(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20230201BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20230201BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230201BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230201BHJP
【FI】
B32B5/24 101
C08J9/00 A CES
C08L23/08
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2018216528
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】武田 安洋
(72)【発明者】
【氏名】重松 義武
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-178948(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096048(WO,A1)
【文献】特開2011-051242(JP,A)
【文献】特開平02-127445(JP,A)
【文献】特開平10-298322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60、55/00-55/30、
B29C 61/00-61/10、67/20
B32B 1/00-43/00
H01M 50/40-50/497
A61F 7/00- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状低密度ポリエチレン樹脂、充填剤およびオレフィンターポリマーを含有する樹脂組成物からなる多孔質フィルム
と、
前記多孔質フィルムの厚み方向一方側に配置される不織布と
を備え、
前記充填剤が脂肪酸系分散剤により表面処理されており、
前記充填剤の平均粒子径が、5μm以上であ
り、
前記多孔質フィルムが、一軸延伸多孔質フィルムであり、
王研式透気度が、500sec/100cc以下であることを特徴とする、
積層フィルム。
【請求項2】
前記充填剤の含有割合が、前記線状低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対して、200質量部以上、300質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の
積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質フィルム、および、それを備える積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てカイロなどに使用される袋体構成部材として、多孔質フィルムに不織布を貼着してなる積層フィルムが知られている。このような多孔質フィルムとしては、特許文献1が提案されている。
【0003】
特許文献1には、線状低密度ポリエチレン樹脂、充填剤およびオレフィンターポリマーを含有する樹脂組成物からなる多孔質フィルムが開示されている。特許文献1の多孔質フィルムは、機械的強度が良好であり、ムラが少ない。
【0004】
ところで、近年、「めぐりズム(登録商標)」に代表される暖かい水蒸気を口などの対象部に当てる蒸気温熱マスクが提案されている(特許文献2参照。)。この蒸気温熱マスクでは、温熱の水蒸気発生部(例えば、使い捨てカイロと保水シートとのセット)が収容されており、その水蒸気発生部は、呼気が通過するように、マスクの中央部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-295649号公報
【文献】特開2017-225813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸気温熱マスクの水蒸気発生部では、呼気が通過するため、息がし易いように設計することが求められている。しかしながら、特許文献1の多孔質フィルムを水蒸気発生部の使い捨てカイロに使用すると、通気性が不十分であり、呼吸が苦しくなる不具合が生じる。
【0007】
本発明は、高い通気性を有する多孔質フィルムおよび積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、線状低密度ポリエチレン樹脂、充填剤およびオレフィンターポリマーを含有する樹脂組成物からなる多孔質フィルムであって、前記充填剤が脂肪酸系分散剤により表面処理されており、前記充填剤の平均粒子径が、5μm以上である、多孔質フィルムを含む。
【0009】
本発明[2]は、前記充填剤の含有割合が、前記線状低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対して、200質量部以上、300質量部以下である、[1]に記載の多孔質フィルムを含む。
【0010】
本発明[3]は、[1]または[2]に記載の多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムの厚み方向一方側に配置される不織布とを備える、積層フィルムを含む。
【0011】
本発明[4]は、王研式透気度が、500sec/100cc以下である、[3]に記載の積層フィルムを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多孔質フィルムおよびそれを備える積層フィルムによれば、脂肪酸系分散剤により表面処理されている充填剤を含有し、充填剤の平均粒子径が、5μm以上であるため、通気性(透気性)に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の多孔質フィルムの一実施形態の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示す多孔質フィルムを備える積層フィルムの側断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図3に示す積層フィルムを備えるカイロの側断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側、第1方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側、第1方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0015】
1.多孔質フィルム
本発明の一実施形態である多孔質フィルム1は、
図1に示すように、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有し、上下方向と直交する面方向に延び、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0016】
多孔質フィルム1は、線状低密度ポリエチレン樹脂、充填剤およびオレフィンターポリマーを含有する樹脂組成物からフィルム状に形成されている。
【0017】
線状低密度ポリエチレン樹脂は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。
【0018】
α-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチルペンテン-1などが挙げられる。
【0019】
線状低密度ポリエチレン樹脂の密度は、例えば、910kg/m3以上、925kg/m3以下である。
【0020】
線状低密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、例えば、1.0g/10min以上、好ましくは、1.5g/10min以上であり、また、例えば、10g/10min以下、好ましくは、5.0g/10min以下である。MFRは、JIS K7210(1999)に準拠する測定方法によって、荷重2.16kgの条件にて、求められる。
【0021】
線状低密度ポリエチレン樹脂の含有割合は、樹脂組成物全量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、15質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0022】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カオリン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカなどの無機充填剤が挙げられる。好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0023】
充填剤の平均粒子径は、5μm以上であり、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、15μm以上である。また、充填剤の平均粒子径は、例えば、30μm以下、好ましくは、25μm以下、より好ましくは、20μm以下である。充填剤の平均粒子径が上記下限を下回る場合は、通気性が不十分である。また、充填剤の平均粒子径が上記上限を上回る場合は、樹脂組成物をシート状に押出し、延伸する際に、大きな孔が生じて、多孔質フィルムが裂けるおそれが生じる。
【0024】
充填剤の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によるメジアン径によって算出される。
【0025】
充填剤は、脂肪酸系分散剤で表面処理されている。すなわち、充填剤の表面に、脂肪酸系分散剤が付着されている。これにより、通気性を向上させることができる。
【0026】
脂肪酸系分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0027】
脂肪酸としては、直鎖または分岐の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などが挙げられる。
【0028】
脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸メチルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。脂肪酸エステルには、これらに酸化エチレンなどを付加した脂肪酸エステル・エーテルなども含まれる。好ましくは、脂肪酸メチルエステルが挙げられる。
【0029】
脂肪酸アミドとしては、例えば、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタインなどの脂肪酸アミドプロピルベタインなどが挙げられる。
【0030】
脂肪酸系分散剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。脂肪酸系分散剤として、好ましくは、脂肪酸エステルが挙げられる。
【0031】
脂肪酸系分散剤の分解温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上であり、また、例えば、300℃以下、好ましくは、250℃以下である。また、融点は、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上であり、また、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。
【0032】
充填剤の表面処理は、充填剤に脂肪酸系分散剤を添加し混合することによって実施する。この際、脂肪酸系分散剤は、粉末などの固体であってもよく、また、液体であってもよい。
【0033】
脂肪酸系分散剤の付着割合は、充填剤100部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0034】
充填剤の含有割合は、樹脂組成物全量に対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。また、線状低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対して、充填剤の含有割合は、例えば、200質量部以上、好ましくは、230質量部以上、より好ましくは、260質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、280質量部以下である。充填剤の含有割合が上記下限以上であれば、通気性をより一層良好にすることができる。また、充填剤の含有割合が上記上限以下であれば、樹脂組成物をシート状に押出する場合に、成膜性を良好にすることができ、均一に成膜することができる。
【0035】
オレフィンターポリマーは、オレフィンモノマーを含む3種類以上のモノマーからなる共重合体である。オレフィンターポリマーとしては、例えば、エチレンと、α―オレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン)と、二重結合を有するモノマー(例えば、ジエン類)とを含むモノマー成分の共重合体が挙げられる。好ましくは、エチレンと、プロピレンまたは1-ブテンと、ジエン類とを含むモノマー成分の共重合体(すなわち、EPDM系ポリマー)が挙げられる。
【0036】
EPDM系ポリマーを構成するジエン類としては、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、1,4-シクロへプタジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,6-シクロドデカジエン、1,7-シクロドデカジエン、1,5,9-シクロドデカトリエン、ノルボルナジエン、メチレンノルボルネン、メチル-テトラヒドロインデン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-へプタジエン、2-メチルペンタジエン-1,4などが挙げられる。好ましくは、5-エチリデン-2-ノルボルネンが挙げられる。
【0037】
ジエン類の含有割合(ジエン含量)は、例えば、2.0%以上、好ましくは、7.0%以上であり、例えば、15.0%以下、好ましくは、12.0%以下である。ジエン含量が上記下限以上であれば、多孔質フィルム1の機械的強度に優れる。ジエン含量は、例えば、ASTM D 6047に準拠して測定することができる。
【0038】
オレフィンターポリマーのムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、例えば、5以上、好ましくは、10以上であり、また、例えば、90以下、好ましくは、50以下である。ムーニー粘度は、例えば、ASTM D 1646に準拠して測定することができる。
【0039】
オレフィンターポリマーの含有割合は、樹脂組成物全量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。また、線状低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対して、オレフィンターポリマーの含有割合は、例えば、5質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。オレフィンターポリマーの含有割合が上記範囲内であれば、多孔質フィルム1の機械的強度に優れる。
【0040】
樹脂組成物は、上記成分以外に、発泡防止剤を適宜の割合で含有することができる。これにより、多孔質フィルム1の製造時に、充填剤に含まれる水分によって発泡し、多孔質フィルム1に亀裂が発生することを抑制することができる。
【0041】
発泡防止剤としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛などのアルカリ土類金属酸化物が挙げられる。発泡防止剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。
【0042】
樹脂組成物は、上記成分以外にも、例えば、軟化剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、顔料、滑材、蛍光剤などの公知の添加剤を適宜の割合で含有することもできる。
【0043】
2.多孔質フィルムの製造方法
多孔質フィルム1の製造方法では、まず、上記した各成分を、上記した含有割合において配合し、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、バンバリーミキサー、編シェルミキサー、二軸混練機などの混練機によって溶融混練して、混練物として調製する。
【0044】
混練物(樹脂組成物)の溶融温度は、脂肪酸系分散剤の分解温度以下であればよく、例えば、100℃以上、200℃以下である。
【0045】
次いで、得られた混練物を、例えば、カレンダー法、溶融押出成形(インフレーション法、Tダイ法など)、プレス法などにより、樹脂組成物をシート状に形成する。
【0046】
次いで、シート状に形成した樹脂組成物を、延伸する。延伸は、1軸延伸であってもよく、また、2軸延伸であってもよい。延伸によって、シート状の樹脂組成物に、充填剤が存在する箇所を起点に、隙間(空孔)が生じ、その結果、多孔質化される。
【0047】
1軸延伸における延伸倍率は、例えば、2.0倍以上、好ましくは、3.0倍以上であり、また、例えば、10倍以下、好ましくは、5.0倍以下である。2軸延伸における延伸倍率は、延伸方向(MD方向またはTD方向)に対して、それぞれ、例えば、1.5倍以上、好ましくは、2.0倍以上であり、また、例えば、5.0倍以下、好ましくは、4.0倍以下である。
【0048】
容易に樹脂組成物を延伸させるために、好ましくは、加熱を実施する。加熱温度は、上記溶融温度以下であればよく、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。
【0049】
これにより、多孔質フィルム1が得られる。
【0050】
多孔質フィルム1の厚さは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0051】
多孔質フィルム1の透気度(王研式)は、例えば、500sec/100cc以下、好ましくは、100sec/100cc以下、より好ましくは、50sec/100cc以下であり、また、例えば、10sec/100cc以上である。透気度は、王研式透気度計を用いて測定することができる。
【0052】
この多孔質フィルム1は、線状低密度ポリエチレン樹脂、充填剤およびオレフィンターポリマーを含有する樹脂組成物から形成されているため、機械的強度に優れる。また、充填剤が脂肪酸系分散剤によって表面処理されており、充填剤の平均粒子径が、5μm以上であるため、通気性に優れる。
【0053】
この多孔質フィルム1は、例えば、後述する積層フィルムの一部材として用いることができる。
【0054】
3.積層フィルム
図2に示すように、本発明の一実施形態である積層フィルム2は、多孔質フィルム1と不織布3とが貼り合わされてなり、具体的には、積層フィルム2は、多孔質フィルム1と、接着剤層4と、不織布3とを厚み方向に順に備える。すなわち、積層フィルム2は、多孔質フィルム1と、多孔質フィルム1の上側に配置される接着剤層4と、接着剤層4の上側に配置される不織布3とを備える。
【0055】
接着剤層4は、多孔質フィルム1の上面に、部分的に配置されている。すなわち、接着剤層4のパターン(平面視形状)は、例えば、ドット形状、ストライプ形状、格子形状、海島形状などが挙げられる。
【0056】
接着剤層4の秤量(塗布量)は、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、1g/m2以上であり、また、例えば、10g/m2以下、好ましくは、5g/m2以下である。
【0057】
接着剤層4としては、例えば、ホットメルト接着剤、感圧接着剤、熱硬化型接着剤などが挙げられる。好ましくは、ホットメルト接着剤が挙げられる。
【0058】
ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン酢酸ビニル系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト、ゴム系ホットメルト、ポリアミド系ホットメルトなどが挙げられる。
【0059】
感圧接着剤(粘着剤)としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。
【0060】
熱硬化型接着剤としては、例えば、例えば、エポキシ系熱硬化型接着剤、ウレタン系熱硬化型接着剤、シリコーン系熱硬化型接着剤、アクリル系熱硬化型接着剤などが挙げられる。
【0061】
接着剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。
【0062】
不織布3は、接着剤層4の上面に配置されている。不織布3の平面視形状は、多孔質フィルム1と略同一形状である。
【0063】
不織布3は、例えば、綿、羊毛、麻、パルプ、絹、鉱物繊維などの天然繊維、例えば、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維)、レーヨン、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維などの化学繊維、例えば、ガラス繊維などの繊維から形成されている。これらの中でも、耐熱性、耐薬品性、取扱い性などの観点から、好ましくは、化学繊維が挙げられ、より好ましくは、ポリエステル繊維が挙げられる。
【0064】
不織布3の製法としては、例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ステッチボンド法、ニードルパンチ法、メルトブロー法、スパンレース法、スチームジェット法などが挙げられる。好ましくは、スパンボンド法が挙げられる。
【0065】
不織布3の目付量は、例えば、10g/m2以上、好ましくは、20g/m2以上であり、また、例えば、100g/m2以下、好ましくは、50g/m2以下である。
【0066】
不織布3の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0067】
積層フィルム2は、例えば、多孔質フィルム1を準備して、その上面に部分的に、公知の塗工方法(例えば、スプレー法、ダイコーター法、ロールコーター法)によって接着剤層4を配置し、続いて、その上面に不織布3を配置することにより、製造することができる。
【0068】
ホットメルト接着剤や熱硬化性接着剤を用いる場合は、必要に応じて、接着剤層4を加熱する。
【0069】
積層フィルム2の透気度(王研式)は、例えば、500sec/100cc以下、好ましくは、100sec/100cc以下、より好ましくは、50sec/100cc以下であり、また、例えば、10sec/100cc以上である。積層フィルム2の透気度が上記上限以下であれば、通気性が良好であり、積層フィルム2を口に当接しても呼吸がし易い。
【0070】
積層フィルム2の厚みは、例えば、20μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、800μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0071】
4.用途
積層フィルム2は、例えば、使い捨てカイロの袋体として用いることができる。優れた通気性の観点から、蒸気温熱具(例えば、蒸気温熱マスク)に収容される使い捨てカイロの袋体に好適に用いられる。
【0072】
積層フィルム2を使い捨てカイロ(好ましくは、蒸気温熱マスク用カイロ)の袋体として用いる場合、
図3に示すように、使い捨てカイロ5は、積層フィルム2と、多孔質フィルム1に対向配置される対向フィルム6と、これらの間に配置される発熱体7とを備える。
【0073】
対向フィルム6の平面視形状は、積層フィルム2と略同一形状である。対向フィルム6は、その厚み方向一方面が多孔質フィルム1と向かい合うように、積層フィルム2の厚み方向一方側に配置されている。
【0074】
対向フィルム6としては、例えば、上記した不織布3、例えば、上記した積層フィルム2、例えば、ポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどのプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0075】
対向フィルム6の周端部と積層フィルム2との周端部とは、互いに接着剤などにより接合されている。これにより、対向フィルム6および積層フィルム2は、一体となって、袋体をなしている。
【0076】
発熱体7は、鉄粉などを含有する発熱材料であり、対向フィルム6および積層フィルム2との間に収容されている。
【実施例】
【0077】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0078】
(実施例1)
炭酸カルシウム(平均粒子径12.3μm)100質量部に、脂肪酸系分散剤(脂肪酸メチルエステル、分解温度200℃、融点50℃)3質量部を混合することにより、炭酸カルシウムを表面処理した。
【0079】
表面処理した炭酸カルシウム250質量部、線状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、「ウルトゼックス2022L」、919kg/m3、MFR2.0g/10min)100質量部、および、オレフィンターポリマー(三井化学製、「EPT K-9720」、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネンターポリマー、ムーニー粘度20(ML(1+4)100℃)、ジエン含量10.4%)40質量部を混合し、160℃で溶融混練することにより、樹脂組成物を得た。
【0080】
得られた樹脂組成物を、Tダイ法で溶融押出し、1軸ロール延伸方式により延伸温度100℃の条件で、延伸倍率4.0倍となるように長手方向(搬送方向)に延伸した。これにより、厚み120μmの多孔質フィルムを得た。
【0081】
ポリエステル製スパンボンド不織布に、スプレー法にて、ホットメルト型の熱可塑性共重合ポリアミド系接着剤を部分的に塗布して、その上面に多孔質フィルムを配置することにより、不織布に多孔質フィルムを貼り合わせた。これにより、実施例の積層フィルムを得た。
【0082】
(実施例2)
炭酸カルシウムの含有割合を、線状低密度ポリエチレン100質量部に対して280質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0083】
(実施例3)
炭酸カルシムの平均粒子径を20.6μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0084】
(比較例1)
炭酸カルシムの平均粒子径を3.4μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0085】
(比較例2)
炭酸カルシウムに対して表面処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0086】
(比較例3)
炭酸カルシウムの平均粒子径を3.4μmに変更して、かつ、炭酸カルシウムに対して表面処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0087】
<透気度の測定方法>
各実施例および各比較例の積層フィルムの透気度を、王研式透気度計(旭精工社製、「EG01-7-7MR」を用いて測定した。設定条件は、測定圧力0.05MPa、測定面積75mmφとした。結果を表1に示す。
【0088】
【符号の説明】
【0089】
1 多孔質フィルム
2 積層フィルム
3 不織布