(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】最適経路生成システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/10 20060101AFI20230201BHJP
G08G 5/04 20060101ALI20230201BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230201BHJP
G05D 1/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G05D1/10
G08G5/04 A
B64C13/18 Z
G05D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2018244024
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】板橋 直亮
(72)【発明者】
【氏名】河野 充
(72)【発明者】
【氏名】椛山 智貴
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0191332(US,A1)
【文献】特開2018-084972(JP,A)
【文献】特開2002-308190(JP,A)
【文献】ZHU Yongguo et al.,"Trajectory Planning Algorithm Based on Quaternion for 6-DOF Aircraft Wing Automatic Position and Pose Adjustment Method",Chinese Journal of Aeronautics,中国,2010年,Volume 23, Issue 6,p. 707-714
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/10
G08G 5/00
B64C 13/18
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標に対して所定の状態になるまでの最適な経路を生成するための最適経路生成システムにおいて、
自機の現在の状態から所定の経過時間後に前記目標に対して所定の状態になるまでの経路の候補を、自機の現在の位置、速度、加速度のうちの加速度を変化させて複数生成する経路候補生成手段と、
生成された前記経路の候補のうち、所定の制限を逸脱せず、地面又は前記目標を含む他の物体との衝突がない前記経路の候補の中で、評価関数に基づく評価結果が最適になる前記経路の候補を選択して前記最適な経路として生成する最適経路生成手段と、
を備え
、
前記最適経路生成手段は、生成された複数の前記経路の候補の各々と、その時点で最適と選択されている最適な経路の候補との対比に基づいて、当該最適な経路の候補を逐次更新する経路更新手段を含み、
前記経路更新手段は、一の経路の候補と前記最適な経路の候補とが、いずれも前記所定の制限を逸脱しないときであって、当該一の経路の候補における前記評価関数に基づく評価結果が前記最適な経路の候補のものよりも良い場合に、当該一の経路の候補を新たな最適な経路の候補として設定する、
ことを特徴とする最適経路生成システム。
【請求項2】
前記経路候補生成手段は、前記経路の候補を、前記加速度のほか、前記経過時間を変化させて複数生成することを特徴とする請求項1に記載の最適経路生成システム。
【請求項3】
前記経路候補生成手段は、自機の位置を時間tの5次関数で表した場合のt
3の項の係数p3、t
4の項の係数p4、t
5の項の係数p5を、前記経過時間、自機の現在の状態における位置、速度、加速度及び前記目標に対して所定の状態になった場合の位置、速度、加速度に基づいて算出する計算処理を、3次元の各方向についてそれぞれ行うことで前記経路の候補を生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の最適経路生成システム。
【請求項4】
前記最適経路生成手段は、前記経路の候補の全区間において、前記自機の加速に要する仕事と抵抗損失との総量が前記自機のスラスト性能を超えない前記経路の候補を前記最適な経路の候補として選択することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の最適経路生成システム。
【請求項5】
前記最適経路生成手段は、前記評価関数に基づく評価結果として、前記経路の候補の全区間における、前記自機の加速に要する仕事と抵抗損失との総量を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の最適経路生成システム。
【請求項6】
前記最適経路生成手段は、生成した前記経路の候補が前記所定の制限を逸脱する場合は、前記制限を逸脱している区間での前記位置又は前記速度を所定の位置又は速度に補正して当該経路の候補を生成し直すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の最適経路生成システム。
【請求項7】
前記最適経路生成手段は、生成された前記経路の候補のいずれもが、当該経路候補に沿って自機を飛行させた場合に自機が地面又は前記目標を含む他の物体に衝突するものである場合は、衝突までの時間が最も長い前記経路の候補を選択することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の最適経路生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適経路生成システムに係り、特に目標に対して所定の状態になるまでの最適な経路を生成するための最適経路生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機で編隊飛行を行う際に航空機(例えば僚機)を自動操縦で他機(例えばリーダ機)に追従させて飛行させる場合、他機の飛行経路を知る必要がある。
そして、この場合、他機から飛行経路の情報を取得することができる場合は他機から飛行経路の情報を取得し、他機から飛行経路の情報を取得することができない場合は他機の飛行経路を予測するように構成することができる(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
なお、特許文献1には、他機の飛行経路を予測する手法としてカルマンフィルタ理論等を用いる手法が記載されているが、予測手法はこれに限らず、例えば飛行力学的な手法や確率論的な手法等を用いることも可能である。
一方、このようにして飛行経路を認識した他機に追従するように自機を飛行させる方法としては、自機と他機の相対位置や相対速度、相対加速度等に基づいて自機を制御するように構成される場合が多い(例えば特許文献2、3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-124849号公報
【文献】特表2003-522990号公報
【文献】特開平11-139396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、編隊飛行中や空中給油中の場合など、自機がすでに他機に追従する状態になった場合は、上記のように自機と他機の相対位置等に基づいて制御することで、自機の位置や速度等を他機に対する所定の位置や速度等に保持することができる。
【0006】
しかし、例えば、自機が他機に対して離れた位置を飛行しており、自機を現在の飛行状態から他機を追従する飛行状態にするように制御する場合、単に自機と他機の相対位置等に基づいて制御するだけでは他機や地面等と衝突してしまう可能性がある。
例えば、他機の右舷を飛行している自機を他機の左舷に移動させる場合、単に相対位置等に基づいて目標位置を他機の左舷に設定すると、左旋回した自機が他機に右側から衝突する等の事故が生じる可能性がある。
【0007】
そのため、他機を追従する飛行状態になるように自機を制御するためには、自機が現在の飛行状態から他機を追従する飛行状態になるまでの経路として、他機や地面との衝突等を生じないような経路を設定する必要がある。
そして、これは、例えば車両や船舶等の経路を設定する場合も同様であり、他の乗用車や船舶等との衝突等を生じないような経路を設定することが必要である。また、他の航空機や車両、船舶等の移動する目標だけでなく、例えば空中や地上の所定の地点等の固定された目標に到達するための経路を設定する場合も同様である。
【0008】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、自機が目標に向かって移動する際に、他の物体との衝突等を生じることがなく、目標に対して所定の状態になるまでの最適な経路を生成することが可能な最適経路生成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
目標に対して所定の状態になるまでの最適な経路を生成するための最適経路生成システムにおいて、
自機の現在の状態から所定の経過時間後に前記目標に対して所定の状態になるまでの経路の候補を、自機の現在の位置、速度、加速度のうちの加速度を変化させて複数生成する経路候補生成手段と、
生成された前記経路の候補のうち、所定の制限を逸脱せず、地面又は前記目標を含む他の物体との衝突がない前記経路の候補の中で、評価関数に基づく評価結果が最適になる前記経路の候補を選択して前記最適な経路として生成する最適経路生成手段と、
を備え、
前記最適経路生成手段は、生成された複数の前記経路の候補の各々と、その時点で最適と選択されている最適な経路の候補との対比に基づいて、当該最適な経路の候補を逐次更新する経路更新手段を含み、
前記経路更新手段は、一の経路の候補と前記最適な経路の候補とが、いずれも前記所定の制限を逸脱しないときであって、当該一の経路の候補における前記評価関数に基づく評価結果が前記最適な経路の候補のものよりも良い場合に、当該一の経路の候補を新たな最適な経路の候補として設定する、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の最適経路生成システムにおいて、前記経路候補生成手段は、前記経路の候補を、前記加速度のほか、前記経過時間を変化させて複数生成することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の最適経路生成システムにおいて、 前記経路候補生成手段は、自機の位置を時間tの5次関数で表した場合のt3の項の係数p3、t4の項の係数p4、t5の項の係数p5を、前記経過時間、自機の現在の状態における位置、速度、加速度及び前記目標に対して所定の状態になった場合の位置、速度、加速度に基づいて算出する計算処理を、3次元の各方向についてそれぞれ行うことで前記経路の候補を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の最適経路生成システムにおいて、前記最適経路生成手段は、前記経路の候補の全区間において、前記自機の加速に要する仕事と抵抗損失との総量が前記自機のスラスト性能を超えない前記経路の候補を前記最適な経路の候補として選択することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の最適経路生成システムにおいて、前記最適経路生成手段は、前記評価関数に基づく評価結果として、前記経路の候補の全区間における、前記自機の加速に要する仕事と抵抗損失との総量を算出することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の最適経路生成システムにおいて、前記最適経路生成手段は、生成した前記経路の候補が前記所定の制限を逸脱する場合は、前記制限を逸脱している区間での前記位置又は前記速度を所定の位置又は速度に補正して当該経路の候補を生成し直すことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の最適経路生成システムにおいて、前記最適経路生成手段は、生成された前記経路の候補のいずれもが、当該経路候補に沿って自機を飛行させた場合に自機が地面又は前記目標を含む他の物体に衝突するものである場合は、衝突までの時間が最も長い前記経路の候補を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自機と目標とがすでに近接している場合は勿論、自機が目標に対して離れた位置にいる場合でも、自機が目標に向かって移動する際に、他の物体との衝突等を生じることがなく、目標に対して所定の状態になるまでの最適な経路を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る最適経路生成システムの全体構成を表すブロック図である。
【
図2】自機A、目標B、目標の経路R0、生成される複数の経路候補Rn等の一例を表すイメージ図である。
【
図3】複数個の加速度の変化量の設定のしかたの一例を表す図である。
【
図4】最適経路生成手段における処理の一例の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る最適経路生成システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、本発明に係る最適経路生成システムは、目標に対して所定の状態になるまでの最適な経路を生成するためのシステムであり、以下では、最適経路生成システムが航空機(例えば編隊飛行を行う際の僚機)に搭載されており、目標も航空機(例えば編隊飛行を行う際のリーダ機)である場合を想定して説明するが、最適経路生成システムは車両や船舶等に搭載されていてもよい。
また、最適経路生成システムは航空機や車両等に搭載されていなくてもよく、例えば、別の場所等に配置された最適経路生成システムが生成した経路を無線等で航空機等に送信するように構成することも可能である。
【0019】
また、以下では、最適経路生成システムが最適な経路を生成する対象を自機というが(すなわち最適経路生成システムは自機の最適な経路を生成するが)、上記のように自機は車両や船舶等であってもよく、自機という語にはそれらの場合も含まれる。
また、目標も、航空機である場合に限定されず、車両や船舶、人等であってもよい。さらに、目標は、航空機や車両等のように移動する目標(以下、移動目標という。)に限定されず、例えば空中や地上の所定の地点等の固定された目標(以下、固定目標という。)であってもよい。
【0020】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る最適経路生成システムの全体構成を表すブロック図である。
本実施形態では、最適経路生成システム1は、情報取得手段10と、記憶手段20と、経路候補生成手段30と、最適経路生成手段40とを備えている。
【0021】
最適経路生成システム1は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータ等で構成することが可能である。
そして、本実施形態では、最適経路生成システム1は、自機の最適経路の生成処理を行う時点で目標の経路をすでに把握しているものとする。
【0022】
例えば、自機と目標との間で無線通信を行うことができる場合には、無線通信モジュール等の情報取得手段10で目標から位置や速度、加速度の情報を取得することができる。
また、自機と目標との間で無線通信を行うことができない場合や無線通信を行わない場合には、例えばレーダやカメラ、センサ等の情報取得手段10を用いて取得した情報から目標の位置や速度、加速度を算出することができる。なお、いずれの場合も、速度や加速度を位置や速度の変化率として算出することも可能である。
【0023】
そして、最適経路生成システム1は、取得又は算出した目標の位置、速度、加速度(過去に取得又は算出した目標の位置等を含んでもよい。)に基づいて目標の経路R0を予測することで目標の経路R0を把握するように構成することが可能である。
一方、他の装置やシステムが予測した目標の経路R0を、情報取得手段10(例えば通信ネットワークや無線通信手段等)を介して最適経路生成システム1が取得することで、最適経路生成システム1が目標の経路R0を把握するように構成することも可能である。
【0024】
いずれの場合も、予測方法は任意の方法を採用することが可能である。そして、上記のようにして最適経路生成システム1が把握した目標の経路R0は、最適経路生成システム1の記憶手段20に保存される。
また、記憶手段20には、この他、最適経路生成システム1に以下で説明する自機の最適経路の生成処理を行わせるためのプログラム等や各種のデータやパラメータ等も保存されている。
【0025】
なお、目標が固定目標である場合には、目標の経路R0は目標が固定されている位置ということになる(速度や加速度は0。)。
また、目標が固定目標である場合は、目標の経路R0(目標の固定位置)は変わらないため目標の経路R0を更新する必要はないが、目標が移動目標である場合は、目標の状態(位置、速度、加速度)が時々刻々変化するため、予測される目標の経路R0が絶えず変化する。そのため、最適経路生成システム1は、予測される目標の経路R0が変化するごとに記憶手段20に保存している目標の経路R0を更新するとともに、目標の経路R0を更新した場合には、更新した目標の経路R0に基づいて自機の最適経路の生成処理を行うようになっている。
【0026】
以下、最適経路生成システム1の経路候補生成手段30や最適経路生成手段40について説明する。
また、それとともに、本実施形態にかかる最適経路生成システム1の作用についてもあわせて説明する。
【0027】
[経路候補生成手段]
経路候補生成手段30は、自機の現在の状態から所定の経過時間後に目標に対して所定の状態になるまでの経路の候補R1、R2、…(以下、経路候補Rnという。)を、自機の現在の位置xs、速度vs、加速度asのうちの加速度asを変化させて複数生成するようになっている。なお、位置x、速度v、加速度aは、以下、特に断りのない限りそれぞれ3次元のベクトルを表す。
また、本実施形態では、経路候補生成手段30は、経路候補Rnを、自機の加速度asのほか、上記の経過時間T(すなわち自機の現在の状態から目標に対して所定の状態になるまでに要する時間T)を変化させて複数生成するようになっている。
【0028】
すなわち、本実施形態では、例えば
図2のイメージ図に示すように自機Aが目標Bの左側を飛行する状態から目標Bの右側を横一線に並んで飛行する状態になるまでの最適経路を生成する場合、経路候補生成手段30は、自機Aの現在の状態(T=0)から所定の経過時間T(T=T1、T2、T3、…)後に目標Bに対して所定の状態(この場合は目標Bの横一線に並んで飛行する状態)になるまでの経路候補Rn(R1、R2、R3、…)を、自機Aの現在の加速度asや経過時間Tを種々変化させて複数生成するようになっている。
【0029】
ここで、目標に対する所定の状態とは、例えば、編隊飛行の場合には、
図2に示したように、所定の経過時間T後に自機Aが目標B(リーダ機)と同じ速度で、目標Bから所定の方向と距離だけオフセットした位置を飛行する状態をいう。
また、例えば、巡視船が不審船を追跡する場合には、所定の経過時間T後に自機A(巡視船)が目標B(不審船)に追いつく状態とすることができる。また、例えば、車両で固定目標に行く場合には、所定の経過時間T後に自機A(車両)が目標B(固定目標)に到達する状態とすることができる。
以下、具体的に説明する。
【0030】
[初期条件の設定]
経路候補生成手段30は、初期条件として、自機Aが現在追従している経路における位置指令、速度指令及び加速度指令に基づいて自機Aの現在の位置xs、速度vs、加速度asを設定する。
続いて、経路候補生成手段30は、自機Aの現在の位置xs、速度vs、加速度asのうちの加速度asを複数とおりに変化させるために、例えば
図3に示すように、自機Aの速度vsから割り出される自機Aの現在の進行方向に直交する方向に複数個の加速度aの変化量Δaを設定する(なお、Δa=0の場合を含んでもよい。以下同じ。)。設定した加速度aの各変化量Δaをそれぞれ自機Aの現在の加速度asに加算することで、複数個の加速度asを設定する。
【0031】
なお、自機Aの現在の位置xsと速度vsについては、上記の位置指令や速度指令から変化させない。
経路候補生成手段30は、上記のようにして自機Aの現在の位置xsや速度vs、複数個の加速度asを設定すると、それらを記憶手段20に一時的に保存させる。なお、以下、加速度asは変化量Δaが加算された後の加速度asを表す。
【0032】
[終端条件(経過時間)の設定]
続いて、経路候補生成手段30は、終端条件として、複数の経過時間T=T1、T2、…(
図2参照)を設定する。
この場合、複数の経過時間Tとして、複数の経過時間Tを予め任意に設定しておき、記憶手段20に保存しておくように構成することも可能である。
【0033】
また、例えば、自機Aと目標Bの現在の各位置からヘッドオンの状態(すなわち向かい合った状態)で互いに最大速度で飛行した場合に互いに衝突するまでの時間を最短時間とし、自機Aが目標Bの速度よりやや速い速度(例えば目標Bの速度の1.1倍)でゆっくり飛行して自機Aが目標Bに対して所定の状態になるまでの時間を最長時間として、最短時間と最長時間との間を等分(例えば10等分)するなどして複数の経過時間Tを設定することも可能である。
この場合は、経路候補生成手段30は、設定した複数の経過時間Tを記憶手段20に一時的に保存させる。
【0034】
[終端条件(位置、速度、加速度)の設定]
続いて、経路候補生成手段30は、終端条件として、自機Aが、上記のようにして設定した経過時間T後に前述した目標Bに対して所定の状態になった場合の自機Aの位置xe、速度ve、加速度aeを設定する。
終端条件としての自機Aの位置xe、速度ve、加速度aeは、目標Bが移動目標である場合には上記の経過時間Tごとに異なる。
【0035】
具合的には、経路候補生成手段30は、予測された目標Bの経路R0(例えば
図2参照)に基づいて、経過時間Tが経過した時点での目標Bの位置x0(T)、速度v0(T)、加速度a0(T)を割り出す。
そして、編隊飛行を行う場合は、終端条件としての自機A(すなわち目標Bに対して所定の状態になった自機A)の位置xeを、目標Bの位置x0(T)から所定の方向と距離だけオフセットした位置に設定する。また、この場合、終端条件としての自機Aの速度veや加速度aeについては、目標Bの速度v0(T)や加速度a0(T)と同じ値を設定する。
【0036】
経路候補生成手段30は、この処理を、複数の経過時間Tについてそれぞれ行う。
そして、経過時間Tごとに、経過時間Tと、当該経過時間Tに対応する終端条件としての自機Aの位置xe、速度ve、加速度aeとをそれぞれ対応付けて記憶手段20に一時的に記憶させる。
【0037】
[経路候補の生成]
続いて、経路候補生成手段30は、加速度asや経過時間Tを変化させながら、自機Aの現在の状態(位置xs、速度vs、加速度as)から所定の経過時間T後に目標Bに対して所定の状態になるまでの経路候補Rn(R1、R2、…)を複数生成させる。
すなわち、経路候補生成手段30は、上記の複数の経過時間T=T1、T2、…の中から1つの経過時間T(例えばT1)を抽出し、抽出した経過時間Tの下で、初期条件の設定の際に設定した複数個の加速度asについてそれぞれ経路候補Rnを生成させる。
【0038】
そして、経路候補生成手段30は、この処理を、各経過時間Tについてそれぞれ行うことで複数の経路候補Rnを生成させるようになっている。
そのため、例えば、前述した終端条件の設定で経過時間Tとして10個の経過時間Tが設定され、前述した初期条件の設定で自機Aの現在の加速度asとして9個の加速度asが設定されている場合は、経路候補Rnは90個生成される。
【0039】
ここで、経路候補生成手段30における経路候補Rnの生成について具体的に説明する前に、経路候補Rnの生成(算出)方法の一例について説明する。
なお、この経路候補Rnの生成方法の一例の説明における位置x、速度v、加速度aは、3次元のベクトルを表すものではなく、3次元ベクトルのうちのx成分を表すものである。位置、速度、加速度(3次元ベクトル)のy成分、z成分については説明を省略するが、以下のx成分と同様にして計算される。
【0040】
例えば、自機Aの位置xを時間tの5次関数で表すとすると、自機Aの位置xは、自機Aの現在の位置xs、速度vs、加速度asを用いて下記の(1)式のように表すことができる。
【数1】
ここで、p3、p4、p5は、自機Aの位置xを時間tの5次関数で表した場合のt
3の項、t
4の項、t
5の項の各係数を表す。
【0041】
また、速度vと加速度aは位置xの1階微分、2階微分で算出することができるため、自機Aの速度v、加速度aは、上記の(1)式を1階微分、2階微分して下記の(2)式、(3)式のように表すことができる。
【数2】
【0042】
そして、複数の経過時間Tの中から1つの経過時間Tを抽出した場合、その経過時間Tを上記の(1)~(3)式の時間tに代入すると、算出される位置x、速度v、加速度aは、上記の[終端条件(位置、速度、加速度)の設定]で当該経過時間Tについて設定された位置xe、速度ve、加速度aeになるはずであるから、それらを上記の(1)~(3)式に代入して下記の(4)~(6)式が得られる。
【数3】
【0043】
そして、これらを変形して行列式の形にすると、下記の(7)式が得られる。
【数4】
そのため、設定された経過時間Tや初期条件として設定された自機Aの現在の位置xs、速度vs、加速度as、終端条件として設定された自機Aの位置xe、速度ve、加速度aeを上記の(7)式に代入して計算することで各係数p3、p4、p5を算出することができる。
【0044】
そして、算出した各係数p3、p4、p5を上記の(1)~(3)式にそれぞれ代入することで1つの経路候補Rnの位置x、速度v、加速度a(3次元ベクトル)のx成分が算出される。
そして、この計算を位置x、速度v、加速度a(3次元ベクトル)のy成分やz成分についても同様に行うことで、1つの経路候補Rnを算出して生成することができる。
【0045】
このように、経路候補生成手段30は、自機Aの位置xを時間tの5次関数で表した場合のt3の項の係数p3、t4の項の係数p4、t5の項の係数p5を、経過時間Tと、自機Aの現在の状態における位置xs、速度vs、加速度asと、目標Bに対して所定の状態になった場合の位置xe、速度ve、加速度aeに基づいて算出して、自機Aの位置xを時間tの5次関数で表す計算処理を、3次元の各方向(x方向、y方向、z方向)についてそれぞれ行うことで経路候補Rnを生成するように構成することが可能である。
【0046】
なお、経路候補Rnの生成方法は上記の方法に限定されず、他の生成方法を採用することも可能である。
そして、経路候補生成手段30は、上記のようにして複数の経路候補Rnを生成すると、生成した各経路候補Rnを記憶手段20に一時的に保存させるようになっている(
図1参照)。
【0047】
[経路候補生成手段]
最適経路生成手段40(
図1参照)は、上記のようにして経路候補生成手段30により生成された経路候補Rnのうち、所定の制限を逸脱せず、地面や目標Bを含む他の物体との衝突がない経路候補Rnの中で、評価関数に基づく評価結果が最適になる経路候補Rnを選択して最適な経路として生成するようになっている。
【0048】
[制限と経路補正]
ここで、上記の「制限」について説明する。
上記のようにして経路候補生成手段30で生成された経路候補Rnの中には、経路候補Rnに沿って自機Aを飛行させた場合に、経路候補Rn上のある区間で、例えば自機Aの速度が自機Aの最高速度を超過したり、パイロットに異常に大きなGがかかったり、あるいは地面や目標B(あるいは他の物体)と衝突したりするような経路候補Rnが存在し得る。
【0049】
しかし、そのような経路は好ましくないため、本実施形態では、経路候補Rnに対して、例えば以下のような制限が課されている。
(1)速度が最高速度以下であること。
(2)パイロットにかかるGが5G以下であること。
(3)迎角が30度以下であること。
(4)高度が200m以上であること。
(5)他機との離隔距離が50m以上であること。
(6)危険エリアに進入しないこと。
【0050】
なお、危険エリアとは、例えば、飛行禁止空域やミサイル発射基地の周辺、あるいは乱気流が発生している場所等を表す。
また、制限は、状況に応じて適宜設定されることは言うまでもない。例えば、曲技飛行(アクロバット飛行)を行うような場合には、(5)の他機(例えばリーダ機)との離隔距離の制限をより短いものとしたり、あるいは離隔距離に関する制限をなくしたりすることが可能である。
【0051】
そして、最適経路生成手段40では、後述するように、生成された経路候補Rnが上記のような所定の制限を逸脱する場合は、制限を逸脱している区間での位置xや速度vを所定の位置xや速度vに補正して当該経路候補Rnを生成し直すようになっている。
すなわち、本実施形態では、最適経路生成手段40は、生成された経路候補Rnにおいて例えば高度が200m未満になる区間がある場合は、その区間で高度が200mになるように経路候補Rnを補正するようになっている。また、生成した経路候補Rnにおいて例えば速度が最高速度を超える区間がある場合は、その区間で速度が最高速度(あるいは最高速度より若干遅い速度)になるように経路候補Rnを補正するようになっている。
【0052】
[スラスト性能について]
また、生成された経路候補Rnに沿って自機Aを飛行させた場合に、自機Aの加速に要する仕事と空気による抵抗損失との総量が自機Aのスラスト性能を超えてしまうと、自機Aは経路候補Rnに沿った飛行を行うことができない。
そのため、本実施形態では、最適経路生成手段40は、経路候補Rnを選択する場合の前提として、生成された経路候補Rnの全区間において(すなわち時間tが0から設定された経過時間Tが経過するまでの間に)、自機Aの加速に要する仕事と抵抗損失との総量が自機Aのスラスト性能を超えない経路候補Rnを最適な経路Rbest(以下、最適経路Rbestという。)の候補として選択するようになっている。
【0053】
なお、本実施形態では、この自機Aのスラスト性能に関する評価として、自機Aの加速に要する仕事と抵抗損失との総量と、自機Aのスラスト性能との差を考慮した評価値Q1が用いられるようになっている。
また、本実施形態では、上記の評価値Q1については、理論上は0以下であることが望ましいが、プログラム上の数値誤差に対する保証として、0以下とする代わりに10
-5以下であるか否かを判断基準として用いている(後述する
図4参照)。
【0054】
[評価関数に基づく評価結果]
また、最適経路生成手段40は、上記のように、評価関数に基づく評価結果が最適になる経路候補Rnを最適経路Rbestとして選択するようになっている。
その際、評価関数は、最適経路Rbestを選択する際に最も重視される観点に基づいて設定される。
【0055】
例えば、経路候補Rnに沿って飛行した際のエネルギー損失を少なくするという観点で最適経路Rbestを選択する場合には、最適経路生成手段40は、例えば自機Aの加速に要する仕事と抵抗損失との総量を計算する評価関数で算出される評価結果として評価値Q2を算出するように構成することが可能である。
【0056】
なお、以下では、このようにエネルギー損失を最小にする場合について説明するが、例えば、経路候補Rnに沿って飛行した際のエネルギー損失を少なくするという観点で最適経路Rbestを選択する場合には、前述した経過時間Tを評価関数や評価値Q2として用いるように構成することが可能である。
この場合は、例えば、上記の経過時間Tの間隔を小さくするようにして複数の経過時間Tを設定し、生成された経路候補Rnのうち、上記の制限を逸脱せず、地面や目標B等の他の物体との衝突がない経路候補Rnの中で、経過時間Tが最も短くなる(評価結果が最適になる)経路候補Rnを選択して最適経路Rbestとして生成するように構成される。
また、この他にも、最適経路Rbestを選択する際に最も重視される観点に基づいて評価関数を適切に設定することで、その観点について最適経路Rbestを生成することが可能となる。
【0057】
[最適経路生成処理の例]
以下、最適経路生成手段40における処理の例について、
図4のフローチャートに基づいて説明する。
本実施形態では、最適経路生成手段40は、複数の経路候補Rnの中から経路候補Rnを順次抽出していき(ステップS1)、より適切な経路候補Rnが現れるごとにメモリに記憶した最適経路候補を当該経路候補Rnに更新していく(ステップS5)。そして、このようにして選択した最適な経路候補Rn(すなわち最終的にメモリに残っている最適経路候補)を最適経路Rbestとして生成するようになっている(ステップS19)。
以下、具体的に説明する。
【0058】
最適経路生成手段40は、上記のようにして経路候補生成手段30が生成した複数の経路候補Rnの中から1つの経路候補Rnを抽出する(ステップS1)。
続いて、最適経路生成手段40は、ステップS2、S3の判断処理を行う。なお、ステップS2、S3の判断処理では、抽出した経路候補Rnやメモリに保存されている最適経路候補が上記の制限を逸脱しておらず、全ての条件をクリアしている場合を「生成に成功」を表現し、経路候補Rnや最適経路候補が上記の制限を逸脱しており、クリアしていない条件が1つ以上ある場合を「生成に失敗」と表現している。
【0059】
最適経路生成手段40は、抽出した経路候補Rnは生成に失敗しているが、メモリに保存されている最適経路候補は生成に成功している場合には(ステップS2:Yes)、生成に失敗している経路候補Rn(すなわち上記の制限を逸脱している経路候補Rn)よりも生成に成功している最適経路候補(すなわち上記の制限を逸脱していない最適経路候補)の方を優先して選択すべきであるため、抽出した経路候補Rnについては更なる処理を行わずに処理を終了するようになっている。
そのため、この場合は、最適経路候補の更新(ステップS5)は行われない。
【0060】
一方、最適経路生成手段40は、ステップS2の判断がNoの場合、続いて、抽出した経路候補Rnもメモリに保存されている最適経路候補も生成に失敗しているか否かを判断する(ステップS3)。
なお、ステップS3の判断がYesの場合の処理については後で説明する。
【0061】
ステップS3の判断がNoの場合、この時点で、経路候補Rnと最適経路候補がともに生成に成功しているか、又は経路候補Rnは生成に成功し、最適経路候補は生成に失敗しているかのいずれかになる。
そして、経路候補Rnは生成に成功し、最適経路候補は生成に失敗しているのであれば、上記と同じ理由で、生成に成功している経路候補Rn(すなわち上記の制限を逸脱していない経路候補Rn)の方を優先して選択すべきである。
【0062】
そのため、最適経路生成手段40は、経路候補Rnは生成に成功し、最適経路候補は生成に失敗している場合には(ステップS4:Yes)、メモリに記憶されている最適経路候補を、今回抽出した経路候補Rnに更新する(ステップS5)。
本実施形態では、このようにして、複数の経路候補Rnの中から上記の制限を逸脱せずに生成に成功した経路候補Rnを選び出し、その中から最適経路Rbestを選び出すようになっている。
【0063】
また、ステップS3の判断がNoの場合、この時点で、経路候補Rnと最適経路候補はともに生成に成功していることになる。
最適経路生成手段40は、続いて、抽出した経路候補Rnにおける評価値Q1(前述した自機Aのスラスト性能に関する評価値Q1)が10-5以下であるか否かを判断する(ステップS6)。なお、前述したように、スラスト性能に関する評価値Q1は、0以下とする代わりに10-5以下とされている。
【0064】
最適経路生成手段40は、抽出した経路候補Rnにおける評価値Q1が10-5以下であれば(ステップS6:Yes)、抽出した経路候補Rnにおける評価値Q2(前述した評価関数に基づく評価結果としての評価値Q2)がメモリに記憶されている最適経路候補における評価値Q2より良い(この場合は評価値Q2が小さい)か否かを判断する(ステップS7)。
そして、最適経路生成手段40は、抽出した経路候補Rnの方が最適経路候補よりも評価値Q2が良い場合は(ステップS7:Yes)、メモリに記憶されている最適経路候補を今回抽出した経路候補Rnに更新するが(ステップS5)、抽出した経路候補Rnの方が最適経路候補よりも評価値Q2が悪い場合は(ステップS7:No)、最適経路候補を更新しない。
【0065】
本実施形態では、このようにして、経路候補Rnと最適経路候補のいずれもがスラスト性能に関する評価値Q1が10-5以下である場合は、評価関数に基づく評価結果がより良い方を最適経路候補として残すようになっている。
そして、最適経路生成手段40は、全ての経路候補Rnについて処理が終了していなければ(ステップS8;No)、ステップS1の処理に戻って次の経路候補Rnを抽出する。
【0066】
一方、ステップS6の判断処理で、今回抽出した経路候補Rnの評価値Q1が10-5より大きい場合には(ステップS6:No)、最適経路生成手段40は、メモリに記憶されている最適経路候補の評価値Q1が10-5以下であるか否かを判断する(ステップS9)。
そして、最適経路候補の評価値Q1が10-5以下であれば(ステップS9:Yes)、最適経路候補を評価値Q1が10-5より大きい経路候補Rnに更新する必要はないため、最適経路生成手段40は、最適経路候補を更新しない。
【0067】
また、今回抽出した経路候補Rnの評価値Q1が10-5より大きいが(ステップS6:No)、最適経路候補の評価値Q1も10-5より大きい場合には(ステップS9:No)、最適経路生成手段40は、経路候補Rnの方が最適経路候補よりも評価値Q1が良ければ(ステップS10:Yes)メモリに記憶されている最適経路候補を今回抽出した経路候補Rnに更新する(ステップS5)。また、最適経路候補の方が評価値Q1が良ければ(ステップS10:No)、最適経路候補を更新しない。
【0068】
必ずしもリカバリーが可能である保証はないが、評価値Q1が良いほど(すなわち自機Aの加速に要する仕事と抵抗損失との総量が自機Aのスラスト性能を超えた度合いがより小さいほど)リカバリーできる可能性が高くなることが考えられる。
そのため、本実施形態では、最適経路生成手段40は、上記のように経路候補Rnも最適経路候補もいずれも評価値Q1が10-5より大きい場合には、評価値Q1がより良い方を選択して最適経路候補として残すようになっている。
【0069】
本実施形態では、以上のように、今回抽出した経路候補Rnとメモリに記憶されている最適経路候補がともに生成に成功している場合には、上記のステップS6、S7の各処理あるいはステップS9、S10の各処理が行われるようになっている。
【0070】
次に、ステップS3の判断がYesの場合、すなわち今回抽出した経路候補Rnもメモリに記憶されている最適経路候補もいずれも生成に失敗している場合について説明する。
なお、すでにメモリに生成に成功している最適経路候補が記憶されている場合には、上記のように、最適経路候補が生成に失敗している経路候補Rnに更新されることはないため、ステップS3の判断は必ずNoになる。そのため、以下の各処理が行われることはない。
【0071】
最適経路生成手段40は、ステップS3の判断がYesの場合(すなわち今回抽出された経路候補Rnが上記の制限を逸脱する場合)は、前述したように、経路候補Rnのうち制限を逸脱している区間での位置xを補正(例えば高度が200m未満になる区間では高度を200mに補正)したり速度vを補正(例えば速度vが最高速度を超える区間では速度vが最高速度(あるいは最高速度より若干遅い速度)になるように補正)して(ステップS11)、当該経路候補Rnを生成し直す。
【0072】
また、このように経路補正した経路候補Rnに沿って自機Aを飛行させた場合に、自機Aが地面や目標B(
図2参照)等の他の物体に衝突しない場合には(ステップS12:Yes)、最適経路生成手段40は、前述したステップS6、S7、S9、S10の各判断処理と同様にステップS13~S16の各判断処理を行い、必要に応じてメモリに記憶されている最適経路候補を今回抽出した経路候補Rnに更新する(ステップS5)。
なお、前述したように、S6、S7、S9、S10の各判断処理は、今回抽出した経路候補Rnとメモリに記憶されている最適経路候補がともに生成に成功している場合に行われるものであるが、ステップS13~S16の各判断処理は、今回抽出した経路候補Rnとメモリに記憶されている最適経路候補がともに生成に失敗している場合に行われるものである点で異なる。
【0073】
一方、ステップS12の判断処理で、経路補正した経路候補Rnに沿って自機Aを飛行させた場合に自機Aが他の物体に衝突する場合には(ステップS12:No)、最適経路生成手段40は、メモリに記憶されている最適経路候補に沿って自機Aを飛行させた場合に自機Aが他の物体に衝突するか否かを判断する(ステップS17)。
そして、最適経路候補に沿って自機Aを飛行させた場合に自機Aが他の物体に衝突しない場合は(ステップS17:No)、他の物体と衝突する経路候補Rnよりも他の物体と衝突しない最適経路候補の方を優先して選択すべきであるため、最適経路生成手段40は、最適経路候補を更新しない。
【0074】
また、最適経路生成手段40は、最適経路候補に沿って自機Aを飛行させても自機Aが他の物体に衝突する場合は(ステップS17:Yes)、今回抽出した経路候補Rnに沿って自機Aを飛行させた場合の方が、最適経路候補に沿って自機Aを飛行させた場合よりも衝突までの時間が長い場合には(ステップS18:Yes)、メモリに記憶されている最適経路候補を、今回抽出した経路候補Rnに更新する(ステップS5)。
しかし、最適経路候補に沿って自機Aを飛行させた場合の方が衝突までの時間が長い場合には(ステップS18:No)、最適経路候補を更新しない。
【0075】
すなわち、本実施形態では、最適経路生成手段40は、今回抽出した経路候補Rnと、メモリに記憶されている最適経路候補のいずれも、それらに沿って自機Aを飛行させた場合に自機Aが他の物体に衝突する場合は、衝突までの時間が長い方を最適経路候補として残すようになっている。
このように構成する理由は、以下のとおりである。
【0076】
前述したように、本実施形態では、最適経路生成システム1は、予測される目標Bの経路R0(
図1、
図2参照)が更新されるごとに、更新した目標Bの経路R0に基づいて自機Aの最適経路Rbestの生成処理を行うようになっている。
そのため、現在予測されている目標Bの経路R0と自機Aの現在の位置x、速度v、加速度a等に基づくと、地面や目標B等の他の物体と衝突するような最適経路Rbestしか生成できないような状況であっても、次の最適経路Rbestの生成処理の際には、予測される目標Bの経路R0も更新されており自機Aの現在の位置x、速度v、加速度a等も変わっているため、他の物体と衝突しない最適経路Rbestが生成される可能性がある。
【0077】
そのため、他の物体と衝突するような最適経路Rbestしか生成できないような状況の下では、可能な限り衝突までの時間が長い経路を最適経路候補として生成しておき、他の物体と衝突しない最適経路Rbestが生成される状況になるのを待つことが望ましい。
そのため、本実施形態では、上記のように、最適経路生成手段40は、生成された経路候補Rnのいずれもが、当該経路候補Rnに沿って自機Aを飛行させた場合に自機Aが地面や目標Bを含む他の物体に衝突するものである場合は、衝突までの時間が最も長い経路候補Rnを選択するようになっている。
【0078】
最適経路生成手段40は、以上の各処理を、経路候補生成手段30が生成した各経路候補Rnについて行う(ステップS8)。
そして、全ての経路候補Rnについて処理を終了すると(ステップS8:Yes)、最終的にメモリに残っている最適経路候補を最適経路Rbestとして生成するようになっている(ステップS19)。
【0079】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る最適経路生成システム1によれば、経路候補生成手段30は、自機Aの現在の状態から所定の経過時間T後に目標Bに対して所定の状態になるまでの経路候補Rnを、自機Aの現在の位置xs、速度vs、加速度asのうちの加速度asを変化させて複数生成する。また、最適経路生成手段40は、生成された経路候補Rnのうち、所定の制限を逸脱せず、地面や目標Bを含む他の物体との衝突がない経路候補Rnの中で、評価関数に基づく評価結果(すなわち上記の例では評価値Q2)が最適になる経路候補Rnを選択して最適経路Rbestとして生成するように構成した。
【0080】
そのため、自機Aと目標Bとがすでに近接している場合は勿論、自機Aが目標Bに対して離れた位置にいる場合でも、自機Aが目標Bに向かって移動する際に、他の物体との衝突等を生じることがなく、目標Bに対して所定の状態になるまでの最適経路Rbestを生成することが可能となる。
そして、本実施形態に係る最適経路生成システム1では、最適経路Rbestを選択する際に最も重視される観点に基づいて評価関数を適切に設定することで、この観点に最も適した最適経路Rbestを自動的に生成することが可能となる。
【0081】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1 最適経路生成システム
30 経路候補生成手段
40 最適経路生成手段
A 自機
a 加速度
ae 目標に対して所定の状態になった場合の加速度
as 自機の現在の加速度
B 目標
p3 t3の項の係数
p4 t4の項の係数
p5 t5の項の係数
Q2 評価値(評価関数に基づく評価結果、自機の加速に要する仕事と抵抗損失との総量)
Rbest 最適経路(最適な経路)
Rn、R1、R2、… 経路候補(経路の候補)
T 経過時間
t 時間
v 速度
ve 目標に対して所定の状態になった場合の速度
vs 自機の現在の速度
x 位置
xe 目標に対して所定の状態になった場合の位置
xs 自機の現在の位置