(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】非接触電圧測定装置のためのマルチセンサスキャナ構成
(51)【国際特許分類】
G01R 15/16 20060101AFI20230201BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G01R15/16
G01R19/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019089283
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-27
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509233459
【氏名又は名称】フルークコーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
【住所又は居所原語表記】6920 Seaway Boulevard, Everett, Washington 98203 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【復代理人】
【識別番号】100216987
【氏名又は名称】穐吉 康平
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド シュトイアー
(72)【発明者】
【氏名】リカード ロドリゲス
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0076343(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03450995(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03321696(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0259565(US,A1)
【文献】米国特許第05473244(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0086130(US,A1)
【文献】国際公開第2016/175142(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175123(WO,A1)
【文献】特開2011-053201(JP,A)
【文献】特開2010-286347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 15/00-17/22、
19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁導体内の交流(AC)電圧を測定するための装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに物理的に結合されたセンササブシステムであって、前記センササブシステムが、前記絶縁導体にガルバニック接触することなく、前記絶縁導体に近接して選択的に位置決め可能であり、前記センササブシステムが、前記絶縁導体と容量結合し、前記センササブシステムが、複数のセンサ素子を含む、センササブシステムと、
前記センササブシステムを少なくとも部分的に取り囲み、前記センササブシステムからガルバニック絶縁される、導電内部接地ガードであって、前記導電内部接地ガードが、迷走電流から前記センササブシステムを遮蔽するようにサイズ決定及び寸法決定される、導電内部接地ガードと、
前記ハウジングの少なくとも一部分を取り囲み、前記導電内部接地ガードからガルバニック絶縁される、導電基準遮蔽体であって、前記導電基準遮蔽体が、前記導電内部接地ガードと外部接地との間の電流を低減させるようにサイズ決定及び寸法決定される、導電基準遮蔽体と、
動作中に、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を生成する、コモンモード基準電圧源であって、前記コモンモード基準電圧源が、前記導電内部接地ガードと前記導電基準遮蔽体との間で電気的に結合される、コモンモード基準電圧源と、
動作中に、前記センササブシステムを通して伝導される電流を示すセンサ電流信号を生成する、信号調整回路と、
複数の制御可能なスイッチであって、前記複数の制御可能なスイッチの各々が、前記センサ素子のそれぞれの1つを前記信号調整回路に選択的に電気的に結合するように動作する、複数の制御可能なスイッチと、
前記複数の制御可能なスイッチ及び前記信号調整回路に通信的に結合された制御回路であって、動作中に、前記制御回路が、
前記複数の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子のうちの1つを前記信号調整回路に電気的に結合させ、
前記信号調整回路からセンサ電流信号を受信し、また、
前記センサ電流信号、前記AC基準電圧、及び前記基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、前記絶縁導体内の前記AC電圧を決定する、制御回路と、を含む、装置。
【請求項2】
前記複数の制御可能なスイッチの各々が、第1の状態及び第2の状態に制御可能であり、前記第1の状態では、前記スイッチが、前記センサ素子のそれぞれの1つを前記信号調整回路に電気的に結合し、前記第2の状態では、前記スイッチが、前記センサ素子のそれぞれの1つを前記導電内部接地ガードに電気的に結合する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
動作中に、前記制御回路が、
前記複数のセンサ素子各々について、
前記センサ素子に電気的に結合されている、前記制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子を前記信号調整回路に結合し、
前記センサ素子に電気的に結合されていない、前記制御可能なスイッチのうちの第2のスイッチを制御して、前記第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を前記信号調整回路から電気的に結合解除し、
前記信号調整回路から前記センサ素子のセンサ電流信号を受信し、また、
前記複数のセンサ素子のうちのどの1つが最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成するのかを決定し、
前記第1の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子を前記信号調整回路に電気的に結合させるために、前記制御回路が、前記第1の制御可能なスイッチを制御して、前記最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成すると決定された前記センサ素子を前記信号調整回路に電気的に結合させる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
動作中に、前記制御回路が、
前記複数のセンサ素子各々について、
前記センサ素子に電気的に結合されている、前記制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子を前記信号調整回路に結合し、
前記センサ素子に電気的に結合されていない、前記制御可能なスイッチのうちの第2のスイッチを制御して、前記第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を前記信号調整回路から電気的に結合解除し、
前記信号調整回路から前記センサ素子のセンサ電流信号を受信し、また、
前記センサ素子の各々の前記センサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、試験中の前記絶縁導体の物理的特性を決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記物理的特性が、試験中の前記絶縁導体の物理的寸法、又は試験中の前記絶縁導体の物理的位置、のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
動作中に、前記制御回路が、前記センサ素子の各々の前記センサ電流信号の分配の分析を介して、試験中の前記絶縁導体の物理的特性を決定する、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記信号調整回路が、増幅器、フィルタ、又はアナログ-デジタル変換器のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記センササブシステム及び前記導電内部接地ガードが、それぞれ、非平面形状である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
動作中に、前記制御回路が、
前記センサ電流信号をデジタル信号に変換し、
前記デジタル信号を処理して、前記センサ電流信号の周波数領域表現を取得する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記制御回路が、前記センサ電流信号の前記周波数領域表現を取得するために、高速フーリエ変換(FFT)を実装する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記コモンモード基準電圧源が、前記制御回路によって実装された前記FFTのウインドウによって同相で前記AC基準電圧を生成する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記制御回路が、前記センサ電流信号を処理して、絶縁導体電流成分及び基準電流成分を決定するが、前記絶縁導体電流成分が、前記絶縁導体内の前記AC電圧により前記センサ素子を通して伝導される前記電流を示し、前記基準電流成分が、前記コモンモード基準電圧源の前記AC電圧により前記センサ素子を通して伝導される前記電流を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記制御回路が、前記センサ電流信号の前記絶縁導体電流成分の周波数を決定する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記制御回路が、前記絶縁導体電流成分、前記基準電流成分、前記絶縁導体電流成分の前記周波数、前記基準周波数、及び前記AC基準電圧に基づいて、前記絶縁導体内の前記AC電圧を決定する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
絶縁導体内の交流(AC)電圧を測定するために装置を動作させる方法であって、前記装置が、ハウジングと、前記ハウジングに物理的に結合されたセンササブシステムであって、前記センササブシステムが、前記絶縁導体にガルバニック接触することなく、前記絶縁導体に近接して選択的に位置決め可能であり、前記センササブシステムが、前記絶縁導体と容量結合し、前記センササブシステムが、複数のセンサ素子を備える、センササブシステムと、前記センササブシステムを少なくとも部分的に取り囲み、前記センササブシステムからガルバニック絶縁される導電内部接地ガードであって、迷走電流から前記センササブシステムを遮蔽するようにサイズ決定及び寸法決定される導電内部接地ガードと、前記ハウジングの少なくとも一部分を取り囲み、前記導電内部接地ガードからガルバニック絶縁される導電基準遮蔽体であって、前記導電内部接地ガードと外部接地との間の電流を低減させるようにサイズ決定及び寸法決定される導電基準遮蔽体と、を備え、前記方法が、
コモンモード基準電圧源に、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を生成させるが、前記コモンモード基準電圧源は、前記導電内部接地ガードと前記導電基準遮蔽体との間に電気的に結合されていることと、
複数の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子のうちの1つを信号調整回路に電気的に結合させることと、
前記信号調整回路からセンサ電流信号を受信することと、
前記センサ電流信号、前記AC基準電圧、及び前記基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、前記絶縁導体内の前記AC電圧を決定することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記複数のセンサ素子各々について、
前記センサ素子に電気的に結合されている、制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子を前記信号調整回路に結合することと、
前記センサ素子に電気的に結合されていない、前記制御可能なスイッチのうちの第2の制御可能なスイッチを制御して、前記第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を前記信号調整回路から電気的に結合解除することと、
前記信号調整回路から前記センサ素子のセンサ電流信号を受信することと、
前記複数のセンサ素子のうちのどの1つが最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成するのかを決定することと、を更に含み、
前記第1の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子を前記信号調整回路に電気的に結合させることが、前記第1の制御可能なスイッチを制御して、前記最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成すると決定された前記センサ素子を前記信号調整回路に電気的に結合させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のセンサ素子各々について、
前記センサ素子に電気的に結合されている、制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子を前記信号調整回路に結合することと、
前記センサ素子に電気的に結合されていない、制御可能なスイッチのうちの第2の制御可能なスイッチを制御して、第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を前記信号調整回路から電気的に結合解除することと、
前記信号調整回路から前記センサ素子のセンサ電流信号を受信することと、
前記センサ素子の各々の前記センサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、試験中の前記絶縁導体の物理的特性を決定することと、を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
物理的特性を決定することが、前記絶縁導体の物理的寸法又は前記絶縁導体の物理的位置のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記絶縁導体の物理的特性を決定することが、前記センサ素子の各々の前記センサ電流信号の分配を分析することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
絶縁導体内の交流(AC)を測定するための装置であって、前記装置が、
前記絶縁導体にガルバニック接触することなく、前記絶縁導体に近接して選択的に位置決め可能なセンササブシステムであって、前記センササブシステムが、前記絶縁導体と容量結合し、前記センササブシステムが、複数のセンサ素子を含む、センササブシステムと、
動作中に、前記センササブシステムを通して伝導された電流を示すセンサ電流信号を生成する、信号調整回路と、
複数の制御可能なスイッチであって、前記複数の制御可能なスイッチの各々が、前記センサ素子のそれぞれの1つを前記信号調整回路に選択的に電気的に結合するように動作する、複数の制御可能なスイッチと、
前記信号調整回路及び前記制御可能なスイッチに通信的に結合された制御回路であって、動作中に、複数の制御可能なスイッチを制御して、最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成すると決定されたセンサ素子を前記信号調整回路に電気的に結合させる制御回路と、を備える、装置。
【請求項21】
動作中に、前記制御回路が、
前記信号調整回路からセンサ電流信号を受信し、また、
前記センサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、前記絶縁導体内のAC電圧を決定する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記複数の制御可能なスイッチの各々が、第1の状態及び第2の状態に制御可能であり、前記第1の状態では、前記スイッチが、前記センサ素子のそれぞれの1つを前記信号調整回路に電気的に結合し、前記第2の状態では、前記スイッチが、前記センサ素子のそれぞれの1つを導電内部接地ガードに電気的に結合する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
絶縁導体内の交流(AC)電圧を測定するための装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに物理的に結合されたセンササブシステムであって、前記センササブシステムが、前記絶縁導体にガルバニック接触することなく、前記絶縁導体に近接して選択的に位置決め可能であり、前記センササブシステムが、前記絶縁導体と容量結合し、前記センササブシステムが、複数のセンサ素子を含む、センササブシステムと、
前記センササブシステムを少なくとも部分的に取り囲み、前記センササブシステムからガルバニック絶縁される、導電内部接地ガードであって
、迷走電流から前記センササブシステムを遮蔽するようにサイズ決定及び寸法決定される、導電内部接地ガードと、
前記ハウジングの少なくとも一部分を取り囲み、前記導電内部接地ガードからガルバニック絶縁される、導電基準遮蔽体であって、前記導電内部接地ガードと外部接地との間の電流を低減させるようにサイズ決定及び寸法決定される、導電基準遮蔽体と、
動作中に、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を生成する、コモンモード基準電圧源であって、前記導電内部接地ガードと前記導電基準遮蔽体との間で電気的に結合される、コモンモード基準電圧源と、
動作中に、前記センササブシステムを通して伝導される電流を示すセンサ電流信号を生成する、信号調整回路と、
複数の制御可能なスイッチであって、前記センサ素子の種々の組み合わせを前記信号調整回路に選択的に電気的に結合するように動作する、複数の制御可能なスイッチと、
前記複数の制御可能なスイッチ及び前記信号調整回路に通信的に結合された制御回路と、を備え、動作中に、前記制御回路が、
前記複数の制御可能なスイッチを制御して、前記センサ素子の組み合わせを前記信号調整回路に電気的に結合させるが、前記センサ素子の前記組み合わせが、前記複数のセンサ素子のうちの1つ以上を備え、
前記信号調整回路から少なくとも1つのセンサ電流信号を受信し、
前記少なくとも1つのセンサ電流信号、前記AC基準電圧、及び前記基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、前記絶縁導体内の前記AC電圧を決定する、装置。
【請求項24】
前記センサ素子の前記組み合わせが、複数の隣接するセンサ素子を備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記センサ素子の前記組み合わせが、単一のセンサ素子、複数の隣接するセンサ素子、隣接しない少なくとも2つの、又は全ての前記センサ素子、のうちの少なくとも1つを備える、請求項23に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電圧測定装置に関し、より具体的には、電圧測定装置のためのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧計は、電気回路内の電圧を測定するのに使用される器具である。1つを超える電気的特性を測定する器具は、マルチメータ又はデジタルマルチメータ(DMM)と呼ばれ、サービス用途、トラブルシューティング用途、及びメンテナンス用途に一般に必要とされるいくつかのパラメータを測定するように動作する。そのようなパラメータとしては、典型的には交流(AC)電圧及び電流、直流(DC)電圧及び電流、並びに抵抗又は継続性が挙げられる。電力特性、周波数、容量、及び温度など、他のパラメータも特定の用途の要件を満たすために測定することができる。
【0003】
AC電圧を測定する従来の電圧計又はマルチメータを使用するときは、少なくとも2つの測定電極又はプローブを導体とガルバニック接触させることが必要であり、多くの場合、絶縁電線の絶縁部分を切り離すこと、又はあらかじめ測定用端子を提供することが必要である。ガルバニック接触のために露出させた電線又は端子を必要とする他に、剥離した電線又は端子に電圧計プローブを当てる工程は、ショック又は感電死のリスクにより比較的危険である場合がある。「非接触」電圧測定装置は、回路とのガルバニック接触を必要とすることなく、交流(AC)電圧の存在を検出するために使用されることがある。電圧が検出されると、ユーザは、光、ブザー、又は振動モータなどの提示によって警告される。しかしながら、そのような非接触電圧検出器は、AC電圧の有無だけを提示し、AC電圧の実際の大きさ(例えば、RMS値)を提示しない。
[発明が解決しようとする課題]
【0004】
したがって、試験されている回路とガルバニック接触する必要なしに便利かつ正確な電圧測定を提供するAC電圧測定システムの必要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許8330449号
【文献】米国特許5473244号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
絶縁導体内の交流(AC)電圧を測定するための装置は、以下のように要約することができ、装置は、ハウジングと、ハウジングに物理的に結合されたセンササブシステムであって、センササブシステムが、絶縁導体にガルバニック接触することなく、絶縁導体に近接して選択的に位置決め可能であり、センササブシステムが、絶縁導体と容量結合し、センササブシステムが、複数のセンサ素子を含む、センササブシステムと、センササブシステムを少なくとも部分的に取り囲み、センササブシステムからガルバニック絶縁される、導電内部接地ガードであって、導電内部接地ガードが、迷走電流からセンササブシステムを遮蔽するようにサイズ決定及び寸法決定される、導電内部接地ガードと、ハウジングの少なくとも一部分を取り囲み、導電内部接地ガードからガルバニック絶縁される、導電基準遮蔽体であって、導電基準遮蔽体が、導電内部接地ガードと外部接地との間の電流を低減させるようにサイズ決定及び寸法決定される、導電基準遮蔽体と、動作中に、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を生成する、コモンモード基準電圧源であって、コモンモード基準電圧源が、導電内部接地ガードと導電基準遮蔽体との間で電気的に結合される、コモンモード基準電圧源と、動作中に、センササブシステムを通して伝導される電流を示すセンサ電流信号を生成する、信号調整回路と、複数の制御可能なスイッチであって、複数の制御可能なスイッチの各々が、センサ素子のそれぞれの1つを信号調整回路に選択的に電気的に結合するように動作する、複数の制御可能なスイッチと、複数の制御可能なスイッチ及び信号調整回路に通信的に結合された制御回路であって、動作中に、制御回路が、 複数の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子のうちの1つを信号調整回路に電気的に結合させ、信号調整回路からセンサ電流信号を受信し、また、センサ電流信号、AC基準電圧、及び基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体内のAC電圧を決定する、制御回路と、を含む。
【0007】
複数の制御可能なスイッチの各々を、第1の状態及び第2の状態に制御可能とすることができ、第1の状態では、スイッチは、センサ素子のそれぞれの1つを信号調整回路に電気的に結合することができ、第2の状態では、スイッチは、センサ素子のそれぞれの1つ を導電内部接地ガードに電気的に結合することができる。制御回路は、複数のセンサ素子各々について、センサ素子に電気的に結合されている、制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子を信号調整回路に結合することができ、センサ素子に電気的に結合されていない、制御可能なスイッチのうちの第2の制御可能なスイッチを制御して、第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を信号調整回路から電気的に結合解除することができ、また、信号調整回路からセンサ素子のセンサ電流信号を受信することができ、また、複数のセンサ素子のうちのどの1つが最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成するのかを決定することができ、第1の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子を信号調整回路に電気的に結合させるために、制御回路は、第1の制御可能なスイッチを制御して、最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成すると決定されたセンサ素子を信号調整回路に電気的に結合させることができる。制御回路は、複数のセンサ素子各々について、センサ素子に電気的に結合されている、制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子を信号調整回路に結合することができ、センサ素子に電気的に結合されていない、制御可能なスイッチのうちの第2の制御可能なスイッチを制御して、第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を信号調整回路から電気的に結合解除することができ、また、信号調整回路からセンサ素子のセンサ電流信号を受信することができ、また、センサ素子の各々のセンサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、試験中の導体の物理的特性を決定することができる。物理的特性は、試験中の絶縁導体の物理的寸法、又は試験中の絶縁導体の物理的位置、のうちの少なくとも1つを含むことができる。制御回路は、センサ素子の各々のセンサ電流信号の分配の分析を介して、試験中の絶縁導体の物理的特性を決定することができる。信号調整回路は、増幅器、フィルタ、又はアナログ-デジタル変換器のうちの少なくとも1つを含むことができる。センササブシステム及び導電内部接地ガードは、それぞれ、非平面形状とすることができる。制御回路は、センサ電流信号をデジタル信号に変換することができ、また、デジタル信号を処理して、センサ電流信号の周波数領域表現を取得することができる。制御回路は、センサ電流信号の周波数領域表現を取得するために、高速フーリエ変換(FFT)を実装することができる。コモンモード基準電圧源は、制御回路によって実装されたFFTのウインドウによって同相でAC基準電圧を生成することができる。制御回路は、センサ電流信号を処理して、絶縁導体電流成分及び基準電流成分を決定することができ、絶縁導体電流成分は、絶縁導体内のAC電圧によりセンサ素子を通して伝導される電流を示し、基準電流成分は、コモンモード基準電圧源のAC電圧によりセンサ素子を通して伝導される電流を示す。制御回路は、センサ電流信号の絶縁導体電流成分の周波数を決定することができる。制御回路は、絶縁導体電流成分、基準電流成分、絶縁導体電流成分の周波数、基準周波数、及びAC基準電圧に基づいて、絶縁導体内のAC電圧を決定することができる。
【0008】
絶縁導体内の交流(AC)電圧を測定するために装置を動作させる方法は、以下のように要約することができるが、装置は、ハウジングと、ハウジングに物理的に結合されたセンササブシステムであって、センササブシステムが、絶縁導体にガルバニック接触することなく、絶縁導体に近接して選択的に位置決め可能であり、センササブシステムが、絶縁導体と容量結合し、センササブシステムが、複数のセンサ素子を備え、センササブシステムと、センササブシステムを少なくとも部分的に取り囲み、センササブシステムからガルバニック絶縁される導電内部接地ガードであって、迷走電流からセンササブシステムを遮蔽するようにサイズ決定及び寸法決定される導電内部接地ガードと、ハウジングの少なくとも一部分を取り囲み、導電内部接地ガードからガルバニック絶縁される導電基準遮蔽体であって、内部接地ガードと外部接地との間の電流を低減させるようにサイズ決定及び寸法決定される導電基準遮蔽体と、を含み、その方法は、コモンモード基準電圧源に、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を生成させるが、コモンモード基準電圧源は、内部接地ガードと導電基準遮蔽体との間に電気的に結合されていることと、複数の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子のうちの1つを信号調整回路に電気的に結合させることと、信号調整回路からセンサ電流信号を受信することと、センサ電流信号、AC基準電圧、及び基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体内のAC電圧を決定することと、を更に含む。
【0009】
本方法は、複数のセンサ素子各々について、センサ素子に電気的に結合されている制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子を信号調整回路に結合することと、センサ素子に電気的に結合されていない、制御可能なスイッチのうちの第2の制御可能なスイッチを制御して、第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を信号調整回路から電気的に結合解除することと、信号調整回路からセンサ素子のセンサ電流信号を受信することと、複数のセンサ素子のうちのどの1つが最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成するのかを決定することと、を更に含むことができ、第1の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子を信号調整回路に電気的に結合させることは、第1の制御可能なスイッチを制御して、最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成すると決定されたセンサ素子を信号調整回路に電気的に結合させることを含む。本方法は、複数のセンサ素子各々について、センサ素子に電気的に結合されている制御可能なスイッチのうちの第1の制御可能なスイッチを制御して、センサ素子を信号調整回路に結合することと、センサ素子に電気的に結合されていない、制御可能なスイッチのうちの第2の制御可能なスイッチを制御して、第2の制御可能なスイッチに対応するセンサ素子を信号調整回路から電気的に結合解除することと、信号調整回路からセンサ素子のセンサ電流信号を受信することと、センサ素子の各々のセンサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、試験中の導体の物理的特性を決定することと、を更に含むことができる。物理的特性を決定することは、絶縁導体の物理的寸法又は絶縁導体の物理的位置のうちの少なくとも1つを決定することを含むことができる。絶縁導体の物理的特性を決定することは、センサ素子の各々のセンサ電流信号の分配を分析することを含むことができる。
【0010】
絶縁導体内の交流(AC)を測定するための装置は、以下のように要約することができ、装置は、絶縁導体にガルバニック接触することなく、絶縁導体に近接して選択的に位置決め可能なセンササブシステムであって、前記センササブシステムが、前記絶縁導体と容量結合し、前記センササブシステムが、複数のセンサ素子を含む、センササブシステムと、動作中に、センササブシステムを通して伝導された電流を示すセンサ電流信号を生成する、信号調整回路と、複数の制御可能なスイッチであって、複数の制御可能なスイッチの各々が、センサ素子のそれぞれの1つを信号調整回路に選択的に電気的に結合するように動作する、複数の制御可能なスイッチと、信号調整回路及び制御可能なスイッチに通信的に結合された制御回路であって、動作中に、複数の制御可能なスイッチを制御して、最大の大きさを有するセンサ電流信号を生成すると決定されたセンサ素子を信号調整回路に電気的に結合させる制御回路と、を備える。
【0011】
本装置において、更に、動作中、制御回路は、信号調整回路からセンサ電流信号を受信することができ、また、センサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体内のAC電圧を決定することができる。複数の制御可能なスイッチの各々を、第1の状態及び第2の状態に制御可能とすることができ、第1の状態では、スイッチは、センサ素子のそれぞれの1つを信号調整回路に電気的に結合することができ、第2の状態では、スイッチは、センサ素子のそれぞれの1つを導電内部接地ガードに電気的に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面では、同一の参照番号により類似の要素又は作用が識別される。図面における要素の寸法及び相対位置は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。例えば、種々の要素及び角度の形状は必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではなく、これらの要素の一部は、図面の明瞭性を向上させるために任意に拡大されかつ位置付けられていてもよい。なお、図示されるような要素の特定の形状は、必ずしも特定の要素の実際の形状に関する任意の情報を伝えることが意図されているわけではなく、単に図面において認識しやすいように選択されていてもよい。
【0013】
【
図1A】
図1Aは、1つの図示した実施形態による、基準信号型電圧センサを含む非接触電圧測定装置をオペレータが使用して、絶縁電線内に存在するAC電圧を、電線とのガルバニック接触を必要とすることなく測定することができる環境の絵図である。
【
図1B】
図1Bは、1つの図示した実施形態による、絶縁電線と非接触電圧測定装置の導電センサとの間に形成された結合容量、絶縁導体流成分、及び、非接触電圧測定装置とオペレータとの間の人体容量を示す、
図1Aの非接触電圧測定装置の上面図である。
【
図2】
図2は、1つの図示した実施形態による、非接触電圧測定装置の様々な内部構成要素の概略図である。
【
図3】
図3は、1つの図示した実施形態による、非接触電圧測定装置の様々な信号処理構成要素を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、1つの図示した実施形態による、高速フーリエ変換(FFT)を実装する非接触電圧測定装置の概略図である。
【
図5】
図5は、1つの図示した実施形態による、非接触電圧測定装置のためのセンササブシステムの概略図であり、センササブシステムは、動作中に、ポーリングされる複数のセンサ素子を含む。
【
図6】
図6は、1つの非限定的な図示した実施形態による、
図5に示されるセンササブシステムに類似する、又は同一のセンササブシステムを含む、非接触電圧測定装置の前端部の絵図である。
【
図7】
図7は、試験中の比較的小さい導体及び試験中の比較的大きい導体の曲線を示す、センササブシステムの複数のセンサの各々のセンサ電流を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の1つ以上の実施形態は、導体と試験電極又はプローブとの間でガルバニック接続する必要なしに、絶縁又はブランク非絶縁導体(例えば、絶縁導線)の交流(AC)電圧を測定するためのシステム及び方法を目的としている。一般に、非ガルバニック接触(又は「非接触」)電圧測定システムが提供され、システムは、接地に対する絶縁導体内のAC電圧信号を、容量センサを使用して測定する。ガルバニック接続を必要としないそのようなシステムを本明細書では「非接触」という。本明細書で使用するとき、「電気的に結合された」は、特記のない限り、直接及び間接の両方の電気的結合を含む。
図5~
図7を参照して下で更に論じられるように、少なくともいくつかの実施形態では、センササブシステムは、試験中の導体の位置の補正によって改善された測定値を提供するようにポーリング又は走査される、複数のセンサを含むことができる。
【0015】
以下の説明では、種々の開示の実施形態の完全な理解が得られるように、特定の具体的な詳細について記載する。しかしながら、当業者は、これらの具体的な詳細のうちの1つ以上を伴わずに、又は他の方法、構成要素、材料などを伴って実施形態を実践することができることを理解するであろう。その他の場合では、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、及び/又は通信ネットワークに関係する周知の構造は、実施形態の説明を必要以上に不明瞭にすることを避けるためにも、詳細には示されていないか又は記載されていない。
【0016】
文脈上その他の意味に解すべき場合を除き、以下の明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「備える(comprising)」とは用語「含む(including)」と同義であり、包括的であり、つまり限定的ではない(即ち、更なる記載されていない要素又は方法の行為を除外しない)。
【0017】
本明細書の全体を通して「1つの実施形態(one implementation)」又は「一実施形態(an implementation)」を参照することは、実施形態に関して記述された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して種々の場所における「1つの実施形態において(in one implementation)」又は「一実施形態において(in an implementation)」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及するものではない。なお、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせられてもよい。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する際に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。用語「又は」は、文脈上、別段の明確な指示がない限り、その意味において「及び/又は」を含んで一般的に用いられる、という点にも留意すべきである。
【0019】
本明細書で提供される見出し及び要約書は、便宜のためだけであり、実施形態の範囲又は意味を説明するものではない。
【0020】
以下で論じる内容では、絶縁(例えば、絶縁電線)又はブランク非絶縁導体(例えば、バスバー)の交流(AC)電圧を、導体と試験電極又はプローブとのガルバニック接続を必要とすることなく測定するためのシステム及び方法の例を提供する。本セクションで開示される実施形態は、本明細書では「基準信号型電圧センサ」又はシステムという場合がある。一般に、非ガルバニック接触(又は「非接触」)電圧測定装置が提供され、システムは、接地に対する絶縁導体内のAC電圧信号を、容量センサを使用して測定する。ガルバニック接続を必要としないそのようなシステムを本明細書では「非接触」という。本明細書で使用するとき、「電気的に結合された」は、特記のない限り、直接及び間接の両方の電気的結合を含む。
【0021】
図1Aは、基準信号型電圧センサ又はシステムを含む非接触電圧測定装置102を、オペレータ104が使用して、絶縁電線106内に存在するAC電圧を、非接触電圧測定装置と電線106とのガルバニック接触を必要とすることなく測定することができる、環境100の絵図である。
図1Bは、動作中の非接触電圧測定装置の種々の電気的特性を示す、
図1Aの非接触電圧測定装置102の平面図である。非接触電圧測定装置102は、握持部分又は端部110と、握持部分の反対側の、本明細書では前端部とも称されるプローブ部分又は端部112と、を含む、ハウジング又は本体108を含む。ハウジング108はまた、非接触電圧測定装置102とのユーザインタラクションを容易にするユーザインターフェース114を含むこともできる。ユーザインターフェース114は、任意の数の入力部(例えば、ボタン、ダイヤル、スイッチ、タッチセンサ)、及び任意の数の出力部(例えば、ディスプレイ、LED、スピーカ、ブザー)を含むことができる。非接触電圧測定装置102はまた、1つ以上の有線及び/又は無線通信インターフェース(例えば、USB、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))を含むこともできる。
【0022】
少なくともいくつかの実施形態では、
図1Bに最良に示されるように、プローブ部分112は、第1の拡張部分118及び第2の拡張部分120によって画成された凹部分116を含むことができる。凹部分116は、絶縁電線106(
図1Aを参照)を受容する。絶縁電線106は、導体122と、導体122を取り囲む絶縁体124と、を含む。凹部分116は、センサ又は電極126を含むことができ、センサ又は電極は、絶縁電線が非接触電圧測定装置102の凹部分116内に位置付けられたときに、絶縁電線106の絶縁体124に近接して載置される。明瞭性のために図示されていないが、センサ126は、センサと他の物体との物理的及び電気的接触を防止するために、ハウジング108内部に配置することができる。
【0023】
図1Aに示されるように、使用中に、オペレータ104は、ハウジング108の握持部分110を把持し、プローブ部分112を絶縁電線106に近接して配置することができ、非接触電圧測定装置102は、電線内に存在するAC電圧をアース接地(又は別の基準ノード)に対して正確に測定することができるようになっている。プローブ端部112は、凹部分116を有するように示されるが、その他の実施形態では、プローブ部分112を異なる方法で構成することができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、プローブ部分112は、移動可能なクランプ、フック、センサを含む選択的に平坦な若しくは円弧の面、又は非接触電圧測定装置102のセンサを絶縁電線106に近接して位置付けることを可能にする他の型のインターフェースを含むことができる。種々のプローブ部分及びセンサの例は、
図5~
図7を参照して下で論じられる。
【0024】
オペレータの身体がアース/接地の基準として作用するのは、一部の実施形態においてだけであり得る。代替的に、試験リード線139を介したアース128に対する直接接続を使用することができる。本明細書で論じられる非接触測定値の機能は、アースに対して測定する用途だけに限定されない。外部基準は、任意の他の電位に容量結合又は直接結合することができる。例えば、外部基準が三相システムの別の位相に容量結合された場合、相間電圧が測定される。一般に、本明細書で論じられる概念は、基準電圧及び任意の他の基準電位に容量結合接続された身体を使用するアースに対する基準だけに限定されない。
【0025】
下で更に論じられるように、少なくともいくつかの実施形態では、非接触電圧測定装置102は、AC電圧測定中に、オペレータ104と接地128との間の人体容量(CB)を利用することができる。接地という用語がノード128に使用されているが、ノードは、必ずしもアース/接地であるというわけではなく、容量結合させることによって任意の他の基準電位にガルバニック絶縁された様態で接続することができる。
【0026】
AC電圧を測定するために非接触電圧測定装置102によって使用される特定のシステム及び方法は、
図2~
図4を参照して下で論じられる。
【0027】
図2は、
図1A及び
図1Bにも示される非接触電圧測定装置102の種々の内部構成要素の概略図を示す。この実施例では、非接触電圧測定装置102の導電センサ126は、実質的に「V字形」であり、試験中の絶縁電線106に近接して位置付けられ、絶縁電線106の導体122と容量結合して、センサ結合コンデンサ(C
O)を形成する。非接触電圧測定装置102を取り扱うオペレータ104は、人体容量(C
B)を接地に対して有する。また、電線(例えば、試験リード線139)による直接導電接地結合を、
図1A及び
図1Bに示されるように使用することができる。したがって、
図1B及び
図2に示すように、電線122内のAC電圧信号(V
O)は、絶縁導体電流成分又は「信号電流」(I
O)を、直列に接続されている結合コンデンサ(C
O)及び人体容量(C
B)にわたって生成する。いくつかの実施形態では、人体容量(C
B)はまた、容量を接地又は任意の他の基準電位に生成する、ガルバニック絶縁された試験リード線を含むこともできる。
【0028】
測定される電線122内のAC電圧(V
O)は、外部接地128(例えば、中性点)への接続を有する。非接触電圧測定装置102自体もまた、接地128に対する容量を有し、この容量は、主として、オペレータ104(
図1)が非接触電圧測定装置を自分の手で保持したときの人体容量(C
B)からなる。容量C
O及びC
Bの両方により導電ループが作成され、ループ内側の電圧が信号電流(I
O)を生成する。信号電流(I
O)は、導電センサ126に容量結合されたAC電圧信号(V
O)によって生成され、非接触電圧測定装置のハウジング108及び接地128に対する人体コンデンサ(C
B)を介して外部接地128に戻る。電流信号(I
O)は、非接触電圧測定装置102の導電センサ126と試験中の絶縁電線106との間の距離、導電センサ126の特定の形状、並びに導体122内のサイズ及び電圧レベル(V
O)に依存する。
【0029】
信号電流(IO)に直接影響を及ぼす距離の変動及びそれに伴う結合コンデンサ(CO)の変動を補償するために、非接触電圧測定装置102は、コモンモード基準電圧源130を含み、コモンモード基準電圧源は、信号電圧周波数(fO)と異なる基準周波数(fR)を有するAC基準電圧(VR)を生成する。
【0030】
迷走電流を低減させる、又は避けるために、非接触電圧測定装置102の少なくとも一部分は、導電内部接地ガード又はスクリーン132によって取り囲むことができ、スクリーンは、電流の大部分に導電センサ126を通させ、導電センサは、結合コンデンサ(CO)を絶縁電線106の導体122で形成する。内部接地ガード132は、任意の適切な導電材料(例えば、銅)から形成することができて、また、固体(例えば、箔)とすること、又は1つ以上の開口部(例えば、メッシュ)を有することができる。
【0031】
更に、内部接地ガード132と外部接地128との間の電流を避けるために、非接触電圧測定装置102は、導電基準遮蔽体134を含む。基準遮蔽体134は、任意の適切な導電材料(例えば、銅)から形成することができ、固体(例えば、板金)、プラスチック筐体内側のスパッタリングされた金属、可撓性(例えば、箔)とすること、又は1つ以上の開口部(例えば、メッシュ)を有することができる。コモンモード基準電圧源130は、基準遮蔽体134と内部接地ガード132との間に電気的に結合され、これによって、非接触電圧測定装置102の基準電圧(VR)と、基準周波数(fR)と、を有するコモンモード電圧又は基準信号が作成される。このようなAC基準電圧(VR)により、付加基準電流(IR)が、結合コンデンサ(CO)及び人体コンデンサ(CB)を介して駆動される。
【0032】
導電センサ126の少なくとも一部分を取り囲む内部接地ガード132は、導電センサ126と基準遮蔽体134との間に基準電流(IR)の望ましくないオフセットを引き起こすAC基準電圧(VR)の直接的な影響から導電センサを保護する。上述したように、内部接地ガード132は、非接触電圧測定装置102の内部電子接地138である。少なくともいくつかの実施形態では、内部接地ガード132はまた、電子品に結合するAC基準電圧(VR)を避けるために、非接触電圧測定装置102の電子品のうちの一部又は全部を取り囲む。
【0033】
上述したように、基準遮蔽体134は、基準信号を入力AC電圧信号(VO)に注入するために利用され、また、第2の機能として、アース接地128容量に対するガード132を最小にする。少なくともいくつかの実施形態では、基準遮蔽体134は、非接触電圧測定装置102のハウジング108のうちの一部又は全部を取り囲む。このような実施形態では、電子品のうちの一部又は全部は、基準コモンモード信号を参照し、基準コモンモード信号は、導電センサ126と絶縁電線106内の導体122との間に基準電流(IR)を生成する。少なくともいくつかの実施形態では、基準遮蔽体134の唯一の間隙は、導電センサ126のための開口部とすることができ、この開口部は、非接触電圧測定装置102の動作中に、導電センサを絶縁電線106に近接して位置付けることを可能にする。
【0034】
内部接地ガード132及び基準遮蔽体134は、二重層スクリーンを非接触電圧測定装置102のハウジング108(
図1A及び
図1Bを参照)の周囲に提供することができる。基準遮蔽体134は、ハウジングの外面108に配置することができ、内部接地ガード132は、内部遮蔽体又はガードとして機能することができる。導電センサ126は、ガード132によって、基準遮蔽体134に対して遮蔽され、よって、任意の基準電流が、結合コンデンサ(C
O)によって、試験中の導電センサ126と導体122との間に生成される。センサ126の周囲のガード132はまた、センサの近くに隣接する電線の迷走の影響を低減させる。
【0035】
図2に示されるように、非接触電圧測定装置102は、反転電流-電圧変換器として動作する入力増幅器136を含むことができる。入力増幅器136は、非接触電圧測定装置102の内部接地138として機能する内部接地ガード132に電気的に結合された非反転端子を有する。入力増幅器136の反転端子は、導電センサ126に電気的に結合することができる。フィードバック回路137(例えば、フィードバック抵抗)もまた、入力信号を調整するためのフィードバック及び適切なゲインを提供するために、反転端子と入力増幅器136の出力端子との間に結合することができる。
【0036】
入力増幅器136は、信号電流(IO)及び基準電流(IR)を導電センサ126から受信し、受信した電流を、入力増幅器の出力端子において導電センサ電流を示すセンサ電流電圧信号に変換する。例えば、センサ電流電圧信号は、アナログ電圧であってもよい。アナログ電圧は、信号処理モジュール140に送給することができ、信号処理モジュールは、下で更に論じられるように、センサ電流電圧信号を処理して、絶縁電線106の導体122内のAC電圧(VO)を決定する。信号処理モジュール140は、デジタル及び/又はアナログ回路の任意の組み合わせを含むことができる。
【0037】
非接触電圧測定装置102はまた、決定されたAC電圧(VO)を示すために、又はインターフェースによって非接触電圧測定装置のオペレータ104に通信するために信号処理モジュール140に通信可能に結合された、ユーザインターフェース142(例えば、ディスプレイ)も含むことができる。
【0038】
図3は、非接触電圧測定装置の種々の信号処理構成要素を示す、非接触電圧測定装置300のブロック図である。
図4は、
図3の非接触電圧測定装置300のより詳細な図である。
【0039】
非接触電圧測定装置300は、先に論じた非接触電圧測定装置102と類似するか又は全く同じであってもよい。故に、類似するか又は同一である構成要素には、同じ参照番号が標識付けされる。示されるように、入力増幅器136は、導電センサ126からの入力電流(IO+IR)を、入力電流を示すセンサ電流電圧信号に変換する。センサ電流電圧信号は、アナログ-デジタル変換器(ADC)302を使用して、デジタル形式に変換される。
【0040】
電線122のAC電圧(V
O)は、式(1)によってAC基準電圧(V
R)に関連付けられる。
【数1】
式中、(I
O)は、導体122内のAC電圧(V
O)により導電センサ126を通る信号電流であり、(I
R)は、AC基準電圧(V
R)により導電センサ126を通る基準電流であり、(f
O)は、測定されているAC電圧(V
O)の周波数であり、(f
R)は、基準AC電圧(V
R)の周波数である。
【0041】
AC電圧(V
O)に関連付けられる指数「O」を有する信号は、コモンモード基準電圧源130に関連付けられる指数「R」を有する信号とは異なる、周波数のような特性を有する。
図4の実施形態では、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズム306を実装する回路などのデジタル処理を使用して、異なる周波数で信号の大きさを分離することができる。他の実施形態では、アナログ電子フィルタを使用して、「O」信号特性(例えば、大きさ、周波数)を「R」信号特性から分離することもできる。
【0042】
電流(IO)及び(IR)は、結合コンデンサ(CO)のために、それぞれ、周波数(fO)及び(fR)に依存する。結合コンデンサ(CO)を通って流れる電流及び人体容量(CB)は、周波数と比例し、したがって、試験中の導体122内のAC電圧(VO)の周波数(fO)は、上記の式(1)で利用される基準周波数(fR)と信号周波数(fO)との比率を決定するために測定すること、又は基準周波数がシステムによって生成されるので基準周波数が既知であること、のいずれかが必要とされる。
【0043】
入力電流(IO+IR)が入力増幅器136によって調整され、ADC302によってデジタル化された後に、FFT306を使用して周波数領域内の信号を表すことによって、デジタルセンサの電流電圧信号の周波数成分を決定することができる。周波数(fO)及び(fR)の両方が測定されたときに、電流(IO)及び(IR)の基本的な大きさをFFT306から計算するために、周波数ビンを決定することができる。
【0044】
電流(IR)及び/又は電流(IO)の大きさは、絶縁電線106の基準信号センサ又は電極(例えば、電極126)と導体122との間の距離の関数として変動し得る。したがって、システムは、測定された電流(IR)及び/又は電流(IO)を予想されるそれぞれの電流と比較して、基準信号センサ又は電極と導体122との間の距離を判定することができる。
【0045】
次に、
図3のブロック308によって示されるように、I
R,1及びI
O,1と指定された電流(I
R)及び(I
O)の基本高調波の比率を、決定された周波数(f
O)及び(f
R)によってそれぞれ補正することができ、この因子を使用して、高調波(V
O)を電線122内に加えることによって、測定された元の基本電圧又はRMS電圧を計算することができ、これは、二乗高調波合計の平方根を計算することによって行われ、ディスプレイ312上でユーザに示すことができる。
【0046】
結合コンデンサ(CO)は、一般に、絶縁導体106と導電センサ126との間の距離、並びにセンサ126の特定の形状及び寸法に応じて、例えば、約0.02pF~1pFの範囲の容量値を有することができる。人体容量(CB)は、例えば、約20pF~200pFの容量値を有することができる。
【0047】
上記の式(1)から、コモンモード基準電圧源130によって生成されたAC基準電圧(VR)は、信号電流(IO)及び基準電流(IR)に関して類似する電流の大きさを達成するために、導体122内のAC電圧(VO)と同じ範囲内である必要がないことが分かる。相対的に高くなるように基準周波数(fR)を選択することによって、AC基準電圧(VR)を相対的に低く(例えば、5V未満に)することができる。一例として、基準周波数(fR)は、3kHzになるように選択することができ、これは、60Hzの信号周波数(fO)を有する典型的な120VRMS AC電圧(VO)の50倍の高さである。このような場合、AC基準電圧(VR)は、信号電流(IO)と同じ基準電流(IR)を生成するために、わずか2.4V(即ち、120V÷50)となるように選択することができる。一般に、基準周波数(fR)を信号周波数(fO)のN倍になるように設定することは、AC基準電圧(VR)が、類似する不確実性をIR及びIOについて達成するように互いに同じ範囲にある電流(IR)及び(IO)を生成するために、電線122内のAC電圧(VO)の(1/N)倍である値を有することを可能にする。
【0048】
任意の好適な信号発生器を使用して、基準周波数(f
R)を有するAC基準電圧(V
R)を発生させることができる。
図3に図示した実施例では、シグマ-デルタデジタル-アナログ変換器(Σ-ΔDAC)310が使用される。Σ-ΔDAC310は、ビットストリームを使用して、定義された基準周波数(f
R)及びAC基準電圧(V
R)を有する波形(例えば、正弦波形)信号を作成する。少なくともいくつかの実施形態では、Σ-ΔDAC310は、ジッタを低減させるために、FFT306のウインドウと同相である波形を生成することができる。Σ-ΔDACよりも低いコンピューティング電力を使用し得るPWMなどの、任意の他の基準電圧発生器が使用され得る。
【0049】
少なくともいくつかの実施形態では、ADC302は、14ビットの解像度を有することができる。動作時に、ADC302は、FFT306によって処理するために準備した、100ms内に2n個のサンプル(1024)(FFT306の場合、10Hzビン)を供給するために、公称50Hzの場合に10.24kHzのサンプリング周波数で、入力増幅器136からの出力をサンプリングすることができる。60Hzの入力信号の場合、1サイクルあたり同じサンプル数を得るために、例えば、サンプリング周波数を12.288kHzとすることができる。ADC302のサンプリング周波数は、基準周波数(fR)の全サイクル数に同期させることができる。例えば、入力信号周波数は、40~70Hzの範囲内とすることができる。AC電圧(VO)の測定された周波数に応じて、AC電圧(VO)のビンは、FFT306を使用して決定することができ、また、更なる計算のためにハニング窓機能を使用して、集約間隔内で捕捉された不完全な信号サイクルによって引き起こされた位相シフトジッタを抑制することができる。
【0050】
1つの例では、コモンモード基準電圧源130は、2419Hzの基準周波数(fR)を有するAC基準電圧(VR)を生成する。この周波数は、60Hz信号の場合は、40番目の高調波と41番目の高調波との間にあり、50Hz信号の場合は、48番目の高調波と49番目の高調波との間にある。予想されるAC電圧(VO)の高調波ではない基準周波数(fR)を有するAC基準電圧(VR)を提供することによって、AC電圧(VO)が基準電流(IR)の測定値に影響を及ぼす可能性が少なくなる。
【0051】
少なくともいくつかの実施形態では、コモンモード基準電圧源130の基準周波数(fR)は、試験中の導体122内のAC電圧(VO)の高調波の影響を及ぼされる可能性が最も少ない周波数になるように選択される。一例として、コモンモード基準電圧源130は、基準電流(IR)が限度を超えた場合にスイッチをオフにすることができ、これは、導体122が、試験中の導電センサ126に接近していることを示し得る。測定(例えば、100msの測定)は、コモンモード基準電圧源130のスイッチをオフにした状態で行って、いくつか(例えば、3つ、5つ)の候補基準周波数において信号高調波を検出することができる。次いで、AC電圧(VO)内の信号高調波の振幅を、その数の候補基準周波数において決定して、どの候補基準周波数が、AC電圧(VO)の信号高調波によって及ぼされる影響が最も少ない可能性があるかを識別することができる。次いで、基準周波数(fR)を、識別された候補基準周波数に設定することができる。基準周波数のこの切り換えは、信号スペクトル内の有効基準周波数要素への影響を避ける、又は低減させることができ、これは、測定された基準信号を増大させ、精度を低減させる場合があり、不安定な結果を生じる場合がある。2419Hz以外で同じ特性を有するその他の周波数としては、例えば、2344Hz及び2679Hzが挙げられる。
【0052】
上で論じたように、センサと試験中の導体との間に良好な容量結合を提供するためには、試験中の導体の位置が重要であり得る。いくつかの実施形態において、電圧測定装置の機械的筐体は、導体がセンサに近接して位置付けられることを確実にするために、試験中の導体の位置を制限するように設計することができる。
【0053】
図5~
図7を参照して下で論じられる1つ以上の実施形態では、複数のセンサ又はセンサ素子のアレイを使用することができ、上で説明したように、センサは、センサのアレイ内のどのセンサが最大信号強度を有するのかを決定するためにポーリング又は走査され、そのセンサを使用して、測定値を取得する。少なくともいくつかの実施形態において、他の全ての「未選択の」センサは、ガードに接続して、特定の測定に使用されるアレイ内の1つのアクティブなセンサのための追加的な遮蔽を提供することができる。したがって、このような実施形態では、試験中の導体に対するセンサの機械的位置付けは、試験中の導体に最も近い複数の離間されたセンサのうちの1つを選択することによって、「電子的に」行われる。
【0054】
少なくともいくつかの実施形態では、複数のセンサからの信号強度を使用して、導体の物理的サイズ(例えば、直径)、測定装置に対する導体の物理的位置などを含む、導体の物理的特性などの、試験中の導体に関する種々の情報を決定することができる。
【0055】
図5は、センサ又はセンサ素子402のアレイ401を含むセンササブシステム400の概略図である。センサ402のアレイ401は、上で論じた
図1B及び
図2に示されるセンサ126と同様に位置付けること、及び動作させることができる。センサ402のアレイ401は、
図6に示され、下で論じられるように、(示されるように)平面形状とすることができ、又は非平面(例えば、U字形状、V字形状)とすることができる。少なくともいくつかの実施形態では、複数のセンサ402の各々は、
図5の実施例に示されるように、長方形状に細長くなるが、他の形状を使用することができる。
【0056】
複数のセンサ素子402の各々は、スイッチに結合されたスイッチコントローラ410(例えば、プロセッサ、制御回路)によって制御される、それぞれの制御可能なスイッチ404に結合される。スイッチコントローラ410は、センサ素子402の各々を、信号調整又は処理回路412の入力に送給される入力ノード408、又は内部接地ガード(例えば、上で論じたガード132)に電気的に結合される導電ガードノード406のいずれかに選択的に結合するようスイッチ404を制御するように動作する。信号調整又は処理回路412は、ADC、フィルタリング回路、増幅回路など、のうちの1つ以上を含むことができる。
【0057】
少なくともいくつかの実施形態では、センサアレイ401内の各センサ402からの個々のセンサ電流は、最大基準電流I
Rを生成するセンサを識別するために、測定前に試験することができ、この識別されたセンサだけが測定に使用される。この特徴は、ポーリング又は走査工程を使用して、試験中の電線に最も近い1つ(又は1つ以上の)センサ402の場所を電気的に見つけ、次いで、そのセンサを測定に使用するものとして説明することができる。上で述べたように、少なくともいくつかの実施形態では、残りの未使用センサは、スイッチ404を介してガードノード406に結合することができるので、他のセンサは、測定中にガードとして作用する。
図5に示される図示した実施例では、センサ402xは、信号調整又は処理回路412に結合され、センサアレイ401の他のセンサ402は、ガードノード406(例えば、接地)に結合される。測定自体は、上で説明した1つのセンサ配設と同様に、又は同じに動作させることができる。
【0058】
他の実施形態では、測定は、全てのセンサ402を並列に使用することができ、センサアレイ401内の各センサ402は、センサ402を多重化してセンサアレイ400のうちの1つのセンサだけをある期間アクティブにする代わりに、信号処理電子回路(例えば、ADCなど)への別個の接続を有する。このような実施形態では、1つ以上のセンサ電流の組み合わせ(例えば、線形加重組み合わせ、指数加重組み合わせ、非加重組み合わせ)を測定に使用して、ADC入力範囲の良好な駆動を提供することができ、また、使用されるセンサの数によって感度を増加させ、したがって全体の動的な測定範囲を増加させることができる。例えば、1つ以上の制御可能なスイッチを、センサ素子の種々の組み合わせを信号調整回路に選択的に電気的に結合するように動作させることができる。センサ素子の種々の組み合わせは、複数(例えば、2個、4個、10個)の隣接するセンサ素子を含むことができる。センサ素子の組み合わせは、追加的又は代替的に、単一のセンサ素子、複数の隣接するセンサ素子、複数のセンサ素子、隣接しない少なくとも2つの、又は全てのセンサ素子、のうちの少なくとも1つの可能性がある。
【0059】
図6は、
図5に示されるセンササブシステム400に類似する、又は同一のセンササブシステム624を含む、非接触電圧測定装置600の前端部又はプローブ部分612の絵図である。プローブ部分612は、第1の拡張部分618及び第2の拡張部分620によって画定された凹部分616を含むことができる。凹部分616は、その中で絶縁電線を受容する。示される実施例では、説明的な目的で、3つの絶縁電線630、632、及び634が凹部分616内に示される。上で論じたように、絶縁電線630、632、及び634の各々は、導体と、導体を取り囲む絶縁体と、を含むことができる。凹部分116は、第1の拡張部分618及び第2の拡張部分620によって形成された非接触測定値装置600のプローブ部分612のU字形状の壁628に近接して配置された複数のセンサ素子626-1~626-Nを含む、センサアレイ626を含むことができる。センサアレイ624は、センサ626と試験中の導体又は他の物体との物理的及び電気的接触を防止するために、非接触電圧測定装置600のハウジングの内部に配置することができる。上で論じたように、動作中に、スイッチを使用して、センサ素子626の各々を信号調整回路(例えば、ADC)に選択的に結合して、測定値を取得することができる。
【0060】
図7は、
図6のセンササブシステム624の複数のセンサ626-1~626-Nの各々について測定したセンサ電流を図示するグラフ700である。グラフ700は、試験中のより大きい導体630(
図6)のセンサ電流曲線702及びより小さい導体632のセンサ電流曲線704を示す。示すように、より大きい導体630は、より小さい導体632に対して、多数のセンサ626により近いので、比較的大きい導体630の曲線702の幅は、比較的小さい導体632の曲線704の幅よりも大きい。したがって、試験中の導体の複数のセンサ626のセンサ電流曲線702及び704の分配又は特定の形状を使用して、導体のサイズを決定することができる。このようなサイズ情報は、例えば決定又は取得した較正データに基づいて、測定値の算出において、より正確な測定値を提供するために使用することができる。別の例として、導体サイズ情報は、任意の所望の目的で、(例えば、ユーザインターフェースを介して)記憶すること、伝送すること、及び/又はユーザに提供することができる。
【0061】
追加的又は代替的に、センサ626によって測定されたセンサ電流の分配及び/又は形状を使用して、試験中の導体の位置を決定することができる。例えば、
図6に示される導体634は、凹部分616の内部で(示すように)左側の拡張部分618の上端部に近接して配置することができる。このような構成では、(導体634に隣接する)センサ626-1のセンサ電流は、センサ626-Nなどの導体634から遠く離れているセンサのセンサ電流よりも大きくなる。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、本装置は、センサ626によって測定されたセンサ電流の大きさを分析して、試験中の導体の位置を決定することができる。位置情報は、例えば決定又は取得された較正データに基づいて、例えば測定値の算出に使用して、より正確な測定値を提供することができる。別の例として、位置情報を使用して、より正確な測定値を取得するためのより良好な位置へ導体の位置を移動させるようにユーザを案内するために、視覚又は聴覚フィードバックをユーザに提供することができる。位置情報はまた、任意の所望の目的で、(例えば、ユーザインターフェースを介して)記憶すること、伝送すること、及び/又はユーザに提供することができる。
【0062】
本明細書に開示される電圧測定装置の少なくともいくつかの実施形態では、基準電圧(V
R)は、信号電圧(V
O)の高周波成分によって生じた、測定された基準電流(I
R)に対する信号高調波又は次数間高調波の影響を低減するために複数の周波数を有することができる。例えば、基準電圧源(例えば、
図2の電圧源130)は、周期的にスイッチがオフにされ、複数の基準周波数の周囲のFFT周波数ビンは、相対的な限界に対して分析及び確認することができる。最低値は、信号電圧(V
O)又は他の影響因子によって少なくとも妨害される、選択された基準周波数(f
R)を定義するために使用することができる。
【0063】
少なくともいくつかの実施形態では、基準電圧源のスイッチをオフにすることは、測定ストリーム内に間隙を必ずしも生成させない場合がある。例えば、基準電流(IO)は、基準電圧源がスイッチオフされたときに、依然として測定することができ、以前の間隔中に測定された基準電流(IR)を、基準電圧源がスイッチオフされる間隔にわたって基準電流を推定するために使用することができる。
【0064】
上で論じた基準周波数の切り換えに加えて、基準信号の他の専用の信号特性を使用することができる。例としては、振幅又は周波数変調、同期又は擬似確率的な切り換え、直交変調、位相の切り換えなどが挙げられる。
【0065】
変調信号を使用する例として、基準信号は、変調周波数fmで変調することができる。少なくともいくつかの実施形態では、変調周波数fmは、正確に整数のFFTビンであるように選択することができる。例えば、100msのFFT区間の場合、このような周波数は、10Hz、20Hz、30Hzなどの周波数である。搬送波又は基準周波数(fR)にノイズがない場合、これは、基準周波数の各側に1つずつ、2つの対称形の側波帯をもたらす。
【0066】
2つの側波帯の両方が同じ大きさを有しない場合、基準信号が(例えば、信号電圧(VO)によって)妨害されたと判定することができる。これは、基準電圧源をオフに切り換えることを必要としない、比較的単純な識別プロセスである。基準信号が妨害されることが判明した場合、システムは、基準周波数をΔfだけシフトし、適切な(妨害されない)基準周波数が識別されるまで、対称性について側波帯を再び確認することができる。
【0067】
プロセスを更に高速化するために、少なくともいくつかの実施形態では、複数基準周波数を同時に使用することができる。この周波数混合は、例えば、所定のテーブル及びビットストリーミング(例えば、ΣΔDACビットストリーミング)、又はパルス幅変調器(PWM)の低域通過フィルタ処理した出力のアナログ加算のいずれかによって作成することができる。PWMが使用される場合、一対のPWMは、基準周波数及び変調周波数を提供することができ、複数対のPWMは、複数基準周波数及び複数の対応する変調周波数を提供するために使用することができる。
【0068】
前述の詳細な説明では、ブロック図、概略図、及び実施例を使用して、装置及び/又はプロセスの種々の実施形態を説明してきた。このようなブロック図、系統図、及び実施例が1つ以上の機能及び/又は動作を含む限り、このようなブロック図、フロー図、又は実施例内のそれぞれの機能及び/又は動作は、広範囲にわたるハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの実質的に任意の組み合わせにより、個別にかつ/又は集合的に実装することができることが、当業者には理解されるであろう。一実施形態では、特定用途向け集積回路(ASIC)を介して、本発明の主題を実施してよい。しかしながら、本明細書で開示する実施形態が、全部、又は一部を問わず、1つ以上のコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムとして(例えば、1つ以上のコンピュータシステム上で実行される1つ以上のプログラムとして)、1つ以上の制御装置(例えば、マイクロコントローラ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、ファームウェアとして、又はこれらの実質的に任意の組み合わせとして標準的な集積回路内で同等に実装することができ、ソフトウェア及び/又はファームウェアについての回路設計及び/又はコード書き込みであれば、十分に、本開示に照らして当該技術分野における当業者の知識の範囲内になることを当業者は認識するであろう。
【0069】
当業者は、本明細書に記載する方法又はアルゴリズムの多くが付加的な行為を採用することができ、一部の行為を省略することができ、かつ/又は行為を指定された順番と異なる順番で実行することができることを、理解するであろう。
【0070】
更に、当業者は、本明細書で教示する機構が、種々の形態でプログラム製品として流通可能であり、代表的な実施形態が、流通を実際に実行するために使用される特定の形式の信号担持媒体に関係なく等しく適用されることを、認識するであろう。信号担持媒体の例としては、以下のもの、即ち、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ、CD-ROM、デジタルテープ、及びコンピュータメモリなどの記録可能な形式の媒体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
上述した種々の実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供してもよい。実施形態の態様は、種々の特許、出願及び公報のシステム、回路、及び概念を用いて、なお更なる実施形態を提供するように必要に応じて修正することができる。
【0072】
上記の説明を考慮すれば、実施形態へのこれらの変更及びその他の変更を行うことができる。通常、以下の請求項において使用する用語は、明細書及び請求項に開示された特定の実施形態に対する請求項を限定するものと解釈すべきではないが、こうした請求項に権利を与えた等価物の全範囲と共に全ての考えられる実施形態を含むものと解釈すべきである。したがって、請求項は、開示によって制限されるものではない。