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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】リング状ソーセージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/60 20160101AFI20230201BHJP
【FI】
A23L13/60 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022144953
(22)【出願日】2022-09-13
【審査請求日】2022-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722002454
【氏名又は名称】オトボッシュ アティラ
【氏名又は名称原語表記】ATTILA OETVOES
【住所又は居所原語表記】fukuokashi nishiku imazu1160― 29
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】オトボッシュ アティラ
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-145171(JP,A)
【文献】特開2000-300164(JP,A)
【文献】特開昭64-080262(JP,A)
【文献】特開平01-098461(JP,A)
【文献】実開平02-023493(JP,U)
【文献】コストコ通 [オンライン], 2014.06.02 [検索日 2022.10.19], インターネット:<URL:https://costcotuu.com/20140602/post_37443.html>
【文献】DREAMBEER [オンライン], 2021.12.09 [検索日 2022.10.14], インターネット:<URL:https://dreambeer.jp/blog/pairing/20211209blog/>
【文献】レシピブログ [オンライン], 2011.03.11 [検索日 2022.10.17], インターネット:<URL:https://www.recipe-blog.jp/profile/3832/recipe/216305>
【文献】クックパッド [オンライン], 2009.10.08 [検索日 2022.10.17], インターネット:<URL:https://cookpad.com/recipe/931168>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材が充填されて、所定の長さを以て形成され、その一端部は、他端部から前記調味具材の内部に収容した状態で接合されており、全体が所定の径を有するリング状に形成されており、
前記一端部は先細りに形成されており、その先端が前記ケーシングの所定箇所を貫通して外部に出してある
リング状ソーセージ。
【請求項2】
チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材を充填し、ケーシング詰めのソーセージの基材料を形成する工程と、
該基材料の端部を切断して所定の長さに形成する工程と、
前記基材料の一端部の前記ケーシングに引き込み部材の先部を接続する工程と、
前記基材料の他端部から内部の調味具材に、前記基材料の一端部を案内するガイド部材を挿着する工程と、
前記基材料を湾曲させて、前記引き込み部材の基部を前記基材料の他端部から前記調味具材に差し入れ、前記ケーシングの適宜箇所を貫通して外部に出し、外部に出た部分を更に引いて、前記基材料の一端部を前記ガイド部材に沿わせるように前記調味具材内に引き込む工程と、
前記基材料の一端部が、前記ガイド部材の内面に充分に圧着、又は密着する程度に引き込んで、前記基材料の全体をリング状に形成したところで、前記引き込み部材の接続状態を解除する工程と、
前記ガイド部材を基材料から抜き取る工程とを備える
リング状ソーセージの製造方法。
【請求項3】
チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材を充填し、ケーシング詰めのソーセージの基材料を形成する工程と、
該基材料の端部を切断して所定の長さに形成する工程と、
前記基材料の一端部を先細りに形成して所定の硬度となるように先端から所定の長さの範囲で冷凍する工程と、
前記基材料を湾曲させて、前記冷凍した一端部を前記基材料の他端部の前記調味具材内の所定の深さに押し込んで収容し、前記一端部の先端を、前記ケーシングの所定箇所を貫通させて外部へ出すか、又は貫通させないでおき、前記基材料の全体をリング状に形成する工程とを備える
リング状ソーセージの製造方法。
【請求項4】
前記基材料の一端部を先細りに形成して、前記基材料の他端部から引き込み、その先端を、前記ケーシングの所定箇所を貫通させて外部へ出す
請求項2記載のリング状ソーセージの製造方法。
【請求項5】
前記基材料の一端部の前記ケーシングに対する前記引き込み部材の先部の接続が、前記引き込み部材の鉤部を前記ケーシングに引っ掛けて行う
請求項2又は4記載のリング状ソーセージの製造方法。
【請求項6】
前記ガイド部材が、前記基材料の湾曲した部分にほぼ沿うように、長手方向に湾曲し、かつ幅方向にも湾曲した所定の長さの樋状、又は前記ガイド部材が、長さ方向に真っ直ぐで、幅方向には湾曲した所定の長さの樋状に形成されている
請求項2又は4記載のリング状ソーセージの製造方法。
【請求項7】
前記基材料の他端部から内部の前記調味具材に挿着されている前記ガイド部材の内面側に、前記ケーシング内の前記調味具材を成形するか、又は取り除いて、前記基材料の一端部の入り口を形成する
請求項2又は4記載のリング状ソーセージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状ソーセージ及びその製造方法に関するものである。詳しくは、形が安定してリング状に整っており、調理や盛り付けを行う際にも、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できるリング状ソーセージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腸詰めのソーセージは、挽肉や刻み肉を塩やスパイスで調味した調味具材を、羊腸などのチューブ状のケーシングに充填したもので、世界中で広く食されている。このような腸詰めのソーセージの形は、従来から、ほぼ真っ直ぐな棒状、或いはやや湾曲した棒状である。このため、調理後に盛り付けても、見た目に代わり映えがしなかった。
【0003】
そこで、ソーセージとして意匠的にもユニークであり、その中心部の空隙に様々な食材を置いたり詰めたりすることができ、オードブルとしても有用な、リング状の形状を有するソーセージが既に提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のソーセージは、その製造に当たって、畜肉、魚肉等のソーセージ製造用原料から公知の方法で調整した生ソーセージをケーシングに充填して棒状の充填物を形成し、充填物に乾燥、燻煙、又は湯煮処理を行うか、又は行うことなしに、充填物を棒状部材の周囲に螺旋状に巻き付け、次いで上記処理を行っていない場合には、処理を行った後、上記螺旋状に巻き付けた充填物を、リング一つ分ずつを二箇所で切断し、変形させて両切断面を合わせることにより、リング状としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭64-80262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の「リング状の形状を有するソーセージ及びその製造方法」には、次のような課題があった。すなわち、リング一つ分ずつを二箇所で切断した後、変形させて各切断面を合わせる際に、切断面の位置や角度がきれいに合わさることはあまりなく、形が整ったリング状にすることができないことが多かった。
【0007】
特に、径の大きさが充分でなく小さい場合は、切断面が合わせられず、リング状に形成することは、ほぼ困難であった。また、切断面がきれいに合わさったとしても、接合部分は固定されていないので、調理や盛り付けを行う際に、接合部分が外れて元の切断面が外れた形状に戻ってしまうこともあった。
【0008】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、形が安定してリング状に整っており、調理や盛り付けを行う際にも、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できるリング状ソーセージ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕上記の目的を達成するために本発明は、チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材が充填されて、所定の長さを以て形成され、その一端部は、他端部から前記調味具材の内部に収容した状態で接合されており、全体が所定の径を有するリング状に形成されているリング状ソーセージである。
【0010】
本発明において、チューブ状のケーシングに挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材が充填されているものは、ケーシング詰めのソーセージの基材料とすることができる。
【0011】
また、チューブ状のケーシングに、調味具材が充填されて所定の長さを以て形成され、その一端部は、他端部から調味具材の内部に収容した状態で接合されているので、形が安定してリング状に整ったソーセージとなり、調理や盛り付けの際に接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できる。
【0012】
更に、全体が所定の径を有するリング状に形成されているので、意匠的にもユニークであり、その中心部の空隙に様々な食材を置いたり詰めたりすることができ、オードブルとしても有用な点は、従来のリング状のソーセージと同様である。
【0013】
なお、本発明にいう「挽肉や刻み肉」は、その材料を例えば牛肉や豚肉等の獣肉に限定するものではなく、従来のソーセージに使用される鶏肉、魚肉、或いはいわゆる大豆肉等の植物性の人工の肉様のものも含まれる。
【0014】
〔2〕本発明のリング状ソーセージは、前記一端部は先細りに形成されており、その先端が前記ケーシングの所定箇所を貫通して外部に出してある構成とすることもできる。
【0015】
この場合は、一端部の収容された部分が長くなることにより、ケーシングも伸びるので、食する際の歯切れが良く、食感も悪くなりにくい。また、ケーシングの所定箇所を貫通している一端部の先端(ケーシングの端部など)が、一端部の内部の調味具材の圧力でケーシングに対して固定されるので、型崩れをより効果的に抑止することができる。更には、貫通している一端部の先端が穴を閉塞するため、内部の調味具材が漏れ出ることを抑止できるなど、穴自体が何かの支障となることはない。
【0016】
なお、リング状ソーセージに、一般的に行われる、乾燥処理、燻煙処理、又は湯煮処理をすれば、ケーシング内部の調味具材が加熱されてやや硬くなる(或いは固まる)ため、製品としての形状の維持ができるようになると共に、特に燻煙処理によれば、加えて特有の香味のある燻製品とすることができる。また、燻煙処理や湯煮処理では、加熱による殺菌も行われるので、製品の賞味期間を長く設定することができるようになる。
【0017】
〔3〕上記の目的を達成するために本発明は、チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材を充填し、ケーシング詰めのソーセージの基材料を形成する工程と、該基材料の端部を切断して所定の長さに形成する工程と、前記基材料の一端部の前記ケーシングに引き込み部材の先部を接続する工程と、前記基材料の他端部から内部の調味具材に、前記基材料の一端部を案内するガイド部材を挿着する工程と、前記基材料を湾曲させて、前記引き込み部材の基部を前記基材料の他端部から前記調味具材に差し入れ、前記ケーシングの適宜箇所を貫通して外部に出し、外部に出た部分を更に引いて、前記基材料の一端部を前記ガイド部材に沿わせるように前記調味具材内に引き込む工程と、前記基材料の一端部が、前記ガイド部材の内面に充分に圧着、又は密着する程度に引き込んで、前記基材料の全体をリング状に形成したところで、前記引き込み部材の接続状態を解除する工程と、前記ガイド部材を基材料から抜き取る工程とを備えるリング状ソーセージの製造方法である。
【0018】
本発明においては、チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材を充填し、ケーシング詰めのソーセージの基材料を形成することができ、これをリング状ソーセージの材料とすることができる。
【0019】
また、基材料の端部を切断して所定の長さに形成する工程により、所定の長さに形成したそれぞれを、一つのリング状ソーセージの材料とすることができ、長さを揃えれば、同様の方法で製造することにより、自然に同じ径(大きさ)のリング状ソーセージを製造することができる。
【0020】
また、基材料の一端部のケーシングに引き込み部材の先部を接続する工程により、引き込み部材を利用して、基材料の一端部を充分な力で引っ張ることが可能になる。これによれば、基材料の一端部を他端部から調味具材の内部に引き込む操作ができるようになる。
【0021】
また、基材料の他端部から内部の調味具材に、基材料の一端部を案内するガイド部材を挿着する工程により、基材料の他端部の調味具材にガイド部材を止め付けて、ガイド部材を基材料の一端部を引き込む際のガイドとすることができるようになる。
【0022】
また、他端部の調味具材に挿着してあるガイド部材は、筒状のケーシングを内側から補強しており、引き込み作業の際に、基材料の他端部を保持するときに変形しにくくするための補助となり、作業がしやすい。
【0023】
また、基材料を湾曲させて、引き込み部材の基部を基材料の他端部から調味具材に差し入れ、ケーシングの適宜箇所を貫通して外部に出し、外部に出た部分を更に引いて、基材料の一端部をガイド部材に沿わせるように調味具材内に引き込む工程により、一端部を充分な長さを以て引き込むことができる。また、基材料他端部のケーシング内にある調味具材が、基材料の一端部に強く押されて内圧が高くなるので、調味具材が一端部を包んで固定する力が強くなり、抜けにくくなる。
【0024】
また、基材料の一端部が、ガイド部材の内面に充分に圧着、又は密着する程度に引き込んで、基材料の全体をリング状に形成したところで、引き込み部材の接続状態を解除する工程と、ガイド部材を基材料から抜き取る工程により、食することが可能なリング状のソーセージとすることができる。
【0025】
本発明によれば、チューブ状のケーシングに、調味具材が充填されて所定の長さを以て形成され、その一端部は、他端部から調味具材の内部に引き込んだ状態で接合されているリング状ソーセージを製造することができるので、形が安定してリング状に整っていると共に、リング状ソーセージは、調理や盛り付けの際に、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できる。
【0026】
〔4〕上記の目的を達成するために本発明は、チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材を充填し、ケーシング詰めのソーセージの基材料を形成する工程と、該基材料の端部を切断して所定の長さに形成する工程と、前記基材料の一端部を先細りに形成して所定の硬度となるように先端から所定の長さの範囲で冷凍する工程と、前記基材料を湾曲させて、前記冷凍した一端部を前記基材料の他端部の前記調味具材内の所定の深さに押し込んで収容し、前記一端部の先端を前記ケーシングの所定箇所を貫通させて外部へ出すか、又は貫通させないで収容しておき、前記基材料の全体をリング状に形成する工程とを備えるリング状ソーセージの製造方法である。
【0027】
本発明においては、チューブ状のケーシングに、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材を充填し、ケーシング詰めのソーセージの基材料を形成することができ、これをリング状ソーセージの材料とすることができる。
【0028】
また、基材料の端部を切断して所定の長さに形成する工程により、所定の長さに形成したそれぞれを、一つのリング状ソーセージの材料とすることができる。また、長さを揃えれば、同様の方法で製造することにより、自然に同じ径(大きさ)のリング状ソーセージを製造することができる。
【0029】
また、基材料の一端部を先細りに形成して所定の硬度となるように先端から所定の長さの範囲で冷凍する工程により、一端部に力を加えても変形しにくくなり、後工程の他端部に対する押し込みがしやすくなると共に、より確実にできるようになる。
【0030】
また、基材料を湾曲させて、冷凍した一端部を基材料の他端部の調味具材内の所定の深さに押し込んで収容し、一端部の先端をケーシングの所定箇所を貫通させて外部へ出すか、又は貫通させないで収容しておき、基材料の全体をリング状に形成する工程により、まず、冷凍した一端部が他端部の調味具材内に収容されると、抜けたりずれたりしにくい。
【0031】
また、一端部の先端をケーシングの所定箇所を貫通させて外部へ出した場合は、ケーシングの所定箇所を貫通している一端部の先端が、一端部の内部の調味具材の圧力でケーシングに対して固定されるので、型崩れをより効果的に抑止することができる。更に、一端部をケーシングに貫通させないで収容しておく場合は、手間がかからず、作業を容易に行うことができる。
【0032】
本発明によれば、チューブ状のケーシングに、調味具材が充填されて所定の長さを以て形成され、その一端部は、他端部から調味具材の内部に収容した状態で接合されているリング状ソーセージを製造することができるので、形が安定してリング状に整っていると共に、リング状ソーセージは、調理や盛り付けの際に、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できる。
【0033】
〔5〕本発明のリング状ソーセージの製造方法は、前記基材料の一端部を先細りに形成して、前記基材料の他端部から引き込み、その先端を前記ケーシングの所定箇所を貫通させて外部へ出す構成とすることもできる。
【0034】
この場合は、引き込む際に、それ程大きな抵抗は作用せず、比較的容易に引き込むことができる。しかも、基材料の一端部の引き込んだ部分も充分に長くなるので、調味具材の内圧による固定力も強くなり、リング状の型崩れを防ぎながら、製造の際の作業性を向上させることができる。
【0035】
また、一端部の引き込んだ部分が長くなることにより、ケーシングも伸びるので、食する際の歯切れが良く、食感も悪くなりにくい。更に、ケーシングの所定箇所を貫通している一端部の先端が、一端部の内部の調味具材の圧力でケーシングに対して固定されるので、型崩れをより効果的に抑止することができる。
【0036】
〔6〕本発明のリング状ソーセージの製造方法は、前記基材料の一端部の前記ケーシングに対する前記引き込み部材の先部の接続が、前記引き込み部材の鉤部を前記ケーシングに引っ掛けて行う構成とすることもできる。
【0037】
この場合は、ケーシング、特に一般的に利用される羊腸、豚腸などは、薄くても良好な強度を有しており、引き込み部材の鉤部を引っ掛けただけでも、充分な接続強度を有しているので、手早く、かつ確実に接続することが可能になる。また、これにより、製造の際の作業性も良好である。
【0038】
〔7〕本発明のリング状ソーセージの製造方法は、前記ガイド部材が、前記基材料の湾曲した部分にほぼ沿うように、長手方向に湾曲し、かつ幅方向にも湾曲した所定の長さの樋状に形成されている構成とすることもできる。
【0039】
この場合は、ガイド部材が、基材料の湾曲した部分にほぼ沿うように、長手方向に湾曲しているので、ガイド部材をケーシングの内面に寄せても、ケーシングを傷付けにくいので、ケーシング内面に密着するくらい寄せることもできる。これにより、基材料の一端部を入れる調味具材の部分を大きくとることができ、一端部がやや太くなっても、引き込みが可能になる。
【0040】
また、ガイド部材が、長さ方向に真っ直ぐな形状であるため、調味具材への挿着時の差し込みと、後の抜き取りの際に、抵抗が小さく作業が容易である。特にガイド部材の抜き取りの際に調味具材が引っ掛かることによる一部の引き外れが抑えられるので、手直しの手間も軽減できる。
【0041】
〔8〕本発明のリング状ソーセージの製造方法は、前記基材料の他端部から内部の前記調味具材に挿着されている前記ガイド部材の内面側に、前記ケーシング内の前記調味具材を成形するか、又は取り除いて、前記基材料の一端部の入り口を形成する構成とすることもできる。
【0042】
この場合は、基材料の他端部に入り口があることで、基材料の一端部を調味具材に引き込む際に、最初の位置が決まるので、引き込み作業がしやすい。また、一端部の引き込みの際に、調味具材が溢れて無駄になることも抑制できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、形が安定してリング状に整っており、調理や盛り付けを行う際にも、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できるリング状ソーセージ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明のリング状ソーセージの製造方法を示し、(a)はケーシングに調味具材を充填する工程の説明図、(b)はケーシングに調味具材を充填し、両端部を切断して所定の長さに形成する工程の説明図、(c)は一端部を先細りに形成する工程の説明図である。
図2】本発明のリング状ソーセージの製造方法で使用するガイド部材の構造を示し、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示す説明図である。
図3】本発明のリング状ソーセージの製造方法を示し、ガイド部材と引き込みピンを、調味具材を充填したケーシングにセットする工程を示す説明図である。
図4】本発明のリング状ソーセージの製造方法を示し、調味具材を充填したケーシングの一端部の先細りに形成した側を、他端部から入れて内部に引き込む工程の説明図である。
図5】本発明のリング状ソーセージの製造方法を示し、調味具材を充填したケーシングの先細りに形成した側を引き込んで連結した後、ガイド部材を抜き取ってリング状ソーセージを形成する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1乃至図5を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
本発明に係るリング状ソーセージSは、図5に示す状態からガイド部材3を抜き取った、所定の径を有するリング状のソーセージである。
【0046】
リング状ソーセージSは、羊腸のケーシング1に、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材2が充填されて、基材料100が所定の長さ、すなわち所定の径を有する一個のリング状ソーセージを作ることができる長さを以て形成されており、基材料100の一端部101は、他端部102から調味具材2の内部に引き込んだ状態で接合されている(図1図3乃至図5参照)。
【0047】
なお、ケーシング1の材料は、羊腸に限定するものではなく、例えば可食ケーシングである豚腸、牛腸などの他の天然ケーシング、或いは動物性タンパク質を主原料としたコラーゲンケーシングなどを採用することもできる。本発明のリング状ソーセージSの製造方法は、次の通りである。
【0048】
(製造方法1)
次に、リング状ソーセージSの製造方法を説明する。
(1)腸詰め器4を使用して、羊腸のケーシング1に挽肉や刻み肉を塩やスパイスで調味した調味具材2を充填し、必要な長さのいわゆる腸詰め(符号省略)を作る(図1(a)参照)。
【0049】
(2)この腸詰めを、所定の径(例えば80~100mm)のリング状に形成することができる長さに切断し、必要な数の基材料100を作る(図1(b)参照)。
【0050】
(3)基材料100の両側端部は、ケーシング1が開口(開放)されている(図1(b)参照)。一端部101の開口部103から調味具材2を適宜取り出しながら、ケーシング1内部の調味具材2の先端部がやや先細りになるように成形し、ケーシング1の端部は押さえて閉じておく(図1(c)参照)。
【0051】
(4)先端部に鉤部50(又はフック)を設けた所定の長さの金属線体である引き込みピン5(図3参照)と、ケーシング1の他端部の開口部104に入るステンレススチール製の板体を湾曲形成した、樋形状のガイド部材3とを用意する。ガイド部材3は、長手方向に所定の曲率で湾曲し、かつ幅方向にも湾曲した形状である(図2(a)参照)。
【0052】
(5)基材料100の一端部のケーシング1を閉じた部分に、引き込みピン5の鉤部50を刺して引っ掛ける。なお、羊腸のケーシング1は、薄くても良好な強度を有しており、引き込み部材5の鉤部50を引っ掛けただけでも、充分な接続強度を有しているので、手早く、かつ確実に接続することが可能であり、作業性も良好である。
【0053】
(6)基材料100において、鉤部50を引っ掛けた側とは反対側の他端部102の開口部104から、ガイド部材3を調味具材2に差し込むようにして挿着する。このとき、ガイド部材3をケーシング1の内面に沿わせるようにするが、内面から離してもよく、限定はしない(図3参照)。
【0054】
なお、ガイド部材3は、基材料100の湾曲したケーシング1の内面にほぼ沿うように、長手方向に湾曲しており、ガイド部材3をケーシング1の内面に寄せても、ケーシング1を傷付けにくいので、ケーシング1内面に密着するくらい寄せることもできる。これにより、基材料100の一端部101を入れる調味具材2の部分を大きくとることができ、一端部101がやや太くなっても、引き込みが可能になる。
【0055】
また、ガイド部材は、本実施の形態のガイド部材3のように、リング状ソーセージの湾曲部に沿うように、つまりケーシング1の内面に沿わせることができるように長手方向へ湾曲させて作るのが望ましいが、これに限定せず、容易に作れるように、長さ方向に真っ直ぐな形状とすることもできる(図2(b)参照)。
【0056】
このガイド部材3aは、ほぼ扇形のステンレススチール製の板体を丸めて作られており、長さ方向の両端部に大きさの差がある。つまり、図2(b)で手前側が大きく、奥側が小さくなっている。手前側の端部は、円形のうち下側の40%を切り欠き、奥側の端部は、円形のうち下側の70%を切り欠いた形状である。この寸法比は、適宜調整が可能である。なお、使い方と作用は、上記ガイド部材3とほぼ同様であるので、説明は省略する。
【0057】
(7)基材料100の他端部102に挿着されているガイド部材3の内側にある調味具材2を外から押し込むようにして、調味具材2に所定の大きさの入り口(図示省略)を作る。なお、入り口は必ずしも作る必要はなく、調味具材2の端面は切断時のままでもよい。
【0058】
特に、この製造方法の場合は、後述するようにケーシング1の内側から外側へ貫通させた引き込みピン5により一端部101を引き込むので、調味具材2に入り口を作らなくても、貫通位置を調整することで、引き込む位置のコントロールがしやすい。また、このときに、一端部101を押さえたりしないので、形が崩れにくい。
【0059】
(8)引き込みピン5の、鉤部50とは反対側の端部をガイド部材3の内側に入れて、調味具材2に差し込み、奥のケーシング1の適宜位置(所定位置)で内部から外部へ貫通させて突き出すようにする。そして、引き込みピン5の突き出した部分を持って外部方向へ引くと、基材料100の先細りとなった一端部101が調味具材2の入り口に入り、そのまま引き込まれる(図4参照)。
【0060】
このとき、入り口に入る一端部101は、誘導されて位置が自然に決まり、先細り形状でもあるので、引き込みが比較的容易であると共に安定する。また、他端部102の調味具材2に挿着してあるガイド部材3は、筒状のケーシング1を内側から補強しており、引き込み作業の際に、基材料100の他端部102を掴む際に変形しにくくするための補助となり、接合作業時に手持ちがしやすい。
【0061】
また、ガイド部材3を挿着していることで、引き込みピン5を基材料100の他端部102から差し込む際に、ガイド部材3が引き込みピン5のガードとなる。これにより、ガイド部材3が存在する箇所、すなわち他端部102の端部に近い箇所(つまり引き込み量が少ないため接合が不十分になりやすい箇所)で、引き込みピン5をケーシング1に貫通させてしまう失敗を防止でき、接合部から所定の距離を以て貫通させるという作業がしやすくなる。
【0062】
(9)これにより、基材料100の一端部101は、ガイド部材3の内側にある調味具材2に所定の圧力を加えるようにして引き込まれ、鉤部50がケーシング1の外に出てケーシング1の一端部101の引っ掛けられた部分(先端)がケーシング1の穴(図示省略)から外に出たところで、鉤部50を取り外すようにする。
【0063】
また、ケーシング1の、鉤部50が外れた一端部101は、ケーシング1の内部で圧力が加わった調味具材2で包むように挟まれ、ほぼ固定されて抜けにくくなり(図5参照)、型崩れをより効果的に抑止することができる。
【0064】
更には、一端部の引き込んだ部分が長くなることにより、ケーシング1も伸びるので、リング状ソーセージSを食する際の歯切れが良く、食感も悪くなりにくい。また、貫通している一端部の先端が穴を閉塞するため、内部の調味具材2が漏れ出ることを抑止できるなど、穴自体が何かの支障となることはない。
【0065】
(10)そして、基材料100からガイド部材3を抜き取り、一端部101と他端部102の接合部の調味具材2のはみ出しなどを整えると、ケーシング1に生の調味具材が詰まった状態のリング状ソーセージSが出来上がる。なお、この後、例えばケーシング1と同じ材料で帯状に作ったものを接合部(境界部)に重ねるようにデンプンで接着するなどして巻き付けて、結合をより確実にすることもできる。
【0066】
(11)最後に、乾燥処理、燻煙処理(燻製)、又は湯煮処理(ボイル)をして保存性を高めた状態で製品とする。なお、この各処理は、必ずしも行う必要はなく、例えば生の状態のまま、或いは生の状態から冷凍して製品とすることもできる。
【0067】
このように、本発明のリング状ソーセージの製造方法1によれば、形が安定してリング状に整っており、調理や盛り付けを行う際にも、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できる。
【0068】
(リング状ソーセージSの作用)
リング状ソーセージSが、乾燥処理、燻煙処理、又は湯煮処理を行ったものでは、基材料100の一端部101が、他端部102から調味具材2の内部に引き込んだ状態で接合されているので、接合が強固であり、形が安定してリング状に整っているリング状ソーセージSとなる。
【0069】
リング状ソーセージSは、上記各処理によって、ケーシング1内部の調味具材2がやや硬くなるため、製品としての形状の維持ができるようになる。特に燻煙処理によれば、加えて特有の香味のある燻製品とすることができる。また、燻煙処理や湯煮処理によれば、加熱による殺菌も行われるので、製品の賞味期間を長く設定することができるようになる。
【0070】
更に、リング状ソーセージSは、調理や盛り付けの際に接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できる。なお、リング状ソーセージSは、全体が所定の径を有するリング状に形成されているので意匠的にもユニークであり、その中心部の空隙に様々な食材を置いたり詰めたりすることができ、オードブルとしても有用な点は、従来のリング状のソーセージと同様である。
【0071】
特に、本実施の形態に使用される羊腸などの天然ケーシングの場合、ケーシング1が引き伸ばされた状態(調味具材2の充填状態)では透明に近い透明度となるため、接合部のケーシングの重なり部分(境目部分)が目立たず、これにより見た目がよく、デザイン性に優れる点も特長の一つとなる。
【0072】
なお、リング状ソーセージは、図示はしていないが、基材料100の一端部101を先細りに形成して、所定の硬度となるように、先端から所定の長さの範囲で冷凍し、冷凍した一端部101を基材料100の他端部102の調味具材2内に所定の深さで収容して接合し、リング状とした形態とすることもできる。
【0073】
この場合の製造方法は、次に示す通りである。なお、上記製造方法1で作られるリング状ソーセージの各部と共通する部分については、便宜上、同じ符号を付して説明する。
【0074】
(製造方法2)
(1)製造方法1と同様にして腸詰めを作り、同じく所定の径のリング状に形成することができる長さに切断し、必要な数の基材料100を作る。
【0075】
(2)基材料100の両側端部は、ケーシング1が開口されている。一端部101の開口部103から調味具材2を適宜取り出しながら、ケーシング1内部の調味具材2の先端部がやや先細りになるように成形し、ケーシング1の端部は押さえて閉じておく。
【0076】
(3)基材料100の一端部101において、先端から所定の長さ(例えば数センチの長さ)の範囲で冷凍して硬化させる。冷凍する範囲は、後工程の基材料100をリング状に変形させる際に形を作る上での支障とならず、しかも押し込みはしやすい限度で調整する。
【0077】
(4)基材料100の他端部102の内部にある調味具材2を外から押し込むようにして、調味具材2に所定の大きさの入り口を作る。なお、入り口は必ずしも作る必要はなく、調味具材2の端面は切断時のままでもよい。また、この際に併せて基材料100の他端部102をやや冷凍して、入り口周りの硬度を上げて持ちやすくしておくと、後工程の接合作業がし易くなるので好ましい。
【0078】
(5)基材料100の冷凍した一端部101を、他端部102の入り口に合わせるようにして押し込む。このとき、他端部102は、入り口周りだけが硬くなっており、奥の調味具材2は比較的軟らかいので、入り口に入る一端部101は、誘導されて位置が自然に決まり、先細り形状でもあるので、押し込み作業が比較的容易であると共に安定する。
【0079】
なお、この製造方法では、一端部101をケーシング1の内側から外側へ貫通させることなく、接合することが可能であり、引き込み部材を用いなくても、リング形状とする作業を簡単に行うことができる。
【0080】
(6)押し込んだ一端部101は、他端部102の開口部104を形成するケーシング1にきつく内嵌めされることで固定ができるが、例えば先端を更に長くして尖らせておき、この部分をケーシング1に貫通させ、製造方法1と同様に固定することもできる。一端部101は、このように固定されると抜けにくくなり、型崩れをより効果的に抑止することができる。
【0081】
(7)そして、一端部101と他端部102の接合部の調味具材2のはみ出しなどを整えると、ケーシング1に調味具材2が詰まった状態のリング状ソーセージが出来上がる。
【0082】
(8)最後に、乾燥処理、燻煙処理(燻製)、又は湯煮処理(ボイル)をして保存性を高めた状態で製品とする。なお、この各処理は、必ずしも行う必要はなく、例えば生の状態のまま、或いは生の状態から冷凍して製品とすることもできる。
【0083】
このように、本発明のリング状ソーセージの製造方法によれば、基材料100の一端部101が、他端部102から調味具材2の内部に押し込んで収容された状態で接合されているので、接合が強固であり、形が安定してリング状に整っており、調理や盛り付けを行う際にも、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できるリング状ソーセージを製造できる。
【0084】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
S リング状ソーセージ
100 基材料
1 ケーシング
101 一端部
102 他端部
103 一端部の開口部
104 他端部の開口部
2 調味具材
3 ガイド部材
3a ガイド部材
4 腸詰め器
5 引き込みピン
50 鉤部
【要約】
【課題】形がリング状に整ったソーセージが得られ、調理や盛り付けを行う際にも、接合部分が外れたり位置がずれたりして形が崩れてしまうことを抑止できるリング状ソーセージを提供する。
【解決手段】リング状ソーセージSは、チューブ状のケーシング1に、挽肉や刻み肉を含み、塩やスパイス等で調味した生の調味具材2が充填されて、所定の長さを以て形成され、その一端部101は、他端部102から調味具材2の内部に引き込んだ状態で接合されており、全体が所定の径を有するリング状に形成されている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5