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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】極低温ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20230201BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A61B18/02
F04B49/06 321A
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021012530
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2021126513
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】16/785,686
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521043951
【氏名又は名称】アイスキュア メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IceCure Medical Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】ロン、ヒレリィ
(72)【発明者】
【氏名】シャイ、カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ナウム、マックニック
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-136181(JP,A)
【文献】特表2016-508820(JP,A)
【文献】米国特許第06027499(US,A)
【文献】特表2009-523468(JP,A)
【文献】特開2004-275732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0306958(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0194863(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0192505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって:
管腔を含み、生きている被験者の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブと;
前記遠位端に配置された温度センサと;
ポンプモータを有し、前記管腔を通して前記プローブの遠位端に極低温流体を送達し、そして前記プローブから戻り極低温流体を受け取るように結合された、ポンプと;
前記戻り極低温流体を戻り極低温液体と戻り極低温ガスに分離するように結合された分離器と;
前記戻り極低温ガスの流量を測定するように結合された流量計と;そして
前記温度センサによって測定された温度と前記戻り極低温ガスの流量に応答して前記ポンプモータのポンプ速度を制御するように構成されたプロセッサと;
を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ポンプがピストンポンプを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポンプがベローズポンプを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記温度が低下する間、前記プロセッサは、前記戻り極低温ガスの流量に関係なく、前記ポンプ速度を所定の転速度に設定する、ことを特徴とする請求項1-3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記温度が所定の定常状態値に低下している場合、前記プロセッサは、前記戻り極低温ガスの流量が測定されたピーク量から前記測定されたピーク流量より低い所定の量に減少するまで、前記ポンプ速度を前記所定の転速度に設定する、ことを特徴とする請求項1-のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記戻り極低温ガスの流量が前記所定の量を含む場合、前記プロセッサは、前記ポンプ速度を、前記所定の転速度よりも低い更なる所定の速度に低減する、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ポンプ速度が前記低い更なる所定の速度に低減されている場合、前記プロセッサは、前記温度および前記流量の少なくとも1つが変化した場合に、前記ポンプ速度を増加させる、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記所定の量が、測定されたピーク量の100%未満の所定のパーセンテージである、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記所定のパーセンテージが50%である、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記温度が前記温度センサによって測定された第1の定常状態温度を含む場合、前記プロセッサは、第1の速度に前記ポンプ速度を設定し、そして前記温度が前記第1の定常状態温度よりも低い第2の定常状態温度を含む場合、前記プロセッサは前記ポンプ速度を前記第1の速度よりも大きい第2の速度に設定する、ことを特徴とする請求項1―のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にポンプ、特に極低温材料のポンピングに関する。
【背景技術】
【0002】
極低温材料用のポンプは、効率的に動作するために、弾性の低下など、極低温によって引き起こされる制限を克服できなければならない。極低温ポンプの効率を改善するためのシステムおよび方法は、当技術分野で知られている。
【0003】
Gaarder氏の米国特許第2,888,879号(特許文献1)は、極低温で冷却された液化ガスのポンピング、特に液体酸素のポンピングについて記載している。ポンプは、浸漬タイプであり、ポンプは極低温剤容器内にあり、極低温剤自体によって冷却される。
【0004】
Gottzmann氏他の米国特許第3,456,595号(特許文献2)は、2つの目的に使用されるポンプについて記載している。1つは極低温剤をポンプで送ることで、もう1つはそれにより極低温剤が流れるピストンサイクルを数えることによって流量を測定することである。
【0005】
Berrettini氏の米国特許第3,958,443号(特許文献3)は、貯蔵容器から分配された極低温剤の量を測定するために使用されるメータを提供し、そして較正するための装置を記載している。
【0006】
Preston氏他の米国特許第5,616,838号(特許文献4)は、液化天然ガス供給流路と回路内に入口と出口を有する断熱容器に取り付けられた極低温剤メータについて記載している。
【0007】
Kottke氏の米国特許第6,203,288号(特許文献5)は、内部コンパートメントが閉じたシリンダーを含む往復ポンプについて記載している。ポンプは、極低温剤をポンピングするために使用することができる。
【0008】
Gram氏他の米国特許第6,659,730号(特許文献6)は、極低温液体と蒸気の両方を貯蔵タンクからポンプに供給して、ベントの必要性を減らすための装置について記載している。ポンプは、極低温液体または液体と蒸気の混合物をポンピングするように動作可能である。
【0009】
Baust氏他の米国特許7,192,426(特許文献7)および8,551,081(特許文献8)は、極低温剤をプローブに供給するための極低温手術システムについて記載している。このシステムには、極低温剤で満たされたコンテナが含まれており、コンテナは極低温剤内に浸漬されたポンプのベローズを備える。
【0010】
Danley氏他の米国特許8,418,480(特許文献9)は、単動式容積式ベローズポンプを使用して、液体窒素などの極低温液体を貯蔵デュワーから機器の測定チャンバーに連結された熱交換器に移送する冷却システムについて記載している。
【0011】
Duong氏他の米国特許第8,671,700号(特許文献10)は、1つのコンテナ組立体に取り付けられたアクチュエータを有する、少なくとも1つのポンプ組立体を含む極低温流体発生器を記載している。
【0012】
Baust氏他の米国特許8,998,888(特許文献11)および9,408,654(特許文献12)は、過冷却液体極低温剤をさまざまな構成の極低温プローブに送達するための極低温医療機器について記載している。極低温プローブは、損傷した、病気の、癌性の、または他の望ましくない組織の治療に使用することができる。
【0013】
Downie氏他の米国特許第9,441,997号(特許文献13)は、二相流体に浸漬された少なくとも1つの圧電発振器を使用して、二相流体の物理的特性を測定する方法を記載している。
【0014】
Drube氏他の米国特許出願2005/0274127(特許文献14)は、極低温液体を使用ポイントに分配するためのモバイルシステムについて記載している。このシステムは、極低温液体の供給を含む低圧バルクタンクと、タンクから極低温液体を受け取るためにバルクタンクと連通している高圧サンプとを含む。
【0015】
Babkin氏他の米国特許出願2010/0256621(特許文献15)は、液体極低温剤を蒸発させることなく、閉じた流体経路に沿って液体極低温剤または冷媒を駆動する冷凍アブレーションシステムについて記載している。
【0016】
Berzaketal氏の米国特許出願2014/0169993(特許文献16)および2015/0300344(特許文献17)は、第1の端部に入口開口部および出口開口部を備えたベローズを有するポンプセクションを含む極低温ポンプについて記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第2,888,879号
【文献】米国特許第3,456,595号
【文献】米国特許第3,958,443号
【文献】米国特許第5,616,838号
【文献】米国特許第6,203,288号
【文献】米国特許第6,659,730号
【文献】米国特許第7,192,426号
【文献】米国特許第8,551,081号
【文献】米国特許第8,418,480号
【文献】米国特許第8,671,700号
【文献】米国特許第8,998,888号
【文献】米国特許第9,408,654号
【文献】米国特許第9,441,997号
【文献】米国特許出願2005/0274127
【文献】米国特許出願2010/0256621
【文献】米国特許出願2014/0169993
【文献】米国特許出願2015/0300344
【発明の概要】
【0018】
本発明の一実施形態は、装置であって:
管腔を含み、生きている被験者の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブと;
遠位端に配置された温度センサと;
ポンプモータを有し、管腔を通してプローブの遠位端に極低温流体を送達し、そしてプローブから戻り極低温流体を受け取るように結合された、ポンプと;
戻り極低温流体を戻り極低温液体と戻り極低温ガスに分離するように結合された分離器と;
戻り極低温ガスの流量を測定するように結合された流量計と;そして
温度センサによって測定された温度と戻り極低温ガスの流量に応答してポンプモータのポンプ速度を制御するように構成されたプロセッサと;
を有することを特徴とする装置を提供する。
【0019】
開示された一実施形態では、ポンプがピストンポンプを有する。
【0020】
他の一実施形態では、ポンプがベローズポンプを有する。
【0021】
さらに他の一実施形態では、温度が低下する間、プロセッサは、戻り極低温ガスの流量に関係なく、ポンプ速度を所定の高い回転速度に設定する。
【0022】
一般的に、温度が所定の定常状態値に低下している場合、プロセッサは、戻り極低温ガスの流量が測定されたピーク高値流量から所定の低流量に減少するまで、ポンプ速度を所定の高い回転速度に設定する。
【0023】
選択肢としての実施形態では、戻り極低温ガスの流量が所定の低流量を含む場合、プロセッサは、ポンプ速度を、所定の高い回転速度よりも低い所定の速度に低減する。一般的に、ポンプ速度が低い設定速度に低減されている場合、プロセッサは、温度および流量の少なくとも1つが変化したときに、ポンプ速度を増加させる。
【0024】
さらに代替的な実施形態では、所定の低流量が、測定されたピーク高値流量の100%未満の所定のパーセンテージである。所定のパーセンテージが50%である。
【0025】
またさらなる代替的実施形態では、温度が温度センサによって測定された第1の定常状態温度を含む場合、プロセッサは、第1の速度にポンプ速度を設定し、そして温度が第1の定常状態温度よりも低い第2の定常状態温度を含む場合、プロセッサはポンプ速度を第1の速度よりも大きい第2の速度に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本願発明は以下の図面を参照した実施形態の詳細な記載からより十分に理解されよう:
図1】本発明の一実施形態による、外科手術に使用される装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態による、ポンプの概略図である。本発明の実施形態による、外科手術に使用される装置の概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、プローブの概略図である。
図4】本発明の一実施形態による、図1の装置の概略ブロック図であり、装置の要素がどのように一緒に接続されるかを示す図である。
図5A】本発明の一実施形態による、装置の操作においてプロセッサが従うステップのフローチャートである。
図5B】本発明の一実施形態による、装置の操作においてプロセッサが従うステップのフローチャートである。
図5C】本発明の一実施形態による、装置の操作においてプロセッサが従うステップのフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態による、フローチャートのステップを示すグラフである。
図7】本発明の一実施形態による、フローチャートのステップを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(概論)
従来の極低温ポンプシステムとは対照的に、本発明の実施形態は、プローブへの極低温流体の送達によって達成される温度、ならびにプローブから極低温ガスを戻す流量を測定する。2つの測定値を使用することにより、本発明の実施形態において、プローブを低温定常状態に冷却するために必要な極低温液体の量を減らすことができる。体積の減少は、低温定常状態への移行中と低温定常状態自体の両方で発生する。
【0029】
したがって、本発明の実施形態では、装置は、管腔および、生きている被験者の組織に接触するように構成された遠位端と、を備えるプローブを有する。温度センサは遠位端に配置され、装置は、ポンプモータを備えるポンプを有し、ポンプは、管腔を通してプローブの遠位端に極低温流体を送達し、そしてプローブから戻る極低温流体を受け取るように結合される。
【0030】
装置は、戻り極低温流体を戻り極低温液体と戻り極低温ガスに分離するように結合された分離器と、戻り極低温ガスの流量を測定するように結合された流量計とをさらに備える。プロセッサは、温度センサによって測定された温度および戻り極低温ガスの流量に応じて、ポンプモータのポンプ速度を制御するように構成されている。
【0031】
(詳細な記載)
以下の記載において、図面中の同様の要素は、同様の数字によって識別される。
【0032】
ここで、本発明の実施形態による、外科手術に使用される装置20の概略図である図1を参照する。例として、以下の記載で想定される外科手術は乳房腫瘍に関するものであるが、装置20は、前立腺または腎臓腫瘍などの他の外科手術に使用することができ、そのような外科手術はすべて本発明の範囲内に含まれると見なされることが理解されよう。
【0033】
外科手術は、患者28に対して医師24によって実行され、医師は、装置20に含まれるディスプレイ32上で外科手術の結果を観察することができる。(通常、乳房腫瘍に対する外科手術は、乳房の超音波スキャンを実行することを含む。スキャンは通常、医師24以外の超音波専門家によって実行される。超音波スキャンの詳細は、本開示とは関係がなく、そして簡略化のため、超音波専門家は図1に示されていない。)
【0034】
装置20は、装置の動作のためのソフトウェア44が記憶されているメモリ40に結合されたプロセッサ36によって制御される。プロセッサ36およびメモリ40は、操作コンソール42にインストールされる。メモリ40内のソフトウェア44は、例えば、ネットワークを介して、電子形式でプロセッサにダウンロードされ得る。代替的または追加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的、または電子的記憶媒体などの非一過性有形媒体で提供され得る。ソフトウェア44は、装置操作アルゴリズム48のためのソフトウェアを含み、装置20の操作においてプロセッサによって実行されるステップを含む。装置操作アルゴリズム48は、以下でより詳細に記載される。
【0035】
乳房腫瘍の外科手術では、装置20を使用して、最初にポンプ56に保持された極低温流体52を、腫瘍の近くに挿入される遠位端を備えるプローブ60に注入する。流体52は、最初は液体の形態であるが、外科手術中に、流体は、液体から液体/気体混合物に、あるいは完全に気体の状態にさえ変化する可能性がある。特に明記しない限り、本明細書では、極低温流体52は、例として、液体または気体の窒素を含むと想定されている。しかしながら、極低温アルゴンなどの他の極低温流体を装置20で使用することができ、そのような極低温流体はすべて、本発明の範囲内に含まれると想定されることが理解されよう。ポンプ56はプローブ60に接続されており、医師24はプローブ60を操作して、プローブの遠位端を腫瘍に対して正しく配置する。(操作は通常、上記の超音波スキャンを観察する医師によって支援される。)ポンプ56とプローブ60の両方は、以下で詳しく記載される。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態による、ポンプ56の概略図である。ポンプ56は、ピストンに結合されたモータ68によって駆動されるピストン64を備えるピストンポンプである。本発明の実施形態では、ポンプ56のようなピストンポンプ以外の極低温流体ポンプ、例えばベローズポンプを使用することができ、本明細書の記載は、そのような異なるポンプに対応するために変更されうる。
【0037】
ポンプ56は、デュワー72に接続されており、デュワー72は、デュワーの下部空間80に液体形態で保持されている極低温流体52を保持している。デュワー内の液体の上、上部空間84には、極低温液体の蒸発によって形成されたガスがある。
【0038】
図2に示されるように、ポンプ56のピストン、およびピストンに取り付けられたポンプ要素は、液体形態の流体52に浸漬される。モータ68の動作時に、液体形態の極低温流体は、出口逆止弁76および出口管94を介してデュワーから出る。弁76および管94から出る流体は、通常、約100%液体であり、ポンプから出る流体は、出口管を介してプローブ60に送られる。
【0039】
ポンプ56は、プローブ60から戻り極低温材料を受け取るように接続されている。戻り極低温材料は、典型的には液体-ガス混合物であるが、場合によっては、戻り材料は、約100%のガス、またはおそらく約100%の液体を含み得る。戻り材料は、受容管92を介して液体/ガス分離器88に入力される。分離器88は、分離された極低温液体を空間52内の既存の極低温液体に戻し、分離されたガスが上部空間84に入ることを可能にする。
【0040】
上部空間84は、出口管96を介してガス流量計100(図4)に接続され、ガス流量計100(図4)は、次に、大気に接続する。したがって、上部空間84に入る分離されたガスは、ガス流量計100を介して大気に排出される。
【0041】
図3は、本発明の実施形態による、プローブ60の概略図である。プローブ60は、シャフト近位端でプローブのシャフト108に取り付けられたハンドル104を備える。シャフト108は、尖った遠位端112で終端し、これにより、シャフトは、患者28の乳房の1区画のような、組織を貫通することができる。セクション116に示されるように、シャフト108は、典型的には薄壁ステンレス鋼から形成される3つの同心管を含む。第1の内側の管120は中央管腔124を囲み、内側の管は第2の管128によって囲まれる。第1の管および第2の管は中間空間132によって分離される。第3の外側の管136は第2の管128を囲む。第2および第3の管は、空間140によって分離されている。
【0042】
温度センサ144、通常は熱電対またはサーミスタは、遠位端112内に固定的に配置される。温度センサ用のケーブル148は、通常、空間140に配置される。ケーブルはプロセッサ36に接続され、センサ144によって感知された温度をプロセッサが測定できるようにする。
【0043】
装置20の動作において、シャフト108の第2の管と第3の管との間の空間140は、密閉された真空状態に維持される。以下でより詳細に記載するように、中央管腔124は、極低温流体をポンプ56から遠位端112に運ぶために使用され、中間空間132は、極低温流体を遠位端からポンプに戻すために使用される。
【0044】
シャフト108の内部構造に概ね類似した内部構造を有するフレキシブルチューブ152は、ハンドル104を介してシャフトに結合される。チューブ152内の管腔は、極低温流体をポンプ56から中央管腔124に運び、そして戻り極低温流体を中間空間132からポンプに移送するように構成される。
【0045】
図4は、本発明の実施形態による、装置20の概略ブロック図であり、装置の要素がどのように一緒に接続されるかを示す図である。ブロック図は、要素間の極低温流体の流れと信号データの流れを示している。
【0046】
プロセッサ36は、ポンプモータ制御信号をモータ68に提供することにより、装置20の動作を制御する。起動すると、モータはポンプ56を操作し、それにより極低温流体が出力逆止弁76を介してデュワー72から排出される。排出された極低温流体は、フレキシブルチューブ152およびハンドル104を介して、デュワーから流出し、プローブ60に入って遠位端112に達する。
【0047】
極低温流体は、通常、液体/ガス混合物として、プローブ60、ハンドル104、およびフレキシブルチューブ152を介して遠位端112からデュワー72の液体/ガス分離器88に戻る。分離器は、戻り極低温流体を、上部空間84に入るガスと、下部空間80に入る液体に分離する。上部空間84に入るガスは、ガス流量計100を介して大気に排出される。
【0048】
図に示されているように、プローブの遠位端にある温度センサ144は、プローブ先端の温度を示す信号をプロセッサ36に提供する。プロセッサ36はまた、ガスメータ100から、戻りガス流量を示す信号を受信する。この流量は、セパレータ88から空間84に流入するガスの流量に対応する。プロセッサ36は、これらの信号を使用して操作アルゴリズム48を操作し、これにより、プロセッサは、ポンプモータ68を制御する出力信号を生成することができる。ポンプモータに送信される出力信号はモータの回転数を制御する。
【0049】
図5A、5B、5Cは、装置20の操作においてプロセッサ36が従うステップのフローチャートを示し、図6および7は、本発明の一実施形態による、フローチャートのステップを表示するグラフである。フローチャートのステップは、操作アルゴリズム48のステップに対応する。
【0050】
操作アルゴリズム48は、3つのフローチャート、本明細書では温度フローチャート160とも呼ばれる第1のフローチャート160、本明細書ではガス流量フローチャート164とも呼ばれる第2のフローチャート164、および本明細書では定常状態フローチャート220とも呼ばれる第3のフローチャート220を含む。装置20の操作において、プロセッサは、最初にフローチャート160および164を同時にアクティブ化し、定常状態フローチャート220はアクティブ化されない。プロセッサは、通常、プローブ60が患者に配置された後で、医師24によってコンソール42を使用してプロセッサ36に送信された、フローチャートをアクティブ化するコマンドで、フローチャート160および164をアクティブ化する。(以下で記載するように、定常状態フローチャート220は後でアクティブ化される。)
【0051】
フローチャート160および164の起動時に、両方のフローチャートの最初の操作ステップ168で、医師24は、装置20の目標定常状態動作温度Tsを設定する。装置の定常状態動作温度Tsは、極低温流体52、本明細書では液体窒素(沸点-196℃)を含むと想定される、の沸点よりも高い。定常状態の動作温度は、モータ68のポンプ速度がプロセッサ36によって一定の低い回転速度に設定されると維持されるプローブ先端の温度に対応する。通常、定常状態の動作温度はモータの一定の低い回転速度に依存するため、一定の低い回転速度が高いほど、定常状態の動作温度は低くなる。
【0052】
開示された実施形態では、モータ68の一定の低い回転速度は、約-160℃の定常状態の動作温度に対して約28rpm(毎分回転数)であり、モータの一定の低い回転速度は、約-80°Cの定常状態の動作温度に対して約8rpmである。しかしながら、一定の低い回転速度および定常状態の動作温度のこれらの値は一例であり、したがって、本発明の範囲は、8rpmおよび28rpmとは異なるモータ68の一定の低い回転速度、および-80°Cおよび-160°Cとは異なる対応する定常状態の温度を含むことが理解されよう。所望の定常状態の動作温度に必要な一定の低い回転速度は、過度の実験なしに決定され得ることも当業者には理解できよう。
【0053】
さらに、最初のステップ168で、プロセッサ36は、モータ68の速度を高い回転速度まで上昇させる。
【0054】
ガス流量フローチャート164において、制御は、ガス流量記録ステップ170に移り、ここで、プロセッサ36は、ガス流量計100のガス流量を記録する。
【0055】
開始時に、プローブ60およびそれに接続するフレキシブルチューブ152は、通常、ほぼ室温であり、プロセッサは、プローブ先端の温度センサ144からの信号にアクセスして、プローブ先端温度Tを判定する。両方のフローチャートの第1の判定ステップ172において。プロセッサは、温度Tがステップ168で設定された定常状態の動作温度Tsよりも高いかどうかをチェックする。
【0056】
フローチャート160において、判定ステップ172が否定を返す場合、すなわち、T>Ts ℃である場合、フローチャートは、高いポンプ速度ステップ176に進み、プロセッサは、モータ68を高い回転速度で操作し続ける。開示された実施形態では、高い回転速度は、およそ40rpm~50rpmの範囲にある。次に、フローチャートの制御は判定ステップ172に戻り、その結果、プロセッサ36は判定を繰り返す。
【0057】
フローチャート164において、判定ステップ172が否定を返す場合、フローチャートはフローチャートの転送ステップ180に進み、プロセッサは温度フローチャート160に従ってモータ68の速度を設定する。ステップ180から、制御は判定ステップ172に戻り、フローチャート160の場合、プロセッサ36は判定を繰り返す。
【0058】
フローチャートの開始時に発生する T>Ts ℃の状態は、装置20の初期凍結プロセスに対応する。
【0059】
図6に定常状態温度Tsが約-160 ℃の外科手術のグラフを示し、図7に定常状態温度Tsが約-80 ℃の外科手術のグラフを示す。図6では、グラフ300は温度T(°C)対 時間(s)をプロットし、グラフ304はガス流量G(L/分)対 時間をプロットし、グラフ308はモータ速度S(rpm)対 時間をプロットする。図7において、グラフ400は、温度T(℃)対 時間をプロットし、グラフ404は、ガス流量G(L/分)対 時間をプロットし、グラフ408は、モータ速度S(rpm)対 時間をプロットする。
【0060】
グラフに示されているように、最初の開始期間312および412では、通常、装置20のオペレーションの開始から約30秒間、温度Tは約-160°C(図7)および-80°C(図6)に急激に低下し、一方モータ68の回転速度Sは48rpm(図6)と30rpm(図7)の高い回転速度に上昇する。この期間は、判定ステップ172が繰り返される時間に対応する。
【0061】
フローチャート160では、判定ステップ172が肯定、すなわち T≦Ts を返すと、制御はガス流量フローチャートステップ184に移り、プロセッサはガス流量フローチャート164に従ってモータ68の速度を設定する。プロセッサはガス流量フローチャート164にアクセスするが、プロセッサは、不等式 T≦Ts が連続することを確認し、肯定を返すために判定ステップ172を繰り返す。
【0062】
ガス流量フローチャート164において、判定ステップ172が肯定を返すと、制御は第2の判定ステップ188に移り、そこでプロセッサはガス流量計100の流量を示す信号にアクセスする。第2の判定ステップ188において、プロセッサは、ガス流量計100ガスの流量が、高い値から所定の低いガス流量に低下したか否かをチェックする。所定の低いガス流量は、達成されたときに、到達した定常状態温度に悪影響を与えることなくモータ68の速度を低下させることができることを指し示すガス流量である。所定の低いガス流量は、過度の実験なしに、当業者によって見出され得る。
【0063】
グラフに示されているように、第1の開始期間312、412では、ガス流量は通常、最初のゼロから増加する。第1の開始期間が終了した場合でも、グラフは、ガス流量が増加し続け、通常、2番目の開始期間316で約100 L/分のピーク最高値(図6)および2番目の開始期間416で約80L/分(図7)のピーク最高値に達することを示している。一実施形態では、第2の開始期間316、416は、第1の開始期間の終了後、約30秒の持続時間を有する。第2の開始期間の終了から始まる第3の開始期間320(図6)および第3の開始期間420(図7)において、ガス流量はその後減少し始め、それが所定の低いガス流量に到達するまで比較的高いままである。
【0064】
所定の低いガス流量は、ピーク値流量の100%未満であり、典型的には、ピーク値流量の割合、すなわちパーセンテージとして設定される。一実施形態では、パーセンテージは約50%に設定され、その結果、約100L/分のピーク値の場合、所定の低いガス流量は約50L/分であり(図6)、ピーク値が約80L/分の場合、所定の低ガス流量は約40L/分である(図7)。50%の値は概算で例示的であり、したがって、本発明の範囲は、ピーク高値率の50%よりも低いまたは高い所定の低いガス流量の値を含むことが理解されよう。
【0065】
最初の3つの開始期間中の高いガス流量は、フレキシブルチューブ152およびプローブ60を含む装置20の極低温流体冷却要素に起因する。要素がほぼ定常状態に近づくにつれて、ガス流量はほぼ定常状態の値に近づく。
【0066】
上記のように、第2の判定ステップ188において、プロセッサ36は、メータ100を通るガスの流量が高い値から所定の低い値のガス流量に低下したかどうかをチェックする。プロセッサは、ステップ170で記録されたガス流量にアクセスすることによってこのチェックを実行する。
【0067】
第2の判定ステップ188が否定を返す場合、すなわち、ガス流量が所定の低い値のガス流量に達していない場合、制御は高いポンプ回転速度ステップ192に移り、プロセッサはモータ68の速度Sを高い回転速度に維持し続ける。ステップ192から、制御は第2の判定ステップに戻り、その結果、プロセッサはこのステップを繰り返す。
【0068】
第2の判定ステップ188が肯定を返す場合、すなわち、ガス流量が所定の低い値のガス流量に達した場合、制御はポンプ速度低下ステップ196に移り、プロセッサは、設定された割合またはパーセンテージでモータ68の速度を繰り返し低下させる。ここでは10%と想定されているが、事前設定されたパーセンテージはこの値よりも低い場合も高い場合もある。以下で記載するように、ステップ196の反復は、否定を返す第3の判定ステップ200を条件とする。
【0069】
肯定を返す第2の判定ステップ188は、第3の開始期間320(図6)および第3の開始期間420(図7)が終了し、遷移期間324および424が開始することに対応する。
【0070】
ステップ196から、制御は第3の判定ステップ200に移り、プロセッサ36は、ガス流量がほぼ一定の値に減少したかどうかをチェックする。一実施形態では、ほぼ一定の値は、Ts=-160℃の場合、約35L/分であり、Ts=-80℃の場合、約18L/分であるが、他の実施形態では、Tsの値に対して、これらの値よりも高いかまたは低い。
【0071】
第3の判定ステップが否定を返し、ガス流量がほぼ一定ではない場合、制御はポンプ速度を下げるためステップ196に戻り、モータ速度のさらなる低下が実行され、第3の判定ステップが繰り返される。
【0072】
第3の判定ステップが肯定を返し、ガス流量がほぼ一定である場合、制御は、低い速度ステップ204で設定されたポンプ速度に移り、プロセッサは、モータ68の速度を、事前設定された固定の低い速度に徐々に下げる。一実施形態では、固定された低い速度は、Ts=-160℃の場合は約28rpmであり、Ts=-80℃の場合は約8rpmである。
【0073】
肯定を返す第3の判定ステップ200は、装置20が定常状態を達成することに対応し、したがって、ステップ204は、定常状態フローチャート220のアクティブ化も含む。定常状態の達成は、遷移期間324の終了、および定常状態期間328(図6)の開始に対応し、そして遷移期間424の終了、および定常状態期間428(図7)の開始に対応する。
【0074】
定常状態期間328および428の開始時、すなわち、ステップ204の実施時に、プロセッサは、温度フローチャート160およびガス流量フローチャート164の動作を停止し、定常状態フローチャート220をアクティブにする。
【0075】
定常状態フローチャート220において、プロセッサは、判定ステップ224で、温度Tおよび流量Gが両方とも一定であるかどうかをチェックする。判定が肯定を返す場合、プロセッサは、ポンプ速度を一定に維持するステップ228で、モータ68をその低い回転速度に維持する。判定が否定を返した場合、プロセッサは、ポンプ速度増加ステップ232で、モータ68の速度を事前設定された量、通常は約2~6rpmだけ増加させる。ステップ228および232の両方の後、制御は判定ステップ224に戻り、プロセッサ36はそれを繰り返す。
【0076】
本発明の実施形態は、プローブの遠位端の温度と、戻り極低温ガスの流量の両方を測定することによって、極低温ポンプシステムの動作の効率をかなり改善することが理解されよう。温度と流量の両方を使用することにより、従来技術のシステムと比較して使用される極低温流体の量を減らしながら、定常状態の低温を達成および維持することが可能になる。
【0077】
上記の実施形態は例として引用されており、本発明は、上記で特に示され、記載されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の記載を読んだ当業者に想起される、先行技術に開示されていない、その変形および修正を含む。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7