(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】潤滑油用粘度調整剤および潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 143/04 20060101AFI20230201BHJP
C10M 143/06 20060101ALI20230201BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20230201BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20230201BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20230201BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230201BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230201BHJP
C10N 40/26 20060101ALN20230201BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20230201BHJP
【FI】
C10M143/04
C10M143/06
C10N20:00 A
C10N20:02
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:25
C10N40:26
C10N50:10
(21)【出願番号】P 2019077709
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 晃央
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 瑛弘
(72)【発明者】
【氏名】徳永 悠司
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/101936(WO,A1)
【文献】特許第4427669(JP,B2)
【文献】特表2013-544948(JP,A)
【文献】特開2012-172013(JP,A)
【文献】特表2013-506036(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124070(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/082182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(x-1)~(x-4)の特性を有するプロピレン・α-オレフィン共重合体(X)を含むことを特徴とする潤滑油用粘度調整剤:
(x-1)プロピレン由来の構成単位の含有割合が50~99モル%の範囲である;
(x-2)α-オレフィンが炭素数2または4~20のオレフィンである;
(x-3)示差走査型熱量計で測定した融点(Tm:℃)が65℃~91℃である;
(x-4)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01~5.0dl/gである。
【請求項2】
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(X)を1~100質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油用粘度調整剤。
【請求項3】
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(X)のα-オレフィンが1-ブテンであることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑油用粘度調整剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油用粘度調整剤と、潤滑油基油(Y)とを含有し、かつ、前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(X)を0.01~20質量%の範囲で含むことを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油用粘度調整剤および潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油製品は、一般に温度が変わると粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有する。例えば、自動車に用いられる潤滑油では、粘度の温度依存性が小さい(すなわち、粘度指数が高い)ことが好ましい。そこで潤滑油には、粘度の温度依存性を小さくする目的で、潤滑油基油に可溶なある種のポリマーが粘度調整剤(粘度指数向上剤ともいう)として用いられている。
【0003】
潤滑油用粘度調整剤としてはエチレン・α-オレフィン共重合体が広く用いられており、潤滑油の性能バランスをさらに改善するため種々の改良がなされている(例えば、特許文献1参照)。また、潤滑油用粘度調整剤としてプロピレン・α-オレフィン共重合体を用いることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
近年、自動車への環境負荷低減要求が高まる中で、自動車の燃費向上が強く求められている。特にエンジン油による省燃費化の一つの方策として、低温から高温の幅広い温度範囲における粘性抵抗の低減が挙げられる。
【0005】
エンジン油の粘性抵抗の低減のためには、低粘度化が有効である。特に低温においては、摩擦損失および攪拌損失の両者の低減において有効である。一方で、高温においては、摺動部で磨耗が生じるため、単なる低粘度化は避けなければならない。そのため、粘度指数が高く、かつ、増粘性に優れた潤滑油用粘度調整剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2006/101206号
【文献】特表2013-506036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、粘度指数が高く、かつ、増粘性に優れた潤滑油用粘度調整剤および該潤滑油用粘度調整剤を含む潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、潤滑油組成物の高粘度指数化を達成するためには、高温(例えば100℃)で分子鎖が広がり、低温(例えば40℃)では収縮する構造を有するポリマーを用いることが望ましいと考え、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、高結晶性を有する特定のポリマーを用いることで、結晶化により低温でのポリマーの凝集力が高まることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下の[1]~[4]に関する。
【0009】
[1] 下記(x-1)~(x-4)の特性を有するプロピレン・α-オレフィン共重合体(X)を含むことを特徴とする潤滑油用粘度調整剤:
(x-1)プロピレン由来の構成単位の含有割合が50~99モル%の範囲である;
(x-2)α-オレフィンが炭素数2または4~20のオレフィンである;
(x-3)示差走査型熱量計で測定した融点(Tm:℃)が65℃~91℃である;
(x-4)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01~5.0dl/gである。
【0010】
[2] 前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(X)を1~100質量%の範囲で含むことを特徴とする項[1]に記載の潤滑油用粘度調整剤。
[3] 前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(X)のα-オレフィンが1-ブテンであることを特徴とする項[1]または[2]に記載の潤滑油用粘度調整剤。
【0011】
[4] 項[1]~[3]のいずれか1項に記載の潤滑油用粘度調整剤と、潤滑油基油(Y)とを含有し、かつ、前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(X)を0.01~20質量%の範囲で含むことを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粘度指数が高く、かつ、増粘性に優れた潤滑油用粘度調整剤および該潤滑油用粘度調整剤を含む潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
[潤滑油用粘度調整剤]
本発明の潤滑油用粘度調整剤は、下記(x-1)~(x-4)の特性を有するプロピレン・α-オレフィン共重合体(X)(以下、単に「共重合体(X)」ともいう。)を含むことを特徴とする。
(x-1)プロピレン由来の構成単位の含有割合が50~99モル%の範囲である。
(x-2)α-オレフィンが炭素数2または4~20のオレフィンである。
(x-3)示差走査型熱量計で測定した融点(Tm:℃)が65℃~91℃である。
(x-4)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01~5.0dl/gである。
【0014】
前記共重合体(X)は1種または2種以上用いることができる。本発明の潤滑油用粘度調整剤における前記共重合体(X)の含有割合は、通常は1~100質量%、好ましくは10~100質量%、より好ましくは50~100質量%である。
【0015】
本発明の潤滑油用粘度調整剤は、前記共重合体(X)の含有割合が上記範囲にある限り、後述する潤滑油基油(Y)および添加剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することができる。
【0016】
<プロピレン・α-オレフィン共重合体(X)>
前記共重合体(X)は、下記(x-1)~(x-4)の特性を有する。
(x-1)プロピレン由来の構成単位の含有割合(以下「プロピレン含量」ともいう。)が50~99モル%の範囲である。
【0017】
前記共重合体(X)におけるプロピレン含量は、共重合体(X)を構成するモノマーに由来する構成単位の全量を100モル%とした場合、通常50~99モル%、好ましくは60~95モル%、より好ましくは70~90モル%、特に好ましくは75~85モル%の範囲である。プロピレン含量が前記範囲内であることにより、良好な粘度温度特性を有する潤滑油組成物を得ることができる。
【0018】
(x-2)α-オレフィンが炭素数2または4~20のオレフィンである。
前記炭素数2または4~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、デセン-1、ウンデセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1、エイコセン-1等の炭素数2または4~20、好ましくは炭素数2または4~12のα-オレフィンが挙げられる。また、α-オレフィンは直鎖状であっても分岐を有してもよい。α-オレフィンの中では、潤滑油組成物に対して良好な低温粘度特性、剪断安定性、耐熱性を与える点で、エチレン、ブテン-1、オクテン-1、4-メチル-ペンテン-1が好ましく、ブテン-1が特に好ましい。共重合体(X)は、α-オレフィン由来の構成単位を1種または2種以上含有することができる。
【0019】
前記共重合体(X)は、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレンおよびα-オレフィン以外のその他のモノマーに由来する構成単位を含有してもよい。その他のモノマーとしては、例えば、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィンが挙げられる。環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィンおよびハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落[0035]~[0041]に記載の化合物が挙げられる。
【0020】
(x-3)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(Tm:℃)が65℃~91℃である。
前記共重合体(X)の融点(Tm)は、65~91℃、好ましくは70~90℃、より好ましくは74~90℃である。前記共重合体(X)の融点が前記範囲内であることにより、粘度指数が高く、かつ、増粘性に優れた潤滑油用粘度調整剤を得ることができる。
【0021】
(x-4)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01~5.0dl/gである。
共重合体(X)の前記極限粘度[η]は、通常0.01~5.0dl/g、好ましくは0.05~4.0dl/gであり、より好ましくは0.1~3.5dl/g、さらに好ましくは0.3~3.0dl/g、特に好ましくは0.5~2.5dl/gである。極限粘度[η]が前記範囲内であると、剪断安定性と低温特性とのバランスに優れた潤滑油組成物を得ることができる。
以上の物性の測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
【0022】
<共重合体(X)の製造方法>
前記共重合体(X)は、例えば、バナジウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム等の遷移金属を含有する化合物と、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む触媒を用いて、少なくともエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。このとき用いられるオレフィン重合用触媒としては、例えば、国際公開第00/34420号に記載されている触媒が挙げられる。
【0023】
[潤滑油組成物]
本発明の潤滑油組成物は、上述した本発明の潤滑油用粘度調整剤と、潤滑油基油(Y)とを含有する。
【0024】
本発明の潤滑油組成物における共重合体(X)の含有割合は、組成物全量に対して、通常0.01~20質量%、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。本発明では、共重合体(X)による組成物の粘度調整効果が高いため、共重合体(X)を少量使用するのみで充分な効果が得られ、したがってコストの観点から好ましい。
【0025】
<潤滑油基油(Y)>
本発明の潤滑油組成物に含まれる潤滑油基油(Y)(以下「基油(Y)」ともいう)は、通常、潤滑油基油として用いられるものを制限なく用いることができ、例えば、鉱物油、合成油が挙げられる。基油(Y)としては、鉱物油と合成油とのブレンド物を用いてもよい。
【0026】
基油(Y)の100℃における動粘度は、通常は1~50mm2/s、好ましくは1.5~40mm2/s、より好ましくは2~30mm2/sである。
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。一般に0.5~10質量%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることができる。40℃における動粘度が5~200mm2/sの鉱物油が一般的に使用される。
【0027】
合成油としては、例えば、ポリ-α-オレフィン;ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート等のジエステル類;ポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0028】
表1に各グループに分類される潤滑油基油の特性を示す。
【0029】
【0030】
表1におけるポリ-α-オレフィンは、炭素数10以上のα-オレフィンを少なくとも原料モノマーとして重合して得られる炭化水素ポリマーであって、例えば、デセン-1を重合して得られるポリデセンが挙げられる。
【0031】
基油(Y)としては、グループ(II)またはグループ(III)に属する鉱物油、またはグループ(IV)に属するポリ-α-オレフィンが好ましい。グループ(I)よりもグループ(II)およびグループ(III)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。グループ(II)またはグループ(III)に属する鉱物油の中でも、100℃における動粘度が1~50mm2/sのものが好ましい。
【0032】
基油(Y)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の潤滑油組成物における基油(Y)の含有割合は、組成物全量に対して、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、基油(Y)の含有割合の上限は共重合体(X)および添加剤の量により画定される。
【0033】
<他の成分(添加剤)>
本発明の潤滑油組成物は、必要に応じて、上述した本発明の潤滑油用粘度調整剤および基油(Y)以外の他の成分(添加剤)を含有してもよい。他の成分としては、例えば、他の粘度調整剤、流動点降下剤、清浄分散剤、摩耗防止剤、消泡剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、色安定剤、錆止め剤、腐食防止剤および金属不活性化剤が挙げられる。
【0034】
他の粘度調整剤としては、例えば、ポリイソブテン類、ポリメタクリル酸エステル類、ジエンポリマー類、ポリアルキルスチレン類、エステル化されたスチレン-無水マレイン酸共重合体類、アルケニルアレーン共役ジエン共重合体類およびポリオレフィン類、水添SBR(スチレンブタジエンラバー)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)等のポリマーが挙げられる。分散性および/または酸化防止性も有する多機能性の粘度調整剤は公知であり、任意に用いてもよい。
【0035】
流動点降下剤としては、例えば、アルキル化ナフタレン、(メタ)アクリル酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルと酢酸ビニルとの共重合体、α-オレフィンポリマー、α-オレフィンとスチレンとの共重合体が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸アルキルの(共)重合体が好ましい。
【0036】
清浄分散剤としては、例えば、カルシウムスルフォネート、マグネシウムスルフォネート等のスルフォネート系;フィネート;サリチレート;コハク酸イミド;ベンジルアミンが挙げられる。潤滑油組成物中の典型的な清浄分散剤の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常は1~10質量%、好ましくは1.5~9.0質量%、より好ましくは2.0~8.0質量%である。なお、該量はすべて、清浄分散剤において油がない(すなわち、それらに従来供給される希釈油がない)状態をベースにする。
【0037】
磨耗防止剤としては、チオリン酸金属塩類、リン酸エステル類およびそれらの塩類、リン含有のカルボン酸類・エステル類・エーテル類・アミド類;ならびに亜リン酸塩などのようなリン含有磨耗防止剤/極圧剤が挙げられる。多くの場合、上記磨耗防止剤はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDP)である。典型的なZDPは、11質量%のP(オイルがない状態をベースに算出)を含んでもよく、好適な量として0.09~0.82質量%を挙げてもよい。リンを含まない磨耗防止剤としては、ホウ酸エステル類(ホウ酸エポキシド類を含む)、ジチオカルバメート化合物類、モリブデン含有化合物類、および硫化オレフィン類が挙げられる。また、リン含有磨耗防止剤は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常は0.01~0.2質量%、好ましくは0.015~0.15質量%、より好ましくは0.02~0.1質量%、さらに好ましくは0.025~0.08質量%のリンを与える量で存在してもよい。
【0038】
消泡剤としては、例えば、ジメチルシロキサン、シリカゲル分散体等のシリコン系消泡剤;アルコール、エステル系消泡剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤;ジオクチルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の典型的な量は、具体的な酸化防止剤およびその個々の有効性にもちろん依存するだろうが、例示的な合計量は、0.01~5質量%、好ましくは0.15~4.5質量%、より好ましくは0.2~4質量%となり得る。さらに、1つ以上の酸化防止剤が存在していてもよく、これらの特定の組合せは、これらを組み合わせた全体の効果に対して、相乗的でなり得る。
【0039】
錆止め剤としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸塩、エステル、リン酸が挙げられる。腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の化合物が挙げられる。
【0040】
本発明の潤滑油組成物が添加剤を含有する場合、その含有割合は特に限定されないが、基油(Y)と全添加剤との合計100質量%に対して、添加剤の全含有割合は、通常0質量%超、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり;通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0041】
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の潤滑油組成物は、従来公知の方法で、例えば共重合体(X)、必要に応じて基油(Y)および添加剤を混合することにより調製することができる。共重合体(X)は、取扱いが容易なため、基油(Y)中の濃縮物として任意に供給してもよい。
【0042】
<用途>
本発明の潤滑油組成物は、例えば、自動車用エンジンオイル、大型車両用ディーゼルエンジン用の潤滑油、船舶用ディーゼルエンジン用の潤滑油、二行程機関用の潤滑油、自動変速装置用およびマニュアル変速機用の潤滑油、ギア潤滑油ならびにグリース等として、多様な公知の機械装置のいずれにも注油することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
[共重合体の物性]
実施例および比較例で用いた共重合体の各種物性は、以下のようにして測定した。
【0044】
<プロピレン含量(C3含量)>
プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるプロピレン由来の構成単位の含有割合(モル%)については、13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
【0045】
(測定装置)
ブルカー・バイオスピン社製AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置
(測定条件)
測定核:13C(125MHz)、測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:45°(5.00μ秒)、ポイント数:64k、観測範囲:250ppm(-55~195ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:128回、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1 v/v)、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)、ケミカルシフト基準:ベンゼン-d6(128.0ppm)。
【0046】
<融点(Tm)>
重合例で製造したプロピレン・α-オレフィン共重合体を、190℃に設定した油圧式熱プレス成型機を用いて5分間予熱した後、2分間加圧し、加圧後1分間以内に20℃に設定した冷却槽で4分間冷却して、厚さ1mmのプレスシートを作成した。このプレスシートを23℃で3日間保管したものを試験体とした。
【0047】
プロピレン・α-オレフィン共重合体の融点(Tm)は、インジウム標準にて較正したSII社製示差走査型熱量計「X-DSC7000」を用いて、以下のようにして測定した。
【0048】
アルミニウム製DSCパン上に測定サンプル(プロピレン・α-オレフィン共重合体)を約10mgになるように秤量した。蓋をパンにクリンプして密閉雰囲気下とし、サンプルパンを得た。サンプルパンをDSCセルに配置し、リファレンスとして空のアルミニウムパンを配置した。DSCセルを窒素雰囲気下にて-20℃から、150℃まで10℃/分で昇温した(第一昇温過程)。
【0049】
第一昇温過程で得られるエンタルピー曲線の融解ピークトップ温度を融点(Tm)とした。融解ピークが2個以上存在する場合には、最大のピーク温度をTmとして定義した。なお、融点が観測されないとは、非晶性であることを意味する。
【0050】
<極限粘度[η](dl/g)>
共重合体の極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。具体的には、共重合体のパウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0051】
[潤滑油組成物の物性]
実施例および比較例で得られた潤滑油組成物の各種物性は、以下のようにして測定した。
【0052】
<動粘度(KV)>
潤滑油組成物の40℃および100℃における動粘度(KV)を、ASTM D445に基づいて測定するとともに、これらの結果を用いてASTM D2270に基づいて粘度指数(VI)を算出した。
【0053】
[プロピレン・α-オレフィンの重合例]
以下、プロピレン・α-オレフィン共重合体の重合例について記載する。なお、分析および潤滑油調整剤評価に必要な量を確保するため、複数回の重合を実施していることがある。
【0054】
<重合例1>
充分に窒素置換された容積0.95Lの攪拌翼付加圧連続重合反応器の一つの供給口に、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-エチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(以下「化合物(1)」ともいう。)を0.018mmol/Lの濃度で、メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社のTMAO-341)を4.4mmol/Lの濃度で、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)を3.5mmol/Lの濃度で混合調整したヘキサン溶液(1)を260mL/時の流量で連続的に供給した。同時に連続重合反応器の別の供給口に、プロピレンを286g/時の流量で、1-ブテンを570g/時の流量で、水素を0.07NL/時の流量で連続的に供給した。前記重合反応器の供給口二つと最上部の口からヘキサンを1,450mL/時の合計流量で連続的に供給し、重合温度70℃、全圧3.6MPa-G(G=ゲージ圧力)、攪拌回転数700rpmの条件下で連続溶液重合を行った。重合反応器外周に設けられたジャケットに冷媒を流通させることにより、重合反応熱の除去を行った。
【0055】
上記条件で重合を行うことによって生成したプロピレン・1-ブテン共重合体を含むヘキサン溶液は、圧力を3.6MPa-Gに維持するように、重合反応器最上部に設けられた排出口を介してプロピレン・1-ブテン共重合体として連続的に排出させた。得られる重合溶液を、大量のメタノールに投入してプロピレン・1-ブテン共重合体を析出させた。そして、該プロピレン・1-ブテン共重合体を、180℃で1時間減圧乾燥を行った。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0056】
<重合例2~14>
表2に記載したとおりに重合条件を変更したこと以外は重合例1と同様に行った。重合例11~15では、1-ブテンの代わりにエチレンをコモノマーとして使用した。
【0057】
【0058】
[実施例および比較例]
上記の重合例で得られたプロピレン・α-オレフィン共重合体を潤滑油用粘度調整剤として用いて、潤滑油組成物を調製した。潤滑油組成物の100℃における動粘度が8.0mm2/s程度になるように、プロピレン・α-オレフィン共重合体の添加量を調整した。
【0059】
配合組成は以下のとおりである。
APIグループ(III)基油(「Yubase-4」、SK Lubricants社製、100℃における動粘度:4.21mm2/s、粘度指数:123)
添加剤*:8.64質量%
流動点降下剤:0.3質量%
(ポリメタクリレート「ルブラン165」、東邦化学工業社製)
プロピレン・α-オレフィン共重合体:表3に示すとおり
合計 100.0(質量%)
注(*) 添加剤=CaおよびNaの過塩基性清浄剤、N含有分散剤、アミン性[aminic]およびフェノール性の酸化防止剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛類、摩擦調整剤、および消泡剤を含む従来のGF-5用エンジン油用添加剤パッケージ。
【0060】
評価結果を表3に示す。
【0061】
【0062】
表3に記載のとおり、実施例と比較例とを比較した場合、実施例は40℃動粘度が低く、粘度指数が高い。