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特許7219473コリバクチンおよびコリバクチン産生菌の検出方法および検出プローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】コリバクチンおよびコリバクチン産生菌の検出方法および検出プローブ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20230201BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C12Q1/04 ZNA
G01N33/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019539475
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2018031489
(87)【国際公開番号】W WO2019044736
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2017163079
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的がん医療実用化研究事業、腸内細菌由来新規大腸発がんリスク因子を制御する食事要因の解明委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 賢二
(72)【発明者】
【氏名】恒松 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 道大
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052753(JP,A)
【文献】特表2002-501080(JP,A)
【文献】特開平06-070765(JP,A)
【文献】平山 裕一郎 ほか,大腸がんリスク因子物質コリバクチンの生産菌を検出する分子プローブの開発,日本生薬学会第64回年会 千葉2017 講演要旨集,2017年08月25日,p.79
【文献】Int. J. Cancer,2017年,Vol.141,pp.2528-2536, Online 22 Aug 2017
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I~IIIのいずれかで表される、化合物または蛍光プローブ:
【化1】
…(I)
[式中、R 1 は、-CR 2 R 3 R 4 、-CH 2 OH又は-CNであって、R 2 、R 3 及びR 4 はそれぞれ独立して、水素又はハロゲンである];
【化2】
…(II)
[式中、R 5 は、-CR 6 R 7 R 8 、-CH 2 OH又は-CNであって、R 6 、R 7 及びR 8 はそれぞれ独立して、水素又はハロゲンである];
【化3】
…(III)
[式中、R 9 は、-CR 10 R 11 R 12 、-CH 2 OH又は-CNであって、R 10 、R 11 及びR 12 はそれぞれ独立して、水素又はハロゲンである]。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物または蛍光プローブを含む、試料中のコリバクチン産生微生物を検出することに用いるための、コリバクチン生合成遺伝子クラスターを有する微生物を検出することに用いるための、および/またはコリバクチンを検出することに用いるための組成物。
【請求項3】
試料が生体から取り出した組織検体または糞便試料である、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
生体から取り出した組織検体または糞便試料が、ヒトの組織検体または糞便試料である、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリバクチンおよびコリバクチン産生菌の検出方法および検出プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
コリバクチンは、大腸がんの原因因子として知られ、大腸菌の特定の一群により腸内で産生される。コリバクチンは、動物細胞中のDNAを切断する活性があると考えられ、大腸患者の67%、炎症性腸疾患患者の40%からコリバクチン産生菌が検出されたとの報告もなされている。
【0003】
コリバクチンに関しては、コリバクチンのプロドラッグモチーフとしてのミリストイルアスパラギンの構造およびLC-MSによる検出が報告されている(非特許文献1)。現在までのところ、コリバクチンの化学構造は決定されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Brotherton CA et al., Org. Lett., Vol.17, Page.1545-1548 (2015)
【発明の概要】
【0005】
本発明は、コリバクチンおよびコリバクチン産生菌の検出方法および検出プローブを提供する。
【0006】
本発明者らは、コリバクチンのプロドラッグモチーフであるミリストイルアスパラギンを利用するとコリバクチンおよびコリバクチン産生菌を糞便試料(特に乾燥糞便試料)や大腸がん組織検体から検出することができることを見出した。本発明者らはまた、コリバクチン産生菌を検出する蛍光プローブを合成することに成功した。本発明者らはさらに、これらの蛍光プローブによりコリバクチン産生酵素ClbPを糞便試料(特に乾燥糞便試料)や大腸がん組織検体から検出することができることを見出した。本発明者らはさらにまた、同様の原理に基づいて、ClbPを検出する蛍光プローブを各種設計できることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0007】
本発明によれば、例えば以下の発明が提供される。
[1]以下に示される、化合物または蛍光プローブ:
(A)クマリン骨格の7位にアミノ基を有するクマリン系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(B)ナフタルイミド骨格の4位にアミノ基を有するナフタルイミド系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(C)2位にアミノ基を有するナフタレン、ピレンまたはアントラセンの当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(D)キサンテン骨格の3位および/または9位にアミノ基を有するローダミン系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(E)Bodipy母核の1位および/または7位にアミノ基を有するBodipy系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(F)上記(A)~(E)において、前記カルボキシル基と前記アミノ基とがアラニン(-NH-CH(CH)-CO-)で連結された化合物(それぞれアラニンとアミド結合を形成する)または蛍光プローブ;
(G)ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基と水酸基がフリーになることで蛍光性となる蛍光基であるoFluの水酸基とが、自己開裂性リンカーを介して連結した化合物であって、自己開裂性リンカーは、ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とアミド結合で連結しており、当該アミド結合が加水分解されると、分解してoFluの水酸基をフリーにする、化合物または蛍光プローブ;および
(H)ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とアミド結合により連結した蛍光色素を有する化合物であって、アミド結合がClbP依存的に開裂すると、その後、蛍光を発する、化合物または蛍光プローブ
からなる群から選択される、化合物または蛍光プローブ。
[2]上記[1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(A)クマリン骨格の7位にアミノ基を有するクマリン系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブである、化合物または蛍光プローブ。
[3]上記[1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(B)ナフタルイミド骨格の4位にアミノ基を有するナフタルイミド系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブである、化合物または蛍光プローブ。
[4]上記[1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(C)2位にアミノ基を有するナフタレン、ピレンまたはアントラセンの当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブである、化合物または蛍光プローブ。
[5]上記[1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(D)キサンテン骨格の3位および/または9位にアミノ基を有するローダミン系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブである、化合物または蛍光プローブ。
[6]上記[1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(E)Bodipy母核の1位および/または7位にアミノ基を有するBodipy系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブである、化合物または蛍光プローブ。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の化合物または蛍光プローブを含む、コリバクチン産生微生物を検出することに用いるための、コリバクチン生合成遺伝子クラスターを有する微生物を検出することに用いるための、および/またはコリバクチンを検出することに用いるための組成物。
[8]組織検体または糞便試料を対象とする、上記[7]に記載の組成物。
[9]組織検体または糞便試料が、ヒトの組織検体または糞便試料である、上記[8]に記載の組成物。
[10]生体試料においてコリバクチンまたはコリバクチン産生大腸菌の存在を検出する方法であって、
生体試料中でミリストイルアスパラギンの有無を検出することを含む、方法。
[11]生体試料が、組織検体または糞便試料である、上記[10]に記載の方法。
[12]生体試料が、ヒト由来である、上記[10]または[11]に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、コリバクチンのプロドラッグからコリバクチンが生成される際にコリバクチンから切り離されるミリストイルアスパラギンを乾燥糞便試料中で検出した液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムである。
図2図2は、本発明の蛍光プローブにより乾燥糞便試料中のClbP依存的にプローブが蛍光を示したことを示す図である。
図3図3は、本発明の蛍光プローブにより乾燥糞便試料中のコリバクチン産生菌依存的にプローブが蛍光を示したことを示す図である。
図4図4は、ヒト大腸組織検体から単離された大腸菌を本発明のプローブにより検出した結果を示す。縦軸はプローブIによる蛍光強度を示し、横軸は各サンプルを示す。図4上段は、コリバクチン陽性菌を含むことがPCR法により確認された試料に対するプローブIの蛍光強度を示し、図4下段は、コリバクチン陽性菌を含まないことがPCR法により確認された試料に対するプローブIの蛍光強度を示す。図4の上段および下段の最左のバーはポジティブコントロールであり、その隣はネガティブコントロールである。
図5図5は、ヒト糞便試料より分離した大腸菌を培養して得られた培養物に対するプローブIの蛍光強度を示す。縦軸はプローブIによる蛍光強度を示し、横軸は各サンプルを示す。最左のバーはポジティブコントロールであり、最右のバーはネガティブコントロールである。
図6図6は、凍結されたヒト大腸がん組織検体および同一患者の大腸正常組織検体を用いたコリバクチン生合成遺伝子の検出と、当該組織検体のホモジェネートを培養して得られたバクテリアにおけるコリバクチン生合成遺伝子陽性バクテリアの割合を示す。
図7図7は、培養して得られたバクテリアの培養物中のミリストイル-D-アスパラギンの検出結果を示す。
【発明の詳細な説明】
【0009】
「コリバクチン」とは、大腸がんの発生に関わる分子として知られ、腸内の大腸菌のうち特定の大腸菌により産生される低分子化合物であることが生化学的分析から分かっている。しかし、その詳細な化学構造は未だ明らかにされていない。一方で、コリバクチンは、大腸菌体内では不活性なプロドラッグとして合成され、大腸菌のペリプラズムにおいて、プロドラッグモチーフが分子内開裂により除去され、これにより大腸菌の細胞外においてコリバクチンが産生される。
【0010】
「コリバクチン産生菌」とは、コリバクチンを産生する細菌を意味する。腸内では、大腸菌(Escherichia coli)の特定の一群がコリバクチンを産生することが知られているが、全ての哺乳動物(特にヒト)がコリバクチン産生菌を保有するわけではない。コリバクチン産生菌は、コリバクチンポリケチド合成遺伝子クラスターをゲノム上に有していることが知られている。コリバクチンポリケチド合成遺伝子クラスターには、コリバクチンの生合成経路に関わるタンパク質がコードされている。
【0011】
本明細書では、「ClbP」とは、コリバクチンポリケチド合成遺伝子クラスター(例えば、GenBank accession No.: AM229678.1)内に存在する遺伝子の1つである。ClbP遺伝子は、例えば、GenBank: CAJ76284.1に登録されているタンパク質をコードする。ClbPによりコードされるタンパク質はペプチダーゼとしての性質を有しており、標的分子であるコリバクチンプロドラッグのコリバクチンとミリストイルアスパラギンを連結するペプチド結合(アミド結合)を切断する。ClbPは、大腸菌のペリプラズムに発現し、コリバクチンプロドラッグをペリプラズムでコリバクチンに変換していると考えられる。
【0012】
本明細書では、「ClbP依存的に蛍光を発する」とは、ClbP遺伝子によりコードされるタンパク質によって分子内で加水分解が生じると、これにより蛍光性を獲得することを意味する。本明細書では、「蛍光性を獲得する」とは、特定波長の励起光によって特定波長の蛍光を発するようになることを意味する。例えば、「蛍光性を獲得する」という用語には、特定波長の励起光によっては特定波長の蛍光性を発しないかまたは検出閾値以下であるものが、検出閾値以上の蛍光性を有するようになることを含む意味で用いられる。
【0013】
本明細書では、「対象」とは、温血動物であり、鳥類または哺乳動物であり得る。哺乳動物としては、例えば、霊長類、例えば、サル、チンパンジ、ゴリラ、オランウータン、ボノボおよびヒト、あるいは例えば、家畜、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、およびヒツジ、あるいは、ペット、例えば、イヌおよびネコが挙げられる。鳥類としては、例えば、ニワトリが挙げられる。本明細書では、対象に対して「患者」または「者」と表現した場合、「患者」または「者」は、ヒトおよび非ヒト温血動物に向けられた用語である。本明細書では、対象は、好ましくは健常者、炎症性腸疾患患者、炎症性腸疾患が疑われる患者、大腸がん患者、または大腸がんが疑われる患者であり得る。
【0014】
本明細書では、「糞便試料」とは、対象から排出された糞便を含む試料を意味する。糞便試料は、通常は肛門を介して排出された試料である。糞便試料は、乾燥または凍結乾燥された試料であってもよい。糞便試料は、粉砕された形態(例えば、粉末状)であってもよい。
【0015】
本明細書では、「蛍光色素」とは、特定波長の励起光により励起され、別の特定波長の光(蛍光)を発することができる化学物質をいう。本明細書では、「蛍光プローブ」とは、ある特定の条件下で特定波長の蛍光を発する化合物またはその蛍光強度が高まる化合物をいう。従って、本明細書では、ClbP依存的に開裂して蛍光を発する化合物は蛍光プローブと呼ばれる。
【0016】
ミリストイルアスパラギンは、以下の構造を有する。
【化1】
【0017】
すなわち、ミリストイルアスパラギンは、ミリスチン酸のカルボキシル基とアスパラギンのアミノ基がアミド結合で連結した構造を有する。
【0018】
コリバクチンプロドラッグは、コリバクチンとミリストイルアスパラギン(プロドラッグモチーフ)がアミド結合で連結した構造を有する。
【化2】
【0019】
クマリン系蛍光色素は、以下の基本骨格(以下、「クマリン骨格」ともいう)を有する。
【化3】
【0020】
上記化合物はそのままではほとんど蛍光を発しないが、上記クマリン骨格の7位に電子供与基を導入すると強い吸光性を示し、蛍光を発するようになる。この原理を利用して、7位に電子供与性の高い電子供与基を導入することで強い蛍光色素を得ることができる。
【0021】
本発明では、7位の電子供与基(アミノ基)の電子供与性が低下するようにミリストイルアスパラギンを当該アミノ基に連結させることができる。例えば、7位の電子供与基(アミノ基)とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とをアミド結合で連結させることにより、クマリン系蛍光色素の7位の電子供与基の電子供与性を低下させることができる。一方で、本発明では、ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基がアミド結合で他の化合物と連結した化合物は、ClbPによりコードされる酵素により認識され、アミド結合の箇所でミリストイルアスパラギンと当該他の化合物とに開裂させることができる。
従って、本発明によれば、ミリストイルアスパラギン酸のカルボキシル基とクマリン系蛍光色素のクマリン骨格の7位のアミノ基とをアミド結合で連結させた化合物は、ClbPによりコードされる酵素により認識され得、ClbP依存的に蛍光を発揮する。従って、このような化合物は、ClbPによりコードされる酵素の検出、コリバクチン生合成遺伝子クラスターの検出、コリバクチン産生大腸菌の検出、および/または、コリバクチンの検出に用いることができる。
【0022】
本発明では、クマリン系蛍光色素のクマリン骨格の7位にアミノ基を有する化合物の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物、および当該化合物を含む蛍光プローブが提供される。クマリン骨格は、4位に置換されていてもよいメチル(例えば、-CH、-CN、-CHOH、1~3個のハロゲンにより置換されたメチル、例えば-CFおよび-CHBrなど)を有していてもよい。このような化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【0023】
また、ナフタルイミド系蛍光色素も同様にしてClbP依存的に蛍光を発する化合物またはプローブの設計に利用できる。
【0024】
【化7】
上記ナフタルイミド骨格においてRは、特に限定されないが例えば、置換されていてもよいC1-6のアルキル、置換されていてもよいC1-6のアルケニル、置換されていてもよいC1-6のアルキニルであり得る。
【0025】
ナフタルイミド系蛍光色素に関しては、そのナフタレン環の4位にアミノ基を有し、当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とをアミド結合で連結した化合物は、ClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光性であるナフタルイミド系蛍光色素を生じ得る。このようなフタルイミド系のプローブとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化8】
【0026】
同様に、アミノ基で置換されたナフタレン、アミノ基で置換されたピレン、およびアミノ基で置換されたアントラセンも、ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基と当該アミノ基とをアミド結合で連結させることにより、ClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光を発するプローブたり得る。ナフタレン、ピレンおよびアントラセンは、好ましくはその2位においてアミド結合を形成するアミノ基を有し得る。例えば、このような化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【化9】
【0027】
ローダミン系蛍光色素に関しては、ローダミン系蛍光色素のキサンテン骨格の3位と9位に電子供与基(例えば、アミノ基)が存在すると強い蛍光を発し、これらの電子供与基の電子供与性を低下させることで蛍光性を低下させることができる。従って、キサンテン骨格の3位および/または9位にアミノ基を有するローダミン系蛍光色素の当該アミノ基のいずれか1つまたは全部と、ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基と当該アミノ基とをアミド結合で連結させることにより、ClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光を発するプローブたり得る。例えば、キサンテン骨格の3位および9位にアミノ基を有するローダミン系蛍光色素の当該アミノ基のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物が提供され得る。このような化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化10】
【0028】
Bodipy系蛍光色素でも同様である。Bodipyは、以下に示すBodipy母核構造(4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン)を有する。
【化11】
【0029】
上記母核の1位および/または7位にアミノ基を有するBodipy系蛍光色素の前記アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物は、ClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光を発するプローブたり得る。そのような化合物としては、例えば、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【化12】
【0030】
その他、例えば、以下の構造を有する化合物は、ClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光を発するプローブたり得る。そのような化合物としては、例えば、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【化13】
【0031】
【化14】
【0032】
【化15】
【0033】
なお、プローブ8では、クマリン骨格による蛍光が、分子内のピリジン環でPETにより消光しているが、ClbPにより開裂させることで、クマリン系蛍光色素が遊離し蛍光を発するように設計されている。
【0034】
また、TokyoGreenなどの水酸基がフリーになることで蛍光を発するフェノール性の蛍光基(oFlu)を有する色素も、ClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光を発するプローブたり得る。例えば、以下の化合物はそのような化合物である。
【化16】
【化17】
【0035】
自己開裂性リンカー(蛍光色素部分とミリストイルアスパラギン部分とを連結するリンカーである)としては、例えば、以下のリンカーを用いることができる。以下では、左に示される構造がリンカーの構造であり、右に示される対応する構造が開裂の機構を示す。
【化18】
【0036】
このようなリンカーを介して、ミリストイルアスパラギンとoFluとを連結させることでClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光を発するプローブたり得る。同様の仕組みで、TokyoGreen、TokyoMagenta、オレゴングリーン、SNAFL、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、フルオレセイン、およびフルオレセインイソシアネート(FITC)、並びに上記ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基と連結させるべきアミノ基がヒドロキシル基に置き換わった化合物などのoFluから選択される化合物の水酸基を自己開裂性リンカーを介してミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とアミド結合させた化合物が、ClbP依存的にアミド結合部分で開裂し、蛍光を発するプローブたり得る。
【0037】
本発明では、蛍光化合物または蛍光プローブは、塩および/または溶媒和物の形態であってもよく、遊離形態に加えて塩および/または溶媒和物の形態も上記で示される化学式等で特定される化合物またはプローブには含まれるものとする。溶媒和物では、溶媒としては水、エタノールその他の溶媒が挙げられ、溶媒が水である場合には水和物と呼ばれる。
【0038】
上記において、ミリストイルアスパラギンがアラニン(-NH-CH(CH)-CO-)を介して蛍光色素と連結している場合、アラニンは欠失していてもよい。上記において、ミリストイルアスパラギンがアラニンを介さずに直接蛍光色素と連結している場合は、ミリストイルアスパラギンをアラニンを介して蛍光色素と連結させてもよい。これは、ClbP遺伝子によりコードされる酵素による切断活性がアラニンの介在を許容することによる。なお、アラニンは、ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基との間でアミド結合を形成し、蛍光色素のアミノ基との間でアミド結合を形成し、これによりミリストイルアスパラギンと蛍光色素とを連結することができる。
【0039】
本発明によれば、上記化合物を含む蛍光プローブが提供される。本発明によればまた、上記化合物または蛍光プローブを含む、コリバクチン産生微生物を検出することに用いるための、コリバクチン生合成遺伝子クラスターを有する微生物を検出することに用いるための、および/またはコリバクチンを検出することに用いるための組成物が提供される。これらの組成物は、糞便試料において、コリバクチン産生微生物を検出することに用いるための、コリバクチン生合成遺伝子クラスターを有する微生物を検出することに用いるための、および/またはコリバクチンを検出する(またはコリバクチンの存在を推定する)ことに用いるための組成物であり得る。
【0040】
本発明のプローブは、ClbP遺伝子によりコードされる酵素の存在下で切断され、蛍光を発する。従って、本発明のプローブは、その蛍光の強度を指標として、接触させた試料中にClbP遺伝子によりコードされる酵素の有無を評価することに用いることができ、または、コリバクチン陽性菌の有無を評価することに用いることができる。ある態様では、コリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度、および/または、コリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度と比較して、評価する試料に対する蛍光強度を評価してもよい。例えば、コリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の平均値、第3四分位値、または第1四分位値よりも蛍光強度が高い場合には、評価する試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていると評価してもよい。また例えば、コリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の第1四分位値よりも蛍光強度が低い場合には、評価する試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていないと評価してもよい。また例えば、コリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の平均値、第3四分位値、または第1四分位値よりも蛍光強度が低い場合には、評価する試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていないと評価してもよい。また例えば、コリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の第三子分位値よりも蛍光強度が高い場合には、評価する試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていると評価してもよい。
【0041】
この意味では、閾値は、例えば、コリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最大値と第3四分位値との間のいずれかの数値であり得、最大値と平均値との間のいずれかの数値であり得、最大値と第1四分位値との間のいずれかの数値であり得、平均値と第3四分位値との間のいずれかの数値であり得、平均値と第1四分位値との間のいずれかの数値であり得、または第3四分位値と第1四分位値との間のいずれかの数値であり得る。あるいは、閾値は、例えば、コリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最大値、第1四分位値、平均値および第3四分位値からなる群から選択される1つの値とコリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最大値または第3四分位値との間のいずれかの数値であり得る。そして、測定した試料に対するプローブの蛍光強度が閾値よりも高い場合には、試料にはコリバクチン陽性菌が含まれている、または含まれている可能性が高いと評価することができ、および/または、閾値よりも低い場合には、試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていない、または含まれていない可能性が高いと評価することができる。
【0042】
また、閾値は、例えば、コリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最大値と第3四分位値との間のいずれかの数値であり得、最大値と平均値との間のいずれかの数値であり得、最大値と第1四分位値との間のいずれかの数値であり得、平均値と第3四分位値との間のいずれかの数値であり得、平均値と第1四分位値との間のいずれかの数値であり得、または第3四分位値と第1四分位値との間のいずれかの数値であり得る。あるいは、閾値は、例えば、コリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最大値、第1四分位値、平均値および第3四分位値からなる群から選択される1つの値とコリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最低値または第1四分位値との間のいずれかの数値であり得る。そして、測定した試料に対するプローブの蛍光強度が閾値よりも高い場合には、試料にはコリバクチン陽性菌が含まれている、または含まれている可能性が高いと評価することができ、および/または、閾値よりも低い場合には、試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていない、または含まれていない可能性が高いと評価することができる。
【0043】
あるいは、閾値は、例えば、コリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最大値とすることができる。そして、測定した試料に対するプローブの蛍光強度が閾値よりも高い場合には、試料にはコリバクチン陽性菌が含まれている、または含まれている可能性が高いと評価することができ、および/または、閾値よりも低い場合には、試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていない、または含まれていない可能性が高いと評価することができる。
【0044】
あるいは、閾値は、例えば、コリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最低値とすることができる。そして、測定した試料に対するプローブの蛍光強度が閾値よりも高い場合には、試料にはコリバクチン陽性菌が含まれている、または含まれている可能性が高いと評価することができ、および/または、閾値よりも低い場合には、試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていない、または含まれていない可能性が高いと評価することができる。
【0045】
あるいは、閾値は、例えば、コリバクチン陽性菌が検出された患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最低値とコリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群からそれぞれ得られた試料に対する本発明のプローブの蛍光強度の最大値との間のいずれかの値とすることができる。そして、測定した試料に対するプローブの蛍光強度が閾値よりも高い場合には、試料にはコリバクチン陽性菌が含まれている、または含まれている可能性が高いと評価することができ、および/または、閾値よりも低い場合には、試料には、コリバクチン陽性菌が含まれていない、または含まれていない可能性が高いと評価することができる。
【0046】
また、コリバクチン陽性菌が検出された患者群および、コリバクチン陽性菌が検出されなかった患者群は、PCR法によりコリバクチン生合成遺伝子が試料から検出されるか否かや、ミリストイル-D-アスパラギンが試料から検出されるか否かにより予め決定しておくことができる。
【0047】
当業者であれば、上記の判定のための閾値を高めれば、偽陽性率が低下する一方で、偽陰性率が高まり、閾値を低くすれば、偽陽性率が高まる一方で、偽陰性率が低下することを理解し得、これにより、そのときの目的に応じて閾値を設定することができるであろう。
【0048】
本発明によれば、
生体試料においてコリバクチンまたはコリバクチン産生大腸菌の存在を予測する方法であって、
生体試料中でミリストイルアスパラギンの有無を検出することを含む、方法
が提供される。
【0049】
本発明の方法のある態様では、生体試料は糞便試料であり、例えば、ヒトの糞便試料である。本発明の方法のある態様では、生体試料はがん組織またはがんであると疑われる組織を含む組織検体であり、例えば、ヒトの組織検体である{ここで、組織検体は凍結された検体であってもよい}。ミリストイルアスパラギンが検出されたということは、不活性型であるプロドラッグ形態から活性化型であるコリバクチンが産生されたことを意味する。従って、生体試料にミリストイルアスパラギンが検出されたことは、当該生体試料にコリバクチンが含まれることを意味する。生体試料にコリバクチンが含まれているということからは、糞便試料にコリバクチン産生菌(例えば、大腸菌)が存在していることが分かる。すなわち、本発明の方法で糞便試料中にミリストイルアスパラギンが検出されたということは、生体試料が由来する対象(例えば、ヒト)の大腸に、コリバクチンおよび/またはコリバクチン産生菌(例えば、大腸菌)が存在することを示す。コリバクチンは、大腸がんの原因として知られている。従って、本発明の方法は、対象(例えば、ヒト)が大腸がんに罹患する素因を有しているかを判定することに用いることができる。本発明の方法は、医師によるヒトに対する医療行為を含まない方法(すなわち、産業上利用可能な方法)であり得る。
【0050】
本発明のある態様では、糞便試料は、大腸菌の増殖に適した条件下で培養し、その後分析してもよい。本発明者らによれば、培養によりコリバクチン産生大腸菌の量が増えるため、コリバクチンやコリバクチン産生菌の検出感度が向上した。本発明では、コリバクチン陽性菌の単離は必須ではない。
【0051】
本発明によれば、
生体試料においてコリバクチンまたはコリバクチン産生大腸菌の存在を予測する方法であって、
生体試料中でClbPによりコードされる酵素の酵素活性の有無を検出することを含む、方法
が提供される。
ClbPによりコードされる酵素の酵素活性の有無は、ClbP依存的に開裂して蛍光性を獲得する蛍光化合物または蛍光プローブを用いて決定することができる。
【0052】
本発明によれば、ClbPによりコードされる酵素の活性は、糞便試料(特に乾燥された糞便試料)を用いても検出することができた。従って、本発明によれば、生体試料は、糞便試料または乾燥された糞便試料とすることができる。
【実施例
【0053】
実施例1:コリバクチンの検出
本実施例は、生体試料からのコリバクチンの検出を試みた。
【0054】
具体的には、コリバクチンは、構造未知の化学物質である。コリバクチンは、コリバクチン産生系を有する大腸菌の菌体内でプロドラッグとして産生されることが知られている。このコリバクチンのプロドラッグは、大腸菌のペリプラズムにおいて内膜上の酵素により、ミリストイルアスパラギン(プロドラッグモチーフ)とコリバクチンとに開裂し、活性型コリバクチンを産生する。本実施例では、プロドラッグモチーフを生体試料中で検出することを試みた。
【0055】
本実施例では、生体試料として、大腸に病変を認めないボランティアから採取されたヒトの糞便(23例)を用いた。まず、糞便試料から大腸菌ゲノムDNAを抽出し、精製した。その後、コリバクチン産生系を有する大腸菌が試料中に存在するか否かを確認するため、PCRによりコリバクチン生合成遺伝子クラスターの遺伝子のうち、clbA遺伝子、clbJ遺伝子およびclbQ遺伝子を増幅し、その有無を確認した。
各遺伝子の増幅に用いたプライマーは以下の通りであった:
clbAフォワードプライマー GTTCAATATCGACACCAAGCTCGCAGT
clbAリバースプライマー ACCCGTTATCTCTGCGTGAAAGACAAGTATTG
clbJフォワードプライマー TGGCCTGTATTGAAAGAGCACCGTT
clbJリバースプライマー AATGGGAACGGTTGATGACGATGCT
clbQフォワードプライマー CTGTGTCTTACGATGGTGGATGCCG
clbQリバースプライマー GCATTACCAGATTGTCAGCATCGCC
23例中、2例において、clbA遺伝子、clbJ遺伝子およびclbQ遺伝子の増幅が確認され、コリバクチン生合成遺伝子クラスターを有する大腸菌が糞便中に存在することが示された。
【0056】
そのうち、一例について、糞便から以下の手順によりプロドラッグモチーフを抽出、精製し、LC-MSに供した。具体的には、乾燥後の約40mgの糞便をmilliQ水に懸濁した。次いで、800μLの酢酸エチルを加えて攪拌した。4℃で10分間遠心し、酢酸エチル層を採取し、さらに遠心濃縮した。沈殿を50μLのDMFに溶かし、さらに遠心して上清をLC-MS解析(Q Exactive)に供した。菌体試料を用いる場合には、10mLのLB培地で37℃で24時間振とう培養した大腸菌に対して10mLの酢酸エチルを加え、攪拌した後に遠心分離し、酢酸エチル層を採取した。遠心濃縮して沈殿を50μLのDMFに溶かし、さらに遠心して上清をLC-MS解析(Q Exactive)に供した。
【0057】
LC-MS条件は以下の通りであった。
カラム条件:
ACQUITY UPLC HSS C18 Column
2.1×50mm Column
溶媒条件:
A: H2O/MeCN=95/5 (0.05% FA)
B: MeCN (0.05% FA)
HPLC条件:
(1) B 10%→50 % グラジエント(0 ~ 5 min)
(2) B 50% イソクラティック (5 ~ 7.5 min)
(3) A 100 % (7.5 ~ 11 min )
【0058】
ネガティブコントロールとして大腸菌DH5αを用い、ポジティブコントロールとしてNissle 1917を用い、菌体培養試料としてコリバクチン生合成遺伝子をコードしていることが確かめられた我々が分離した大腸菌を用いた。結果は、図1に示される通りであった。
【0059】
図1に示されるように、上記患者の糞便から、ポジティブコントロールや菌体培養試料と同じ保持時間を有し、プロドラッグモチーフに固有の質量電荷比(m/z+ 343.2591)を示すピークが検出された。このことから、コリバクチンのプロドラッグモチーフは糞便試料から直接的に検出し得ることが明らかとなった。このプロドラッグモチーフはコリバクチンに固有であることから、糞便試料においてプロドラッグモチーフが検出されたということは、糞便試料に構造未知のコリバクチン(活性型)が存在することを示す。このようにして、本実施例では、糞便試料においてプロドラッグモチーフを検出することにより、コリバクチンの存在を検出することができることが明らかとなった。
【0060】
実施例2:コリバクチン産生系を有する大腸菌を検出するプローブの設計
本実施例では、コリバクチン産生系を有する大腸菌を検出することができるプローブを設計した。
【0061】
蛍光色素であるアミノメチルクマリン(AMC)のアミノ基にミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合により連結した構造を有する化合物(プローブ1)を設計し、合成した。この化合物は、AMCの7位のアミノ基の電子供与性がミリストイルアスパラギンの連結により低下しており、蛍光を発しない。しかし、コリバクチン生合成遺伝子クラスターのClbP遺伝子によりコードされる酵素によりペプチド結合部分が開裂し、蛍光色素であるAMCを生成すれば、蛍光によりClbPによりコードされる酵素の有無を判定することができ、これによりコリバクチン生合成遺伝子クラスターを検出するプローブとなり得る。
【0062】
プローブ1の合成
【化19】
【0063】
50 mLナスフラスコにBoc-D-Asn-OH 300 mg(1.3 mmol)、7-Amino-4-methylcoumarin (AMC)176 mg(1.0 mmol)、O-(7-Aza-1H-benzotriazol-1-yl)-N,N,N’,N’-tetramethyluronium hexafluorophosphate (HATU) 400 mg(1.1 mmol)、N,N-dimethyl-4-aminopyridine (DMAP)一欠片(触媒量)を量り取り、窒素置換後にDry N,N-dimethylformamide (DMF) 5 mLに溶かした。N,N-diisopropylethylamine (DIEA) 150 μL(0.9 mmol)を加え、室温で4日間撹拌した。飽和重曹水 35 mLを加え、よく撹拌後、不溶物をろ別して回収し、真空ラインで減圧濃縮し、アミドを26 mg(0.067 mmol, 収率6.7%)得た。
【0064】
【化20】
【0065】
26 mg(0.067 mmol)のアミドを50 mLナスフラスコに取り、ジクロロメタン 1 mL及びtrifluoroacetic acid (TFA) 1 mLを加えて室温で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、トルエンで2回共沸した。得られた粗脱Boc体はそのまま次の反応に用いた。
【0066】
【化21】
【0067】
50 mLナスフラスコに粗脱Boc体、ミリスチン酸 20 mg(0.088 mmol)、HATU 30 mg(0.078 mmol)を量り取り、窒素雰囲気下にした後、Dry DMF 1 mL、DIEA 100 μL(0.57 mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応液に飽和重曹水 10 mLを加え、酢酸エチル50 mLで3回抽出した。得られた有機層をまとめて濃縮し、得られた生成物をHPLC[5C18-MS-II(φ20 x 250 mm),アセトニトリル-HO グラジエント70-100% 1 h]で精製し、6 mg(0.012 mmol, 二段回収率18%)のプローブ1を得た。
【0068】
プローブ2の合成
【化22】
【0069】
30 mLナスフラスコにBoc-L-Ala-OH 98 mg(0.52 mmol)、AMC 60 mg (0.34 mmol)、HATU 380 mmol(1.0 mmol)を量り取り、窒素置換後にDry DMF 2 mL、DIEA 200 μL(1.15 mmol)、DMAP 一欠片(触媒量)を加え、室温で1日撹拌した。反応液に飽和重曹水 8 mLを加え、酢酸エチル/ヘキサン(4/1) 5 mLで3回抽出した。有機層をあわせて、飽和食塩水5 mLで一度洗浄した後、減圧濃縮して粗生成物を240 mg得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[関東化学株式会社シリカゲル60N 100-210 μm 5 g, (クロロホルム/メタノール=1/0→30/1→15/1)]、及びHPLC[5C18-MS-II(φ20 x 250 mm), 45%アセトニトリル-HO]で精製し、91 mg (0.26 mmol, 収率76%)のアミドを得た。
【0070】
【化23】
【0071】
30 mLナスフラスコにアミド2 21 mg (0.062 mmol)を量り取り、ジクロロメタン 0.5 mLとTFA 0.5 mLを加えて室温で一時間撹拌した。得られた反応液を減圧濃縮し、トルエン共沸を5回行い、粗脱Boc体を得た。得られた粗脱Boc体はそのまま次の反応に用いた。
【0072】
【化24】
【0073】
30 mLナスフラスコに粗脱Boc体、Boc-D-Asn-OH 20 mg(0.088 mmol)、HATU 25 mg(0.067 mmol)を加え、窒素置換後にDry DMF 1 mLに溶かした。DIEA 100 μL(0.58 mmol)を加えて、室温で11時間撹拌した。得られた反応液に飽和重曹水 5 mLを加え、酢酸エチル 5 mLで4回抽出した。得られた有機層をまとめて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。さらにHO 5 mLを加えて凍結乾燥し、粗アミドを39 mg得た。得られたアミドはそのまま次
の反応に用いた。
【0074】
【化25】
【0075】
30 mLナスフラスコに粗アミド 39 mg、ジクロロメタン0.5 mL、TFA 0.5 mLを量り取り、室温で一時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、トルエン共沸を2回行った。得られた粗脱Boc体はそのまま次の反応に用いた。
【0076】
【化26】
【0077】
30 mLナスフラスコに粗脱Boc体、ミリスチン酸 20 mg(0.087 mmol)、HATU 25.1 mg(0.066 mmol)を量り取り、窒素置換後、Dry DMF 1 mLを加えた。DIEA 100 μL(0.58 mmol)を加えて室温で3時間撹拌した。反応液に飽和重曹水10 mLを加え、不溶物をろ別し、飽和重曹水と水で洗浄した。残った不溶物を集め、DMF可溶部をHPLC[5C18-MS-II(φ20 x 250 mm), アセトニトリル-HO グラジエント50-100% 1 h]で精製し、ClbP probe II 3.8 mg (6.7 μmol, 4段階収率11%)を得た。
【0078】
実施例3:生体試料におけるコリバクチン産生系を有する大腸菌の検出
【0079】
生体試料としては、実施例1でコリバクチン生合成遺伝子クラスターを有することが分かった患者の糞便を用いた。
【0080】
凍結乾燥後の糞便(異なるヒト対象から得られた4サンプル)を、サジ10杯分(推定40mg)すくい、milliQ水 200 μlに懸濁し、さらにプローブ1の20 mM DMSO溶液を終濃度が20 μMになるように加えた(DMSO終濃度0.1%)。その後、37 ℃, 100 rpmで24時間以上振盪した。反応後、反応液200 μLを取り、遠心した上清200 μLをそのままλex380 mm/λem460 mmで検出した(未抽出)。またさらに反応液200 μLを取り、酢酸エチル500 μLを加えてよく懸濁後、遠心して上清の酢酸エチル層を450 μL回収し、濃縮した。濃縮物にmilliQ水200 μLを加え、よく懸濁後に遠心し、上清200 μLをλex380 mm/λem460 mmで検出した(抽出後)。結果は、図2に示される通りであった。図2においては、4つの糞便試料の検出結果は、それぞれ「糞便あり_1」~「糞便あり_4」に分けて図示された。
【0081】
図2に示されるように、糞便と接触させることによりプローブの蛍光が回復することが示された。これは、糞便中にClbP遺伝子によりコードされる酵素が存在し、この酵素によりプローブが切断され、蛍光性のAMCが生成したことを意味するものである。このことから、上記のように設計したプローブの蛍光強度を指標として、糞便試料中にコリバクチン生合成遺伝子クラスターを有する大腸菌の存在を検出することができることが明らかとなった。図2の結果は、未抽出の糞便試料においても同様であった。このことから、糞便試料の分析においては、ClbP遺伝子によりコードされる酵素の抽出は、してもしなくてもよいことが分かった。実施例1で作製したプローブ2でも同様の結果であった。
【0082】
糞便試料は、大腸菌の増殖に適した条件下で培養し、その後分析してもよい。本実施例によれば、培養によりコリバクチン産生大腸菌の量が増えるため、コリバクチンやコリバクチン産生菌の検出感度が向上した。
【0083】
実施例4:培養した大腸菌を用いたアッセイ
本実施例では、コリバクチンを産生する大腸菌と産生しない大腸菌から、上記プローブがコリバクチンを産生する大腸菌のみを判定することができるかを検討した。
【0084】
コリバクチンを産生しない大腸菌としては、1246株および1649T株を用い、コリバクチンを産生する大腸菌としては、5263株、5491株およびNissle株を用いた。
【0085】
一晩培養した大腸菌をLB培地(2~4 mL)に20 μL播種し、さらにプローブ1の20 mM DMSO溶液を終濃度が20 μMになるように加えた(DMSO終濃度0.1%)。37 ℃, 100 rpmで24時間以上振盪した。反応後、反応液200 μLを取り、遠心した上清200 μLをそのままλex 380 mm/λem 460 mmで検出した(未抽出)。またさらに反応液200 μLを取り、酢酸エチル500 μLを加えてよく懸濁後、遠心して上清の酢酸エチル層を450 μL回収し、濃縮した。濃縮物にmilliQ水200 μLを加え、よく懸濁後に遠心し、上清200 μLをλex 380 mm/λem 460 mmで検出した(抽出後)。結果は図3に示される通りであった。
【0086】
図3に示されるように、上記検出系を用いることにより、特に抽出後の試料において、プローブの蛍光強度を指標として、コリバクチンを産生する大腸菌を検出することができることが明らかとなった。実施例1で作製したプローブ2でも同様の結果であった。
【0087】
実施例5:大腸組織検体から分離された大腸菌からのコリバクチン陽性菌の検出
本実施例では、PCR法によりコリバクチン生合成遺伝子が検出された大腸組織検体(n=100)およびコリバクチン生合成遺伝子が検出されなかった大腸組織検体(n=100)から分離した大腸菌に対してプローブIを適用することでコリバクチン陽性菌の検出を試みた。
【0088】
大腸菌は、ヒト大腸組織検体を生理食塩水中でホモジナイズし、これをマッコンキー平板培地上に塗布し、培養することにより分離した。コリバクチン産生系を有する大腸菌が試料中に存在するか否かを確認するため、PCRによりコリバクチン生合成遺伝子クラスターの遺伝子のうち、clbBを下記プライマーを用いて増幅し、増幅断片の有無を指標としてコリバクチン陽性菌か否かを評価した。
clbBフォワードプライマー tgttccgttttgtgtggtttcagcg
clbBリバースプライマー gtgcgctgaccattgaagatttccg
【0089】
プローブIによるコリバクチン陽性菌の検出感度および精度を評価するため、上記PCR法によってコリバクチン陽性菌が検出された大腸組織検体とコリバクチン陽性菌が検出されなかった大腸組織検体から上記の通り分離された大腸菌をそれぞれ100検体ずつ用意した。96ウェルプレートの各ウェルに100μMプローブを含むLB液体培地100μL(アッセイA)、ならびにプローブを含まないLB液体培地100μL(アッセイB)を分注した。平板培地上の一つの大腸菌株コロニーのごく微小量(爪楊枝の先に付着する程度)を、アッセイAとアッセイBのそれぞれのウェルに加えた。プレートを37℃にて24時間静置培養した後に、蛍光を測定した。λex 380 mm/λem 460 mmをプレートリーダーを用いて測定し、アッセイAとアッセイB(バックグラウンド)との蛍光強度の差を求め、閾値を100として、当該比が100以上である場合に陽性とし、100未満である場合に陰性と評価した。
【0090】
結果は、図4に示される通りであった。図4では、上段にPCRでコリバクチン陽性菌が検出された100検体が表示され、下段にPCRでコリバクチン陽性菌が検出されなかった100検体が表示されている。また、縦軸は、蛍光強度(λex 380 mm/λem 460 mm)を表し、横軸は各検体を表す。図4に示されるように、プローブIは、コリバクチン陽性菌を精度100%で検出し、陰性菌を陽性と判定した比率(偽陽性率)は1%未満であった。なお、図4の上段および下段の最も左のバーは、ポジティブコントロールであり、その隣のバーは、ネガティブコントロールである。
この結果から、本発明のプローブは、コリバクチン陽性菌の検出において有用であることが確認された。
【0091】
実施例6:糞便試料を用いたコリバクチン陽性菌の検出
本実施例では、糞便試料を水に溶解後、培養して得られた培養物に対してプローブIを適用し、コリバクチン陽性菌を検出できることを確認した。
【0092】
ヒトから得られた糞便試料を水に溶解し、マッコンキー培地を含むプレートへと塗布して37℃で12時間培養した。得られた赤紫色のコロニーについて、100μMのプローブIを含むLB液体培地に植菌し、24時間培養して、プレートリーダーで蛍光(λex 380 mm/λem 460 mm)を測定した。これらの試料それぞれについて、実施例5と同様にコリバクチン陽性菌の有無をPCR法で検出し、プローブIによる蛍光強度との相関を調べた。結果は、図5に示される通りであった。
【0093】
図5に示されるように、プローブIは、糞便試料中に存在するコリバクチン陽性菌を高感度および高精度に検出することができた。
【0094】
実施例7:凍結状態で保存されたがん患者組織におけるコリバクチン陽性菌の検出
本実施例では、凍結状態で保存されていた大腸がん組織およびその周辺組織を含む組織について、PCR法によってコリバクチン生合成遺伝子を調べた。その後、組織のホモジェナイズ液を培養し、得られた培養物に含まれるミリストイル-D-アスパラギンを定量した。
【0095】
その結果、全14名の被験者由来サンプル中、がん組織において8検体(57.1%)、正常組織において1検体(7.1%)でコリバクチン生合成遺伝子が検出された(図6参照)。また、上記の組織由来のホモジナイズ液をマッコンキー寒天培地へと塗布し、そこから得られる可培養性バクテリアを獲得した。コロニーPCR法にて、得られたコロニー中のコリバクチン生合成遺伝子の有無を確認したところ、がん組織由来の全コロニー220個のうちの36個がコリバクチン生合成遺伝子陽性であった(16.4%)(図6参照)。一方で、正常組織由来103個のコロニーのうち、1つのコロニーのみがコリバクチン生合成遺伝子陽性であった(0.9%)。
【0096】
以上のことから、大腸がん組織には、多くのコリバクチン生産菌が集積していることが示唆された。獲得されたコリバクチン生合成遺伝子陽性株計37株については、試験管内での培養を行い、ミリストイル-D-アスパラギンの定量を通じて、コリバクチン生産能を評価した。結果は図7に示される通りであった。図7に示されるように、全37株の菌株のうち、検出限界以下であったH13-3310T-16以外の36株においてミリストイル-D-アスパラギンの生産が確認された。その生産量には菌株間で明確な差があり、生産量が多い株は少ない株に比べて10,000倍程度高い生産性を示した。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
[1]以下に示される、化合物または蛍光プローブ:
(A)クマリン骨格の7位にアミノ基を有するクマリン系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(B)ナフタルイミド骨格の4位にアミノ基を有するナフタルイミド系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(C)2位にアミノ基を有するナフタレン、ピレンまたはアントラセンの当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(D)キサンテン骨格の3位および/または9位にアミノ基を有するローダミン系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(E)Bodipy母核の1位および/または7位にアミノ基を有するBodipy系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ;
(F)上記(A)~(E)において、前記カルボキシル基と前記アミノ基とがアラニン(-NH-CH(CH3)-CO-)で連結された化合物(それぞれアラニンとアミド結合を形成する)または蛍光プローブ;
(G)ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基と水酸基がフリーになることで蛍光性となる蛍光基であるoFluの水酸基とが、自己開裂性リンカーを介して連結した化合物であって、自己開裂性リンカーは、ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とアミド結合で連結しており、当該アミド結合が加水分解されると、分解してoFluの水酸基をフリーにする、化合物または蛍光プローブ;および
(H)ミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とアミド結合により連結した蛍光色素を有する化合物であって、アミド結合がClbP依存的に開裂すると、その後、蛍光を発する、化合物または蛍光プローブ
からなる群から選択される、化合物または蛍光プローブ。
[2][1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(A)クマリン骨格の7位にアミノ基を有するクマリン系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ
である、化合物または蛍光プローブ。
[3][1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(B)ナフタルイミド骨格の4位にアミノ基を有するナフタルイミド系蛍光色素の当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ
である、化合物または蛍光プローブ。
[4][1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(C)2位にアミノ基を有するナフタレン、ピレンまたはアントラセンの当該アミノ基とミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ
である、化合物または蛍光プローブ。
[5][1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(D)キサンテン骨格の3位および/または9位にアミノ基を有するローダミン系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ
である、化合物または蛍光プローブ。
[6][1]に記載の化合物または蛍光プローブであって、
(E)Bodipy母核の1位および/または7位にアミノ基を有するBodipy系蛍光色素の当該アミノ基の一部または全部のそれぞれとミリストイルアスパラギンのカルボキシル基とがアミド結合で連結した化合物または蛍光プローブ
である、化合物または蛍光プローブ。
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物または蛍光プローブを含む、試料中のコリバクチン産生微生物を検出することに用いるための、コリバクチン生合成遺伝子クラスターを有する微生物を検出することに用いるための、および/またはコリバクチンを検出することに用いるための組成物。
[8]試料が生体から取り出した組織検体または糞便試料である、[7]に記載の組成物。
[9]生体から取り出した組織検体または糞便試料が、ヒトの組織検体または糞便試料である、[8]に記載の組成物。
[10]試料中のコリバクチンまたはコリバクチン産生大腸菌の存在を検出する方法であって、試料中にふくまれるミリストイルアスパラギンの有無を検出することを含む、方法。
[11]試料が、生体から取り出した組織検体または糞便試料である、[10]に記載の方法。
[12]試料がヒト由来である、[10]または[11]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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