(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】シャープペンシルユニット及び出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 21/00 20060101AFI20230201BHJP
B43K 24/18 20060101ALI20230201BHJP
B43K 21/16 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B43K21/00 J
B43K24/18
B43K21/16 W
(21)【出願番号】P 2018229114
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】月岡 之博
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154458(WO,A1)
【文献】特開2010-076340(JP,A)
【文献】特開2017-159579(JP,A)
【文献】特開2001-010285(JP,A)
【文献】実開昭55-118783(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00
B43K 24/18
B43K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持筒の後端側に挿通された芯タンク部を進退させて鉛芯を繰出すようにしたシャープペンシルユニットにおいて、
前記保持筒の後端には、径方向内側へ突出する円環状の係合部が設けられ、
前記芯タンク部の外周部には、前記係合部よりも前側で前記保持筒の内周面に摺接する第1の摺接部と、
前記第1の摺接部よりも後側で径方向内側へ円筒状に凹んだ凹部と
、前記凹部よりも後側で前記凹部の底面に対し拡径された挿入筒部とが設けられ、前記凹部は、前記係合部の突端よりも径方向内側に底部を配置するとともに、前記芯タンク部が進退するストローク以上の長さに形成されていることを特徴とするシャープペンシルユニット。
【請求項2】
前記凹部の深さを、前記係合部が前記保持筒内面から突出する量と略同等又は同等以上に設定したことを特徴とする請求項1記載のシャープペンシルユニット。
【請求項3】
前記保持筒内には、挟持した鉛芯を前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構が設けられ、
前記芯タンク部には、
前記第1の摺接部よりも前側で前記鉛芯繰出し機構の後端側の外周面に環状に嵌め合わせられて前後へ摺接する第2の摺接部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシャープペンシルユニット。
【請求項4】
前記鉛芯繰出し機構は、鉛芯を挟持するチャック部と、前記チャック部の後端側を支持する支持筒部とを備え、挟持した鉛芯に予め設定された筆圧よりも強い付勢力が加わった際に前記チャック部及び前記支持筒部を後退させるように構成され、
前記芯タンク部の
前記第2の摺接部は、前記支持筒部の外周面に設けられていることを特徴とする請求項3記載のシャープペンシルユニット。
【請求項5】
前記支持筒部は、前記チャック部の後端側に接続されたチャック支持部材と、前記チャック部よりも後側で前記チャック支持部材の内周面に嵌合した芯タンク案内部材とを備え、
前記芯タンク案内部材は、その内周面の前端側に、前方へ向かって拡径する面取り部を有することを特徴とする請求項4記載のシャープペンシルユニット。
【請求項6】
請求項1~5何れか1項記載のシャープペンシルユニットを具備した出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシル用リフィールやシャープペンシル等を構成するシャープペンシルユニット、及び該シャープペンシルユニットを具備した出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明に関連し、例えば特許文献1には、保持筒と、保持筒の前側開口部に挿通されてこの保持筒の前端から前方へ突出するとともにこの保持筒に対し進退可能に支持されたホルダーと、ホルダーに挿通される鉛芯を前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構と、鉛芯からホルダーに加わる径方向の力によりこのホルダーを保持筒及び鉛芯に相対し前進させる運動方向変換機構とを備えたシャープペンシルユニットが記載されている。そして、このシャープペンシルユニットを軸筒に収容して出没式筆記具を構成することが可能である。
この出没式筆記具によれば、所定の操作によりシャープペンシルユニットを前進させて、このシャープペンシルユニットの前端のホルダーを軸筒前端の開口から突出させた状態において、ホルダーから突出した鉛芯に径方向の力が加わると、ホルダーが保持筒及び鉛芯に相対して前進するため、このホルダーにより鉛芯を覆い保護することができる。
また、所定の操作により後端側の芯タンク部を保持筒に相対し進退させれば、鉛芯繰出し機構を作動させて鉛芯を繰出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、進退する芯タンク部が、保持筒との係合部分で削れたり、摩耗したりするおそれがある。特に、保持筒に対し芯タンク部が径方向にがたつく場合には、前記係合部分における削れや摩耗等が著しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
保持筒の後端側に挿通された芯タンク部を進退させて鉛芯を繰出すようにしたシャープペンシルユニットにおいて、前記保持筒の後端には、径方向内側へ突出する円環状の係合部が設けられ、前記芯タンク部の外周部には、前記係合部よりも前側で前記保持筒の内周面に摺接する第1の摺接部と、前記第1の摺接部よりも後側で径方向内側へ円筒状に凹んだ凹部と、前記凹部よりも後側で前記凹部の底面に対し拡径された挿入筒部とが設けられ、前記凹部は、前記係合部の突端よりも径方向内側に底部を配置するとともに、前記芯タンク部が進退するストローク以上の長さに形成されていることを特徴とするシャープペンシルユニット。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、芯タンク部の削れや摩耗等を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るシャープペンシルユニットの一例を示す断面図である。
【
図2】同シャープペンシルユニットについて、芯タンク部を前進させた状態を(a)~(c)に順次に示す断面図である。
【
図3】
図1の(III)-(III)線に沿う断面図である。
【
図5】同シャープペンシルユニットを具備した筆記具の一例を示す内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、保持筒の後端側に挿通された芯タンク部を進退させて鉛芯を繰出すようにしたシャープペンシルユニットにおいて、前記保持筒の後端には、径方向内側へ突出する円環状の係合部が設けられ、前記芯タンク部の外周部には、前記係合部よりも前側で前記保持筒の内周面に摺接する第1の摺接部と、第1の摺接部よりも後側で径方向内側へ円筒状に凹んだ凹部とが設けられ、前記凹部は、前記係合部の突端よりも径方向内側に底部を配置するとともに、前記芯タンク部が進退するストローク以上の長さに形成されている(
図1~
図3参照)。
【0009】
第2の特徴は、径方向のがたつきが生じた場合でも凹部底面の削れや摩耗等を防ぐために、前記凹部の深さを、前記係合部が前記保持筒内面から突出する量と略同等又は同等以上に設定した(
図2参照)。
【0010】
第3の特徴として、径方向のがたつきを効果的に防ぐために、前記保持筒内には、挟持した鉛芯を前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構が設けられ、前記芯タンク部には、第1の摺接部よりも前側で前記鉛芯繰出し機構の後端側の外周面に環状に嵌め合わせられて前後へ摺接する第2の摺接部が設けられている(
図1及び
図2参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記鉛芯繰出し機構は、鉛芯を挟持するチャック部と、前記チャック部の後端側を支持する支持筒部とを備え、挟持した鉛芯に予め設定された筆圧よりも強い付勢力が加わった際に前記チャック部及び前記支持筒部を後退させるように構成され、前記芯タンク部の第2の摺接部は、前記支持筒部の外周面に設けられている(
図1及び
図2参照)。
【0012】
第5の特徴として、戻り芯の損傷を防ぐために、前記支持筒部は、前記チャック部の後端側に接続されたチャック支持部材と、前記チャック部よりも後側で前記チャック支持部材の内周面に嵌合した芯タンク案内部材とを備え、前記芯タンク案内部材は、その内周面の前端側に、前方へ向かって拡径する面取り部を有する(
図4参照)。
なお、この第5の特徴は、上記した第1~4の特徴を一部含まない独立した発明とすることが可能であり、この場合も戻り芯の損傷防止効果を有する。
【0013】
第6の特徴は、上記シャープペンシルユニットを具備し出没式筆記具を構成した(
図5参照)。
【0014】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。本明細書中、軸方向とは、保持筒10の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、前記軸方向の一方側であって鉛芯が繰り出される方向を意味する。また、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
【0015】
図1に示すシャープペンシルユニット1は、保持筒10と、保持筒10内に支持された鉛芯繰出し機構M1と、保持筒10の後端側に貫通状に挿通された芯タンク部60と、鉛芯xに加わる径方向の力成分によりホルダー20を鉛芯xに相対し前進させる運動方向変換機構M2とを具備している。
【0016】
保持筒10は、図示例によれば、ホルダー20を前方へ突出させるようにして内在する第1の筒部11と、この第1の筒部11の後端側に同芯状に接続された第2の筒部12と、この第2の筒部12の後端側に同芯状に接続された第3の筒部13とから一体筒状に構成される。これら複数の筒部11,12,13は、その一部または全部を一体の部材とすることが可能である。
【0017】
特に、第3の筒部13は、硬質な金属材料より長尺円筒状に形成され、その後端に、径方向内側へ突出する係合部13aを有する。この係合部13aは、
図3に示すように、全周にわたる円環状に形成され、その内向きの突端縁を、後述する芯タンク部60の凹部61b内の空間に配置している。
【0018】
鉛芯繰出し機構M1は、保持筒10内に保持されて鉛芯xの外周面に弾性的に緩圧接される芯ブレーカ30と、芯ブレーカ30よりも後側で進退運動するチャック部40と、チャック部40に対し環状に嵌り合うクラッチリング41と、クラッチリング41をその後方側から受ける略筒状のクラッチ受け42と、チャック部40の後端側を支持する支持筒部43とを備える。
この鉛芯繰出し機構M1は、芯タンク部60から伝達される支持筒部43の進退動作に伴ってチャック部40に挟持した鉛芯xを繰り出す。また、この鉛芯繰出し機構M1は、チャック部40に挟持した鉛芯xに予め設定された筆圧よりも強い付勢力が加わった際に、鉛芯xと共にチャック部40及び支持筒部43等を後退させる。
【0019】
芯ブレーカ30は、エラストマー樹脂や合成ゴム等の弾性材料から略円筒状に形成され、その内周面を、鉛芯xの外周面に緩圧接する。
【0020】
チャック部40は、周方向に間隔を置いて配設された複数の長尺片をその後端側で一体に連結してなり、これら複数の長尺片を径内方向へ弾性的に撓ませた際に、これら長尺片の前端側の爪部により鉛芯xを挟持する。
【0021】
クラッチリング41は、挟持状態のチャック部40に嵌り合い、チャック部40と共に前進した際に保持筒10内面の段部に当接してチャック部40から外れて、チャック部40の前端側を解放する。これらチャック部40及びクラッチリング41には、周知構造のものを用いることができる。
【0022】
クラッチ受け42は、保持筒10内で所定量進退するように設けられ、その中心側にチャック部40を遊挿しており、保持筒10内の段部に対し後方から当接している。
【0023】
クラッチ受け42の内外及び後方には、第1の付勢部材51、第2の付勢部材52及び第3の付勢部材53が設けられる。
【0024】
第1の付勢部材51は、芯タンク部60に相対し、クラッチ受け42を、予め設定された通常の筆圧よりも強い付勢力で前方へ付勢する。
【0025】
第2の付勢部材52は、その付勢力が後述するホルダー付勢部材23よりも大きい圧縮コイルスプリングであり、その前端側を保持筒10に係止し、後端側をクラッチ受け42に係止して、これら部材間を弾発している。この第2の付勢部材52の付勢力は、芯ブレーカ30と鉛芯xとの間の摩擦等による進退方向の抵抗力よりも大きく設定されている。
【0026】
第3の付勢部材53は、前端側をクラッチ受け42に係止し、後端側を支持筒部43に係止した圧縮コイルスプリングであり、チャック部40を後方へ付勢している。
【0027】
支持筒部43は、チャック部40の後端側に接続されたチャック支持部材43aと、チャック部40の後端よりも後側でチャック支持部材43aの内周面に嵌合された芯タンク案内部材43bとを一体的に具備している。
【0028】
チャック支持部材43aは、チャック部40の後端側に環状に嵌合するとともに、その前端部により第3の付勢部材53の後端を受けている。
【0029】
芯タンク案内部材43bは、チャック支持部材43aに挿入されて嵌合される嵌合筒部43b1と、この嵌合筒部43b1の後側で拡径してチャック支持部材43aの後端に当接する鍔部43b2と、鍔部43b2から後方へ突出したガイド筒部43b3とを一体に有する(
図1及び
図4参照)
【0030】
嵌合筒部43b1は、チャック部40の後端側の内径と同等の略円筒状に形成され、その内周面の前端内縁に、前方へ向かって拡径する面取り部43b11を有する。
この面取り部43b11は、芯タンク部60を前方へ押動しながら鉛芯xを後方へ押し戻す操作が行われた場合に、後方へスライドする鉛芯xに対する摩擦や引っ掛かり等を低減し、鉛芯xの損傷を防ぐ。
なお、面取り部43b11は、
図4の例示によればC面取りとしているが、R面取りやその他の形状の傾斜面とすることが可能である。
【0031】
ガイド筒部43b3は、後方へわたる円筒状に形成される。
このガイド筒部43b3は、芯タンク部60の前端側に挿入されて、芯タンク部60が進退した際に、芯タンク部60の前端側の内周面(第2の摺接部61c)に摺接する。
【0032】
芯タンク部60は、前端部を開口した略筒状に構成され、鉛芯繰出し機構M1に対し後方側から鉛芯xを供給する。図示例の芯タンク部60は、保持筒10の後端側に進退可能に挿通された摺動筒部61と、この摺動筒部61に接続されて後方へ延設された円筒状のタンク本体部62とから構成される。
なお、この芯タンク部60は、図示例以外の他例としては、単数の筒状部材からなる構成とすることも可能である。
【0033】
摺動筒部61は、第3の筒部13の係合部13aに挿通されて前後方向へわたる略円筒状に形成される。
この摺動筒部61の外周部には、保持筒10の内周面に摺接する第1の摺接部61aと、第1の摺接部61aよりも後側で径方向内側へ円筒状に凹んだ凹部61bとが設けられる。
また、摺動筒部61の内周部の前端側には、第2の摺接部61cが設けられている。
【0034】
第1の摺接部61aは、保持筒10の係合部13aよりも前側で第3の筒部13の内周面に摺接する円筒状の面である。
【0035】
凹部61bは、第3の筒部13の係合部13aの突端よりも径方向内側に、円筒面状の底部を配置するとともに、その前後方向の長さが、芯タンク部60の進退ストロークに応じて適宜に設定されている。
詳細に説明すれば、ノック操作等により芯タンク部60を進退させると、図示の間隔wが狭まって、芯タンク部60の進退運動がチャック部40及び支持筒部43に伝達し、鉛芯繰出し機構M1から鉛芯xが繰出される。
これらの動作により芯タンク部60が進退する際の最大のストロークを含むように、凹部61bの前後方向の長さが設定されている。
また、凹部61bの深さは、係合部13aが径内方向へ突出する量に対し、略同等又は同等以上に設定される(
図2参照)。
【0036】
第2の摺接部61cは、第1の摺接部61aよりも前側で、鉛芯繰出し機構M1の芯タンク案内部材43bの後端側外周面に対し、環状に嵌め合わせられている。
この第2の摺接部61cは、摺動筒部61の内周において、タンク本体部62前端よりも前側に確保された円筒状の面であり、芯タンク部60が進退する際に、芯タンク案内部材43bの外周面に摺接する。
【0037】
また、摺動筒部61における凹部61bよりも後側には、凹部61bの底面に対し拡径した挿入筒部61dが設けられる。
この挿入筒部61dは、円筒状に形成され、その外周面が、凹部61bの底部外径よりも大きく、且つ係合部13aの内径よりも小さく設定される。
当該シャープペンシルユニット1の組立作業において、摺動筒部61は、前方側(
図1の左方向側)から第3の筒部13内に挿入される。そして、挿入筒部61dが、前側から係合部13aに挿通される。
【0038】
また、運動方向変換機構M2は、第1の筒部11、ホルダー20、及びホルダー付勢部材23等によって構成され、鉛芯xを介してホルダー20に加わる径方向の力成分により、鉛芯xに相対しホルダー20を前進させる。
【0039】
ホルダー20は、ホルダー本体部21と、ホルダー本体部21の後側に接続された受け部22とから一体的に構成され、保持筒10に対し進退可能に支持される。なお、他例としては、これら二つの部材を一体の部材とすることが可能である。
【0040】
ホルダー本体部21は、保持筒10内に挿通されるとともに保持筒10の前側開口部11aから前方へ突出する略円筒状の部材である。このホルダー本体部21の外周部には、前方へ向かって拡径して前側開口部11aに摺接する環状のカム斜面21aが設けられている。
【0041】
そして、上記構成のシャープペンシルユニット1は、
図5に例示するように、多機能出没式筆記具Aに組み込まれる。
多機能出没式筆記具Aは、複数の駒a2,a3を選択的に前進させる操作により、前進した駒a2(又はa3)に接続されたリフィールの前端筆記部を、軸筒a1前端から前方へ突出させる。前記リフィールは、図示例によれば、シャープペンシルユニット1又はボールペンリフィール2である。
例えば、開閉機能付きクリップa6を有する駒a2が、コイルスプリングa4の付勢力に抗して前進操作され、この駒a2に接続されたシャープペンシルユニット1(リフィール)の前端筆記部が、軸筒a1の前端開口部から前方へ突出すると、駒a2が軸筒a1内に設けられる係止部a5に係止され、この突出状態が維持される。
この突出状態において、クリップa6を前進させる操作を行えば、シャープペンシルユニット1の前端から鉛芯xが繰り出される。
なお、この多機能出没式筆記具Aには、例えば特開2014-198439号公報に示される基本構造を適用することが可能である。
【0042】
次に、上記構成のシャープペンシルユニット1及び多機能出没式筆記具Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図5に示す突出状態において、クリップa6を指等で押してノック操作すると、間隔wが狭まり、芯タンク部60の前端が支持筒部43の後端に当接した状態で、チャック部40及び支持筒部43が進退運動する。そして、この進退運動により、芯ブレーカ30から前方へ鉛芯xが繰出される。
【0043】
前記進退運動の際、第3の筒部13後端の係合部13aは、摺動筒部61の外周面の凹部61b底面との間に隙間を保持する(
図2参照)。このため。摺動筒部61の外周面が、係合部13aによって削られるようなことを防ぐことができる。
しかも、前記進退運動の際、芯タンク部60は、第1の摺接部61aと第2の摺接部61cの前後二か所の摺接部分により、直線性の高い運動をする。このため、がたつきに起因する動作不良や、各接触部分の摩耗等を低減して、品質を向上することができる。
【0044】
また、第3の筒部13に対し摺動筒部61を接続する際は、前方側から摺動筒部61を挿入し、円筒状の挿入筒部61d及び凹部61bを、円環状の係合部13aに挿通すればよく、その組立作業性が良好である。
【0045】
また、詳細な説明を省略するが、上記構成のシャープペンシルユニット1によれば、鉛芯xに過剰な径方向の力成分が加わった場合には、運動方向変換機構M2により鉛芯xに相対しホルダー20を前進させ鉛芯xを保護することができる。また、鉛芯xに過剰な後方への押圧力が加わった場合も、この鉛芯xを、チャック部40等と共に後退させて保護することができる。
【0046】
<変形例>
なお、上記実施の形態によれば、特に好ましい一例として、運動方向変換機構M2を具備するシャープペンシルユニット1に対し、凹部61b等の構成を適用したが、他例としては、運動方向変換機構M2を省いた構成とすることも可能である。
【0047】
また、上記構成のシャープペンシルユニット1は、多機能出没式筆記具Aのシャープペンシル用リフィールとして構成したが、他例としては、シャープペンシルユニット1を軸筒内に備えて単機能のシャープペンシルを構成することも可能である。
【0048】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:シャープペンシルユニット
10:保持筒
13a:係合部
20:ホルダー
40:チャック部
43:支持筒部
43a:チャック支持部材
43b:芯タンク案内部材
60:芯タンク部
61a:第1の摺接部
61b:凹部
61c:第2の摺接部
x:鉛芯
M1:鉛芯繰出し機構
M2:運動方向変換機構