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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ライン障害シグネチャ解析
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20230201BHJP
   G01R 29/00 20060101ALI20230201BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20230201BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R29/00 E
G01R31/12 B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019532754
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017067030
(87)【国際公開番号】W WO2018112462
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】62/435,621
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/844,235
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】プラサナ ユー ラジャゴパル
(72)【発明者】
【氏名】カリクッパ エム スレーニヴァサ
(72)【発明者】
【氏名】アミット ジー クンバシ
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-161919(JP,A)
【文献】特開2006-170988(JP,A)
【文献】特表2005-532549(JP,A)
【文献】特開2011-075555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0066593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/58
G01R 29/00
G01R 31/08
G01R 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
基本周期的周波数を含む電気的モニタ信号の高周波事象の数のインディケーションを生成するように配される時間ドメインアナライザであって、前記高周波事象が、前記基本周期的周波数より高い周波数を含み、前記基本周期の半サイクル未満である相関時間期間に相関している、前記時間ドメインアナライザと、
前記基本周期的周波数より高い前記電気的モニタ信号の周波数に応答して周波数帯域情報を生成するように配される周波数ドメインアナライザであって、前記高周波事象の数のインディケーションに応答してサンプリングされる波セグメントサンプルを処理するためにアクティベートされるように配されるプロセッサを含み、前記周波数帯域情報が前記相関時間期間に相関している、前記周波数ドメインアナライザと、
前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを監視し、前記高周波事象の数の監視されたインディケーションと前記生成された周波数帯域情報と前記相関時間期間とに応答してフラグを生成するように配される障害検出器と、
を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記電気的モニタ信号のゼロ交差を判定し、前記電気的モニタ信号を波セグメントに分割するように配される波セグメント決定器を更に含み、
前記相関時間期間が前記波セグメントの少なくとも1つに関連する、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
高周波事象の数の閾値と、障害状態を識別するための周波数帯域情報の閾値とを含むシグネチャライブラリを更に含み、
前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを監視することが、前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを、事象と障害状態を識別するための周波数帯域情報とのそれぞれの閾値に対して比較することを含む、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記基本周期的周波数が電力ライン信号の電力ライン周波数であり、前記電気的モニタ信号が前記電力ライン信号に応答して生成される、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記波セグメントの少なくとも1つが、前記電気的モニタ信号のゼロ交差に近接して時間的に整合される、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記障害検出器が、前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを監視し、前記電気的モニタ信号上に前記高周波事象が生じた後に前記基本周期の半サイクル未満に前記フラグを生成するように配される、装置。
【請求項7】
請求項に記載の装置であって、
前記周波数ドメインアナライザのプロセッサが、前記基本周期的周波数電気的モニタ信号の一部の間にディアクティベートされるように更に配される、装置。
【請求項8】
請求項に記載の装置であって、
障害検出器が、前記周波数ドメインアナライザのプロセッサが命令を実行しているときにディアクティベートされ得る汎用プロセッサを含む、装置。
【請求項9】
請求項に記載の装置であって、
前記周波数ドメインアナライザのプロセッサが、前記波セグメントサンプルをFFTするように更に配される、装置。
【請求項10】
請求項に記載の装置であって、
前記周波数ドメインアナライザのプロセッサが、前記波セグメントサンプルをバンドパスフィルタするように更に配される、装置。
【請求項11】
請求項に記載の装置であって、
前記障害検出器が、前記電気的モニタ信号によって監視される電力ラインの障害状態のための閾値を示すための時間ドメインと周波数ドメインシグネチャとを含むシグネチャライブラリを含む、装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、
電力ライン信号の変動に応答して前記電気的モニタ信号を生成するように配されるセンサを更に含み、
前記電力ライン信号の変動が前記電力ライン信号の障害状態に応答して生成される、装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置であって、
前記周波数ドメインアナライザがプロセッサを含み、前記障害検出器がプロセッサを含み、前記周波数ドメインアナライザのプロセッサと前記障害検出器のプロセッサとが単一基板上に形成される、装置。
【請求項14】
システムであって、
基本周期的周波数を含む電気的モニタ信号の高周波事象の数のインディケーションを生成するように配されるコンパレータ及びカウンタを含む時間ドメインアナライザであって、前記高周波事象が、前記基本周期的周波数より高い周波数を含み、前記基本周期の半サイクル未満である相関時間期間に相関している、前記時間ドメインアナライザと、
前記高周波事象の数のインディケーションに応答してアクティベートされ、前記基本周期的周波数より高い前記電気的モニタ信号の周波数に応答して周波数帯域情報を生成するように配される第1のプロセッサを含む周波数ドメインアナライザであって、前記周波数帯域情報が前記相関時間期間に相関している、前記周波数ドメインアナライザと、
前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを監視し、前記高周波事象の数の監視されたインディケーションと前記生成された周波数帯域情報と前記相関時間期間とに応答してフラグを生成するように配される第2のプロセッサを含む障害検出器と、
を含む、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、
前記第1及び第2のプロセッサが、同じ基板上に形成される、システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムであって、
前記電気的モニタ信号のゼロ交差を判定し、前記電気的モニタ信号を波セグメントに分割するように配される波セグメント決定器を更に含み、
前記相関時間期間が前記波セグメントの少なくとも1つに関連する、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムであって、
高周波事象の数の閾値と障害状態を識別するための周波数帯域情報の閾値とを含むシグネチャライブラリと、
前記生成されたフラグに応答して電気接続を遮断するように配されるトリップ機構と、
を更に含み、
前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを監視することが、前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを、事象と障害状態を識別するための周波数帯域情報とのそれぞれの閾値に対して比較することを含む、システム。
【請求項18】
方法であって、
基本周期的周波数を含む電気的モニタ信号の高周波事象の数のインディケーションを生成することであって、前記高周波事象が、前記基本周期的周波数より高い周波数を含み、前記基本周期の半サイクル未満である相関時間期間に相関している、前記インディケーションを生成することと、
前記高周波事象の数のインディケーションに基づいて、前記基本周期的周波数より高い前記電気的モニタ信号の周波数に応答して周波数帯域情報を生成するためにプロセッサをアクティベートすることであって、前記周波数帯域情報が前記相関時間期間に相関している、前記プロセッサアクティベートすることと、
前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを監視することと、
前記高周波事象の数の監視されたインディケーションと前記生成された周波数帯域情報と前記相関時間期間とに応答してフラグを生成することと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを、事象と障害状態を識別するための周波数帯域情報とのそれぞれの閾値に対して比較することを更に含み、
前記事象と前記障害状態を識別するための周波数帯域情報とのそれぞれの閾値が、前記高周波事象の数のインディケーションと前記生成された周波数帯域情報とを、前記事象と前記障害状態を識別するための周波数帯域情報とのそれぞれの閾値と比較するために配される少なくとも1つのプロセッサによってアクセス可能なメモリに格納される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配線及び/又はケーブリングなどの導電体は、電気エネルギーを搬送し、電気回路及びシステムを給電するために配置される。導体の配置における欠陥(不適切な接触、導体要素における破断又は隙間、及び短絡など)は、導電体によって搬送される電力の中断につながる恐れがある。このような中断には、給電されている電気回路及びシステムの適切な動作を中断及び/又は不能にし得る障害(過渡障害及びアーク障害など)が含まれ得る。アーク障害及び過渡障害はいずれも、元の電力信号の基本周期的波形に重複される高周波成分を含む。しかし、周波数ドメイン解析を用いて電力信号の周波数成分を求めるには労力及び時間がかかり得る。
【発明の概要】
【0002】
説明される例において、時間ドメインアナライザが、基本周期的周波数を含む電気的モニタ信号の高周波事象の数のインディケーションを生成するように配される。高周波事象は、基本周期的周波数より高い周波数を含む。周波数ドメインアナライザが、基本周期的周波数より高い電気的モニタ信号の周波数に応答して周波数帯域情報を生成するように配される。障害検出器が、高周波事象の数のインディケーション及び生成された周波数帯域情報を監視し、高周波事象の数の監視されたインディケーション及び生成された周波数帯域情報に応答して障害フラグを生成するように配される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】例示のライン障害シグネチャアナライザのブロック図である。
【0004】
図2】例示のライン障害シグネチャアナライザの電気的モニタ信号から導出されるデータの例示の周波数ドメイン処理及び時間ドメイン処理のデータフロー図である。
【0005】
図3】例示の周波数ドメインアナライザの例示のバンドパスフィルタのパラメータを示す周波数応答図である。
【0006】
図4】例示のライン障害シグネチャアナライザのデジタル的にサンプリングされた波形情報の例示の重複するメモリ動作を示すプロセスフロー図である。
【0007】
図5】例示のライン障害シグネチャアナライザのアナログ-デジタルコンバータデータの例示のFFT周波数ドメイン処理の波形図である。
【0008】
図6】例示の基本周期的波形の周期の波セグメントの間に検出される例示の障害信号情報の波形図である。
【0009】
図7】基本周期的波形の例示の周期の波セグメントにわたる例示の障害誘導信号攪乱の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記の説明において、(a)「部分」という用語は、全体部分又は全体部分より少ない部分を含み得、(b)「ノイズ」という用語は、障害状態の間に生じる電弧又は他の過渡事象に起因する、及び/又は、これらを示すための信号攪乱を含み得る。
【0011】
本明細書において、電気信号を監視する効率的な技法及び回路を説明する。例えば、交流(AC)電気信号(及びそのコンジット)は、アーク障害又は過渡障害などの障害になり得る状態にさらされる。センサは、電気信号を監視するため監視電気信号を生成し得る。監視電気信号は、受信された電気信号が障害状態を示しているか否かを判定するため、時間及び/又は周波数ドメインにおいて解析され得る。障害状態は、初めに生成される信号に重ね合わされる(例えば、織り込まれるか、又は他の方法で歪められる)高周波成分によって示され得る。受信された電気信号内の周波数成分は、アナログデジタルコンバータ(ADC)によって捕捉されるデータに応じて判定され得る。捕捉されたデータの時間ドメイン情報は、リアルタイム有限インパルス応答(FIR)フィルタリング又は高速フーリエ変換(FFT)に応答して周波数ドメイン情報に変換され得る。
【0012】
時間-周波数ドメイン変換は、周波数解析データを生成し、このデータから低エネルギーアクセレレータ(LEA)及び/又はデジタル信号プロセッサ(DSP)などの低電力算術プロセッサによって信号内の特定の周波数成分が検出され得る。LEA/DSPは、ミックスドシグナルプロセッサ(MSP)などの汎用プロセッサも含み得る、異種マルチコアプロセッサに含まれ得る。LEAは、低電力モードを含み、速やかにスリープモードに入り得るか、又は速やかに「起動」され得る。MSPは、類似の電力節減機能も含み得る。
【0013】
一例において、障害シグネチャアナライザが、周波数ドメインアナライザ及び時間ドメインアナライザを含む。下記で説明する例において、周波数ドメインアナライザ(これは、例えば、低電力モードにおけるLEA動作を含み得る)は、概して、時間ドメインアナライザの汎用プロセッサよりも消費する電力が小さい。周波数ドメインアナライザは、障害を示す周波数が存在するか否かを判定するため、受信した電気信号を評価し得る。周波数ドメインアナライザは、監視された信号の基本周波数波形の周期の間に、このような評価を複数回実施し得る。したがって、周波数ドメインアナライザは、基本周波数波形の特定部分(例えば、タイムスライス又は「波セグメント」)に対する障害インディケーションの発生を精密に示し得る。
【0014】
障害インディケーションが(例えば、特定の波セグメントの間の選択される周波数帯域において充分なエネルギーの存在を検出することによって)検出されると、「起動(wake)」信号が任意選択でアサートされ得、それによって、時間ドメインアナライザのプロセッサがアクティベートされる。時間ドメインアナライザのプロセッサは(このようにアクティベートされると)、障害フラグがアサートされるべきかを判定するため、時間ドメイン事象を周波数ドメイン情報及び波セグメント番号と比較するように配される。アクティブ周期の終わりに、時間ドメインアナライザのプロセッサは、スリープ又は低電力モードに入るように指令され得、それによって、そうしない場合に連続的にアクティブなプロセッサによって消費される電力を節減し得る。さらなる電力量を節減するために、周波数ドメインアナライザのプロセッサは、任意選択で、各波セグメントの一部の間のみ、及び/又は、特定の波セグメントの間のみアクティベートされ得る。特定の波セグメントは、監視された信号の基本周波数波形のゼロ交差に近接する(下記で説明する)波セグメントを含むように選択され得る。
【0015】
或る例において、周波数ドメインアナライザにおける時間ドメインアナライザの一部が、マルチコアプロセッサの汎用プロセッサ(例えばMSP)によって実装され得る。マルチコアプロセッサは、電力集中部分(例えば、汎用プロセッサ)及び電力控え目部分(例えばLEA)を含み得る。本明細書において説明するように、マルチコアプロセッサの電力集中部分(これは汎用プロセッサを含み得る)は、任意選択で、電力控え目部分(これは集積された低エネルギーアクセレレータ数学エンジン/汎用プロセッサ及びADCを含み得る)によって生成される信号に応答してアクティベート及びディアクティベート(例えば、1つのパワーモードから別のパワーモードに移行)され得る。この例において、LEAは、或る周波数帯域における閾値トリガを超えるレベルの検出に応答して「起動」信号をアサートし得る。
【0016】
動作において、受信された電気信号の波形情報がADC(これはマルチコアプロセッサの基板に統合され得る)によって捕捉される(例えば、デジタル化される)。次いで、捕捉された波形情報は、マルチコアプロセッサ(例えば、マルチコアプロセッサ基板)上に及び/又はマルチコアプロセッサから離れて配置される共用メモリ(例えば、スタティック又はダイナミックランダムアクセスメモリ)に転送(例えば、保存)される。マルチコアプロセッサの電力控え目部分は、捕捉された波形情報のサンプリングされたセットに対してFIRフィルタリング(又は高速フーリエ変換)を実行するための回路要素(例えば、DSP及び/又はLEA)を含む。各サンプリングされたセットは、波セグメント番号に関連付けられ、そのため、障害のインディケーションの時間的な場所が、副次的基本時間期間ベースで判定及び評価され得る。
【0017】
メモリへの又はメモリからの、MSPの電力集中部分のコプロセッサに対する信号情報の転送は、「起動」信号に応答して比較的高速で実施され得る。例えば、信号情報は、捕捉された波形データ(これは、例えば、データバスを介してDSPに転送され得る)、及び、周波数解析データ(これは、例えば、データバスを介してDSPからメモリに転送され得る)を含む。本明細書において説明される様々なメモリは、処理のためのデータのデータ転送時間を短くするために、実装ダイレクトメモリアクセス(DMA)技法を用いてアクセスされ得る。
【0018】
本明細書において説明する例において、捕捉された波形データは、比較的高いデータレート(例えば、毎秒約200,000サンプル)でDSPに転送される。周波数ドメインアナライザは、捕捉された波形データに対してFIR演算をリアルタイムで(例えば、要求に応じて)実行する。FIR演算の結果(例えば、特定の周波数帯域又は「ビン」のエネルギーを含み得る周波数解析データ)は、さらなる解析のためにメモリに格納される。格納された周波数解析データは、周波数解析データが、障害状態を示し得る或る周波数成分の存在又は相対的な欠如のインディケーションを含むか否かを判定するために、(例えば、汎用プロセッサによって)さらに解析され得る。
【0019】
本明細書において説明する例において、時間ドメインアナライザは、受信された電気信号のより高い周波数成分を判定するように配される。このような配置により電力が節減される。これは、受信された電気信号のより高い周波数成分が、周波数ドメインアナライザの部分がディアクティベートされる時間の間に判定され得るからである。より高い周波数成分の判定によりカウンタが増分され得、そのため、カウンタのカウント値に応答して「起動」信号がアサートされ得る。カウンタは、電力を節減するために個別の論理回路を用いて実装され得、そのため、汎用プロセッサがディアクティベートされるときカウント動作が実施される。汎用プロセッサは、「起動」信号に応答してアクティベートされ得、そのため、受信された電気信号の少なくとも1つの選択される周波数帯域のエネルギー成分が評価され得る。
【0020】
図1は、例示のライン障害シグネチャアナライザのブロック図である。アナライザ100は、概して、波形センサ112(これは、例えば、電力ライン110によって搬送される電流の振幅を示すための電気的モニタ信号を生成するように配される)、及びライン障害シグネチャアナライザシステム120(これは、例えば、電気的モニタ信号を解析して電力ライン110に関連する潜在的な障害状態を判定するように配される構成要素を含む)を含む。
【0021】
波形センサ112は、通常、システム120から離れた場所に配置される。例えば、波形センサ120は、波形センサ112のセンサが、電力ライン110を介して搬送される電力信号に応答して波形を生成し得るように、電力ライン110の近隣に位置し得る。波形センサ112は、電流トランス(XFMR)114及び直列シャント抵抗器116のいずれか又は両方を含み得る。電流トランス114は、電力ライン110からの電力を誘導結合し、電力ライン110の電流の変化を示す経時変化する電圧を生成するように配される。直列シャント抵抗116は、電力ライン110の電流に応答して電圧を生成するように配される。
【0022】
電力ライン110は、第1の導体「ライン」(L)及び第2の導体「ニュートラル」(N)を含む。非障害状態の間、第1の導体Lを流れる交流電流は、第2の導体Nを流れる電流と等しいが方向が逆である。障害状態(例えば、アーク障害及び過渡障害)の間、交流電流の基本正弦波形は高周波エネルギーによってひずむ。高周波エネルギーは、電力ライン110によって搬送される電力の中断を示す。このような中断は有害であり得る。
【0023】
電力の中断に潜在的に起因する損傷を低減するために、電気的モニタ信号(これは、例えば、波形センサ112によって生成され、障害状態によってもたらされる高周波情報を含む)は、ライン障害シグネチャ分析システム120に結合される。これに応答して、ライン障害シグネチャ分析システム120のサブシステムが、電力ライン110における障害状態を示す高周波情報の存在を判定するため、受信した電気的モニタ信号を解析する。
【0024】
或る例において、電力ライン110の電気絶縁が損傷し得、そのため、電力ライン信号の電力ライン周波数(例えば60又は50Hz)で提示される正弦波形を中断する電圧アーク又は他の過渡障害が生じる。電圧アーク又は他の過渡障害により、高周波成分がライン電力に導入される。波形センサ112は、導入された高周波エネルギーを示す高周波情報を含むような電気的モニタ信号を生成する。ライン障害シグネチャ分析システム120のサブシステムが、含まれる高周波情報を検出し得、電力ライン110における障害状態を示す高周波情報の存在に応答して、(例えば、電気接続を切断するためにトリップ機構118が「外される」べきであることを示すために)障害フラグをアサートし得る。
【0025】
電力ライン110は、ライン障害シグネチャ分析システム120に給電するための電力を提供し得る。例えば、ライン障害シグネチャ分析システム120の電力コンバータ122が、電力ライン110の「N」導体から電力を受け取り、それに応答して5V出力を生成するように結合される。5V出力は、3.3ボルト出力(例えば、低電圧回路要素を給電するのに適したVCC)を生成するように配される低ドロップアウト電圧レギュレータ(LDO VREG)124の入力に結合される。第2の低ドロップアウト電圧レギュレータが、第1の低ドロップアウト電圧レギュレータがアナログVCC(AVCC)を生成するように結合され得、第2の低ドロップアウト電圧レギュレータがデジタルVCC(DVCC)を生成するように結合され得るように、含まれる。アナログ接地(AVSS)及びデジタル接地(DVSS)が、電圧ライン110の「L」導体に結合され得、そのため、電力ライン110の「N」導体から受信される電流が電力ライン110の「L」導体に戻される。
【0026】
上記で紹介したように、波形センサ112は、電流トランス(XFMR)114及び直列シャント抵抗116のいずれか又は両方を含み得る。電流トランス114(存在する場合)及び直列シャント抵抗116(存在する場合)はそれぞれ、レベルシフタ130の第1及び第2の入力にそれぞれ結合される第1及び第2の出力(例えば、差動信号の「終端」)を含む。レベルシフタ130の第2の入力は、電圧基準132に抵抗結合される。レベルシフタ130は、振動波形が、VCCと接地電位の中間の「ゼロ」値(これは、例えば、1.6ボルトの仮想接地、平均値、又は中間値である)を含むように、電気的モニタ信号をレベルシフトするように配される。したがって、レベルシフトされた電気的モニタ信号の信号範囲は、3.3ボルト動作電圧に応答して動作する回路要素に対して最適化される。
【0027】
レベルシフトされた電気的モニタ信号は、周波数ドメインアナライザ140の入力に結合され、時間ドメインアナライザ160の入力に結合される。一般に、周波数ドメインアナライザ140は、レベルシフトされた電気的モニタ信号の低周波数情報を評価するように配され、時間ドメインアナライザ160は、レベルシフトされた電気的モニタ信号の高周波数情報を評価するように配される。
【0028】
周波数ドメインアナライザ140は、ローパスフィルタ(LPF)142、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)144、デジタル信号プロセッサ(DSP)146、並びに、波セグメント決定器150を含み、DSP146は、ADC144及び外部プロセッサ及びデバイスによってアクセスされ得る近接して結合されるメモリ148を含む。
【0029】
ローパスフィルタ142は、レベルシフトされた電気的モニタ信号をローパスフィルタリングし、低周波成分電気的モニタ信号を生成するように配される。低周波成分電気的モニタ信号は、デジタル化のためADC144の入力に結合される。また、レベルシフトされた電気的モニタ信号をローパスフィルタリングすることにより、ナイキストサンプリング定理に違反しないように、ADC144によってデジタル化される入力信号を「アンチエイリアシング」する。
【0030】
ADC144は、低周波成分電気的モニタ信号をデジタル化するように配される。或る例において、ADC144は、毎秒200,000サンプルのサンプリングレートで12ビットサンプルを生成する。ADC144は、DSP146のメモリ148に格納させるため、出力サンプルを(並列又は直列に)ストリーミングするように配される。したがって、ADC144の出力サンプルのストリームは、低周波成分電気的モニタ信号(例えばデジタル)信号である。出力サンプルはリアルタイムでストリーミングされ得、そのため、低周波情報が、レイテンシが低減された状態で(例えば、ライン周波数の半周期未満で障害が検出され得るように)DSP146によって抽出され処理され得る。
【0031】
波セグメント決定器150は、低周波成分電気的モニタ(例えばアナログ)信号を受け取るように結合される。本明細書において説明するように、アーク障害及び過渡障害は、ライン電力の正弦波形のゼロ交差に関連する時間期間の間に生じる傾向がある。波セグメント決定器150は、低周波成分電気的モニタ信号を評価して、基本周波数(例えばライン周波数)の周期的波形の瞬時位相角を判定する。例えば、基本周波数の周期的波形の瞬時位相角は、ゼロ交差の判定及びタイマ(例えばクロックカウンタ)の出力に応答して判定され得、そのため、DSP146によって生成される高周波事象の数及び周波数帯域情報が、(例えば、少なくとも1つの波セグメントに関連する)或る時間期間と相関される。したがって、波形セグメントは、基本周期的周波数の半周期未満の時間期間とし得、電気的モニタ信号のゼロ交差に近接して時間的に整合され得る。
【0032】
低周波成分電気的モニタ信号の基本周波数の周期的波形が8セグメントに分割される正弦波形である場合、ゼロ交差が、基本周波数の周期的波形の第1、第4、第5、及び第8セグメントの近隣で生じる。波セグメントの奇数を用いて周期的波形を分割する場合、ゼロ交差は、或る波セグメントの間に生じ得る。ゼロ交差の近くにあるか又はゼロ交差を含む波セグメントが、ゼロ交差に「近接する」と説明され得る。(セグメント化は、少なくとも図2図6、及び図8を参照して下記に記載される。)
【0033】
電力を節減するために、DSP146は、レベルシフトされた電気的モニタ信号から時間ドメインアナライザ160によって抽出される高周波情報に応答して潜在的にアクティベート又はディアクティベートされるだけでなく、ゼロ交差の近くにあるか又はゼロ交差を含む波セグメントから取得されるサンプルに応答してアクティベート又はディアクティベートされ得る。例えば、DSPは、各波セグメントに、ADCサンプルから周波数情報を抽出するために充分な時間期間(例えば、波セグメントの周期未満)にわたってアクティベートされ得る。別の例において、DSPは、ゼロ交差に近接する波セグメントの間のみアクティベートされ得る。
【0034】
時間ドメインアナライザ160は、ハイパスフィルタ(HPF)162、コンパレータ(COMP)164又は166、及び事象カウンタ168を含む。或る例において、時間ドメインアナライザ160は、所与の波セグメントの間、レベルシフトされた電気的モニタ信号において生じる高周波事象を計数することによって、レベルシフトされた電気的モニタ信号の高周波情報を評価するように配される。
【0035】
ハイパスフィルタ162は、レベルシフトされた高周波成分電気的モニタ信号をハイパスフィルタリングし、高周波成分電気的モニタ信号を生成するように配される。高周波成分電気的モニタ信号は、コンパレータ164又はコンパレータ166などのコンピュータの入力に結合される。一例において、コンパレータ166は、マルチコアプロセッサ126と同じ基板上にあり、(例えば、設計時又は構成時に)高周波成分電気的モニタ信号を処理するように結合され得る。別の例において、「外部の」(例えば、マルチコアプロセッサ126の基板に対して外部の)コンパレータ164は、高周波成分電気的モニタ信号を処理するように結合され得る。
【0036】
コンパレータ166(又はコンパレータ164)は、高周波成分電気的モニタ信号を電圧基準(閾値165など)と比較するように構成される。電圧基準は、デジタル的に制御されるアナログ電圧とし得、そのため、事象の存在を判定するために、プログラマブルな閾値が特定され得る。例えば、高周波情報は、例えば、電圧スパイク又は過渡電圧(図6の入力信号601として示されるものなど)として示され得る。プログラマブル閾値より高周波成分電気的モニタ信号が大きいとき、コンパレータ166(又はコンパレータ164)は、コンパレータ出力をハイにトグル切り替えし、高周波成分電気的モニタ信号が、プログラマブル閾値未満となるとき、コンパレータ166(又はコンパレータ164)は、コンパレータ出力をローにトグル切り替えする。
【0037】
事象カウンタ168は、コンパレータ166(及び/又はコンパレータ164)によって生成されるパルスを計数するように配される。例えば、事象カウンタ168は、電気的モニタ信号の位相角が波セグメント境界に近接するとの(例えば、波セグメント決定器150又はDSP146による)判定に応答してリセットされ得る。したがって、或る波セグメント内で生じる事象が計数され得る。或る実施形態において、DSP146は、事象閾値を超える計数された事象数に応答してアクティベートされ得る。或る実施形態において、DSP146は、電気的モニタ信号のゼロ交差に近接する波セグメントの間の事象閾値を超える計数された事象数に応答してアクティベートされ得る。或る例において、事象カウンタ168は、各事象が生じたとされる場合のログを維持し得、そのため、波セグメントの周期内の時間が、高い特定度で判定され得る。事象カウンタは、或る波セグメントの間の閾値165を超える高周波成分のエネルギーレベルを示す最終計数又は値として高周波事象の数のインディケーションを提供するように配され得る。
【0038】
したがって、時間ドメインアナライザ160の部分(低側電力ハードウェア離散論理回路など)が、(例えば、高周波)事象が生じている波セグメントの間にのみ、及び/又は、ゼロ交差(これは、アーク障害がより生じやすい時間)に近接する波セグメントの間にのみ、DSPをアクティベートさせることによって電力を節減し得る。このようにアクティベートされる場合、DSP146は、(例えば、その中で生じる高周波事象の数によって示される)選択される波セグメントからのサンプリングデータから周波数情報を抽出し得る。
【0039】
汎用プロセッサ170は、メモリ172、及び障害検出器174を実装するための実行可能な命令を含む。電力を節減するため、汎用プロセッサ170は、選択される時間の間アクティベートされ得る。例えば、汎用プロセッサ170は、DSP146のアクティベーションに応答してアクティベートされ得る。また、汎用プロセッサ170は、DSP146の結果を処理する(これは、例えば電力を節減する)ための(「ちょうど間に合う」)時間にアクティベートされ得る。概して、プロセッサ170は、次の波セグメントへの遷移又は特定の波セグメント(ゼロ交差に近接する波セグメントなど)への遷移の判定に応答してアクティベートされ得る。
【0040】
汎用プロセッサ170は、或る波セグメントに関連する高周波事象の数、波セグメント番号(例えば、基本周期の特定の波セグメントの順序性)、及びDSP146によって判定される周波数情報(例えば、周波数帯域情報)を評価するように配される。この判定に応答して、汎用プロセッサは、リアルタイム候補障害シグネチャを生成し得る。候補障害シグネチャは、候補障害シグネチャが確かに障害であることの可能性を判定するため、(例えば、シグネチャライブラリ178に格納される)既知の障害のシグネチャのためのパラメータと比較され得る。障害可能性は、或る波セグメント(例えば、これは、波のどの部分でシグネチャ事象が生じるかを示す)に応答して判定されるので、偽陽性の確率(例えば、存在しない障害を存在すると判定すること)及び偽陰性の確率(例えば、障害が確かに存在するときに障害が存在しないと判定すること)が低減される。したがって、障害判定の正確さ及び電力節減を増大させるための方法、システム、及び装置を本明細書において説明する。
【0041】
アナライザ100は、より大きなシステムのサブシステムとして配され得る。例えば、汎用プロセッサ170はインターフェースを含み、このインターフェースは、FIRデータ(後述する)、パルス列データ(後述する)、及び障害フラグを用いて外部デバイスを保護する。また、FIRデータ及びパルス列データは、外部システムによってシグネチャ解析のために評価されて、障害フラグのアサートに応答して、取るべきアクション(例えば、電力を切り離すこと)が判定され得る。「Spy-Bi-Wire」は、2ワイヤテストインターフェース176であり、これにより、アナライザ100の内部レジスタを設定し読み取るためのJTAG(Joint Test Action Group)コマンドがエミュレーションされ得る。また、汎用プロセッサ170のメモリ172は、シグネチャライブラリ178を変更(又はロード)するために(例えば、設置後に)更新され得、そのため、偽陽性を低減するため(例えば、発光ダイオードベースの照明など、最近導入された技術に起因する偽陽性シグネチャを無視するため)に新たなシグネチャが用いられ得る。
【0042】
図2は、例示のライン障害シグネチャアナライザの電気的モニタ信号から導出されるデータの例示の周波数ドメイン処理及び時間ドメイン処理のデータフロー図である。フロー図200は、周期的波形201のセグメント化の表現202を含む。周期的波形201は、上述した電力ライン110などの、監視される電力ラインにおける正弦電圧又は電流を表し得る。周期的波形201は、通常、理想的ではなく、ノイズ及び他の外乱(ライン障害に起因する高周波情報など)を含み得る。周期的波形201は、S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、及びS8などの8つの等しい波セグメントに分割される。8つより多い又は少ないセグメントを用いて周期的波形201を分割することもできる。
【0043】
周期的波形201はゼロ交差を含む。波セグメントがゼロ交差の近くにあるか又はゼロ交差を含む場合、この波セグメントはゼロ交差に近接する。例えば、ゼロ交差に近接する波セグメントには、波セグメントS1、S4、S5、及びS8が含まれる。周期的波形201は正弦波として示されているが、他の周期的信号も用いられ得る。また、第1の波セグメント(例えば、S1)はゼロ交差に近接する必要はない。
【0044】
アナログ-デジタルコンバータ(ADC144など)が、各波セグメントの間、サンプルセット220を生成するように配される。アナログ-デジタルコンバータは、ゼロ交差に近接する波セグメントについてなど、サンプルを連続的に生成するように、又は要求に応じてサンプルを生成するように配され得る。周期的波形201から導出されるサンプルのセットを格納するために、メモリバンク1(210)及びバンク2(220)の交互バンクを用いられる。開始、停止、グループ化、及びサンプルのFIRフィルタ処理のみならず、メモリバンク及びメモリ位置のアサイメントが、波セグメント決定器(波セグメント決定器150など)による位相角関連の決定に応答して成され得る。
【0045】
例えば、アナログ-デジタルコンバータは、各波セグメントに対するADCデータを格納するように配される。波セグメントS1の間に取得されるサンプルセットが、メモリ210の第1のバンクの第1の位置にサンプルセットADC-Tn-3として格納され(ここで、n=4であり、これはゼロ交差に近接する波セグメントS4を表す)、波セグメントS2の間に取得されるサンプルセットが、メモリ220の第2のバンクの第1の位置にサンプルセットADC-Tn-2として格納され、波セグメントS3の間に取得されるサンプルセットが、メモリ210の第1のバンクの第2の位置にサンプルセットADC-Tn-1として格納され、波セグメントS4の間に取得されるサンプルセットが、メモリ220の第2のバンクの第2の位置にサンプルセットADC-Tとして格納される。
【0046】
周波数ドメイン演算が、メモリ230及び240を用いて実施される。メモリ230は、連続波セグメント整合されたFIRフィルタリング演算のためのデータ順を示す。例えば、メモリ210及び220のバンクからのADCデータが、DSPによるアクセスのためにメモリ230に移動されて、FIRフィルタリング演算(又はFFT演算)が実施される。波セグメントS1の間に取得されたサンプルセット210は、波セグメントS2の間にメモリ230に(FIR-TN-3として)格納され、波セグメントS2の間に取得されたサンプルセット220は、波セグメントS3の間にメモリ230に(FIR-TN-2として)格納され、波セグメントS3の間に取得されたサンプルセット210は、波セグメントS4の間にメモリ230に(FIR-TN-1として)格納され、波セグメントS4の間に取得されたサンプルセット220は、波セグメントS5の間にメモリ230に(FIR-Tとして)格納される。
【0047】
DSP(DSP146など)は、選択されるサンプルセット230に対してFIRフィルタリング演算を選択的に実施するように配される。波セグメントS2の間に格納されたサンプルセット220は、FIR演算FIR-TN-2として処理され、波セグメントS3の間にメモリ240に(DATA1-TN-3として)格納され、波セグメントS3の間に格納されたサンプルセット220は、FIR演算FIR-TN-1として処理され、波セグメントS4の間にメモリ240に(DATA1-TN-2として)格納される。
【0048】
DSPによって(例えば、メモリ148に格納される命令を実行することによって)実装されるFIRフィルタは、通常、少なくとも2つのタップを含み、100又はそれ以上のタップを含み得る。タップ数は、図3を参照して下記で説明するようにバンドパスフィルタとし得る、フィルタのパラメータによって決定され得る。バンドパスフィルタは、(サンプルセットの)時間ドメイン情報を周波数ドメイン情報に効率的に変換する。フィルタパラメータは、周波数帯域幅に従って設定され、そのため、DSPは、サンプリングされた電気的モニタ信号における周波数情報をサーチ及び/又は評価し得る。DSPによって処理された周波数情報は、サブナイキスト周波数であり、例えば、ハイパスフィルタ162が通過させる周波数より低い。
【0049】
或るサンプルセットのすべてのサンプルについて例示のFIR演算を実施するために、フィルタタップ数(例えば、タップ長232)に等しい(先行する波セグメント「N-1」の間に取得された最後のサンプルの)いくつかの連続するサンプルが、現在処理されている波セグメントのサンプルセット(例えば、「N」)の先頭に付加される。先頭に付加されたサンプルは、先頭に付加されたサンプルを、タップ数に等しいいくつかのクロックだけ計時することによって「フィルタを準備する」ために用いられ得る。したがって、或る波セグメントについての全体サンプルセットが、情報を失うことなく処理され得る。また、FIR出力情報が(例えば、汎用プロセッサ170などの汎用プロセッサによって)評価された後、メモリ位置を再使用することによってメモリスペースが節約され得る。
【0050】
本明細書において説明されるように、DSPは、時間ドメイン情報(最終カウント値が波セグメントの終端に達する前でも、任意の波セグメントの間の閾値を超えるカウント値など)に応答して、メモリ230に格納された周波数ドメイン情報を処理するように起動(又は他の方式でアクティベート)され得る。したがって、障害事象が示されるとき、メモリ240に格納された周波数ドメイン情報を処理することのみによって(例えば)電力が節減され得る。また、DSPは、次の波セグメントの開始前にアクティベートされ得、そのため、DSPをアクティベートする際に直面する処理時間が短縮又はなくされる。
【0051】
メモリ240に格納された周波数ドメイン情報は、汎用プロセッサ290(これは汎用プロセッサ170などのプロセッサである)によってアクセスされ処理されて、障害状態が示されているか否かが判定される。この判定は、シグネチャライブラリ178に格納される障害シグネチャデータ、メモリ240に格納された周波数ドメイン情報、及びメモリ260に格納される(下記で説明する)時間ドメイン情報に応じてなされる。
【0052】
時間ドメイン情報は、事象カウンタ168(ここで、事象カウンタのメモリがメモリ250である)によって計数される高周波事象の数を含む。例えば、波セグメントS1に現れる高周波事象PTN-3のパルス列のパルス計数値(例えば最終計数値)は、波セグメントS2の間にDATA2-PTN-3としてメモリ260に格納され、波セグメントS2に現れる高周波事象PTN-2のパルス列の最終計数値は、波セグメントS3の間にDATA2-PTN-2としてメモリ260に格納され、波セグメントS3に現れる高周波事象PTN-1のパルス列の最終計数値は、波セグメントS4の間にDATA2-PTN-1としてメモリ260に格納される。
【0053】
障害状態が波セグメントS2について示されているか否かを判定するための例示の障害判定プロセスにおいて、汎用プロセッサ290は、波セグメントS4の間にメモリ240に格納された周波数ドメイン情報にアクセスし、波セグメントS4の間に(又は潜在的にはそれよりも早く、例えば、メモリ250を読み出すことによって)メモリ260に格納された時間ドメイン情報にアクセスする。したがって、障害状態が示されているか否かに関する判定が、約3つの波セグメントの総継続時間の待ち時間でなされ得、これは、ライン周波数の半サイクルの周期未満である。
【0054】
障害判定プロセスは、同期的又は非同期的に実行され得る。同期的な例において、FIRデータ(DATA1)及びパルス計数データ(DATA2)は、DATA2-TN-2及びDATA2-PTN-2として共に転送され得る。非同期的な例において、時間ドメインアナライザは、アクティブな計数値を(例えば、汎用プロセッサ290がイナクティブである間)監視し得、汎用プロセッサ290を直接(又は、DSPが、DSPが汎用プロセッサ290をアクティベートさせ得る周波数帯域における障害エネルギーを検出する結果として間接的に)アクティベートさせるだけでなくDSPを直接アクティベートさせる。
【0055】
図3は、例示の周波数ドメインアナライザ140の例示のバンドパスフィルタのパラメータを示す周波数応答図である。例えば、DSP(DSP146など)が、周波数図300の周波数応答などの周波数応答を有するFIRフィルタを実装するように配され得る。周波数応答図300は、周波数応答曲線302を含む。周波数応答曲線302は、ロールオフ(例えば、周波数応答曲線302の「裾」によって示され、これはdB/オクターブの単位で測定され得る)及びパスバンド330の幅によって特徴づけられ得る。パスバンドの幅は、(15kHzにおける)-3dB(デシベル)点310と(65kHzにおける)-3dB点320との間の周波数範囲にわたる。パスバンド開始周波数及び幅(又は幅及び終了周波数)はソフトウェアにより選択可能であり、そのため、電気ノイズの良性源からの選択された電気周波数がFIR演算の出力から除外され得る。FIRフィルタのタップ数を増加させることにより、ロールオフの急峻さを大きくし得る。
【0056】
図4は、例示のライン障害シグネチャアナライザのデジタル的にサンプリングされる波形情報の例示の重複するメモリ動作を示すプロセスフロー図である。例えば、アナログ-デジタルコンバータ(ADC144など)及びDSP(DSP146など)が、プロセスフロー400に従って、メモリ(メモリ148など)を共有するように配され得る。プロセスフロー400は動作410で開始する。
【0057】
動作410において、共有メモリが初期化される。例えば、共有メモリは、メモリブロック406及び408(例えば、ブロックA及びブロックB)など、第1及び第2のメモリブロックとして編成される。メモリブロックA及びBはいずれも独立してアドレス可能であり、そのため、ブロックA及びBはいずれも、重複する及び/又は同時の読み出し及び書き込み動作を用いてアクセスされ得る。この例において、第1のメモリブロックが、DSPとは無関係にADCによって書き込み又は読み出しされ得、DSPは、ADCとは無関係に第2のメモリブロックに対して書き込み又は読み出しされ得る。ブロックAのアドレス範囲402は0から511までわたり、ブロックBのアドレス範囲402は512から1023までわたる。動作410において、メモリ範囲402にわたるデータ404が、ゼロ(0)の値で初期化される。プロセスフロー400は動作420に続く。
【0058】
動作420において、ADCは、第1の波セグメント(例えばT)の間に入力波形をサンプリングし、サンプリングされたADC値をデータ404としてブロックAに格納する。例えば、ADCは、第1の波セグメントの間、ローパスフィルタリングされた(例えば、低周波)成分の電気的モニタ信号を逐次サンプリングし、これらのサンプルをデータ(例えばADC-T)としてブロックAに逐次格納する。この逐次のサンプリングは、選択される波セグメントの開始及び終了と整合され、波セグメント決定器150からの出力に応答して制御(例えば、整合)され得る。プロセスフロー400は動作430に続く。
【0059】
動作430において、ADCは、第2の波セグメントの間に入力波形をサンプリングする。第2の波セグメントは新たなTである(そのため、例えば、ブロックBにおける新たに得られるサンプルがADC-Tとして参照され、前に得られたサンプルがADC-TN-1として参照される)。DSPは、ブロックAに格納されたADC-TN-1値432を読み出し、ブロックAのデータに対してFIR演算を実施し、前に格納されたADC-TN-1値をFIR結果で上書きするように配される。
【0060】
FIR入力データを先頭に付加するために(例えば、フィルタタップを関連するデータで満たすために)、第1の波セグメントの前にサンプリングされた波セグメントの間にサンプリングされる格納済みADC値のシーケンス434が(例えば、前にサンプリングされたデータが第2の波セグメントの間に得られる新しいADCサンプルによって上書きされる前に)DSPによってリトリーブされる。DSPは、シーケンス434を(例えば、動作430の開始時に)読み出して、古いADC-TN-1サンプルが置き換えられる前にそれが(例えば、動作430の終端近くで)読み出されるように配される。DSP及びADCのいずれか又は両方によるデータの上書きによりメモリスペースが節減され、それによって電力消費も低減される。プロセスフロー400は動作440に続く。
【0061】
動作440において、ADCは、第3の波セグメントの間に入力波形をサンプリングする。第3の波セグメントは最後のTであり、そのため、ブロックAにおける新たに得られたサンプルはADC-Tとして参照され、前に得られたサンプルはADC-TN-iとして参照され、先頭に付加されたサンプルセット(これは、簡易にするため、データ位置511では縮小形態で示されている)はADC-TN-2として参照される。DSPは、ブロックBに格納されたADC-TN-i及びADC-TN-2の値442を読み出し、(例えば、第2の波セグメントの間に前にサンプリングされた)ブロックBデータに対してFIR演算を実施し、前に格納されたADC-TN-1値をFIR結果で上書きするように配される。FIR入力データを先頭に付加するために(例えば、フィルタタップを関連データで満たすために)、第2の波セグメントの前に格納されるADC-TN-2値のシーケンス(例えば、442の最初の部分)が、(例えば、前にサンプリングされたデータが第3の波セグメントの間に得られる新しいADCサンプルによって上書きされる前に)DSPによってリトリーブされる。
【0062】
例示のプロセスフロー400において、ADCは、連続的動作状態でアクティベートされ得、各波セグメントの少なくとも終端部分に対してアクティベートされ得るか、又は選択される波セグメントの少なくとも終端部分についてアクティベートされ得る。このようなアクティベートは、選択される波セグメントの間に得られるADCデータの処理に先立って、タップフィルタを満たすためにシーケンス434を確実に利用可能とすることの助けとなる。
【0063】
図5は、例示のライン障害シグネチャアナライザのアナログ-デジタルコンバータデータの例示のFFT周波数ドメイン処理の波形図である。第1の例において、波形図500は、或る成分の電気的モニタ信号510を示す。電気的モニタ信号510は、ピークツーピークで約12ボルトであり、ライン周波数基本周期的波形の一部、及び波セグメント全体にわたって延在する周波数相関ノイズ(例えば、電気障害状態によって生じるもの)を含む。ノイズ(例えば、ノード512間の電気的モニタ信号510の偏移によって示される)は、ピークツーピークで約2ボルトである。
【0064】
DSP(DSP146など)が、入力サンプルセットを得ることができ、ここで、サンプル数は、波セグメントの周期内のサンプルの数である。FFT出力は、曲線520として示されており、ここで、周波数相関ノイズはエネルギー522として示される。周波数相関ノイズのエネルギーは周波数ドメインに変換され、ここで、周波数ドメインにおけるエネルギー522は、全サンプルセットにおけるノイズのエネルギーから導出される。
【0065】
第2の例において、或る成分の電気的モニタ信号530も、ピークツーピークで12ボルトであり、ライン周波数基本周期的波形の一部、及び関連する波セグメントのより小さな部分532のみにわたって延在する周波数相関ノイズ(例えば、電気障害状態によって生じるもの)を含む。このノイズもピークツーピークで約1ボルトである。
【0066】
DSPは、FFT演算を実施して、入力サンプルセットを周波数情報に変換し、ここで、サンプル数は、波セグメントの周期内のサンプルの数である。FFT出力は、サンプルセット540(これは、曲線520の尺度と比較して拡大して示される)として示されている。電気的モニタ信号530の周波数相関ノイズは、エネルギー542として示される。
【0067】
周波数相関ノイズのエネルギーは周波数ドメインに変換され、ここで、周波数ドメインにおけるエネルギー522は、全サンプルセットにおけるノイズのエネルギーから導出される。電気的モニタ信号530の周波数相関ノイズのエネルギーは、電気的モニタ信号510の周波数相関ノイズよりも実質的に小さい。これは、電気的モニタ信号530の周波数相関ノイズが、電気的モニタ信号530の周波数相関ノイズの一部(例えば、一部のみ)にわたって延在するからである。より少ないエネルギーは、より小さい振幅値に変換される。したがって、周波数相関ノイズの継続時間が短いほど、得られる振幅値が小さくなるので、FFT変換を用いる検出が難しくなる。
【0068】
図6は、例示の基本周期的波形の或る周期の波セグメントの間に検出される例示の障害信号情報の波形図である。図600は、入力信号601、周波数ドメインFIRデータ602、及び時間ドメインパルス計数値データ603を示す。
【0069】
入力データ601は、(例えば、ADCによってサンプリングされる入力データ601からの)波サンプルの、周波数ドメインFIRデータ602との相関を示す正弦波形610である。(入力信号601の正弦波形のエネルギーは、周波数ドメインFIRデータ602において減少している。これは、入力信号601の正弦波形が、バンドパスフィルタの低側カットオフ周波数よりもかなり低い基本周波数を有するからである。)
【0070】
図2を参照した上記説明に従って、入力信号601の基本周期は、8つのセグメント(例えば、S1~S8)に分割され得、各サンプルセットは、ADCによって格納された低周波電気的モニタ信号の256+1個(終点から終点)のサンプルに関連する。したがって、4K+1個のサンプル(例えば、終点から終点)が)格納され得る(図2及び図5を参照して上述したように、メモリ空間が再使用され得る)。
【0071】
プロセッサ(汎用プロセッサ170など)が、(デジタル)周波数ドメインFIRデータ602を評価するように配される。周波数ドメインFIRデータ602は偏移622を含む。偏移622は、周波数ドメインFIRデータ602の各値を、周波数ドメインFIRデータ602の平均値と(例えば、平均値が閾値として用いられるように)比較することによって、検出され得る。また、特定の波セグメント内の各偏移622が、時間ドメインアナライザ160などの時間ドメインアナライザによって検出及びログ記録される事象の数と相関され得る。
【0072】
プロセッサは、(各偏移622に関連する)周波数ドメイン情報を(例えば、波セグメントベースで計数される)時間ドメイン情報と相関させ得る。周波数ドメイン情報の時間ドメイン情報との相関により、障害状態の存在を適切に(かつ、約2~3個の波セグメント長の時間期間内で)判定する確率が高められる。また、入力信号601、周波数ドメインFIRデータ602、及び時間ドメインパルス計数値データ603は、特定の時間期間(例えば、対応する波セグメントに関連する時間期間)と相関され、これは、入力信号601のゼロ交差において又はゼロ交差の近くで生じる障害状態を識別するために用いられ得る。
【0073】
プロセッサは、メモリに格納される実行可能な命令に応じて障害検出器として構成可能である。障害検出器は、高周波事象数の存在、及び生成された周波数帯域情報を監視し、高周波数事象数及び生成された周波数帯域情報の監視されたインディケーションに応答してフラグを生成するように構成される。
【0074】
時間ドメイン情報は、時間ドメインアナライザ(時間ドメインアナライザ160など)によって生成され得る。時間ドメイン情報は、電気的モニタ信号をハイパスフィルタリングし、電気的モニタ信号の高周波情報が閾値を超えるとき生成されるパルスを計数することによって生成され得る。計数されたパルスは、障害状態を示し得る事象に関連する。
【0075】
例えば、入力信号601は、正弦波形619に重複される事象612を示す。事象は、波セグメントSN-4、SN-3、S、及びSN+i(これらはゼロ交差に近接する波セグメントである)の間に生じる。波セグメントSN-4の間に生じる事象612は、波セグメントSN-3の間の時間ドメインパルス計数値データ603において(205の最終計数値として)検出され、波セグメントSN-2の間の周波数ドメインFIRデータ602において(偏移622として)検出される。波セグメントSN-3の間に生じる事象612は、波セグメントSN-2の間の時間ドメインパルス計数値データ603において(18の最終計数値として)検出され、波セグメントSN-1の間の周波数ドメインFIRデータ602において(偏移622として)検出される。波セグメントSの間に生じる事象612は、波セグメントSN+1の間の時間ドメインパルス計数値データ603において(148の最終計数値として)検出され、波セグメントSN+2の間の周波数ドメインFIRデータ602において(偏移622として)検出される。
【0076】
波セグメントSの間に格納された時間ドメインノイズ計数値データ603は、最終計数値8を示し、良性ノイズを示す。最終計数値18は良性ノイズを示す。これは、最終計数値8が、ゼロ交差に近接していない波セグメントSN-iの間に生じるノイズに応答して生じるからである。また、最終計数値8は良性ノイズを示す。これは、最終計数値18が比較的小さい数だからである。また、最終計数値8は良性ノイズを示す。これは、最終計数値18が、周波数ドメインFIRデータ602におけるエネルギーの偏移と相関しないからである。シグネチャライブラリ(シグネチャライブラリ178など)は、ゼロ交差への近接に関わる比較、時間ドメインで検出される高周波エネルギー、及び選択される周波数帯域におけるエネルギーに応答して、良性状態と障害状態との間を区別するための障害状態を判定するためのそれぞれの閾値を含む。
【0077】
図7は、基本周期的波形の例示の周期の波セグメントにわたる例示の障害誘導信号障害の波形図である。波形図700は、電力ライン110などの電力ラインを介して伝送される電力を示すための例示の電気的モニタ信号を示す波形710を含む。上述したように、アーク障害及び過渡障害が、ライン電力の正弦波形のゼロ交差に関連する時間期間内に生じる傾向がある。波形710は、波セグメントS1、S4、S5、及びS8の間のこのような障害に起因する攪乱を示す。
【0078】
信号720は、波形710の平均信号(例えば、ボックスカー平均)である。信号720は、概ね、例示の基本周期的波形の基礎となる正弦波を示す。また、アーク障害及び過渡障害によって生じる攪乱は、キャッシュを操作する不連続点又はゼロ交差近傍によって示されている。
【0079】
特許請求の範囲内で、説明した実施形態における改変が可能であり、他の実施形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7