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特許7219584プラズマ電子線処理インクジェット印刷装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】プラズマ電子線処理インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230201BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B41J2/01 121
B41J2/21
B41J2/01 305
B41J2/01 303
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018197387
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020062851
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
(72)【発明者】
【氏名】明瀬 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 大悟
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129123(JP,A)
【文献】特開2017-132895(JP,A)
【文献】特開2018-094758(JP,A)
【文献】特開2003-200565(JP,A)
【文献】特開2003-218099(JP,A)
【文献】特開2003-311940(JP,A)
【文献】特開2015-180529(JP,A)
【文献】特開2018-140784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色印刷用インクジェット印刷装置であって、被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動する複数色用インクジェット用ノズル、及び該複数色用インクジェット用ノズルの下流に、被印刷基剤上に印刷された複数色のインク表面に向けたプラズマ噴出口を設け、さらに該インクジェット用ノズルと該プラズマ噴出口に対する下流側に、被印刷基材の移動方向に向けられた電子線照射部を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクジェット印刷装置は、紫外線照射部を有さず、
光重合開始剤を含有しないインクを用いて印刷するためのインクジェット印刷装置。
【請求項2】
被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動する複数色用インクジェット用ノズル、及び該インクジェット用ノズルとは別にプラズマ噴出口を備えてなるインクジェット印刷部、及び該インクジェット印刷部に対して被印刷基材の移動方向下流側に電子線照射部を有する請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
複数色用の各インクジェット用ノズルを備えたヘッドが、該インクジェット用ノズルよりも下流側にプラズマ噴出口を有する請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
インクジェット印刷装置が多色印刷用であって、各色それぞれのインクジェット用ノズル毎にヘッドが構成され、その各色のインクジェット用ノズルを有する各ヘッドに対する下流に、プラズマ噴出口を設けたヘッドを設ける請求項2又は3に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
インクジェット印刷部において、プラズマ噴出口からみて被印刷基材の反対側に、被印刷基材の非印刷面側に接して、接地、負に帯電あるいは正に帯電させた基材を配置した請求項2~4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
該プラズマ噴出口を覆うカバーを有する請求項2~5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動するインクジェット用ノズルを備えたインクジェット印刷部、
及び該インクジェット印刷部を覆うカバーを設け、該カバー内にプラズマ噴出口を設け、さらに、該インクジェット印刷部に対して被印刷基材の移動方向下流側に電子線照射部を有する請求項2~6のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の表面方向に向いていない請求項7に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
プラズマ噴出口から噴出されるプラズマが、被印刷基材が移動する方向に向くように、プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の移動方向に向けられてなる請求項7又は8に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項10】
インクジェット印刷部において、プラズマ噴出口からみて被印刷基材の反対側に、被印刷基材の非印刷面側に接して、接地、負に帯電あるいは正に帯電させた基材を配置した請求項7~9のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項11】
被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動する複数色用インクジェット用ノズルを備えたインクジェット印刷部、
及び該インクジェット印刷部に対して被印刷基材の移動方向下流側にプラズマ噴出口を設け、
さらに該プラズマ噴出口に対して被印刷基材の移動方向下流側に電子線照射部を有する請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項12】
プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の表面方向に向いていない請求項11に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項13】
プラズマ噴出口から噴出されるプラズマが、被印刷基材が移動する方向に向くように、プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の移動方向に向けられてなる請求項11又は12に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項14】
プラズマ噴出口からみて被印刷基材の反対側に、被印刷基材の非印刷面側に接して、接地、負に帯電あるいは正に帯電させた基材を配置した請求項11~13のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項15】
該プラズマ噴出口を覆うカバーを有する請求項11~14のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項16】
2色以上のインクを印刷するためのラインヘッド方式のノズルを備えたインクジェット用ノズルと、各色のノズル毎に、被印刷基材の移動方向下流側に設けたプラズマ噴出口と、被印刷基材のインクに電子線を照射する電子線照射部と、を有し、
外線照射部を有さず、かつ重合開始剤を含有しないインクを用いて印刷するためのインクジェット印刷装置。
【請求項17】
2色以上のインクを印刷するためのラインヘッド方式のノズルを備えたインクジェット用ノズルと、その2色以上を印刷するためのノズル毎に、ラインヘッド方式のノズルからみて被印刷基材の移動方向下流側にプラズマ噴出口と、被印刷基材のインクに電子線を照射する電子線照射部と、を有し、
外線照射部を有さず、かつ重合開始剤を含有しないインクを用いて印刷するためのインクジェット印刷装置であって、
プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の表面方向に向いておらず、プラズマ噴出口から噴出されるプラズマが、被印刷基材が移動する方向に向くように、プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の移動方向に向けられてなるインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、インクジェット印刷直後の被印刷基材上のインクに対して、低酸素濃度下での紫外線照射を行ってインクの表層を高分子化した後、次いで電子線(以下「EB」ともいう)を照射して深部を高分子化して、全体を硬化させることは知られている。
また特許文献2に記載されているように、インクジェット印刷直後の被印刷基材上のインクに対して、酸素濃度20000ppm未満の雰囲気でコロナ放電処理を行ってインクの表層を重合した後、次いで電子線を照射して深部を重合して、全体を硬化させることは知られている。
これらの硬化手段によれば、インク中に光重合開始剤を配合させる必要がないとされているが、酸素濃度が低い雰囲気を必要とする。
【0003】
上記の背景技術によれば、光重合開始剤を含有しないエネルギー線重合性のインクに対して、確実に硬化させることができるものの、酸素濃度が特に低下した領域を形成させることが必要であった。特に特許文献1に記載の発明のように、結果的に紫外線の照射が必要なときがあり、現実には光重合開始剤を含有しないエネルギー線硬化型インクの表層を硬化させることが困難であった。
さらにコロナ放電処理による場合には、電極間の距離を数ミリ程度に十分に狭くしないと安定して処理を行うことが困難であった。このときには印刷用紙の厚さと移動する印刷用紙の上下動の程度によっては、印刷されたインク表面が硬化する前に、そのインクが電極に接触して印刷が乱れるおそれがある。また、コロナ放電処理の強度によっては、インクが付着していない、紙等の被印刷基材表面が変性する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-132895号公報
【文献】特許第6353618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光重合開始剤を含有しないインクを用いて印刷する場合であっても、確実に硬化させると共に、被印刷基材表面を変性させることがない印刷を行える装置を得ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の発明を完成するに至った。
1.複数色印刷用インクジェット印刷装置であって、被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動する複数色用インクジェット用ノズル、及び該複数色用インクジェット用ノズルの下流に、被印刷基剤上に印刷された複数色のインク表面に向けたプラズマ噴出口を設け、さらに及び該インクジェット用ノズルと該プラズマ噴出口に対する下流側に、被印刷基材の移動方向に向けられた電子線照射部を有するインクジェット印刷装置。
2.被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動する複数色用インクジェット用ノズル、及び該インクジェット用ノズルとは別にプラズマ噴出口を備えてなるインクジェット印刷部、及び該インクジェット印刷部に対して被印刷基材の移動方向下流側に電子線照射部を有する1に記載のインクジェット印刷装置。
3.複数色用の各インクジェット用ノズルを備えたヘッドが、該インクジェット用ノズルよりも下流側にプラズマ噴出口を有する2に記載のインクジェット印刷装置。
4.インクジェット印刷装置が多色印刷用であって、各色それぞれのインクジェット用ノズル毎にヘッドが構成され、その各色のインクジェット用ノズルを有する各ヘッドに対する下流に、プラズマ噴出口を設けたヘッドを設ける2又は3に記載のインクジェット印刷装置。
5.プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の表面方向に向いていない2~4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
6.プラズマ噴出口から噴出されるプラズマが、被印刷基材が移動する方向に向くように、プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の移動方向に向けられてなる2~5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
7.インクジェット印刷部において、プラズマ噴出口からみて被印刷基材の反対側に、被印刷基材の非印刷面側に接して、接地、負に帯電あるいは正に帯電させた基材を配置した2~6のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
8.該プラズマ噴出口を覆うカバーを有する2~7のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
9.被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動するインクジェット用ノズルを備えたインクジェット印刷部、
及び該インクジェット印刷部を覆うカバーを設け、該カバー内にプラズマ噴出口を設け、さらに、該インクジェット印刷部に対して被印刷基材の移動方向下流側に電子線照射部を有する2~8のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
10.プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の表面方向に向いていない9に記載のインクジェット印刷装置。
11.プラズマ噴出口から噴出されるプラズマが、被印刷基材が移動する方向に向くように、プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の移動方向に向けられてなる9又は10に記載のインクジェット印刷装置。
12.インクジェット印刷部において、プラズマ噴出口からみて被印刷基材の反対側に、被印刷基材の非印刷面側に接して、接地、負に帯電あるいは正に帯電させた基材を配置した8~11のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
13.被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動する複数色用のインクジェット用ノズルを備えたインクジェット印刷部、及び該インクジェット印刷部に対して被印刷基材の移動方向下流側にプラズマ噴出口を設け、さらに該プラズマ噴出口に対して被印刷基材の移動方向下流側に電子線照射部を有する1に記載のインクジェット印刷装置。
14.プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の表面方向に向いていない13に記載のインクジェット印刷装置。
15.プラズマ噴出口から噴出されるプラズマが、被印刷基材が移動する方向に向くように、プラズマ噴出口の開口部が被印刷基材の移動方向に向けられてなる13又は14に記載のインクジェット印刷装置。
16.プラズマ噴出口からみて被印刷基材の反対側に、被印刷基材の非印刷面側に接して、接地、負に帯電あるいは正に帯電させた基材を配置した13~15のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
17.該プラズマ噴出口を覆うカバーを有する13~16のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
18.2色以上のインクを印刷するためのラインヘッド方式のノズルを備えたインクジェット用ノズルと、各色のノズル毎に、被印刷基材の移動方向下流側に設けたプラズマ噴出口を有するインクジェット印刷装置。
19.2色以上のインクを印刷するためのラインヘッド方式のノズルを備えたインクジェット用ノズルと、その2色以上を印刷するためのノズル毎に、ラインヘッド方式のノズルからみて被印刷基材の移動方向下流側にプラズマ噴出口を有するインクジェット印刷装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の印刷装置によれば、インクジェット印刷において、2色以上のインクを印刷した後に、大気圧プラズマによって印刷されたインクの表面を硬化させること、及び、その後に電子線(EB)を照射して硬化することにより、該ドットの表面及び内面を共に確実に硬化させるので硬化膜の耐性が良好な画像が得られる装置を得ることができる。
また、各色の印刷後毎に大気圧プラズマを照射し、全色印刷後に電子線(EB)を照射して硬化する場合は、大気圧プラズマによってインクのドットの表面を硬化させるので、各色のインクのドットが重なっても滲むことがなく、高品質の画像が得られ、且つドットの表面及び内面を共に確実に硬化させるので硬化膜の耐性が良好な画像が得られる装置とすることができる。
加えて、大気圧プラズマを照射することにより、積極的にインクの硬化を行うと共に、インクの軌道が乱されたり、一旦印刷されたインクの被印刷面上での形状が気流により乱されたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リモート型大気圧プラズマ発生部の断面の模式図
図2-1】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を一体に設けた場合の図
図2-2】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を一体に設けた場合の図
図2-3】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を一体に設けた場合の図
図2-4】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を一体に設けた場合の図
図3-1】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を一体に設けた場合の図
図3-2】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を一体に設けた場合の図
図3-3】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を一体に設けた場合の図
図4】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を別体に設けた場合の図
図5】インクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を別体に設けた場合のプラズマ噴射装置のみを示した図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の装置に関して詳細に説明する。
<インクジェット印刷部>
本発明中のインクジェット印刷部としては、2種以上の色のインクを印刷するための各種の公知のインクジェット用ノズルを備えた構造、及び公知のインクジェット方式に対応したノズルを備えた構造を採用できる。
そしてインクジェット印刷部は、塗工紙、普通紙、各種樹脂フィルム、及び金属層や金属化合物層を有する積層フィルム等、インクジェット印刷を行うことが可能な公知の被印刷基材を対象に印刷を行うものであり、公知の原理のものを採用できる。
このようなインクジェット印刷部としては、インクジェット用ノズルを有するヘッドを、被印刷基材の移動方向に対して垂直方向、かつ被印刷基材表面に対して平行方向に移動するように備えてなるもの、又はラインヘッド方式のように固定したインクジェット用ノズルを備えてもよい。
なお、このとき、移送される被印刷基材を、一定の速度で回転するバックアップロールにより支持できるが、バックアップロールを設けなくてもよい。
インクジェット用ノズルは、1色以上の色に対応した1つ以上のノズルから構成される。印刷用データを演算して、色毎に正確な印刷個所(各ノズルからのインクの噴出の場所)を求め、この印刷場所に印刷できるように各インクジェット用ノズルからの各色インクの噴出のタイミングを求めて、この演算結果にもとづいて、インクジェット印刷を行う。
【0010】
(プラズマ噴出口(インクジェット用ノズルのヘッドと一体に設けた場合))
本発明におけるプラズマ噴出口は、図1に示す大気圧プラズマ照射装置10により形成した大気圧プラズマを導入し、被印刷基材上に印刷されたインクのドットの表面を硬化するために大気圧プラズマを照射するためのものである。
図1に示される大気圧プラズマ発生装置10は、吹き出し口を有する放電空間と、この放電空間に電界を発生させるために、0.5~5.0mm程度の間隔で互いに対向するように、絶縁体12を有する放電用の一対の電極11とを備えるプラズマ処理装置を用いる。このプラズマ処理装置では、前記放電空間にプラズマ生成用ガスGを供給すると共にこの放電空間内の圧力を大気圧近傍に維持し、更に前記放電用の一対の電極11に電圧を印加して、放電開始電圧を超えることで放電空間に放電を発生させると、放電空間内で大気圧プラズマPが生成する。
本発明において、プラズマ噴出口は複数の色のインクを印刷した後に、一括して、この複数のインクを同時に硬化させるためのものである。
【0011】
この大気圧プラズマ照射を行うためのプラズマ噴出口は、複数色用のシリアルヘッド方式の場合には、インクジェット用ノズルと同じヘッドの、被印刷基材の動きの下流側に設けられることもでき、またインクジェット用ヘッドとは別体に設けられ、任意に移動等させることができる。またラインヘッド方式のインクジェット用ノズルに、大気圧プラズマを噴射するプラズマ噴出口を一体に設けることもできる。
シリアルヘッド方式及びラインヘッド方式共に、インクジェット用ノズルと同じヘッドに設けるときには、ある2色以上のインクジェット用ノズルとプラズマ噴出口を同じヘッドに設け、このようなヘッドを1つ又は複数設置することができる。また、図2-1に示すように、複数色のそれぞれのインクジェット用ノズルNとプラズマ噴出口21を同じヘッドに設けることもできる。例えば、図2-2に示すように、CMYKの各色のノズルNの下流側に、色毎にプラズマ噴出口21を設けても良い。
さらに、図2-3に示すように、CMYKの複数のインクジェット用ノズルによる印刷の後に、まとめて大気圧プラズマPにより処理できるように、それらのインクジェット用ノズルの下流にプラズマ噴出口21を設けることもできる。図2-3においては4色のインクジェット用ノズルとその下流の大気圧プラズマ噴出口との組合せであるが、2色のインクジェット用ノズルとその下流に設けた大気圧プラズマ噴出口との組合せでもよい。1つのプラズマ噴出口の上流に設けるインクジェット用インクの色やインクの特性等として、2種以上のものを選択することもできる。
なお、図2-2及び2-3に示す配置は、シリアルヘッド方式及びラインヘッド方式共に設けることができる。
ここでラインヘッド方式は、図2-4にて斜め下方から見たように、被印刷基材Sの上方に、被印刷基材の幅方向を横切るように、複数のインクジェット用ノズルNとプラズマ噴出口21を設けてなる構造を基本とする。
さらに、プラズマ噴出口21を覆うカバーCを設け、そのカバー内の雰囲気中の大気圧プラズマの濃度を高めるように、カバー内に向けてプラズマ噴出口を設けることもできる。
また、本発明に使用する大気圧プラズマは、原料ガスがプラズマ化により変性したすべてのガスを含む。
プラズマ噴出口自体が、インクジェット印刷用の各色のノズルの間、または近傍に設けられ、これらのノズルと一体となって移動されるときには、印刷直後のインクに対して大気圧プラズマを照射し、好ましくは直径が1~10mmの範囲、さらに好ましくは1~5mmの範囲に対して大気圧プラズマを照射するものを採用できる。
【0012】
印刷中のインクジェット用ノズルは被印刷基材表面に対して往復運動させることもできる。このときには、複数色の印刷用インクジェット用ノズルの複数色のノズルの組毎に、その組の間に大気圧プラズマを噴射するノズルを設けても良い。さらに各色のノズルだけではなく、配列した各色のノズルの両端に位置するノズルのさらに外側(被印刷基材の幅方向外側)にも、それぞれ1つずつの大気圧プラズマを噴射するノズルを設けても良い。
ラインヘッド方式でインクジェット用ノズルが設けられるときにも同様に、複数色のインクにて印刷をしたあとに、その複数色のインクに対して大気圧プラズマを噴射できるように、プラズマ噴出口を設けても良い。
図3-1は図2-1の装置を横から見た断面図である。図3-1ではプラズマ噴出口21はインクジェット用ノズルNと同じ向きに大気圧プラズマが噴射されるように設けられている。このような構造の装置でも十分に印刷及び硬化させることができる。なお、プラズマ噴出口21を覆うカバーCを設けることができる。
しかしながら、さらに、大気圧プラズマを噴射するプラズマ噴出口21から噴射された大気圧プラズマによって、インクジェット用ノズルNの開口部に硬化されたインクが堆積しないことが必要である。このため、大気圧プラズマを噴射するプラズマ噴出口21から噴射される大気圧プラズマは、被印刷基材Sの表面に付着した未硬化のインクに当てられると共に、インクジェット用ノズルNに接触しないように、下記A又はBのように設けた大気圧プラズマ用のプラズマ噴出口21から噴射されることが必要である。
A.図3-2に示すように、大気圧プラズマが被印刷基材の移動方向と同じ方向に噴射されるように、大気圧プラズマを噴射するプラズマ噴出口21を、インクジェット用ノズルNに対して被印刷基材Sの移動方向の上流側で、かつ、被印刷基材Sに対して、インクジェット用ノズルNと同程度又はより近い位置に配置する。そして大気圧プラズマを噴射するプラズマ噴出口21は、印刷直後であって、かつインクジェット用ノズルNが移動したために、インクジェット用ノズルNに対して対向しない位置関係となったインクに対して大気圧プラズマを噴射する向きに設けられることができる。
B.図3-3に示すように、大気圧プラズマが被印刷基材Sの移動方向と逆方向に噴射されるように、大気圧プラズマを噴射するプラズマ噴出口21を、インクジェット用ノズルNに対して被印刷基材Sの移動方向の下流側で、かつ、被印刷基材Sに対して、インクジェット用ノズルNと同程度又はより近い位置に配置する。そして大気圧プラズマを噴射するプラズマ噴出口21は、印刷直後であって、かつインクジェット用ノズルNが移動したために、インクジェット用ノズルNに対して対向しない位置関係となったインクに対して大気圧プラズマを噴射する向きに設けられることができる。
【0013】
上記図3-2及び図3-3の装置を採用した場合、インクジェット用ノズルNの移動と、任意の色のインクの吐出に応じて、その任意の色のインクが被印刷基材に付着した直後に大気圧プラズマを照射することができる。かつ大気圧プラズマがインクジェット用ノズルNに接触しないので、インクジェット用ノズルNに硬化したインクが付着・堆積することがない。
上記図3-2及び図3-3の場合には、噴射直後の各色のインクに対して、次の色のインクが噴射される前のタイミングで、大気圧プラズマを当てることができる。
その結果として、次の色のインクが噴射されても、既に大気圧プラズマにより、少なくとも表面がある程度硬化されているため、次の色のインクは前の色のインクと混色することがなく、印刷の輪郭をより鮮明なものにすることができる。
なお別のインクジェット印刷装置として、図2に示すように、印刷に使用する全色のインクジェット用ノズルNを印刷ヘッドに設け、さらに各色に対応した複数のプラズマ噴出口21も同じ印刷ヘッドに設けることができる。または、3色や4色等の一部の複数色のインクジェット用ノズルを1つのヘッドに設け、それらの色のインクを硬化させるために、プラズマ噴出口21を設けることができる。または、そのようなヘッドをさらに1つ以上、かつインクの色は別の色であるようなヘッドも設けて、全体として全色のインクを噴射でき、それぞれのインクの表面をプラズマによって硬化させるようにしてもよい。
【0014】
(プラズマ噴出口(インクジェット用ノズルと別体に設けた場合))
本発明において、プラズマ噴出口は、インクジェット用ノズルのヘッドとは別に設けることができる。このときには、1色のみを印刷する1つ以上のヘッドを被印刷基材の移動方向に沿って配置する。又は、複数色の組合せのヘッドの下流側に、1つのプラズマ噴射装置を1つ以上設けることになる。
図4において、インクジェット用ノズルNは1色のインクを噴射するものである。多色印刷を行う場合には、このインクジェット用ノズルNを被印刷基材Sの移動方向を示す矢印の下流に必要な色の数だけ設けることになる。図4は、そのうちの1色のみを示す図であり、必要により設けたバックアップロールRに対向する位置にインクジェット用ノズルNを設けている。
【0015】
このインクジェット用ノズルNにより1色目のインクが印刷された後に、図1に示すプラズマ処理装置と同様のプラズマ処理装置40に移送される。ここでは、大気圧プラズマ生成用ガスGが導入され、噴出口を有し、絶縁体42により形成される放電空間と、この放電空間に電界を発生させるために、0.5~5.0mm程度の間隔で互いに対向するように放電用の一対の電極41とを備えるプラズマ処理装置を用いる。このプラズマ処理装置では、前記放電空間にプラズマ生成用ガスGを供給すると共にこの放電空間内の圧力を大気圧近傍に維持し、更に前記放電用の一対の電極41に電圧を印加して、放電開始電圧を超えることで放電空間に放電を発生させると、放電空間内で大気圧プラズマPが生成する。
そして生成した大気圧プラズマPはプラズマ噴出管43を通じて被印刷基材上のインクに照射される。このときカバー45を設けて、カバー45内の大気圧プラズマの濃度を高くすることができる。
ラインヘッド方式でインクジェットジェット印刷を行う場合には、そのラインヘッド方式の1色のインクを印刷するためのヘッド毎に、その下流側にプラズマ処理装置を設けることができ、また2色以上のインクを印刷するためのヘッド毎に、その下流側にプラズマ処理装置を設けることができる。そして全色のインクを印刷した後に、その下流側にプラズマ処理装置を設けて、すべての色のインクに対して大気圧プラズマを噴射することができる。
またプラズマ噴出管43に対して、反対側にバックアップロール44を設けて、このロールを接地したり、大気圧プラズマとは逆の電荷を印加して、被印刷基材Sの表面に大気圧プラズマを高濃度に存在させたりすることができる。
【0016】
なお図5には、大気圧プラズマ導入管103とその先端に設けたノズル102により大気圧プラズマを噴射し、これによりロール105上の被印刷基材104上のインクを処理する装置が示されている。そのような装置の構成を採用して、プラズマ噴出管43は固定されたものとし、かつ移送される被印刷基材の幅を全てに亘って処理できるようにプラズマ噴出管はスリット状のノズル開口部とすることができる。
または、図4において、複数色のインクを印刷可能なインクジェット用ノズルNが被印刷基材の幅方向に移動される動きを、インクジェット用ノズルNからプラズマ処理装置40に被印刷基材が移動する時間分だけ遅延して、プラズマ噴出管43をインクジェット用ノズルNと同様に動かすことにより、インクジェット用ノズルNにより印刷されたインクを重点的に対象として大気圧プラズマを照射してもよい。
そして図示はしていないが、このような図4に示すインクジェット用ノズルNを用いたインクジェット用インクによる印刷と、プラズマ処理装置40による印刷後のインクの表面硬化を、複数色のインクに対して1つのプラズマ処理装置を1つのセットとして、全体の印刷に必要な色の数と同じセット数を設ける。
【0017】
図4において、インクジェット用ノズルNの上流に、前処理用プラズマ処理装置30を設けることができる。この前処理用プラズマ処理装置30により、印刷前の被印刷基材表面に対してプラズマ処理を行うことになる。このようなプラズマ処理装置30による処理の結果、印刷時において、被印刷基材表面にはプラズマ種が残存している。そのため、インクジェット用ノズルNによってインクジェット印刷を行う際にも、そのプラズマ処理による荷電された基が残存することになり、印刷後において、印刷部の内部も若干硬化させることができる。
前処理用プラズマ処理装置30は、その基本的構成はプラズマ処理装置40と共通しており、大気圧プラズマ生成用ガスGが導入され、噴出口を有し、絶縁体32により形成される放電空間と、この放電空間に電界を発生させるために、0.5~5.0mm程度の間隔で互いに対向するように放電用の一対の電極31とを備えるプラズマ処理装置を用いる。
このプラズマ処理装置では、前記放電空間にプラズマ生成用ガスGを供給すると共にこの放電空間内の圧力を大気圧近傍に維持し、更に前記放電用の一対の電極31に電圧を印加して、放電開始電圧を超えることで放電空間に放電を発生させると、放電空間内で大気圧プラズマPが生成する。
そして生成した大気圧プラズマPはプラズマ噴出管33を通じて被印刷基材上のインクに照射される。このときカバー35を設けて、カバー35内の大気圧プラズマの濃度を高くすることができる。
またプラズマ噴出管33に対して、反対側にバックアップロール34を設けて、このバックアップロールを接地したり、大気圧プラズマとは逆の電荷を印加して、被印刷基材Sの表面に大気圧プラズマを高濃度に存在させたりすることができる。
【0018】
(接地又は荷電のための装置の設置)
インクジェット用ノズル及び/又は大気圧プラズマを噴射するノズルに対して、被印刷基材を挟んで対向する位置に、被印刷基材の非印刷面を支持するバックアップロール又はバーを設けることができる。そして、このバックアップロール又はバーは接地されるか、又はプラズマ粒子の極性と逆の極性に帯電させておくことにより、プラズマ噴出口から噴出されたプラズマが、方向を変えて被印刷基材上のインクに当たるように大気圧プラズマを引き寄せて、非印刷基材上のインク表面のプラズマ密度を向上させるような電荷を印加することができる。
またプラズマ噴出口と被印刷基材上の硬化前のインクを囲むように小さいカバーを設け、その内部にプラズマを噴出して、カバー内に存在するプラズマを、被印刷基材上に向けて移動させることができる。
このように、プラズマを含む気流が直接インクに当たらないようにすることで、被印刷基材上の硬化前のインクに気流が当たることによる、インクの1つ1つのドットや輪郭が拡がる可能性を削減できる。
また、このようなバックアップロール又はバーを設けることにより、同時にインクジェット用ノズル及びその周囲の雰囲気における大気圧プラズマの密度を低下させることができる。その結果として、インクジェット用ノズルに硬化したインクが付着・堆積することを防止することができる。
【0019】
(大気圧プラズマ発生装置)
プラズマ噴出口にプラズマを供給するプラズマ発生装置としては、リモート式大気圧プラズマ発生装置を採用できる。プラズマとはエネルギーの高い気体の状態で、電極間に高電圧を印加すると放電が生じ生成される。大気圧プラズマは大気圧下にて生成させたプラズマであり、通常は物質の表面を親水化する等の目的のために使用される。
このような装置として、例えば図1に示されるような、吹き出し口を有する放電空間と、この放電空間に電界を発生させるために、0.5~5.0mm程度の間隔で互いに対向するように放電用電極とを備えるプラズマ処理装置を用いる。このプラズマ処理装置では、前記放電空間にプラズマ生成用ガスGを供給すると共にこの放電空間内の圧力を大気圧近傍に維持し、更に前記放電用電極11に電圧を印加して、放電開始電圧を超えることで放電空間に放電を発生させると、放電空間内でプラズマが生成する。
【0020】
この大気圧プラズマPを噴出口から吹き出して被印刷基材に吹き付けることによって、プラズマ処理を行うことができる。このようなプラズマ発生装置としては、例えば積水化学工業株式会社製のRTシリーズ、APTシリーズ、ヤマトマテリアル株式会社などから提供されている適宜のプラズマ処理装置、特開2004-207145号公報、特開平11-260597号公報又は特開平3-219082号公報に記載の装置に使用されるプラズマ発生装置を用いることもできる。
また大気圧プラズマに使用するガスとしては、空気、酸素、窒素等を採用できる。
なお、上記の電極の間隔は印加する電圧にも関連するが、その電極には、高周波、パルス波、マイクロ波等の電界が印加されてプラズマが発生する。
【0021】
中でも電界の立ち上がり及び立ち下がりに要する時間(立ち上がり及び立ち下がりとは、電圧が連続して増加又は減少することである。)が短いことが好ましいことを考慮してパルス波を印加することが好ましい。このときの電界の立ち上がりや立ち下がりに要する時間としては10μs以下が好ましく、さらに好ましくは50ns~5μsである。
プラズマ発生装置において電極間に発生する電界強度は1kV/cm以上、好ましくは20kV/cm以上、及び/又は1000kV/cm以下、好ましくは300kV/cm以下である。
またパルス波により電界をかけるときには、その周波数として0.5kHz以上が好ましく、10~20MHz程度でも良く、50~150MHz程度でも良い。
さらに電極間に係る電力としては、40W/cm以下、好ましくは30W/cm以下である。
【0022】
上記の電極は、安定したプラズマ放電を得るために、ガスに直接接しない方が良い。そのため、電極の表面を任意の公知の手段により絶縁性被膜でコーティングする等して覆うことが望ましい。このような絶縁性被膜としては、石英、アルミナ等のガラス質材料やセラミック材料等を挙げられる。また場合により、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の、誘電率が2000以下の誘電体を採用することもできる。
【0023】
このようなリモート型大気圧プラズマ発生部は、例えば上記の公知の装置のうち、大気圧プラズマ発生部、プラズマ噴出管等からなるユニットと電源部からなるものである。この装置を基礎として、さらに、被印刷物基材を幅方向に均一に処理するために、大気圧プラズマを噴射する部分を、その幅方向に複数並べてなるものであったり、ノズルの形状をスリット状としたりするものである。
そのようなリモート型大気圧プラズマ発生部の断面の模式図を図1に示す。図1では一方が接地されて、表面に絶縁体12等による層が形成された一対の電極11の間をプラズマ化されるガスGが通過し、その通過時において、電極間にて印加された電圧によりガスGがプラズマ化される。図1では大気圧プラズマPを含む気流が印刷された被印刷基材Sの表面に直接当たるように示されているが、大気圧プラズマを直接当てないこともできる。
【0024】
なお、インクジェット用ノズルの上流側において、インクジェット用ノズルに対して供給される被印刷基材の印刷面に予め、大気圧プラズマを噴射するノズルから噴射された大気圧プラズマを照射することもできる。この場合には、被印刷基材の印刷面表面に、大気圧プラズマを短時間の間残留させることができ、その残留した状態において、インクジェット印刷を行うことができる。この結果、被印刷基材表面に付着したインクをその付着部において若干ではあっても硬化させることができる。
【0025】
<電子線照射部>
本発明における電子線照射部の機能は、その上流において、インクジェット用ノズルと一体に設けたプラズマ噴出口を使用、又はインクジェット用ノズルと別体に設けたプラズマ噴出口を使用して、インクジェット印刷と共に、またはインクジェット印刷の後に、大気圧プラズマの照射により各色のインクの表面が硬化されてなるインクに対して、その内部及び外部の全体を完全に硬化させることである。このような電子線照射部を採用することにより、大気圧プラズマを噴射させることを採用したことと併せて、インクジェット用インク組成物が重合開始剤やその助剤等を含有する必要がないものとすることができる。さらに隣接する各色の境界が滲むことがなく、コントラストが高い画像を形成させることができる。
電子線照射部を構成する電子線発生装置としては公知の装置を採用することができる。
そして電子線発生装置で発生した電子線を被印刷基材上のインクに照射するための導入・照射装置を設けることになる。
また電子線を照射する際の雰囲気としては、窒素や希ガス等の不活性ガスによる雰囲気とすることが、硬化を円滑に進める上で好ましい。
そしてこの電子線発生装置により発生した電子線が、被印刷基材表面のインクに対して均一に照射されるように、被印刷基材を電子線照射部に通過させることが必要である。電子線照射部内では、例えば電子線をカーテン状に被印刷基材の印刷面に照射させることができる。なお、電子線の加速電圧は、インクの比重と膜圧により適時変化させることができるが、20~300kVが適当である。電子線の照射量は0.1~20Mradの範囲が好ましい。
【0026】
このような電子線照射部により、大気圧プラズマを照射することと併せて、エネルギー線硬化型のインクジェット用印刷インクを硬化させることができる。さらに、重合開始剤、硬化剤、重合開始助剤等をインク内に配合しておく必要がない。これらの成分をインク内部に配合させなくても十分に硬化させることができる。
【実施例
【0027】
ライン型インクジェット印刷装置に、幅21cmのポリエチレンテレフタレートフィルムを印刷速度が12m/minとなるように供給し、下記表1に示す実施例及び比較例の組成物を用いて印刷を行い、それぞれ表1に示す条件にて硬化した。表中の組成物の配合量は質量である。
なお、色間プラズマ硬化ガス種N2がありの例は、各色のインクジェットインクにより印刷し、全色印刷後にガス種が窒素ガスである大気圧プラズマを、幅300mのスリットからガス流速30L/minで照射した例であることを示す。EB照射30kGray90kVありは、全色の印刷後に、窒素ガスによりパージした雰囲気下で、インクに対して90kVの電圧下により発生した電子線を30kGrayとなるように照射したことを示す。
【0028】
(塗膜取られ)
硬化塗膜表面に、摩擦子にカナキン3号を使用し、学振型摩擦堅牢度(株式会社大栄科学機器製作所)により500g200回往復し、塗膜が取れた状態を評価した。
〇:塗膜が取れない。
△:塗膜が少し取れる。
×:塗膜が取れる。
(タック性)
○:塗膜表面を指触して、その塗膜表面にタックがなかった。
×:塗膜表面を指触して、その塗膜表面にタックがあった。
【0029】
顔料分散剤:Solsperse(ソルスパース)39000(ルーブリゾール社製)
PO変性NPGDA:プロポキシ化変性(2)トリプロピレングリコールジアクリレート
(SR492、サートマー社製)
EO(3)変性トリメチロールプロパントリアクリレート:(SR354、サートマー社
製)
TPO:2,4,6-trimethylbenzoyl diphenyl phos
phine oxide(LAMBERTI社製)
Irgacure184(BASF社製)
DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
BYK333:シリコーン添加剤(BYK Chemie社製)
【表1】
【0030】
上記の表1によれば、各色一色のみの印字に対してプラズマ処理した場合、実施例によればカナキン3号により擦っても塗膜取られがなく、且つタック性がないものであった。これに対して、印字後にプラズマを照射しない場合には、塗膜取られが少し発生した。
またプラズマを照射してEBを照射しない場合には、塗膜取られが発生しタックがある印字となった。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示すように、4色のインクを用いて順にインクジェット印刷を行い、その後に初めてプラズマ処理とEO照射を順に行なった実施例8によれば、塗膜取られが発生せず、かつタック性がない印字となった。
これに対して、プラズマ照射を行わない比較例6によれば、塗膜取られが発生し、EB硬化を行わない比較例7によれば、塗膜取られが発生し、かつタック性が不良であった。
上記の各実施例によれば、本発明の装置により塗膜取られや、タック性がない印字とすることができる。
【0033】
10・・・大気圧プラズマ照射装置
11・・・一対の電極
12・・・絶縁体
21・・・プラズマ噴出口
30・・・前処理用大気圧プラズマ処理装置
31・・・一対の電極
32・・・絶縁体
33・・・プラズマ噴出管
34・・・バックアップロール
35・・・カバー
40・・・プラズマ処理装置
41・・・一対の電極
42・・・絶縁体
43・・・プラズマ噴出管
44・・・バックアップロール
45・・・カバー
G・・・プラズマ生成用ガス
P・・・大気圧プラズマ
S・・・被印刷基材
N・・・インクジェット用ノズル
C・・・カバー
R・・・バックアップロール
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5