(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】プレス成形体、車両用シートバックボード、およびプレス成形体製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20230201BHJP
B29C 70/46 20060101ALI20230201BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230201BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
B29C70/46
B32B27/40
B32B5/24 101
(21)【出願番号】P 2019016456
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】廣川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 良治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友治
(72)【発明者】
【氏名】小野 博朗
(72)【発明者】
【氏名】向井 正志
(72)【発明者】
【氏名】須本 勝美
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129843(JP,A)
【文献】特開2013-141782(JP,A)
【文献】特開平10-236204(JP,A)
【文献】特開2001-129911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B60N 2/00-2/90
B60R 13/01-13/08
B29C 39/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層を介して積層された表皮と不織布とを有し、前記不織布は、目付が500g/m
2以上800g/m
2以下であり、ショアA硬度が45以上60以下であ
り、
前記接着層がポリウレタンフォームを含むことを特徴とするプレス成形体。
【請求項2】
単位面積当たりの質量が800g/m
2以上1500g/m
2以下である請求項1に記載のプレス成形体。
【請求項3】
前記不織布は、融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂を含む請求項1または2に記載のプレス成形体。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載のプレス成形体を用いてなることを特徴とする車両用シートバックボード。
【請求項5】
請求項1から
3のいずれかに記載のプレス成形体を製造するプレス成形体製造方法であって、シート状のポリウレタンフォームの両面を加熱し、一方側面に表皮を積層させるとともに、他方側面に融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂を含む不織布を 積層させて積層体を形成し、前記積層体を、前記不織布を下面にして所定温度に加熱された加熱台に載置するとともに、前記表皮を間接的に前記加熱台の温度より低い温度で熱し、前記熱可塑性樹脂を溶融させ、プレス用型に挟んでプレスし賦形することを特徴とするプレス成形体製造方法。
【請求項6】
前記不織布は、当該不織布を構成する不織布構成繊維を絡み合わせて不織布本体を形成する際に、前記熱可塑性樹脂を前記不織布構成繊維に混合させて作成されたものである請求項
5に記載のプレス成形体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮と不織布を備えるプレス成形体および、上記プレス成形体を用いた車両用シートバックボード、およびプレス成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の技術分野において所望形状の成形体が提供されている。一般的な例としては、熱可塑性樹脂を用いてなる所望形状の射出成形体が挙げられる。上記射出成型体は深絞りなどにも対応し所望形状を実現し易いという点で優れている。しかしながら、硬化した樹脂からなる射出成形体は、縫製により他の部材と組み合わせることができず、また人体が当たったときに、違和感や痛みなどが発生する場合がある。
【0003】
たとえば一例として、車両用シートの背もたれ部分であるシートバックの背面側に配置される車両用シートバックボードは、従来、ポリプロピレンなどの合成樹脂を用いて射出成形された射出成形体が汎用されていた。しかしながら、かかる合成樹脂製の車両用シートバックボードは、シートバックの表側に配置される表皮や、車両用シートバックボードの表面側に設けられるポケット部材などと、縫製により組合せることができなかった。また後部座席の乗員の足が、上記車両用シートバックボードに接触した場合、人工物に当たった違和感や痛みが発生する場合があった。
【0004】
これに対し、不織布に合成樹脂を含侵させて凹凸状に成形されてなる成形不織布で形成された部材をシートバックの背面側に配置してなる車両用シートバックが提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
特許文献1に示されるように成形不織布で形成された部材を車両用シートバックボードとして用いることにより、上述する縫製の問題や、乗員の足が接触することにより発生する違和感や痛みの問題が抑制され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述する従来の成形不織布は以下の課題を有していた。
即ち、特許文献1に開示されるような成形不織布は、良好な縫製を確保しつつ充分な硬度を出し難いという問題があった。
【0008】
即ち、上記成形不織布の硬度を上げるためには、不織布の目付を大きくすることが考えられる。しかし、不織布の厚みを増大させることで目付を大きくした場合、不織布に含浸させる合成樹脂の量を増加させなければならず、不織布の樹脂含浸面において合成樹脂が多量に存在することになり、縫製が不良になる虞があった。また、不織布を構成する繊維密度を高めることで目付を大きくした場合、合成樹脂が不織布の中心部分まで浸透し難く成形性が不良になる虞があった。そのため、実質的に良好な縫製を確保しつつ充分な硬度の成形不織布を提供することは困難であった。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、適度な柔軟性を示しつつ充分な硬度を発揮し、かつ良好に縫製可能なプレス成形体および車両用シートバックボード、並びにプレス成形体製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプレス成形体は、接着層を介して積層された表皮と不織布とを有し、上記不織布は、目付が500g/m2以上800g/m2以下であり、ショアA硬度が45以上60以下であり、上記接着層がポリウレタンフォームを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の車両用シートバックボードは、本発明のプレス成形体を用いてなることを特徴とする。
【0012】
本発明のプレス成形体製造方法は、本発明のプレス成形体を製造するプレス成形体製造方法であって、シート状のポリウレタンフォームの両面を火炎により溶融させ、一方側面に表皮を積層させるとともに、他方側面に融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂を含む不織布を積層させて積層体を形成し、上記積層体を、上記不織布を下面にして所定温度に加熱された加熱台に載置するとともに、上記表皮を間接的に上記加熱台の温度より低い温度で熱し、上記熱可塑性樹脂を溶融させ、プレス用型に挟んでプレスし賦形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明のプレス成形体は、適度な柔軟性および硬度を有する上、容易に縫製により他の部材と組み合わせることが可能である。
また上記プレス成形体を用いてなる本発明の車両用シートバックボードは、上記プレス成形体の優れた効果を享受するとともに、成形性が良好で見栄えも良好である。
また本発明のプレス成形体製造方法は、適度な柔軟性、および硬度を示し、所望形状に成形され外観良好のプレス成型物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のプレス成形体の第一実施形態の断面図である。
【
図2】本発明のプレス成形体の第二実施形態の断面図である。
【
図3】本発明のプレス成形体の製造方法の例を説明する工程図であり、(a)はプレス成形体の製造に用いられる積層体の断面図であり、(b)は、積層体における不織布に含まれる低融点材を融解させる加熱工程を示し、(c)は、低融点材を融解させた状態の積層体をプレス成形用型に設置した状態を示し、(d)は、プレス成形するプレス工程を示している。
【
図4】本発明の第三実施形態である車両用シートバックボードを備えるシートバックの斜視図である。
【
図5】
図4に示す車両用シートバックボードのV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。尚、本発明の説明に関し用いる図面は、本発明および本発明に含まれる部材の寸法および形状を限定するものではない。
【0016】
尚、本発明の説明において使用する言葉、用語のいくつかに関する意味は、以下のとおりである。
プレス成形体の成形性が良好であるとは、プレス成形によりプレス成形体を成形した際に成形不良が生じない、または生じ難いことを意味する。ここでいう成形不良とは、プレス成形体が、所望の形状に賦形されないという状態を意味する。
車両用シートバックボードの向きは、当該ボードを用いたシートバックが搭載された車両の向きと同一であるものとして説明する。例えば、正面側とは車両の正面から見た側、背面側とは車両の後方から見た側、幅方向とは車両の幅方向である。
【0017】
<第一実施形態>
以下に本発明の第一実施形態にかかるプレス成形体100について
図1を用いて説明する。
図1は、プレス成形体100を厚み方向に切断してなる断面を模式的に示す断面図である。
図1に示すとおり、プレス成形体100は、接着層20を介して積層された表皮30と不織布10とを有している。本発明において、不織布10は、目付が500g/m
2以上800g/m
2以下あり、ショアA硬度が45以上60以下である。
【0018】
かかる構成を備えるプレス成形体100は、芯材として不織布が用いられているため、従来の熱可塑性樹脂を用いた射出成形体と異なり柔軟性に優れる。また、プレス成形体100は、適度な硬度を備えつつ縫製加工が可能である。そのため、プレス成形体100と他の部材とを縫製により組合せることができる。
【0019】
プレス成形体100の単位面積当たりの質量は、特に限定されず、用途によって適宜決定することができる。充分な強度の確保という観点からは、プレス成形体100の単位面積当たりの質量は、800g/m2以上であることが好ましく、900g/m2以上であることがより好ましい。プレス成形体100自体またはこれを用いた完成品の軽量化に貢献するという観点からは、プレス成形体100の単位面積当たりの質量は、1500g/m2以下であることが好ましく、1200g/m2以下であることがより好ましい。プレス成形体100の単位面積当たりの質量は、不織布の目付および/または表皮の目付等から適宜調整することができる。
以下に、プレス成形体100の構成についてより詳細に説明する。
【0020】
(不織布)
不織布10は、プレス成形体100の芯材に相当し、不織布構成繊維110を絡みあわせてなるシート状物である。以下の説明において、不織布構成繊維110よりなる不織布10の本体を不織布本体120と称する。また不織布10は、シート状の不織布本体120のみからなる態様、および不織布本体120と任意の1または2以上の部材とからなるシート状物である態様のいずれも含む。
不織布10を芯材として備えるプレス成形体100は、芯材が熱可塑性樹脂である従来の射出成形体に比べて柔軟性に優れる上、縫製により他の部材との縫合が可能であり加工性にも優れる。
【0021】
不織布10の厚みは、所定範囲の目付を実現できる範囲において、特に限定されず、プレス成形体100の用途(技術分野)に応じて適宜変更することができる。
【0022】
不織布10の目付は、500g/m2以上800g/m2以下である。かかる目付を実現することで、プレス成形体100は、軽量性および柔軟性を有しつつも、適度な硬度を発揮することが可能である。
不織布10の目付が500g/m2未満であると、プレス成形体100の硬度が充分でなくなる虞がある。プレス成形体100の硬度をより大きくするという観点からは、上記目付は、520g/m2以上であることが好ましい。
不織布10の目付が800g/m2を超える場合、プレス成形体100の柔軟性が損なわれる虞がある。適度な硬度を有しつつ、より柔軟なプレス成形体を提供するという観点からは、上記目付は、780g/m2以下であることが好ましい。
【0023】
不織布10のショアA硬度は、45以上60以下である。かかる不織布10を備えるプレス成形体100は、柔軟性に優れ、縫製加工が可能である上、上記不織布10のショアA硬度以上の硬度を発揮する。柔軟性および硬度のバランスが特に優れ、種々の車両用部材として使用可能であるという観点からは、上記ショアA硬度は、50を超えて58以下であることが好ましい。プレス成形体100は、不織布10のショアA硬度が50を超えても縫合可能であり、樹脂を含侵させてなる従来の不織布成形体に比べ、加工特性にも優れる。
【0024】
不織布10のショアA硬度は、例えば不織布10の目付により調整することができる。具体的にはプレス成形前の不織布10の目付が、500g/m2以上800g/m2以下であることにより、好ましい範囲のショアA硬度を示す不織布10が得られ易い。
【0025】
不織布10のショアA硬度の測定方法は、JIS K6253に準拠して行うことができる。具体的には、不織布10のショアA硬度は、プレス成形体100の製造に用いる不織布10と同じ不織布を測定用不織布として用意し、プレス成形体100のプレス加工と同じ条件で上記測定用不織布のみをプレス加工し、プレス加工後の測定用不織布を上記方歩に準拠して測定した値である。
【0026】
不織布10のショアA硬度の調整方法は、特に限定されないが、たとえば、不織布10の目付および低融点材130の含有量、プレス加工時の温度や圧力などにより調整し得る。特にプレス成形前の不織布10の目付が、450g/m2以上900g/m2以下の範囲では、好ましい範囲のショアA硬度を示す不織布10が得られ易い。
【0027】
不織布10は、融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂を含んでいることが好ましい。これにより、不織布10の賦形性をより向上させることができ、プレス成形体100の成形性をより良好なものとすることができる。より具体的には、不織布10に熱可塑性樹脂を含めることによって、後述する第四実施態様において説明するプレス加工にてプレス形成体100を容易に所望の形状に成形することができる。尚、プレス成形体100に含まれる熱可塑性樹脂は、製造工程において溶融され不定形状となっているため、
図1では不織布10に含まれる熱可塑性樹脂の図示を省略している。例えば、溶融前の当該熱可塑性樹脂は、後述する
図3(a)(b)の熱可塑性樹脂130が参照される。
【0028】
本発明において、熱可塑性樹脂を含む不織布10とは、不織布本体120を製造する際に、不織布本体120の内部に熱可塑性樹脂が混合されてなる不織布を指し、予め製造された不織布本体120に熱可塑性樹脂を含侵させたものとは区別される。不織布本体120の製造の際に熱可塑性樹脂が混合された不織布10は、当該熱可塑性樹脂の混合量を適度に抑制しつつ、不織布10の全体に熱可塑性樹脂を万遍なく存在させることが可能であり、これによって不織布10の賦形性が良好となり、プレス成形体100の成形性が良好となる。不織布10の全体に熱可塑性樹脂が万遍なく存在するとは、不織布10の表面側および厚み方向中心領域に概ね偏りなく熱可塑性樹脂が存在することを意味し、不織布10の表面側に熱可塑性樹脂が偏って存在している態様、あるいは不織布10の内部全体に熱可塑性樹脂が含浸している態様は除かれる。
【0029】
不織布10が上記熱可塑性樹脂を含む場合、当該熱可塑性樹脂の融点は、表皮30と不織布本体120の融点より低いことが好ましい。これにより、プレス成形体100の前駆体である積層体(
図3(a)(b)の積層体200参照)を、プレヒーティングすることで、熱可塑性樹脂だけを溶融させることができる。熱可塑性樹脂が溶融された状態の積層体(積層体200)をプレス成形して所望形状に賦形し、その状態で当該熱可塑性樹脂を硬化させることによって、所望形状に成形されたプレス成形体100を製造することができる。熱可塑性樹脂の融点を100℃以上120℃以下の範囲に特定することで、表皮30および不織布本体120を構成する部材の選択の範囲が広くなるため好ましい。
【0030】
上記熱可塑性樹脂130としては、例えば上述する範囲の融点を示す樹脂であって、たとえば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル(特には低融点ポリエステル)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、およびメタクリル系樹脂から選択される1種または2種以上の組合せ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
不織布10の質量における熱可塑性樹脂130の質量の比率は特に限定されないが、不織布10が所望の形状に良好に賦形されるという観点からは、上記比率は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また良好なプレス成形性を確保しつつ、柔軟性の良好なプレス成形体100を提供するという観点からは、上記比率は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明者らの検討によれば、上記比率が40質量%を境にして、これ以上、熱可塑性樹脂を混合させても、成形性の向上効果が得られ難いことが把握されている。そのため、コストパフォーマンスの観点から、上記比率は、40質量%以下であることが好ましい。
【0032】
不織布10を構成する不織布構成繊維110は、不織布を構成可能な1種の繊維または2種以上の繊維の組合せである。不織布構成繊維110の例としては、たとえば、アラミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等が挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
(表皮)
表皮30は、接着層20を介して不織布10に積層し固着させることができるものであればよい。たとえば、表皮30として、天然皮革、合成皮革、またはファブリックなどから構成される1層のシートまたはこれらの任意の組合せでなる2層以上の積層シートを挙げることができる。
上記天然皮革は、動物の皮膚をなめしてシート状にしたものであり、牛、豚、馬等のいずれの動物の皮膚を用いたものであってもよい。
上記合成皮革は、たとえば、ポリウレタンまたはポリ塩化ビニルなどを用いて構成されるものが挙げられるがこれに限定されない。上記合成皮革は、適宜選択された基材上に上述する合成樹脂が塗布されてなる樹脂層を備えるものであってもよい。ポリ塩化ビニルを用いてなる、所謂塩ビレザーは、代表的な合成皮革であって、表皮30として好適である。上記合成皮革は、表面加工により、スエード調に加工されたものであってもよいし、表面平滑な所謂銀面に仕上げられたものであってもよい。高級感のあるプレス成形体を提供可能であるという観点からは、表皮30として、合成皮革が用いられることが好ましい。
上記ファブリックは、織物、編物、および不織布を含む。
【0034】
表皮30の厚みは、特に限定されない。たとえば合成皮革からなる表皮30としては、0.5mm以上1.5mm以下の範囲で調整することができる。
【0035】
(接着層)
接着層20は、不織布10と表皮30とを積層させ固着させる。かかる目的が達成される範囲において、接着層20は、いずれの部材から構成されてもよい。
接着層20を接着剤で構成する場合には、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられるがこれに限定されない。また不織布10または表皮30の少なくとも一方に接着剤を塗布して、他方を積層することにより、接着層20を形成しつつ、両者を積層させてもよいが、シート状のポリウレタンフォームを用い、フレームラミネートにより当該ポリウレタンフォームを接着層20として不織布10と表皮30とを積層させることもできる。上記フレームラミネートについては、後述する第四実施形態において説明する。
【0036】
接着層20の厚みは、特に限定されないが、たとえば後述するポリウレタンフォーム230を含まず、実質的に接着部材のみからなる接着層20の厚みは、10μm以上100μm以下程度に調整することができる。したがって、厚みの小さいプレス成形体を提供する場合には、後述するポリウレタンフォーム230を含む接着層22よりも、接着層20を採用することが好ましい場合がある。
【0037】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態にかかる不織布構成繊維について
図2を用いて説明する。
図2は、プレス成形体150を厚み方向に切断してなる断面を模式的に示す断面図である。プレス成形体150は、接着層22が、ポリウレタンフォーム230を備えること以外は、プレス成形体100と同様に構成される。そのため、以下の説明では、主として接着層22について説明し、プレス成形体100と同様の構成について適宜第一実施形態を参照するものとする。
【0038】
図2に示すとおり、プレス成形体150は、不織布10と表皮30とが接着層22を介して積層されている。
接着層22は、中間部にポリウレタンフォーム230を備えるとともに、不織布10側の面に不織布側接着面220を有し、表皮30側の面に表皮側接着面210を有している。プレス成形体150は、接着層22において、ポリウレタンフォーム230を備えることから、柔軟性に優れるとともに衝撃吸収性を示す等の好ましい特性を備える。
また第一実施形態における表皮30と不織布10とを備えるプレス成形体100では、プレス工程におけるプレス条件によっては不織布10に若干の収縮や歪みが生じる可能性がある。これに対し、ポリウレタンフォーム230を備えるプレス成形体150は、かかる収縮や歪みがポリウレタンフォーム230に吸収されるため、当該収縮や歪みに起因する凹凸が表皮30に発生し難い。またポリウレタンフォーム230の存在により、不織布10そのものが有する表面の凹凸を表皮30に発現させない効果も奏する。したがってプレス成形体150は特に外観が優れる。
【0039】
柔軟性または衝撃吸収性(クッション性)の向上が顕著に期待されるという観点からは、プレス成形体150におけるポリウレタンフォーム230の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることがさらに好ましい。またプレス成形体150におけるポリウレタンフォーム230の厚みの上限は、特に限定されないが、概ね5.0mm以下である。
【0040】
以上において、第一実施形態および第二実施形態を例に説明する本発明のプレス成形体は、その適度な柔軟性および硬度、並びに優れた外観等から、種々の技術分野に適用可能である。本発明のプレス成形体は、後述する本発明のプレス成形体製造方法等により簡単に所望の形状をなすことができる。したがって、本発明のプレス成形体は、たとえば車両の種々の部位における成形部材として良好に適用可能である。以下に述べる第三実施形態では、車両用部材の一例として、当該プレス成形体を用いてなる本発明の車両用シートバックボードについて説明する。
【0041】
<第三実施形態>
次に本発明の第三実施形態にかかる車両用シートバックボード(シートバックボード400)について
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、シートバックボード400を備えるシートバック500の斜視図である。
図5は、
図4に示すシートバック500におけるシートバックボード400のV-V断面図である。尚、
図5に示すシートバックボード400の断面図では、接着層10、接着層20、および表皮30の個別の図示を省略している。
【0042】
車両の座席は、背もたれであるシートバック500および乗員が着座するシートクッション(図示省略)を備える。シートバック500は、座席の骨格を構成するシートバックフレーム(図示省略)が内蔵されており、正面側には座席の前面から側面、上面を覆うように形成された前表皮520が配置され、背面側には後表皮であるシートバックボード400が配置されている。前表皮520は、前表皮上部512と前表皮下部514とから構成されており、縫製により一体化されたカバー510として座席を覆っている。
【0043】
シートバックフレームは、例えば金属性などの硬質部材により、シートバック500の形状に合わせて構成されており、背面側に張り出す張出部位を有する場合がある。後ろ座席の乗員の安全性を確保する観点から、一般的には、当該張出部位は、面取りがなされる等の処理が必要である。これに対し、本実施形態において示すシートバック500は、所定範囲のショアA硬度を示す不織布(不織布10)を備えるシートバックボード400が、車両幅方向(IN)全体に亘って配置されており、背面視においてシートバックフレームを覆っている。そのため、張出部位がシートバックボード400を介して後部座席の乗員に当接した際の衝撃が抑制される。したがって本実施形態では、上記処理を省略し得る。
【0044】
シートバックボード400は、本発明のプレス成形体を用いて構成される。本実施形態では、具体的には上述するプレス成形体150を用いている。シートバックボード400は、車両毎のデザインおよび設計に併せ、適切な形状にプレス成形され形成される。本実施形態では、具体的には、シートバックボード400は、シートバック500の背面を覆う背面部420と、背面部420の左右端から車両前方向(FR)に延在する側部430を備える。プレス成形体150は、上述するとおり良好な柔軟性と適度な硬度を示すため、これを用いてなるシートバックボード400は、安全性に優れるだけでなく、乗員が接触した際の違和感および痛みを防止することができる。したがって後部座席に着座している乗員がシートバックボード400に接触した場合だけでなく、車両に乗り降りする際に側部430に乗員が接触した際にも不快感が生じ難い。
【0045】
本実施形態では、シートバックボード400の背面部420の中央に、車両前方向(FR)に向けて窪んだ凹部410が形成されている。凹部410は、後部座席の乗員のフットスペースとなる。このように凹凸形状を有するシートバックボード400を製造する際には、熱可塑性樹脂を含む不織布を用いたプレス成形体150を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂の溶融、硬化により不織布を所望形状に賦形でき、成形性の良好なシートバックボード400を提供することができる。
【0046】
本実施形態においてシートバックボード400の背面部420には、収納部440が設けられている。収納部440は、シートバックボード400(プレス成形体150)とは別体の部材をシートバックボード400に対し縫合により取り付けてなる。収納部440は、具体的には、当該部材の横側部および下側部が縫製糸442によりシートバックボード400に縫い付けられて構成された上端開口のポケットである。
【0047】
図5に示すとおり、シートバックボード400に用いられたプレス成形体150は、適度な厚みを備えるシート状物を所望形状にプレス成形してなる。
図5では、不織布10、接着層20、表皮30の図示を省略しているが、表皮30が、露出面412側に配置され、不織布10が露出面412の反対側の面である裏面414側に配置されることが一般的である。
シートバックボード400の厚みは、特に限定されないが、適度な硬度、柔軟性、および軽量性を鑑みると、概ね2.5mm以上15.0mm以下であることが好ましい。また、このとき、シートバックボード400を構成するプレス成形体150における不織布10の厚みは1.5mm以上8.0mm以下であることが好ましく、接着層20の厚みは0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましく、表皮30の厚みは0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
【0048】
プレス成形体150は、上述するとおり接着層20においてポリウレタンフォーム230を備える(
図2参照)。このように、ポリウレタンフォーム230を備えるシートバックボード400は、衝撃吸収性に優れ、後部座席の乗員がシートバックボード400に接触した際の違和感や痛みをより低減させることができる。
【0049】
上述するとおり、プレス成形体150を用いて構成されたシートバックボード400は、良好な硬度を有し安全性に優れる上、軽量性および柔軟性にも優れ、縫製加工も可能である。
【0050】
<第四実施形態>
次に本発明の第四実施形態にかかるプレス成形体製造方法(以下、単に本発明の製造方法と言う場合がある)について
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の製造方法の例を説明する工程図であり、
図3(a)はプレス成形体150の製造に用いられる積層体200の断面図であり、
図3(b)は、積層体200における不織布10に含まれる熱可塑性樹脂130を融解させる加熱工程を示し、
図3(c)は、熱可塑性樹脂130を融解させた状態の積層体200をプレス成形用型に設置した状態を示し、
図3(d)は、設置された積層体200をプレス成形するプレス工程を示している。
本実施形態では、主として、不織布10に熱可塑性樹脂130を含むプレス成形体150の製造方法を例に説明する。尚、以下に説明する本発明の製造方法は、本発明のプレス成形体の製造方法として優れるが、本発明のプレス成形体の製造方法を何ら限定するものではない。
【0051】
本発明の製造方法は、以下に説明する積層体形成工程、溶融工程、およびプレス工程を備える。
積層体形成工程は、シート状のポリウレタンフォーム230(
図3において図示省略)の両面を火炎により溶融させ、一方側面に表皮30を積層させるとともに、他方側面に融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂130を含む不織布10を積層させて積層体200を形成する工程である。
溶融工程は、積層体200を、不織布10を下面にして所定温度に加熱された加熱台(下側加熱部300)に載置するとともに、表皮30を間接的に加熱台(下側加熱部300)の温度より低い温度で熱し、熱可塑性樹脂130を溶融させる工程である。
プレス工程は、上記溶融工程を経た積層体200をプレス用型に挟んでプレスし賦形する工程である。
【0052】
本発明の製造方法は、高額な設備を要することなく、所望形状のプレス成形体150を製造することができる。
また、本発明の製造方法では、不織布10に含まれる熱可塑性樹脂130が溶融された状態で不織布10を備える積層体200を、所望形状にプレスするため、不織布10の賦形性が良好であり、成形性に優れたプレス成形体150を製造することができる。また本発明の製造方法は、予め不織布10と表皮30とが積層されてなる積層体200を用いてプレス成形するため、不織布10と表皮30とのずれがなく、また表皮30に皺が寄り難い。そのため外観の良好なプレス成形体150を製造することができる。
【0053】
本発明の製造方法では、予め任意の手段で、熱可塑性樹脂130を含む不織布10を準備する。
不織布10の製造方法は、特に限定されず、一般的な不織布の製造方法に倣って製造することができる。
たとえば不織布10は、ます不織布構成繊維110を用いてシート状のプレ不織布を形成し(第一工程)、次いで、プレ不織布を構成する不織布構成繊維110同士を結合させる(第二工程)ことにより、製造することができる。
上記第一工程としては、たとえば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法などが挙げられる。上記第二工程としては、たとえば、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンレース法、ステッチボンド法、またはスチームジェット法などが挙げられる。
【0054】
ここで、熱可塑性樹脂130を不織布10に含ませるには、不織布10の製造において、不織布構成繊維110を絡み合わせる上記第一工程または上記第二工程の少なくともいずれか一方において、熱可塑性樹脂130を不織布構成繊維110と混合させるとよい。即ち、不織布10は、当該不織布10を構成する不織布構成繊維110を絡み合わせて不織布本体120を形成する際に、熱可塑性樹脂130を不織布構成繊維110に混合させて作成されたものである。このように作成された不織布10は、熱可塑性樹脂130を内部に分散させ易く、たとえば、不織布10の質量における熱可塑性樹脂130の質量の比率を10質量%以上60質量%以下の範囲に調整した場合であっても、成形性が良好なプレス成形体を製造することができる。
【0055】
熱可塑性樹脂130の形状は、不織布本体120の内部に混合させることができる範囲において、特に限定されない。たとえば、上記形状として、繊維状の熱可塑性樹脂130、または不織布本体120から抜け落ちない程度の粒径の粒状の熱可塑性樹脂130などが挙げられる。
図3(a)、(b)では、繊維状の熱可塑性樹脂130が混合された不織布10を図示しており、熱可塑性樹脂130は、
図3において視認容易なよう、不織布構成繊維110よりも便宜的に太線で示している。熱可塑性樹脂130として、融点が100℃以上120℃以下である繊維状の部材が好ましい。特に、1デニール以上10デニール以下の範囲の繊維状の熱可塑性樹脂130は、ニードルパンチ法などの汎用の不織布製造方法によって、不織布構成繊維110と絡ませてシート状に形成し易い上、適度な温度のプレヒーティングで短時間に溶融させ易いため、好ましい。
【0056】
熱可塑性樹脂130を不織布本体120の内部に混合させる方法は、より具体的には、上述する不織布の製造に関する第一工程において、不織布構成繊維110に熱可塑性樹脂130を混合させ、一緒にシート状に形成する方法、または上記第二工程におけるニードルパンチ法などにおいて、繊維状の熱可塑性樹脂130を上記第一工程で得られたシート状の不織布構成繊維110に漉き込む方法などが例示される。
【0057】
(積層体形成工程)
次に積層体形成工程について、説明する。積層体形成工程は、シート状のポリウレタンフォーム230(図示省略)の両面を加熱し、一方側面に表皮30を積層させるとともに、他方側面に融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂130を含む不織布10を積層させて積層体200を形成する工程である。かかる工程は、所謂、フレームラミネートと呼ばれることがある。フレームラミネートとは、シート状の軟質ウレタンフォームの表面を火炎により溶融させ、他の部材と貼り合わせるラミネート加工を指す。半液体状の接着剤の使用に比べ、シート状物を介して不織布10と表皮30とを貼り合わせることにより、接着層20の厚みが不均一になり難く好ましい。また、一般的な熱圧着とは異なり、上記フレームラミネートであれば、軟質ウレタンフォームの表面を火炎によって溶融させればよいので、積層体形成工程において、熱可塑性樹脂130が溶融する虞がない。
【0058】
尚、本発明の製造方法は、上記フレームラミネート以外の接着方法を除外するものではなく、シート状の軟質ウレタンフォームを用いずに、他の接着剤により不織布10と表皮30とを接着させてもよい。
また、上述するプレス成形体100のように、接着層22にポリウレタンフォーム230が含まれない態様の場合には、上記フレームラミネートにおいて、火炎により軟質ウレタンフォームの全体を溶融させて実質的に発泡状態を消失させる加工方法(フォームレス加工方法)を採用するとよい。
【0059】
上述のとおり形成されたプレス成形体100を用いて製造されるプレス成形体150は、表皮30を備えるため見栄えがよい。しかもプレス成形を行う前に、予め不織布10と表皮30とを積層させて一体化させているので、プレス成形の際に、表皮30において皺が寄り難く、成形性に優れる。
【0060】
(溶融工程)
次に溶融工程について説明する。溶融工程は、積層体形成工程により成形された積層体200を、不織布10を下面にして所定温度に加熱された加熱台(下側加熱部300)に載置するとともに、表皮30を間接的に加熱台(下側加熱部300)の温度より低い温度で熱し、熱可塑性樹脂130を溶融させる工程である。
【0061】
より具体的には、
図3(b)に示すとおり積層体200を適温に加熱された下側加熱部300と上側加熱部310との間に配置し、加熱する。このとき、熱可塑性樹脂130を溶融させるとともに、表皮30が加熱により変性しないよう配慮するとよい。具体的には
図3(b)に示すとおり、適温(例えば170℃以上190℃以下の温度)に加熱された下側加熱部300に不織布10を下側にして積層体200を載置し、かつ表皮30から離間した位置に配置された上側加熱部310により適温(例えば130℃以上150℃以下の温度)で加熱するとよい。表皮30の表面から上側加熱部300までの距離hは特に限定されないが、例えば1mm以上10mm以下の範囲にすることによって、表皮30を変性させない範囲で上方からも積層体200を加熱することができ、溶融しない熱可塑性樹脂130が有意に残存することを防止することができる。
【0062】
(プレス工程)
次にプレス工程を実施する。プレス工程は、積層体200をプレス用型に挟んでプレスし賦形する工程である。
【0063】
より具体的には、
図3(c)に示すとおり、プレヒーティング(溶融工程)により熱可塑性樹脂130が溶融された積層体200は、速やかにプレス成形用型に配置される。
図3(c)に示されるプレス成形用型である雄型320および雌型330は、配置された積層体200における不織布10の表面温度に対し相対的に低い温度に調整されていることが好ましい。例えば不織布10の表面温度が室温を超える温度であれば、上記プレス成形用型は室温程度(より具体的には、例えば20℃±3℃程度)でもよい。これにより
図3(d)に示すとおり、雄型320および雌型330を接近させて型締めし、積層体200を所望形状にプレスすることで、賦形と冷却とを同時に実施することができる。尚、ここでいう冷却とは、プレス成形用型に設置された積層体200の不織布10の表面温度よりも相対的に低い温度である当該プレス成形用型で型締めすることで、積層体200の温度を低下させることを意味する。
上述するプレス工程により、溶融していた熱可塑性樹脂130が硬化し、所望形状に賦形されたプレス成形体150を得ることができる。
【0064】
上述のとおり製造されたプレス成形体150は、軽量であり柔軟性に優れる上、適度な硬度を発揮する。また、積層体200のプレス加工時の成形性が良好であるため、プレス成形体150は、所望形状が良好に実現され、外観も良好である。たとえば深絞り加工されたプレス成形体150であっても、表皮30や不織布10に皺が発生し難く、外観が良好である。また、芯材として不織布10を備えるため、縫製により他の部材との縫合が可能である。加えて、プレス成形体150は、積層体200を用いて製造されているため、図示省略するポリウレタンフォーム230を備える。そのため、プレス成形体150は、特に優れた柔軟性およびクッション性が示される。
加えて、本発明の製造方法で製造されたプレス成形体150は、表皮30を熱により変性させないよう配慮されているため、成形加工後においても表皮30の艶や意匠が維持され美観に優れる。
【0065】
以上に、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜構成の一部を変更することができる。
【0066】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)接着層を介して積層された表皮と不織布とを有し、
前記不織布は、目付が500g/m2以上800g/m2以下であり、ショアA硬度が45以上60以下であることを特徴とするプレス成形体。
(2)単位面積当たりの質量が800g/m2以上1500g/m2以下である上記(1)に記載のプレス成形体。
(3)前記不織布は、融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂を含む上記(1)または(2)に記載のプレス成形体。
(4)前記接着層がポリウレタンフォームを含む上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のプレス成形体。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のプレス成形体を用いてなることを特徴とする車両用シートバックボード。
(6)上記(1)から(4)のいずれかに記載のプレス成形体を製造するプレス成形体製造方法であって、
シート状のポリウレタンフォームの両面を加熱し、一方側面に表皮を積層させるとともに、他方側面に融点が100℃以上120℃以下の範囲である熱可塑性樹脂を含む不織布を積層させて積層体を形成し、
前記積層体を、前記不織布を下面にして所定温度に加熱された加熱台に載置するとともに、前記表皮を間接的に前記加熱台の温度より低い温度で熱し、前記熱可塑性樹脂を溶融させ、
プレス用型に挟んでプレスし賦形することを特徴とするプレス成形体製造方法。
(7)前記不織布は、当該不織布を構成する不織布構成繊維を絡み合わせて不織布本体を形成する際に、前記熱可塑性樹脂を前記不織布構成繊維に混合させて作成されたものである上記(6)に記載のプレス成形体製造方法。
【符号の説明】
【0067】
10・・・不織布
20・・・接着層
30・・・表皮
100、150・・・プレス成形体
110・・・不織布構成繊維
120・・・不織布本体
130・・・熱可塑性樹脂
200・・・積層体
210・・・表皮側接着面
220・・・不織布側接着面
230・・・ポリウレタンフォーム
300・・・下側加熱部
310・・・上側加熱部
320・・・雄型
330・・・雌型
400・・・シートバックボード
410・・・凹部
412・・・露出面
414・・・裏面
420・・・背面部
430・・・側部
440・・・収納部
442・・・縫製糸
500・・・シートバック
510・・・カバー
512・・・前表皮上部
514・・・前表皮下部
520・・・前表皮
h・・・距離