(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】コンクリート部材の継手及びコンクリート部材の継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2019061290
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 輝康
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠典
(72)【発明者】
【氏名】宮川 隆良
(72)【発明者】
【氏名】大越 靖広
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-231694(JP,A)
【文献】特開2009-013650(JP,A)
【文献】特許第5787965(JP,B2)
【文献】特開2014-177767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04B 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、
隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、楔部材とを備え、
受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、
繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、
凹部は、底版と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの一方の端縁側より立ち上がるように設けられた妻壁と、底版の互いに対向する他方の一対の各端縁側よりそれぞれ立ち上がるように設けられた左右の側壁と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの他方の端縁側より立ち上がるように設けられた対向壁とで囲まれて構成されて、挿入部が挿入される挿入部挿入口が、妻壁、側壁、対向壁の上端縁で囲まれた上部開口により形成されて、かつ、対向壁の左右の中央位置には、繋ぎ部材の連結部を挿入するための連結部挿入溝を備えて構成され、
繋ぎ部材の連結部が各受部材の連結部挿入溝に挿入されて、一方の挿入部が一方の受部材の凹部に挿入されるとともに、他方の挿入部が他方の受部材の凹部に挿入され、かつ、一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部との面接触により、一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部とが係合されるとともに、他方の受部材の凹部の内壁面と他方の挿入部との間に楔部材が嵌入され
て、他方の受部材の凹部の内壁面と楔部材とが面接触したことによって、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが結合されて、隣り合う各コンクリート部材が連結されるように構成され
、
楔部材が、繋ぎ部材の挿入部において連結部を挟んで左右に隣り合う一対の内面にそれぞれ対応するように設けられたことを特徴とするコンクリート部材の継手。
【請求項2】
コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、
隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、楔部材とを備え、
受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、
繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、
凹部は、底版と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの一方の端縁側より立ち上がるように設けられた妻壁と、底版の互いに対向する他方の一対の各端縁側よりそれぞれ立ち上がるように設けられた左右の側壁と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの他方の端縁側より立ち上がるように設けられた対向壁とで囲まれて構成されて、挿入部が挿入される挿入部挿入口が、妻壁、側壁、対向壁の上端縁で囲まれた上部開口により形成されて、かつ、対向壁の左右の中央位置には、繋ぎ部材の連結部を挿入するための連結部挿入溝を備えて構成され、
繋ぎ部材の連結部が各受部材の連結部挿入溝に挿入されて、一方の挿入部が一方の受部材の凹部に挿入されるとともに、他方の挿入部が他方の受部材の凹部に挿入され、さらに、一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部との間に楔部材が嵌入されて、一方の受部材の凹部の内壁面と楔部材とが面接触し、かつ、他方の受部材の凹部の内壁面と他方の挿入部との間に楔部材が嵌入されて、他方の受部材の凹部の内壁面と楔部材とが面接触したことによって、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが結合されて、隣り合う各コンクリート部材が連結されるように構成され、
楔部材が、繋ぎ部材の挿入部において連結部を挟んで左右に隣り合う一対の内面にそれぞれ対応するように設けられたことを特徴とす
るコンクリート部材の継手。
【請求項3】
楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部の内壁面が垂直であるとともに、当該内壁面と対向する挿入部の対向面が、凹部の開口側から凹部の底側に近付くほど内壁面に近付くように傾斜していることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のコンクリート部材の継手。
【請求項4】
楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部の内壁面が傾斜しているとともに、当該内壁面と対向する挿入部の対向面が、凹部の開口側から凹部の底側に近付くほど内壁面に近付くように形成されていることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のコンクリート部材の継手。
【請求項5】
コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、
隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、楔部材とを備え、
受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、
繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、
一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部とが係合されるとともに、他方の受部材の凹部の内壁面と他方の挿入部との間に楔部材が嵌入されたことによって、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが結合されて、隣り合う各コンクリート部材が連結されるように構成され、
楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部の内壁面が傾斜しているとともに、当該内壁面と対向する挿入部の対向面が、凹部の開口側から凹部の底側に近付くほど内壁面に近付くように
形成されたことを特徴とす
るコンクリート部材の継手。
【請求項6】
楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部を有した受部材は、凹部の内壁面が傾斜面となるよう傾けられてコンクリート部材の端部側に設置されたことを特徴とする
請求項4又は請求項5に記載のコンクリート部材の継手。
【請求項7】
コンクリート部材が、橋梁用の床版、又は、橋梁用の壁高欄であることを特徴とする請求項1乃至請求項
6のいずれか一項に記載のコンクリート部材の継手。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
7のいずれか一項に記載のコンクリート部材の継手の製造方法であって、
それぞれ受部材の一部となる複数の部材を、切断加工によって製作し、これら複数の部材を積層することによって、受部材を製造したことを特徴とするコンクリート部材の継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手等に関する。
【背景技術】
【0002】
橋軸直角方向(橋幅方向)に並設された複数の主桁上にコンクリート部材としての例えば橋梁用コンクリートプレキャスト製の床版を架け渡し、橋軸方向に沿って隣り合う床版同士をコッター式継手と呼ばれる継手を用いて接続する床版接続工法が知られている(特許文献1参照)。
当該継手は、隣り合う各床版の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、繋ぐ繋ぎ部材を受部材に固定するボルトとを備えた構成である。受部材は、繋ぎ部材に設けられた係合部が係合する係合受部を備えた係合受部と、床版のコンクリートに定着される例えば定着筋等の鋼材により形成された定着部とを備える。繋ぎ部材は、互いに隣り合う各床版の各端部にそれぞれ設置された受部材の各係合受部に係合する一対の係合部と、一対の係合部を繋ぐ連結部とを備える。
当該継手によれば、橋軸方向に沿って隣り合う各床版の端部にそれぞれ埋設された各係合受部の各係合受部内に繋ぎ部材の各係合部を挿入した後、係合受部内に嵌め込まれた係合部の固定部に形成されたボルト挿入孔にボルトを挿入し、各係合受部の底版に形成されたねじ孔にボルトを締結することによって、繋ぎ部材と係合受部とが固定され、当該継手により、互いに隣り合う各床版が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、継手の製造誤差、床版の製作誤差や収縮量(反り)のばらつき、腐食防止のために継手に塗布されるエポキシ樹脂の塗布量のばらつき、床版架設時の施工誤差等によって、隣り合う各床版の端部に埋設された各係合受部同士の左右方向や上下方向のずれが生じる。このずれが大きい場合は、繋ぎ部材の係合部を係合受部の係合受部内に嵌め込むことが困難となり、繋ぎ部材と係合受部とを結合できなくなってしまう。また、繋ぎ部材の係合部を係合受部内に嵌め込むことができたとしても、係合受部内に嵌め込まれた係合部のボルト挿入孔と各係合受部の底版のねじ孔とが一致しなくなるため、ボルトを締結することができず、繋ぎ部材と係合受部とを結合できなくなってしまう。このように、繋ぎ部材と係合受部とを結合できない場合、当該継手部分で応力の伝達ができず、継手部分で損壊を招く恐れがある。
本発明は、隣り合う各コンクリート部材の端部に埋設された各受部材同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材と繋ぎ部材とを結合できるコンクリート部材の継手等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンクリート部材の継手は、コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、楔部材とを備え、受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、凹部は、底版と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの一方の端縁側より立ち上がるように設けられた妻壁と、底版の互いに対向する他方の一対の各端縁側よりそれぞれ立ち上がるように設けられた左右の側壁と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの他方の端縁側より立ち上がるように設けられた対向壁とで囲まれて構成されて、挿入部が挿入される挿入部挿入口が、妻壁、側壁、対向壁の上端縁で囲まれた上部開口により形成されて、かつ、対向壁の左右の中央位置には、繋ぎ部材の連結部を挿入するための連結部挿入溝を備えて構成され、繋ぎ部材の連結部が各受部材の連結部挿入溝に挿入されて、一方の挿入部が一方の受部材の凹部に挿入されるとともに、他方の挿入部が他方の受部材の凹部に挿入され、かつ、一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部との面接触により、一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部とが係合されるとともに、他方の受部材の凹部の内壁面と他方の挿入部との間に楔部材が嵌入されて、他方の受部材の凹部の内壁面と楔部材とが面接触したことによって、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが結合されて、隣り合う各コンクリート部材が連結されるように構成され、楔部材が、繋ぎ部材の挿入部において連結部を挟んで左右に隣り合う一対の内面にそれぞれ対応するように設けられたことを特徴とするので、隣り合う各コンクリート部材の端部に埋設された各受部材同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材と繋ぎ部材とを結合できるようになるとともに、受部材と繋ぎ部材との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる。
また、本発明に係るコンクリート部材の継手は、コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、楔部材とを備え、受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、凹部は、底版と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの一方の端縁側より立ち上がるように設けられた妻壁と、底版の互いに対向する他方の一対の各端縁側よりそれぞれ立ち上がるように設けられた左右の側壁と、底版の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの他方の端縁側より立ち上がるように設けられた対向壁とで囲まれて構成されて、挿入部が挿入される挿入部挿入口が、妻壁、側壁、対向壁の上端縁で囲まれた上部開口により形成されて、かつ、対向壁の左右の中央位置には、繋ぎ部材の連結部を挿入するための連結部挿入溝を備えて構成され、繋ぎ部材の連結部が各受部材の連結部挿入溝に挿入されて、一方の挿入部が一方の受部材の凹部に挿入されるとともに、他方の挿入部が他方の受部材の凹部に挿入され、さらに、一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部との間に楔部材が嵌入されて、一方の受部材の凹部の内壁面と楔部材とが面接触し、かつ、他方の受部材の凹部の内壁面と他方の挿入部との間に楔部材が嵌入されて、他方の受部材の凹部の内壁面と楔部材とが面接触したことによって、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが結合されて、隣り合う各コンクリート部材が連結されるように構成され、楔部材が、繋ぎ部材の挿入部において連結部を挟んで左右に隣り合う一対の内面にそれぞれ対応するように設けられたことを特徴とするので、隣り合う各コンクリート部材の端部に埋設された各受部材同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材と繋ぎ部材とを結合できるようになるとともに、受部材と繋ぎ部材との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる。
また、楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部の内壁面が垂直であるとともに、当該内壁面と対向する挿入部の対向面が、凹部の開口側から凹部の底側に近付くほど内壁面に近付くように傾斜していることを特徴とするので、上述した効果が得られる。
また、楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部の内壁面が傾斜しているとともに、当該内壁面と対向する挿入部の対向面が、凹部の開口側から凹部の底側に近付くほど内壁面に近付くように形成されていることを特徴とするので、上述した効果が得られる。
また、本発明に係るコンクリート部材の継手は、コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、楔部材とを備え、受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、一方の受部材の凹部の内壁面と一方の挿入部とが係合されるとともに、他方の受部材の凹部の内壁面と他方の挿入部との間に楔部材が嵌入されたことによって、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが結合されて、隣り合う各コンクリート部材が連結されるように構成され、楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部の内壁面が傾斜しているとともに、当該内壁面と対向する挿入部の対向面が、凹部の開口側から凹部の底側に近付くほど内壁面に近付くように形成されたことを特徴とするので、隣り合う各コンクリート部材の端部に埋設された各受部材同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材と繋ぎ部材とを結合できるようになるとともに、受部材と繋ぎ部材との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる。
また、楔部材が嵌入される隙間を形成する凹部を有した受部材は、凹部の内壁面が傾斜面となるよう傾けられてコンクリート部材の端部側に設置されたことを特徴とするので、上述した効果に加え、受部材の製造が簡単となり、受部材の製造コストを低減できるようになるとともに、繋ぎ部材の製造が簡単となり、繋ぎ部材の製造コストを低減できるようになる。
また、コンクリート部材が、橋梁用の床版、又は、橋梁用の壁高欄であるので、橋軸方向Xに沿って隣り合う床版同士を接合したり、橋軸方向Xに沿って隣り合う壁高欄同士を接合することが可能となる。
本発明に係るコンクリート部材の継手の製造方法は、それぞれ受部材の一部となる複数の部材を、切断加工によって製作し、これら複数の部材を積層することによって、受部材を製造したので、受部材を安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】継手の各受部材と繋ぎ部材とが楔部材で連結された状態を示す斜視図(実施形態1)。
【
図4】継手の各受部材と繋ぎ部材とを楔部材で連結する手順を示す説明図(実施形態1)。
【
図5】継手の受部材の製造方法を示す図(実施形態2)。
【
図6】継手の各受部材と繋ぎ部材とが楔部材で連結された状態を示す断面図(実施形態3)。
【
図7】継手の各受部材と繋ぎ部材とが楔部材で連結された状態を示す断面図(実施形態4)。
【
図8】継手の各受部材と繋ぎ部材とが楔部材で連結された状態を示す断面図(実施形態5)。
【
図9】継手の各受部材と繋ぎ部材とが楔部材で連結された状態を示す断面図(実施形態6)。
【
図10】継手の各受部材と繋ぎ部材とを楔部材で連結する手順を示す説明図(実施形態7)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
例えば
図1に示すように、橋軸直角方向(橋幅方向)Yに並設された図外の複数の主桁上に架け渡されて橋軸方向Xに沿って隣り合うコンクリート部材としての橋梁用コンクリートプレキャスト製の床版10,10同士を連結する実施形態1に係る継手1は、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10のうちの一方の床版10の端部11側に設置された受部材2Aと、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10のうちの他方の床版10の端部11側に設置された受部材2Bと、橋軸方向Xに沿って隣り合う一方の床版10の端部11に設置された受部材2Aと他方の床版10の端部11に設置された2Bとを繋ぐ繋ぎ部材3と、互いに隣り合う各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とを結合させる楔部材4とを備えて構成される。
【0008】
図2,
図3に示すように、一方の受部材2Aは、繋ぎ部材3に設けられた一方の挿入部31Aが挿入される凹部21Aが形成された受部22Aと、床版10のコンクリートに定着される定着筋等の定着部23とを備える。
他方の受部材2Bは、繋ぎ部材3に設けられた他方の挿入部31Bが挿入される凹部21Bが形成された受部22Bと、床版10のコンクリートに定着される定着筋等の定着部23とを備える。
受部材2A,2Bは、水平面に設置された場合に、当該水平面と面接触する平行な面(平坦面)に形成された下面2u(
図4(a)参照)を備える。
繋ぎ部材3は、一方の受部材2Aの凹部22Aに挿入される一方の挿入部31Aと、他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入される他方の挿入部31Bと、挿入部31Aと挿入部31Bとを繋ぐ連結部32とを備える。連結部32は、一方の挿入部31Aの左右間の中央部と他方の挿入部31Bの左右間の中央部と連結する平板により形成される。当該連結部32は、連結部挿入溝60の溝幅よりも若干狭い寸法の板厚の平板により形成される。
繋ぎ部材3は、水平面に設置された場合に、当該水平面と面接触する平行な面(平坦面)に形成された下面3u(
図4(a)参照)を備える。
そして、一方の受部材2Aの凹部21Aの内壁面と一方の挿入部31Aの係合面とを係合させた状態で、他方の受部材2Bの凹部21Bの内壁面と他方の挿入部31Bの対向面との間に楔部材4が嵌入されて、互いに隣り合う各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とが結合されることにより、互いに隣り合う床版10,10が連結されることになる(
図4(c)参照)。
【0009】
図4,
図2に示すように、凹部21A,21Bは、例えば長方形状、正方形状等の底版25と、底版25の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの一方の端縁側(例えば定着部23が設けられる側の辺縁側)より立ち上がるように設けられた妻壁26と、底版25の互いに対向する他方の一対の各端縁側よりそれぞれ立ち上がるように設けられた左右の側壁27,27と、底版25の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの他方の端縁側(例えば定着部23が設けられる側とは反対側の辺縁側)より立ち上がるように設けられた対向壁28とで囲まれて、かつ、挿入部31A,31Bが挿入される挿入部挿入口、即ち、凹部21A,21Bの開口29が、妻壁26、側壁27,27、対向壁28の上端縁で囲まれた上部開口により形成された構成である。
底版25は、対向壁28が立ち上がる側の端縁以外の端縁が円形縁や多角形縁等に形成された形状であってもよい。即ち、凹部21A,21Bは、底版25の円形縁側や多角形縁側等から立ち上がるような左右の側壁27,27と妻壁26とが一体となった湾曲壁や多角形壁等と対向壁28とで囲まれるように形成された構成であってもよい。
尚、受部材2A,2Bは、下面2uが床版10の平坦な板面である下面10u(
図4(a)参照)と平行になるように床版10の端部11側に設置され、従って、下面10uが水平面と接触するように床版10を設置した場合、受部材2A,2Bの下面2uが水平面となる。従って、以下、複数の主桁上に架け渡された床版10の下面10uと直交する方向を上下と定義するとともに、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10の端面11s,11s(
図1参照)に沿った水平方向(橋軸直角方向(橋幅方向)Y)を左右と定義して説明する。
【0010】
図2に示すように、床版10の端部11側に設置される受部材2A,2Bの対向壁28の左右の中央位置には、繋ぎ部材3の連結部32を挿入するための連結部挿入溝60が形成されている。当該連結部挿入溝60は、開口29から底版25の内底面25a側に延長するように形成されている。
また、左右の側壁27,27の外面には、せん断抵抗を大きくするとともに床版10のコンクリートとの付着力を大きくするために、凹凸部61が形成されている。
【0011】
図4(a)に示すように、例えば、凹部21Aの底板25の内底面25aは下面2uと平行な平面に形成されており、妻壁26の内壁面26a、及び、側壁27,27の内壁面27aは、内底面25aに対して垂直面に形成されている。そして、凹部21Aの対向壁28の内壁面28aは、内底面25aから開口29に向けて傾斜して立ち上がる傾斜面に形成されている。この内壁面28aを形成する傾斜面は、開口29に近付くほど、妻壁26の内壁面26aから離れるように傾斜する傾斜面に形成されている。
また、例えば、凹部21Bの底板25の内底面25aは下面2uと平行な平面に形成されており、妻壁26の内壁面、側壁27,27の内壁面、及び、対向壁28の内壁面28bは、底板25の内底面25aに対して垂直面に形成されている(
図4(a)参照)。
【0012】
図4に示すように、受部材2A,2Bは、開口29及び連結部挿入溝60を外部に露出させた状態で受部22A,22Bが床版10の端部11側に埋め込まれ、妻壁26から床版10の中央側に延長するように設けられた定着部23が床版10に埋め込まれている。
即ち、開口29及び連結部挿入溝60が外部に露出して他の部分が床版10のコンクリートに埋設されるように受部材2A又は受部材2Bを図外の型枠に取付けた後に当該型枠内にコンクリートを流し込んでコンクリートを硬化させた後、受部材2A又は受部材2Bを型枠から取り外して脱型することにより、端部11側に受部材2A又は受部材2Bが埋め込まれて固定された橋梁用コンクリートプレキャスト製の床版10が形成される。
【0013】
図2に示すように、繋ぎ部材3は、上から見てH形の上面3t、及び、下から見てH形の下面3uが、互いに平行に対向する平面に形成され、挿入部31A,31Bの外面3fは、互いに平行に対向するとともに上面3t及び下面3uと垂直をなす平面により形成され、挿入部31Aの内面31aと挿入部31Bの内面31bとが互いに対向する面に形成される。即ち、挿入部31Aの内面31aと挿入部31Bの内面31bとの間の対向間隔は、挿入部31Aの外面と挿入部31Bの外面との間の対向間隔よりも短い。
そして、
図4(a)に示すように、一方の挿入部31Aの内面31aは、上面3tから下面3uに向けて傾斜する傾斜面に形成される。この傾斜面は、下面3uに近付くほど、挿入部31Aの外面3fに近付くように傾斜する傾斜面に形成されており、この傾斜面と凹部21Aの対向壁28の内壁面28aを形成する傾斜面とが互いに面接触する傾斜面に形成されている。
また、他方の挿入部31Bの内面31bは、上面3tから下面3uに向けて傾斜する傾斜面に形成される。この傾斜面は、下面3uに近付くほど、挿入部31Bの外面3fから離れるように傾斜する傾斜面に形成されており、この傾斜面と、この傾斜面と間隔を隔てて対向する凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとが、楔部材4と面接触する楔部材嵌入面として機能する。即ち、
図4(b)に示すように、他方の挿入部31Bの内面31bと凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとの間で楔部材嵌入空間4uが形成される。当該楔部材嵌入空間4uは、凹部21Bの開口29側から底側に近付くほど間隔が狭くなるような断面逆三角形状の空間により形成される。
【0014】
図2に示すように、楔部材4は、他方の挿入部31Bの内面31bである傾斜面と凹部21Bの対向壁28の内壁面28bである傾斜面ではない面(垂直面)との間の楔部材嵌入空間4uに嵌入可能な形状に形成される。即ち、楔部材4は、他方の挿入部31Bの内面31bと接触する傾斜面4aと、凹部21Bの対向壁28の内壁面28bと接触する傾斜面ではない面(垂直面)4bとを備え、他方の挿入部31Bの傾斜面である内面31bの傾斜角度と当該他方の挿入部31Bの内面31bに接触する楔部材4の傾斜面4aの傾斜角度とが同一傾斜角度に形成されている。
また、
図2,
図3に示すように、楔部材4は、繋ぎ部材3の挿入部31Bにおいて連結部32を挟んで隣り合う一対の内面31b,31bにそれぞれ対応するように設けられる。
【0015】
次に、継手1を用いた接合方法について
図4を参照しながら説明する。
図4(a)に示すように、一方の床版10の端部11側に埋設された受部材2Aの対向壁28と他方の床版10の端部11側に埋設された受部材2Bの対向壁28とが橋軸方向Xに沿って隣り合うように、当該一方の床版10と他方の床版10とを設置する。
そして、
図4(b)に示すように、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aを一方の受部材2Aの凹部21Aに挿入するとともに、繋ぎ部材3の他方の挿入部31Bを他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入して、一方の挿入部31Aの係合面となる内面31aと一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28の内壁面28aとが面接触するように係合させた状態とすることにより、他方の挿入部31Bの対向面となる内面31bと他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとの間に楔部材4を嵌入するための楔部材嵌入空間4uを形成する。
そして、
図4(c),
図3に示すように、楔部材4を楔部材嵌入空間4uに嵌入する。即ち、楔部材4の傾斜面4aの全面が他方の挿入部31Bの内面31bに接触した状態で当該内面31bを摺動しながら当該内面31bを押圧するとともに、楔部材4の面(垂直面)4bの全面が凹部21Bの対向壁28の内壁面28bに接触した状態で当該内壁面28bを摺動しながら当該内壁面28bを押圧することによる、楔部材4の圧入動作によって、楔部材4の傾斜面4aの全面と他方の挿入部31Bの内面31bとが密着するとともに、楔部材4の面(垂直面)4bの全面と凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとが密着し、これにより、他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されるとともに、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが互いに密着して固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
即ち、実施形態1では、一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28における傾斜面に形成された内壁面28aと一方の挿入部31Aの傾斜面に形成された内面31aとの面接触により、一方の受部材2Aの凹部21Aの内壁面28aと一方の挿入部31Aとが係合されるとともに、他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28の垂直面となる内壁面28bと他方の挿入部31Bの傾斜面(凹部21Bの開口29側から凹部21Bの底側に近付くほど内壁面28bに近付くように傾斜する傾斜面)となる内面31bとの間に楔部材4が嵌入されたことによって、互いに隣り合う各受部材2A;2Bと繋ぎ部材3とが結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
また、繋ぎ部材3の挿入部31Bにおいて連結部32を挟んで隣り合う一対の内面31b,31bにそれぞれ対応するように楔部材4,4が圧入されるので、各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる。
【0016】
橋軸方向Xに沿って隣り合う床版10,10同士が継手1で連結された後、
図4(d)に示すように、凹部21A,21B内、及び、凹部21A,21Bと繋ぎ部材3の上方にモルタルやコンクリート等の充填材16を充填することにより、繋ぎ部材3の凹部21A,21Bからの抜け防止が図れるとともに、
図1に示すように、隣り合う床版10,10の端面11s,11s間の隙間である目地15に充填材16を充填することにより、互いに隣り合う床版10,10同士の接合が完了する。
【0017】
実施形態1の継手1によれば、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10の端部11,11に埋設された各受部材2A,2B同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、繋ぎ部材3と受部材2A,2Bとを結合できるようになる。
【0018】
実施形態2
上述した実施形態1、及び、後述する各実施形態の継手1は、成型型に鋳鉄を流し込んで製作したり、例えばレーザーやプレス等の切断手段を用いた切断加工によって製作した複数の部材を積層して製造してもよい。成型型に鋳鉄を流し込んで製造する場合、コストが嵩むが、このように複数の部材を積層して製造する場合、継手1を安価に製造できる。
即ち、それぞれ受部材(2Aや2B)の一部となる複数の部材を、切断加工によって製作し、これら複数の部材を積層することによって、受部材を製造するようにしても良い。
言い換えれば、受部材を一方方向に沿った複数の位置で分断したような複数の部材を、それぞれ切断加工によって製造し、これら複数の部材を積層して接着や溶接等の接合手段で接合することによって、受部材を製造するようにしても良い。
例えば、
図5に示すように、受部材を凹部の内底面25a(
図4(a)参照)と直交する方向(上下方向)Xに沿った複数の位置で分断したような複数の部材a,a…(即ち、受部材を凹部の内底面25aと平行な分断面で複数に分断したような複数の部材a,a…)を、それぞれレーザー切断加工によって製造し、これら複数の部材a,a…を積層して接着や溶接等の接合手段で接合することによって、受部材(2Aや2B)を製造するようにしても良い。レーザー切断加工によれば、切断面の加工精度が良くなり、品質精度の高い受部材(2Aや2B)を安価に製造できる。
尚、この部材aの上下方向の厚さ寸法は、例えば凹凸部61の凸部の上下方向の厚さ寸法を基準として決めればよい。
また、受部材の定着部23は、部材aと一体となるように切断されて形成されたものであっても良いし、部材aと別体の定着部23が部材aに接続された構成としてもよい。例えば、定着部23として定着筋を用いる場合には、当該定着筋の一端を部材aに接続すればよい(
図8参照)。
また、受部材を凹部の内底面25aと平行な方向(横方向)に沿った複数の位置で分断したような複数の部材(即ち、受部材を凹部の内底面25aと直交する分断面で複数に分断したような複数の部材)を、それぞれレーザー切断加工によって製造し、これら複数の部材を積層して接着や溶接等の接合手段によって接合することによって、受部材を製造するようにしても良い。
【0019】
また、繋ぎ部材を一方方向(上下方向Xや横方向)に沿った複数の位置で分断したような複数の部材を、それぞれ切断加工によって製造し、これら複数の部材を積層して接着や溶接等の接合手段で接合することによって、繋ぎ部材を製造するようにしても良い。
また、楔部材を切断加工によって製造してもよい。
尚、受部材、繋ぎ部材、楔部材のすべてをレーザー切断加工によって製造すれば、受部材と繋ぎ部材との接触面同士の面接触精度、受部材と楔部材との接触面同士の面接触精度、繋ぎ部材と楔部材との接触面同士の面接触精度が向上するので、好ましい。
【0020】
実施形態3
図6に示すように、実施形態1で説明した凹部21Bの対向壁28の内壁面28bを、凹部21Bの内底面25aから開口29に向けて傾斜して立ち上がる傾斜面に形成する。この内壁面28bを形成する傾斜面は、開口29に近付くほど、妻壁26の内壁面から離れるように傾斜する傾斜面に形成する。また、実施形態1で説明した他方の挿入部31Bの内面31bを、繋ぎ部材3の下面3uから垂直に立ち上がる垂直面に形成する。
そして、他方の挿入部31Bの対向面となる内面31bと他方の受部材2Bの凹部21Bにおける対向壁28の内壁面28bとの間に楔部材4を嵌入することにより、実施形態1と同様に、楔部材4の圧入動作によって他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されるとともに、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが互いに密着して固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
即ち、実施形態3では、一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28における傾斜面に形成された内壁面28aと一方の挿入部31Aの傾斜面に形成された内面31bとの面接触により、一方の受部材2Aの凹部21Aの内壁面28aと一方の挿入部31Aとが係合されるとともに、他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28の傾斜面となる内壁面28bと他方の挿入部31Bの垂直面となる内面31bとの間に楔部材4が嵌入されたことによって、互いに隣り合う各受部材2A;2Bと繋ぎ部材3とが結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
【0021】
実施形態4
図7に示すように、凹部21A,21Bの対向壁28,28の内壁面28a,28bを、凹部21A,21Bの内底面25aから開口29に向けて垂直に立ち上がる垂直面に形成するとともに、挿入部31A,31Bの内面31a,31bを、繋ぎ部材3の下面3uから上面3tに向けて傾斜する傾斜面に形成する。この傾斜面は、上面3tから下面3uに近付くほど、挿入部31A,31Bの外面3fから離れるように傾斜する傾斜面に形成する。
そして、一方の挿入部31Aの対向面となる内面31aと一方の受部材2Aの凹部21Aにおける対向壁28の内壁面28aとの間に楔部材4を嵌入するとともに、他方の挿入部31Bの対向面となる内面31bと他方の受部材2Bの凹部21Bにおける対向壁28の内壁面28bとの間に楔部材4を嵌入することにより、楔部材4,4の圧入動作によって、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが固定状態に結合されるとともに、他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
即ち、実施形態4では、一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28の垂直面となる内壁面28aと一方の挿入部31Aの傾斜面となる内面31aの間に楔部材4が嵌入されるとともに、他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28の垂直面となる内壁面28bと他方の挿入部31Bの傾斜面となる内面31bとの間に楔部材4が嵌入されたことによって、互いに隣り合う各受部材2A;2Bと繋ぎ部材3とが結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結される。
【0022】
実施形態5
図8に示すように、凹部21A,21Bの対向壁28,28の内壁面28a,28bを、凹部21A,21Bの内底面25aから開口29に向けて傾斜して立ち上がる傾斜面に形成する。この内壁面28bを形成する傾斜面は、開口29に近付くほど、妻壁26の内壁面から離れるように傾斜する傾斜面に形成する。また、一方の挿入部31Aの内面31a、他方の挿入部31Bの内面31bは、下面3uから上面3tに向けて垂直に立ち上がる垂直面に形成する。
そして、一方の挿入部31Aの対向面となる内面31aと一方の受部材2Aの凹部21Aにおける対向壁28の内壁面28aとの間に楔部材4を嵌入するとともに、他方の挿入部31Bの対向面となる内面31bと他方の受部材2Bの凹部21Bにおける対向壁28の内壁面28bとの間に楔部材4を嵌入することにより、実施形態4(
図7)と同様に、楔部材4,4の圧入動作によって、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが固定状態に結合されるとともに、他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結される。
即ち、実施形態5では、一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28の傾斜面となる内壁面28aと一方の挿入部31Aの垂直面となる内面31aの間に楔部材4が嵌入されるとともに、他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28の傾斜面となる内壁面28bと他方の挿入部31Bの垂直面となる内面31bとの間に楔部材4が嵌入されたことによって、互いに隣り合う各受部材2A;2Bと繋ぎ部材3とが結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結される。
【0023】
実施形態6
図9に示すように、凹部21A,21Bの対向壁28,28の内壁面28a,28bを、凹部21A,21Bの内底面25aから垂直に立ち上がる垂直面に形成するとともに、挿入部31A,31Bの内面31a,31bのうちの一方の内面(例えば内面31a)を、上面3tから下面3uに向けて傾斜する傾斜面に形成するとともに、他方の内面(例えば内面31b)を、上面3tから下面3uに向けて垂直に延長する垂直面に形成する。一方の内面を形成する傾斜面は、下面3uに近付くほど、挿入部31Aの外面3fから離れるように傾斜する傾斜面に形成する。
そして、他方の挿入部31Bの内面31bと他方の受部材2Bの凹部21Bにおける対向壁28の内壁面28bとが面接触するように係合させた状態とし、かつ、一方の挿入部31Aの内面31aと一方の受部材2Aの凹部21Aにおける対向壁28の内壁面28aとの間に楔部材4を嵌入することにより、楔部材4の圧入動作によって、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが固定状態に結合されるとともに、他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
即ち、実施形態6では、実施形態1とは逆に、一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28における内壁面28aと一方の挿入部31Aの内面31bとの間に楔部材4が嵌入されるとともに、他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28における垂直面となる内壁面28bと他方の挿入部31Bの垂直面となる内面31bとの面接触により、他方の受部材2Bの凹部21Bの内壁面28bと他方の挿入部31Bとが係合されたことによって、互いに隣り合う各受部材2A;2Bと繋ぎ部材3とが結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
【0024】
実施形態7
受部材2A;2Bとして、例えば下面2uが水平面に接触するように設置された場合に、凹部21A;21Bの内底面25aが水平面と平行な面となるように形成されるとともに、凹部21A;21Bの対向壁28の内壁面28a;28bが内底面25aと直交する面となるように形成された構成の受部材2A;2Bを使用する。
また、繋ぎ部材3として、一対の挿入部31A;31Bの下面3uが水平面に接触するように設置された場合に、各凹部21A;21Bに挿入されて凹部21A;21Bの対向壁28の内壁面28a;28bと対向することになる一対の挿入部31A;31Bの互いに対向する内面31a;31bが水平面と直交する面となるように形成された構成の繋ぎ部材3を使用する。
図10に示すように、凹部21A;21Bの内底面25a;25aが床版10の下面10uに対して傾斜する傾斜面となり、かつ、凹部21A;21Bの対向壁28の内壁面28a;28bが床版10の端面11sに対して傾斜する傾斜面となるように、受部材2Aが傾けられて端部11側に埋め込まれた床版10と、受部材2Bが傾けられて端部11側に埋め込まれた床版10とを製作する。
そして、
図10(a)に示すように、互いに隣り合う一方の床版10の端面11sと他方の床版10の端面11sとが互いに平行に対向し、かつ、凹部21A;21Bの内壁面28a;28b同士が対向するように、一方の床版10の下面10uと他方の床版10の下面10uとが主桁上に設置された場合に、一方の受部材2Aの凹部21Aの内壁面28aと他方の受部材2Bの凹部21Bの内壁面28bとが、床板10の上面10t側から床板10の下面10u側に向けて互いに離れるように傾斜する傾斜面となるように構成される。即ち、互いに対向する凹部21Aの内壁面28aと凹部21Bの内壁面28bとが、上方から下方に向けて互いに離れるように傾斜する傾斜面となるように構成される。
その後、
図10(b)に示すように、一対の挿入部31A;31Bの下面3uが床版10の下面10uと平行な面となるように一対の挿入部31A;31Bが各凹部21A;21Bに挿入され、
図10(c)に示すように、傾斜面である凹部21Aの内壁面28aと当該内壁面28aと対向する面となる挿入部31Aの内面31aとの間に凹部21Aの上方から楔部材4が嵌入されるとともに、傾斜面である凹部21Bの内壁面28bと当該内壁面28bと対向する面となる挿入部31Bの内面31bとの間に凹部21Bの上方から楔部材4が嵌入されることにより、互いに隣り合う各受部材2A;2Bと繋ぎ部材3とが結合されて、互いに隣り合う一方の床版10と他方の床版10とが連結される。
即ち、実施形態7では、楔部材4が嵌入される隙間を形成する凹部21A;21Bを有した受部材2A;2Bは、凹部21A;21Bの内壁面28a;28bが傾斜面となるよう傾けられて床版10の端部11側に設置される。
尚、一方の床版10の下面10uと他方の床版10の下面10uとが例えば同一水平面上に位置される複数の主桁上に設置される場合、一対の挿入部31A;31Bの下面3uが水平面となるように一対の挿入部31A;31Bが各凹部21A;21Bに挿入され、挿入部31Aの内面31a;31bが垂直面となる。
そして、橋軸方向Xに沿って隣り合う床版10,10同士が継手1で連結された後、
図10(d)に示すように、凹部21A,21B内、及び、凹部21A,21Bと繋ぎ部材3の上方に充填材16を充填することにより、繋ぎ部材3の凹部21A,21Bからの抜け防止が図れるとともに、
図1に示すように、隣り合う床版10,10の端面11s,11s間の隙間である目地15に充填材16を充填することにより、互いに隣り合う床版10,10同士の接合が完了する。
【0025】
即ち、実施形態7に係る継手1によれば、受部材2A;2Bとして、例えば、下面2uが水平面に設置された場合に、凹部21A,21Bの内壁面28a;28bが水平面と直交する面となるように形成された構成の受部材2A;2Bが使用され、楔部材4が嵌入される隙間を形成する凹部21A;21Bを有した当該受部材2A;2Bは、凹部21A;21Bの内壁面28a;28bが傾斜面となるよう傾けられて床版10;10の端部11;11側に設置される。そして、
図10(a)に示すように、隣り合う各床版10,10の端面11s;11s同士が対向するように配置されて、一方の受部材2Aの凹部21Aの内壁面28aと他方の受部材2Bの凹部21Bの内壁面28bとが、上方から下方に向けて互いに離れるように傾斜する傾斜面となるように構成され、各凹部21A,21Bに挿入されて各凹部21A,21Bの内壁面28a;28bと当該内壁面28a;28bと対向することになる一対の挿入部31A;31Bの互いに対向する内面31a;31bとの間に各凹部21A,21Bの上方から楔部材4;4が嵌入されることによって、互いに隣り合う各受部材2A;2Bと繋ぎ部材3とが結合されて、隣り合う各床版10,10が連結されるように構成されるので、各実施形態と同様に、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10の端部11,11に埋設された各受部材2A,2B同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、繋ぎ部材3と受部材2A,2Bとを結合できるようになる。
【0026】
また、受部材2A;2Bとして、下面2uが水平面に設置された場合に、凹部21A,21Bの内底面25a;25aが水平面と平行な面となるように形成されるとともに、凹部21A,21Bの内壁面28a;28bが凹部21A,21Bの内底面25a;25aと直交する面となるように形成された構成のものを使用することによって、受部材2A;2Bの製造が簡単となり、受部材2A;2Bの製造コストを低減できるようになる。
また、繋ぎ部材3として、一対の挿入部31A;31Bの下面3u及び一対の挿入部31A;31Bを繋ぐ連結部32の下面3uが連続する平面に形成されるとともに、一対の挿入部31A;31Bの上面3t及び一対の挿入部31A;31Bを繋ぐ連結部32の上面3tが連続する平面に形成され、かつ、挿入部31A;31Bの上面3tと下面3uとを繋ぐ壁面及び連結部32の上面3tと下面3uとを繋ぐ壁面が、上面3t及び下面3uと直交する面となるように形成された構成のものを使用することによって、繋ぎ部材3の製造が簡単となり、繋ぎ部材3の製造コストを低減できるようになる。
【0027】
実施形態3乃至実施形態7の
図6乃至
図10において、実施形態1の
図1乃至
図4と同一又は相当部分には同一符号を付して詳細な説明を省略した。
【0028】
尚、
図4に示した実施形態1、
図7に示した実施形態4、
図9に示した実施形態6の継手1は、楔部材4が嵌入される隙間を形成する凹部2A;2Bの内壁面28a;28bが垂直面となるとともに、当該内壁面28a;28bと対向する挿入部31A;31Bの対向面31a;31bが、凹部21A;21Bの開口29側から凹部21A;21Bの底側に近付くほど内壁面28a;28bに近付くように傾斜している傾斜面となるように構成される。
また、
図6に示した実施形態3、
図8に示した実施形態5、
図10に示した実施形態7の継手1は、楔部材4が嵌入される隙間を形成する凹部2A;2Bの内壁面28a;28bが傾斜している傾斜面となるとともに、当該内壁面28a;28bと対向する挿入部31A;31Bの対向面31a;31bが、凹部21A;21Bの開口29側から凹部21A;21Bの底側に近付くほど内壁面28a;28bに近付くように形成されている垂直面となるように構成される。尚、この場合、内壁面28a;28bと対向する挿入部31A;31Bの対向面31a;31bが、凹部21A;21Bの開口29側から凹部21A;21Bの底側に近付くほど内壁面28a;28bに近付くように形成されている傾斜面となるように構成されていてもよい。
即ち、内壁面28a;28bと対向面31a;31bとの間で形成される楔部材4が嵌入される隙間の間隔が、凹部21A;21Bの開口29側から凹部21A;21Bの底側に向けて徐々に狭くなるように形成されればよい。
そして、
図10に示した実施形態7の継手1の場合、楔部材4が嵌入される隙間を形成する凹部2A;2Bを有した受部材2A;2Bは、凹部2A;2Bの内壁面28a;28bが傾斜面となるように傾けられて床版10の端部側に設置された構成である。
尚、互いに隣り合う受部材2A;2Bのうち、片方の受部材だけが、内壁面が傾斜面となるように傾けられて床版10の端部11側に設置された構成としてもよい。
【0029】
以上説明したように、本発明の継手1は、隣り合う各床版10,10の端部に埋設された各受部材2A,2B同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、一方の受部材2Aと他方の受部材2Bとを、繋ぎ部材3と楔部材4とを用いて、フレキシブルに結合できるように構成したものである。
即ち、単に部材と部材とを固定状態に結合するために部材と部材との間に楔部材を嵌入することは周知の技術であるが、隣り合う各床版10,10の端部に埋設された各受部材2A,2B同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合に、一方の受部材2Aと他方の受部材2Bとをフレキシブルに結合できるようにするために、楔部材4を用いるという本願発明は、新規で独創的な発明であるといえる。
【0030】
また、本発明の継手1では、挿入部31A,31Bの内面31a,31b又は凹部21A,21Bの内壁面28a,28bである傾斜面の傾斜角度と、当該挿入部31A,31Bの内面31a,31b又は凹部21A,21Bの内壁面28a,28bに接触する楔部材4の傾斜面4aの傾斜角度と、が同一傾斜角度に形成された構成としたことにより、楔部材4の圧入動作によって、楔部材4の傾斜面4aの全面が、挿入部31A,31Bの内面31a,31b、又は、凹部の内壁面28a,28bと密着するため、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との良好な固定状態を維持できるようになる。
即ち、受部材2A,2Bの凹部21A,21Bの内壁面28a,28bと楔部材4とが互いに面接触する面を備えた構成とした。
尚、挿入部31A,31Bの内面31a,31b又は凹部21A,21Bの内壁面28a,28bである傾斜面の傾斜角度と楔部材4の傾斜面4aの傾斜角度とが同一傾斜角度でなくても、楔部材4による楔の機能が発揮されればよい。
【0031】
また、本発明の継手1では、繋ぎ部材3の挿入部31Aや挿入部31Bにおいて連結部32を挟んで隣り合う左右一対の内面にそれぞれ対応するように、楔部材4,4を圧入する構成とした(
図2,
図3参照)ことにより、各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる。
【0032】
尚、各実施形態においては、繋ぎ部材3を凹部21A,21Bの内底面25a側に設置する際には、凹部21A,21Bの内底面25aに図外のスペーサを設置しておいて、繋ぎ部材3の下面3uを当該スペーサの上に載せて繋ぎ部材3を橋軸方向Xに沿って移動可能な状態に設置してから楔部材4を挿入することにより、楔部材4と凹部21A,21Bの内壁面と繋ぎ部材3の内面との密着性、及び、凹部21A,21Bの内壁面と繋ぎ部材3の内面との密着性が向上し、継手1により、隣り合う床版10,10同士を強固に連結できるようになる。
【0033】
また、本発明に係るコンクリート部材の継手は、橋軸方向Xに沿って隣り合うコンクリート部材としての各床版10,10同士を連結する以外に使用可能である。例えば、橋軸方向Xに沿って隣り合うコンクリート部材としての各壁高欄同士、その他のコンクリート部材同士を連結する継手としても使用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 継手、2A,2B 受部材、3 繋ぎ部材、3t 繋ぎ部材の上面、
3u 繋ぎ部材の下面、4 楔部材、4a 楔部材の傾斜面、
21A,21B 凹部、28a,28b 凹部の内壁面、23 定着部、
31A,31B 挿入部、31a,31b 挿入部の内面、32 連結部、
10 床版(コンクリート部材)、11 床版の端部、11s 床版の端面、
a,a… 複数の部材。