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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】オイル回収構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/032 20120101AFI20230201BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20230201BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20230201BHJP
   F16H 57/027 20120101ALN20230201BHJP
【FI】
F16H57/032
F01M11/00 E
F16H57/04 H
F16H57/027
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019050546
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020153397
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 宇紘
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】黒田 恭亮
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153611(JP,A)
【文献】特開2010-210011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00
F01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルが貯留されるケース内に設けられるオイル回収構造であって、
前記ケース内の壁面に形成される複数の突起部と、
前記突起部に隣接して前記壁面に形成されるベース部と、
を有し、
前記ベース部は、前記突起部よりも高い撥油性を有する、
オイル回収構造。
【請求項2】
請求項1に記載のオイル回収構造において、
前記ベース部には、撥油層が設けられる、
オイル回収構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオイル回収構造において、
前記壁面は、前記ケースの外部に連通するブリーザ室に面する、
オイル回収構造。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のオイル回収構造において、
前記ケースは、変速機構を収容するミッションケースである、
オイル回収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に設けられるオイル回収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、トランスミッションやエンジン等が搭載されている。これらトランスミッションやエンジン等のケースには、潤滑部やアクチュエータ等に供給するためのオイルが貯留されている(特許文献1~3参照)。また、ケース下部にはオイルストレーナが設けられており、ケース下部のオイルはオイルストレーナによって吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平2-50110号公報
【文献】実開昭54-53158号公報
【文献】実開平5-27212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トランスミッション等のケース内には多くのオイルミストが浮遊しており、オイルミストの一部はケース内の壁面に付着している。このように、ケース内の壁面に付着したオイルはケース下部に落ち難いことから、壁面に対するオイル付着量を考慮してケース内のオイル注入量を増加させる必要がある。しかしながら、オイル注入量を増加させることは、トランスミッション等の重量増加を招く要因であることから、ケース内の壁面に付着したオイルを回収することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、壁面に付着したオイルを回収することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオイル回収構造は、オイルが貯留されるケース内に設けられるオイル回収構造であって、前記ケース内の壁面に形成される複数の突起部と、前記突起部に隣接して前記壁面に形成されるベース部と、を有し、前記ベース部は、前記突起部よりも高い撥油性を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケース内の壁面に形成される複数の突起部と、突起部に隣接して壁面に形成されるベース部と、を有し、ベース部は突起部よりも高い撥油性を有する。これにより、壁面に付着したオイルを滑り落とすことができ、壁面に付着したオイルを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両に搭載されるパワートレインを示す図である。
図2図1のA-A線に沿ってミッションケースを簡単に示した断面図である。
図3図2のA-A線に沿ってミッションケースを簡単に示した断面図である。
図4】撥油性および親油性を説明する図である。
図5】(A)~(C)は、ミッションケースの内壁面におけるオイル移動状況の一例を示す図である。
図6】(A)は撥油層を備えた実施形態のオイル回収構造によるオイル移動状況の一例を示す拡大図であり、(B)は撥油層を備えていない比較例のオイル回収構造によるオイル移動状況の一例を示す拡大図である。
図7】(A)~(C)は、オイル回収構造の製造過程の一例を示す図である。
図8】本発明の他の実施の形態であるオイル回収構造を備えたミッションケースの断面図である。
図9】(A)および(B)は、本発明の他の実施の形態であるオイル回収構造を備えたセパレータプレートを示す斜視図である。
図10】(A)および(B)は、本発明の他の実施の形態であるオイル回収構造を備えたセパレータプレートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[パワートレイン]
図1は車両に搭載されるパワートレイン10を示す図である。図示するパワートレイン10を構成するトランスミッション11のミッションケース(ケース)12には、本発明の一実施の形態であるオイル回収構造13が設けられている。
【0011】
図1に示すように、パワートレイン10は、エンジン14およびトランスミッション11を有している。トランスミッション11のミッションケース12には、トルクコンバータ15、前後進切替機構16および無段変速機構(変速機構)17が収容されている。無段変速機構17の出力軸であるセカンダリ軸18には、ギヤ列19を介して前輪出力軸20が連結されており、この前輪出力軸20には、デファレンシャル機構21を介して図示しない前輪が連結される。また、前輪出力軸20には、ギヤ列22およびトランスファクラッチ23を介して後輪出力軸24が連結されており、この後輪出力軸24には、図示しないデファレンシャル機構を介して後輪が連結される。さらに、トルクコンバータ15のポンプインペラ25には、チェーン機構26を介してオイルポンプ27が連結されている。
【0012】
ミッションケース12は、無段変速機構17等を収容するメインケース30と、トランスファクラッチ23等を収容するトランスファケース31と、によって構成されている。メインケース30とトランスファケース31との間にはセパレータプレート32が挟まれており、このセパレータプレート32およびメインケース30によってブリーザ室33が区画されている。また、メインケース30にはブリーザ室33に開口するブリーザポート34が形成されており、ブリーザポート34を介してブリーザ室33は外部に連通している。なお、ブリーザポート34にはホース35が接続されている。
【0013】
ミッションケース12の下部には、前後進切替機構16や無段変速機構17等に供給するためのオイルXが貯留されている。また、ミッションケース12の下部には、オイルポンプ27の吸入ポート27iに接続されるオイルストレーナ36が設けられている。エンジン動力によってオイルポンプ27が駆動されると、ミッションケース12の下部に貯留されたオイルXは、オイルストレーナ36からオイルポンプ27に向けて吸引される。そして、オイルポンプ27に吸引されたオイルXは、吐出ポート27oから図示しないバルブボディを経て、前後進切替機構16や無段変速機構17等に供給される。なお、ミッションケース12内の油面高さであるオイルレベルOLは、オイルXに対してオイルストレーナ36が十分に浸かる高さ、つまりオイルストレーナ36が空気を吸い込まない高さに設定されている。
【0014】
[オイル回収構造]
ところで、ミッションケース12内には多くの回転体が収容されるため、車両走行時には回転体から微小なオイルが飛散する。つまり、トランスミッション11内には多くのオイルミストが浮遊しているが、これらオイルミストの一部はミッションケース12内の壁面に付着することになる。このように、ミッションケース12内の壁面にオイルが付着することは、ミッションケース12の下部に流れ落ちるオイルが減少する要因であり、ミッションケース12内のオイルレベルを低下させる要因であった。このため、ミッションケース12内には後述するオイル回収構造13が設けられており、このオイル回収構造13によって壁面に付着したオイルが回収されている。
【0015】
以下、ミッションケース12内のオイル回収構造13について説明する。図2図1のA-A線に沿ってミッションケース12を簡単に示した断面図であり、図3図2のA-A線に沿ってミッションケース12を簡単に示した断面図である。
【0016】
図2および図3の拡大部分に示すように、ミッションケース12の内壁面(壁面)40には、撥油層41を備えたベース部42が設けられるとともに、ベース部42から突出する複数の突起部43が設けられている。つまり、ミッションケース12の内壁面40には、互いに隣接するベース部42および突起部43が形成されている。また、ミッションケース12はアルミニウム等の金属を用いて形成されており、撥油層41はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を用いて形成されている。すなわち、撥油層41によって覆われるベース部42は、金属材料が露出する突起部43よりも、高い撥油性を備えている。なお、図3の拡大部分においては、撥油層41によって覆われた部分がドットで示されており、撥油層41によって覆われていない部分が白抜きで示されている。
【0017】
図4は撥油性および親油性を説明する図である。図4に示すように、本明細書における撥油性および親油性は、突起部43やベース部42の表面α,βとこれに付着するオイルXとの接触角θによって定義される。つまり、接触角θが大きいほどに撥油性が高くなることを意味しており、接触角θが小さいほどに親油性が高くなることを意味している。換言すれば、接触角θが大きいほどに親油性が低くなることを意味しており、接触角θが小さいほどに撥油性が低くなることを意味している。
【0018】
図4に示すように、ベース部42の表面αにオイルXを付着させた場合には、撥油層41によってオイルXが弾かれるため、接触角は高い撥油性(つまり低い親油性)を示す大きな「θ1」になる。一方、突起部43の表面βにオイルXを付着させた場合には、金属表面に沿ってオイルXが濡れ拡がるため、接触角は低い撥油性(つまり高い親油性)を示す小さな「θ2」になる。このように、ベース部42の接触角θ1は突起部43の接触角θ2よりも大きいことから、ベース部42は突起部43よりも高い撥油性を有している。換言すれば、突起部43の接触角θ2はベース部42の接触角θ1よりも小さいことから、突起部43はベース部42よりも高い親油性を有している。
【0019】
[オイル移動状況]
続いて、ミッションケース12の内壁面40におけるオイルXの移動状況について説明する。図5(A)~(C)は、ミッションケース12の内壁面40におけるオイル移動状況の一例を示す図である。また、図6(A)は撥油層41を備えた実施形態のオイル回収構造13によるオイル移動状況の一例を示す拡大図であり、図6(B)は撥油層41を備えていない比較例のオイル回収構造100によるオイル移動状況の一例を示す拡大図である。なお、図6(A)および(B)には、オイルXの移動状況が時系列で示されている。
【0020】
図5(A)に示すように、ミッションケース12内に浮遊するオイルミストXmは、高い親油性を備えた突起部43に付着する。続いて、図5(B)に示すように、突起部43に対するオイルミストXmの付着が繰り返され、突起部43に付着するオイルXの固まりが徐々に成長する。そして、オイルXの端部が撥油層41に到達すると、図5(C)に示すように、オイルXが自重によって撥油層41を滑り落ちる。つまり、オイルXが突起部43に留まることなく撥油層41上を滑ることから、オイルXが内壁面40に付着して留まることを防ぐことができ、ミッションケース12の下部にオイルXを積極的に回収することができる。これにより、ミッションケース12に注入するオイル量を削減することができ、トランスミッション11の重量を削減することができる。
【0021】
つまり、図6(A)に示すように、撥油層41を備えたオイル回収構造13においては、突起部43に付着するオイルXの固まりが成長し、符号a1で示すように、オイルXの端部が撥油層41に到達すると、オイルXは自重によって撥油層41上を滑り落ちる。すなわち、オイルXの固まりが小さく下方に移動する力が小さい場合であっても、撥油層41上においてはオイルXが弾かれるため、オイルXは撥油層41上に留まることなく滑ることになる。これに対し、図6(B)に示すように、撥油層41を備えていないオイル回収構造100においては、突起部43に付着するオイルXの固まりが徐々に成長するものの、高い親油性を有する金属表面においてはオイルXが弾かれないため、オイルXは突起部43やベース部42の金属表面に留まることになる。
【0022】
[製造過程]
以下、撥油層41を備えたオイル回収構造13の製造過程について説明する。図7(A)~(C)はオイル回収構造13の製造過程の一例を示す図である。図7(A)に示すように、アルミニウム等の金属材料を用いてミッションケース12を鋳造する際に、ミッションケース12の内壁面40にはベース部42および突起部43が形成される。続いて、図7(B)に示すように、ミッションケース12の内壁面40には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が塗布され、内壁面40の全体に撥油層41が形成される。そして、図7(C)に示すように、ミッションケース12の内周面はヤスリ等で磨かれ、突起部43の先端から撥油層41が除去される。これにより、撥油層41によって覆われるベース部42と、金属表面が露出する複数の突起部43と、を備えたオイル回収構造13を得ることができる。
【0023】
[他の実施形態(ミッションケースの内壁面)]
図3に示した例では、ミッションケース12の内壁面40に対して半球状の突起部43を形成しているが、これに限られることはなく、線状に延びる突起部を形成しても良い。ここで、図8は本発明の他の実施の形態であるオイル回収構造50を備えたミッションケース12の断面図である。なお、図8には図3に示した部位と同じ部位が示されている。
【0024】
図8の拡大部分に示すように、ミッションケース12の内壁面(壁面)40には、撥油層51を備えたベース部52が設けられるとともに、ベース部52から突出する複数の突起部53が設けられている。各突起部53は、略三角形の断面形状を備えるとともに、ミッションケース12の内壁面40に沿って環状に延びている。また、ミッションケース12の側部において、突起部53は鉛直方向に沿って設置されている。
【0025】
このように、ミッションケース12の内壁面40には、互いに隣接するベース部52および突起部53が形成されている。また、ミッションケース12はアルミニウム等の金属を用いて形成されており、撥油層51はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を用いて形成されている。すなわち、撥油層51によって覆われるベース部52は、金属材料が露出する突起部53よりも、高い撥油性を備えている。なお、図8の拡大部分においては、撥油層51によって覆われた部分がドットで示されており、撥油層51によって覆われていない部分が白抜きで示されている。
【0026】
上述したように、線状に延びる突起部53を形成した場合であっても、前述したオイル回収構造13と同様に機能させることができる。つまり、ミッションケース12内を浮遊するオイルミストは、高い親油性を備えた突起部53に付着する。その後、突起部53に対するオイルミストの付着が繰り返され、突起部53に付着するオイルXの固まりが徐々に成長する。そして、オイルXの端部が両脇の撥油層51に到達すると、オイルXが自重によって撥油層51を滑り落ちる。このように、オイルが突起部53に留まることなく撥油層51上を滑ることから、オイルXが内壁面40に付着して留まることを防ぐことができ、ミッションケース12の下部にオイルXを積極的に回収することができる。
【0027】
[他の実施形態(セパレータプレート)]
前述の説明では、オイル回収構造13をミッションケース12の内壁面40に形成しているが、これに限られることはなく、ミッションケース12内の壁面であるセパレータプレート32の表面32aにオイル回収構造を形成しても良い。
【0028】
図1に示すように、ミッションケース12内には、ブリーザ室33を区画するセパレータプレート32が設けられている。つまり、セパレータプレート32の表面32aは、ブリーザ室33に面するミッションケース12内の壁面として機能している。このセパレータプレート32の表面32aにオイル回収構造を設けることにより、ブリーザ室33内のオイルミストを捕捉してミッションケース12の下部に戻すことができるとともに、ブリーザ室33から外部へのオイルミスト放出を防止することができる。
【0029】
ここで、図9(A)および(B)は、本発明の他の実施の形態であるオイル回収構造60を備えたセパレータプレート61を示す斜視図である。また、図10(A)および(B)は、本発明の他の実施の形態であるオイル回収構造70を備えたセパレータプレート71を示す斜視図である。なお、図9および図10に示すセパレータプレート61,71は、図1に示したセパレータプレート32と同じ位置に取り付けられている。なお、図9(B)および図10(B)においては、撥油層62,72によって覆われた部分がハッチングで示されており、撥油層62,72によって覆われていない部分が白抜きで示されている。
【0030】
図9(A)および(B)に示すように、ミッションケース12内の壁面であるセパレータプレート61の表面61aには、撥油層62を備えたベース部63が設けられるとともに、ベース部63から突出する複数の突起部64が設けられている。つまり、セパレータプレート61の表面61aには、互いに隣接するベース部63および突起部64が形成されている。また、セパレータプレート61は鉄やステンレス鋼等の金属を用いて形成されており、撥油層62はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を用いて形成されている。すなわち、撥油層62によって覆われるベース部63は、金属材料が露出する突起部64よりも、高い撥油性を備えている。
【0031】
図10(A)および(B)に示すように、ミッションケース12内の壁面であるセパレータプレート71の表面71aには、撥油層72を備えたベース部73が設けられるとともに、ベース部73から突出する複数の突起部74が設けられている。各突起部74は、略三角形の断面形状を備えるとともに、鉛直方向に沿って線状に延びている。つまり、セパレータプレート71の表面71aには、互いに隣接するベース部73および突起部74が形成されている。また、セパレータプレート71は鉄やステンレス鋼等の金属を用いて形成されており、撥油層72はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を用いて形成されている。すなわち、撥油層72によって覆われるベース部73は、金属材料が露出する突起部74よりも、高い撥油性を備えている。
【0032】
このように、セパレータプレート61,71の表面61a,71aにオイル回収構造60,70を設けた場合であっても、前述したオイル回収構造13,50と同様に、オイルミストを捕捉してミッションケース12の下部に戻すことができる。つまり、ブリーザ室33を浮遊するオイルミストは、高い親油性を備えた突起部64,74に付着する。その後、突起部64,74に対するオイルミストの付着が繰り返され、突起部64,74に付着するオイルの固まりが徐々に成長する。そして、オイルの端部が撥油層62,72に到達すると、オイルが自重によって撥油層62,72を滑り落ちる。このように、オイルが突起部64,74に留まることなく撥油層62,72上を滑ることから、オイルがセパレータプレート61,71に付着して留まることを防ぐことができ、ミッションケース12の下部にオイルを積極的に回収することができる。しかも、ブリーザ室33に入ったオイルミストを捕捉することができるため、ブリーザポート34から外部へのオイルミスト放出を防ぐことができる。
【0033】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、オイル回収構造13,50,60,70を設けるケースとしてミッションケース12を用いているが、これに限られることはなく、エンジン14のクランクケース等にオイル回収構造13,50,60,70を設けても良い。また、図示するミッションケース12には、変速機構として無段変速機構17が収容されているが、これに限られることはない。ミッションケース12に収容される変速機構として、例えば、遊星歯車式の自動変速機構を用いても良く、手動変速機構を用いても良い。
【0034】
また、オイル回収構造13,50,60,70を構成する突起部43,53,64,74の形状や配置としては、図3図8図10に示した形状や配置に限られることはなく、他の形状や配置であっても良いことはいうまでもない。また、図2および図3に示した例では、ミッションケース12の内壁面40の全域に突起部43,53を形成しているが、これに限られることはなく、ミッションケース12の内壁面40の一部に突起部43,53を形成しても良い。また、ブリーザ室33を区画するミッションケース12の内壁面40に対し、突起部43,53を形成しても良いことはいうまでもない。
【0035】
前述した製造過程では、ミッションケース12の内周面をヤスリ等で磨くことにより、突起部43の先端から撥油層41を除去して金属表面を露出させているが、これに限られることはなく、フッ素樹脂を塗布して撥油層41を形成する際には、マスキング処理を施すことにより、突起部43を避けてフッ素樹脂を塗布しても良い。また、前述の説明では、突起部43,53,64,74よりもベース部42,52,63,73の撥油性を高めるため、ベース部42,52,63,73にフッ素樹脂からなる撥油層41,51,62,72を形成しているが、これに限られることはなく、他の材料を用いて撥油層41,51,62,72を形成しても良い。
【0036】
図4に示す例では、撥油層41を備えるベース部42の接触角θ1は90°を上回っているが、これにかぎられることはなく、撥油層41を備えるベース部42の接触角θ1が90°未満であっても良い。また、図4に示す例では、突起部43の接触角θ2が90°を下回っているが、これに限られることはなく、突起部43の接触角θ2が90°以上であっても良い。すなわち、ベース部42が突起部43よりも高い撥油性を有するためには、ベース部42の接触角θ1が突起部43の接触角θ2を上回っていれば良い。
【符号の説明】
【0037】
12 ミッションケース(ケース)
13 オイル回収構造
17 無段変速機構(変速機構)
32 セパレータプレート
32a 表面(壁面)
33 ブリーザ室
40 内壁面(壁面)
41 撥油層
42 ベース部
43 突起部
50 オイル回収構造
51 撥油層
52 ベース部
53 突起部
60 オイル回収構造
61 セパレータプレート
61a 表面(壁面)
62 撥油層
63 ベース部
64 突起部
70 オイル回収構造
71 セパレータプレート
71a 表面(壁面)
72 撥油層
73 ベース部
74 突起部
X オイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10