(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージングを改善する装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230201BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A61B5/055 355
A61B5/055 390
G01N24/00 530Y
G01N24/00 530C
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2019567651
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(86)【国際出願番号】 US2018036447
(87)【国際公開番号】W WO2018226946
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301069856
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シン ヂャン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】グアンウー ドゥアン
(72)【発明者】
【氏名】シャオグアン ヂャオ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142772(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0127707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号の信号雑音比を改善することにより、作業周波数によって特徴づけられるMRIマシンの動作を改善する装置であって、当該装置は、
前記MRIマシンが検体をイメージングする際に、前記MRIマシンのボア内に検体と共に配置可能な寸法を有するユニットセルアレイであって、前記検体により放出される信号の信号雑音比を増加させる受動動作が可能なユニットセルアレイを含み、
各ユニットセルは、共振周波数を有し、
前記アレイは、前記作業周波数又はその近傍に共振周波数を有し、
前記ユニットセルは、相互に磁気結合されるように構成されて
おり、
前記アレイは、前記ユニットセル間の間隔を変化させることにより、共振周波数が同調可能となるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記ユニットセルは、低誘電定数の共振器である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ユニットセルは、ブロードサイド結合型スプリットリング共振器である、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ユニットセルは、開ループコイルである、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ユニットセルは、所定の間隔によって相互に分離されたヘリカルコイルであ
る、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ユニットセルは、信号の磁場を増幅するが、信号の電場を増幅しないように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記アレイの共振周波数は、前記MRIマシンの作業周波数とは異なる、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
各ユニットセルは、2つの端部を有するコイルを含み、各ユニットセルはさらに、前記2つの端部間に電気的に結合されたキャパシタを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
各ユニットセルは、2つの端部を有するコイルを含み、各ユニットセルはさらに、前記2つの端部間に電気的に結合されたインダクタを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
各ユニットセルは、
2つの端部を有するコイルと、当該2つの端部間に結合された制御可能な可変インピーダンスを有するカプラとを含み、
各ユニットセルは、前記カプラが第1のインピーダンス状態にある場合、第1の共振周波数を有し、前記カプラが第2のインピーダンス状態にある場合、第2の共振周波数を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記カプラは半導体パッチであり、当該半導体パッチは、
前記MRIマシンが送信したRFエネルギに応答して前記第1のインピーダンス状態から前記第2のインピーダンス状態への変化を行い、前記ユニットセルを有効に非共振とすべく、前記ユニットセルの共振周波数を前記MRIマシンの前記作業周波数から離れる方向へシフトさせるように構成されている、
請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記カプラはスイッチであり、当該スイッチは、
前記MRIマシンからの信号に応答して前記第1のインピーダンス状態から前記第2のインピーダンス状態への変化を行い、前記ユニットセルの共振周波数を前記MRIマシンの前記作業周波数から離れる方向へシフトさせるように構成されている、
請求項
10に記載の装置。
【請求項13】
前記ユニットセルは、コアと、当該コアの周に巻回された開ループコイルとを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
検体を磁気共鳴イメージングする方法であって、
ボア及び作業周波数を有するMRIマシンを準備することと、
前記ボア内に前記検体を配置することと、
前記MRIマシンが前記検体をイメージングする際に、前記MRIマシンの前記ボア内に検体と共に配置可能な寸法を有するユニットセルアレイを前記ボア内に前記検体と共に配置することであって、前記アレイは前記検体により放出される信号の信号雑音比を増加させる受動動作が可能であり、ユニットセルは相互に磁気結合されるように構成されており、各ユニットセルは共振周波数を有し、前記アレイは前記作業周波数又はその近傍に共振周波数を有する、ことと、
前記検体のイメージングのために前記MRIマシンを動作させることと、
を含
み、
前記アレイは、前記ユニットセル間の間隔を変化させることにより、共振周波数が同調可能となるように構成されている、方法。
【請求項15】
前記MRIマシンは、
(A)64MHzの作業周波数及び64MHzの5%以内のアレイの共振周波数を有する1.5テスラMRIマシン、又は、
(B)128MHzの作業周波数及び128MHzの5%以内のアレイの共振周波数を有する3テスラMRIマシン
のいずれかである、
請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
受信信号の信号雑音比を改善することにより、作業周波数によって特徴づけられかつボアを有するMRIマシンの動作を改善する装置であって、当該装置は、
前記MRIマシンの前記ボア内にはめ込み可能な寸法を有するユニットセルアレイであって、検体により放出される信号の信号雑音比を増加させる受動動作が可能なユニットセルアレイを含み、
各ユニットセルは、前記MRIマシンによって印加される信号に応答する共振手段を含み、
前記アレイは、前記MRIマシンの前記作業周波数に共振周波数を有し、
前記アレイは、前記ユニットセル間の間隔を変化させることにより、共振周波数が同調可能となるように構成されており、
前記ユニットセルは、相互に結合されるように配置されており、
前記アレイは、前記MRIマシンによって測定された信号において、少なくとも50の信号雑音比を形成する、装置。
【請求項17】
前記共振手段は、開ループヘリカル共振器を含む、
請求項
16に記載の装置。
【請求項18】
前記開ループヘリカル共振器は、2つの端部を有するコイルと、当該2つの端部間に結合された制御可能な可変インピーダンスを有するカプラとを含み、
各ユニットセルは、前記カプラが第1のインピーダンス状態にある場合、第1の共振周波数を有し、前記カプラが第2のインピーダンス状態にある場合、第2の共振周波数を有する、
請求項
17に記載の装置。
【請求項19】
前記共振手段は、ブロードサイド結合型スプリットリング共振器を含む、
請求項
16に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、受動装置であり、
前記ユニットセルは、ブロードサイド結合型スプリットリング共振器、開ループコイル及びヘリカルコイルからなるグループから選択されており、
前記アレイは、前記検体により放出されかつ前記MRIマシンによって測定された信号において、少なくとも50の信号雑音比を形成する、
請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記ユニットセルアレイは、受動アレイであり、
前記ユニットセルは、ブロードサイド結合型スプリットリング共振器、開ループコイル及びヘリカルコイルからなるグループから選択される、
請求項
14に記載の方法。
【請求項22】
前記装置は、受動装置であり、
前記共振手段は、ブロードサイド結合型スプリットリング共振器、開ループコイル及びヘリカルコイルからなるグループから選択されている、
請求項
16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、発明者名:Xin Zhang, Stephan Anderson, Guangwu Duan, Xiaoguang Zhao、発明の名称:“Apparatus for Improving Magnetic Resonance Imaging”として2017年6月7日付提出の米国特許仮出願第62/516376号[事務所整理番号3273/119]の優先権を主張するものであり、この出願の開示は引用により全体として本願に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本発明は、イメージング、より具体的には磁気共鳴イメージングに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
磁気共鳴イメージング(「MRI」)は、X線を使用せずに検体の内部構造の像を取得する医用イメージング技術である。MRIマシンは、検体に強磁場及び電磁刺激を印加し、応答として検体の原子に電磁信号の放出を生じさせる。MRIマシンは検体から放出された電磁信号を取得し、当該取得した信号から像を構成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MRIマシンの公知の限界は、取得される信号の信号雑音比(SNR)である。雑音は、MRIマシン自体の回路を含む種々の源によって生じ、検体から放出された信号を劣化させたり暈けさせたりする。SNRは、信号増幅、例えば静磁場の強度の増加によって、又は、雑音低減、例えばMRIマシンの信号処理回路の改善によって、又は、これら双方の組合せのいずれによっても改善可能である。しかし、こうしたアプローチは理想的というには足りず、いくつかの検体、例えば生物に対して安全に印加可能な出力量について限界があり、また、雑音を完全に消去することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
種々の実施形態の概要
例示の実施形態によれば、装置は、複数の共振器を含み、患者から放出されてMRIマシンにより取得される無線周波数信号の信号雑音比を増加させるように動作する。
【0006】
例示の一実施形態においては、本装置は、作業周波数で共振するように構成された共振器アレイ(各共振器は「ユニットセル」である)を含む。アレイは、MRIマシンが検体をイメージングする際に、MRIマシンのボア内に検体と共に配置されるように構成されている。動作中に、アレイは、MRIマシンが測定する信号の信号雑音比を増加させる。
【0007】
いくつかの実施形態においては、本装置は、MRIマシンの作業周波数とは異なる共振周波数を有する。実際に、いくつかの実施形態においては、本装置は、アレイの各共振器間の間隔を変化させることにより同調可能な共振周波数を有する。
【0008】
いくつかの実施形態においては、各共振器は、ブロードサイド結合型スプリットリング共振器である。他の実施形態においては、各共振器は、開ループコイルであり、ヘリカルコイルであってもよい。一般に、共振器のそれぞれは、信号の磁場に結合されてこれを増幅するが、信号の電場には結合されないように構成される。
【0009】
例示の一実施形態は、MRIマシンが受信した信号の信号雑音比を改善することにより、作業周波数によって特徴づけられるMRIマシンの動作を改善する装置を提供する。本装置は、MRIマシンが検体をイメージングする際に、MRIマシンのボア内に検体と共に配置可能な寸法を有する(又は検体と共に配置されるように構成された)ユニットセルアレイを含む。各ユニットセルは共振周波数を有し、アレイはMRIマシンの作業周波数又はその近傍に共振周波数を有する(例えば、いくつかの実施形態においては、アレイは、MRIマシンの作業周波数の±5%(境界値含む)の共振周波数を有する)。ユニットセルは、相互に結合されるように(例えば相互に磁気結合されるように)構成されており、アレイは、MRIマシンが測定する信号において、少なくとも50の信号雑音比を形成する。いくつかの実施形態においては、ユニットセルは低誘電定数の共振器である。好ましい実施形態においては、ユニットセルは、信号の磁場を増幅するが信号の電場を増幅しないように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態においては、各ユニットセルは、ブロードサイド結合型スプリットリング共振器を含む。
【0011】
他の実施形態においては、ユニットセルは開ループコイルであり、好ましい実施形態においてはヘリカルコイルである。好ましい実施形態においては、アレイは、ユニットセル間の間隔を変化させることによりアレイの共振周波数が同調可能となるように構成される。好ましい実施形態においては、ユニットセルは、コアと当該コアの周に巻回された開ループコイルとを含む。こうしたいくつかの実施形態においては、コアは80から173の相対誘電率を有し、いくつかの実施形態においては、コアは二酸化チタンから形成される。
【0012】
いくつかの実施形態においては、アレイの共振周波数は、MRIマシンの作業周波数とは異なる。
【0013】
いくつかの実施形態においては、各ユニットセルは、2つの端部を有するコイルを含み、各ユニットセルはさらに、2つの端部間に電気的に結合されたキャパシタを含む。他の実施形態においては、各ユニットセルは、2つの端部間に電気的に結合されたインダクタを含む。
【0014】
例示の実施形態においては、各ユニットセルは、2つの端部を有するコイルと、当該2つの端部間に結合された制御可能な可変インピーダンスを有するカプラとを含む。こうしたユニットセルは、カプラが第1のインピーダンス状態にある場合、第1の共振周波数を有し、カプラが第2のインピーダンス状態にある場合、第2の共振周波数を有する。例示の実施形態においては、カプラは半導体パッチであり、当該半導体パッチは、MRIマシンが送信したRFエネルギに応答して第1のインピーダンス状態から第2のインピーダンス状態への変化を行い、ユニットセルを有効に非共振とすべく、ユニットセルの共振周波数をMRIマシンの作業周波数から離れる方向へシフトさせるように構成される。他の実施形態においては、カプラはスイッチであり、当該スイッチは、MRIマシンからの信号に応答して第1のインピーダンス状態から第2のインピーダンス状態への変化を行い、ユニットセルの共振周波数をMRIマシンの作業周波数から離れる方向へシフトさせるように構成される。
【0015】
さらに他の実施形態においては、検体を磁気共鳴イメージングする方法が、ボア及び作業周波数を有するMRIマシンを準備すること、ボア内に検体を配置すること、及び、ユニットセルアレイを検体と共にボア内に配置することを含む。ユニットセルアレイは、MRIマシンが検体をイメージングする際に、MRIマシンのボア内に検体と共に配置可能な寸法を有する。各ユニットセルは共振周波数を有し、アレイはMRIマシンの作業周波数又はその近傍に共振周波数を有する。この場合、本方法は、当該分野に公知の方式で、検体のイメージングのためにMRIマシンを動作させることを含む。
【0016】
好ましい実施形態においては、MRIマシンは、64MHzの作業周波数及び64MHzの5%以内(±5%、境界値含む)のアレイの共振周波数を有する1.5テスラMRIマシンである。他の好ましい実施形態においては、MRIマシンは、128MHzの作業周波数及び128MHzの5%以内(±5%、境界値含む)のアレイの共振周波数を有する3テスラMRIマシンである。
【0017】
上述した各実施形態の特徴は、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を参照することにより、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】MRIマシンの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図1B】MRIマシンの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図1C】MRIマシンの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図1D】MRIマシンの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2A】共振器アレイを使用せずに取得されたMRI像である。
【
図2B】共振器アレイの一実施形態を使用して取得されたMRI像である。
【
図2C】共振器アレイの他の実施形態を使用して取得されたMRI像である。
【
図3A】共振器アレイの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3B】共振器アレイの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3C】ハニカム型共振器アレイの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図4B】共振器アレイの周期性と共振器アレイの周波数応答との関係をMRIマシンの作業周波数に対して示す図である。
【
図5A】ヘリカル共振器の一実施形態を概略的に示す図である。
【
図5B】ヘリカル共振器の一実施形態を概略的に示す図である。
【
図5C】ヘリカル共振器の一実施形態を概略的に示す図である。
【
図5D】ヘリカル共振器アレイの一実施形態の動作特性を概略的に示す図である。
【
図5E】ヘリカル共振器アレイの一実施形態の動作特性を概略的に示す図である。
【
図5F】付加的なインピーダンスを有するヘリカル共振器セルを概略的に示す図である。
【
図5G】ユニットセルの共振周波数とユニットセルの内部容積の誘電率との関係を示すための、シャーレ内に水と共に配置されたユニットセルの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図5H】ユニットセルの共振周波数とユニットセルの内部容積の誘電率との関係を示すための、シャーレ内に水と共に配置されたユニットセルの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図5I】ユニットセルの共振周波数とユニットセルの内部容積の誘電率との関係を概略的に示す図である。
【
図6A】ブロードサイド結合型スプリットリング共振器の一実施形態及びいくつかの特性を概略的に示す図である。
【
図6B】ブロードサイド結合型スプリットリング共振器の一実施形態及びいくつかの特性を概略的に示す図である。
【
図6C】ブロードサイド結合型スプリットリング共振器の一実施形態及びいくつかの特性を概略的に示す図である。
【
図6D】ブロードサイド結合型スプリットリング共振器の一実施形態及びいくつかの特性を概略的に示す図である。
【
図6E】ブロードサイド結合型スプリットリング共振器の一実施形態及びいくつかの特性を概略的に示す図である。
【
図7A】フレキシブルな共振器アレイの実施形態を概略的に示す図である。
【
図7B】フレキシブルな共振器アレイの実施形態を概略的に示す図である。
【
図8A】同調可能なユニットセルの実施形態を概略的に示す図である。
【
図8B】同調可能なユニットセルの実施形態を概略的に示す図である。
【
図8C】同調可能なユニットセルの実施形態を概略的に示す図である。
【
図8D】同調可能なユニットセルの実施形態を概略的に示す図である。
【
図8E】同調可能なユニットセルの実施形態を概略的に示す図である。
【
図8F】同調可能なユニットセルの実施形態を概略的に示す図である。
【
図8G】同調可能なユニットセルの実施形態を概略的に示す図である。
【
図9】検体をイメージングする方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特定の実施形態の詳細な説明
複数の共振器を有する装置は、MRIマシンが送信する出力を増加させることなく、検体から放出されてMRIマシンが取得する無線周波数(「RF」)信号の信号雑音比を増加させる。いくつかの実施形態においては、本装置は、MRIマシンから検体への無線周波数エネルギの信号送信中及び検体からMRIマシンへの無線周波数信号の送信中の双方において無線周波数エネルギの磁場成分を増加させるが、他の実施形態においては、本装置は、検体からMRIマシンへの無線周波数信号の送信中にのみ無線周波数エネルギの磁場成分を増加し、MRIマシンから検体への無線周波数エネルギの送信中には増加しない。さらに、本装置は、望ましくない電場の形成又は増加を実質的に回避することにより、検体の安全性を高める。本装置を使用することにより、MRIマシンによって形成される像が改善され、及び/又は、MRIマシンによる像の取得に必要な時間が低減される。
【0020】
図1Aには、MRIマシン100の断面が概略的に示されており、こうしたマシンの公知の複数の特徴が示されている。MRIマシンによってスキャンされる検体99は、架台101に横たわっている。典型的には、検体99は、30分以上となることもあるスキャン時間にわたって可能なかぎり静穏に横たわっていなければならない。
【0021】
主フィールドコイル110は、検体99を取り巻きかつ通る磁場を形成し、ボディコイル120は検体99に電磁(例えば無線周波数)刺激を適用する。これに応答して、検体の原子は、ボディコイル120及び/又は検体コイル130によって検出可能な電磁パルスを放出する。検体コイル130は、検体99のより近傍にあり、より離れたボディコイル120が形成した信号に比べて大きな信号雑音比(「SNR」)を有する信号を形成するので、好ましいものとなり得る。コンピュータ150は、例えば通信リンク151によりMRIマシンとのデータ通信を行い、ボディコイル120及び/又は検体コイル130が受信した信号を受信して処理し、検体の内部構造の像を形成する。ボディコイル120及び検体コイル130は、MRIマシン100に有線接続されている。ボディコイルは、MRIマシンとパワー及び制御の通信を行い、電磁刺激の形成に要求されるパワー及び制御の信号を受信する。ボディコイル120及び検体コイル130の双方は、MRIマシン100とデータ通信して、検体99から検出した信号をMRIマシン100に供給する。このために、MRIマシンのいくつかの実施形態は、制御信号821に即して後述するように、MRIマシン及び/又はアレイに制御信号を供給するように、及び/又は、ボディコイル120及び検体コイル130からの信号を受信するように構成されたコントローラ140を含む。
【0022】
像の品質及び像の形成にとって充分な数の放出信号をMRIマシン100が収集するのに必要な時間は、受信された信号のSNRに部分的に依存する。SNRが増加すると、MRI出力を改善することができ、及び/又は、検体99から放出された信号の収集に要求される時間が低減される。
【0023】
図1A及び
図1Bにはそれぞれ、MRIマシンの動作及びMRIマシンが形成した結果を改善するための共振器アレイ300の一実施形態が概略的に示されている。
【0024】
図1Aにおいては、検体コイル130が検体99と共振器アレイ300との間に配置されており、
図1Bにおいては、共振器アレイ300が検体99(この例においては、検体99の四肢又は外肢799)と検体コイル130との間に配置されている。いくつかの実施形態においては、共振器アレイ300は、例えばMRIマシン100がボディコイル120を使用して検体99から放出された電磁パルスを受信する場合、検体コイル130無しでMRIマシンのボア102内に配置可能である。ここで使用しているように、MRIマシン100の「ボア」102なる語は、MRIマシン100によるイメージングの際に検体99が配置される場所を意味する。例えば、閉鎖型MRIマシン100においては、ボア102はマシンのトロイドセクションの内部であり、開放型MRIマシン100においては、ボア102はマシンの上方磁気領域と下方磁気領域との間の空間であり、開放直立型MRIマシン100においては、ボア102はマシンの左方磁気領域と右方磁気領域との間の空間である。
【0025】
図1A及び
図1Bにおいては、検体コイル130及び共振器アレイ300と架台との間に検体99が示されているが、これは、検体コイル130が設けられる場合にも又は設けられない場合にも、
図1C及び
図1Dに概略的に示した通り、検体99と架台101との間に配置可能な共振器アレイ300の使用に限定されない。
【0026】
ボディコイル120とは異なり、共振器アレイ300は、パワー信号を要求せず又はパワー信号を受信しない受動性を有しており、いくつかの実施形態においては、その機能の実行のために、制御信号を要求せず、又は、制御信号を受信しない。例示の実施形態においては、(ユニットセル301を含む)共振器アレイ300は、ボディコイル120又は検体コイル130とは別個であって、その一部でない。さらに、例示の実施形態においては、(ユニットセル301を含む)共振器アレイ300は、MRIマシン100及びボディコイル120及び検体コイル130とは物理的に別個であって、MRIマシン100及びボディコイル120及び検体コイル130に有線接続されていない。また、ボディコイル120及び検体コイル130の双方とは異なり、共振器アレイ300はMRIマシン100とデータ通信もしない。
【0027】
発明者らは、
図1Aから
図1Dに概略的に示されている、検体コイル130を伴う又は伴わない共振器アレイ300の使用により、MRIマシン100から検体99へ送信される無線周波数信号のSNRが改善され、さらに検体99から放出されてMRIマシン100が受信する信号のSNRが改善され、MRI出力像の品質の増加及び/又は検体99のスキャンに要求される時間の低減が可能となり、これらのそれぞれが既存のMRI技術に比べた改善を示すことを発見した。異常特性に起因して、共振器アレイ300及び/又はその共振器301はメタマテリアルと見なされることもある。しかし、これは、共振器アレイ300及び/又はそのユニットセル301が負の屈折係数、負の誘電率及び/又は負の透磁率を有することを要求しない。種々の実施形態において、共振器アレイ300及び/又はそのユニットセル301は、正の屈折係数、正の誘電率及び/又は正の透磁率を有することができる。
【0028】
例えば、
図2Aには、共振器アレイ300無しの従来のMRI技術を使用したMRIスキャンの結果が示されている。当該結果を得るため、発明者らは、1.5TMRIマシンのボア102内の9個の位置(
図2Aの番号1~9)での信号強度と、当該MRIマシンの3個の位置(番号10~12)での雑音とを測定した。次いで、発明者らは、雑音測定の平均を計算し、さらに、この雑音測定の平均に対する各信号測定のSNRを計算した。結果を以下に示すが、33.2から39.0までにわたるSNRが見られる。当該結果を「ベースライン」SNRと称することもある。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
当該結果に対して、
図2A、
図2B及び
図2Cにはそれぞれ、ヘリカル共振器500(例えば
図5Aから
図5C)であるユニットセル301を有する共振器アレイ300を備えた同じ1.5TMRIマシンを使用した、同じ9個の位置でのMRIスキャンの結果が示されている。当該結果を得るため、発明者らは
図2Aに即して上述した方式で信号と雑音とを測定したが、著しく改善されたSNRが得られている。
【0033】
図2Bの実施形態においては、SNRはベースラインSNRよりもかなり大きかった。当該結果を以下に示すが、68.4から277.3までにわたるSNRが見られる。
図2Bの位置1のSNRと
図2Aの位置1の結果とを比較すると、(33.2のベースラインSNRから277.3の改善されたSNRへの)SNRの大きな増加が示されている。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
図2Cの実施形態においては、
図2Bの形成に使用されるアレイとは異なる周期性(すなわち、異なる相互間隔)を有するユニットセル301を有するアレイ300を使用した。当該実施形態でも、ベースラインSNRよりかなり高いSNRが同じ9個の位置で形成された。当該結果を以下に示すが、46.2から401.5までにわたるSNRが見られる。
図2Cの位置1のSNRと
図2Aの位置1の結果とを比較すると、(33.2のベースラインSNRから401.5の改善されたSNRへの)SNRの大きな増加が示されている。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
一般に、共振器アレイ300は、検体から放出された信号のSNRを増加させる。所与のMRIマシンにおいては、共振器アレイを使用していないMRIマシンが受信した信号のSNRに対し、共振器アレイ300の実施形態により、こうした信号のSNRが、少なくとも45.6,50,60,95,100,120,150及び/又は少なくとも193.4、又は、45から401までの間の任意の点へ増加される。
【0042】
共振器アレイ
共振器アレイ300の例示の一実施形態が、
図3A及び
図3Bに概略的に示されている。当該実施形態のアレイ300は、16個のユニットセル301を4×4のアレイで含むが、他の実施形態として、より多くの又はより少ないユニットセル301を使用可能であり、また、例えば正方形状、ハニカム状(
図3C)又は長方形状の種々の配置で配置可能である。
【0043】
各ユニットセル301は「共振器」と称されることもある。なぜなら、これは、印加された電磁信号、例えば、MRIマシン100が検体99に印加した信号、及び/又は、MRIマシン100内でユニットセル301が検体99から受信した信号に応答して共振するように構成されているからである。例えば、各ユニットセルは、インダクタンス(L)及びキャパシタンス(C)を有することができ、したがって、電気技術分野で公知のLC共振器と同様に共振する。各ユニットセル301は、
図4Aに即して説明するように、共振周波数及びQを有する。
【0044】
図4Aには、共振デバイスの品質係数が図示されている。共振ユニットセルは、部分的に、「Q係数」又は単に「Q」と称されることのあるその品質係数によって特徴づけ可能である。ユニットセルのQ係数はその共振特性の尺度量である。
【0045】
例えば、ユニットセル301は、1つ又は複数の周波数のエネルギを含み得る電磁エネルギを有する、MRIマシン100内で検体99の原子から放出された電磁信号又はMRIマシン自体からの電磁信号を受信することができる。当該エネルギは、電気技術分野のLC回路から公知の方式で、ユニットセル301において共振する。
【0046】
理想的には、当該エネルギはユニットセルの共振周波数f
0(401)で共振するが、
図4Aの曲線スペクトルに示したように、ユニットセル301はより低い周波数でも幾分かは共振し得る。最大エネルギは、振幅A1で表される周波数f
0(401)で発生可能であり、これは中心周波数とも称され得る。他の周波数においては、エネルギは、さらに
図4Aに概略的に示したように、中心周波数401でのエネルギより低くなる。中心周波数401を上回る幾分かの周波数402(上方3dB周波数として知られる)及び中心周波数を下回る他の周波数403(下方3dB周波数として知られる)で、共振信号のエネルギは中心周波数401でのエネルギの1/2である。
図4Aのスペクトル400は、ユニットセル301内で共振するエネルギの幾分かが、点405に示されている基底雑音を上回ることを示している。
【0047】
この場合、ユニットセル301のQは、中心周波数(f
0)を、上方3dB周波数と下方3dB周波数との差(Δf又はデルタf)で除算した比として定義されている。
図4Aにおいては、Qは、上方3dB周波数402と下方3dB周波数403との周波数差410で除算された中心周波数401である。このように、Qは無次元のパラメータである。
【0048】
動作中に、ユニットセル301は、検体99の1つ又は複数の原子から、MRIマシンの作業周波数又はその近傍の周波数を有する電磁エネルギ(例えばRFエネルギ)のパケットを受信することができる。例えば、好ましい実施形態においては、MRIマシンの作業周波数の±5%(境界値含む)以内の周波数を有する電磁エネルギが、MRIマシンの作業周波数又はその近傍の周波数として定義される。所定の時間にわたって(例えばMRIマシンの動作中)、各ユニットセル301は電磁エネルギの多数のパケットを受信し、そのエネルギの合計を蓄積する。ユニットセル301のQが高くなるにつれ、ユニットセル301が受信したエネルギを蓄積する際の効率も高くなる。
【0049】
加えて、ユニットセル301が共振すると、受信された電磁エネルギの磁場成分が増幅され、受信された電磁エネルギの信号雑音比が増加する。このように、各ユニットセル301は、(設けられている場合)近傍に存在し得る他のユニットセルに関係なく個々に共振することができ、さらに、受信された電磁エネルギの磁場成分を幾分か増幅することができる。
【0050】
しかし、発明者らは、個々のユニットセル301の利用性にいくつかの限界を発見した。第1に、単一のユニットセル301は、受信された電磁エネルギの磁場成分を増幅する能力が制限されている。第2に、ユニットセル301は、MRIマシン100に良好に適合しない共振周波数を有することがあり、この場合、受信された電磁エネルギの磁場成分を増幅する能力は適合する場合よりも非効率となる。第3に、個々のユニットセル301の共振周波数及び/又はQは、少なくともユニットセル301を分解及び再組立しないかぎり、変更不能である。
【0051】
また、発明者らは、ユニットセル301のアレイ300が、これを構成するユニットセル301の特性の単なる集合体とは異なる特性を有することも発見した。言い換えれば、共振器アレイ300は、相乗効果を呈する。
【0052】
例えば、ユニットセルアレイ300は、受信された電磁エネルギの磁場成分の均一な増幅を提供する(例えば
図5D及びその説明を参照)。
【0053】
加えて、アレイ300の共振周波数は、これを構成するユニットセル301の共振周波数とそれぞれ同一でないことがある。むしろ、ユニットセル301は、アレイ300の共振周波数を形成するために相互に結合されているのである。このため、好ましい実施形態においては、ユニットセル301は相互に磁気的に結合され、相互に有線接続されない。
【0054】
さらに、アレイ300の共振周波数は、アレイ300内のユニットセル301の間隔を適応化することにより、同調可能である。
【0055】
加えて、アレイ300は、その共振特性を大幅に変化させずに、その内部に既存のユニットセル301と同じ周期性(すなわち、X方向ピッチ310及び/又はY方向ピッチ311)でユニットセル301を自身に追加可能なモジュラ式である。アレイ300内に既存のユニットセル301と同じ周期性でユニットセル301をアレイ300に追加することは、アレイ300のユニットセル301の周期性の変化と同様に、アレイの共振特性を変化させない。こうした方式でのユニットセルの追加は、例えば、より大きな検体99又は検体99のより大きな部分をイメージングすべく、アレイ300の寸法の増加のために所望されることがある。
【0056】
同様に、所与の周期性でアレイ300内に既存のユニットセル301は、アレイ300の共振特性を大幅に変化させることなくアレイ300から除去可能である。ユニットセル301をアレイ300から所与の周期性で除去することは、アレイ300のユニットセル301の周期性の変化と同様に、アレイの共振特性を変化させない。ユニットセルの除去は、例えば、より小さな検体99又は検体99のより小さな部分をイメージングすべく、MRIマシン100のボア102内にはめ込まれるアレイの寸法低減のために所望されることがある。
【0057】
共振器アレイ300は、MRIマシン100の作業周波数又はその近傍に共振周波数を有する(すなわち、アレイの共振周波数がMRIマシン100の作業周波数の±5%(境界値含む)以内となる)ように構成されている。例えば、1.5テスラ(すなわち、1.5T)MRIマシンの作業周波数(又は「動作周波数」)は約64MHz(本開示の目的の無線周波数である)であり、3テスラ(すなわち、3T)MRIマシンの作業周波数は約128MHz(本開示の目的の無線周波数である)である。
【0058】
共振器アレイ300の共振周波数は、アレイ300のユニットセル301の周期性(間隔)によって、また、個々のユニットセル301の共振周波数によって、部分的に決定される。
図3A及び
図3Bの図示の共振器アレイ300においては、共振器が均等な間隔で配置されている。各ユニットセル301は、X軸での37.33mmのX方向ピッチ310の次元と、Y軸での37.33mmのY方向ピッチ311の次元とによって分離されている。こうした構成においては、共振器アレイ300の共振周波数463は、MRIマシン100の作業周波数452にセンタリングされている。一般に、MRIマシンの作業周波数452と共振器アレイ300の共振周波数との差は、MRIマシンの設計者又は操作者によって規定可能である。好ましい実施形態においては、共振器アレイ300の共振周波数は、MRIマシンの作業周波数452の±5%(境界値含む)以内にある。
【0059】
大きな周期性(すなわち、大きなX方向ピッチ310及びY方向ピッチ311)においては、共振器アレイ300の共振周波数は低下し、小さな周期性(すなわち、小さなX方向ピッチ310及びY方向ピッチ311)においては、共振器アレイ300の共振周波数は増加する。
図4Bには、共振器アレイ300の周期性と共振器アレイ300の周波数応答との関係がMRIマシンの作業周波数452に対して図示されている。曲線462により、MRIマシン100の作業周波数452に同調されたアレイ300の共振が点463に共振周波数を有することが概略的に示されている。対して、曲線460により、MRIマシン100の作業周波数452より僅かに低い周波数450に同調されたアレイ300の共振が点461に共振周波数を有すること、曲線464により、MRIマシンの作業周波数452より僅かに高い周波数454に同調されたアレイ300の共振が点465に共振周波数を有することが概略的に示されている。
【0060】
その結果、共振器アレイ300の共振周波数は、所与のMRIマシン又はアプリケーションでの必要又は所望の通りに調整可能及び確定可能である。例えば、発明者らは、アレイ300の近傍に軟組織が存在すると、アレイ300を包囲する領域の誘電率が変化し得ることを認識している。こうした誘電率の変化がMRIマシン100又は共振器の動作に干渉したり又はこれを劣化させたりする場合、共振器アレイ300のユニットセル301の間隔を変化させることにより、共振器アレイ300の共振周波数を調整可能である。
【0061】
ヘリカルユニットセル
ヘリカル共振器500の形態のユニットセル301の例示の一実施形態500が
図5A及び
図5B及び
図5Cに概略的に示されている。共振器500は、低誘電性のコア520を取り巻くヘリカル導体510を含む。
【0062】
ヘリカル導体510は、銅であってよく、コアの周の連続する各ターン(513)(又は「ループ」)がギャップ515によって前方のターンから分離されるように、コア520の周に巻回されている。
【0063】
ユニットセル301は、インダクタンス(L)及びキャパシタンス(C)の双方を有する。インダクタンスはコイル状導体510から生じ、キャパシタンスは導体510の連続するターン513間のギャップ515において生じる。その結果、ユニットセル301の共振周波数は、導体510のターン513の数とターン513間のギャップ515の次元とによって少なくとも部分的に決定される。したがって、設計者は、コイル状導体510の特性(例えばターン513の数及び/又はギャップ515)及び/又は誘電定数(k)及び/又はコア520の損失角の規定によってインダクタンス及びキャパシタンスを確定することにより、所望のアプリケーションに適合するようにユニットセル301の共振特性を確定することができる。さらに、ユニットセル301のアレイ300の共振周波数は、例えば導体510のターン513の数の増減により、及び/又は、導体510のターン513間のギャップ515の増減により、ユニットセル301の共振特性を規定する又は適合化することで、同調可能である。
【0064】
いくつかの実施形態においては、導体510は、それ自体重なり合わないが、他の実施形態においては、導体510の種々の領域間に直接の電気的接触が存在しないかぎり、導体510がそれ自体重なり合ってもよい。例えば、導体510は、電気絶縁性コーティング512を含む場合、それ自体が重なり合ってもよい。
【0065】
図5Cには、導体510を有さないコア520が概略的に示されている。いくつかの実施形態においては、コア520の外面523は、導体510を受容してそのヘリカル形状を定義するヘリカル溝530を含む。
【0066】
導体510の端部511は、相互にも、又は、他の導体にも、又は、他の共振器の導体510にも、接続されない。その結果、導体510は、開ループ共振器又は開ループコイル又は開ループヘリカル共振器とも称され得る。
【0067】
好ましい実施形態においては、コア520は、低誘電定数(k)及び小さい損失角を有する。例えば、コア520は、誘電定数3(k=3)の材料、例えばポリビニルクロリド(「PVC」)から形成可能である。ここで使用しているように、15より低い誘電定数(相対誘電率)が「低誘電定数」(又は「低相対誘電率」)とされ、15以上の誘電定数(相対誘電率)が「高誘電定数」(又は「高相対誘電率」)とされる。
【0068】
ただし、いくつかの実施形態でのコア520は、可能であればユニットセル301の他の特性の調整によって同等の共振特性を維持しつつ、ユニットセル301の寸法を低減するため、3より大きい誘電定数を有することができる。例えば、発明者らは、
図5G及び
図5H及び
図5Iに概略的に示したように、20℃で約80の誘電率を有する水を用いて実験を行った。ユニットセル500をシャーレ560に配置し、網分析装置に結合された結合ループ561によって包囲した。シャーレ560が空気のみで満たされている場合、ユニットセル500は、
図5Iに点567で示したように63MHzの共振周波数を有する。しかし、コア520の約10パーセント(10%)を満たす水がシャーレに含まれる場合(10%の水面566)、
図5Iに点568で示したように、ユニットセル500は55MHzの共振周波数を有する。コア520の約20パーセント(20%)を満たす水がシャーレに含まれる場合(20%の水面566)には、
図5Iに点569で示したように、ユニットセル500は39MHzの共振周波数を有する。結果として、所与のユニットセル500内に空気の誘電率よりも高い誘電率を有する材料が含まれると、ユニットセル500の共振周波数が低下することが理解可能である。逆に、所与の共振周波数を有するユニットセル500を形成するために、ユニットセル500は、当該ユニットセル500の内部503が例えば86から173の比較的高い相対誘電率を有する場合には、そのコア520内に空気を含むユニットセル500に比べて、より小さく(例えばより少ないターン513を有するように)形成することができる。例えば、いくつかの実施形態には、86から173の誘電率を有するコアが含まれる。いくつかの実施形態においては、相対誘電率は173より大きくてもよい。こうしたいくつかの実施形態には、二酸化チタンから形成されたコア520が含まれる。
【0069】
いくつかの実施形態においては、コア520が排除され、ヘリカル状(例えば
図5Bを参照)に固定された導体510が含まれる。当該実施形態においては、空気中で、ヘリカルコイル510内の容積が1近傍(k=1)の空気の誘電定数を有する。
【0070】
ヘリカル共振器500の特性は、当該ヘリカル共振器500が使用されるMRIマシンのタイプによって決定可能である。
図5Aの実施形態においては、コア520は、外径522及び内径521及び高さ525を有する中空円筒状である。ただし、当該形状及び当該次元は各実施形態の限定ではなく、いくつかの例を挙げるに過ぎないが、正方形状又は三角形状の断面を有する形状を含む他の中実又は中空の形状も使用可能である。ヘリカル共振器500の図示の実施形態の特性は、1.5TMRIマシン及び3TMRIマシンに対して、以下のように与えられる。
【0071】
【0072】
共振器アレイの動作
動作中に、共振器アレイ300は、例えば
図1A、
図1B、
図1C及び
図1Dに概略的に示したように、MRIマシン100内の検体99上又はその近傍に配置される。
【0073】
共振器アレイ300は、MRIマシン100の作業周波数452又はその近傍で共振し、これにより、検体99から放出されたRF信号の磁場強度を増加させる。このようにして、RF信号のSNRが増加される。
【0074】
共振器アレイ300は、MRIマシン100による検体99への信号送信中に、及び、検体99からMRIマシンへの無線周波数エネルギの受信中に、無線周波数エネルギの磁場成分を増加させる。
【0075】
例えば、
図5Dには、ユニットセル301がヘリカル共振器500である共振器アレイ300の一実施形態において、ユニットセル301の(例えばZ軸での)上部302上方の種々のレベルでの磁場強度が図示されている。
図5Eには、上記アレイ300の中心点での磁場増強比がユニットセル301の中央部303からの距離の関数として図示されており、当該増強がユニットセル301の中央部303近傍で最大となり、ユニットセルの中央部303から離れるにつれて低下することが示されている。
図5Dによれば、磁場増強が共振器アレイ300を横断して実質的に均一であることに注意されたい。ヘリカル共振器500においては、磁場増強は、ヘリカル共振器500の自己共振周波数と磁場の励起周波数との重複に起因して生じる。
【0076】
有益なことに、共振器アレイ300はまた、電場の形成を実質的に回避するか又は当該RF信号の電場成分の増加を最小化する。例えば、共振器500の一方端部501に生じる電場は、他方端部502での電場をほぼ完全に相殺する。また、種々の実施形態において、当該RF信号の電場成分の増加は、当該RF信号の磁場成分の増加より小さい。このことは、例えば電場が検体に火傷を生じさせることがあるので、検体の安全性にとって有益である。特に、ヘリカル共振器500はRF信号の電場に結合されないように構成されており、これにより、ヘリカル共振器500及びアレイ300によるRF信号の電場成分の増幅が緩和される。
【0077】
図5Fには、ユニットセルの導体510の端部511間に電気的に結合された付加的な固定リアクタンス550を含むヘリカル共振器500の一代替実施形態が概略的に示されている。付加的なリアクタンス550は、導体510のインダクタンス及び/又はキャパシタンスに加えて設けられている。付加的なリアクタンス550は、キャパシタンス(C)又はインダクタンス(L)であってよい。実用上、付加的なリアクタンス550は、ヘリカル共振器500の他の構造のキャパシタンス又はインダクタンスと相互作用する。例えば、ヘリカル共振器500の共振周波数は1/√(LC)によって特徴づけられているので、インダクタ(L)が付加的なリアクタンス550に含まれることにより、上述したのと同じ共振特性を有するもののターン513の数がより少ない及び/又は巻線の直径521がより小さいヘリカル導体500が形成される。同様に、キャパシタ(C)が付加的なリアクタンス550に含まれることにより、上述したのと同じ共振特性を有するもののヘリカル導体510からより小さいキャパシタンスしか要求しないヘリカル導体500が形成される。
【0078】
BC‐SRRユニットセル
ブロードサイド結合型スプリットリング共振器600(「BC‐SRR」)の形態のユニットセル301の一実施形態が、
図6Aに概略的に示されている。BC‐SRR共振器600は、2個の「C字」状スプリットリング共振器610,620を含み、各共振器がギャップ611,621をそれぞれ画定している。スプリットリング共振器610,620は、
図6AのX‐Y平面において相互に平行に配置されており、交差したり又は相互に物理的に接触したりしていない。
図6Aに示したように、スプリットリング共振器610,620は、そのギャップ611,621が対角線上で相互に向かい合うように(すなわち、相互に180°の位置にあるように)配置されている。BC‐SRRユニットセルは、ギャップ611,621が相互に180°の位置にない場合にも良好に共振するが、180°の位置での配置によって最小の電場が生じることを発明者らが発見しているので、当該180°の位置での配置が好ましい配置である。上方のスプリットリング共振器610はBC‐SRR600の上面601を画定しており、相応にBC‐SRR600の下面602も画定されている。
【0079】
BC‐SRRユニットセル600においては、ユニットセル600の自己共振周波数と磁場励起の周波数との重複に起因して、磁場増強が生じる。BC‐SRRユニットセルは、励起された電気双極子が相殺を呈するように構成されており、これによりユニットセル301及びアレイ300によるRF信号の電場成分の増幅が緩和される。
【0080】
図6Bから
図6Dには、64MHz共振のために構成されたBC‐SRR600の動作特性が概略的に示されている。
【0081】
図6Bには、BC‐SRR600の単一のユニットセルのX‐Z平面での断面における磁場(Bz)分布が概略的に示されており、
図6Cには、BC‐SRR600の上面601から10mm離れたX‐Y平面における磁場分布が概略的に示されている。
図6Dには、BC‐SRR600の上面601から10mm離れた一点での磁場増強係数が概略的に示されている。当該実施形態においては、BC‐SRR600の一方端部(すなわち、上面601に近い側の端部)で生じた電場は、他方端部(すなわち、下面602に近い側の端部)での電場をほぼ完全に相殺する。
【0082】
図6Eには、BC‐SRRユニットセル600のアレイ300が概略的に示されている。当該実施形態においては、BC‐SRRは、高誘電性基板650上にフォトリソグラフィによって作成されている。
【0083】
共振器アレイ300の実施形態は、リジッド又はフレキシブルのいずれであってもよい。例えば、
図6EのBC‐SRR共振器のアレイ300はリジッドであってよいが、
図7A及び
図7Bのアレイ300はフレキシブルである。
図7AのBC‐SRRアレイ300はフレキシブル基板700を有するが、これは、
図7Aに示したように、例えば検体99の四肢799の周囲に巻回することもできる。同様に、ヘリカル共振器500のアレイ300は、フレキシブル基板700を有し、検体99のボディの所定部分の輪郭に適合化可能であり、又は、円錐状に成形可能である。
【0084】
いくつかの実施形態においては、MRIマシン100から検体99への無線周波数エネルギの送信中でなく、検体からMRIマシンへの無線周波数信号の送信中のみに、無線周波数エネルギの磁場成分を増加させることが所望され得る。このために、いくつかの実施形態には、同調可能なアレイ300及び同調可能なユニットセル301が含まれる。
【0085】
図8Aから
図8Gには、同調可能なユニットセル301の実施形態が概略的に示されている。同調可能なユニットセル301を有するアレイ300は、これを構成するユニットセル301を同調させることにより、同調可能である。
【0086】
図8Aには、同調可能なユニットセル301が概略的に示されている。同調可能なユニットセル301は、例えば、上述したヘリカルコイル500又は上述したBC‐SRR600をカプラ801と共に含むことができる。
【0087】
カプラ801は、第1の状態及び第2の状態を含む少なくとも2つの電気状態(又は「インピーダンス」状態)を有しており、第1の状態でのカプラ801の導電率は、第2の状態でのカプラ801の導電率よりも低い。言い換えれば、カプラ801の電気インピーダンスは、第2の状態においてよりも第1の状態においてのほうが高い。ユニットセル301の共振特性は、カプラ801の状態に依存して変化する。
【0088】
図8Aの実施形態においては、カプラ801は、ヘリカルコイル(例えば500)の2つの端部511間に電気的に結合されているが、以下に説明するように、いくつかの方式で1つ又は複数のユニットセルに結合することもできる。第1の状態においては、カプラ801のインピーダンスは、ユニットセル301の動作が上述したようになる充分な大きさを有する。しかし、第2の状態においては、カプラのインピーダンスはより低く、コイル500の2つの端部511間に接続路を介した電気的接続が生じる。当該電気的接続によりヘリカルコイル500の特性が変化してもはや共振しなくなるか又はその共振周波数がMRIマシンの作業周波数452から離れた周波数へシフトする。一般に、カプラ801が第2の状態にある場合、MRIマシンの作業周波数452とヘリカルコイルの共振周波数との差は、MRIマシンの設計者又は操作者により規定可能である。例えば、好ましい実施形態においては、ヘリカルコイル500の共振周波数は、カプラ801が第2の状態にある場合、(共振が起こるのであれば)MRIマシンの作業周波数452から少なくとも±15%異なるように、及び/又は、カプラ801が第1の状態にある場合、共振周波数から少なくとも±15%異なるように、変化する。その結果、カプラ801の状態の変化により、ユニットセル301の共振特性も変化する。一般に、ユニットセル300(当該例においてはヘリカルコイル500)の共振周波数が、MRIマシンの作業周波数452から少なくとも±15%異なり、及び/又は、カプラ801が第1の状態にある場合の共振周波数から少なくとも±15%異なるとき、当該ユニットセルは「有効に非共振である」といえる。
【0089】
さらに、こうしたユニットセル301のアレイ300においては、カプラ801の状態の変化により、アレイ300の動作特性が変化する。例えば、カプラ801が第1の状態にある場合、各ユニットセル301及びこうしたユニットセル301のアレイ300は、
図3Aから
図3C、
図4Aから
図4B、
図5Aから
図5F及び
図6Aから
図6Eに即して上述したように動作する。カプラ801が第2の状態にある場合、アレイ300の共振特性は、アレイ300が形成する磁場の増幅が低下するように変化する。実質的に、各ユニットセル301及びアレイ300は、カプラ801を第1の状態で配置することにより「同調オン」可能であり、カプラ801を第2の状態で配置することにより「同調オフ」可能である。種々のカプラ801、ユニットセル301の構成及びアレイ300の構成を以下に説明する。一般に、カプラ801は、非線形の材料又は非線形のデバイスとも称され得る。
【0090】
図8Bには、BC‐SRR600のアレイ300が概略的に示されている。各BC‐SRRユニットセルは少なくとも1個のカプラ801を含み、いくつかの実施形態においては、2個以上のカプラ801を含む。
図8Bのカプラ801は、半導体パッチ810とも称される。半導体パッチ810は、例えば、MRIマシン100からのRFエネルギに応答し、ただし検体99からの信号の一般に格段に低量のRFエネルギには応答せずに、そのインピーダンスを変化させるドープトシリコンであってよい。半導体パッチは非線形であるとも称され得る。
【0091】
図示の実施形態においては、半導体パッチ810の半導体材料は、いくつかの例を挙げるに過ぎないが、GaAs、InAs又はInSbであってよい。好ましい実施形態においては、半導体材料としてGaAsが使用される。ドープ無しの真因性のGaAsは、2.1*106cm-3の電荷担体密度を有する。
【0092】
半導体の特性は、ドープによって調整される。ドープは半導体分野で公知である。図示の実施形態においては、GaAsは3*107cm-3の電荷担体密度を有するようにドープされている。
【0093】
図示の実施形態においては、半導体パッチ810は、ドープされた半導体(例えば上記のようにドープされたGaAs)の2インチウェハ又は4インチウェハ(0.5mm厚さ)から準備可能である。ウェハは寸法3mm×5mmのパッチへダイシングされ、当該パッチ上に、半導体技術で公知の方式により、例えば2*10-6mのマイクロメートル寸法のギャップで、2個の電極がパターニングされる。
【0094】
図8Aに概略的に示したように、半導体パッチ810は、ユニットセル301に電気的に結合されている(例えばはんだ付けされている)。交流磁場(例えば無線周波数電磁信号)を印加することにより、マイクロメートル寸法のギャップに、ギャップでの衝突電離を励起する400kV/cmの高さの強電場を誘起することができる。
【0095】
図示の実施形態においては、MRIマシン100がこうした交流磁場(例えば無線周波数電磁信号)を印加しない場合、半導体パッチ810の導電率は約1*10-7(Ωcm)-1である(図示の実施形態においては、107cm-3までの電荷担体密度である)。対して、MRIマシン100が上述したように刺激を印加する場合、半導体パッチ810のドープされたGaAsの導電率は約20(Ωcm)-1まで増加し(図示の実施形態においては、1018cm-3までの電荷担体密度である)、ここで説明しているユニットセル301の共振周波数シフトが得られる。
【0096】
ドープされた半導体パッチ810を例として用いると、MRIマシン100によるRFエネルギの送信中に、BC‐SRR600のギャップ又は金属巻線500内部での電場はきわめて高くなり、ドープトシリコン製の半導体パッチ810の電荷担体密度は、こうしたRFエネルギが無い場合に比べて格段に高いレベルまで励起される。この状態においては、ドープトシリコン製の半導体パッチ810を導体として扱うことができる。その結果、MRIマシン100によるRFエネルギの送信中に、ユニットセル301の共振周波数は、MRIマシン100が送信するRFエネルギの周波数から偏差する。
【0097】
対して、ユニットセル301による、患者99からのRF信号の受信中(これはMRIマシン100がRFエネルギを送信していない場合に発生する)、上述した電場強度は格段に低くなり、ドープトシリコン製の半導体パッチ810は有効な導体とならない。その結果、各ユニットセル301の共振周波数はMRIマシン100の作業周波数452に整合されたままとどまり、ドープトシリコン製の半導体パッチ810は絶縁体として機能する。
【0098】
半導体パッチ810は、BC‐SRR600の第1のSRR610の第1のギャップ611内に配置されており、MRIマシン100からのRFエネルギに応答してその状態を変化させる。より具体的には、MRIマシン100からのRFエネルギが無ければ、半導体パッチ810は第1の状態(高インピーダンス)にあり、BC‐SRR600は、
図6Aから
図6Eに即して上述したようにふるまう。しかし、MRIマシンがRFエネルギを送信すると、半導体パッチ810はそのインピーダンスを第2の状態(低インピーダンス)へ変化させ、これにより第1のギャップ611の向かい合う端部612,613を電気的に結合し、これによりBC‐SRR600の物理共振特性が変化し、これにより上述したようにアレイ300の動作特性が変化する。
【0099】
いくつかの実施形態においては、BC‐SRR600のSRR610,620のそれぞれは、各ユニットセル301及びアレイ300の特性をさらに変化させるため、上述した半導体パッチ810を含む。
【0100】
図8Cには、ヘリカルユニットセル500のアレイ300が概略的に示されている。当該実施形態においては、半導体パッチ810は、隣接するユニットセル301の各端部511間に結合されており、好ましくは、ヘリカルコイル自体が例えばヘリカルターン513によって取り巻かれる場合、内部802内に配置されている。当該構成においては、MRIマシン100からのRFエネルギが無ければ、半導体パッチ810は第1の状態(高インピーダンス)にあり、共振器500は
図5Aから
図5Fに即して上述したようにふるまう。しかし、MRIマシンがRFエネルギを送信すると、半導体パッチ810はそのインピーダンスを第2の状態(低インピーダンス)へ変化させ、したがって、隣接するユニットセル301が相互に結合されて、これにより上述したようにアレイ300の動作特性が変化する。
【0101】
図8D及び
図8Eには、カプラ801がスイッチ820であるカプラ801の代替実施形態とこうしたカプラ801を有するアレイ300の代替実施形態とが概略的に示されている。当該実施形態のユニットセル301は制御信号821に応答する(したがって、MRIマシン100又はそのコントローラ140と制御通信するということができる)が、アレイ300のそれぞれは、磁場の増幅及び検体99からの信号のSNRの増加のために外部エネルギの入力を必要としない受動性のものと見なすことができる。
【0102】
図8Dにおいては、各BC‐SRR600の少なくとも1つのSRR610が、ギャップ611内に配置されたスイッチ820を有する。MRIマシン(例えばコントローラ140)からの制御信号821は、スイッチ820をその第1の状態(高インピーダンス)と第2の状態(低インピーダンス)との間で変化させ、したがって、第1のギャップ611の向かい合う端部612,613を電気的に結合する。当該2つの状態は、BC‐SRR600の共振特性を変化させ、これによりアレイ300の動作特性が
図8Bに即して上述したように変化する。いくつかの実施形態においては、BC‐SRR600のSRR610,620のそれぞれは、上述したように、各ユニットセル301及びアレイ300の特性をさらに変化させるスイッチ820を含む。
【0103】
図8Eには、ヘリカルユニットセル500のアレイ300が概略的に示されている。当該実施形態においては、スイッチ820は隣接するユニットセル301の各端部511間に結合されている。MRIマシンからの制御信号821は、スイッチ820を、その第1の状態(高インピーダンス)と第2の状態(低インピーダンス)との間で変化させる。当該2つの状態は、ヘリカルセル500の共振特性を変化させ、これにより
図8Cに即して上述したようにアレイ300の動作特性が変化する。
【0104】
図9は、検体99を磁気共鳴イメージングする方法の一実施形態のフローチャートである。ステップ901においては、ボア102及び作業周波数を有するMRIマシン100を準備することが要求される。MRIマシン100は、例えば64MHzの作業周波数を有する1.5テスラMRIマシン又は128MHzの作業周波数を有する3テスラMRIマシンであってよい。
【0105】
ステップ902はボア102内に検体を配置することを含み、ステップ903は、ユニットセル301のアレイ300を検体と共にボア内に配置することを含む。ステップ902,903は相互に任意の順序で実行可能であることに注意されたい。
【0106】
好ましい実施形態においては、アレイ300は、MRIマシン100が検体99をイメージングする際に、MRIマシン100のボア102内に検体99と共に配置可能な寸法を有する。例えば、ユニットセル301のアレイ300は、上述したアレイ300のいずれであってもよい。
【0107】
好ましい実施形態においては、アレイ300の各ユニットセル301は共振周波数を有し、アレイ300は、MRIマシン100の作業周波数又はその近傍に共振周波数を有する。
【0108】
ステップ904においては、本方法は、当該分野に公知の方式でMRIマシンにより検体99のイメージングを行う。
【0109】
いくつかの実施形態においては、ステップ904はさらに、MRIマシンが電磁(例えば無線周波数)刺激を検体99に印加しない場合にカプラ801が第1の状態(高インピーダンス)にあるように制御し、MRIマシンがこうした刺激を検体に印加する場合にカプラ801が第2の状態(低インピーダンス)にあるように制御することを含む。例えば、カプラ801がスイッチ820である場合、ステップ904は、スイッチ820をコントローラ140からの制御信号821により上述したように制御することを含み得る。他の例として、カプラ801が半導体パッチ810である場合、ステップ904は、MRIマシン100からの電磁刺激を抑制することにより半導体パッチ810を第1の状態(高インピーダンス)とし、MRIマシン100からの電磁刺激を印加することにより半導体パッチ810を第2の状態(低インピーダンス)とするように制御することを含み得る。当該実施形態においては、カプラ801は、MRIが電磁刺激を検体に印加しない場合に高インピーダンス状態となり(さらにユニットセル301が共振し)、MRIがこうした電磁刺激を検体に印加する場合に低インピーダンス状態となる(こうしてユニットセル301が有効に非共振となる)。
【0110】
上述した本発明の各実施形態は、単なる例示を意図しており、当該分野の技術者にとっては、多数の変形形態及び修正形態が明らかであろう。こうした変形形態及び修正形態の全てが、添付の特許請求の範囲のいずれかに定義された本発明の観点に入ることが意図されている。
【0111】
以下はここで使用している参照番号のリストである。
【符号の説明】
【0112】
99 検体
100 MRIマシンの断面
101 架台
102 MRIマシンのボア
110 主フィールドコイル
120 ボディコイル
130 検体コイル
140 MRIマシンのコントローラ
150 コンピュータ
151 コンピュータの通信リンク
300 共振器アレイ
301 ユニットセル
302 ユニットセルの上部
303 ユニットセルの中央部
310 X方向ピッチ
311 Y方向ピッチ
400 共振器の応答
401 中心周波数
402 上方3dB点
403 下方3dB点
405 雑音レベル
410 周波数差
450 MRIマシンの作業周波数を下回る周波数
452 MRIマシンの作業周波数
454 MRIマシンの作業周波数を上回る周波数
460 MRIマシンの作業周波数を下回る周波数に同調されたアレイの共振応答
461 MRIマシンの作業周波数を下回る周波数に同調されたアレイの共振周波数
462 MRIマシンの作業周波数に同調されたアレイの共振応答
463 MRIマシンの作業周波数に同調されたアレイの共振周波数
464 MRIマシンの作業周波数を上回る周波数に同調されたアレイの共振応答
465 MRIマシンの作業周波数を上回る周波数に同調されたアレイの共振周波数
500 ヘリカル共振器
501 共振器の上端部
502 共振器の下端部
503 共振器の内部
510 導体
511 導体の端部
512 電気絶縁性被覆
513 ターン
515 導体のギャップ
520 コア
521 コア外径
522 コア内径
523 コア外面
525 コア高さ
530 溝
550 付加的なリアクタンス
560 シャーレ
561 結合ループ
565 水
566 水面
567 乾性の共振周波数
568 水10%の共振周波数
569 水20%の共振周波数
600 BC‐SRR共振器
601 BC‐SRRの上面
602 BC‐SRRの下面
610 第1のスプリットリング共振器
611 第1のギャップ
612,613 第1のギャップの向かい合う端部
620 第2のスプリットリング共振器
621 第2のギャップ
650 高誘電性基板
700 フレキシブル基板
799 検体の四肢
801 カプラ
802 ヘリカルコイルの内部
810 半導体パッチ
820 スイッチ