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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】海面計測装置及び海面計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20230201BHJP
   G01S 13/95 20060101ALI20230201BHJP
   G01C 13/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S13/95
G01C13/00 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018234946
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094995
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小関 勇気
(72)【発明者】
【氏名】小林 一幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀雄
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-156192(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102523446(CN,A)
【文献】特開2017-045438(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179342(WO,A1)
【文献】平山 圭一,「船舶用レーダー波浪観測装置(<特集>海洋観測の困難さ)」,日本航海学会誌 NAVIGATION,2009年12月,No.172,pp.81-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01C 13/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ画像を分割して各分割画像を生成する画像分割部と、
各分割画像をフーリエ変換して各スペクトルを生成するフーリエ変換部と、
各スペクトルの振幅及び位相の少なくともいずれかに基づいて、各分割画像での海面の波長、波向き、波速及び波高の少なくともいずれかを計測する海面計測部と、を備え
前記画像分割部は、前記レーダ画像の分割数を複数種類に設定し、前記フーリエ変換部及び前記海面計測部は、各種類の前記レーダ画像の分割数について、並列処理を実行する
ことを特徴とする海面計測装置。
【請求項2】
前記フーリエ変換部は、前記レーダ画像のうちの各分割画像を除いた各画像領域においてゼロパディングされた各分割画像をフーリエ変換する
ことを特徴とする、請求項に記載の海面計測装置。
【請求項3】
前記海面計測部は、各スペクトルの波数空間でのピーク位置に基づいて、各分割画像での海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを計測する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の海面計測装置。
【請求項4】
前記海面計測部は、先の時刻での各スペクトルのピーク位相と、後の時刻での各スペクトルのピーク位相と、の間の差分に基づいて、各分割画像での海面の波速を計測する
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の海面計測装置。
【請求項5】
前記海面計測部は、(1)先の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、後の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、の間の差分に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する計測波速を算出し、(2)重力波の分散関係及び各スペクトルの各波数に対応する波長に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する理論波速を算出し、(3)各スペクトルの各波数に対応する計測波速と理論波速との間の一致程度に基づいて、各スペクトルの各波数での振幅を信号成分と雑音成分とに分類し、(4)有義波高の経験式及び各スペクトルの全波数にわたる信号対雑音比に基づいて、各分割画像での海面の波高を計測する
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の海面計測装置。
【請求項6】
レーダ画像を分割して各分割画像を生成する画像分割部と、
各分割画像をフーリエ変換して各スペクトルを生成するフーリエ変換部と、
各スペクトルの振幅及び位相の少なくともいずれかに基づいて、各分割画像での海面の波長、波向き、波速及び波高の少なくともいずれかを計測する海面計測部と、を備え
前記フーリエ変換部は、前記レーダ画像のうちの各分割画像を除いた各画像領域においてゼロパディングされた各分割画像をフーリエ変換する
ことを特徴とする海面計測装置。
【請求項7】
レーダ画像を分割して各分割画像を生成する画像分割部と、
各分割画像をフーリエ変換して各スペクトルを生成するフーリエ変換部と、
各スペクトルの振幅及び位相の少なくともいずれかに基づいて、各分割画像での海面の波長、波向き、波速及び波高の少なくともいずれかを計測する海面計測部と、を備え
前記海面計測部は、(1)先の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、後の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、の間の差分に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する計測波速を算出し、(2)重力波の分散関係及び各スペクトルの各波数に対応する波長に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する理論波速を算出し、(3)各スペクトルの各波数に対応する計測波速と理論波速との間の一致程度に基づいて、各スペクトルの各波数での振幅を信号成分と雑音成分とに分類し、(4)有義波高の経験式及び各スペクトルの全波数にわたる信号対雑音比に基づいて、各分割画像での海面の波高を計測する
ことを特徴とする海面計測装置。
【請求項8】
レーダ画像を分割して各分割画像を生成する画像分割ステップと、
各分割画像をフーリエ変換して各スペクトルを生成するフーリエ変換ステップと、
各スペクトルの振幅及び位相の少なくともいずれかに基づいて、各分割画像での海面の波長、波向き、波速及び波高の少なくともいずれかを計測する海面計測ステップと、
を順にコンピュータに実行させ
前記画像分割ステップは、前記レーダ画像の分割数を複数種類に設定し、前記フーリエ変換ステップ及び前記海面計測ステップは、各種類の前記レーダ画像の分割数について、並列処理を実行する
ことを特徴とする海面計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、海面の波浪を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
海面の波浪を計測する技術が、特許文献1等に開示されている。特許文献1では、複数の浮標を海面に配置しカメラで撮影することにより、海面の波浪を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-096827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、複数の浮標を保守管理する必要があるが、保守管理は手間がかかり、複数の浮標の動作を画像検出する必要があるが、画像検出は困難であった。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、海面の波浪を計測するにあたり、保守管理を軽減するとともに、画像検出を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、レーダ画像の海面クラッタを計測することにより、海面の波浪を計測することとした。具体的には、レーダ画像を分割した各分割画像をフーリエ変換した各スペクトルに基づいて、各分割画像での海面の波浪を計測することとした。
【0007】
具体的には、本開示は、レーダ画像を分割して各分割画像を生成する画像分割部と、各分割画像をフーリエ変換して各スペクトルを生成するフーリエ変換部と、各スペクトルの振幅及び位相の少なくともいずれかに基づいて、各分割画像での海面の波長、波向き、波速及び波高の少なくともいずれかを計測する海面計測部と、を備えることを特徴とする海面計測装置である。
【0008】
また、本開示は、レーダ画像を分割して各分割画像を生成する画像分割ステップと、各分割画像をフーリエ変換して各スペクトルを生成するフーリエ変換ステップと、各スペクトルの振幅及び位相の少なくともいずれかに基づいて、各分割画像での海面の波長、波向き、波速及び波高の少なくともいずれかを計測する海面計測ステップと、を順にコンピュータに実行させるための海面計測プログラムである。
【0009】
これらの構成によれば、海面の波浪を計測するにあたり、レーダシステムの保守管理を行うのみでよく、海面クラッタの画像検出を行うのみでよい。そして、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波長等を容易に計測することができる。さらに、各分割画像が表す各海域において、海面の波長等を個別に計測することができる。
【0010】
また、本開示は、前記画像分割部は、前記レーダ画像の分割数を可変に設定し、前記フーリエ変換部及び前記海面計測部は、可変の前記レーダ画像の分割数について、処理を実行することを特徴とする海面計測装置である。
【0011】
この構成によれば、多分割数での局所的な海面計測結果と、少分割数での大局的かつ高精度な海面計測結果と、のいずれかを選択することができる。
【0012】
また、本開示は、前記画像分割部は、前記レーダ画像の分割数を複数種類に設定し、前記フーリエ変換部及び前記海面計測部は、各種類の前記レーダ画像の分割数について、並列処理を実行することを特徴とする海面計測装置である。
【0013】
この構成によれば、多分割数での局所的な海面計測結果と、少分割数での大局的かつ高精度な海面計測結果と、の間の切替を高速で実行することができる。
【0014】
また、本開示は、前記フーリエ変換部は、前記レーダ画像のうちの各分割画像を除いた各画像領域においてゼロパディングされた各分割画像をフーリエ変換することを特徴とする海面計測装置である。
【0015】
この構成によれば、多分割数つまり狭い海域での海面計測結果であっても、少分割数つまり広い海域での海面計測結果と同様に、高精度な海面計測結果とすることができる。
【0016】
また、本開示は、前記海面計測部は、各スペクトルの波数空間でのピーク位置に基づいて、各分割画像での海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを計測することを特徴とする海面計測装置である。
【0017】
この構成によれば、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを容易に計測することができる。そして、各分割画像が表す各海域において、海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを個別に計測することができる。
【0018】
また、本開示は、前記海面計測部は、先の時刻での各スペクトルのピーク位相と、後の時刻での各スペクトルのピーク位相と、の間の差分に基づいて、各分割画像での海面の波速を計測することを特徴とする海面計測装置である。
【0019】
この構成によれば、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波速を容易に計測することができる。そして、各分割画像が表す各海域において、海面の波速を個別に計測することができる。
【0020】
また、本開示は、前記海面計測部は、(1)先の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、後の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、の間の差分に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する計測波速を算出し、(2)重力波の分散関係及び各スペクトルの各波数に対応する波長に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する理論波速を算出し、(3)各スペクトルの各波数に対応する計測波速と理論波速との間の一致程度に基づいて、各スペクトルの各波数での振幅を信号成分と雑音成分とに分類し、(4)有義波高の経験式及び各スペクトルの全波数にわたる信号対雑音比に基づいて、各分割画像での海面の波高を計測することを特徴とする海面計測装置である。
【0021】
この構成によれば、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波高を容易に計測することができる。そして、各分割画像が表す各海域において、海面の波高を個別に計測することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本開示は、海面の波浪を計測するにあたり、保守管理を軽減するとともに、画像検出を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示のレーダ目標検出システムの構成を示す図である。
図2】本開示の海面計測処理の手順を示すフローチャートである。
図3】本開示の第1の海面計測処理の手順を示す図である。
図4】本開示の第2の海面計測処理の手順を示す図である。
図5】本開示の第3の海面計測処理の手順を示す図である。
図6】本開示の第4の海面計測処理の手順を示す図である。
図7】本開示の海面の波長及び波向きの計測方法を示す図である。
図8】本開示の海面の波速の計測方法を示す図である。
図9】本開示の海面の波高の計測方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0025】
本開示のレーダ目標検出システムの構成を図1に示す。本開示の海面計測処理の手順を図2に示す。レーダ目標検出システムRは、レーダ送信部1、レーダ受信部2、海面計測装置3及びレーダ映像表示部4から構成される。海面計測装置3は、画像分割部31、フーリエ変換部32及び海面計測部33から構成され、図2に示した海面計測プログラムをコンピュータにインストールすることにより実現することができる。
【0026】
レーダ送信部1は、海上に向けてレーダビームを照射する。レーダ受信部2は、海上で反射されたレーダビームを受信する。海面計測装置3は、レーダ画像の海面クラッタを計測することにより、海面の波浪を計測する。レーダ映像表示部4は、海面計測装置3が取得、処理及び作成したレーダ映像のデータを映像化して表示する。
【0027】
本開示の第1の海面計測処理の手順を図3に示す。図3の左上欄では、画像分割部31は、レーダ映像を取得する。図3の右上欄では、画像分割部31は、レーダ画像を分割して各分割画像を生成する(ステップS1)。例えば、レーダ画像は、x方向に8分割され、y方向に8分割され、全体として8×8=64分割されている。
【0028】
図3の左下欄では、フーリエ変換部32は、各分割画像をフーリエ変換して各スペクトルを生成する(ステップS2)。例えば、各スペクトルは、x方向に8個配列され、y方向に8個配列され、全体として8×8=64個配列されている。
【0029】
図3の右下欄では、海面計測部33は、各スペクトルの振幅及び位相の少なくともいずれかに基づいて、各分割画像での海面の波長、波向き、波速及び波高の少なくともいずれかを計測する(ステップS3)。例えば、海面の波長は、図3の右下欄の矢印の長さにより表され、海面の波向きは、図3の右下欄の矢印の方向で表され、海面の波速は、図3の右下欄の数値で表され、海面の波高は、図3の右下欄の階調で表される。
【0030】
このように、海面の波浪を計測するにあたり、レーダ目標検出システムRの保守管理を行うのみでよく、海面クラッタの画像検出を行うのみでよい。そして、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波長等を容易に計測することができる。さらに、各分割画像が表す各海域において、海面の波長等を個別に計測することができる。
【0031】
本開示の第2の海面計測処理の手順を図4に示す。画像分割部31は、レーダ画像の分割数を可変に設定し(ステップS1)、フーリエ変換部32及び海面計測部33は、可変のレーダ画像の分割数について、処理を実行する(ステップS2、S3)。
【0032】
図4の左から第1欄では、レーダ映像が取得されている。図4の左から第2欄では、レーダ画像は、レーダ目標検出システムRのユーザの「選択」に応じて、全体として1×1=1分割、2×2=4分割、4×4=16分割、「又は」、8×8=64分割されている。
【0033】
図4の左から第3欄では、レーダ目標検出システムRのユーザの「選択」に応じて、各スペクトルは、全体として1×1=1個、2×2=4個、4×4=16個、「又は」、8×8=64個配列されている。図4の左から第4欄では、レーダ目標検出システムRのユーザの「選択」に応じて、各海面計測結果は、全体として1×1=1個、2×2=4個、4×4=16個、「又は」、8×8=64個配列されている。
【0034】
このように、多分割数での局所的な海面計測結果と、少分割数での大局的かつ高精度な海面計測結果と、のいずれかを選択することができる。しかし、多分割数での局所的な海面計測結果と、少分割数での大局的かつ高精度な海面計測結果と、の間の切替を高速で実行することはできない。たとえ、多分割数での局所的な海面計測結果を平均したとしても、少分割数での大局的かつ高精度な海面計測結果を再現することができない。
【0035】
本開示の第3の海面計測処理の手順を図5に示す。画像分割部31は、レーダ画像の分割数を複数種類に設定し(ステップS1)、フーリエ変換部32及び海面計測部33は、各種類のレーダ画像の分割数について、並列処理を実行する(ステップS2、S3)。
【0036】
図5の左から第1欄では、レーダ映像が取得されている。図5の左から第2欄では、レーダ画像は、各分割数での画像分割部31の「並列」処理に従って、全体として1×1=1分割、2×2=4分割、4×4=16分割、「及び」、8×8=64分割されている。
【0037】
図5の左から第3欄では、各分割数でのフーリエ変換部32の「並列」処理に従って、各スペクトルは、全体として1×1=1個、2×2=4個、4×4=16個、「及び」、8×8=64個配列されている。図5の左から第4欄では、各分割数での海面計測部33の「並列」処理に従って、各海面計測結果は、全体として1×1=1個、2×2=4個、4×4=16個、「及び」、8×8=64個配列されている。
【0038】
このように、多分割数での局所的な海面計測結果と、少分割数での大局的かつ高精度な海面計測結果と、の間の切替を高速で実行することができる。しかし、多分割数での海面計測結果においては、少分割数での海面計測結果と異なり、高精度な海面計測結果とすることができない。なぜならば、実空間解析を実行するのではなく、波数空間解析を実行するところ、多分割数での海面計測結果は、狭い海域での海面計測結果であるからである。
【0039】
本開示の第4の海面計測処理の手順を図6に示す。フーリエ変換部32は、レーダ画像のうちの各分割画像を除いた各画像領域においてゼロパディングされた各分割画像をフーリエ変換する(ステップS2)。
【0040】
図6の左上欄では、レーダ映像が取得されている。図6の右上欄では、レーダ画像は、全体として8×8=64分割されている。ここでは、64個の各分割画像のうち、上から4行目かつ左から5列目の分割画像について、着目されている。
【0041】
図6の左下欄では、レーダ画像のうち、着目されている分割画像を除いた各画像領域において、ゼロパディングされている。図6の右下欄では、64個の各分割画像のうち、着目されている分割画像について、フーリエ変換されている。
【0042】
このように、多分割数つまり狭い海域での海面計測結果であっても、少分割数つまり広い海域での海面計測結果と同様に、高精度な海面計測結果とすることができる。
【0043】
本開示の海面の波長及び波向きの計測方法を図7に示す。海面計測部33は、各スペクトルの波数空間でのピーク位置に基づいて、各分割画像での海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを計測する(ステップS3)。
【0044】
具体的には、Bスコープ画像をXY座標画像に座標変換し、STC処理を実行し、円形画像から方形画像のみ切り出し、海面計測対象のレーダ画像とする。次に、前回スキャン及び今回スキャンの各分割画像について、それぞれ、前回スキャン及び今回スキャンの各スペクトルを生成する。次に、前回スキャン及び今回スキャンの各スペクトルを乗算し、前回スキャンと今回スキャンとの間の各クロススペクトルCSを生成する。次に、前回スキャンと今回スキャンとの間の各クロススペクトルCSを、k及びkを座標軸とする波数座標からλ=1/k及びλ=1/kを座標軸とする波長座標へと座標変換する。
【0045】
ここで、前回スキャンと今回スキャンとの間の各クロススペクトルにおいて、ピーク位置は(λxp、λyp)である。そこで、波長λ及び波向きθを数式1、2により算出する。
【数1】
【数2】
【0046】
このように、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを容易に計測することができる。そして、各分割画像が表す各海域において、海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを個別に計測することができる。なお、海面の波長及び波向きの少なくともいずれかを計測するにあたり、乗算後の各クロススペクトルを利用してもよいが、乗算前の各スペクトルを利用してもよい。また、乗算後の各クロススペクトル又は乗算前の各スペクトルを算出するにあたり、過去から現在に渡る複数個の乗算後の各クロススペクトル又は乗算前の各スペクトルを平均してもよい。
【0047】
本開示の海面の波速の計測方法を図8に示す。海面計測部33は、先の時刻での各スペクトルのピーク位相と、後の時刻での各スペクトルのピーク位相と、の間の差分に基づいて、各分割画像での海面の波速を計測する(ステップS3)。
【0048】
具体的には、Bスコープ画像をXY座標画像に座標変換し、STC処理を実行し、円形画像から方形画像のみ切り出し、海面計測対象のレーダ画像とする。次に、前回スキャン及び今回スキャンの各分割画像について、それぞれ、前回スキャン及び今回スキャンの各スペクトルを生成する。次に、前回スキャン及び今回スキャンの各スペクトルを乗算し、前回スキャンと今回スキャンとの間の各クロススペクトルCSを生成する。
【0049】
ここで、前回スキャンと今回スキャンとの間の各クロススペクトルにおいて、ピーク位置は(kxp、kyp)である。そこで、各クロススペクトルのピーク位相CSθ(kxp、kyp)を数式3により算出し、波速vを数式4により算出する。ただし、τは、前回スキャンと今回スキャンとの間の時間間隔(例えば、アンテナの回転周期。)である。
【数3】
【数4】
【0050】
このように、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波速を容易に計測することができる。そして、各分割画像が表す各海域において、海面の波速を個別に計測することができる。なお、ナイキスト条件2πv/λ<π/τを満たさないときには、海面の波速を正しく計測することができないことに留意すべきである。また、乗算後の各クロススペクトル又は乗算前の各スペクトルを算出するにあたり、過去から現在に渡る複数個の乗算後の各クロススペクトル又は乗算前の各スペクトルを平均してもよい。
【0051】
本開示の海面の波高の計測方法を図9に示す。海面計測部33は、(1)先の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、後の時刻での各スペクトルの各波数での位相と、の間の差分に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する計測波速を算出し、(2)重力波の分散関係及び各スペクトルの各波数に対応する波長に基づいて、各スペクトルの各波数に対応する理論波速を算出し、(3)各スペクトルの各波数に対応する計測波速と理論波速との間の一致程度に基づいて、各スペクトルの各波数での振幅を信号成分と雑音成分とに分類し、(4)有義波高の経験式及び各スペクトルの全波数にわたる信号対雑音比に基づいて、各分割画像での海面の波高を計測する(ステップS3)。
【0052】
具体的には、Bスコープ画像をXY座標画像に座標変換し、STC処理を実行し、円形画像から方形画像のみ切り出し、海面計測対象のレーダ画像とする。次に、前回スキャン及び今回スキャンの各分割画像について、それぞれ、前回スキャン及び今回スキャンの各スペクトルを生成する。次に、前回スキャン及び今回スキャンの各スペクトルを乗算し、前回スキャンと今回スキャンとの間の各クロススペクトルCSを生成する。
【0053】
そして、各クロススペクトルの各波数での位相CSθ(k、k)を数式5により算出し、各クロススペクトルの各波数での振幅CS(k、k)を数式6により算出し、各クロススペクトルの各波数に対応する計測波速v(k、k)を数式7により算出し、各クロススペクトルの各波数に対応する理論波速v(k、k)を数式8により算出する。ここで、gは、重力加速度(=9.8m/s)であり、重力波の分散関係において、沖合では水深は波高より十分に深いことを考慮している。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0054】
そして、計測波速v(k、k)と理論波速v(k、k)とがある程度は一致するときには、振幅CS(k、k)を信号成分S(k、k)に分類する。一方で、計測波速v(k、k)と理論波速v(k、k)とがある程度も一致しないときには、振幅CS(k、k)を雑音成分N(k、k)に分類する。さらに、各クロススペクトルの全波数にわたる信号対雑音比SNRを数式9により算出し、波高Hを数式10により算出する。ここで、a及びbは、有義波高の実測結果に基づく値である。
【数9】
【数10】
【0055】
このように、波数空間解析により実空間解析と比べて、海面の波高を容易に計測することができる。そして、各分割画像が表す各海域において、海面の波高を個別に計測することができる。なお、海面の波高を計測するにあたり、乗算後の各クロススペクトルを利用してもよいが、乗算前の各スペクトルを利用してもよい。また、乗算後の各クロススペクトル又は乗算前の各スペクトルを算出するにあたり、過去から現在に渡る複数個の乗算後の各クロススペクトル又は乗算前の各スペクトルを平均してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示の海面計測装置及び海面計測プログラムは、例えば、海面の波浪が激しい海域を特定することができ、船舶又は航空機が近づけない海域を特定することができる。
【符号の説明】
【0057】
R:レーダ目標検出システム
1:レーダ送信部
2:レーダ受信部
3:海面計測装置
4:レーダ映像表示部
31:画像分割部
32:フーリエ変換部
33:海面計測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9