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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ウォッシャー液の加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/48 20060101AFI20230201BHJP
   B60S 1/50 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B60S1/48 B
B60S1/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019158944
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021037792
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】三木 椋雅
(72)【発明者】
【氏名】深井 晃
(72)【発明者】
【氏名】増田 訓明
(72)【発明者】
【氏名】望月 敏弘
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-522023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0126927(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004062605(DE,A1)
【文献】特開2005-171580(JP,A)
【文献】特開2016-107676(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159373(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッシャー液を収容する収容空間を有する容器と、
前記収容空間にウォッシャー液を流入させる流入部と、
前記収容空間から前記ウォッシャー液を流出させる流出部と、
前記収容空間に設けられて前記ウォッシャー液を加熱するヒータと、
前記ヒータに巻き付けられるコイルと、
を備え、
前記コイルは、前記コイルの軸線の軸線周りに延在する螺旋状とされると共に前記ヒータに接触する素線によって形成されており、
前記コイルは、複数の前記素線が前記軸線の延在方向に互いに密着する密着部を有する、
ウォッシャー液の加熱装置。
【請求項2】
複数の前記コイルからなるコイル群を備え、
前記コイル群の複数の前記コイルは、前記延在方向に沿って並ぶように配置されている、
請求項1に記載のウォッシャー液の加熱装置。
【請求項3】
前記コイルの前記素線の一端及び他端の少なくともいずれかは、前記ヒータから離れる方向に突出している、
請求項1又は2に記載のウォッシャー液の加熱装置。
【請求項4】
前記コイルの前記素線の一端及び他端の少なくともいずれかは、前記流出部に巻き付けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のウォッシャー液の加熱装置。
【請求項5】
前記ウォッシャー液の温度を測定するセンサ部を備え、
前記コイルの前記素線の一端及び他端の少なくともいずれかは、前記センサ部に巻き付けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のウォッシャー液の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウォッシャー液の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のフロントガラスに付着した霜を溶かす等の目的でフロントガラス等に噴射されるウォッシャー液が知られている。車両等には、このウォッシャー液を加熱する加熱装置が搭載されている。国際公開第2017/159373号公報には、ウォッシャー液の加熱装置が記載されている。
【0003】
この加熱装置は、底部が上方を向くように配置される有底円筒状の容器と、容器の内部空間にウォッシャー液を流入する流入チューブと、容器の内部空間からウォッシャー液を流出する第1流出チューブ及び第2流出チューブと、容器の内部に配置された棒状のヒータとを備える。
【0004】
ヒータは、容器の中心軸線に沿って配置されている。また、加熱装置は、容器の内部空間を上下に仕切るデフレクタを更に備え、ヒータはデフレクタの上側に位置するウォッシャー液を温める。デフレクタは上下に貫通する複数の孔部を有し、流入部はデフレクタの下側にウォッシャー液を流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2017/159373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したウォッシャー液の加熱装置では、デフレクタの下側に流入したウォッシャー液がデフレクタの複数の孔部のそれぞれを通ってデフレクタの上方に移動し、ヒータはデフレクタの上方に移動したウォッシャー液を加熱する。このヒータでウォッシャー液を加熱する場合、加熱に伴って沸騰音が生じることがある。沸騰音は、ウォッシャー液の加熱に伴って生じた泡が破裂することによって生じる音であり、騒音となりうる。よって、沸騰音をより確実に低減させることが求められる。
【0007】
本開示は、沸騰音を低減させることができるウォッシャー液の加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るウォッシャー液の加熱装置は、ウォッシャー液を収容する収容空間を有する容器と、収容空間にウォッシャー液を流入させる流入部と、収容空間からウォッシャー液を流出させる流出部と、収容空間に設けられてウォッシャー液を加熱するヒータと、ヒータに巻き付けられるコイルと、を備え、コイルは、コイルの軸線の軸線周りに延在する螺旋状とされると共にヒータに接触する素線によって形成されており、コイルは、複数の素線が軸線の延在方向に互いに密着する密着部を有する。
【0009】
このウォッシャー液の加熱装置では、ウォッシャー液を収容する収容空間にウォッシャー液を加熱するヒータが設けられ、ヒータにコイルの素線が巻き付けられている。ウォッシャー液を加熱するヒータにコイルの素線が巻き付けられることにより、ヒータの周囲をコイルの素線が囲むこととなるため、加熱に伴う沸騰音を抑制することができる。すなわち、ヒータとウォッシャー液との間にコイルの素線が介在することにより、ヒータとウォッシャー液との間の熱伝達を向上させることができるので、沸騰音を低減させることができる。更に、このウォッシャー液の加熱装置において、コイルは、複数の素線がコイルの軸線の延在方向に沿って互いに密着する密着部を有する。すなわち、コイルは、素線が密着巻きとされた密着部を有する。密着部では、ウォッシャー液の加熱に伴って連続的に小さい泡が発生し、密着部を有しない場合と比較して泡の発生を安定させることができる。すなわち、密着部を有しない場合には、ウォッシャー液の加熱に伴って間欠的に大きな泡が成長し、大きな泡が急速に成長して破裂することがある。よって、泡の発生が不安定であると共に大きな泡が一気に成長することがあるため、沸騰音が生じることが懸念される。これに対し、前述したウォッシャー液のヒータは、密着部を有するコイルが巻き付けられているため、小さな泡を連続的に生成することによって大きな泡の成長を抑制することができる。その結果、沸騰音を低減させることができる。
【0010】
また、複数のコイルからなるコイル群を備え、コイル群の複数のコイルは、当該延在方向に沿って並ぶように配置されていてもよい。この場合、コイル群において密着部を有する複数のコイルが巻き付けられるので、沸騰音をより確実に低減させることができる。
【0011】
また、コイルの素線の一端及び他端の少なくともいずれかは、ヒータから離れる方向に突出していてもよい。この場合、素線の突出している一端又は他端を指等で摘まむことにより、コイルの径を容易に調整することができる。従って、ヒータに対するコイルの設置を容易に行うことができる。
【0012】
また、コイルの素線の一端及び他端の少なくともいずれかは、流出部に巻き付けられていてもよい。この場合、コイルの素線が流出部に巻き付けられることにより、コイルによって流出部を支えることができる。また、ヒータに巻き付けられるコイルの素線を流出部にも巻き付けることができるので、コイルが外れることをより確実に抑制することができる。
【0013】
また、ウォッシャー液の温度を測定するセンサ部を備え、コイルの素線の一端及び他端の少なくともいずれかは、センサ部に巻き付けられていてもよい。この場合、センサ部によって収容空間に収容されたウォッシャー液の温度を測定することができる。また、ヒータに巻き付けられたコイルの素線をセンサ部にも巻き付けることができるので、コイルが外れることをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係るウォッシャー液の加熱装置によれば、沸騰音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施形態に係るウォッシャー液の加熱装置を備えたウォッシャー液の供給システムを模式的に示す図である。
図2図1の加熱装置のヒータ、コイル、流入部、流出部及びセンサ部を示す斜視図である。
図3図2のヒータ、コイル、流入部及び流出部を示す縦断面図である。
図4図2のヒータ、コイル、流出部及びセンサ部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係るウォッシャー液の加熱装置の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
まず、本実施形態に係る加熱装置1が自動車のウォッシャー液Eの供給システムSに適用された例について説明する。なお、図1では、加熱装置1の図示を簡略化している。供給システムSは、例えば、車両の霜取装置として用いられる。図1に示されるように、ウォッシャー液Eの供給システムSは、加熱装置1と、ウォッシャー液Eを貯留するウォッシャー液タンク2と、ウォッシャー液タンク2から延びる第1管路6に設けられたウォッシャー液ポンプ3と、自動車のフロントウインドウガラスに対向する位置に設けられたウォッシャー液ノズル4とを備える。
【0018】
加熱装置1は、ウォッシャー液ポンプ3とウォッシャー液ノズル4との間に設けられる。ウォッシャー液ポンプ3及び加熱装置1には操作部5が接続されている。操作部5は、自動車のドライバ等によって操作される部位であり、操作部5が操作されることによってウォッシャー液ポンプ3が作動する。
【0019】
加熱装置1とウォッシャー液タンク2とは、第1管路6を介して互いに接続されている。加熱装置1とウォッシャー液ノズル4とは第2管路7を介して互いに接続されている。第2管路7には、加熱装置1の内部に位置する収容空間Aに収容されたウォッシャー液Eに圧力を付与する逆流防止弁8が設けられている。
【0020】
逆流防止弁8は、ハウジング8aと、第2管路7の端部を封止するボール8bと、ボール8bを第2管路7側に一定圧力で押しつけるスプリング8cとを有する。ボール8b及びスプリング8cはハウジング8aの内部に収容されている。供給システムSでは、ウォッシャー液ポンプ3による吐出圧が逆流防止弁8による押圧力を上回ることによって、ウォッシャー液ノズル4からウォッシャー液Eが噴出する。
【0021】
加熱装置1は、例えば、底部が上方を向くように配置される有底筒状の容器11を外観構成として備える。一例として、容器11は、有底円筒状のカバーと、当該カバーの内部に配置された発泡ケースと、当該発泡ケースの内側に配置された内側容器とを含んでいてもよい。上記の内側容器は、魔法瓶と同様、真空層を介した2重構造を有していてもよく、この2重構造の断熱効果によって当該内側容器の内部の収容空間Aに収容されたウォッシャー液Eが保温される。容器11は、前述した有底円筒状のカバーを封止する蓋部17を有する。
【0022】
図2は、蓋部17と容器11の内部に設けられる加熱装置1の各部品を示す斜視図である。図1及び図2に示されるように、蓋部17には、収容空間Aにウォッシャー液Eを流入する流入部12と、収容空間Aからウォッシャー液Eを流出させる流出部13と、ウォッシャー液Eを加熱するヒータ14と、ウォッシャー液Eの温度を測定するセンサ部15と、収容空間Aを仕切るデフレクタ18とが取り付けられる。一例として、センサ部15は、温度センサと、当該温度センサの周囲に設けられる柱状の部分とを含んでいてもよい。
【0023】
ヒータ14からは、ヒータ14に電気的に接続される配線16が下方に延び出している。ヒータ14及び配線16は、例えば、容器11の中心軸線である軸線Lが延在する延在方向Dに沿って延びている。また、デフレクタ18は、例えば、ウォッシャー液Eの導流板として機能する。以下では、デフレクタ18から流出部13、ヒータ14及びセンサ部15が延びる方向を「上」、その反対方向を「下」として説明する。しかしながら、これらの方向は、説明の便宜のためのものであり、物の位置又は向き等を限定するものではない。
【0024】
デフレクタ18は、前述した容器11の内壁面に接触するように配置される。デフレクタ18は収容空間Aを上部空間A1と下部空間A2とに仕切っており、流出部13、ヒータ14及びセンサ部15はデフレクタ18から上部空間A1に延び出している。流入部12は、例えば、蓋部17の上面17bにおいて下部空間A2に開口している。
【0025】
流入部12は、第1管路6に連通しており、第1管路6を介してウォッシャー液タンク2からウォッシャー液Eを受け入れる。すなわち、流入部12は、第1管路6を介してウォッシャー液タンク2から供給されたウォッシャー液Eを収容空間Aの下部空間A2に流入する。
【0026】
図3は、流入部12、流出部13、ヒータ14、蓋部17、デフレクタ18、及び後述するコイル群20を示す縦断面図である。図2及び図3に示されるように、例えば、流入部12及び流出部13は、軸線Lに対して互いに対称となる位置に配置されている。
【0027】
蓋部17は、例えば、径方向に段差を有する段付き円環状とされている。蓋部17は、前述した流入部12を形成すると共に第1管路6が接続される第1筒状部17cと、流出部13が接続される第2筒状部17dと、第2管路7が接続される第3筒状部17fと、容器11に係合する外周部17gと、ヒータ14が挿通される挿通部17hとを備える。
【0028】
蓋部17において、第2筒状部17dは上面17bから上方に突出し、第3筒状部17fは第2筒状部17dに連通すると共に下方に突出している。第1管路6、第2管路7及び流出部13は、例えば、共にチューブ状とされており、第1管路6は第1筒状部17cに嵌合し、第2管路7は第3筒状部17fに嵌合し、流出部13は第2筒状部17dに嵌合する。流出部13は、第2筒状部17d及び第3筒状部17fを介して第2管路7に接続する。
【0029】
流出部13は、デフレクタ18を上下に貫通してデフレクタ18よりも上方に延びている。流出部13の上端は、軸線Lに対して斜めに曲がる傾斜部13bとされており、傾斜部13bから収容空間Aのウォッシャー液Eが流出部13に入り込む。ヒータ14は、収容空間Aに収容されたウォッシャー液Eを加熱し、例えば、傾斜部13bは、ヒータ14の直上、すなわち軸線L上に設けられている。
【0030】
例えば、ヒータ14は、上部空間A1に位置するウォッシャー液Eを温める。このヒータ14の直上に流出部13の傾斜部13bが配置されることにより、温められたウォッシャー液Eを確実に流出させることが可能となっている。例えば、傾斜部13bによって所定の水位H(図1参照)までウォッシャー液Eが収容されるようになっており、一例として、傾斜部13bは、収容空間Aのウォッシャー液Eの体積が収容空間Aの容積の90%以下となる箇所に位置している。
【0031】
ヒータ14は、例えば、容器11の軸線Lが延在する延在方向Dに沿って配置されている。このように、ヒータ14が軸線Lに沿って配置されることにより、ウォッシャー液Eの温度分布の偏りを低減させることが可能となる。ヒータ14は、流出部13と同様、デフレクタ18を上下に貫通してデフレクタ18よりも上方に延びている。
【0032】
図4は、流出部13、センサ部15及びデフレクタ18を示す平面図である。図2図3及び図4に示されるように、デフレクタ18は、例えば、円板状に形成されている。デフレクタ18は、収容空間Aにおいて上側を向く上面18bと、上面18bの反対側に位置する下面18cと、円形状の外縁18dとを有する。
【0033】
デフレクタ18は、例えば、可撓性材料によって構成されている。ここで、可撓性材料とは、手で撓ませることが可能な材料であり、一例として、ゴム材料が挙げられる。デフレクタ18は、上下に突出する筒状のヒータ挿通部18fと、流出部13が挿通される流出部挿通孔18gとを有する。ヒータ挿通部18fにはヒータ14が圧入され、これにより、ヒータ14がデフレクタ18に保持される。また、流出部挿通孔18gに流出部13が挿通されることによって、流出部13がデフレクタ18に保持される。
【0034】
デフレクタ18は、上下に貫通する複数の孔部18hを有し、孔部18hは流入部12から流入したウォッシャー液Eを上部空間A1に通すために設けられる。各孔部18hは、例えば、円形状とされている。複数の孔部18hは、デフレクタ18において略均等に分散して配置されており、例えば、格子状に分散して配置されている。デフレクタ18は、外縁18dからデフレクタ18の径方向内側に延びるスリット18jを有する。デフレクタ18は、例えば、4つのスリット18jを有する。
【0035】
例えば、デフレクタ18は、下方に突出する複数の第1突起18kと、第1突起18kよりも下方に長く突出する第2突起18mとを有する。複数の第1突起18kは、デフレクタ18の下面18cにおいて略均等に分散して配置されており、例えば、格子状に分散して配置されている。第2突起18mは、ウォッシャー液Eの流入部12に対向する位置に配置され、流入部12から流入したウォッシャー液Eをデフレクタ18の下面18cにおいて分散する機能を有する。
【0036】
前述したように、デフレクタ18からは流出部13、ヒータ14及びセンサ部15が延び出しており、ヒータ14にはコイル21,22,23,24が巻き付けられている。コイル21,22,23,24はコイル群20を構成しており、コイル21,22,23,24は軸線Lの延在方向Dに沿って並ぶように配置されている。例えば、コイル21,22,23,24は、ヒータ14の外面14bに全体的に巻き付けられる。
【0037】
コイル群20のコイル21,22,23,24は、例えば、流出部13、ヒータ14及びセンサ部15を保持する機能と、ヒータ14によるウォッシャー液Eの加熱に伴って生じる泡を制御する機能とを有する。コイル群20による泡を制御する機能については後に詳述する。
【0038】
コイル21、コイル22、コイル23及びコイル24は、例えば、共にコイルスプリングである。コイル21、コイル22、コイル23及びコイル24は、この順で上方から下方に向かって並んでいる。すなわち、コイル23はコイル24の上方に設けられ、コイル22はコイル23の上方に設けられ、コイル21はコイル22の上方に設けられる。
【0039】
コイル21とコイル22の間、コイル22とコイル23の間、及びコイル23とコイル24の間、のそれぞれには、ヒータ14の外面14bが露出する隙間Kが形成されている。隙間Kは、例えば、ヒータ14によって加熱されたウォッシャー液Eの逃げ道とされている。一例として、隙間Kの延在方向Dの長さは0.8mm以上且つ2.2mm以下であるが、適宜変更可能である。
【0040】
コイル21は、コイル21の軸線周りに延在する螺旋状とされると共にヒータ14に接触する素線21bによって形成されている。コイル21の軸線は、例えば、前述した軸線Lと一致する。コイル21は、複数の素線21bが軸線Lの延在方向Dに互いに密着する密着部21cを有する。密着部21cでは、素線21bの螺旋のピッチが0とされている。
【0041】
コイル21は、密着部21cを有することにより、少なくとも一部が密着コイルばねとされている。また、コイル22、コイル23及びコイル24のそれぞれは、例えば、素線21b及び密着部21cのそれぞれと同様、素線22b,23b,24b及び密着部22c,23c,24cを有する。
【0042】
コイル21,22,23,24において、ヒータ14の外面14bと素線21b,22b,23b,24bとの間に形成された微小な隙間からはウォッシャー液Eの加熱に伴って微小な泡が生じ、この泡は密着部21c,22c,23c,24cにおいて微小な状態が維持されたままヒータ14から離れていく。
【0043】
これに対し、密着部21c,22c,23c,24cを有しないコイルでは、上記の泡は微小な状態から成長して急激に大きくなり、大きくなった泡の破裂に伴って沸騰音が生じることがある。本実施形態では、コイル21が密着部21c,22c,23c,24cを有することにより、小さい泡を小さい状態のまま連続的に生じさせ、小さい泡の発生を安定的に行うことにより、沸騰音の発生を抑制している。
【0044】
コイル21,22,23の素線21b,22b,23bの螺旋状部分の内径は、例えば、6.0mm以上且つ6.2mm以下であり、ヒータ14の外径と同程度とされている。コイル24の素線24bの螺旋状部分の内径は、例えば、6.2mm以上且つ6.6mm以下であり、ヒータ14の外径よりも大きい。
【0045】
コイル21は、例えば、コイル24と比較して強くヒータ14に締め付けられている。コイル21の素線21bはヒータ14の上端部分に螺旋状に巻き付けられる。素線21bは、例えば、ヒータ14の上方から流出部13に向かって延び出す第1延出部21dと、第1延出部21dから流出部13に沿って延在する第2延出部21fと、第2延出部21fの上端において流出部13の傾斜部13bに巻き付けられる巻き付け部21gとを有する。
【0046】
第1延出部21d及び第2延出部21fは、例えば、コイル21において外方に延び出すアーム状の部位とされており、巻き付け部21gは、流出部13に組み付けられる係止部とされている。コイル21の素線21bにおける第1延出部21dとの反対側の端部は、ヒータ14から離れる方向に突出する突出部21hとされている。一例として、突出部21hは、センサ部15から離れる方向である第1方向X1に突出している。
【0047】
コイル22の素線22bは、例えば、ヒータ14の上側部分に螺旋状に巻き付けられる。素線22bの一端はヒータ14から離れる方向に突出する第1突出部22dとされており、一例として、第1突出部22dは流出部13から離れる方向である第2方向X2に突出している。
【0048】
第1突出部22dは、コイル21の突出部21hの直下において、第1方向X1に交差する第2方向X2に突出している。よって、突出部21hと第1突出部22dを摘まむことにより、コイル21及びコイル22における螺旋部分の内径を容易に調整することが可能となる。
【0049】
例えば、第1方向X1と第2方向X2との成す角度は、60°以上且つ180°以下、又は90°以上且つ120°以下、とされている。素線22bの他端はヒータ14から離れる方向に突出する第2突出部22fとされており、例えば、第2突出部22fは第1方向X1に突出している。
【0050】
コイル23の素線23bは、例えば、ヒータ14の下側部分に螺旋状に巻き付けられる。素線23bの一端は、ヒータ14から離れる方向に突出する第3突出部23dとされており、例えば、第3突出部23dはコイル22の第2突出部22fの直下において第2方向X2に突出している。従って、第2突出部22fと第3突出部23dとを摘まむことにより、コイル22及びコイル23における螺旋部分の内径を容易に調整することが可能となる。また、素線23bの他端は、例えば、第1方向X1に突出している。
【0051】
コイル24は、例えば、コイル21、コイル22及びコイル23と比較してヒータ14に対する締め付け力が弱い。コイル24の螺旋状部分の内周とヒータ14の外面14bとの間には隙間が形成されていてもよい。これにより、ヒータ14に対するコイル24の設置を容易に行うことが可能となる。
【0052】
コイル24の素線24bは、ヒータ14の下端部分に螺旋状に巻き付けられる。例えば、コイル24の一端側はセンサ部15に巻き付けられ、コイル24の他端側は流出部13に巻き付けられる。コイル24は、当該一端側に、センサ部15に向かって延び出す第3延出部24dと、第3延出部24dからセンサ部15に沿って延在する第4延出部24fと、第4延出部24fの上端においてセンサ部15に巻き付けられる巻き付け部24gとを有する。コイル24は、当該他端側に、流出部13に向かって延び出す第5延出部24hと、第5延出部24hのヒータ14との反対側の端部において流出部13に巻き付けられる巻き付け部24jとを有する。
【0053】
コイル24において、例えば、第3延出部24d、第4延出部24f及び第5延出部24hは、コイル24において外方に延び出すアーム状の部位とされており、巻き付け部24g及び巻き付け部24jは、センサ部15及び流出部13のそれぞれに組み付けられる係止部とされている。
【0054】
次に、本実施形態に係るウォッシャー液Eの加熱装置1の作用効果について詳細に説明する。ウォッシャー液Eの加熱装置1では、ウォッシャー液Eを収容する収容空間Aにウォッシャー液Eを加熱するヒータ14が設けられ、ヒータ14にコイル21,22,23,24の素線21b,22b,23b,24bが巻き付けられている。
【0055】
ウォッシャー液Eを加熱するヒータ14にコイル21,22,23,24の素線21b,22b,23b,24bが巻き付けられることにより、ヒータ14の周囲をコイル21,22,23,24の素線21b,22b,23b,24bが囲むこととなるため、加熱に伴う沸騰音を抑制することができる。すなわち、ヒータ14とウォッシャー液Eとの間にコイル21,22,23,24の素線21b,22b,23b,24bが介在することにより、ヒータ14とウォッシャー液Eとの間の熱伝達を向上させることができるので、沸騰音を低減させることができる。
【0056】
本実施形態では、コイル21,22,23,24がコイルスプリングであり、特別な生産設備を必要としないため、沸騰音を低減させるための構造を容易に製作することができ、コストダウンに寄与する。ヒータ14の長さ又は外径が変わった場合等には、コイル21,22,23,24の長さ、数又は径を変えればよいので、メンテナンス性が高いという利点がある。また、コイル21,22,23,24がコイルスプリングである場合、コイル21,22,23,24が占めるスペースが小さいという利点もある。
【0057】
更に、このウォッシャー液Eの加熱装置1において、コイル21,22,23,24は、複数の素線21b,22b,23b,24bがコイル21,22,23,24の軸線Lの延在方向Dに沿って互いに密着する密着部21c,22c,23c,24cを有する。すなわち、素線21b,22b,23b,24bが密着巻きとされた密着部21c,22c,23c,24cを有する。
【0058】
密着部21c,22c,23c,24cでは、ウォッシャー液Eの加熱に伴って連続的に小さい泡が発生し、密着部21c,22c,23c,24cを有しない場合と比較して泡の発生を安定させることができる。すなわち、密着部21c,22c,23c,24cを有しない場合には、ウォッシャー液Eの加熱に伴って間欠的に大きな泡が成長し、大きな泡が急速に成長して破裂することがある。よって、泡の発生が不安定であると共に大きな泡が一気に成長することがあるため、沸騰音が生じることが懸念される。
【0059】
これに対し、本実施形態に係るウォッシャー液Eのヒータ14は、密着部21c,22c,23c,24cを有するコイル21,22,23,24が巻き付けられているため、小さな泡を連続的に生成することによって大きな泡の成長を抑制することができる。その結果、沸騰音を低減させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る加熱装置1は、コイル21,22,23,24からなるコイル群20を備え、コイル群20のコイル21,22,23,24は、延在方向Dに沿って並ぶように配置されていてもよい。よって、コイル群20において密着部21c,22c,23c,24cを有するコイル21,22,23,24が巻き付けられるので、沸騰音をより確実に低減させることができる。
【0061】
また、コイル21,22,23の素線21b,22b,23bの一端及び他端の少なくともいずれかは、ヒータ14から離れる方向に突出していてもよい(突出部とされていてもよい)。この場合、素線21b,22b,23bの突出している一端又は他端を指等で摘まむことにより、コイル21,22,23の径を容易に調整することができる。従って、ヒータ14に対するコイル21,22,23の設置を容易に行うことができる。
【0062】
また、コイル21,24の一端及び他端の少なくともいずれかは、流出部13に巻き付けられていてもよい。この場合、コイル21,24の素線21b,24bが流出部13に巻き付けられることにより、コイル21,24によって流出部13を支えることができる。また、ヒータ14に巻き付けられるコイル21,24の素線21b,24bを流出部13にも巻き付けることができるので、コイル21,24が外れることをより確実に抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る加熱装置1は、ウォッシャー液Eの温度を測定するセンサ部15を備え、コイル24の一端及び他端の少なくともいずれかは、センサ部15に巻き付けられていてもよい。この場合、センサ部15によって収容空間Aに収容されたウォッシャー液Eの温度を測定することができる。また、ヒータ14に巻き付けられたコイル24の素線24bをセンサ部15にも巻き付けることができるので、コイル24が外れることをより確実に抑制することができる。
【0064】
以上、本開示に係るウォッシャー液の加熱装置の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明に係るウォッシャー液の加熱装置の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0065】
例えば、前述の実施形態では、軸線Lに沿って延びる棒状のヒータ14について説明した。しかしながら、ヒータの形状、大きさ及び配置態様は適宜変更可能である。更に、ヒータ14から延び出す配線16及び蓋部17の形状、大きさ、配置位置及び数についても前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。
【0066】
また、前述の実施形態では、収容空間Aを仕切る仕切部材としてデフレクタ18を説明した。しかしながら、仕切部材の形状、大きさ、材料及び配置態様については前述の実施形態に限定されない。すなわち、仕切部材に形成された孔部、スリット、第1突起及び第2突起の形状、大きさ、数及び配置態様についても、前述したデフレクタ18に限定されず適宜変更可能である。
【0067】
また、前述の実施形態では、コイル群20がコイル21、コイル22、コイル23及びコイル24といった4個のコイルを備える例について説明した。しかしながら、コイル群が構成するコイルの数は、3個以下又は5個以上であってもよく、適宜変更可能である。更に、コイルの数は1個であってもよい。
【0068】
また、前述の実施形態では、ヒータ14に巻き付けられるコイル21の素線21bの一部が流出部13に巻き付けられる例、ヒータ14に巻き付けられるコイル24の素線24bの一部がセンサ部15及び流出部13のそれぞれに巻き付けられる例について説明した。しかしながら、ヒータ14に巻き付けられるコイルの素線が巻き付けられる部品は、流出部13又はセンサ部15以外の部品であってもよく適宜変更可能である。更に、コイルの形状、大きさ、材料及び配置態様については、前述の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0069】
また、前述の実施形態では、加熱装置1が、ウォッシャー液タンク2、ウォッシャー液ポンプ3、ウォッシャー液ノズル4及び操作部5を備える供給システムSに配置される例について説明した。しかしながら、本発明に係るウォッシャー液の加熱装置は、供給システムSに限られず、種々のウォッシャー液の供給システムに適用させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…加熱装置、11…容器、12…流入部、13…流出部、14…ヒータ、15…センサ部、20…コイル群、21,22,23,24…コイル、21b,22b,23b,24b…素線、21c,22c,23c,24c…密着部、A…収容空間、D…延在方向、E…ウォッシャー液、L…軸線。
図1
図2
図3
図4