。
【0137】
上記各実施形態では、第1レンズ6Aが内筒12に接着固定された場合の例で説明した。しかし、第1レンズ6Aは、接着以外の固定方法によって、内筒12に固定されてもよい。例えば、第1レンズ6Aは、内筒12に圧入、カシメなどによって固定されてもよい。
【0138】
上記各実施形態では、屈折率分布型レンズ群6内の各レンズが内筒12等に接着固定された場合の例で説明した。しかし、例えば屈折率分布型レンズ群6の各レンズ同士は、回転調整完了後に互いに接着されてもよい。このような場合には、内筒12は必ずしも必須ではない。
【0139】
上記各実施形態では、屈折率分布型レンズ群6内の各レンズが内筒12等に接着固定されるなどして、互いの相対回転角が固定された場合の例で説明した。しかし、少なくとも1つのレンズは、ユーザーが使用時に微調整するために他のレンズに対して相対回転できるようにしてもよい。
例えば、少なくとも1つのレンズは、接着されることなく内筒12等に回転可能に保持されていてもよい。
例えば、少なくとも1つのレンズは、未硬化の接着剤を介して内筒12等の部材または他のレンズと隣接して配置され、ユーザーによる微調整後に、硬化できるようにしてもよい。
【0140】
上記各実施形態では、第1レンズ6A、第2レンズ6Bがレンズ母材60の外径と同一の円柱状に形成された例で説明した。
しかし、第1レンズ6A、第2レンズ6Bは、レンズ母材60から切り出された後、内部の光伝送に影響しない範囲であれば、外周部に除去加工、付加加工が施されてもよい。
除去加工の例としては、外周部の一部または全部の径を縮径する加工、外周部に周方向または軸方向に延びる溝部を形成する加工、光軸外周部の一部または全部の断面形状をD形にする加工、矩形にする加工などが挙げられる。
付加加工の例としては、外周部に肉盛りする加工、外周部に凸形状を付加する加工、外周部に粗面を付加する加工、外周部にリング状部材をはめ込む加工、黒色塗料を付加する加工などが挙げられる。
【0141】
上記各実施形態では、屈折率分布型レンズ群6が内筒12に保持される場合の例で説明した。しかし、屈折率分布型レンズ群6は外筒11に直接保持されていてもよい。
【0142】
上記第3の実施形態では、第2レンズ6Bを配置すべき回転位置の相対回転角φを求めて、相対回転角φの位置に第2レンズ6Bを配置する例で説明した。しかし、求められた相対回転角φに第2レンズ6Bが配置された後、第1および第2の実施形態と同様にして、相対回転角φの位置から、より最適な回転位置に向けて回転位置の調整を行ってもよい。この場合、調整が微小量になるので、第1および第2の実施形態に比べて調整時間を短縮することが可能である。
【0143】
上記第2の実施形態では、測定者Mが目視によって光学チャート191の画像を観察する例で説明した。しかし、屈折率分布型レンズ群6を通して光学チャート191の画像を撮像し、その画像データを画像処理することによって、画像コントラストなどの評価量を算出するようにしてもよい。この場合、画像の自動判定が可能になる。
【0144】
以上、本発明の好ましい各実施形態を説明したが、本発明はこれら各実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0145】
上記各実施形態によれば、屈折率分布型レンズの分布精度を高めることで収差量を低減したり,他の光学素子により屈折率分布型レンズの収差を補正したりすることなく、画質の劣化を低減することができる光学系を提供できる。
【符号の説明】
【0146】
5 対物光学系(光学系)
6 屈折率分布型レンズ群(光学系)
6A 第1レンズ
6B 第2レンズ
7 結像光学系(光学系)
11 外筒
12 内筒
60 レンズ母材
60A、60B 切断片
90、190 調整治具
95 波面測定器
96 接着剤
100 内視鏡
191 光学チャート
C 中心軸線
、F0.05 軸外光束
軸上光束
M 測定者
00 軸上屈折率
O、O60、O、O 光軸
S 像面
T 被検体
φ 相対回転角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19