(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】遺伝子治療ベクターおよび医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20230201BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230201BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230201BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230201BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230201BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20230201BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20230201BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20230201BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230201BHJP
A61P 13/12 20060101ALN20230201BHJP
A61P 39/02 20060101ALN20230201BHJP
A61P 9/10 20060101ALN20230201BHJP
A61K 35/761 20150101ALN20230201BHJP
A61K 35/763 20150101ALN20230201BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K48/00
A61K38/16
A61P9/04
A61P3/10
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/85 Z
C12N15/12
A61P13/12
A61P39/02
A61P9/10 101
A61K35/761
A61K35/763
(21)【出願番号】P 2018555859
(86)(22)【出願日】2017-01-19
(86)【国際出願番号】 US2017014164
(87)【国際公開番号】W WO2017127565
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2020-01-07
(32)【優先日】2016-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505088684
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】アドラー、エリック ディー
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン、ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ハシェム、シェリン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】Expert Opin. Biol. Ther.,2003年,Vol. 3, No. 5,p. 789-801
【文献】Immunity,2005年,Vol. 22,p. 571-581
【文献】Nature, 2000年, Vol. 406, No. 6798, p. 906-910,doi: 10.1038/35022604
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/76
A61K 48/00
A61P 9/04
A61P 3/10
A61K 38/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーターに作動可能に連結されたリソソーム関連膜タンパク質2B(LAMP-2B)をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む
アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療ベクター
であって、前記AAVは哺乳動物心筋の細胞に対する向性を有する、
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項2】
前記AAVは、AAV9である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項3】
アニオン性リポソームに封入されている、
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項4】
前記発現カセットは、5’から3’方向に作動可能に連結された、第一の逆方向末端反復配列、エンハンサー/プロモーター領域、LAMP-2Bをコードするポリヌクレオチド、ポリアデニル化シグナルを含む3’非翻訳領域および第二の逆方向末端反復配列を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項5】
前記プロモーターは、恒常的
に活性なプロモーターである、
ことを特徴とする請求項
1または4に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項6】
前記プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター
、ニワトリβ-アクチンプロモーターおよびCMVエンハンサーを有するハイブリッドプロモーター(CAG
)プロモーター
、ヒト伸長因子-1αプロモーターならびにホスホグリセレートキナーゼ(PKG)プロモーターからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項
5に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項7】
前記プロモーターは、心臓特異的プロモーターまたは筋特異的プロモーターである、
ことを特徴とする請求項1または4に記載のAAV遺伝子治療ベクター。
【請求項8】
前記プロモーターは、心筋トロポニンT2プロモーターおよびクレアチニン筋キナーゼプロモーターからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項7に記載のAAV遺伝子治療ベクター。
【請求項9】
前記プロモーターは、ヒトLAMP-2プロモーターである、
ことを特徴とする請求項1または4に記載のAAV遺伝子治療ベクター。
【請求項10】
前記LAMP-2Bは、ヒトLAMP-2Bである、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項11】
前記LAMP-2Bをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2の核酸配列と少なくとも約90%の配列同一性を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至1
0のいずれか1項に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項12】
前記LAMP-2Bをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2の核酸配列を含む、
ことを特徴とする請求項1
1に記載の
AAV遺伝子治療ベクター。
【請求項13】
請求項1乃至1
2のいずれか1項に記載の
AAV遺伝子治療ベクターを含
み、
静脈内、動脈内、心臓内、冠動脈内および心筋内からなる群から選択される経路を介して投与される、
ダノン病
を有する哺乳類におけるオートファジー
の流れの障害
を治療するのに使用される医薬組成物。
【請求項14】
前記哺乳類に複数回投与される、
ことを特徴とする請求項1
3に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記
哺乳類は、ヒトである、
ことを特徴とする請求項1
3または1
4に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記
哺乳類は、減少したまたは検出不可能なLAMP-2
B発現を有すると同定されている、
ことを特徴とする請求項1
3乃至
15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記
哺乳類は、変異LAMP-2
B遺伝子を有すると同定されている、
ことを特徴とする請求項1
3乃至
16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2016年1月19日に出願された米国仮特許出願第62/280,269号に基づく35 U.S.C.§119(e)に従う優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この研究は、部分的に、国立衛生研究所からのグラント番号PHS 7K23HL107755およびRSA 1268によって支持される。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ダノン病は、リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2、CD107bとしても知られている)をコードする遺伝子の突然変異のために、損傷したオートファジーに関連する家族性心筋症である。新たな証拠は、心筋細胞の生物学的機能、機能、および生存を調節する際のオートファジーの重要性を強調している。しかし、オートファジーの流れの障害を伴う心筋細胞における細胞機能不全および死に関与する機構は不明である。以前の研究では、ダノン病の原因となる分子機構を調べるために、私たちは異なるLAMP-2変異を有する2人の患者からのヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)を作製した(非特許文献1)。ダノンhiPSC由来心筋細胞(hiPSC-CM)は、対照細胞hiPSC-CMと比較して、オートファジーの流れの障害および例えば細胞サイズの増加といった心不全の重要な特徴、ナトリウム利尿ペプチドの発現の増加、およびカルシウムの異常な処理を示した。さらに、ダノンhiPSC-CMは、過剰量のミトコンドリア酸化ストレスおよびアポトーシスを示した。遊離基を除去するためにスルフヒドリル抗酸化剤N-アセチルシステインを使用すると、ダノンhiPSC-CMにおけるアポトーシス細胞死が有意に減少した。私たちはまた、レンチウイルスベクターを用いて、ダノンhiPSC系統の1つにおけるドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下でLAMP-2Bアイソフォームのコード配列を導入した。ドキシサイクリンの添加によるLAMP-2Bの過剰発現は、ダノンhiPSC-CMにおける酸化ストレスレベルおよびアポトーシス細胞死も減少させ、病態生理学におけるLAMP-2Bの重要性を確認した。要約すると、私たちは、LAMP-2の変異を有する患者由来のhiPSC-CMを用いてダノン病をモデル化し、この疾患の病因についての機構的洞察を得ることができた。私たちは、LAMP-2欠損が、過剰な酸化ストレスおよびその後の心筋細胞アポトーシスを引き起こす、オートファジーの流れの障害を引き起こすことを実証した。過剰なフリーラジカルを酸化防止剤で掃去し、LAMP-2Bを過剰発現させると、インビトロで疾患表現型が改善された。先行技術は、ダノン病またはオートファジーに関連する他の疾患に対する有効な治療戦略を開示しておらず、従って、本明細書に提示されたインビボ研究は、このアプローチを立証するために必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Hashem,et al.,Stem Cells.2015 Jul;33(7):2343-50
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、例えば、被験者におけるリソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)の1つまたは複数のアイソフォームの発現を全身または局所的に増加させることにおける使用のための遺伝子治療ベクターが提供される。遺伝子治療ベクターは、ダノン病または不十分なオートファジーフラックスの他の障害の1つまたは複数の症状の予防、緩和、改善、低減、阻害および/または治療における使用を見出す。様々な態様において、遺伝子治療ベクターは、リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。様々な態様において、ベクターは、ウイルスベクターである。様々な態様において、ウイルスベクターは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)からなる群より選択されるウイルス由来である。様々な形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型1-11またはその任意のサブグループの1つまたは複数に由来する。様々な態様において、ウイルスベクターは、アニオン性リポソームに封入される。様々な態様において、ベクターは、非ウイルスベクターである。様々な態様において、非ウイルスベクターは、裸のDNA、カチオン性リポソーム複合体、カチオン性ポリマー複合体、カチオン性リポソーム-ポリマー複合体、およびエキソソームからなる群より選択される。様々な形態において、発現カセットは、5’から3’方向(転写されるmRNAの視点から)に作動可能に連結された、第一の逆方向末端反復配列、エンハンサー、プロモーター、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチド、3’非翻訳領域、ポリアデニル化(ポリA)シグナル、および第二の逆方向末端反復を含む。様々な態様において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびニワトリβアクチン(CAG)プロモーターからなる群より選択される。様々な態様において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはcDNAを含む。様々な態様において、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数のヒトLAMP-2アイソフォームを含む。様々な態様において、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、LAMP-2A、LAMP-2BおよびLAMP-2Cからなる群より選択される1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームを含む。様々な態様において、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2および配列番号3の1つまたは複数と、少なくとも約90%の配列同一性、例えば、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。様々な態様において、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2および配列番号3の1つまたは複数を含む。
【0006】
さらなる態様において、ダノン病または他のオートファジー障害の1つまたは複数の症状を、当該症状の予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転を必要とする被験者において、予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転させる方法が提供され、それは上述または本明細書(例えば、
図2を参照)に記載されるように、遺伝子治療ベクターを被験者に投与することを含む。さらなる態様において、ダノン病または他のオートファジー障害の1つまたは複数の症状を、当該症状の予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転を必要とする被験者において、予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転させる方法が提供され、それはリソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを被験者に投与することを含む。様々な態様において、ベクターは、静脈内、動脈内、心臓内、冠動脈内、心筋内、腎内、尿道内、硬膜外、頭蓋内、皮下および筋肉内からなる群より選択される経路を介して投与される。様々な態様において、ベクターは、マイクロ注入、ジェット注入、粒子衝撃、流体力学的注入、エレクトロポレーション、ソノポレーション、レーザー照射、マグネトフェクションからなる群より選択される物理的または機械的方法を介して送達または投与される。様々な形態において、ベクターは、患者の免疫抑制または血漿交換を伴い、または伴わず、複数回投与される。様々な態様において、オートファジー障害は、末期心不全、心筋梗塞、薬物毒性、糖尿病、末期腎不全および老化からなる群より選択される。様々な形態において、被験者は、ヒトである。種々の形態において、被験者は、ダノン病または他のオートファジー障害の症状を呈している。様々な態様において、被験者は、減少したまたは検出不可能なLAMP-2発現を有するものとして同定されている。様々な態様において、被験者は、変異したLAMP-2遺伝子を有するものとして同定されている。
【0007】
(定義)
用語「ダノン病」は、多系統の臨床症状を伴うX連鎖優性骨格および心筋障害を指す。ダノン病の突然変異は、リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)タンパク質発現の欠如をもたらす。主な臨床的特徴には、骨格および心筋症、心臓伝導異常、認知障害および網膜疾患が含まれる。男性は典型的には女性よりも早く、より深刻な影響を受ける。
【0008】
「リソソーム関連膜タンパク質2」および「LAMP-2」という用語は互換可能に、(1)LAMP-2核酸によってコードされるアミノ酸配列(例えば、GenBank登録番号NM_002294.2(アイソフォームA)、NM_013995.2(アイソフォームB)、NM_001122606.1(アイソフォームC)を参照のこと)またはLAMP-2ポリペプチドのアミノ酸配列(例えば、GenBank登録番号アクセッション番号NP_002285.1(アイソフォームA)、NP_054701.1(アイソフォームB)、NP_001116078.1(アイソフォームC))と、約90%超、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、300、400もしくはそれ以上のアミノ酸の領域または全長にわたって有するアミノ酸配列を有する、(2)LAMP-2ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のLAMP-2ポリペプチド)のアミノ酸配列またはLAMP-2核酸によってコードされるアミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のLAMP-2ポリヌクレオチド)およびそれらの保存的に改変された変異体を含む免疫原に対して産生された抗体、例えばポリクローナル抗体に結合する、(3)LAMP-2タンパク質をコードする核酸配列およびそれらの保存的に改変された変異体に対応するアンチセンス鎖にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリダイズする、(4)LAMP-2核酸(例えば、本明細書中に記載されるようなLAMP-2ポリヌクレオチド、本明細書中に記載されるようなLAMP-2ポリペプチドをコードするLAMP-2ポリヌクレオチド)と、約90%超、好ましくは約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の核酸配列同一性を、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、2000もしくはそれ以上の核酸の領域または全長にわたって有する核酸配列を有する、核酸ならびにポリペプチド多型変異体、対立遺伝子、突然変異体および種間相同体を意味する。
【0009】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0010】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、ならびに後で修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、α-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合したα炭素、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物を意味する。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なるが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する構造を有する化合物をいう。
【0011】
アミノ酸は、本明細書では、それらの一般に知られている3文字の記号によって、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される1文字記号のいずれかによって言及され得る。同様に、ヌクレオチドは、一般に認められている一文字コードによって言及され得る。
【0012】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列を指す。遺伝コードの縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定されるあらゆる位置で、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンのいずれかにコドンを変更することができる。そのような核酸変異は、保存的に改変された変異の1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書の全ての核酸配列はまた、核酸のあらゆる可能なサイレント変異を記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUGおよび通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列に暗黙のものである。
【0013】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸または小さなパーセンテージのアミノ酸を変更、付加または除去する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、除去または付加は、変更が化学的に類似のアミノ酸とのアミノ酸の置換をもたらす「保存的に改変された変異体」である。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。そのような保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間相同体および対立遺伝子に加えられ、除外されない。
【0014】
以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニンI、リシン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)および
7)セリン(S)、トレオニン(T)。
【0015】
「ポリヌクレオチド」は、5’から3’末端まで読み取られたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドには、RNAおよびDNAが含まれ、天然源から単離されてもよく、インビトロで合成されてもよく、天然および合成分子の組み合わせから調製されてもよい。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(略語「bp」)、ヌクレオチド(「nt」)またはキロベース(「kb」)として表される。文脈が許す限り、後者の2つの用語は、一本鎖または二本鎖であるポリヌクレオチドを記載することができる。用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全長を示すのに用いられ、用語「塩基対」と同等であると理解される。二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖は、長さがわずかに異なり、その末端が酵素的切断の結果として互い違いになっていてもよいことは、当業者には認識されよう。従って、二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドは対合し得ない。
【0016】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、比較ウィンドウにわたって最大の対応のために比較および整列された場合に、同じであるか、または特定のパーセンテージのアミノ酸残基またはヌクレオチドが同じである(すなわち、参照配列(例えば、本明細書に記載のLAMP-2ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列)との特定の領域にわたる少なくとも約80%の同一性、例えば、少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する)2つ以上の配列または部分配列を指し、または下記の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いて、または手動整列および目視検査によって測定されるような指定された領域を指す。このような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補性を指す。好ましくは、同一性は、少なくとも約25個のアミノ酸もしくはヌクレオチドの長さである領域にわたって、例えば、長さにおいて50、100、200、300、400個のアミノ酸もしくはヌクレオチドである領域にわたって、または参照配列の全長にわたって存在する。
【0017】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用することも、代替パラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。LAMP-2核酸およびタンパク質との核酸およびタンパク質の配列比較のために、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムならびにデフォルトパラメーターが使用される。
【0018】
本明細書で使用する「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適に整列された後に、配列が同じ数の連続した位置の参照配列と比較され得る、20~600、典型的には約50~約200、より典型的には約100~約150の範囲からなる群より選択される連続した位置の任意の1つのセグメントへの言及を含む。比較のための配列の整列の方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適な整列は、例えば、Smith&Waterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needleman&Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジー整列アルゴリズムによって、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性の検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(GAP、BESTFIT、FASTAおよびWisconsin Genetics Software PackageにおけるTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)または手動整列および視覚検査によって(例えば、Ausubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)を参照)実行され得る。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410 (1990)およびAltschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1977)に各々記載されたBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(ncbi.nlm.nih.gov/のワールドワイドウェブ上)から公に入手可能である。
【0019】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという示唆は、以下に記載するように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、2つのペプチドは保存的置換だけが異なる。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の示唆は、以下に記載されるように、2つの分子またはそれらの相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の示唆は、同じプライマーを使用して配列を増幅できることである。
【0020】
本明細書で使用する「投与する」とは、例えば腸内、非経口、肺および局所/経皮投与を含む局所および全身投与を指す。本明細書に記載の方法において使用を見出す化合物(例えば、1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームをコードするポリヌクレオチド)の投与経路には、例えば、経口(経口(PO)投与)、鼻または吸入投与、座薬としての投与、局所接触、経皮送達(例えば、経皮パッチによる)、髄腔内(IT)投与、静脈内(「iv」)投与、腹腔内(「ip」)投与、筋肉内(「im」)投与、病巣内投与、もしくは皮下(「sc」)投与、または徐放性デバイス、例えばミニ浸透圧ポンプ、デポ製剤などの被験者への移植を含む。投与は、非経口および経粘膜(例えば、経口、鼻、膣、直腸、または経皮)を含む任意の経路によって行うことができる。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腎臓内、尿道内、心臓内、冠動脈内、心筋内、皮内、硬膜外、皮下、腹腔内、脳室内、イオン泳動および頭蓋内を含む。他の送達様式には、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
「全身投与」および「全身的な投与」という用語は、循環系を介して、化合物または組成物が薬学的作用の標的化された部位を含む体内の部位に送達されるように、哺乳動物に化合物または組成物を投与する方法を指す。全身投与には、経口、鼻腔内、直腸および非経口(例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、経皮および皮下など、消化管を介するもの以外)投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
「共投与する」または「同時投与」という用語は、例えば化合物(例えば、LAMP-2ポリヌクレオチド)および/またはその類似体および別の活性剤に関して使用される場合、両方が同時に生理学的効果を達成することができるような、化合物および/または類似体ならびに活性剤の投与を指す。しかし、2つの薬剤を一緒に投与する必要はない。特定の実施形態において、1つの薬剤の投与は、他の薬剤の投与に先行することができる。同時の生理学的効果は、必ずしも両方の薬剤が同時に循環中に存在することを必要とする必要はない。しかしながら、特定の実施形態では、同時投与は、典型的には、任意の所与の用量に対して、有意な割合(例えば、20%以上、例えば30%または40%以上、例えば、50%または60%以上、例えば70%または80%または90%以上)の最大血清濃度で身体(例えば、血漿中)に両方の薬剤が同時に存在するようになる。
【0023】
「有効量」または「薬学的に有効な量」という用語は、所望の結果(例えば、障害または不完全なオートファジー(例えば、ダノン病)を特徴とする疾患の最終的な重篤度を低下させるのに十分な量の、1つ以上のLAMP-2アイソフォームの発現の増加をもたらし、)をもたらすために必要な1つまたは複数の化合物(例えば、遺伝子治療ベクター)の量および/または投与量、および/または投与レジメンを指す。
【0024】
「投与させる」という用語は、被験者への対象となる薬剤/化合物の投与を制御および/または許可する、医療従事者(例えば、医師)または被験者への医療ケアを制御する者により行われる行動を指す。投与させることには、適切な治療レジメンまたは予防レジメンの診断および/または決定、および/または被験者に対する特定の薬剤/化合物の処方が含まれ得る。そのような処方には、例えば、処方箋を作成し、医療記録に注釈を付けることなどが含まれる。
【0025】
語句「組み合わせて」とは、本明細書に記載の活性剤(例えば、LAMP-2ポリヌクレオチドの1つ以上のアイソフォーム)の、本明細書に記載の1つ以上の他の薬物(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)と組み合わせての使用に関して用いられる場合、活性剤および他の薬物が、生物に対する生理活性の少なくともいくつかの時間的重複が存在するように、投与されることを指す。それらが互いに組み合わせて投与されない場合、生物に対する生理学的活動において時間的重複はない。特定の好ましい実施形態において、「他の薬物」は、生物に全く投与されない(例えば、同時投与されない)。
【0026】
本明細書で使用される「治療する」および「治療」という用語は、その用語が適用される疾患もしくは状態、もしくはそのような疾患または状態の1つまたは複数の症状のいずれかの発症を遅延させる、前記いずれかの進行を遅らせるまたは逆行させる、前記いずれかの重篤度を軽減する、または前記いずれかを緩和するもしくは予防することを指す。
【0027】
「緩和する」という用語は、その病状または疾患の1つまたは複数の症状の軽減または排除、および/またはその病状または疾患の1つまたは複数の症状の発症または重症度の速度低下または遅延、および/またはその病状または疾患の予防を指す。特定の実施形態では、病状または疾患の1つまたは複数の症状の軽減または排除は、例えば、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームの発現レベルの測定可能で持続的な増加を含み得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「本質的に~からなる」という語句は、方法または組成物において列挙される活性薬剤の属または種を指し、さらに、それ自体で、列挙される表示または目的に対して実質的な活性を有しない他の剤を含み得る。
【0029】
用語「被験者」、「個体」および「患者」は、互換可能に、哺乳動物、好ましくはヒトまたは非ヒト霊長類を指すが、家畜(例えば、イヌまたはネコ)、実験室哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット)および農業哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ)も指す。様々な実施形態では、被験者は、外来、または他の臨床的環境として、病院、精神医学的ケア施設内の医師または他の医療従事者のケアの下にあるヒト(例えば、成人男性、成人女性、青年男性、青年女性、男児、女児)であってもよい。特定の実施形態では、被験者は、医師または他の従事者医療のケアまたは処方の下にないことがある。
【0030】
「遺伝子移入」または「遺伝子送達」という用語は、外来DNAを宿主細胞に確実に挿入するための方法またはシステムを指す。そのような方法は、非一体化された転移DNAの一過性発現、染色体外複製および転写レプリコン(例えばエピソーム)の発現、または宿主細胞のゲノムDNAへの移入された遺伝物質の組み込みをもたらし得る。
【0031】
「AAVベクター」とは、限定することなくAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6などを含む、アデノ随伴ウイルス血清型由来のベクターを意味する。AAVベクターは、全部または一部において欠失したAAV野生型遺伝子(例えば、rep遺伝子および/またはcap遺伝子)の1つ以上を有することができるが、機能的に隣接する逆方向末端反復(ITR)配列を保持している。機能的なITR配列は、AAVウイルスの救済、複製およびパッケージングに必要である。したがって、AAVベクターは、本明細書において、ウイルスの複製およびパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスにおいて必要とされる配列を少なくとも含むと定義される。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、例えば、配列が、機能的な救済、複製、およびパッケージングを提供する限り、ヌクレオチドの挿入、除去または置換によって変更され得る。AAV発現ベクターは、転写の方向において作動可能に連結されたコンポーネントとして、少なくとも、転写開始領域、目的のDNA(すなわち、LAMP-2遺伝子)、および転写終結領域を含む制御エレメントを提供するために、公知の技術を用いて構築される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Aは、一般的な5’および3’制御領域を有する1つのLAMP-2アイソフォーム-A、BまたはC-のタンパク質コード情報を含む構築物の概略図を示す。
【
図1B】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Bは、いくつかの実施形態の構築物の概略図を示し、下記の実施例で使用され、5’および3’逆末端反復エレメント、CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むCAGプロモーター領域、CBAイントロン、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むLAMP-2アイソフォームの1つに対するコード配列、3’UTRとしてのWPRE配列、およびウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナルからなる。
【
図1C】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Cは、天然のヒトLAMP-2プロモーター領域を含む構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態では、この構築物は、正常細胞において典型的にはLAMP-2発現をもたらすであろう細胞シグナルに応答して導入遺伝子を発現させるために使用される。
【
図1D】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Dは、ヒト伸長因子-1αプロモーターを含有する構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態では、この構築物を用いて、ヒトプロモーター領域の制御下で構成的に導入遺伝子を発現させる。他の恒常的に活性なヒトプロモーターも、EF-1αの代わりに使用することができる。
【
図1E】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Eは、限定されるものではないが、心筋トロポニンT2プロモーターなどの心臓特異的プロモーターを含む構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態において、この構築物は、心臓組織においてのみ導入遺伝子を発現するために(そして、例えば、肝臓の発現を避けるために)使用される。
【
図1F】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Fは、限定されるものではないが、クレアチニン筋キナーゼプロモーターなどの筋特異的プロモーターを含む構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態において、この構築物は、心臓および骨格筋における導入遺伝子を発現させるために(および過剰な筋での発現を避けるために)使用される。
【
図1G】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Gは、異なるプロモーター領域の制御下で(任意の潜在的な組み合わせを用いて)2つのLAMP-2アイソフォームのコード配列を含有する構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態では、この構築物(および
図1H~1Kのもの)を用いて、同じウイルスゲノムを用いて2つの異なるLAMP-2アイソフォームを発現させる。
【
図1H】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Hは、異なるプロモーター領域の制御下で(任意の潜在的な組み合わせを用いて)2つのLAMP-2アイソフォームの配列を含む構築物の概略図を示す。1つのアイソフォームは、一本鎖AAVゲノム上の(+)方向にコードされ、他のアイソフォームは(-)方向にコードされる。いくつかの実施形態では、この構築物は、別々のDNA鎖上に2つの異なるLAMP-2アイソフォームを発現させるために使用される。
【
図1I】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Iは、それぞれプロモーター領域および内部リボソーム進入部位の制御下で2つのLAMP-2アイソフォーム(任意の潜在的な組み合わせを使用)のコード配列、続いて3’UTRおよびポリAシグナルを含有する構築物の模式図を示す。いくつかの実施形態において、この構築物は、同じウイルスゲノムを用いて2つの異なるLAMP-2アイソフォームを発現させるために使用される。
【
図1J】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Jは、P2A切断部位によって分離された2つのLAMP-2アイソフォーム(任意の潜在的な組み合わせを使用)のコード配列を含む構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態では、この構築物を使用して、単一のポリペプチド中の2つの異なるLAMP-2アイソフォームをコードするmRNAを発現させ、これは、同じウイルスゲノムを用いて2Aペプチド自己切断による翻訳後に個々のLAMP-2タンパク質アイソフォームに自発的に切断する。
【
図1K】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Kは、LAMP-2エキソン1-8のコード配列に続いて、イントロン領域(すべての必要なスプライスシグナルを含む)、3’UTRおよびポリAシグナルを伴うLAMP-2アイソフォームの1つに対するエキソン9コード配列、第2のイントロン領域(必要なスプライスシグナルをすべて含む)、および3’UTRおよびポリAシグナルを伴う異なるLAMP-2アイソフォーム(任意の潜在的な組み合わせで)に対するエキソン9コード配列を含む構築物の概略図である。いくつかの実施形態において、この構築物は、同じウイルスゲノムを用いて、正常細胞において異なるLAMP-2 mRNAを生成する機構である、選択的スプライシングを介して2つの異なるLAMP-2アイソフォームのmRNAを発現させるために使用される。
【
図1L】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Lは、異なるプロモーター領域の制御下で、3’UTRおよびポリAシグナルを有する、3つすべてのLAMP-2アイソフォームに対するコード配列を含む構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態では、この構築物は、同じウイルスゲノムを使用して異なるLAMP-2アイソフォームの3つすべてを発現させるために使用され、すべての潜在的なLAMP-2機能の回復を可能にする。
【
図1M】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Mは、プロモーター領域および2つの異なる内部リボソーム進入部位の制御下で、任意の順序で、3つのLAMP-2アイソフォームに対するコード配列、続いて3’UTRおよびポリAシグナルを含む構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態では、この構築物は、同じウイルスゲノムを使用して3つのLAMP-2アイソフォームをすべて発現させるために使用される。
【
図1N】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Nは、P2A開裂部位によって分離された、任意の潜在的な順序での、3つ全てのLAMP-2アイソフォームのコード配列を含む構築物の概略図を示す。いくつかの実施形態では、この構築物を使用して、単一のポリペプチド中の3つの異なるLAMP-2アイソフォームをコードするmRNAを発現させ、これは、同じウイルスゲノムを使用して2Aペプチド自己切断による翻訳後に個々のLAMP-2タンパク質アイソフォームを同時に切断する。
【
図1O】
図1は、アデノ関連ウイルスLAMP-2遺伝子送達構築物の概略図を示す。示されたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)LAMP-2コード領域は、一般に、上流リボソーム結合配列および開始コドンを含むと理解すべきであるが、いくつかの実施形態では、天然エレメントは異種エレメントで置換することができる。上流のリボソーム結合部位は、IRESまたは自己切断ペプチドの下流のコード領域と組み合わせて使用されない。開始コドンは、自己切断ペプチドの下流のコード領域に必ずしも存在しない。
図1A~1Fは、1つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1G~1Kは、2つのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。
図1L~1Oは、3つ全てのLAMP-2アイソフォームを含むベクターゲノムを示す。この図では、以下の略語を使用している。ITR:末端逆位配列、LAMP-2:リソソーム関連膜タンパク質2型、UTR:翻訳されていない領域、Poly A:ポリアデニル化シグナル、CAG:CMVエンハンサーおよびCBAプロモーター配列を含むプロモーター領域、CMV:サイトメガロウイルス、CBA:チキンベータアクチン、WPRE:ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント、RBG:ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル、EF-1:ヒト伸長因子-1、IRES:内部リボソーム侵入部位、P2A:2Aペプチド。
図1Oは、LAMP-2エキソン1~8に対するコード配列に続いて、イントロン領域(すべての必要なスプライスシグナルを含む)、3’UTRおよびポリAシグナルを伴うLAMP-2アイソフォームの1つに対するエキソン9コード配列、第2のイントロン領域(すべての必要なスプライスシグナルを含む)、3’UTRおよびポリAシグナルを伴う第のLAMP-2アイソフォームに対するエキソン9コード配列、第3のイントロン領域(すべての必要なスプライスシグナル)、および3’UTRおよびポリAシグナルを伴う第3のLAMP-2アイソフォームに対するエキソン9コード配列を含む構築物の概略図である。いくつかの実施形態において、この構築物は、同じウイルスゲノムを用いて、正常細胞において異なるLAMP-2 mRNAを生成するメカニズムである、選択的スプライシングを介した3つすべてのLAMP-2アイソフォームのmRNAを発現させるために使用される。エキソン9コード配列は、任意の潜在的な順序および組み合わせで配置することができる。
【
図2】
図2は、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームの発現を促進することによる治療処置(例えば、ダノン病または少なくとも部分的にはオートファジー欠損によって引き起こされる別の疾患)の方法のフローチャートを示す。
【
図3A】
図3A~Fは、LAMP-2アイソフォームコード配列およびタンパク質配列を示す。
図3A:LAMP-2Aコード配列。
【
図3B】
図3A~Fは、LAMP-2アイソフォームコード配列およびタンパク質配列を示す。
図3B:LAMP-2Aタンパク質配列。
【
図3C】
図3A~Fは、LAMP-2アイソフォームコード配列およびタンパク質配列を示す。
図3C:LAMP-2Bコード配列。
【
図3D】
図3A~Fは、LAMP-2アイソフォームコード配列およびタンパク質配列を示す。
図3D:LAMP-2Bタンパク質配列。
【
図3E】
図3A~Fは、LAMP-2アイソフォームコード配列およびタンパク質配列を示す。
図3E:LAMP-2Cコード配列。
【
図3F】
図3A~Fは、LAMP-2アイソフォームコード配列およびタンパク質配列を示す。
図3F:LAMP-2Cタンパク質配列。
【
図4A】
図4A~4Cは、配列同一性を示す、LAMP-2A(
図4A)、LAMP-2B(
図4B)およびLAMP-2C(
図4C)のヒトおよびマウスのタンパク質配列の最後の90アミノ酸の比較を示す。
【
図4B】
図4A~4Cは、配列同一性を示す、LAMP-2A(
図4A)、LAMP-2B(
図4B)およびLAMP-2C(
図4C)のヒトおよびマウスのタンパク質配列の最後の90アミノ酸の比較を示す。
【
図4C】
図4A~4Cは、配列同一性を示す、LAMP-2A(
図4A)、LAMP-2B(
図4B)およびLAMP-2C(
図4C)のヒトおよびマウスのタンパク質配列の最後の90アミノ酸の比較を示す。
【
図5A】
図5A~Bは、これらの遺伝子を有するAAV9ベクターの投与後のLAMP-2B(
図5A)およびLAMP-2A(
図5B)のmRNA発現の用量依存的増加を示す。
【
図5B】
図5A~Bは、これらの遺伝子を有するAAV9ベクターの投与後のLAMP-2B(
図5A)およびLAMP-2A(
図5B)のmRNA発現の用量依存的増加を示す。
【
図6】
図6は、これらの遺伝子を有するAAV9ベクターの投与後のLAMP-2BおよびLAMP-2Aタンパク質発現の用量依存的増加を示す。
【
図7A】
図7A~Cは、DAPI(青色)および蛍光標識抗LAMP-2抗体(白色)で染色した心臓切片の蛍光顕微鏡写真を示す。
図7Aは、AAV9.LAMP-2Bで処置したLamp-2ノックアウト(KO)マウス由来の心臓切片を示す。
【
図7B】
図7A~Cは、DAPI(青色)および蛍光標識抗LAMP-2抗体(白色)で染色した心臓切片の蛍光顕微鏡写真を示す。
図7Bは、AAV9.EGFPで処置したLamp-2 KOマウス由来の心臓切片を示す。
【
図7C】
図7A~Cは、DAPI(青色)および蛍光標識抗LAMP-2抗体(白色)で染色した心臓切片の蛍光顕微鏡写真を示す。
図7Cは、未処理の野生型(WT)マウス由来の心臓切片を示す。
【
図8A】
図8A~Bは、DAPI(青色)および蛍光標識抗LAMP-2抗体(白色;矢印で強調したいくつかの例)で染色した心臓切片の蛍光顕微鏡写真を示す。
図8Aは、AAV9.LAMP-2Bで処置したLamp-2 KOマウス由来の心臓切片を示す。
【
図8B】
図8A~Bは、DAPI(青色)および蛍光標識抗LAMP-2抗体(白色;矢印で強調したいくつかの例)で染色した心臓切片の蛍光顕微鏡写真を示す。
図8Bは、AAV9.EGFPで処置したLamp-2 KOマウス由来の心臓切片を示す。
【
図9A】
図9A~
図9Hは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを示す。
図9Aは、システムの動作の概略図を示す。
【
図9B-Gprime】
図9A~
図9Hは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを示す。
図9B~G’は、蛍光顕微鏡画像であり、X’(Xプライム)画像は、プライムなしで同じ文字でラベル付けされた画像に概説されたインセットの拡大である。
図9B~G’グリッドに関して、第1列は赤色蛍光の画像であり、第2列は緑色蛍光の画像であり、第3列は第1列と第2列との合成画像であり、黄色は赤色+緑色蛍光を表し、上の2列は、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーター構築物を発現するWTマウスからの心臓切片の画像であり、下の2列は、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーター構築物を発現するLamp-2 KOマウスからの心臓切片の画像である。未熟なオートリソソームは、緑色と赤色との両方(または融合した画像では黄色)で蛍光を発する。成熟したオートリソソームは、赤色のみを蛍光する。黄色の矢印は、両方の色で蛍光を発する自食性の液胞を強調し、白い矢印は、赤色でのみ蛍光を発する自食性液胞を強調する。
【
図9H】
図9A~
図9Hは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを示す。
図9Hは、WTおよびLamp-2 KOマウスにおける自己貪食細胞またはオートリソソームである自食性液胞の数を示す。
【
図10A】
図10A~Eは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを用いた-2遺伝子治療の効果を示す。
図10Aは、未処理WTマウス心臓切片の画像である。
図10A、10Cおよび10Dの画像において、赤色の矢印は、存在するオートリソソームのいくつかを強調するために使用される。
【
図10B】
図10A~Eは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを用いた-2遺伝子治療の効果を示す。
図10Bは、対照ベクターAAV9.EGFPで処理したLamp-2 KOマウスからの形質導入細胞を示す心臓切片の画像である。
【
図10C】
図10A~Eは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを用いた-2遺伝子治療の効果を示す。
図10Cは、遺伝子治療ベクターAAV9.LAMP-2Aで処理したLamp-2 KOマウス由来の心臓切片の画像である。
図10A、10Cおよび10Dの画像において、赤色の矢印は、存在するオートリソソームのいくつかを強調するために使用される。
【
図10D】
図10A~Eは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを用いた-2遺伝子治療の効果を示す。
図10Dは、遺伝子治療ベクターAAV9.LAMP-2Bで処理したLamp-2 KOマウス由来の心臓切片の画像である。
図10A、10Cおよび10Dの画像において、赤色の矢印は、存在するオートリソソームのいくつかを強調するために使用される。
【
図10E】
図10A~Eは、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを用いた-2遺伝子治療の効果を示す。
図10Eは、4つの条件について、オートファゴソームおよびオートリソソームによって表される全オートファジーの空胞の割合を示す。
【
図11A】
図11A~C’は、WT(
図11A、A’)およびLamp-2 KO(
図11B、B’)マウス、ならびにAAV9.LAMP-2Bで処置したLamp-2 KOマウス(
図11C、C’)からの心臓組織の電子顕微鏡写真を示す。白い矢印は、いくつかの自食性液胞を強調している。黒い矢印は、損傷したミトコンドリアのいくつかを強調している。
【
図11B】
図11A~C’は、WT(
図11A、A’)およびLamp-2 KO(
図11B、B’)マウス、ならびにAAV9.LAMP-2Bで処置したLamp-2 KOマウス(
図11C、C’)からの心臓組織の電子顕微鏡写真を示す。白い矢印は、いくつかの自食性液胞を強調している。黒い矢印は、損傷したミトコンドリアのいくつかを強調している。
【
図11C】
図11A~C’は、WT(
図11A、A’)およびLamp-2 KO(
図11B、B’)マウス、ならびにAAV9.LAMP-2Bで処置したLamp-2 KOマウス(
図11C、C’)からの心臓組織の電子顕微鏡写真を示す。白い矢印は、いくつかの自食性液胞を強調している。黒い矢印は、損傷したミトコンドリアのいくつかを強調している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.イントロダクション
ダノン病は、リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2、CD107bとしても知られている)遺伝子の発現の低下または欠失をもたらす突然変異によって引き起こされる。本方法は、部分的に、1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにパッケージングされた)を導入し、ダノンの患者にLAMP-2遺伝子/個々のアイソフォームを送達することに基づく。1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドの送達後、LAMP-2導入遺伝子は、患者自身の細胞によって発現される。ダノン患者におけるLAMP-2遺伝子発現の回復は、疾患の表現型の改善をもたらし得、この疾患の治療として役立つ。1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドの被験者への送達はまた、限定はされないが、末期心不全、心筋梗塞薬物毒性、糖尿病、末期ステージの腎不全、および老化を含むオートファジーの他の疾患の治療に使用され得る。オートファジーの異常、特にオートファジーの流れの減少は、これらの障害および多くの他の障害に関係している。LAMP-2遺伝子のより高いレベルの発現は、オートファジーの流れを増加させ、したがって、これらの障害の治療として役立つ。
【0034】
ダノン病を遺伝子治療法によって治療するための技術は、現在は存在しない。ダノン病は、伝統的なリソソーム蓄積障害ではなく、それは、特異的細胞基質を処理するために必要とされるリソソームタンパク質(例えばトランスポーターまたは酵素)の欠損として一般的に定義され、リソソーム内のその特異的基質の毒性蓄積をもたらす。ダノン病は、自食作用または自食性液胞性ミオパシーの障害であると理解され、それは、自食作用経路によって処理されるすべての細胞成分の分解に影響を及ぼし、特異的基質の蓄積によって引き起こされない。さらに、既存の技術は、ダノン病または他のオートファジーの障害の治療のためのLAMP-2遺伝子/個体のアイソフォームの送達を明示的に記載していない。したがって、本方法は、ダノン病を治療する独自の方法を提供し、オートファジーの障害を改善するための手段としてのLAMP-2遺伝子の送達を明示的に含めることにより既存のAAV技術を改善する。
【0035】
2.治療を受ける患者
本明細書に記載の方法を使用する治療を受けやすい被験者/患者には、不十分なオートファジーの流れにより特徴付けられる疾患または障害(例えば、ダノン病およびオートファジーの他の既知の障害であって、限定されることなく、収縮期および拡張期心不全、心筋梗塞、薬物毒性(例えば、アントラサイクリン類クロロキンおよびその誘導体)、糖尿病、末期腎臓病ならびに老化を含む)のリスクを有するが、症状を呈していない個体、または現在症状を呈している被験者が含まれる。そのような被験者は、変異したLAMP-2遺伝子を有するものとして、またはLAMP-2発現のレベルの低下もしくは非検出として同定されている可能性がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、被験者は、不十分なオートファジーの流れにより特徴付けられる疾患または障害(例えば、ダノン病およびオートファジーの他の既知の障害であって、限定されることなく、収縮期および拡張期心不全、心筋梗塞、薬物毒性、糖尿病、末期腎臓病ならびに老化を含む)を呈している。症状は活発に現れてもよく、抑制または制御(例えば、投薬による)または寛解されていてもよい。被験者は、例えば有資格の医師によって、障害と診断されている場合とされていない場合がある。
【0037】
被験者は、送達時、例えば、胚性、胎児性、幼児性、若年性または成体性のような発達の任意の段階での任意の哺乳動物であり得る。様々な実施形態において、被験者は、子供、少年または成人である。様々な態様において、被験者は哺乳動物、例えばヒトまたは家庭内哺乳類(例えばイヌまたはネコ)である。
【0038】
3.LAMP-2ポリヌクレオチドの送達ベクター
一般に、本明細書に記載の遺伝子治療ベクターは、リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、必要とする被験者(例えば、ダノン病、または少なくとも部分的にはLAMP-2発現の欠失に起因する欠失したオートファジーの流れによって特徴づけられる別の障害を有する被験者)においてLAMP-2を発現させて、欠失していたLAMP-2タンパク質の発現レベルおよびオートファジーの流れを部分的または完全に矯正することを可能にする。遺伝子治療ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。例示的な非ウイルスベクターには、例えば、裸のDNA、カチオン性リポソーム複合体、カチオン性ポリマー複合体、カチオン性リポソーム-ポリマー複合体、およびエキソソームが含まれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ベクターは、単一アイソフォーム、LAMP-2A、LAMP-2B、またはLAMP-2C(例えば、単一のLAMP-2アイソフォームの遺伝子を有するAAVベクターの模式図を示す
図1A~Fを参照)を有する。他の実施形態では、ベクターは、2つのLAMP-2アイソフォーム(例えば、2つのLAMP-2アイソフォーム、1つのDNA鎖上のLAMP-2Bおよび他のDNA鎖上のLAMP-2Aについての遺伝子を有するAAVベクターの模式図を示す
図1G~Kを参照)についての遺伝子を保有する。さらに他の実施形態は、3つ全てのアイソフォームを有する(
図1L-O参照)。描写されたゲノム構造に加えて、3つのアイソフォームベクターもまた、示された様々な実施形態のハイブリッドを作製することによって構築されることができる。例えば、2つのプロモーター、単一のアイソフォームの発現を駆動するものおよびIRESを使用する2つのアイソフォームカセットの発現を駆動する他のもの、自己切断ペプチド、または選択的スプライシングが存在し得る。複数のアイソフォームを含む様々な実施形態において、アイソフォームは、任意の順序で発生するか、B、A、Cの自然順序を反映するか、またはそれを変更する。単一のベクター中に複数のアイソフォームを運ぶことによって、トランスフェクトされた細胞中のアイソフォームの共発現を確実にすることができ、用量中の全ベクター粒子の使用をより少なくすることができる。
【0040】
ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが含まれるが、これらに限定されない。本発明の実施に有用な遺伝子送達ウイルスベクターは、分子生物学の分野で周知の方法論を利用して構築することができる。典型的には、導入遺伝子を保有するウイルスベクターは、導入遺伝子をコードするポリヌクレオチド、適切な調節エレメントおよび細胞形質導入を媒介するウイルスタンパク質の産生に必要なエレメントから構築される。
【0041】
このような組換えウイルスは、当該分野で公知の技術、例えば、パッケージング細胞のトランスフェクション、またはヘルパープラスミドまたはウイルスによる一過性トランスフェクションによって産生され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例には、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが含まれるが、これらに限定されない。このような複製欠損組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコールは、例えば国際公開第95/14785号、国際公開第96/22378号、米国特許第5,882,877号明細書、米国特許第6,013,516号明細書、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号明細書および国際公開第94/19478号において見出され得、これらの各々の完全な内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
いくつかの実施形態において、遺伝子ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。様々な態様において、AAVベクターは、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AA5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10ならびに自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含むそのサブグループおよび混合物、またはヒト、サルまたは他の種に感染することができるAAVの任意の他の血清型から選択される。一実施形態では、AAVベクターはAAVrh10である。別の実施形態では、AAVベクターはAAV9である。さらに別の実施形態では、AAVベクターはAAV8である。組換えAAV(rAAV)ベクターは、治療遺伝子の送達にしばしば利用され、ヒト臨床試験において研究されている。rAAVベクターは、発現のために患者の細胞に特異的な導入遺伝子を送達するように設計することができる。rAAVベクターによるウイルスゲノムの感染および導入後、ウイルス遺伝子は、宿主のゲノムに組み込まれないが宿主細胞の翻訳機構によって発現される染色体外構造物として主に存在する。宿主細胞の感染および遺伝子発現を成功させるために、rAAVベクターは、いくつかの成分(
図1参照)、逆方向末端反復要素(ITR)、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域、導入遺伝子および3’非翻訳領域、ならびにポリアデニル化シグナルを必要とする。宿主細胞のウイルス感染後、プロモーター領域は、宿主細胞の翻訳機構によってウイルス送達された導入遺伝子の翻訳のためのシグナルを開始する。
【0043】
一般に、制御エレメントは、哺乳動物細胞において機能的であるように選択される。作動可能に連結された成分を含む得られた構築物は、機能的AAV ITR配列と結合している(5’および3’)。「アデノ随伴ウイルス逆転末端反復」または「AAV ITR」は、DNA複製起点としておよびウイルスのパッケージングシグナルとしてシスで共に機能するAAVゲノムの各末端に見出される当該分野で認識された領域を意味する。AAV ITRは、AAV repコーディング領域と共に、十分な切除および救済、ならびに哺乳類細胞ゲノムにおける2つの隣接するITRの間に挿入されたヌクレオチド配列の統合をもたらす。AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV2配列について、Kotin,1994;Berns,K I“Parvoviridae and their Replication”in Fundamental Virology,2nd Edition,(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.,、全内容が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。本明細書中で使用される場合、「AAV ITR」は必ずしも野生型ヌクレオチド配列を含む必要はなく、例えばヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変更されてもよい。
【0044】
さらに、AAV ITRは、限定されることなくAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AA5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10を含む任意のいくつかのAAV血清型に由来してもよい。さらに、AAVベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、それらが意図されたように機能する限り、必ずしも同一である必要はなく、または同じAAV血清型または単離物に由来する必要はない。すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターに由来する対象の配列を切除および救済し、AAV Rep遺伝子産物が細胞内に存在する場合に、レシピエント細胞ゲノムへの異種配列の組み込みを可能にする。さらに、AAV ITRは、限定されることなくAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AA5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10を含む任意のいくつかのAAV血清型に由来し得る。さらに、AAV発現ベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、それらが意図されたように機能する限り、必ずしも同一である必要はなく、または同じAAV血清型または単離物に由来する必要はない。すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターに由来する対象の配列を切除および救済し、AAV Rep遺伝子産物が細胞内に存在する場合に、レシピエント細胞ゲノムへのDNA分子の組み込みを可能にする。
【0045】
種々の態様において、哺乳動物心筋の細胞、特に心筋細胞および心筋前駆細胞に対する向性および高い形質導入効率を有するAAV血清型に由来するベクターが使用される。異なる血清型の形質導入効率の検討および比較は、Cearley C N et al.,Molecular Therapy 16(10);1710-1718,2008に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。他の非限定的な例において、好ましいベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AA5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11またはAAVrh10のような任意の血清型に由来するベクターを含み、それは心筋細胞の細胞を形質導入することも示されている 。
【0046】
種々の態様において、選択されたヌクレオチド配列は、インビボで被験者においてその転写または発現を指示する制御エレメントに作動可能に連結される。そのような制御エレメントは、選択された遺伝子に正常に関連する制御配列を含むことができる。
【0047】
あるいは、異種制御配列を用いることができる。有用な異種制御配列は、一般に、哺乳動物またはウイルス遺伝子をコードする配列に由来するものを含む。例としては、限定されることなく、ホスホグリセレートキナーゼ(PKG)プロモーター、CAG(ウサギβ-グロビン遺伝子の第1イントロンおよびスプライスアクセプターによる配列を含むニワトリβ-アクチンプロモーターを有するCMVエンハンサー)プロモーター、MCK(筋クレアチンキナーゼ)プロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV前初期プロモーター領域(CMVIE)などのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。プロモーターは、ヒト起源のものであってもよいし、マウスを含む他の種由来のものであってもよい。さらに、海洋メタロチオネイン遺伝子のような非ウイルス遺伝子由来の配列も本明細書中での使用が見出される。このようなプロモーター配列は、例えば、Stratagene(San Diego、CA)より入手可能である。異種プロモーターの例としては、CMVプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。誘導性プロモーターの例としては、エクジソン、テトラサイクリン、および低酸素アンドフィンに対するDNA応答エレメントが挙げられるが、これに限定されない。複数のアイソフォームが単一のベクター内でコードされる場合、それらは好ましくは、必ずしもそうではないが、異なる制御配列に作動可能に連結される。
【0048】
同様に、3’非翻訳領域(3’UTR)およびポリアデニル化シグナルを含むコード領域の3’末端の制御エレメントは、挿入された遺伝子または異種の供給源に由来し得る。特定の実施形態は、3’UTRまたはウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナルまたはその両方として、ウッドチャック肝炎ウィルス後転写調節エレメント(WPRE)を利用する。3’制御エレメントはまた、コード領域に接続する制御エレメントを含むことができる。例えば、第1および第2、ならびに第2および第3(存在する場合)アイソフォームの間に内部リボソーム侵入部位(IRES)(例えば、
図1Iおよび1Mを参照)または自己切断ペプチド配列(例えば、ピコルナウイルス2Aペプチド、例えば、
図1Jおよび1Nを参照)を配置することによって、単一プロモーターの制御下で複数のLAMP-2アイソフォームを発現させることが可能である。IRESの場合、2または3のポリペプチドが翻訳される。自己切断ペプチドの場合、介在する自己切断ペプチドと共にLAMP-2アイソフォームが、翻訳後または翻訳中に置換LAMP-2アイソフォームに切断される単一のポリペプチドとして翻訳される単一のリーディングフレームとしてベクター中に存在する。
【0049】
単一のプロモーターの制御下での転写は、ベクターが選択的スプライシングを支持するように構築された場合にも達成可能である。このような構築物では、LAMP-2の最初の8つのエキソンは、3つのLAMP-2アイソフォーム(例えば、
図1Kおよび1Oを参照)を生じさせる代替エキソンの2つまたは3つすべてを含むように、cDNA、続いて2つまたは3つのイントロン-エキソン対において共にスプライシングされて存在する。様々な実施形態において、イントロン-エキソン対は、任意の順序で発生し、B、A、Cの自然順序を反映するか、またはそれを変更する。天然のイントロンは長すぎて、AAVのような大きさのベクターには含まれることができない。そのような場合、イントロンは、必要な5’および3’スプライス部位およびスプライスシグナルを保持しながら、中央配列の除去によって切断される。典型的には、スプライシングを確実にするためには、イントロンの5’末端にわずか数塩基およびイントロンの3’末端に約100~200塩基を保持すれば十分である。あるいは、異種イントロンを天然イントロンと置換することができる。
【0050】
AAV ITRによって結合された対象のDNA分子を有するAAV発現ベクターは、選択された配列を、主要なAAVオープンリーディングフレーム(「ORF」)を切除したAAVゲノムに直接挿入することによって構築することができる。AAVゲノムの他の部分もまた、複製およびパッケージング機能を可能にするために十分な量のITRが残っている限り、削除することができる。そのような構築物は、当技術分野で周知の技術を用いて設計することができる。例えば、米国特許第5,173,414号明細書および米国特許第5,139,941号明細書、国際公開第92/01070号(1992年1月23日公開)および国際公開第93/03769号(1993年3月4日公開)、Lebkowskiら、1988、Vincentら、1990、Carter、1992、Muzyczka、1992、Kotin、1994、Shelling and Smith、1994、およびZhouら、1994を参照のこと(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0051】
あるいは、AAV ITRを、ウイルスゲノムまたはそれを含むAAVベクターから切り出し、標準的なライゲーション技術を用いて別のベクター中に存在する選択された核酸構築物の5’および3’に融合させることができる。ITRを含むAAVベクターは、例えば、米国特許第5,139,941号明細書に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。特に、受託番号53222、53223、53224、53225、および53226でAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能ないくつかのAAVベクターが記載されている。さらに、キメラ遺伝子を、1つまたは複数の選択された核酸配列の5’および3’に整列したAAV ITR配列を含むように、合成的に作製することができる。哺乳類CNS細胞におけるキメラ遺伝子配列の発現のための好ましいコドンを使用することができる。完全なキメラ配列は、標準的な方法によって調製された重複オリゴヌクレオチドから構築される。例えば、Edge Nature,vol,292,1981,page 756;Nambair et al.,Science,vol.223,1984,page 1299;Jay et al.,J.Biol.Chem.vol.259,1984,page 6311に記載されており、その各々の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。AAVウイルスを産生するために、AAV発現ベクターを、トランスフェクションなどの公知の技術を用いて適切な宿主細胞に導入する。多くのトランスフェクション技術が当該技術分野において一般的に知られている。例えば、Graham et al,Virology,52,456-467,(1973);Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier,and Chu et al.(1981)Gene 13:197を参照のこと。特に適切なトランスフェクション法は、リン酸カルシウム共沈(Grahamら、1973)、培養細胞への直接マイクロインジェクション(Capeechi、1980)、エレクトロポレーション(Shigekawaら、1988)、リポソーム媒介遺伝子導入(Manninoら、1988)、脂質媒介形質導入(Felgnerら、1987、PNAS USA、84,21,7413-17)、および高速マイクロプロジェクタイルを用いた核酸送達(Kleinら、1987、Endocrinology 120:2339-45)を含む。前述の参考文献の各々の完全な内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0052】
一実施形態では、AAVは、LAMP-2アイソフォームをコードする核酸配列に加えて、AAV2に由来するITRを有するAAVベクターの骨格、マウスPGK(ホスホグリセレートキナーゼ)遺伝子またはサイトメガロウイルス即時遺伝子由来のエンハンサーおよびプロモーターからなるサイトメガロウイルス/ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーター(CAG)といったプロモーター、スプライスドナーならびにニワトリβ-アクチン遺伝子由来のイントロン、ウサギβ-グロビン由来のスプライスアクセプター、またはPGK、CAG、MCK、EF-1または天然LAMP-2プロモーターのような任意のプロモーターを含む。様々な実施形態において、ウイルスベクターは、例えば、米国特許出願公開第2004/0284691号明細書に記載されているように、アニオン性リポソームでカプセル化される。
【0053】
様々な実施形態において、ベクター内の発現カセットの構造は、任意の公知のAAV血清型またはscAAVを含むサブグループ由来の第1および第2の(例えば、5’および3’)逆方向末端反復(ITR)、エンハンサーエレメント(例えば、CMVエンハンサー)の存在下または非存在下での任意の公知のプロモーター領域(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはニワトリβ-アクチンプロモーター)、リソソーム関連タンパク質2遺伝子(すべての既知のアイソフォーム、例えば、LAMP-2A、LAMP-2BおよびLAMP-2C、およびこれらのアイソフォームのすべての既知の多型)、ならびにポリアデニル化シグナル(ウサギβ-グロビンを含むがこれに限定されない)を含む。
【0054】
ウイルスによって送達されたLAMP-2アイソフォーム遺伝子または種々のアイソフォーム遺伝子の組み合わせの翻訳は、その特定のアイソフォームについてのLAMP-2タンパク質の発現をもたらし、それは次いで、宿主細胞の機構による宿主細胞のリソソーム膜に標的化される。次いで、LAMP-2アイソフォームの発現および機能の回復は、オートファジーの流れ(マクロオートファジー、ミトファジー、シャペロン媒介性オートファジーおよびDNA/RNAオートファジーなどの任意の既知の形態のオートファジーを潜在的に含むが、必ずしもそれに限定されない)を回復させ、それは、ダノン患者において不十分かつ因果的であり、疾患に冒された宿主細胞および損傷を受けた細胞小器官の有毒な細胞成分を除去し、細胞機能および生存を改善することを可能にする。最終的に、LAMP-2アイソフォーム発現の回復は、ダノン病を引き起こす根底にある遺伝的欠陥を治療するのに役立ち、疾患の表現型および症状を緩和する。LAMP-2が発現され得るが、十分なオートファジーの流れを作りだし、その結果正常な細胞機能および生存を促進するのに十分なレベルではないオートファジーの他の疾患において、rAAVベクターによるトランスジェニックLAMP-2アイソフォームの送達は、LAMP-2タンパク質の過剰発現をもたらす。この過剰発現は、オートファジーの流れを正常近く、正常、または正常以上のレベルに回復させる。正常なオートファジーの崩壊を引き起こす疾患におけるオートファジーの流れの回復は、疾患の表現型および症状を緩和し、緩和し、および/または逆転させる。
【0055】
4.ベクター医薬組成物
例えば、1つまたは複数のLAMP-2のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドの核酸配列を含む、治療有効量のベクターを含む、欠損したオートファジーの流れを特徴とする障害(例えば、ダノン病)を予防または治療するのに使用するための医薬組成物が提供される。
【0056】
本発明の化合物および組成物の単回投与量または一日総投与量は、最良の医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることは理解されるであろう。任意の特定の患者に対する特定の治療上有効な用量レベルは、治療される障害および障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療の持続時間;使用される特定の核酸またはポリペプチドと組み合わせてまたは同時に使用される薬物;医学分野でよく知られている同様の要因を含む様々な要因に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルより低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、十分に当業者の範囲内である。しかしながら、製品の1日投与量は、成人1日当たりの広い範囲にわたって変化し得る。投与されるべき本発明によるベクターの治療有効量、ならびに本明細書に記載のウイルスもしくは非ウイルス粒子および/または医薬組成物の数による病的状態の治療のための投与量は、患者の年齢および状態、障害(disturbance)または障害(disorder)の重篤度、投与の方法および頻度、ならびに使用される特定のペプチドを含む多数の要因に依存する。
【0057】
ベクターを含有する医薬組成物は、例えば脳室内、胸腔内、冠動脈内、静脈内、動脈内、腎内、尿道内、硬膜外または筋肉内などの選択された投与様式に適した任意の形態であり得る。1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子治療ベクターは、単位投与形態において、慣用の医薬担体との混合物として、動物およびヒトに対して、単独の活性剤として、または他の活性剤と組み合わせて投与することができる。
【0058】
様々な態様において、医薬組成物は、注射することができる製剤に対して薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらは、特に、等張性の無菌の生理食塩水(リン酸一ナトリウムまたはリン酸ニナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどまたはそれらの塩の混合物)であってもよく、または、乾燥した、特に、場合によっては滅菌水または生理食塩水を加えると注射溶液に調製可能な凍結乾燥した組成物であってもよい。
【0059】
注射用途に適した医薬形態は、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む処方物;および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。すべての場合において、形態は無菌でなければならず、液体でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。
【0060】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩として遺伝子治療ベクターを含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水の中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、および油中で調製することもできる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐために保存剤を含有する。
【0061】
遺伝子治療ベクターは、中性または塩の形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が含まれ、例えば塩酸またはリン酸といった無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、等といった有機塩と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄といった無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインといった有機塩基から誘導することもできる。
【0062】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および野菜油を含有する溶媒または分散媒としてもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらされ得る。
【0063】
必要に応じて上に列挙したいくつかの他の成分と共に適切な溶媒中に必要量の活性ポリペプチドを組み込み、続いて濾過滅菌することにより、滅菌注射溶液を調製する。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製され、それは、基本的な分散媒体および上記のものからの必要な他の成分を含む。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、それは、予め滅菌濾過した粉末の入った溶液から活性成分+任意の追加の所望の成分の粉末を生じさせる。
【0064】
5.オートファジーの疾患を治療する方法
さらに提供される方法は、ダノン病または他のオートファジー障害の1つまたは複数の症状を、当該症状の予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転を必要とする被験者において、予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転させる方法であって、被験者に前述および本明細書に記載の遺伝子治療ベクター、例えば、リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)の1つ以上のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを投与することを含む。ベクターは、それを必要とする被験者に送達され、それにより、1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームをコードするポリヌクレオチドが、治療上有効なレベルで形質導入された細胞によって発現される。
【0065】
1つの特定の実施形態では、ベクターはAAV9である。別の特定の実施形態では、ベクターはAAV8である。別の特定の実施形態では、ベクターはAAVrH10である。これらの実施形態のさらなる側面において、それらはダノン病の治療に特異的に使用される。
【0066】
様々な態様において、ベクターは、静脈内、動脈内、心臓内、冠動脈内、心筋内、腎内、尿道内、硬膜外、皮下および筋肉内からなる群より選択される経路を介して投与される。様々な実施形態において、ベクターは、心胸腺切開術による心外膜注射、冠動脈内注射、心内膜注射、または心臓において有用な別のタイプの注射によって心筋に直接送達される。さらなる投与経路は、例えば、表面皮質適用または他の非定形適用のような、直接視覚化下でのベクターの局所適用をも含み得る。
【0067】
ウイルスベクターは、典型的には、反復投薬が必要または望ましくなる場合に、その個体における特定のベクターの有効性を低下させるか、または完全に阻害することができる抗体応答を含むことができる免疫応答を誘発する。反復投薬は、例えば、細胞増殖、特にエピソームベクターのためにベクターが時間とともに失われる可能性があるため、適切となり得る。アクセスすることがより困難な組織は、疾患の有効な治療のために十分な数の細胞をトランスフェクトするためにベクターの複数回の投与を必要とすることがある。導入陰電子の発現は、経時的に失われてもよい。阻害抗体応答に直面して遺伝子治療ベクターを投与する必要性は、様々な方法で対処することができる。例えば、抗体力価は、ベクターの投与前にアフェレーシスによって低下させることができ、または患者は適切な医療レジメンで免疫抑制することができる。あるいは、空のAAVキャプシドを投与して、LAMP-2導入遺伝子を含む治療用AAVを注射する前に、宿主抗体および免疫細胞に結合させるように投与ことができる。標的組織に依存して、全身投与の代わりの直接局所投与は、抗ベクター抗体の阻害効果を克服または改善するのに有用であり得る。さらに別のアプローチでは、それが由来するウイルスの異なる血清型に基づくベクターを使用することができる。例えば、AAV9ベクターが最初に使用され、抗AAV抗体力価に問題があるが、さらなる遺伝子治療の必要がある場合、同じ(または異なる)遺伝子構築物を保有するAAV8ベクターを投与することができる。
【0068】
処方されると、溶液は、投薬処方物に適合する様式で、治療的に有効な量で投与され得る。処方物は、上記の注射可能な溶液のタイプのような様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。複数回投与も可能である。
【0069】
必要に応じて、本明細書に記載のベクターは、送達のための任意の適切なビヒクルで処方され得る。例えば、それらは、薬学的に許容される懸濁液、溶液またはエマルション中に置くことができる。適切な媒体は、生理食塩水およびリポソーム調製物を含む。より具体的には、薬学的に許容される担体は、非水性溶液、懸濁液およびエマルションの滅菌水溶液を含み得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液(生理食塩水および緩衝媒体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。静脈内ビヒクルには、流体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。
【0070】
防腐剤および他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどもまた存在してもよい。
【0071】
標的遺伝子送達のためにコロイド分散系を使用することもできる。コロイド分散系には、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および脂質ベースの系が含まれる。
【0072】
適切なレジメンは、医師が決定することができ、被験者の年齢、性別、体重、および疾患の段階に依存する。一例として、ウイルス発現ベクターを用いたLAMP-2ポリペプチドをコードする核酸配列の送達のために、LAMP-2ポリペプチド発現ベクターの各単位用量は、2.5μl~100μlの組成物を含んでいてもよく、それは、薬学的に許容される液体において、例えば1011~1016ウイルスゲノム/mlの範囲の濃度でウイルス発現ベクターを含む。
【0073】
いくつかのレジメンでは、単一のLAMP-2アイソフォーム、例えばLAMP-2Bのための遺伝子を有するベクターが使用される。他のレジメンでは、2つのLAMP-2アイソフォーム、例えばLAMP-2BおよびLAMP-2Aのための遺伝子を有するベクターが使用される。いくつかの実施形態において、2つのアイソフォームは、異なるベクター調製物中に保持される。一態様では、両方のベクター調製物は、同じベクター、例えばAAV9ベクターまたは上記の任意の他の特定のベクターに由来する。他の実施形態では、両方のポリペプチドが単一のベクターにコードされている。例えば、
図1を参照されたい。同様に、レジメンが3つのアイソフォームのすべてをコードする核酸配列の投与を含む場合、アイソフォームは、個々のベクターまたは単一のベクターで運ぶことができる。個々のベクターによって運ばれる複数のアイソフォームを用いるレジメンでは、複数のベクターを同時に、個別にまたは一緒に混合して投与することができ、または数時間、数日または数週間の間隔で連続して投与することができる。
【0074】
6.キット
上記および本明細書中に記載されるように、1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子治療ベクターを含むキットがさらに提供される。種々の実施形態において、キットは、被験者への投与のために準備された1つ以上の単位剤形、例えば予め充填された注射器またはアンプルで調製された遺伝子治療ベクターを提供する。様々な態様において、遺伝子治療ベクターは、凍結乾燥形態で提供される。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
(AAV9遺伝子治療)
上記の記載と一致する特定のベクターは、AAV2に由来し、CMVエンハンサー(CAGプロモーター)を有するニワトリβ-アクチンプロモーターの制御下でLAMP-2AまたはLAMP-2BのいずれかをコードするITRを有するAAV9ベクターとして構築された。さらに、これらのベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメントおよびウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル(
図1B参照)を組み込んだ。 これらのベクターは、ペンシルバニア大学のNational Heart、Lung、and Blood InstituteのGene Therapy Resource Program Preclinical Vector Core施設から入手した。ヒトLAMP-2配列は、タンパク質の膜貫通および細胞質尾部成分を形成する、特にC末端領域の同族体間の高度の配列同一性のために、マウスにおいて機能的であると予想されて組み込まれた(
図4参照)。
【0076】
ベクターは、インビボでLAMP-2アイソフォームを送達するために使用される。AAV9血清型は、ダノン病の影響を最も受けた臓器である心臓および骨格筋ならびに神経組織に優れた向性を有する。しかし、ダノンは多系統障害であり、多くの異なる器官が潜在的に関与する可能性がある。したがって、トランスジェニックLAMP-2アイソフォームの発現は、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー(CAG構築物)を有する構成的に活性なニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターの制御下にある。このプロモーターは遍在的に活性であり、感染効率に依存して全ての組織においてLAMP-2導入遺伝子発現を可能にする。増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)遺伝子を有するAAV9ベクターもまた、対照試薬としての使用のために得られた。
【0077】
(実施例2)
(LAMP-2ノックアウトマウスへのAAV9LAMP-2アイソフォームベクターの投与)
Lamp-2 KOマウス(Nature.2000 Aug 24;406(6798):902-6;Basic Res Cardiol.2006 Jul;101(4):281-91)はダノン様症候群を発症するが、疾患の重症度はヒトの病気よりも穏やかであり、マウスの寿命が短いことに起因しておそらく少なくとも部分的には異常なオートファジーの流れに起因する損傷が蓄積するのにかかる時間がより短くなる。したがって、その逆転が容易に検出可能である病理の蓄積が十分にあるように、処置を開始する前にマウスが少なくとも3ヶ月齢、好ましくは5~6ヶ月齢になるまで待つことが望ましい。
【0078】
理想化された手順では、6ヶ月齢のLamp-2 KOマウスを用い、AAVベクターの5×1011、1×1012、または2×1012ゲノムコピー(gc)を静脈内注射により外部頸静脈に投与する。種々の実験において、WTマウスはLAMP-2アイソフォームベクターを投与され、Lamp-2 KOマウスは対照としてeGFPベクターを投与される。十分な数のマウスを使用することにより、亜集団を、投与後1、2および6カ月など、様々な時点で屠殺して評価することができる。
【0079】
(実施例3)
(ベクター投与後のLAMP-2アイソフォーム遺伝子転写の評価)
約3~4月齢のLamp-2 KOマウスは、5×10
11、1×10
12、および2×10
12gc/マウスで、ベクターAAV9.LAMP-2BおよびAAV9.LAMP-2A(
図1Bおよび上記の説明を参照のこと)の漸増的用量の投与を受けた。一条件につき1匹のマウスを屠殺し、ヒト導入遺伝子のmRNA発現(遺伝子転写)を評価するために消化された心臓組織について3回RT-qPCRを実施した。未処理のWTマウスを用いて、ヒトLAMP-2アイソフォームの発現を示さないことを実証した。このデータは、ヒト導入遺伝子の発現における用量依存的な増加を示す(
図5参照)。
【0080】
(実施例4)
(ベクター投与後のLAMP-2アイソフォームタンパク質発現の評価)
実施例3と同じマウスを用いて、消化した心臓組織についてイムノブロッティングを行い、GAPDHと比較したヒトトランスジーンのタンパク質発現を評価した。AAV9.EGFPで処置した対照Lamp-2 KOマウスは有意なLAMP-2タンパク質発現を示さなかった。データは、ウイルスベクターを投与されたマウスにおけるヒト導入遺伝子の発現の用量依存的増加を示す(
図6参照)。
【0081】
(実施例5)
(ベクター投与後のトランスジェニックLAMP-2Bの細胞内局在化)
2×10
12gc/マウスのAAV9.LAMP-2BまたはAAV9.EGFPを投与し、送達1ヶ月後に屠殺したLamp-2 KOマウスの心臓切片を、(ATリッチDNAに結合し、細胞核が見えるようにする)DAPIおよび蛍光標識抗LAMP-2抗体(
図7参照)で染色した。LAMP-2染色のパターンは、細胞内液胞に対するヒトトランスジェニックLAMP-2Bタンパク質の局在を示し、マウスLamp-2タンパク質のWTマウス対照で見られる染色と同様である。AAV9.EGFPベクター対照を受けているLamp-2 KOマウスでは、ヒトLAMP-2染色は見られない。これらのデータは、AAV9.LAMP-2Bベクターでの治療が、生理学的に適切な位置でのヒトLAMP-2Bタンパク質の発現を導くことを実証する。
【0082】
同様に、実験用のヒトLAMP-2染色は、試験マウスにおいて5×10
11gc/マウスの用量でAAV9.LAMP-2Bの送達後2ヶ月に維持された。実施例4と一致するが、このより低いベクター投与量では、より少ない染色が見られた。比較すると、5×10
11gc /マウスのAAV9.EGFPベクターは、送達後3ヶ月に、ヒトLAMP-2染色を示さなかった。
図8を参照のこと。
【0083】
(実施例6)
(CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステム)
CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムは、マクロオートファジーの流れの評価を可能にする。微小管関連タンパク質1軽鎖3(LC3)は、オートファゴソームの表面上に発現する。赤色蛍光タンパク質(RFP)とeGFPとの両方に融合したLC3を発現するように遺伝子融合体を構築する。この融合タンパク質が発現されると、RFP成分はオートファゴソームおよびリソソームの両方で蛍光を発し、eGFP成分はオートファゴソームで蛍光を発するが、リソソームの酸性環境によってクエンチされる。結果として、マージした画像では、オートファゴソームは黄色であり、リソソームは赤色である(
図9A参照)。WTバックグラウンドで発現させた場合、別個の赤色および緑色の画像では緑色の点よりも赤色の点が多く見られ、マージした画像では赤色および黄色の混合した点が見られる(
図9B-D’参照)。オートファゴソームとリソソームとの正常な融合には、ランプ-2が必要であり、オートリソソームを形成する。したがって、この構築物がLamp-2 KOマウスにおいて発現される場合、ほぼ同数の赤色と緑色との点が、別個の赤色および緑色の画像において見られ、マージした画像においては、ほぼ完全に黄色の点がみられる(
図9E~G’参照)。オートファゴソームの蓄積およびオートリソソームの略不在は、全体的により多くの自食性液胞(AV)とともに、Lamp-2が存在しないためのオートファジーの流れの欠陥を反映する(
図9H参照)。
【0084】
(実施例7)
(LAMP-2AまたはLAMP-2Bのいずれかを保有するベクターの投与はオートファジーの流れを回復させる)
CAG-RFP-EGFP-LC3B構築物を発現するLamp-2 KOマウス(Lamp-2 KO/CAG-RFP-EGFP-LC3Bレポーターマウス)に、AAV9.LAMP-2BまたはAAV9.LAMP-2Aのいずれかを投与し、CAG-RFP-EGFP-LC3Bオートファジーレポーターシステムを発現するLamp-2 KOマウス(CAG-RFP-EGFP-LC3Bレポーターマウス)と比較した。ベクター送達の1ヶ月後、マウスを屠殺し、心臓切片を蛍光顕微鏡検査によって評価して、オートファジーの流れを評価した。未処理のLamp-2 KO/レポーターマウスはほとんど、黄色の自食性液胞、すなわちオートファゴソームのみを示し続けた(
図10Bおよび
図9G’参照)。対照的に、遺伝子治療ベクターAAV9.LAMP-2BまたはAAV9.LAMP-2Aのいずれかを投与されたLamp-2 KO/レポーターマウスは、対照WTレポーターマウスと同様の割合で、多くの赤色の自食性液胞、すなわちオートリソソームを示した(
図10A、
図10C、および
図11Dを参照、その中の例示的な点を矢印で示す)。AVの定量は、成熟したオートリソソームに対する未成熟自己食作用の割合が、WTマウスと比較して処理されたLamp-2 KOマウスにおいて類似していることを示した(
図10E参照)。したがって、AAV9.LAMP-2BまたはAAV9.LAMP-2Aのいずれかを用いた遺伝子治療は、Lamp-2 KOマウスの心筋細胞における正常なオートファゴソーム-リソソーム融合を回復させた。
【0085】
(実施例9)
(電子顕微鏡で評価した心筋細胞の超微細構造の回復)
Lamp-2 KOマウスに、5×10
11gc/マウスのAAV9.LAMP-2Bを静脈内に注射し、年齢適合Lamp-2 KOマウスおよび処置されていないWTマウスと比較した。ベクター送達の1ヶ月後、マウスを屠殺し、心臓切片を電子顕微鏡で分析した。未処置のLamp-2 KOマウスは、WT(
図11A、A’参照)と比較して、AVの蓄積およびサイズの増加を示し(
図11B、B’、黄色の矢印を参照)、異常ミトコンドリアの数の増加を示した(
図11B、赤い矢印を参照)。対照的に、AAV9.LAMP-2Bで処理したLamp-2 KOマウスの電子顕微鏡写真は、未処理のWTマウスの超微細構造とよりよく似ていた(
図11C、C’参照)。したがって、遺伝子治療ベクターによる治療は、心筋細胞の超微細構造を回復させる。
【0086】
要約すると、これらの実施例は、LAMP-2AおよびLAMP-2Bアイソフォームをコードするアデノ随伴ウイルスに基づく遺伝子治療ベクターを、心臓組織における導入遺伝子発現を成功裏に達成するために静脈内投与することができることを示す。加えて、そのような発現は、オートファジーの流れおよび心筋細胞超微細構造における欠陥、ダノン病にも関連する欠陥の逆転を導く。これらのデータは、ダノン病およびオートファジーの流れの欠陥に関連する他の障害の処置における遺伝子治療のためのそのようなベクターの使用を支持する。
【0087】
最後に、本明細書の態様は特定の実施形態を参照することによって強調されるが、当業者は、これらの開示された実施形態が本明細書に開示された主題の原理の単なる例示であることを容易に理解するであろうことは理解されるべきである。したがって、開示される主題は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、および/または試薬などに決して限定されないことを理解されたい。したがって、本明細書の精神から逸脱することなく、本明細書の教示に従って、開示された主題の様々な変更または代替構成または代替構成を行うことができる。最後に、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、請求項によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものではない。 従って、本発明は図示され説明されたものに厳密に限定されるものではない。
【0088】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態を本明細書に記載する。当然のことながら、これらの記載された実施形態の変形は、上記の説明を読むことによって当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がこのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明を実施しようとする。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変および均等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、すべての可能なバリエーションにおける上記実施形態の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0089】
本発明の代替の実施形態、要素またはステップのグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、または本明細書に開示される他のグループメンバーとの任意の組み合わせで参照され、請求され得る。利便性および/または特許性の理由から、1つまたは複数のグループのメンバーがグループに含まれるかまたはグループから削除されることが予想される。そのような包含または欠損が生じた場合、明細書は変更されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たすものとみなされる。
【0090】
他に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴、項目、量、パラメータ、特性、用語などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、そのように特性付けされた特性、項目、量、パラメータ、特性、または用語が、記載された特性、項目、量、パラメータの値の±10%、プロパティ、または用語を包含することを意味する。したがって、反対に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、変化し得る近似値である。最低限、クレームの範囲と均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値表示は少なくとも報告された有効数字の数と通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲および数値は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値範囲および数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、数値範囲または数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。本明細書における数値の範囲の列挙は、その範囲内の各別個の数値を個別に参照する簡略な方法として役立つことを単に意図するものである。本明細書で別段の指示がない限り、数値範囲の個々の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0091】
本発明を説明する文脈において(特に添付の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」および同様の指示対象は、単数形および複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである 本明細書中に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾する場合を除き、本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく示すことを意図しており、別段の請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な、請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0092】
本明細書で開示された特定の実施形態は、言語で構成された、または本質的に言語からなる用語を使用している請求項においてさらに限定されている。特許請求の範囲において使用される場合、特許請求の範囲に記載されているか否かに関わらず、「からなる」という遷移用語は、特許請求の範囲に記載されていない要素、ステップまたは成分を排除する。「本質的に~からなる」という移行用語は、特定の材料またはステップ、および基本的および新規な特性に重大な影響を及ぼさないものに、請求の範囲を限定する。そのように請求された本発明の実施形態は、本質的に、または明示的に記載され、有効化される。
【0093】
本明細書において参照および同定されたすべての特許、特許公報および他の刊行物は、例えば、そのような刊行物に記載された組成物および方法論を記載および開示する目的で、その全体が参照により個々に、本発明に関連して使用することができる。これらの刊行物は、本出願の出願日前の開示のためにのみ提供される。この点に関して、発明者が先の発明のおかげで、または他の何らかの理由で、そのような開示よりも先行する資格がないという承認として解釈されるべきではない。これらの文書の内容に関する日付または表現に関するすべての記述は、申請者が利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性についての承認を構成するものではない。
【0094】
(付記)
(付記1)
リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む遺伝子治療ベクター。
【0095】
(付記2)
前記ベクターは、ウイルスベクターである、
ことを特徴とする付記1に記載の遺伝子治療ベクター。
【0096】
(付記3)
前記ウイルスベクターは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)からなる群より選択されるウイルスに由来する、
ことを特徴とする付記1または2に記載の遺伝子治療ベクター。
【0097】
(付記4)
前記ベクターは、1つ若しくは複数のアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型1-11またはその任意のサブグループに由来する、
ことを特徴とする付記3に記載の遺伝子治療ベクター。
【0098】
(付記5)
前記ウイルスベクターは、アニオン性リポソームに封入されている、
ことを特徴とする付記2乃至4のいずれか1つに記載の遺伝子治療ベクター。
【0099】
(付記6)
前記ベクターは、非ウイルスベクターである、
ことを特徴とする付記1に記載の遺伝子治療ベクター。
【0100】
(付記7)
前記非ウイルスベクターは、裸のDNA、カチオン性リポソーム複合体、カチオン性ポリマー複合体、カチオン性リポソーム-ポリマー複合体およびエキソソームからなる群より選択される、
ことを特徴とする付記6に記載の遺伝子治療ベクター。
【0101】
(付記8)
前記発現カセットは、5’から3’方向に作動可能に連結された、第一の逆方向末端反復配列、エンハンサー/プロモーター領域、LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチド、ポリアデニル化シグナルを含む3’非翻訳領域および第二の逆方向末端反復配列を含む、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1つに記載の遺伝子治療ベクター。
【0102】
(付記9)
前記プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびCAGプロモーターからなる群より選択される、
ことを特徴とする付記8に記載の遺伝子治療ベクター。
【0103】
(付記10)
前記ポリヌクレオチドは、DNAまたはcDNAを含む、
ことを特徴とする付記1乃至9のいずれか1つに記載の遺伝子治療ベクター。
【0104】
(付記11)
前記LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数のヒトLAMP-2アイソフォームを含む、
ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1つに記載の遺伝子治療ベクター。
【0105】
(付記12)
前記LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、LAMP-2A、LAMP-2BおよびLAMP-2Cからなる群より選択される1つまたは複数のLAMP-2アイソフォームを含む、
ことを特徴とする付記1乃至11のいずれか1つに記載の遺伝子治療ベクター。
【0106】
(付記13)
前記LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2および配列番号3の1つまたは複数と少なくとも約90%の配列同一性を有する、
ことを特徴とする付記1乃至12のいずれか1つに記載の遺伝子治療ベクター。
【0107】
(付記14)
前記LAMP-2の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2および配列番号3の1つまたは複数を含む、
ことを特徴とする付記13に記載の遺伝子治療ベクター。
【0108】
(付記15)
付記1乃至14のいずれか1つに記載の遺伝子治療ベクターを被験者に投与することを含む、
ダノン病または他のオートファジー障害の1つまたは複数の症状を、当該症状の予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転を必要とする被験者において、予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転させる方法。
【0109】
(付記16)
リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2)の1つまたは複数のアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを被験者に投与することを含む、
ダノン病または他のオートファジー障害の1つまたは複数の症状を、当該症状の予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転を必要とする被験者において、予防、緩和、改善、軽減、阻害、除去および/または逆転させる方法。
【0110】
(付記17)
前記ベクターは、静脈内、動脈内、心臓内、冠動脈内、心筋内、腎内、尿道内、硬膜外および筋肉内からなる群より選択される経路を介して投与される、
ことを特徴とする付記15または16に記載の方法。
【0111】
(付記18)
前記ベクターは、複数回投与される、
ことを特徴とする付記15乃至17のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
(付記19)
前記オートファジー障害は、末期心不全、心筋梗塞、薬物毒性、糖尿病、末期腎不全および老化からなる群より選択される、
ことを特徴とする付記15乃至18のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
(付記20)
前記被験者は、ヒトである、
ことを特徴とする付記15乃至19のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
(付記21)
前記被験者は、ダノン病または他のオートファジー障害の症状を呈している、
ことを特徴とする付記15乃至20のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
(付記22)
前記被験者は、減少したまたは検出不可能なLAMP-2発現を有すると同定されている、
ことを特徴とする付記15乃至21のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
(付記23)
前記被験者は、変異LAMP-2遺伝子を有すると同定されている、
ことを特徴とする付記15乃至22のいずれか1つに記載の方法。
【配列表】