(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20230201BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A61B5/16 100
A61B5/0245 A
(21)【出願番号】P 2018097165
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】515162408
【氏名又は名称】株式会社コルラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】福井 祥文
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊
(72)【発明者】
【氏名】張本 和芳
(72)【発明者】
【氏名】市原 真希
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 潔
(72)【発明者】
【氏名】大黒 雅之
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-147010(JP,A)
【文献】特開2005-056205(JP,A)
【文献】特開2002-000576(JP,A)
【文献】特開2003-339681(JP,A)
【文献】特開2007-283041(JP,A)
【文献】特開2014-100227(JP,A)
【文献】特表2008-532587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拍動情報として取得した被検者の拍動に基づいて、前記被検者の状態を判断する情報処理装置であって、 前記拍動情報に含まれる拍動毎の間隔に基づいて、前記拍動情報の所定時間毎に交感神経活性度と副交感神経活性度との相関係数を算出する算出部と、 前記算出部によって算出された前記相関係数に基づいて、前記被検者の状態を判断する判断部と、を備え、 前記被検者の状態は、集中状態と休息状態を含む、2以上に分類される状態であり、 前記判断部は、前記相関係数と所定のしきい値との大小関係に基づいて、前記大小関係に関連付けられた被
検者の状態を判断する情報処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、交感神経活性度及び副交感神経活性度の共分散をa、交感神経活性度の標準偏差をb、副交感神経活性度の標準偏差をcとして、相関係数dを、 d=a/(b×c)で算出する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記拍動のR波間の時間間隔に基づいて前記相関係数を算出する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、交感神経活性度及び副交感神経活性度の共分散と、交感神経活性度の標準偏差と、副交感神経活性度の標準偏差とに基づいて、相関係数を算出する
請求項1~3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判断部は、相関係数dの所定のしきい値に基づいて、前記被検者の状態を2種類以上に分類する
請求項1~4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記判断部は、判断結果の正誤のフィードバックに基づいて、前記しきい値を補正する
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判断部は、前記相関係数が所定のしきい値よりも低い場合に前記被検者の状態を休息状態と判断し、所定のしきい値よりも高い場合に前記被検者の状態を集中状態と判断する
請求項1~6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記判断部によって判断された被検者の状態を出力する出力部と、 前記出力部による出力を前記被検者の状態毎に異なって表示させる出力制御部と、を更に備える
請求項1~7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記出力制御部は、前記相関係数を時系列で並べて前記出力部に出力させる
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
拍動情報として取得した被検者の拍動に基づいて、前記被検者の活動状況を解析する情報処理装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、 前記コンピュータを、 前記拍動情報に含まれる拍動間隔に基づいて、前記拍動情報の所定時間毎に交感神経活性度と副交感神経活性度との相関係数を算出する算出部、 前記算出部によって算出された前記相関係数に基づいて、前記被検者の活動状況を判断する判断部、として機能させ、 前記被検者の活動状況は、集中状態と休息状態を含む、2以上に分類される状況であり、 前記判断部は、前記相関係数と所定のしきい値との大小関係に基づいて、前記大小関係に関連付けられた被
検者の活動状況を判断するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体の状態を解析可能な指標として、交感神経指標及び副交感神経指標が知られている。交感神経指標及び副交感神経指標を求める方法として、人体から取得して心拍データを用いる手法がある。この手法では、心拍データの周波数解析で求められる低周波数成分(LF)及び高周波数成分(HF)のそれぞれを交感神経指標及び副交感神経指標とするものである。
【0003】
また、他の手法として、心拍間隔から作成されるローレンツプロット内のプロットのばらつきに基づいて、被検者の交感神経指標及び副交感神経指標を算出する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、ローレンツプロットを用いた手法として、プロットのばらつきから心拍のゆらぎを求め、体温及び主観データを更に組み合わせることで、被検者の健康状態を総合的に判定する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Motomi Toichi et al., J Autun Nerv Syst, 62(1997)79-84.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載されているように、交感神経指標及び副交感神経指標を用いることで、被検者の状態をある程度まで分析することが可能である。一方で、交感神経指標及び副交感神経指標では、被検者の状態を明確に判定できないことがあった。また、特許文献1に記載の手法では、複数種の計測装置と主観データの申告とが必要になるため、被検者への負担が大きいと考えられる。そこで、より簡便且つ明確に被検者の状態を判別できる手法があればより好ましい。
【0007】
本発明は、被検者の状態をより簡便且つ明確に判別することができる情報処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、拍動情報として取得した被検者の拍動に基づいて、前記被検者の状態を判断する情報処理装置であって、前記拍動情報に含まれる拍動毎の間隔に基づいて、前記拍動情報の所定時間毎に交感神経活性度と副交感神経活性度との相関係数を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記相関係数に基づいて、前記被検者の状態を判断する判断部と、を備える情報処理装置に関する。
【0009】
また、前記算出部は、前記拍動のR波間の時間間隔に基づいて前記相関係数を算出することが好ましい。
【0010】
また、前記判断部は、交感神経活性度及び副交感神経活性度の共分散と、交感神経活性度の標準偏差と、副交感神経活性度の標準偏差とに基づいて、相関係数を算出することが好ましい。
【0011】
また、前記算出部は、交感神経活性度及び副交感神経活性度の共分散をa、交感神経活性度の標準偏差をb、副交感神経活性度の標準偏差をcとして、相関係数dを、
d=a/(b×c)
で算出することが好ましい。
【0012】
また、前記判断部は、相関係数dの所定のしきい値に基づいて、前記被検者の状態を2種類以上に分類することが好ましい。
【0013】
また、前記判断部は、前記相関係数が所定のしきい値よりも低い場合に前記被検者の状態を休息状態と判断し、所定のしきい値よりも高い場合に前記被検者の状態を集中状態と判断することが好ましい。
【0014】
また、情報処理装置は、前記判断部によって判断された被検者の状態を出力する出力部と、前記出力部による出力を前記被検者の状態毎に異なって表示させる出力制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0015】
また、前記出力制御部は、前記相関係数を時系列で並べて前記出力部に出力させることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、拍動情報として取得した被検者の拍動に基づいて、前記被検者の活動状況を解析する情報処理装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、前記拍動情報に含まれる拍動間隔に基づいて、前記拍動情報の所定時間毎に交感神経活性度と副交感神経活性度との相関係数を算出する算出部、前記算出部によって算出された前記相関係数に基づいて、前記被検者の活動状況を判断する判断部、として機能させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検者の状態をより簡便且つ明確に判別することができる情報処理装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置を用いた拍動の取得環境を示す概略図である。
【
図2】一実施形態の情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態の情報処理装置によって作成されるローレンツプロットを示すプロット図である。
【
図4】一実施形態の情報処理装置によって作成されるSPCを示すヒートマップである。
【
図5】一実施形態の情報処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態の情報処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施例1に係るSPCを示すヒートマップである。
【
図8】実施例1に係るCSIを示すヒートマップである。
【
図9】実施例1に係るCVIを示すヒートマップである。
【
図10】実施例2に係るCSIのしきい値を示すグラフである。
【
図11】実施例2に係るCVIのしきい値を示すグラフである。
【
図12】実施例2に係るSPCのしきい値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る情報処理装置1及びプログラムついて、
図1~
図12を参照して説明する。
まず、本実施形態の情報処理装置1を用いて、被検者Pの状態を判断する際の構成の概要について、
図1を参照して説明する。
【0020】
被検者Pは、情報処理装置1によって状態を判断される対象者である。被検者Pは、例えば、オフィスワーカーである。被検者Pには、拍動を電気的な情報である拍動情報として取得可能なセンサ100が取り付けられる。ここで、拍動とは、被検者Pの心拍又は脈伯であってよい。本実施形態では、拍動は、被検者Pの心拍で説明される。なお、脈拍についても心拍と同様に扱うことができる。
【0021】
センサ100は、いわゆる生体センサであり、被検者Pの心拍を取得して電気信号に変換可能な装置である。具体的には、センサ100は、
図1に示すように、取得した被検者Pの心拍について、時刻に対する電気信号の強さを示す拍動情報に変換可能な装置である。また、センサ100は、拍動情報を外部に送信可能な送信機能を有する。センサ100は、送信機能を用いて情報処理装置1と有線又は無線で接続される。センサ100は、送信機能を用いて拍動情報を情報処理装置1に送信する。これにより、情報処理装置1は、送信された拍動情報に基づいて、被検者Pの状態を判断することが可能になる。
【0022】
[情報処理装置1]
次に、本実施形態に係る情報処理装置1について、
図2を参照して説明する。
情報処理装置1は、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、サーバ等の電子計算機である。情報処理装置1は、取得部10と、算出部20と、しきい値格納部30と、判断部40と、出力制御部50と、出力部60と、を備える。
【0023】
取得部10は、センサ100との間で有線又は無線で通信可能な通信デバイスである。取得部10は、センサ100から送信された拍動情報を取得する。取得部10は、例えば、
図1に示すような拍動情報Hを取得する。
【0024】
算出部20は、例えばCPU等の演算装置が機能することで実現される構成である。算出部20は、拍動情報Hに含まれる拍動毎の間隔(心拍間隔)に基づいて、拍動情報Hの所定時間毎に交感神経活性度と副交感神経活性度との相関係数を算出する。ここで、交感神経活性度とは、CSI(cardiac sympathetic index、以下、CSIと記載する)と呼ばれる交感神経活動の指標である。また、副交感神経活性度とは、CVI(cardiac vagal index、以下、CVIと記載する)と呼ばれる副交感神経活動の指標である。また、相関関数とは、ピアソンの積率相関関数によって算出される相関関数である。ここではCSIとCVIとのピアソンの積率相関係数を、交感神経・副交感神経相関係数(Sympathetic-Parasympathetic-Correlation、以下、SPCと記載する)と呼ぶ。相関係数は、一般的に、二変数の相関の有無を表す。SPCはCSIとCVIの相関の有無を表し、1に近い程正相関、0に近い程無相関、-1に近い程負相関であることを意味する。本実施形態では、被検者Pが集中状態であるときにSPCが1に近くなり、また、被検者Pが休息状態であるときにSPCが-1に近くなることを示す。このように、CSI及びCVIを用いたSPCの大小によって、被検者Pの集中状態及び休息状態を容易に把握することができる。なお、SPC導出において、ピアソンの積率相関係数だけでなく、スピアマンの順位相関係数又はケンドールの順位相関係数をSPCと同様に用いることができる。
算出部20は、拍動間隔算出部21と、プロット情報生成部22と、標準偏差算出部23と、活性度算出部24と、相関係数算出部25と、を備える。
【0025】
拍動間隔算出部21は、拍動情報Hに含まれる拍動の時間間隔(心拍間隔)を算出する。具体的には、拍動間隔算出部21は、拍動情報Hに含まれる拍動のR波間の時間間隔を算出する。
【0026】
プロット情報生成部22は、算出されたR波間の時間間隔に基づいて、プロット情報を作成する。具体的には、プロット情報生成部22は、
図3に示すように、n拍目の拍動のR波間隔をx軸とし、n+1拍目の拍動のR波間隔をy軸とした二次元グラフに対して、算出された時間間隔に基づく情報をプロットとして反映したプロット情報を生成する。このプロット情報は、いわゆるローレンツプロットと呼ばれるグラフである。
【0027】
標準偏差算出部23は、プロット情報に含まれるプロットについて標準偏差を算出する。標準偏差算出部23は、2種類の標準偏差を算出する。本実施形態において、標準偏差算出部23は、y=xに沿う方向のプロットの標準偏差と、y=-xに沿う方向のプロットの標準偏差を算出する。また、標準偏差算出部23は、算出した2種類の標準偏差のそれぞれを4倍した第1標準偏差(T、
図3参照)及び第2標準偏差(L、
図3参照)を算出する。
【0028】
活性度算出部24は、CSI及びCVIを算出する。具体的には、活性度算出部24は、T/Lを算出することで、CSIを算出する。また、活性度算出部24は、log(L×T)を算出することで、CVIを算出する。活性度算出部24は、例えば、30秒毎にCSI及びCVIを算出する。
【0029】
相関係数算出部25は、SPCを算出する。具体的には、相関係数算出部25は、以下の数1を計算することで、SPCを算出する。相関係数算出部25は、例えば、5分毎にSPCを算出する。
【数1】
【0030】
しきい値格納部30は、例えば、メモリ、ハードディスク等の二次記憶媒体である。しきい値格納部30は、被検者Pの状態を判断するために予め定められたしきい値を格納する。具体的には、しきい値格納部30は、被検者Pの状態を判断する相関係数に対応して予め定められたしきい値を格納する。本実施形態において、しきい値格納部30は、2つのしきい値(第1しきい値及び第2しきい値)を格納する。第1しきい値は、仕事中(集中状態)と判断するしきい値であり、第2しきい値よりも高い値のしきい値である。第2しきい値は、休息中(休息状態)と判断するしきい値であり、第1しきい値よりも低い値のしきい値である。
【0031】
判断部40は、例えばCPU等の演算装置が機能することで実現される構成である。判断部40は、算出部20によって算出された相関係数に基づいて、被検者Pの状態を判断する。具体的には、判断部40は、しきい値格納部30からしきい値(第1しきい値及び第2しきい値)を取得する。ここで、第1しきい値は、第2しきい値以上の値である。判断部40は、算出された相関係数と、取得したしきい値(第1しきい値及び第2しきい値)とを比較する。判断部40は、比較の結果、被検者Pの状態を判断する。具体的には、判断部40は、比較の結果、被検者Pの状態を2種類以上に分類する。判断部40は、例えば、被検者Pの状態として、仕事中(集中状態)、仕事中(集中状態)及び休息中(休息状態)の移行期、休息中(休息状態)の3つの状態を判断する。本実施形態において、相関係数が休息中と判断するしきい値(第2しきい値)よりも低い場合に、判断部40は、被検者Pを休息中と判断する。相関係数が仕事中と判断するしきい値(第1しきい値)よりも低く、且つ休息中と判断するしきい値(第2しきい値)よりも高い場合に、判断部40は、被検者Pを仕事中及び休息中の移行期と判断する。相関係数が仕事中と判断するしきい値(第1しきい値)以上である場合に、被検者Pを仕事中と判断する。
【0032】
出力制御部50は、いわゆるグラフィックモジュールであり、出力部60への出力を制御する構成である。出力制御部50は、
図3で示すように、プロット情報生成部22によって生成されるローレンツプロットを出力部60に出力させるように制御してもよい。出力制御部50は、相関係数を時系列で並べて出力部60に出力させるように制御してもよい。出力制御部50は、後述する
図8に示すように、CSIの増減を濃淡で表したヒートマップとして出力部60に出力させる制御をしてもよい。出力制御部50は、後述する
図9に示すように、CVIの増減を濃淡で表したヒートマップとして出力部60に出力させる制御をしてもよい。出力制御部50は、例えば、SPCについて、折れ線グラフ、又は
図4に示すように、SPCの増減を濃淡で表したヒートマップとして出力部60に出力させるように制御してもよい。また、出力制御部50は、仕事中の状態と休息中の状態とをより明確に出力するために、連続して算出されたSPCを二次以上の高次関数による回帰曲線として出力部60に出力させるように制御してもよい。
【0033】
出力部60は、いわゆるモニタ等の表示装置である。出力部60は、出力制御部50によって制御された情報を表示する。
【0034】
次に、本実施形態に係る情報処理装置1の動作を
図5及び
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
まず、情報処理装置1は、センサ100から拍動情報Hを取得する(ステップS1)。拍動間隔算出部21は、拍動情報Hに含まれる拍動の時間間隔(R波間隔)を取得する。プロット情報生成部22は、拍動間隔算出部21によって取得された拍動の時間間隔に基づいて、
図3に示すようなプロット情報を生成する。
【0036】
次いで、相関係数算出部25は、拍動情報Hの取得から第1所定時間(本実施形態では30秒)を経過したか否かを判断する(ステップS2)。第1所定時間が経過した場合(ステップS2_YES)、ステップS3へ進む。一方、第2所定時間が経過していない場合(ステップS2_No)、ステップS1へ戻る。なお、取得部10は、第1所定時間が経過した場合であっても、拍動情報Hの取得を継続してもよい。
【0037】
標準偏差算出部23は、第1標準偏差(T)及び第2標準偏差(L)を算出する。次いで、活性度算出部24は、CSIを算出する(ステップS3)。また、活性度算出部24は、CVIを算出する(ステップS4)。
【0038】
相関係数算出部25は、拍動情報Hの取得から第2所定時間(本実施形態では5分)を経過したか否かを判断する(ステップS5)。第2所定時間が経過した場合(ステップS5_Yes)、ステップS6へ進む。第2所定時間が経過していない場合(ステップS5_No)、ステップS1へ戻る。
【0039】
相関係数算出部25は、算出されたCSI及びCVIを用いてSPCを算出する(ステップS6)。次いで、判断部40は、算出されたSPCを取得する。また、判断部40は、しきい値格納部30からしきい値(第1しきい値及び第2しきい値)を取得する。判断部40は、取得したSPCと、第2しきい値とを比較する(ステップS7)。
【0040】
取得したSPCが休息中(休息状態)を示す第2しきい値よりも低い場合(ステップS7_Yes)、ステップS8へ進む。一方、取得したSPCが第2しきい値よりも高い場合(ステップS7_No)、ステップS9へ進む。
【0041】
SPCが第2しきい値よりも低いことに基づいて、判断部40は、被検者Pを休息中(休息状態)と判断する(ステップS8)。出力制御部50は、判断部40による判断結果を出力部60に出力させる。即ち、出力制御部50は、被検者Pを休息中(休息状態)と判断した判断結果を出力部60に出力させる。
【0042】
ステップS8において、取得したSPCが第2しきい値よりも高い場合、判断部40は、取得したSPCと第1しきい値とを比較する(ステップS9)。取得したSPCが第1しきい値以上である場合(ステップS9_Yes)、ステップS10へ進む。一方、取得したSPCが第1しきい値よりも低い場合(ステップS9_No)、ステップS11へ進む。
【0043】
ステップS9において、取得したSPCが第2しきい値以上である場合、判断部40は、被検者Pを仕事中(集中状態)と判定する(ステップS10)。出力制御部50は、判断部40による判断結果を出力部60に表示させる。即ち、出力制御部50は、被検者Pを仕事中と判断した判断結果を出力部60に出力させる。
【0044】
ステップS9において、取得したSPCが第2しきい値よりも低い場合、判断部40は、被検者Pを休息中及び仕事中の間の移行期と判断する(ステップS11)。出力制御部50は、判断部40による判断結果を出力部60に表示させる。即ち、出力制御部50は、被検者Pを移行期と判断した判断結果を出力部60に出力させる。
【0045】
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
【0046】
情報処理装置1の全部又は一部は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組合せにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。ハードウェアで構成する場合、サーバの一部又は全部を、例えば、LSI(Large Scale Integrated circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路(IC)で構成することができる。
【0047】
情報処理装置1の備える機能の全部又は一部をソフトウェアで構成する場合、本実施形態に含まれる情報処理装置1の動作の全部又は一部を記述したプログラムを記憶した、ハードディスク、ROM等の記憶部、演算に必要なデータを記憶するDRAM、CPU、及び各部を接続するバスで構成されたコンピュータにおいて、演算に必要な情報をDRAMに記憶し、CPUで当該プログラムを動作させることで実現することができる。
【0048】
また、情報処理装置1の備える各機能を、適宜1つ又は複数のサーバ上で実行する構成としてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、情報処理装置1の備える各機能を実現してもよい。
【0049】
プログラムは、様々なタイプのコンピュータ可読媒体(computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。コンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。コンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。具体的には、SPCを用いた被検者Pの状態を判断する実施例1と、仕事中及び休息中を判断するしきい値を決定する実施例2とを以下に説明する。
【0051】
[実施例1]
1人の被検者Pの心拍を拍動情報Hとして継続的に取得して、30秒毎にCSI及びCVIを算出した。また、5分毎にSPCを算出して、しきい値(第1しきい値及び第2しきい値)と比較した。6日間測定した結果、
図7に示すようなSPCのヒートマップが得られた。
図7に示すように、SPCには時間に応じて大きな差が出ることがわかった。そして、仕事中(集中状態)であれば、SPCが比較的大きくなり、休息中(休息状態)であれば、SPCが比較的小さくなることがわかった。これにより、集中状態にある仕事中と、休息状態にある休息中とを区別可能であることがわかった。
【0052】
これに対し、
図8に示すように、CSIのヒートマップを作成した。
図7のSPCのヒートマップと比べたところ、SPCのヒートマップにおいて、仕事中及び休息中の差がより明確になることがわかった。
【0053】
また、
図9に示すように、CVIのヒートマップを作成した。
図7のSPCのヒートマップと比べたところ、こちらにおいても、SPCのヒートマップにおいて、仕事中及び休息中の差がより明確になることがわかった。
【0054】
[実施例2]
SPCにおいて、仕事中及び休息中を判別するしきい値(第1しきい値及び第2しきい値)を見つけるため、SPCの6日目について、しきい値(θSPC)を0.1刻みでスクリーニングした。各しきい値について、以下のWratio、Rratio、Totalを算出した。ここで、[]nは、値の個数を示す。
Wratio=[仕事中の値>θ]n/[仕事中の値]n
Rratio=[休息中の値≦θ]n/[休息中の値]n
Total=Wratio+Rratio
【0055】
これに対し、CSI及びCVIについてもしきい値(θCSI、θCVI)を見つけるため、6日目について、しきい値を0.1刻みでスクリーニングした。CSIについては、SPCと同様の手法でWratio,Rratio、Totalを算出した。一方、CVIについては、以下の式でWratio、Rratio、Totalを算出した。
Wratio=[仕事中の値≦θ]n/[仕事中の値]n
Rratio=[休息中の値>θ]n/[休息中の値]n
Total=Wratio+Rratio
【0056】
その結果、
図10~
図12に示すようなグラフを得ることができた。Wratio、Rratio共に、縦軸でより1.0に近ければ近い程、より正確に仕事中及び休息中を判断可能であると考えられる。即ち、Wratioが1.0に近ければ近い程、仕事中の状態を仕事中と判断出来ている割合が多いことを示す。また、Rratioが1.0に近ければ近い程、休息中の状態を休息中と判断できている割合が多いことを示す。交点Cを最適しきい値として、交点Cに対して最大となるWratio_max及びRratio_maxは以下の通りであった。
【表1】
【0057】
以上のように、SPCが、CSI及びCVIに比べて、仕事中及び休息中と判別できる割合が高いことがわかった。これにより、SPCがCSI及びCVIに比べて、被検者Pの状態をより高い確度で判別できることがわかった。
【0058】
以上の一実施形態の情報処理装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
【0059】
(1)本実施形態に係る情報処理装置1は、拍動情報Hとして取得した被検者Pの拍動に基づいて、被検者Pの状態を判断する情報処理装置1であって、拍動情報Hに含まれる拍動毎の間隔に基づいて、拍動情報Hの所定時間毎に交感神経活性度と副交感神経活性度との相関係数を算出する算出部20と、算出部20によって算出された相関係数に基づいて、被検者Pの状態を判断する判断部40と、を備える。被検者Pの状態をより明確に判断できる相関係数を用いることで、より正確に被検者Pの状態を判断することができる。
【0060】
(2)算出部20は、拍動のR波間の時間間隔に基づいて相関係数を算出する。R波を基準とすることで、被検者Pの拍動をより取得しやすくなる。
【0061】
(3)判断部40は、交感神経活性度及び副交感神経活性度の共分散と、交感神経活性度の標準偏差と、副交感神経活性度の標準偏差とに基づいて、相関係数を算出する。これにより、より判断に適した相関係数を用いて被検者Pの状態を判断することができる。
【0062】
(4)算出部20は、交感神経活性度及び副交感神経活性度の共分散をa、交感神経活性度の標準偏差をb、副交感神経活性度の標準偏差をcとして、相関係数dを、
d=a/(b×c)
で算出する。これにより、より判断に適した相関係数を用いて被検者Pの状態を判断することができる。
【0063】
(5)判断部40は、相関係数dの所定のしきい値に基づいて、被検者Pの状態を2種類以上に分類する。これにより、被検者Pの状態をより適切な状態に分類することができる。
【0064】
(6)判断部40は、相関係数が所定のしきい値よりも低い場合に被検者Pの状態を休息状態と判断し、所定のしきい値よりも高い場合に被検者Pの状態を集中状態と判断する。被検者Pの状態を相関係数のしきい値を用いて判断することで、実際の被検者Pの状態により近い状態に判断することができる。
【0065】
(7)情報処理装置1は、判断部40によって判断された被検者Pの状態を出力する出力部60と、出力部60による出力を被検者Pの状態毎に異なって表示させる出力制御部50と、
を更に備える。これにより、被検者Pの状態をより識別し易く表示することができる。
【0066】
(8)出力制御部50は、相関係数を時系列で並べて出力部60に出力させる。これにより、被検者Pの状態の移り変わりをよりわかりやすく表示することができる。
【0067】
以上、本発明の情報処理装置及びプログラムの好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態において、判断部40は、判断結果の正誤のフィードバック入力を受け付けることで、しきい値を学習するようにしてもよい。例えば、フィードバック入力において誤りが多い場合には、判断部40は、しきい値について、正しい値を出力可能な程度に補正するようにしてもよい。例えば、判断部40は、
図12におけるしきい値を、より仕事中と判断する方向に移動する補正をしてもよい。また、判断部40は、
図12におけるしきい値を、より休息中と判断する方向に移動する補正をしてもよい。これにより、SPCの個人差に応じて補正して、より正確に被検者Pの状態を判断可能な情報処理装置1を提供することができる。
【0069】
また、上記実施形態において、しきい値は、第1しきい値及び第2しきい値を含むとして説明されたが、これに制限されない。例えば、しきい値は、より複数のしきい値を含んでもよい。判断部40は、より複数のしきい値のそれぞれとSPCとを比較することで、被検者Pの状態をより細分化して判断してもよい。更には、第1しきい値及び第2しきい値が同じ値であってもよい。判断部40は、被検者Pの状態を仕事中及び休息中の2つの状態で判断してもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、取得部10は、センサ100から拍動情報Hを取得するとして説明されたが、これに制限されない。取得部10は、センサ100から、取得時刻毎に拍動の電気信号を取得してもよい。算出部20は、拍動の電気信号を蓄積して拍動情報Hを生成してもよい。また、算出部20は、取得時刻ごとの拍動の電気信号をまとめて拍動情報Hとして、R波と推測された拍動を抽出して、R波間の間隔を算出してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 情報処理装置
10 取得部
20 算出部
40 判断部
50 出力制御部
60 出力部
P 被検者
H 拍動情報