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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】生体認証装置および生体認証方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 40/10 20220101AFI20230201BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G06V40/10
G06F3/01 510
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019006288
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020115268
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】300078361
【氏名又は名称】株式会社齋藤創造研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 憲彦
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06F 3/01
G06V 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力が入力される弾性層と、前記弾性層に配置され、前記弾性層の変形に伴って変位するマーカーと、を有する弾性入力部と、
前記マーカーの変位に基づいて認証対象者の照合データを生成する照合データ生成部と、
前記認証対象者の登録データを記憶する記憶部と、
前記照合データと前記登録データとを比較し、前記認証対象者を認証する判定部と、を有することを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
前記照合データ生成部は、前記マーカーを撮像する第1撮像部を有し、前記第1撮像部が撮像した画像データに基づいて前記マーカーの変位を検出する請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記照合データは、前記認証対象者の手の形状に関する手形状データを含む請求項1または2に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記照合データは、前記認証対象者の指紋に関する指紋データを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記照合データは、前記認証対象者の掌紋に関する掌紋データを含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記照合データは、前記認証対象者の脈拍に関する脈拍データを含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記照合データは、前記認証対象者の筆跡に関する筆跡データを含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項8】
前記弾性層は、光透過性を有し、
前記第1撮像部は、前記弾性層を介して外界を撮像する請求項2に記載の生体認証装置。
【請求項9】
前記照合データは、前記認証対象者の顔の形状に関する顔形状データを含む請求項8に記載の生体認証装置。
【請求項10】
前記照合データは、前記認証対象者の網膜に関する網膜データを含む請求項8または9に記載の生体認証装置。
【請求項11】
前記照合データは、前記認証対象者の虹彩に関する虹彩データを含む請求項8ないし10のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項12】
前記照合データ生成部は、前記認証対象者の静脈を撮像する第2撮像部を有し、
前記照合データは、前記認証対象者の前記静脈に関する静脈データを含む請求項1ないし11のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項13】
外力が入力される弾性層と、前記弾性層に配置され、前記弾性層の変形に伴って変位するマーカーと、を有する弾性入力部と、
前記マーカーの変位に基づいて前記弾性層の変形を検出する検出部と、を有する生体認証装置を用いた生体認証方法であって、
前記検出部の検出結果に基づいて認証対象者の照合データを生成し、
生成した前記照合データと、予め登録された登録データとを比較し、比較結果に基づいて前記認証対象者を認証することを特徴とする生体認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置および生体認証方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような生体認証は、例えば、重要データへのアクセスに際してセキュリティを確保するために用いられる。この生体認証は、指紋、掌紋、顔、虹彩、静脈等の生体特徴を用いて本人確認を行う技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-128785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、情報の重要性および秘匿性が益々増していく近年において、より高いセキュリティ対策が求められている。しかしながら、従来の生体認証では、さらなるセキュリティ対策の高度化が困難であるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、高いセキュリティ対策が可能な生体認証装置および生体認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 外力が入力される弾性層と、前記弾性層に配置され、前記弾性層の変形に伴って変位するマーカーと、を有する弾性入力部と、
前記マーカーの変位に基づいて認証対象者の照合データを生成する照合データ生成部と、
前記認証対象者の登録データを記憶する記憶部と、
前記照合データと前記登録データとを比較し、前記認証対象者を認証する判定部と、を有することを特徴とする生体認証装置。
【0008】
(2) 前記照合データ生成部は、前記マーカーを撮像する第1撮像部を有し、前記第1撮像部が撮像した画像データに基づいて前記マーカーの変位を検出する上記(1)に記載の生体認証装置。
【0009】
(3) 前記照合データは、前記認証対象者の手の形状に関する手形状データを含む上記(1)または(2)に記載の生体認証装置。
【0010】
(4) 前記照合データは、前記認証対象者の指紋に関する指紋データを含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体認証装置。
【0011】
(5) 前記照合データは、前記認証対象者の掌紋に関する掌紋データを含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体認証装置。
【0012】
(6) 前記照合データは、前記認証対象者の脈拍に関する脈拍データを含む上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体認証装置。
【0013】
(7) 前記照合データは、前記認証対象者の筆跡に関する筆跡データを含む上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体認証装置。
【0014】
(8) 前記弾性層は、光透過性を有し、
前記第1撮像部は、前記弾性層を介して外界を撮像する上記(2)に記載の生体認証装置。
【0015】
(9) 前記照合データは、前記認証対象者の顔の形状に関する顔形状データを含む上記(8)に記載の生体認証装置。
【0016】
(10) 前記照合データは、前記認証対象者の網膜に関する網膜データを含む上記(8)または(9)に記載の生体認証装置。
【0017】
(11) 前記照合データは、前記認証対象者の虹彩に関する虹彩データを含む上記(8)ないし(10)のいずれかに記載の生体認証装置。
【0018】
(12) 前記照合データ生成部は、前記認証対象者の静脈を撮像する第2撮像部を有し、
前記照合データは、前記認証対象者の前記静脈に関する静脈データを含む上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体認証装置。
【0019】
(13) 外力が入力される弾性層と、前記弾性層に配置され、前記弾性層の変形に伴って変位するマーカーと、を有する弾性入力部と、
前記マーカーの変位に基づいて前記弾性層の変形を検出する検出部と、を有する生体認証装置を用いた生体認証方法であって、
前記検出部の検出結果に基づいて認証対象者の照合データを生成し、
生成した前記照合データと、予め登録された登録データとを比較し、比較結果に基づいて前記認証対象者を認証することを特徴とする生体認証方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の生体認証装置および生体認証方法によれば、マーカーの変位に基づいて照合データを生成するため、照合データをより精度よくかつ正確に生成することができると共に、より複雑な照合データを生成することができる。そのため、高いセキュリティ性を実現することができる。また、例えば、弾性層に手(認証対象者の体の一部)を添えることで認証が可能なため、優れた利便性を発揮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適な実施形態に係る生体認証装置を示すブロック図である。
図2図1の生体認証装置が有する入力装置を示す断面図である。
図3】認証対象者が入力装置の弾性層に手を触れてマーカーが変位した様子を示す断面図である。
図4図2の入力装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の生体認証装置および生体認証方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1に、生体認証装置1を示す。生体認証装置1は、入力装置3を有する。入力装置3は、図2に示すように、半球状の基体39と、基体39の外周に設けられた半球状の弾性入力部30と、を有する。また、弾性入力部30は、外力が入力される弾性層31と、弾性層31に配置され、弾性層31の変形に伴って変位するマーカーMと、を有する。そして、認証対象者Uは、弾性層31に手を触れ、弾性層31を手の形状に変形させることにより生体認証を行う。
【0024】
また、図1に示すように、生体認証装置1は、マーカーMの変位に基づいて認証対象者Uの照合データDcを生成する照合データ生成部4と、認証対象者Uの登録データDrを記憶する記憶部5と、照合データDcと登録データDrとを比較し、認証対象者Uを認証する判定部6と、を有する。照合データ生成部4、記憶部5および判定部6は、所定のプログラムを実行する少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)と、プログラムやデータを一時的に格納するメインメモリと、フラッシュメモリのような補助メモリと、を有するコンピュータにより構成されている。
【0025】
基体39は、硬質な部材、具体的には指や掌による押圧程度では実質的に変形しない程度の硬さを有する。また、基体39は、光透過性を有し、本実施形態では実質的に無色透明である。ただし、基体39の構成は、これに限定されず、指や掌による押圧によって容易に変形するほど柔らかくてもよい。また、弾性層31が基体39に支持されなくても一定の形状を保つことができる程度に硬い場合等には、基体39を省略してもよい。
【0026】
弾性層31は、弾性を有する入力部である。前述したように、認証対象者Uは、弾性層31に手を触れ、弾性層31を手の形に変形させることにより生体認証を行う。図2に示すように、弾性層31は、シート状をなし、外力が入力される外周面31aおよび外周面31aの反対側に位置する内周面31bを有する。また、弾性層31は、基体39に支持され、その外形が基体39に倣った半球状に湾曲している。弾性層31を半球状とすることにより、弾性層31に手を添え易くなり、その結果、生体認証をより容易に行うことができるし、不自然な動作を行わなくてよいため、認証対象者Uの入力の再現性が高く、より精度のよい生体認証が可能となる。ただし、弾性層31の外形としては、特に限定されず、球状の他にも、例えば、半球状、正四面体状、正六面体状、正八面体状等の多面体状等の立体的な形状や、平らなシート状等の平面状の形状であってもよい。
【0027】
図2に示すように、弾性層31には、弾性層31の変形によって変位するマーカーMが配置されている。マーカーMは、照合データ生成部4で検出可能な検出対象である。マーカーMは、弾性層31の厚さ方向にずれて配置され、基体39からの距離が互いに異なる第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3を有する。これら第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3は、それぞれ、弾性層31の変形に伴って変位する。そのため、これら第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3の変位に基づいて弾性層31の変形を検出できる。特に、第1~第3マーカーM1~M3を弾性層22の厚さ方向にずらして配置することにより、弾性層31の内層、中間層、外層のそれぞれでの変形を検出することができ、弾性層31の変形をより詳細に検出することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3は、それぞれ、ドット形状(点形状)をなしているが、これに限定されず、例えば、線形状、面形状、立体形状等であってもよい。また、複数の第1マーカーM1は、互いに形状が同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2、第3マーカーM2、M3についても同様である。
【0029】
また、弾性層31は、基体39の表面に配置され、第1マーカーM1を有する第1弾性層311と、第1弾性層311の表面に配置され、第2マーカーM2を有する第2弾性層312と、第2弾性層312の表面に配置され、第3マーカーM3を有する第3弾性層313と、第3弾性層313の表面に配置された保護層314と、を有する。このような構成とすることにより、第1~第3マーカーM1~M3を弾性層31に配置し易くなる。なお、説明の便宜上、図2図3では、弾性入力部30の断面からハッチングを省略している。
【0030】
第1弾性層311、第2弾性層312および第3弾性層313は、それぞれ、光透過性および弾性を有する。そして、第1弾性層311の表面に複数の第1マーカーM1が互いに離間して配置され、第2弾性層312の表面に複数の第2マーカーM2が互いに離間して配置され、第3弾性層313の表面に複数の第3マーカーM3が互いに離間して配置されている。なお、本実施形態では、第1~第3弾性層311~313は、それぞれ、実質的に無色透明である。ただし、第1~第3弾性層311~313は、光透過性を有していれば、その少なくとも1つが、例えば、有色透明であってもよい。
【0031】
第1~第3マーカーM1~M3は、それぞれ、第1~第3弾性層311~313の表面に貼着されたものであってもよいし、第1~第3弾性層311~313の表面にインク等を用いて印刷されたものであってもよいし、第1~第3弾性層311~313内に埋設されていてもよい。
【0032】
第1~第3マーカーM1~M3は、形状および色彩の少なくとも一方が互いに異なっており、照合データ生成部4によって識別可能となっている。本実施形態では、第1~第3マーカーM1~M3は、互いに色彩が異なっており、例えば、第1マーカーM1が赤色、第2マーカーM2が緑色、第3マーカーM3が青色となっている。なお、第1~第3マーカーM1~M3の色彩ではなく形状を互いに異ならせる場合には、例えば、第1マーカーM1を円形、第2マーカーM2を三角形、第3マーカーM3を四角形とすることができる。もちろん、色彩および形状を共に異ならせてもよいし、色彩や形状を異ならせる以外の方法によって第1、第2、第3マーカーM1~M3を照合データ生成部4で識別可能としてもよい。
【0033】
また、第1~第3マーカーM1~M3は、自然状態において、照合データ生成部4が有する後述するカメラ41から見て互いに重ならないように配置されていることが好ましい。すなわち、カメラ41によって撮像される画像上で、第2マーカーM2がその手前にある第1マーカーM1に隠れることなく、第3マーカーM3がその手前にある第1、第2マーカーM1、M2に隠れることなく配置されていることが好ましい。これにより、照合データ生成部4によって、より多くのマーカーMの変位を検出することができ、弾性層31の変形をより精度よく検出することができる。なお、前記「自然状態」とは、例えば、弾性層22に重力以外の外力が加わっていない状態を言う。
【0034】
保護層314は、第3弾性層313の表面に配置された第3マーカーM3を保護する機能を有している。保護層314は、第1~第3弾性層311~313と同様に、光透過性および弾性を有している。
【0035】
以上、弾性入力部30について説明したが、弾性入力部30の構成としては、これに限定されない。例えば、第1マーカーM1を有していれば、第2、第3マーカーM2、M3を省略してもよい。つまり、厚さ方向にずれて配置されたマーカーMが存在していなくてもよい。また、保護層314を省略し、第3マーカーM3が弾性層31の表面に露出していてもよい。この場合、第3マーカーM3は、弾性層31の表面から突出していることが好ましい。これにより、第3マーカーM3が添えられた手に引っ掛かり、手と弾性層31との滑りを抑制することができる。そのため、弾性層31を精度よく、添えられた手の形状に変形させることができる。
【0036】
照合データ生成部4は、弾性層31に認証対象者Uの手が添えられた際のマーカーMの変位に基づいて弾性層31の変形を三次元的に検出し、その検出結果に基づいて認証対象者Uの照合データDcを生成する。弾性層31は、認証対象者Uの手の形状に沿って無段階に変形するため、照合データ生成部4は、弾性層31の変形に基づいて、照合データを精度よくかつ正確に生成することができると共に、複雑な照合データを生成することができる。そのため、生体認証装置1は、高いセキュリティ性を実現することができる。また、生体認証装置1は、例えば、弾性層31に手を添えるだけで認証が可能なため、優れた利便性を発揮することもできる。なお、照合データ生成部4は、弾性層31の変形を検出することなく、マーカーMの変位から直接、認証対象者Uの照合データDcを生成してもよい。
【0037】
照合データ生成部4は、その機能を発揮することができれば、特に限定されないが、本実施形態では、ステレオ写真法を用いて弾性層31の変形を三次元的に検出する。図2および図3に示すように、照合データ生成部4は、第1撮像部としての複数のカメラ41を有する。カメラ41としては、特に限定されず、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ等、レンズ系411と撮像素子412とを備えたものを用いることができる。
【0038】
複数のカメラ41は、弾性層31に向いて配置され、それぞれ、弾性層31を内周面31b側から撮像する。弾性層31の各部は、少なくとも2つのカメラ41で撮像され、これにより、弾性層31の各部を三次元画像認識すなわちステレオ画像認識することができる。なお、前記「弾性層31の各部」とは、弾性層31の全域を意味する場合もあれば、弾性層31の選択された一部の領域を意味する場合もある。
【0039】
また、図3に示すように、照合データ生成部4は、各カメラ41からの画像情報に基づいて弾性層31の三次元画像認識を行う処理部42を有する。処理部42は、認証対象者Uが弾性層31に手を触れたことに伴う第1~第3マーカーM1~M3の変位を三次元画像認識によって検出し、検出結果に基づいて、認証対象者Uの手の形状、具体的には、例えば、各指の太さおよび長さ、掌の大きさ等に関する手形状データを含む照合データDcを生成する。
【0040】
照合データ生成部4は、さらに、基体39の内側から弾性層31を照らす光源44を有する。光源44としては、特に限定されず、例えば、LEDを用いることができる。光源44を有することにより、カメラ41は、十分な明るさの下でマーカーMを撮像することができる。そのため、照合データ生成部4は、より正確な照合データDcを生成することができる。ただし、光源44は、例えば、外界からの光によって弾性層31を画像認識可能な程に十分に明るく保てる場合等には省略してもよい。また、基体39の内部に輝度センサーを配置して、この輝度センサーにより検知された内部の明るさに基づいて、光源44の光量を制御してもよい。これにより、例えば、基体39内をほぼ一定の明るさに保つことができ、検出部23による弾性層22の画像認識をより安定して行うことができる。
【0041】
ここで、処理部42による入力情報の取得方法の一例について簡単に説明する。処理部42の記憶部には予め各カメラ41の3次元座標が記憶されている。そして、処理部42は、所定マーカーMの変位を検出するのに用いられる2台のカメラ41によって同時刻における画像を取得し、両画像中の所定マーカーMの2次元座標を取得する。次に、処理部42は、両画像中の所定マーカーMの2次元座標のずれと各カメラ41の3次元座標とに基づいて所定マーカーMの3次元座標を取得し、記憶する。処理部42は、この作業をフレーム毎に連続的に行う。そして、処理部42は、前回取得した所定マーカーMの3次元座標と、今回新たに取得した所定マーカーMの3次元座標とを比較することにより、その間に生じた所定マーカーMの変位を検出することができる。処理部42は、このような作業を全マーカーMもしくは選択された幾つかのマーカーMについて行うことにより、認証者情報を得ることができる。
【0042】
以上、処理部42による照合データDcの生成方法について説明したが、照合データDcの生成方法は、これに限定されない。例えば、全マーカーMについて上述の作業を行うと処理量が膨大となってしまい、処理部42の性能等によっては処理が追いつかない、つまり、生体認証に時間がかかる場合が考えられる。また、セキュリティレベルによっては、簡単な生体認証で足りる場合も考えられる。そのため、例えば、処理部42は、予め選択した一部のマーカーMを用いて照合データDcを生成してもよい。また、処理部42は、例えば、自然状態における弾性層31の各部の画像を基準画像として記憶しておき、この基準画像と、上述のように得された画像とをリアルタイムに比較して第1~第3マーカーM1~M3の変位を特定することにより、上記の照合データDcを生成してもよい。
【0043】
特に、弾性入力部30を用いることにより、照合データ生成部4は、弾性層31に触れた手の平面形状だけではなく、掌や指の丸みまで検出することができるため、照合データDcには手の三次元形状である手形状データが含まれる。そのため、生体認証装置1によれば、より詳細な照合データDcが得られ、高いセキュリティ性を有する生体認証が可能となる。
【0044】
また、照合データ生成部4は、手表面(弾性層31との接触面)の微小凹凸に基づいて掌紋および指紋を検出することができ、掌紋および指紋に関するデータを掌紋データおよび指紋データとして照合データDcに含ませることができる。つまり、生体認証装置1によれば、弾性層31に手を触れるだけで、異なる生体的特徴から複数のデータを生成することができ、これら手形状データ、掌紋データおよび指紋データを照合データDcに含ませることができる。このように、異なる生体的特徴を組み合わせることにより、生体認証のセキュリティ性をより高めることができる。
【0045】
また、従来の構成で手形状データ、掌紋データおよび指紋データを生成しようとすると、例えば、異なる装置を組み合わせて順番に生成する必要があるが、生体認証装置1によれば、1つの装置でかつ同時に生成することができる。そのため、生体認証装置1は、従来と比べて装置構成が簡単なものとなる。また、従来の構成で手形状データ、掌紋データおよび指紋データを生成しようとすると、それぞれのデータを生成するのに手や指の位置や姿勢を変化させる必要があるが、生体認証装置1によればそのような必要がない。したがって、生体認証装置1は、従来と比べて操作性および利便性に優れたものとなる。つまり、生体認証装置1は、セキュリティ性を高めつつ、さらに操作性や利便性を高めることができる。
【0046】
また、弾性層31によれば、その変形すなわちマーカーMの変位に基づいて、添えられた手の表面の微小な振動を検出することができる。そのため、照合データ生成部4は、手表面の微小振動に基づいて認証対象者Uの脈拍を検出することができ、検出した脈拍に関するデータを脈拍データとして照合データDcに含ませることができる。つまり、生体認証装置1によれば、前述した手形状データ、掌紋データおよび指紋データの他にも、これらと生体的特徴が異なる脈拍データを生成し、これを照合データDcに含ませることができる。そのため、生体認証のセキュリティ性をさらに高めることができる。
【0047】
なお、脈拍データは、照合データDcとして用いる用途の他にも、弾性層31に添えられた手が、生体である認証対象者U自身の手であるのか、認証対象者Uの手の形状を模した非生体である模型なのかを判断する用途にも用いることができる。これにより、生体認証の偽装を判断することができ、生体認証のセキュリティ性をさらに高めることができる。
【0048】
また、照合データ生成部4は、弾性層31の変形(マーカーMの変位)に基づいて、認証対象者Uの筆跡を検出し、検出した筆跡に関するデータを筆跡データとして照合データDcに含ませることができる。例えば、自身の指や専用のペンを用いて弾性層31に所定文字を書かせ、照合データ生成部4は、その際のマーカーMの変位に基づいて筆跡を検出し、検出した筆跡に関するデータを筆跡データとして照合データDcに含ませることができる。特に、弾性層31を用いれば、照合データ生成部4は、弾性層31への入力の強さ、ベクトル、速度等を検出することができる。そのため、筆跡だけではなくて、筆圧、筆速についても検出することができ、筆圧、筆速に関するデータについても筆跡データに含ませることができる。そのため、従来のような筆跡だけで照合データDcを生成する場合と比べて、生体認証のセキュリティ性をさらに高めることができる。
【0049】
ここで、前述したように、第1~第3弾性層311~313および保護層314は、それぞれ、無色透明である。そのため、各カメラ41は、弾性層31を介して外界すなわち弾性層31の外側を撮像することができる。したがって、照合データ生成部4は、各カメラ41を用いて、弾性層31に添えられた認証対象者Uの手の画像を取得することができる。そのため、照合データ生成部4は、前述したように、弾性層31の変形(マーカーMの変位)に基づいて手形状データ、掌紋データおよび指紋データを生成してもよいし、弾性層31の変形によらず、カメラ41が撮像した手の画像データに基づいて、手形状データ、掌紋データおよび指紋データを生成してもよい。もちろん、弾性層31の変形に基づいて生成した手形状データ、掌紋データおよび指紋データと、カメラ41が撮像した手の画像データに基づいて生成した手形状データ、掌紋データおよび指紋データと、を組み合わせてもよい。
【0050】
このように、生体認証装置1によれば、異なる方法で手形状データ、掌紋データおよび指紋データを生成することができる。そのため、例えば、セキュリティレベルの高さに応じて、これら2つの生成方法を切り替えることができ、生体認証装置1の利便性が向上する。また、例えば、装置の故障により、一方の生成方法が使用できなくなっても、他方の生成方法によって上記のデータを生成することができる。そのため、生体認証装置1によれば、故障によって生体認証が全く行えなくことが防止され、高い信頼性を発揮することができる。
【0051】
また、照合データ生成部4は、各カメラ41を用いて、弾性層31の外側にある認証対象者Uの顔、網膜、虹彩等の画像を取得することができる。そのため、照合データ生成部4は、顔の形状に関するデータを顔形状データとして、網膜に関するデータを網膜データとして、虹彩に関するデータを虹彩データとして、これらをそれぞれ照合データDcに含ませることができる。つまり、生体認証装置1によれば、弾性層31に添えた手から生成されるデータだけでなく、弾性層31に非接触な生体的特徴である顔形状データ、網膜データおよび虹彩データを照合データDcに含ませることができる。そのため、データの種類がより多くなり、生体認証のセキュリティ性をさらに高めることができる。
【0052】
照合データ生成部4は、さらに、第2撮像部としての近赤外線カメラ43を少なくとも1つ有する。なお、近赤外線カメラ43は、カメラ41とは異なるカメラであってもよいし、複数のカメラ41のうちの少なくとも1つが近赤外線カメラを兼ねていてもよい。そして、照合データ生成部4は、近赤外線カメラ43が撮像した手の画像データに基づいて静脈パターンを検出し、検出した静脈に関するデータを静脈データとして照合データDcに含ませることができる。このように、照合データ生成部4によれば、前述した各種データに加え、さらに、静脈データを照合データDcに含ませることができる。そのため、データの種類がより多くなり、生体認証のセキュリティ性をさらに高めることができる。なお、本実施形態の静脈データとは、例えば、指静脈パターンおよび掌静脈パターンの少なくとも一方を言う。
【0053】
以上より、照合データ生成部4が生成する照合データDcには、手形状データ、掌紋データ、指紋データ、脈拍データ、筆跡データ、顔形状データ、網膜データ、虹彩データおよび静脈データの少なくとも1つを含ませることができる。言い換えると、生体認証装置1は、手形状データ、掌紋データ、指紋データ、脈拍データ、顔形状データ、網膜データ、虹彩データおよび静脈データから選択される少なくとも1つのデータを用いて照合データDcを生成することができる。これらデータの少なくとも1つ、好ましくは複数を照合データDcに含まることにより、生体認証のセキュリティ性が高まる。また、生体認証装置1によれば、例えば、求められるセキュリティレベルに応じて、照合データDcに含まれるデータを選択することができ、優れた利便性を発揮することができる。特に、生体認証装置1が優れているのは、実質的に、弾性入力部30と照合データ生成部4だけで上述した多数のデータを含む照合データDcを生成できる点にある。
【0054】
記憶部5は、生体認証装置1により認証を受けるユーザー全ての登録データDrを記憶している。つまり、生体認証装置1により認証を受けるユーザーは、生体認証装置1の利用に際し、予め、記憶部5に自身の生体データを登録データDrとして記憶部5に記憶させ、生体認証装置1に登録する。この登録データDrには、照合データDcに対応するデータが含まれている。つまり、登録データDrにも、手形状データ、掌紋データ、指紋データ、脈拍データ、筆跡データ、顔形状データ、網膜データ、虹彩データおよび静脈データの少なくとも1つが含まれている。これにより、照合データDcと登録データDrとの比較が可能となる。
【0055】
判定部6は、照合データ生成部4が生成した照合データDcと、記憶部5に記憶された登録データDrと、を比較し、認証対象者Uを認証する。認証方法としては、特に限定されないが、例えば、判定部6は、照合データ生成部4で生成された照合データDcと一致する登録データDrが記憶部5に記憶されている場合には認証対象者Uを認証し、記憶部5に記憶されていない場合には認証対象者Uを認証しない。
【0056】
以上、本発明の生体認証装置および生体認証方法について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、前述した構成では、認証対象者Uの手を弾性層31に添えて、手から照合データDcを生成しているが、これに限定されず、例えば、顔、足、肘等の認証対象者Uの少なくとも一部を弾性層31に添えて、添えられた部分から照合データDcを生成してもよい。
【0057】
また、図4に示すように、弾性入力部30は、弾性層31の変形によって変位せず、照合データ生成部4によって検出可能な基準マーカーM4を有していてもよい。なお、図4の構成では、基準マーカーM4は、第1弾性層311と基体39との間であって基体39の外周面に配置されているが、基準マーカーM4の配置としては、これに限定されず、例えば、基体39の内周面に配置されていてもよい。
【0058】
基準マーカーM4は、各カメラ41との相対的位置関係が一定であり、照合データ生成部4が第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3の変位を検出する際の基準として機能する。このような構成によれば、例えば、照合データ生成部4は、基準マーカーM4に対する第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3の変位を検出することで、より精度のよい照合データDcを得ることができる。なお、基準マーカーM4は、照合データ生成部4が第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3のそれぞれと区別(識別)できるように、例えば、第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3と形状および色彩の少なくとも一方が異なっていることが好ましい。
【0059】
また、前述の本実施形態では、2つのカメラ41を用いて弾性層31の各部を三次元画像認識しているが、例えば、複数の光軸を有するレンズを用いて1つのカメラ41で複数の画像を時分割で取得し、これらの画像を用いて弾性層31の各部を三次元画像認識してもよい。このような構成によれば、カメラ41の数が減り、生体認証装置1のコストダウンおよび小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 生体認証装置
3 入力装置
4 照合データ生成部
5 記憶部
6 判定部
22 弾性層
23 検出部
30 弾性入力部
31 弾性層
31a 外周面
31b 内周面
39 基体
41 カメラ
411 レンズ系
412 撮像素子
42 処理部
43 近赤外線カメラ
44 光源
311 第1弾性層
312 第2弾性層
313 第3弾性層
314 保護層
Dc 照合データ
Dr 登録データ
M マーカー
M1 第1マーカー
M2 第2マーカー
M3 第3マーカー
U 認証対象者
図1
図2
図3
図4