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特許7219679熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20230201BHJP
   G01W 1/17 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G16H50/30
G01W1/17 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019122062
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021009489
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500140529
【氏名又は名称】株式会社ハレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井桁 卓也
(72)【発明者】
【氏名】馬目 常善
(72)【発明者】
【氏名】土川 正彦
(72)【発明者】
【氏名】宮村 和宏
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210233(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030241(WO,A1)
【文献】特開2018-017586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 50/30
G01W 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価方法であって、
評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温を取得する取得ステップと、
前記特定時間帯での予想気温を積算して積算気温を算出する算出ステップと、
前記積算気温に基づいて熱中症の危険性を評価する評価ステップと、を備える
熱中症危険性評価方法。
【請求項2】
前記特定時間帯は、6時から12時までの時間帯である
請求項1に記載の熱中症危険性評価方法。
【請求項3】
前記取得ステップにおいて、前記評価対象地点における前記評価対象日の前夜が熱帯夜であるか否かを示す熱帯夜情報を取得し、
前記評価ステップにおいて、前記積算気温と前記熱帯夜情報とに基づいて熱中症の危険性を評価する
請求項1又は2に記載の熱中症危険性評価方法。
【請求項4】
前記取得ステップにおいて、前記評価対象地点における前記評価対象日の前夜が熱帯夜であるか否かを示す熱帯夜情報を取得し、前記熱帯夜情報に基づいて前記特定時間帯を決定する
請求項1に記載の熱中症危険性評価方法。
【請求項5】
熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価システムであって、
評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温を取得する取得部と、
前記特定時間帯での予想気温を積算して積算気温を算出する算出部と、
前記積算気温に基づいて熱中症の危険性を評価する評価部と、を備える
熱中症危険性評価システム。
【請求項6】
前記特定時間帯は、6時から12時までの時間帯である、
請求項5に記載の熱中症危険性評価システム。
【請求項7】
前記取得部は、前記評価対象地点における前記評価対象日の前夜が熱帯夜であるか否かを示す熱帯夜情報を取得し、
前記評価部は、前記積算気温と前記熱帯夜情報とに基づいて熱中症の危険性を評価する
請求項5又は6に記載の熱中症危険性評価システム。
【請求項8】
前記取得部は、前記評価対象地点における前記評価対象日の前夜が熱帯夜であるか否かを示す熱帯夜情報を取得し、前記熱帯夜情報に基づいて前記特定時間帯を決定する
請求項5に記載の熱中症危険性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱中症の危険性を評価する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱中症を予防するために、測定された気温等に基づいて熱中症の危険性を評価し報知することが行われている。
【0003】
熱中症の危険性評価の指標として、例えば、測定された湿球温度、黒球温度及び乾球温度を用いて算出されるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)が知られている。WBGTを用いた熱中症の危険性評価では、算出されたWBGTに基づいて熱中症の危険性を評価する。
【0004】
また、特許文献1には、気象データを用いて熱中症の危険性評価を評価するシステムが開示されている。このシステムでは、刻々と変化する気温情報を取得し、取得した気温情報を使用して熱中症の危険性を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-67403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱中症の予防には、水分や塩分を補給する、氷嚢を使用して体を冷やす、スポットクーラー等の冷却機器を使用する、等の対策が有効である。このような熱中症対策を講じるためには事前準備が必要であり、熱中症の危険性を事前に(例えば前日に)評価することが求められている。
【0007】
前述のWBGTを用いた熱中症の危険性評価方法では、湿球温度、黒球温度及び乾球温度を測定する必要があるため、事前に熱中症の危険性を評価することができない。また、特許文献1に開示されたシステムでは、実測された気温情報を必要とするため、事前に熱中症の危険性を評価することができない。
【0008】
公的機関によって公開されるWBGTの予測値を用いて熱中症の危険性を評価することが考えられるが、WBGTの予測対象となる地点は限られている。そのため、WBGTの予測対象となる地点と所望の地点とでは、WBGTの予測値に差が生じる可能性があり、所望の地点における熱中症の危険性を事前に評価した結果にも差が生じることが考えられる。その結果、熱中症対策を講ずるのが遅れるおそれがある。
【0009】
本発明は、熱中症の危険性を事前にかつ精度よく評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価方法であって、評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温を取得する取得ステップと、特定時間帯での予想気温を積算して積算気温を算出する算出ステップと、積算気温に基づいて熱中症の危険性を評価する評価ステップと、を備える。
【0011】
また、本発明は、熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価システムであって、評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温を取得する取得部と、特定時間帯での予想気温を積算して積算気温を算出する算出部と、積算気温に基づいて熱中症の危険性を評価する評価部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱中症の危険性を事前にかつ精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】熱中症発症件数と積算気温との関係を示すグラフである。
図2】(a)は、熱中症発症件数と日平均気温との関係を示すグラフであり、(b)は、熱中症発症件数と最高気温との関係を示すグラフであり、(c)は、熱中症発症件数と最低気温との関係を示すグラフである。
図3】本発明の第1実施形態に係る熱中症危険性評価システムのブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る熱中症危険性評価方法のフローチャート図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る熱中症危険性評価方法に用いられるテーブルの一例である。
図6】前夜が熱帯夜でない日の熱中症発症件数と前夜が熱帯夜である日の熱中症発生件数とを示すグラフである。
図7】本発明の第2実施形態に係る熱中症危険性評価システムのブロック図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る熱中症危険性評価方法に用いられるテーブルの一例である。
図9】本発明の第2実施形態の変形例に係る熱中症危険性評価方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システムについて説明する。
【0015】
<第1実施形態>
まず、図1から図5を参照して、第1実施形態に係る熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システム100について説明する。ここでは、工事現場における熱中症の危険性を評価する場合について説明するが、本実施形態は、観光地及びイベント会場における熱中症の危険性の評価にも適用可能である。
【0016】
熱中症は、高温多湿な環境下での運動や労働により発症する。熱中症の予防には、水分や塩分を補給する、氷嚢を使用して体を冷やす、スポットクーラー等の冷却機器を使用する、等の対策が有効である。このような熱中症対策を講じるためには事前準備が必要であり、熱中症の危険性を事前に(例えば前日に)評価することが求められている。
【0017】
WBGTを用いて熱中症の危険性を評価する方法では、湿球温度、黒球温度及び乾球温度を測定する必要がある。そのため、事前に熱中症の危険性を評価することができない。WBGTを予測して熱中症の危険性を評価することが考えられるが、WBGTを予測するためには、乾球温度の予測値(予想気温)に加え、湿球温度及び黒球温度を予測する必要があり、高度な技術が要求される。
【0018】
WBGTの予測値は公的機関によって公開されているが、WBGTの予測対象となる地点は限られている。そのため、所望の地点における熱中症の危険性を事前に精度よく評価することができない。その結果、熱中症対策を講ずるのが遅れるおそれがある。
【0019】
本実施形態に係る熱中症危険性評価方法は、評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温を取得し(取得ステップ)、特定時間帯での予想気温を積算して積算気温を算出し(算出ステップ)、積算気温に基づいて熱中症の危険性を評価する(評価ステップ)。そのため、熱中症の危険性の評価は、評価対象地点における積算気温に応じて変化する。したがって、評価対象地点における熱中症の危険性を事前にかつ精度よく評価することができる。
【0020】
ここで、熱中症の危険性を評価するための指標として積算気温を用いる理由について、図1及び図2、並びに表1を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2は、所定の工事現場において熱中症を発症した作業員の数(熱中症発症件数)と、各作業員が熱中症を発症した日の工事現場における気温(気象庁が発表している推定気象分布を使用)と、の関係を示すグラフである。図1(a)、(b)、(c)、(d)におけるグラフの横軸は、それぞれ、0時(24時制。以下同じ。)から6時まで、6時から12時まで、9時から15時まで、及び0時から12時までの1時間毎の気温の積算値である。図2(a)は、熱中症発症件数と日平均気温との関係を示すグラフである。図2(b)は、熱中症発生件数と最高気温との関係を示すグラフであり、図2(c)は、熱中症発生件数と最低気温との関係を示すグラフである。図1及び図2に示すグラフにおいて、プロットは各気温における熱中症発生件数であり、曲線はプロットから求められる近似曲線である。
【0022】
表1は、図1及び図2に示される各グラフの近似曲線の式と相関係数とをまとめたものである。相関係数は、0(零)以上1以下の値であり、「1」に近いほど相関が強いことを意味する。
【0023】
【表1】
【0024】
図1及び図2、並びに表1から分かるように、積算気温と熱中症発生件数との間の相関係数は、最高気温と熱中症発生件数との間の相関係数、及び最低気温と熱中症発生件数との間の相関係数と比較して「1」に近い。換言すれば、熱中症の危険性を評価するための指標として積算気温を用いることにより、最高気温及び最低気温を熱中症の危険性を評価するための指標として用いる場合と比較して、熱中症の危険性を精度よく評価することが可能となる。
【0025】
このような理由から、本実施形態では、熱中症の危険性を評価するための指標として積算気温を用いている。
【0026】
また、6時から12時までの積算気温と熱中症発生件数との間の相関係数(図1(b))、及び9時から15時までの積算気温と熱中症発生件数との間の相関係数(図1(c))は、日平均気温と熱中症発生件数との間の相関係数(図2(a))と比較して「1」に近い。つまり、熱中症の危険性を評価するための指標としてある時間帯での積算気温を用いることにより、熱中症の危険性をより高い精度で評価することが可能となる。
【0027】
特定時間帯としては、6時から12時までの時間帯(図1(b))と9時から15時までの時間帯(図1(c))とに共通する9時から12時までを少なくとも含む時間帯が好ましい。
【0028】
6時から12までの時間帯での積算気温と熱中症発生件数との間の相関係数は、他の時間帯での積算気温と熱中症発生件数との間の相関係数と比較して「1」に近い。そのため、特定時間帯としては、6時から12までの時間帯がより好ましい。
【0029】
本実施形態に係る熱中症危険性評価システム100は、熱中症危険性評価方法に用いられる。以下、熱中症危険性評価システム100の構成を具体的に説明する。
【0030】
図3は、熱中症危険性評価システム100のブロック図である。熱中症危険性評価システム100は、マイクロコンピュータ10を備えている。マイクロコンピュータ10は、制御プログラム等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラム等を記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、を備えており、演算処理を行う。マイクロコンピュータ10は、1つであってもよいし複数であってもよい。
【0031】
マイクロコンピュータ10は、例えば複数の工事現場を管理する管理センターに設置される。マイクロコンピュータ10は、コンピュータ-ネットワークを介して所定のサーバ1に接続されると共に、工事現場の事務所に設置されるパーソナルコンピュータや現場に持ち出されるスマートデバイス等の端末2にコンピュータ-ネットワークを介して接続されている。
【0032】
マイクロコンピュータ10は、評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温を取得する取得部11と、特定時間帯での予想気温を積算して積算気温を算出する算出部12と、積算気温に基づいて熱中症の危険性を評価する評価部13と、を備えている。取得部11、算出部12及び評価部13は、マイクロコンピュータ10の機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0033】
図4は、本実施形態に係る熱中症危険性評価方法のフローチャートである。ステップS401は、取得部11により行われる取得処理であり、ステップS402は、算出部12により行われる算出処理であり、ステップS403は、評価部13により行われる評価処理である。
【0034】
取得部11は、評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温をサーバ1から取得する。評価対象地点及び評価対象日は、作業者によって予め熱中症危険性評価システム100に入力される。評価対象地点は、例えば緯度経度によって定められてもよいし、住所によって定められてもよい。評価対象日は、例えば熱中症の危険性を評価する日の翌日に設定される。
【0035】
特定時間帯は、作業者によって予め熱中症危険性評価システム100に入力される。ここでは、特定時間帯を6時から12時までの時間帯とし、取得部11は、6時、7時、8時、9時、10時、11時及び12時での予想気温を取得する。
【0036】
サーバ1は、例えば日本の気象庁から配信される気象情報に基づいて、多数の地点での1時間毎の予想気温を提供する。気象庁から配信される予想気温は、約21km間隔で設けられた観測所での情報であり、評価対象地点の予想気温と大きく異なる可能性がある。サーバ1は、例えば特開2014-164679号公報に開示される方法により、気象庁から配信される気象情報を用いて21kmよりも狭い間隔の地点での予想気温を生成し提供する。したがって、サーバ1から取得した予測気温を評価対象地点での予想気温として利用することができる。
【0037】
算出部12は、取得部11により取得された特定時間帯での予想気温を積算して積算気温を算出する。具体的には、評価対象日の6時、7時、8時、9時、10時、11時及び12時での予想気温を積算する。
【0038】
評価部13は、算出部12により算出された積算気温に基づいて、熱中症の危険性を評価する。熱中症危険性評価システム100には、積算気温と熱中症の危険性との関係を示すテーブルが予め記憶されており、評価部13は、算出部12により算出された積算気温とテーブルを用いて熱中症の危険性を評価する。
【0039】
図5は、熱中症危険性評価システム100に記憶されるテーブルの一例を示している。図5に示すテーブルにおいて、積算気温T1~T4の大小関係は、T1はT2よりも小さい値であり、T2はT3よりも小さい値であり、T3はT4よりも小さい値である(T1<T2<T3<T4)。
【0040】
評価部13は、図5に示すテーブルを用いる場合において、積算気温がT1未満のときには、熱中症危険度を最も低い「1」と評価する。同様に、積算気温がT1以上かつT2未満のとき、T2以上かつT3未満のとき、及びT3以上かつT4未満のときには、それぞれ、熱中症危険度を「2」、「3」及び「4」と評価する。積算気温がT4以上のときには、熱中症危険度が最も高い「5」と評価する。
【0041】
評価された熱中症危険度は、熱中症危険度に応じた適切なアドバイスと共にモニタ20に表示される。管理センターの作業員は、モニタ20を確認することにより、熱中症危険度及びアドバイスの内容を把握することができる。
【0042】
また、評価された熱中症危険度及びアドバイスは、コンピュータ-ネットワークを介して端末2に送信される。工事現場の責任者は端末2を確認することにより、熱中症危険度及びアドバイスの内容を把握することができる。熱中症危険度及びアドバイスは、評価対象地点における予想気温の積算値に応じて決まるため、工事現場毎に熱中症対策を事前(例えば前日)に準備することができ、評価対象日に熱中症対策を適切に講ずることができる。
【0043】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0044】
熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システム100では、評価対象地点における評価対象日の特定時間帯での予想気温を取得し、特定時間帯での予想気温を積算し、積算した予想気温に基づいて熱中症の危険性を評価する。そのため、熱中症の危険性の評価は、評価対象地点における予想気温の積算値に応じて変化する。したがって、評価対象地点における熱中症の危険性を事前にかつ精度よく評価することができる。
【0045】
また、特定時間帯として、6時から12時までの時間帯の積算気温に基づいて評価することによって、熱中症の危険性をより高い精度で評価することができる。
【0046】
なお、評価対象地点における予想気温を生成する技術は特開2014-164679号公報に開示されるように確立されている。そのため、取得部11は、サーバ1から評価対象地点における予想気温を取得するのに代えて、気象庁から配信される気象情報を取得し、取得した気象情報を用いて評価対象地点における予想気温を生成し取得してもよい。
【0047】
<第2実施形態>
次に、図6から図8を参照して本発明の第2実施形態に係る熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システム200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
本実施形態に係る熱中症危険性評価方法は、積算気温に加え、評価対象地点における評価対象日の前夜が熱帯夜であるか否かを示す熱帯夜情報に基づいて熱中症の危険性を評価する点において、第1実施形態と相違する。ここで、熱中症の危険性を評価するために熱帯夜情報を用いる理由について、図6を参照して説明する。
【0049】
図6は、前夜が熱帯夜でない日に熱中症を発症した人の一日当たりの数(熱中症発症件数)と、前夜が熱帯夜である日に熱中症を発症した人の一日当たりの数と、を示すグラフである。図6から分かるように、前夜が熱帯夜である場合の熱中症発症件数は、前夜が熱帯夜でない場合の熱中症発症件数の約6倍である。換言すれば、熱中症の危険性を評価するための指標として熱帯夜情報を加えることにより、熱中症の危険性を精度よく評価することが可能となる。このような理由から、本実施形態では、積算気温に加え、熱帯夜情報に基づいて熱中症の危険性を評価する。
【0050】
本実施形態に係る熱中症危険性評価方法に用いられる熱中症危険性評価システム200の構成を具体的に説明する。
【0051】
図7に示すように、熱中症危険性評価システム200の取得部211は、予想気温を取得すると共に、コンピュータ-ネットワーク上でサーバ1から熱帯夜情報を取得する。サーバ1は、評価対象日における前夜の最低気温が摂氏25度以上である場合には熱帯夜であることを示す情報を提供し、評価対象日における前夜の最低気温が摂氏25度未満である場合には熱帯夜でないことを示す情報を提供する。
【0052】
なお、取得部211は、サーバ1から夜間の最低気温を取得し、夜間の最低気温に基づいて評価対象日における前夜が熱帯夜であるか否かを判断し熱帯夜情報を生成し取得してもよい。
【0053】
評価部213は、積算気温と熱帯夜情報とに基づいて、熱中症の危険性を評価する。熱中症危険性評価システム200には、積算気温と熱帯夜と熱中症の危険性との関係を示すテーブルが予め記憶されており、評価部213は、積算気温と熱帯夜情報とテーブルを用いて熱中症の危険性を評価する。
【0054】
図8は、熱中症危険性評価システム200に記憶されるテーブルの一例を示している。図8に示すテーブルにおいて、T0はT1よりも小さい値である。図8に示すテーブルでは、前夜が熱帯夜である場合の熱中症危険度は、前夜が熱帯夜でない場合の熱中症危険度と比較して、同じ積算気温で高く設定されている。具体的には、積算気温がT1以上T2未満である場合において、前夜が熱帯夜でないときの熱中症危険度は「2」に設定される一方で前夜が熱帯夜であるときの熱中症危険度は「3」に設定されている。
【0055】
このように、本実施形態に係る熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システム200では、積算気温と熱帯夜情報とに基づいて熱中症の危険性を評価する。そのため、熱中症の危険性をより高い精度で評価することができる。
【0056】
図9は、第2実施形態の変形例に係る熱中症危険性評価方法のフローチャート図である。変形例では、特定時間帯は予め定められておらず、熱帯夜情報に基づいて特定時間帯を決定する点において、第1実施形態と相違する。
【0057】
ステップS901~S903は、取得部211により行われる取得処理である。ステップS901では、評価対象地点における評価対象日の前夜の熱帯夜情報を取得する。ステップS902では、取得した熱帯夜情報に基づいて、特定時間帯を決定する。前夜が熱帯夜である場合には、夜間の気温が熱中症の発症に影響を与えると推測されるため、夜間を含むように特定時間帯を決定する。例えば、前夜が熱帯夜でない場合には、6時から12時までの時間帯を特定時間帯として決定し、前夜が熱帯夜である場合には、3時から12時までの時間帯を特定時間帯として決定する。ステップS903では、決定した特定時間帯での予想気温を取得する。
【0058】
ステップS402及びステップS403における処理は、第1実施形態における処理と略同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
変形例では、評価対象地点における評価対象日の前夜が熱帯夜であるか否かを示す熱帯夜情報を取得し、熱帯夜情報に基づいて特定時間帯を決定する。そのため、積算気温の算出に用いられる時間帯を、前夜が熱帯夜である場合とない場合とで変えることができる。したがって、前夜が熱帯夜である場合とない場合とで熱中症の危険性の評価を変えることができ、熱中症の危険性をより高い精度で評価することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0061】
上記実施形態では、評価対象日の前日に熱中症の危険性を評価する場合について説明しているが、評価対象日の2日以上前に熱中症の危険性を評価してもよいし、評価対象日の朝(例えば7時)に熱中症の危険性を評価してもよい。評価対象日の7時に熱中症の危険性を評価する場合には、7時以前の気温は、予想気温に代えて実測された気温を用いればよい。また、評価対象日の7時に熱中症の危険性を評価する場合において熱帯夜情報を用いるときには、熱帯夜であったか否かの実際の情報を用いればよい。
【符号の説明】
【0062】
100,200・・・熱中症危険性評価システム
11,211・・・取得部
12・・・算出部
13,213・・・評価部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9