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特許7219504擬似不良品を用いて動作確認される検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】擬似不良品を用いて動作確認される検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20230201BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230201BHJP
   B07C 5/346 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
B07C5/346
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021106631
(22)【出願日】2021-06-28
(62)【分割の表示】P 2016183101の分割
【原出願日】2016-09-20
(65)【公開番号】P2021167825
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】栖原 一浩
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-003481(JP,A)
【文献】特開2013-156198(JP,A)
【文献】特開平9-89805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/84 - G01N 21/958
B07C 1/00 - B07C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を検査する検査システムであって、
検査対象の前記物品が良品および不良品のいずれであるかを判定する検査を行う検査機構と、
前記物品を受け取り、前記検査機構を通過させ、排出する搬送機構と、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
前記物品の前記検査のみを行う通常モード、および前記物品の前記検査とともに前記検査機構の動作確認を行うテストモードのいずれかを設定するモード設定部と、
前記モード設定部が前記テストモードを設定しており、かつ、前記検査機構が前記検査対象に関して前記良品であると判定をした場合には、前記検査対象を前記良品として取り扱うように制御し、
前記モード設定部が前記テストモードを設定しており、前記検査機構が前記検査対象に関して前記不良品であると判定し、かつ、前記検査対象が、正常に動作する前記検査機構によって前記不良品であると判定されるように構成されている疑似不良品である旨の前記入力を前記入力部が受け取った場合には、前記疑似不良品である旨の前記入力により選択された検査対象を前記不良品として取り扱わないように制御する、制御部と、
を備える、検査システム。
【請求項2】
制御部と、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
によって物品を検査する検査方法であって、
前記物品の検査とともに検査機構の動作確認を行うテストモードにおいて、検査対象に関して良品であると判定する場合には、前記制御部は前記検査対象を前記良品として取り扱い、
前記テストモードにおいて、前記検査対象に関して不良品であると判定し、かつ、前記検査対象が、正常に動作する前記検査機構によって前記不良品であると判定されるように構成されている疑似良品である旨の入力を前記入力部がユーザから受け取る場合には、前記制御部は前記疑似不良品である旨の前記入力により選択された検査対象を前記不良品として取り扱わない、
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似不良品を用いて動作確認される検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造設備には、製品が良品か不良品かを判定する検査装置が含まれることがある。検査装置の一例は、X線検査装置である。X線検査装置は、例えば、X線を製品に照射するX線照射器と、製品の画像を取得する撮像装置を有する。良品か不良品かの判定は、多くの場合には自動的に実行される。判定の手順には、例えば、画像から抽出した指標を所定の閾値と比較する処理が含まれる。
【0003】
検査装置の使用に際しては、良品か不良品かの自動的な判定が正常に実行されているか否かを確認するために、定期的な動作確認が必要である。特許文献1(特許第4724462号公報)に開示される検査装置の動作確認においては、擬似不良品が用いられる。擬似不良品は、検査装置によって不良品であると判定されるように構成された物体であり、例えば意図的に異物を付加された製品である。擬似不良品は、動作確認の実施中に、検査装置に逐次供給されてくる製品の搬送経路上に人為的に混入される。このような動作確認の間にも、製品の検査は実施される。動作確認の実施中に検査装置が良品であると判定した製品は後段の工程へ渡されて出荷されるので、動作確認は製造効率に大きな悪影響を与えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、不良品であると判定された検査対象が、本来の製品のうちの不良品であるのか、擬似不良品であるのかの判別は一般的には難しいので、出荷される製品の検査と、検査装置の動作確認との両立は困難である。検査対象が擬似不良品であるか否かという判別を検査装置自身が自動的に実行するような構成においては、そもそも検査装置の動作確認の信憑性それ自体が疑問視される。
【0005】
本発明の課題は、検査装置において、製品の製造を行いながら実行される動作確認を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る検査装置は、物品を検査する。検査装置は、検査機構と、搬送機構と、記憶部と、検査結果出力部と、入力部と、モード設定部と、を備える。検査機構は、物品に付加された異物を検出することによって、物品が良品および不良品のいずれであるかを判定する検査を行う。搬送機構は、物品を受け取り、検査機構を通過させ、排出する。記憶部は、検査において判定された、良品の数である良品数および不良品の数である不良品数を記憶する。検査結果出力部は、良品数および不良品数を出力する。入力部は、ユーザから入力を受け付ける。モード設定部は、物品の検査のみを行う通常モード、および物品の検査とともに検査機構の動作確認を行うテストモードのいずれかを入力によって設定する。モード設定部がテストモードを設定しており、かつ、検査機構が物品に関して良品であると判定をした場合には、記憶部は、物品を良品数に計上する。モード設定部が前記テストモードを設定しており、かつ、前記検査機構が、正常に動作する前記検査機構によって前記不良品であると判定されるように構成された擬似不良品に関して前記不良品であると判定した場合には、記憶部は、擬似不良品を前記不良品数に計上しない。
【0007】
この構成によれば、テストモードにおいて、擬似不良品は不良品数に計上されない。検査レポートに記載された不良品数は、物品の製造工程で発生した不良品の数である。したがって、検査装置の動作確認の実行中においても、ユーザは検査レポートから正確な不良品率を知ることができる。
【0008】
本発明の第2観点に係る検査装置は、第1観点に係る検査装置において、モード設定部がテストモードを設定している場合には、記憶部は、検査機構によって不良品であると判定をされた擬似不良品の数である擬似不良品数をさらに記憶する。
【0009】
この構成によれば、テストモードにおいて、擬似不良品は擬似不良品数に計上される。したがって、ユーザは、検査レポートに記載された擬似不良品数が、テストモードの実行中に実際に擬似不良品を投入した回数と一致しているかを確認することによって、検査装置の動作確認をすることができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る検査装置は、第2観点に係る検査装置において、ユーザに情報を提供する表示部、をさらに備える。モード設定部が前記テストモードを設定しており、かつ、前記不良品の判定をした場合には、表示部は、検査対象の表示を行う。同じ場合に、入力部は、表示が物品に関するものであるか、または擬似不良品に関するものであるかについての指定を、ユーザから受け付ける。同じ場合に、記憶部は、指定が物品である場合には、不良品の判定を不良品数に計上する一方、指定が擬似不良品である場合には、不良品の判定を擬似不良品数に計上する。
【0011】
この構成によれば、テストモードにおいて、検査対象の表示を見ることにより、不良品判定が物品の製造上の不具合に起因するか、または擬似不良品に起因するかをユーザが確認することができる。それによって、検査装置10の動作確認ができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る検査装置は、第3観点に係る検査装置において、検査機構が、電磁波を発する電磁波源を有する。検査対象の表示は、電磁波を照射された物品に関するものである。
【0013】
この構成によれば、検査機構は電磁波を用いて検査をする。したがって、検査対象の物品が破壊されにくい。
【0014】
本発明の第5観点に係る検査装置は、第4観点に係る検査装置において、電磁波がX線である。検査対象の表示は、X線を照射された物品の画像である。
【0015】
この構成によれば、検査機構はX線を用いて検査を行う。したがって、物品への異物の混入が簡単に検出できる。
【0016】
本発明の第6観点に係る検査装置は、第4観点に係る検査装置において、表示は、物品を透過した電磁波によって誘導された磁界に関する量である。
【0017】
この構成によれば、検査機構は誘導磁界によって検査を行う。したがって、物品への金属片の混入が検出しやすい。
【0018】
本発明の第7観点に係る検査装置は、第3観点に係る検査装置において、検査機構が、物品の重量を測定する重量測定部を有する。表示は、物品の重量に関する量である。
【0019】
この構成によれば、検査機構は重量によって検査を行う。したがって、検査装置を比較的安価に構成できる。
別の観点に係る検査装置は、物品を検査する。検査装置は、検査機構と、搬送機構と、記憶部と、入力部と、モード設定部と、制御部と、を備える。検査機構は、検査対象の異物を検出することによって、物品が良品および不良品のいずれであるかを判定する検査を行う。搬送機構は、物品を受け取り、検査機構を通過させ、排出する。記憶部は、検査において判定された結果を記憶する。入力部は、ユーザから入力を受け付ける。モード設定部は、物品の検査のみを行う通常モード、および物品の検査とともに検査機構の動作確認を行うテストモードのいずれかを設定する。制御部は、モード設定部がテストモードを設定しており、かつ、検査機構が検査対象に関して良品であると判定をした場合には、記憶部に、検査対象を良品として記憶させる。制御部は、モード設定部がテストモードを設定しており、検査機構が検査対象に関して不良品であると判定し、かつ、検査機構が、正常に動作する検査機構によって不良品であると判定されるように構成されている擬似不良品である旨の入力を入力部が受け取った場合には、記憶部に、擬似不良品である旨の入力により選択された検査対象を不良品として記憶させない。
別の観点に係る検査方法は、物品を検査するために用いられる。検査方法においては、記物品の検査とともに検査機構の動作確認を行うテストモードにおいて、検査対象に関して良品であると判定する場合には、検査対象を良品として記憶する。検査方法においては、テストモードにおいて、検査対象に関して不良品であると判定し、かつ、検査対象が、正常に動作する検査機構によって疑似不良品であると判定されるように構成されている疑似良品である旨の入力をユーザから受け取る場合には、疑似不良品である旨の入力により選択された検査対象を不良品として記憶しない。
別の観点に係る検査システムは、物品を検査する。検査システムは、記憶ユニットと、制御ユニットと、を備える。 制御ユニットは、物品の検査とともに検査機構の動作確認を行うテストモードにおいて、検査対象に関して良品であると判定する場合には、検査対象を良品として記憶ユニットに記憶する。制御ユニットは、テストモードにおいて、検査対象に関して不良品であると判定し、かつ、検査対象が、正常に動作する検査対象によって不用品であると判定されるように構成されている疑似不用品である旨の入力をユーザから受け取る場合には、疑似不良品である旨の入力により選択された検査対象を不良品として記憶ユニットに記憶しない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る検査装置によれば、製品の製造を行いながら実行される動作確認が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置10の外観図である。
図2】検査装置10を利用した検査システム90の概略図である。
図3】検査装置10の検査機構50の模式図である。
図4】検査装置10の制御部60のブロック図である。
図5】擬似不良品Qの外観図である。
図6】不良判定画面Zを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
(1)全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る検査装置10を示す。検査装置10は、例えば袋詰めされた食品などの物品の搬送ラインに設置され、金属片などの異物が物品に混入しているかを検査するものである。検査装置10は、シールドボックス20、搬送機構30、タッチパネル40、検査結果出力部45、検査機構50、および図示されていない制御部60を有する。検査装置10は、その前段および後段に配置されるコンベアと高さを整合させるために、台Sの上に載置されている。
【0024】
図2は、検査装置10を利用した検査システム90を示す。前段のコンベアB1から搬送方向Cに搬送される物品Aを、検査装置10は受け取る。検査装置10は、物品Aが異物を含んでいない良品であるか、異物を含んだ不良品であるかを判定する検査を行う。検査装置10から排出された物品Aは、振り分け装置80に送られる。振り分け装置80は、物品Aに関する判定結果を検査装置10から受信する。振り分け装置80は、良品を後段のコンベアB2へ渡し、不良品を排出方向E1または排出方向E2へ排出する。
【0025】
(2)詳細構成
図1に戻り、検査装置10の詳細を説明する。検査装置10は、X線を用いて物品Aを検査する。
【0026】
(2-1)シールドボックス20
シールドボックス20は、検査装置10のケーシングである。シールドボックス20は、X線を透過しない材質で構成されている。シールドボックス20には、物品Aを受け取る物品受取口21と、物品Aを排出する物品排出口22が形成されている。物品受取口21と物品排出口22にはいずれも遮蔽カーテン23が取り付けられている。遮蔽カーテン23は、X線がシールドボックス20の外部へ漏洩することを抑制する。
【0027】
(2-2)搬送機構30
搬送機構30は、物品Aを物品受取口21から物品排出口22まで搬送する。図3に示すように、搬送機構30は、無端ベルト31、駆動ローラ32、従動ローラ33、駆動モータ34有する。無端ベルト31は、駆動ローラ32から従動ローラ33わたって掛けられている。無端ベルト31は、X線を透過する材料により構成されている。駆動モータ34は駆動ローラ32を回転させる。無端ベルト31の上面31aは、従動ローラ33から駆動ローラ32に向かって物品Aとともに搬送方向Cへ移動し、これによって物品Aに検査機構50を通過させる。無端ベルト31の下面31bは、駆動ローラ32から従動ローラ33に向かって移動する。
【0028】
(2-3)タッチパネル40
図1に示すタッチパネル40は、ユーザからの入力を受け付けるキーおよび、ユーザに情報を提供するティスプレイとして機能する。
【0029】
(2-4)検査結果出力部45
検査結果出力部45は、複数の物品Aについて実施された検査ルーティーンに関する検査レポートを出力する。検査結果出力部45は、プリンタとして構成されている。これに代えて、検査結果出力部45はディスプレイやその他の出力装置として構成されてもよい。
【0030】
(2-5)検査機構50
図3に示す検査機構50は、X線照射器51と、X線ラインセンサ52とを有する。X線照射器51は、搬送機構30の無端ベルト31によって搬送される物品Aに、X線53を照射する。物品Aは、例えば、X線53を透過する包装材Wによって包装された、食品などの商品Gである。X線53は、物品Aおよび無端ベルト31の上面31aを透過して、無端ベルト31の上面31aと下面31bの間に設置されているX線ラインセンサ52に到達する。X線ラインセンサ52は、搬送方向Cに直交する方向に一列に並んだ複数のX線検出素子52aを有している。X線ラインセンサ52は、それぞれのX線検出素子52aが検出したX線53の強度に応じて信号を出力する。
【0031】
(2-6)制御部60
図4に示す制御部60は、検査装置10の各部を制御する。制御部60は、中央処理部61、記憶部62、モード設定部63を有する。中央処理部61は、検査装置10の全体の動作を統括する。記憶部62は、データ、プログラム、変数、フラグ、画像、その他の情報を記憶する。モード設定部63には、検査装置10の動作モードが、ユーザによる入力部41を介した入力により設定される。制御部60は、さらに、以下に述べる各種インターフェイスを有する。キー入力インターフェイス65aは、タッチパネル40のキーとして構成された入力部41からの入力を処理する。ディスプレイインターフェイス65bは、タッチパネル40のディスプレイ42の画面制御を行う。検査結果出力部インターフェイス65cは、検査結果出力部45を制御する。照射器インターフェイス65dは、X線照射器51を制御する。ラインセンサインターフェイス65eは、X線ラインセンサ52の出力信号を増幅およびAD変換する。モータインターフェイス65fは、駆動モータ34を制御する。振り分け装置インターフェイス65gは、振り分け装置80に対して、検査対象の物品Aに関する判定の結果を送信する。
【0032】
(3)動作モード
動作モードには、通常モードMNおよびテストモードMTがある。
【0033】
(3-1)通常モードMN
通常モードMNは、物品Aの通常の検査ルーティーンを行うモードである。検査ルーティーンが開始されると、図3に示す検査機構50には、搬送機構30によって複数の物品Aが連続的に搬送される。物品Aを透過したX線53の強度は、X線ラインセンサ52によって検出される。図4の制御部60において、X線ラインセンサ52の出力信号は、ラインセンサインターフェイス65eで増幅およびAD変換をされた後、中央処理部61に取得される。中央処理部61は、X線ラインセンサ52の複数回分の出力信号を画像の形式に統合して、記憶部62に保存する。中央処理部61は、所定の処理手順によって、物品Aが良品であるか不良品であるかを判定する。ここでいう所定の処理手順は、例えば、記憶部62に保存された画像の画像処理、画像からの所定の指標の抽出、指標と所定の閾値との比較、などを含む。判定の結果は、振り分け装置80へ送信される。判定の結果は、さらに、タッチパネル40のディスプレイ42に逐次表示されてもよい。判定の結果は、記憶部62に格納されている良品数NPと不良品数NFのデータに計上される。
【0034】
所定時間の経過、または所定数量の物品Aの判定の終了、などの終了条件が満たされると、検査装置10は検査ルーティーンを終了する。最後に、複数の物品Aについての判定の結果を集計した検査レポートが、検査結果出力部45から出力される。検査レポートには、良品数NPと不良品数NFが記載される。
【0035】
振り分け装置80は、良品と判定された物品Aを後段のコンベアB2へ渡す一方、不良品と判定された物品Aを排出方向E1または排出方向E2へ排出する。
【0036】
(3-2)テストモードMT
テストモードMTは、物品Aが良品であるか不良品かであるかを判定する検査が正常に実行されているか否かを確認するために、検査装置10自身の動作確認を行うモードである。さらに、テストモードMTの実行中にも物品Aの検査は実施され、通常モードMNと同様に、良品は後段のコンベアB2へ渡される。
【0037】
テストモードMTでは、動作確認に立ち会うユーザが、前段のコンベアB1によって搬送される複数の物品Aの中に、擬似不良品Qを混入する。擬似不良品Qは、例えば図5に示すように、商品Gを包装する包装材Wの上に、粘着テープTで複数の金属異物Fを付加したものである。複数の金属異物Fは、規則的に変化する大きさを有し、かつ規則的な位置に配置されている。
【0038】
テストモードMTにおいて、検査ルーティーンが開始されると、検査機構50は通常モードMNと同様のやり方で物品Aの検査を行う。検査対象が良品であると判定された場合には、検査対象は良品数NPに計上され、良品であると判定された物品Aは後段のコンベアB2へ渡される。一方、検査対象が不良品であると判定された場合には、タッチパネル40には、図6に示す不良判定画面Zが表示され、検査装置10はユーザからの入力を待つ。
【0039】
不良判定画面Zは、不良品の判定がなされたことを示す不良表示42a、および不良品の判定がなされた物品AのX線画像42bを含んでいる。ユーザは、X線画像42bを見ることにより、表示されている検査対象が物品Aの製造上の不具合によって生じた不良品であるか、人為的に混入された擬似不良品Qであるかを判断する。不良判定画面Zは、さらに、ユーザの判断を指定するための不良品キー41aおよび擬似不良品キー41bを含んでいる。図6においては、X線画像42bには規則的に配置された金属異物Fが映っており、検査対象が擬似不良品Qである可能性が高いので、ユーザは擬似不良品キー41bに触れることになる。不良品キー41aが触れられた場合には、検査対象は不良品数NFに計上される。一方、擬似不良品キー41bが触れられた場合には、検査対象は擬似不良品数NQに計上される。不良品キー41aおよび擬似不良品キー41bのいずれが触れられた場合も、検査装置10は、振り分け装置80に対して排出の指示を発する。この場合、例えば物品Aの不良品を排出方向E1に、擬似不良品Qを排出方向E2に、それぞれ排出させてもよい。
【0040】
不良判定画面Zは、ユーザからの入力を待つ間表示され続ける。この時、搬送機構30は動作を停止してもよい。あるいは、引き続き検査装置10に搬送される物品Aが良品と判断され続け、先に不良品であると判定された検査対象が振り分け装置80に到達するまでに時間的な余裕がある場合に限り、搬送機構30と検査機構50は動作を継続してもよい。あるいは、物品Aの不良品および擬似不良品Qをともに同一の排出方向E1に排出させるように検査システム90が構成されている場合には、搬送機構30は動作を停止しなくともよい。この場合、記憶部62には、不良品と判定された全ての検査対象の画像を保存される。次いで、検査ルーティーンが終了した後に、ユーザは保存された一連の画像を見て、それぞれの画像についての判断の指定を不良品キー41aまたは擬似不良品キー41bによって行う。
【0041】
テストモード終了キー41cが触れられるなど、所定の終了条件が満たされると、検査装置10は検査ルーティーンを終了する。最後に、複数の物品Aについての判定の結果を集計した検査レポートが、検査結果出力部45から出力される。検査レポートには、良品数NP、不良品数NF、に加えて、擬似不良品数NQが記載される。
【0042】
テストモードMTは、例えば、下記の点でユーザにとって有意義である。
- X線画像42bを見ることにより、擬似不良品Qについて不良品の判定がなされていることをユーザは確認することができる。それによって、検査装置10の動作確認ができる。
- 検査レポートに記載された擬似不良品数NQが、テストモードMTの実行中に実際に擬似不良品Qを投入した回数と一致しているかを、ユーザは確認することができる。擬似不良品数NQと投入回数とが一致している場合には、検査装置10が正常に動作していることを確認ができる。
- 擬似不良品数NQと投入回数とが食い違っている場合には、例えば、擬似不良品Qについて良品であると判定された可能性が想定される。この場合には、テストモードMTの検査ルーティーンの実行中に製造された物品Aをすべて廃棄するという措置をユーザが採ることにより、擬似不良品Qが物品Aの良品として出荷されてしまうことを防止できる。
- 検査レポートから、出荷可能な良品数NPを知ることができる。
- 検査レポートから、不良品率NF/NPを知ることができる。
【0043】
(4)特徴
(4-1)
テストモードMTにおいて、擬似不良品Qは不良品数NFに計上されない。検査レポートに記載された不良品数NFは、物品Aの製造工程で発生した不良品の数である。したがって、検査装置10の動作確認の実行中においても、ユーザは検査レポートから正確な不良品率NF/NPを知ることができる。
【0044】
(4-2)
テストモードMTにおいて、擬似不良品Qは擬似不良品数NQに計上される。したがって、ユーザは、検査レポートに記載された擬似不良品数NQが、テストモードMTの実行中に実際に擬似不良品Qを投入した回数と一致しているかを確認することによって、検査装置10の動作確認をすることができる。
【0045】
(4-3)
テストモードMTにおいて、X線画像42bを見ることにより、不良品判定が物品Aの製造上の不具合に起因するか、または擬似不良品Qに起因するかをユーザが確認することができる。それによって、検査装置10の動作確認ができる。
【0046】
(4-4)
検査機構50はX線を用いて検査を行う。したがって、物品Aへの金属異物Fの混入が簡単に検出できる。
【0047】
(5)変形例
(5-1)変形例A
上述の実施形態に係る検査装置10では、テストモードMTにおいて擬似不良品数NQが計上される。これに代えて、テストモードMTにおいて、擬似不良品数NQを数えない仕様としてもよい。
【0048】
テストモードMTにおいて、検査対象が不良品であると判定された場合には、タッチパネル40には、図6に示す不良判定画面Zが表示され、検査装置10はユーザからの入力を待つ。不良品キー41aが触れられた場合には、検査対象は不良品数NFに計上される。一方、擬似不良品キー41bが触れられた場合には、その検査対象はどの変数にも計上されない。
【0049】
テストモード終了キー41cが触れられるなど、所定の終了条件が満たされると、検査装置10は検査ルーティーンを終了する。最後に、複数の物品Aについての判定の結果を集計した検査レポートが、検査結果出力部45から出力される。検査レポートには、例えば、良品数NP、不良品数NF、および、検査ルーティーン結果が記載される。検査ルーティーン結果は、不良品数NFがゼロである場合に「良」である旨、不良品数NFが1以上である場合に「不良」である旨のメッセージを含む。
【0050】
この構成によれば、擬似不良品Qに起因する不良品の判定が検査レポートに含まれない。したがって、ユーザは、物品Aの製造設備の状態を簡潔に把握できる。
【0051】
(5-2)変形例B
上述の実施形態に係る検査装置10には、X線光学系として構成された検査機構50が搭載されている。これに代えて、検査機構50は、その他の光学系または電磁波検出系により構成されてもよい。この場合、X線照射器51に代えて、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波などの電磁波を放出する電磁波源が用いられる。X線ラインセンサ52に代えて、それらの電磁波を検出する電磁波センサが用いられる。
【0052】
この構成によれば、検査機構50は電磁波を用いて検査をする。したがって、検査対象の物品Aが破壊されにくい。
【0053】
(5-3)変形例C
上述の実施形態に係る検査装置10には、透過X線強度の検出によって判定を行う検査機構50が搭載されている。これに代えて、検査機構50は、物品を透過した電磁波によって誘導された磁界の検出によって判定を行ってもよい。X線ラインセンサ52に代えて用いられる磁界センサは、ラインセンサである必要はない。制御部60は、磁界センサの出力信号を画像として統合する必要はない。不良判定画面Zでは、X線画像42bに代えて、検出された誘導磁界の大きさが表示される。擬似不良品Qとしては、通常の製造工程で混入される金属異物Fの量の範囲を超えるほど大量の金属異物Fが付加されたものを用いる。ユーザは、不良判定画面Zに表示された誘導磁界のレベルを見て、検査対象が物品Aの不良品であるか、擬似不良品Qであるかを判断する。その後、ユーザはその判断の指定を不良品キー41aまたは擬似不良品キー41bによって行う。
【0054】
この構成によれば、検査機構50は誘導磁界によって検査を行う。したがって、物品への金属片の混入が検出しやすい。
【0055】
(5-4)変形例D
上述の実施形態に係る検査装置10は、物品Aへの金属異物Fの混入の有無を検査するものである。これに代えて、検査装置10は、物品Aの重量が所定の出荷許容範囲に収まっているか否かを検査するものであってもよい。この場合透過X線強度の検出によって判定を行う検査機構50に代えて、物品Aの重量の検出によって判定を行う検査機構50が搭載される。X線ラインセンサ52に代えて用いられる重量測定部は、ラインセンサである必要はない。制御部60は、重量測定部の出力信号を画像として統合する必要はない。不良判定画面Zでは、X線画像42bに代えて、検出された重量の大きさが表示される。擬似不良品Qとしては、通常の物品Aのとりうる重量の範囲を外れる値の重量を有するものを用いる。ユーザは、不良判定画面Zに表示された重量のレベルを見て、検査対象が物品Aの不良品であるか、擬似不良品Qであるかを判断する。その後、ユーザはその判断の指定を不良品キー41aまたは擬似不良品キー41bによって行う。
【0056】
この構成によれば、検査機構50は重量によって検査を行う。したがって、検査装置10を比較的安価に構成できる。
【符号の説明】
【0057】
10 検査装置
20 シールドボックス
30 搬送機構
40 タッチパネル
50 検査機構
51 X線照射器
52 X線ラインセンサ
60 制御部
A 物品
F 金属異物
Q 擬似不良品
Z 不良表示画面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【文献】特許第4724462号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6