(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ソケットおよび接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20230201BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230201BHJP
【FI】
H01R33/76 505A
H01R33/76 505C
G01R31/26 J
G01R31/26 H
(21)【出願番号】P 2018230598
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】522267136
【氏名又は名称】エルティーアイ ホールディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100138760
【氏名又は名称】森 智香子
(74)【代理人】
【識別番号】100143030
【氏名又は名称】達野 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230111154
【氏名又は名称】岡田 次弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀幸
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072157(JP,A)
【文献】特許第3257994(JP,B2)
【文献】特開2002-352929(JP,A)
【文献】特開2005-228716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 33/76
G01R 31/26-31/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部、中間部および他方の端部を有する複数のコンタクトと、
複数のコンタクトをそれぞれ挿入するための複数の貫通孔が形成され、各貫通孔に挿入された各コンタクトの一方の端部と半導体パッケージの各端子との電気的な接続を可能にするベース部材と、
ベース部材の基板側に取り付けられるストッパー部材であって、当該ストッパー部材は、各コンタクトを挿入し、かつ各コンタクトの中間部を保持する貫通孔が複数形成された保持部と、当該保持部から側方に延在する放熱部とを備える、前記ストッパー部材とを有し、
前記ストッパー部材から突出したコンタクトの他方の端部が回路基板のスルーホール内に挿入されたとき、前記放熱部が前記回路基板に接触する
ものであり、
前記放熱部は、前記ベース部材よりも熱伝導性が高い材料で形成されており、
前記保持部は、前記ベース部材の断面積よりも小さい断面積を有し、
前記放熱部の側部が外気中に露出するように、前記放熱部は、前記保持部の前記側方に延在している、
ソケット。
【請求項2】
一方の端部、中間部および他方の端部を有する複数のコンタクトと、
複数のコンタクトをそれぞれ挿入するための複数の貫通孔が形成され、各貫通孔に挿入された各コンタクトの一方の端部と半導体パッケージの各端子との電気的な接続を可能にするベース部材と、
ベース部材の基板側に取り付けられるストッパー部材であって、当該ストッパー部材は、各コンタクトを挿入し、かつ各コンタクトの中間部を保持する貫通孔が複数形成された保持部と、当該保持部から側方に延在する放熱部とを備える、前記ストッパー部材とを有し、
前記ストッパー部材から突出したコンタクトの他方の端部が回路基板のスルーホール内に挿入されたとき、前記放熱部が前記回路基板に接触するものであり、
前記ストッパー部材は、前記保持部からフィン状に延在する複数の放熱部を有する
、ソケット。
【請求項3】
前記ストッパー部材は、前記ベース部材よりも熱伝導性が高い材料から構成される、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項4】
前記保持部の底部には、少なくとも1つの放熱用突起が設けられ、当該放熱用突起は、前記放熱部が回路基板に接触するとき同時に接触する、請求項1ないし3いずれか1つに記載のソケット。
【請求項5】
ソケットはさらに、前記ストッパー部材の基板側に取り付けられ、かつ各コンタクトの他方の端部をガイドするための複数の貫通孔が形成されたガイド部材を含み、当該ガイド部材は、前記放熱部を露出させる、請求項1ないし4いずれか1つに記載のソケット。
【請求項6】
前記ガイド部材には、前記放熱用突起と干渉しないように切り欠き部が形成される、請求項4に記載のソケット。
【請求項7】
前記ガイド部材には、前記ストッパー部材の熱を放熱させるための放熱用開口が形成される、請求項5に記載のソケット。
【請求項8】
ソケットはさらに、前記ベース部材に接近または離間する方向に移動可能なカバー部材と、ベース部材上に取り付けられ、かつ半導体パッケージを載置するアダプター部材と、前記カバー部材の移動に応答して前記コンタクトの一方の端部の一対の接点を開閉する開閉機構とを含む、請求項1ないし7いずれか1つに記載のソケット。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1つに記載のソケットと、当該ソケットを接続する回路基板とを有する接続構造であって、
前記回路基板は、ソケットから突出するコンタクトの他方の端部を挿入するための複数のスルーホールを含み、前記回路基板の表面には、前記放熱部と接触する導電領域が形成される、接続構造。
【請求項10】
前記導電領域は、GND領域である、請求項9に記載の接続構造。
【請求項11】
前記GND領域の表面には、金メッキが施される、請求項10に記載の接続構造。
【請求項12】
前記回路基板の表面にはさらに、前記放熱用突起と接触するGND領域が形成される、請求項10に記載の接続構造。
【請求項13】
前記回路基板の表面にはさらに、前記放熱用開口と対向する位置にGND領域が形成される、請求項10に記載の接続構造。
【請求項14】
前記回路基板は、多層配線基板である、請求項
9に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージを装着可能なソケットに関し、特に、ソケットの放熱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路が形成された半導体チップを樹脂等によって封止した半導体パッケージは、良品または不良品の判別を行うために、出荷前に電気的特性試験やバーインテストされる。この場合、半導体パッケージは、ソケットを介して回路基板に接続される。特許文献1は、BGA用の半導体パッケージを装着可能なソケットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体パッケージと回路基板とのインターフェースを提供するソケットは、半導体パッケージの各端子と接続するための複数のコンタクトを備えている。コンタクトの本数、形状、配列、材料等は、半導体パッケージの種類、例えば、BGA、TSOP、QFP等の端子に応じて設計される。
図1に、特許文献1に開示されているソケットの概略断面を示す。同図に示すソケット1Aは、BGAの半導体パッケージを装着するものであり、ベース部材2と、ベース部材2に対して接近または離間する方向にバネ部材を介して取り付けられたカバー部材3と、カバー部材3の移動に応じて先端の接点を開閉するコンタクト6とを備えている。
【0005】
ベース部材の底部の開口には、コンタクト6がベース部材2から抜け落ちるのを防止するためのストッパー部材が取り付けられる。ベース部材2の底部から突出したコンタクト6は、回路基板のスルーホール内に挿入され、そこでハンダ等によって電気的に接続される。
【0006】
上記のようなソケットにおいて半導体パッケージをテストする際、半導体パッケージの発熱が大きい場合には、例えば、カバー部材内の半導体パッケージの表面近傍にヒートシンクを別途取り付ける必要がある。ソケットにヒートシンクと取り付けると、ソケットの構造が複雑化し、ソケットの外形が拡大し、また、取り扱いが煩雑になるという課題がある。また、カバー部材を往復動させるポップアップタイプと異なり、カバー部材を回転させるクラムシェルタイプのソケットの場合には、ヒートシンクを取り付けると構造がさらに複雑化し、ソケットの大幅なコストの上昇を招いてしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、小型化、低コスト化が可能な放熱機能を備えたソケットおよび接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るソケットは、一方の端部、中間部および他方の端部を有する複数のコンタクトと、複数のコンタクトをそれぞれ挿入するための複数の貫通孔が形成され、各貫通孔に挿入された各コンタクトの一方の端部と半導体パッケージの各端子との電気的な接続を可能にするベース部材と、ベース部材の基板側に取り付けられるストッパー部材であって、当該ストッパー部材は、各コンタクトを挿入し、かつ各コンタクトの中間部を保持する貫通孔が複数形成された保持部と、当該保持部から側方に延在する放熱部とを備える、前記ストッパー部材とを有し、前記ストッパー部材から突出したコンタクトの他方の端部が回路基板のスルーホール内に挿入されたとき、前記放熱部が前記回路基板に接触する。
【0009】
ある実施態様では、前記ストッパー部材は、前記保持部からフィン状に延在する複数の放熱部を有する。ある実施態様では、前記ストッパー部材は、前記ベース部材よりも熱伝導性が高い材料から構成される。ある実施態様では、前記保持部の底部には、少なくとも1つの放熱用突起が設けられ、当該放熱用突起は、前記放熱部が回路基板に接触するとき同時に接触する。ある実施態様では、ソケットはさらに、前記ストッパー部材の基板側に取り付けられ、かつ各コンタクトの他方の端部をガイドするための複数の貫通孔が形成されたガイド部材を含み、当該ガイド部材は、前記放熱部を露出させる。ある実施態様では、前記ガイド部材には、前記放熱用突起と干渉しないように切り欠き部が形成される。ある実施態様では、前記ガイド部材には、前記ストッパー部材の熱を放熱させるための放熱用開口が形成される。ある実施態様では、ソケットはさらに、前記ベース部材に接近または離間する方向に移動可能なカバー部材と、ベース部材上に取り付けられ、かつ半導体パッケージを載置するアダプター部材と、前記カバー部材の移動に応答して前記コンタクトの一方の端部の一対の接点を開閉する開閉機構とを含む。
【0010】
本発明に係る接続構造は、上記記載のソケットと、当該ソケットを接続する回路基板とを有するものであって、前記回路基板は、ソケットから突出するコンタクトの他方の端部を挿入するための複数のスルーホールを含み、前記回路基板の表面には、前記放熱部と接触する導電領域が形成される。
【0011】
ある実施態様では、前記導電領域は、GND領域である。ある実施態様では、前記GND領域の表面には、金メッキが施される。ある実施態様では、前記回路基板の表面にはさらに、前記放熱用突起と接触するGND領域が形成される。ある実施態様では、前記回路基板の表面にはさらに、前記放熱用開口と対向する位置にGND領域が形成される。ある実施態様では、前記回路基板は、多層配線基板である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ストッパー部材の放熱部を回路基板に接触させるようにしたので、半導体パッケージの熱をコンタクトおよびストッパー部材を介して回路基板へ放熱させることができる。これにより、ソケットにヒートシンクを取り付ける手間が省け、さらにはソケットの小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来のソケットの一構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例に係るソケットの全体構成を示す図であり、
図2(A)は、ソケットの平面図、
図2(B)および
図2(C)は、
図2(A)のX方向およびY方向の側面図、
図2(D)は、Z1-Z1線断面図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の実施例に係るコンタクトの一例を示し、
図3(B)は、半導体パッケージの端子と接続された状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施例に係るベース部材の全体構成を示す図であり、
図4(A)は、ベース部材の平面図、
図4(B)および
図4(C)は、X方向およびY方向の側面図、
図4(D)は、Z2-Z2線断面図である。
【
図5】本発明の実施例に係るストッパー部材の全体構成を示す図であり、
図5(A)は、ストッパー部材の平面図、
図5(B)および
図5(C)は、X方向およびY方向の側面図、
図5(D)は、Z3-Z3線断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係るガイド部材の全体構成を示す図であり、
図6(A)は、ガイド部材の平面図、
図6(B)および
図6(C)は、X方向およびY方向の側面図、
図6(D)は、Z4-Z4線断面図である。
【
図7】本発明の実施例に係る回路基板の平面図である。
【
図8】本発明の実施例によるソケットが回路基板に実装される様子を示す図である。
【
図9】本発明の実施例によるソケットの放熱を説明する図である。
【
図10】本発明の実施例によるソケットの放熱部が大気に放熱する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明のソケットは、半導体パッケージと回路基板との間のインターフェースを提供する。本発明のソケットは、複数のコンタクトと、複数のコンタクトを保持するベース部材とを含み、コンタクトの一方の端部が半導体パッケージの端子に電気的に接続され、他方の端部が回路基板に形成された電極領域(本例の場合、回路基板のスルーホール)に電気的に接続される。本発明のソケットは、カバー部材がベース部材に接近または離間する方向に移動するタイプのソケット、あるいはカバー部材をベース部材に回転可能に取り付けるタイプのソケットのいずれであってもよい。カバー部材は、例えば、コンタクトの接点の開閉機構と連動したり、半導体パッケージをコンタクトに対して押圧させるためのラッチ部材と連動したりすることができる。本発明のソケットは、バーンインテストあるいは電気的特性テストに用いることができる。以下の実施例では、BGAの端子構造を有する半導体パッケージを装着するソケットを例示し、このソケットが、ベース部材に対して接近または離間する方向に往復動が可能なカバー部材を備えているものとする。
【実施例】
【0015】
図2は、本発明の実施例に係るソケットの概略構成を示す図であり、
図2(A)は、ソケットの平面図、
図2(B)、(C)は、側面図、
図2(D)は、Z1-Z1線断面図である。
【0016】
本実施例に係るソケット100は、概ね矩形状を有し、ベース部材110と、ベース部材110に接近または離間する方向に移動可能なカバー部材120と、複数のコンタクト130と、基板側のコンタクト130を保持するストッパー部材140と、基板側のコンタクト130を整列するガイド部材150と、上下に移動することによりコンタクト130の先端の接点部を開閉させるスライダー部材160と、半導体パッケージの上面を押圧するラッチ部材170と、半導体パッケージの端子にコンタクトの先端の接点部が接触するように半導体パッケージを位置決めするアダプター部材180と、カバー部材120の動きに連動してスライダー部材160を上下方向に移動させるリンク部材とを備えている。なお、スライダー部材160、ラッチ部材170、アダプター部材180、リンク部材は、任意の構成であり、また、特許文献1のソケットに開示されるように周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0017】
カバー部材120は、カバー部材120をベース部材110から離間する方向に付勢するバネ部材122を介してベース部材110に往復動可能に取り付けられる。カバー部材120には、ベース部材110から突出するガイド部材112と摺動し、かつガイド部材112と係止する溝部124が形成され、これにより、カバー部材120は、バネ部材122によりベース部材110から最も離間した位置に保持される。
【0018】
カバー部材120は、プラスチック等の樹脂材料から構成され、概ね矩形状を有する。カバー部材120の中央には、半導体パッケージを装着するための矩形状の開口126が形成される。半導体パッケージは、カバー部材120の開口126を介してソケットに装着され、あるいはソケットから取り出される。
【0019】
半導体パッケージをソケット100に装着する場合には、カバー部材120をベース部材110に接近する方向、つまりバネ部材122の弾性力に抗して下方に移動させる。カバー部材120が下方に移動すると、カバー部材120の移動に応答してリンク機構がラッチ部材170を中央の押圧位置から周辺の退避位置へ回転移動させ、かつスライダー部材160(
図3(B)を参照)が上方に押し上げられ、後述するコンタクト130の接点開閉機構が開かれる。
【0020】
スライダー部材160の上方には、半導体パッケージを載置するためのアダプター部材180がベース部材110に固定される。アダプター部材180の4隅には、半導体パッケージを位置決めするための位置決めガイド(例えば、ハンダボールの形状に応じた凹部形状)が形成される。
【0021】
カバー部材120への押圧力が解除されると、カバー部材120は、バネ部材122の弾性力によりベース部材110から離間する方向、つまり上方に移動する。カバー部材120が上方に移動すると、リンク機構がラッチ部材170を退避位置から押圧位置に回転移動させ、ラッチ部材170が半導体パッケージの上面を押圧することが可能になる。また、カバー部材120の上方の移動によりスライダー部材160も下方に移動し、これによりコンタクト130の接点開閉機構が閉じられ、コンタクト130の接点が一定の接圧でボール端子を挟むことが可能になる。
【0022】
図3(A)は、コンタクトの平面図、
図3(B)は、コンタクトが半導体パッケージのボール端子を挟持したときの状態を示す図である。コンタクト130は、例えば、ベリリウム銅等の金属材料から構成され、例えば、そのような金属板をパンチング加工することにより形成される。コンタクト130は、一方の端部に形成された一対のアーム部132a、132bと、一対のアーム部に接続された中間部134と、中間部134から延在する基板側接続部136とを有する。
【0023】
一対のアーム部132a、132bは、半導体パッケージ200のボール端子210を挟持するための接点開閉機構を有する。
図3(B)に示すように、一対のアーム部132a、132bの間には、スライダー部材160が配置され、スライダー部材160が上昇すると、一対のアーム部132a、132bの先端の接点133が開くように、一対のアーム部132a、132bが弾性変形し、スライダー部材160が降下すると、一対のアーム部132a、132bの弾性力により接点133が閉じる。一対のアーム部132a、132bが閉じられているときの接点133の間隔は、半導体パッケージ200のボール端子210の径よりも幾分小さくなるように設計されている。
【0024】
図4(A)は、本実施例に係るベース部材の平面図、
図4(B)、
図4(C)は、側面図、
図4(D)は、Z2-Z2線断面図である。ベース部材110は、概ね矩形状を有し、プラスチック等の樹脂材料から構成される。ベース部材110の中央には、複数のコンタクト130を挿入するための貫通孔114が行列状に複数形成される。ベース部材110の側部には、カバー部材120の開口と摺動するガイド部材112が形成され、また、ベース部材112の周縁部分には、アダプター部材180を位置決め固定するための4つの突起113が形成されている。ベース部材110上に取り付けられるスライダー部材160およびアダプター部材180の位置決めガイドは、それぞれベース部材110の貫通孔114と整合する位置にある。
【0025】
ベース部材110の基板側には、複数のスタンドオフ116が一体に形成される。スタンドオフ116は、例えば、円柱状の突起であり、回路基板に形成された開口内に挿入され、ソケット100を回路基板に位置決め固定する役割を担う。
【0026】
図5は、本実施例のストッパー部材の構成を示し、
図5(A)は、ストッパー部材の平面図、
図5(B)および
図5(C)は、X方向およびY方向の側面図、
図5(D)は、Z3-Z3線断面図である。
【0027】
ベース部材110の基板側には、ストッパー部材140が取り付けられる。ストッパー部材140は、例えば、ベース部材110よりも熱伝導性が高い樹脂材料(例えば、PPS等)から構成される。ストッパー部材140は、全体が概ね板状の部材から構成され、矩形状の保持部142と、保持部142の4つのコーナー部分に接続された放熱部144とを有する。
【0028】
中央の保持部142には、コンタクト130を挿入し、かつこれを保持するための貫通孔146が複数形成され、保持部142の各側面には、ストッパー部材140をベース部材110に位置決めするための8つの位置決め部148(例えば、円弧状の突起)が形成される。また、保持部142の対向する面には4つのU字部147が形成され、ストッパー部材140は、このU字部147にリンク機構のシャフト(図示省略)を利用してベース部材110に固定される。さらに、保持部142の外周には、後述するガイド部材150を取り付けるための複数のフック149が形成される。このフック149は、ベース部材110の開口内に挿入され、そこで係止する。ストッパー部材140がベース部材110に位置決め固定されたとき、複数の貫通孔146は、ベース部材110の複数の貫通孔114と整合する位置にある。
【0029】
ベース部材110の貫通孔114からコンタクト130が挿入されたとき、コンタクト130の中間部134に形成された段差部(
図3(A)、(B)参照)がストッパー部材140の貫通孔146の段差に係止し、ストッパー部材140の底面から基板側接続部136が突出した状態で、コンタクト130がストッパー部材140に固定される。
【0030】
放熱部144は、例えば、矩形状を有し、保持部142の側方に延在するフィン形状を提供することで、回路基板300との接触面積を増加させ、あるいは外気との接触面積を増加させ、放熱特性を向上させる。また、放熱部144には、ストッパー部材140がベース部材110に取り付けられたときに、ベース部材110の複数のスタンドオフ116を貫通させるための複数の開口144aが形成される。さらに放熱部144には、ソケット100を回路基板300にネジ止めするための開口144bが形成される。開口144bを利用したソケット100と回路基板300とのネジ止めは、コンタクト130を回路基板300のスルーホール内にハンダ付けする前に行われる。なお、放熱部144の形状や数は任意であり、例えば、放熱部144は、円形状、楕円状、三角形状であってもよく、表面積を大きくするために表面に凹凸を含むようにしてもよい。また、放熱部144は、例えば、保持部142の対向する両側に2つ形成されてもよいし、それ以外の数であってもよい。
【0031】
ある実施態様では、矩形状の保持部142の底部の外縁には、例えば、4つの壁状の放熱用突起143が形成される。放熱用突起143は、放熱部144の底面と同じ高さであり、言い換えれば、放熱部144が回路基板300に接触するとき、放熱用突起143も同時に回路基板300に接触する。
【0032】
図6は、本実施例のガイド部材の構成を示し、
図6(A)は、ガイド部材の平面図、
図6(B)および
図6(C)は、X方向およびY方向の側面図、
図6(D)は、Z4-Z4線断面図である。
【0033】
ガイド部材150は、ストッパー部材150の基板側に取り付けられ、ストッパー部材140をベース部材110に固定する。ガイド部材150は、例えば、プラスチック等の樹脂材料から構成される。ガイド部材150は、ストッパー部材140の保持部142と概ね同じ大きさの矩形状を有し、ガイド部材150がストッパー部材140の底面側に取り付けられたとき、放熱部144がガイド部材150によって遮蔽されずに露出されることに留意すべきである。
【0034】
ガイド部材150には、複数の貫通孔152が形成され、ガイド部材150がベース部材110に固定されたとき、複数の貫通孔152は、ストッパー部材140の複数の貫通孔146およびベース部材110の複数の貫通孔114と整合した位置にある。ガイド部材150の周囲には、ストッパー部材140の位置決め部148と対応する位置に、突出した4つのフック154が形成される。フック154は、位置決め部148と一緒にベース部材110の開口内に挿入され、ストッパー部材140およびガイド部材150をベース部材110に固定する。なお、ガイド部材150の貫通孔152は、コンタクト130の円柱状の基板側接点部136をガイドするために円形状である。
【0035】
ある実施態様では、ガイド部材150の周縁には、ストッパー部材140の放熱用突起143に対応する位置に4つの切欠き部156が形成される。4つの放熱用突起143は、ガイド部材150によって遮蔽されず、切欠き部156を介して放熱部144と同様に回路基板側に露出される。
【0036】
また、別の実施態様では、ガイド部材150の複数の貫通孔152が形成された領域内の任意に空間に1つまたは複数の放熱用開口158が形成される。図の例では、外周の貫通孔152と内側の矩形状の貫通孔152との間に、4つの矩形状の放熱用開口158が形成される。4つの放熱用開口158は、ストッパー部材140を遮蔽せず、基板側に吐出させる。
【0037】
図7は、本実施例のソケットを接続するための回路基板の平面図である。回路基板300は、例えば、多層基板または積層基板であり、各基板は、電源配線、GND配線、信号配線を含む。回路基板300には、ソケット100のコンタクト130に位置に対応してスルーホール310が形成され、コンタクト130はハンダ等を介してスルーホール310に電気的に接続される。また、回路基板300には、ベース部材110の底部から突出するスタンドオフ116に対応する位置に複数の開口350aと、ネジ止め用の開口144bに対応する位置に開口350bとが形成される。スタンドオフ116を開口350aに挿入することでソケット100が回路基板300に位置決めされ、ネジを開口144b、開口350bに締結することで、放熱部144の底面が回路基板300の表面により強固に密着される。
【0038】
回路基板300の表面には、GND配線に電気的に接続される複数のGND領域320-1、320-2、320-3、320-4が形成される。GND領域320-1~320-4は、好ましくは、表面に金(Au)がメッキされている。GND領域320-1~320-4は、ソケット100が回路基板300に実装されたとき、ガイド部材150によって露出された4つの放熱部144に接触し、放熱部144と熱的に結合する。通常の回路基板の表面は、レジスト処理されているため、回路基板との熱的結合は小さくなる。こうして、半導体パッケージ200で発生した熱は、放熱部144と良好に熱的結合するGND領域320を介して回路基板内に伝導させる。GND配線は、信号用配線よりも大きな電流を流すために信号用配線よりも太く、それ故、信号用配線よりも熱伝導性が高く、放熱特性が良好である。
【0039】
ある実施態様では、ストッパー部材140に放熱用突起143が形成されている場合、放熱用突起143に対応する位置にGND領域330-1、330-2、330-3、330-4が形成され、放熱用突起143を介して半導体パッケージの熱が回路基板300へ放熱される。
【0040】
また、ある実施態様では、ガイド部材150に放熱用開口158が形成されている場合、放熱用開口158に対応する位置にGND領域340-1、340-2、340-3、340-4が形成され、ストッパー部材140は、放熱用開口158の空隙を介してGND領域340に熱的に結合し放熱する。
【0041】
次に、本実施例のソケットの動作について説明する。始めに、ベース部材110のスタンドオフ116(ロケーションピン)をガイドにしてソケット100を回路基板300に位置決め固定する(
図8参照)。また、ソケット100と回路基板300とが開口144aを介してネジ止めされる。これにより、放熱部144と回路基板300とがより強固に密着される。次に、回路基板300のスルーホール310内に挿入されたコンタクト130の基板側接点部136がハンダ付けされ、コンタクト130が回路基板300に電気的に接続される。ソケット100を回路基板300に実装した後の動作は、通常と同様であり、ソケット100に半導体パッケージをセットし、その後、バーンインテストあるいはパフォーマンステストが実施される。
【0042】
テストが実施されるとき、半導体パッケージ200の発熱は、
図9(A)の矢印に示すように、端子(ハンダボール)210に接触しているコンタクト130に伝導され、コンタクト130の基板側接点部136が回路基板300のスルーホール310にハンダ付けされているので、その熱H1が回路基板300へ放熱される。
【0043】
また、コンタクト130は、
図9(B)に示すように、ストッパー部材140の保持部142の各貫通孔146内に接触し保持されているため、端子210からコンタクト130に伝わった熱H2は、放熱部144から回路基板300のGND領域320に伝わり、比較的太い配線のGND配線を通じて回路基板300に放熱される。さらに、
図9(C)に示すように、ストッパー部材140の放熱部144の側部144aは、ガイド部材150によって遮蔽されずに外気中に露出するため、ストッパー部140に伝わった熱H3は、側部144aから空気中へ熱伝導(対流)される。
図10は、この様子を示している。
【0044】
本実施例では、コンタクト130の材料を高熱伝導率の銅合金を使用しているが、ストッパー部材140の材料にも高熱伝導率の材料を使用している。従来のソケットは、半導体パッケージ200→コンタクト130→回路基板300の熱伝達経路しか持たないが、本実施例のソケット100は、このような通常の熱伝達経路に加えて、半導体パッケージ200→コンタクト130→ストッパー部材140→回路基板300の熱伝達経路と、ストッパー部材140から外気への対流による熱伝達経路とを新たに有するため、半導体パッケージから発生した多くの熱を回路基板300や外気へ逃がすことができる。また、回路基板300は、ソケット100と接触する領域をレジスト処理した領域ではなく、Auめっきが施されたGND領域とすることで、ソケットからの熱をより効率良く回路基板へ熱伝達することができる。
【0045】
このように本実施例によれば、従来のヒートシンクを必要とするソケットからヒートシンクを削除することが可能になる。その結果、ヒートシンクを装着したソケットよりもソケットの小型化を図ることができる。また、ヒートシンクを不要とすることでソケットの構造が簡略化され、ソケットのコスト低減を図ることができる。
【0046】
なお、上記実施例では、半導体パッケージとしてBGAを例示したが、本発明は、表面実装が可能な端子(例えば、TSOP、QFP)を有する半導体パッケージに適用することが可能である。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
100:ソケット
110:ベース部材
120:カバー部材
130:コンタクト
132a、132b:アーム部材
140:ストッパー部材
142:保持部
143:放熱用突起
144:放熱部
146:貫通孔
150:ガイド部材
152:貫通孔
156:切欠き部
158:放熱用開口
160:スライダー部材
200:半導体パッケージ
210:端子
300:回路基板
310:スルーホール
320-1~320-4:GND領域
330-1~330-4:GND領域
340-1~340-4:GND領域