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特許7219752不均一コバルトの触媒反応によるアルキル化又はフルオロ、クロロ及びフルオロクロロアルキル化化合物の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】不均一コバルトの触媒反応によるアルキル化又はフルオロ、クロロ及びフルオロクロロアルキル化化合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07B 37/04 20060101AFI20230201BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 49/80 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 45/68 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 22/02 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 17/32 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 17/266 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 31/38 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 33/42 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 29/44 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 29/32 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 211/15 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 211/24 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 209/68 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 255/10 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 69/65 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 67/30 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 43/17 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 213/26 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 207/33 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 239/52 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 239/26 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 241/12 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 233/64 20060101ALI20230201BHJP
   C07D 333/12 20060101ALI20230201BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20230201BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230201BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C07B37/04 B
C07C43/225 B
C07C49/80
C07C45/68
C07C22/02
C07C17/32
C07C21/18
C07C17/266
C07C31/38
C07C33/42
C07C29/44
C07C29/32
C07C211/15
C07C211/24
C07C209/68
C07C255/10
C07C253/30
C07C69/65
C07C67/30
C07C43/17
C07D213/26
C07D207/33
C07D239/52
C07D239/26
C07D241/12
C07D231/12
C07D233/64 102
C07D333/12
B01J31/22 Z
B01J37/04 102
C07C41/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020504193
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018070242
(87)【国際公開番号】W WO2019020726
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】17020321.0
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/540,656
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18173211.6
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18179739.0
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520346882
【氏名又は名称】アークサーダ・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】テシュラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】サラゴサ・デールバルト,フロレンシオ
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,ヘルフリート
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,フロリアン
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519728(JP,A)
【文献】特開2012-097082(JP,A)
【文献】特表2017-533916(JP,A)
【文献】特表平07-504414(JP,A)
【文献】Journal of Organometallic Chemistry,2016年,820,P.82-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B 37/
C07C 41/
C07C 43/
C07C 49/
C07C 45/
C07C 22/
C07C 17/
C07C 21/
C07C 31/
C07C 33/
C07C 29/
C07C 211/
C07C 209/
C07C 255/
C07C 253/
C07C 69/
C07C 67/
C07D 213/
C07D 207/
C07D 239/
C07D 241/
C07D 231/
C07D 233/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物COMPSUBSTを、触媒CATの存在下でアルキル化剤ALKHALと反応させることによる、不均一触媒を用いた、ルオロアルキル化、クロロアルキル化又はフルオロクロロアルキル化化合物ALKYLCOMPSUBSTの調製方法であって、
ALKHALは、式(III):
R3-X (III)
[式中、
Xは、Br又はIであり、
R3は、C1-20アルキルであり、
ここで、全ての水素原子が、独立してF又はClで置換されている。]
の化合物であり、
CATは、Co-L1/Cであり、
L1は、1,10-フェナントロリンであり、
COMPSUBSTは、化合物COMPSUBST-I、式(II)の化合物、式(IV)の化合物、ポリスチレン、エテン及びエチンからなる群から選択され、
COMPSUBST-Iは、環RINGAであるか、又は環RINGBと縮合しているRINGAであり、
RINGAは、5又は6員の芳香族炭素環又は芳香族複素環であり、
RINGAが複素環である場合、RINGAは、N、O及びSからなる群から互いに独立して選択される、1、2若しくは3個の同一の若しくは異なる環内ヘテロ原子を有し、
RINGAが5員環である場合、RINGAは、置換されていないか、又は1、2、3若しくは4つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
RINGAが6員環である場合、RINGAは、置換されていないか、又は1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
RINGAの置換基はいずれも、他のRINGAの置換基から独立しており、前記RINGAの置換基は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化1】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGBは、5又は6員の炭素環又は複素環であって、その結果、全体で8、9又は10環員を有する二環を生じ、
RINGBが複素環である場合、RINGBは、N、O及びSからなる群から互いに独立して選択される、1、2若しくは3個の同一の若しくは異なる環内ヘテロ原子を含み、
RINGBは、置換されていないか、又はRINGBが5員環である場合には、1、2若しくは3つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、RINGBが6員環である場合には、1、2、3若しくは4つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、前記同一の若しくは異なる置換基は、互いに独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R17)R18、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y2、S(O)R51、CH=C(H)R38、
【化2】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGA又はRINGBの置換基であるC1-10アルキルはいずれも、置換されていないか、又はハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)―C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
RINGA又はRINGBの置換基である、ベンジル、フェニル及びナフチルはいずれも、互いに独立して、置換されていないか、又は、ハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
m及びnは、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して0~10の整数であり、
式(II)の化合物及び式(IV)の化合物は、次の通りであり、
【化3】
R40及びR41は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、-(CH-C(O)R13及び-CNからなる群から選択され、
R42は、-(CH-C(O)R13、-CN及びR13からなる群から選択され、
qは独立して0~10の整数であり、
エテンは、置換されていないか、又はC1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化4】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される、1、2若しくは3つの置換基によって置換されており、
エチンは、置換されていないか、又はC1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化5】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される1つの置換基によって置換されており、
pは独立して0~10の整数であり、
R24、R34、R28及びR38はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、C1-10アルキル、C(R25)(R26)-O-R27からなる群から選択され、
R25、R26及びR27はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H及びC1-10アルキルからなる群から選択され、
R50及びR51はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、OH、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシからなる群から選択され、
Y1、Y2及びR13はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C1-6アルキル、O-C1-6アルキル、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル及びN(R19)R20からなる群から選択され、
R14、R15及びR16はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、F、Cl及びBrからなる群から選択され、
R10、R11、R17、R18、R19及びR20はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H若しくはC1-6アルキルであるか、又は、R10及びR11、R17及びR18、若しくはR19及びR20は、一緒になってテトラメチレン又はペンタメチレンを表す、方法。
【請求項2】
RINGAが複素環である場合、RINGAが、N及びSからなる群から互いに独立して選択される、1、2若しくは3個の同一の若しくは異なる環内ヘテロ原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
COMPSUBST-Iが、RINGAであるか、又はRINGBと縮合しているRINGAであり、並びに、以下からなる群から選択され、
【化6】
RINGA、若しくはRINGBと縮合しているRINGAは、置換されていないか、又は
RINGAが、5個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2、3若しくは4つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGAが、6個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合しているRINGAが、5又は6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3、4、5若しくは6つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合しているRINGAが、2つの6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3、4、5、6若しくは7つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
前記置換基は、互いに独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化7】
ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
前記C1-10アルキル置換基は、置換されていないか、又は、ハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
前記ベンジル、フェニル及びナフチル置換基は、互いに独立して、置換されていないか、又はハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
R10及びR11は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H若しくはC1-6アルキルであるか、又はR10及びR11は一緒になってテトラメチレン若しくはペンタメチレン基を表し、
R24及びR28は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、OH、C1-10アルキル、C(R25)(R26)-O-R27であり、前記R25、R26及びR27は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H若しくはC1-10アルキルであり、
R50は、OH、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシであり、
Y1は、H、OH、C(R14)(R15)R16、C1-6アルキル、O-C1-6、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル又はN(R19)R20であり、前記R14、R15、R16は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、F、Cl又はBrであり、
R19及びR20は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H若しくはC1-6アルキルであるか、又はR19及びR20は一緒になってテトラメチレン若しくはペンタメチレン基を表し、
mは、独立して0~10の整数である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
m、n、p及びqが、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、0、1、2、3若しくは4である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Y1、Y2及びR13が、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C2-6アルキル、O-C1-6アルキル、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル及びN(R19)R20からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
RINGA、又はRINGBと縮合しているRINGAが、置換されていないか、又は
RINGAが、5個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2若しくは3つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGAが、6個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合しているRINGAが、5又は6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合しているRINGAが、2つの6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3若しくは4つの同一の若しくは異なる置換基で置換され
前記置換基は、互いに独立して、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50からなる群から選択され、
前記C1-4アルキル置換基は、置換されていないか、又はハロゲンからなる群から選択される、1、2若しくは3つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
R10、R11、Y1及びR50は、請求項1に定義された通りである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
COMPSUBSTが、ベンゼン、ピラゾール、
【化8】

からなる群から選択され、
R1が、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化9】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
Y1、R10、R11、m、R50、R28及びR24が、請求項1に定義された通りである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R3が、全ての水素原子がFによって置換されているC1-20アルキルである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ALKHALが、F2110-I、F17-I、F13-I、F-I、FC-I、F2110-Br、F17-Br、F13-Br、F-Br、FC-Br、FC-Cl、FHC-Cl及びFHC-Brからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Co-L1/Cが、Co(OAc).4HOを1,10-フェナントロリンと反応させ、それにより錯体Co(phen)(OAc)を形成し、これを次いでカーボンブラック上に吸収し、アルゴン下で800℃で2時間維持してCo-L1/Cを提供することにより調製される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれハロゲン化アルキル、ハロゲン化フルオロアルキル、ハロゲン化クロロアルキル、又はハロゲン化フルオロクロロアルキルを用いた、不均一Co触媒アルキル化又はフルオロアルキル化、クロロアルキル化、フルオロクロロアルキル化によるアルキル化、フルオロアルキル化、クロロアルキル化及びフルオロクロロアルキル化合物の調製方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化学は、医学、農学、物質科学及び分野において重要な役割を果たす。ハロアルキル基は、安定性及び親油性などの化合物の性質に強い影響を与え、さらに長鎖ハロアルキル基、特にフルオロアルキル基は高い耐水性及び耐油性及び低摩擦性をもたらす。
【0003】
均一触媒によりアルキル化又はハロアルキル化化合物を提供するための、種々のアプローチがあった。しかし、均一触媒は、金属及びリガンドを含む回収不可能な触媒の使用により、均質な触媒反応に関連する固有の問題を抱えている。触媒のハンドリング、リサイクル性、生成物からの触媒の分離に関して特に不都合な点により、これらのアプローチを大規模な工業的方法へ移行することが妨げられる。さらに、高価で構造的に複雑なリガンドが均一触媒反応において必要とされ、これらのリガンドは工業規模での使用のためには市販されていないことが多い。
【0004】
EP0114359A1号は、高温で少なくとも1つのアルカリ塩の存在下で、ペルフルオロアルキルヨウ化物を非置換若しくは置換炭素環式又は複素環式化合物と反応させることによる、ペルフルオロアルキル置換炭素環式又は複素環式化合物の製造方法であって、周期表の第1又は8族の少なくとも1つの金属の存在下で、又は中心原子として前記金属を含む錯体化合物の存在下で、前記反応を行うことを特徴とする方法を開示する。
【0005】
WO93/16969A号は、芳香族化合物の触媒的ペルフルオロアルキル化のための方法であって、ここで、ペルフルオロアルキルヨウ化物又はヨウ化物の混合物を、アルカリ金属水酸化物又は炭酸塩などの水性塩基の存在下で芳香族化合物と反応させる方法を開示し、触媒として多孔質シリカミクロスフェア上に担持された貴金属を使用することによって、速度及び収率のさらなる改善が確保されることを開示する。
【0006】
EP1947092A1号は、スルホキシド、過酸化物及び鉄化合物の存在下でのハロゲン化ペルフルオロアルキルによる、ヌクレオ塩基のペルフルオロアルキル化を開示する。特に言及した触媒系はFe(SO/HSO/H系である。
【0007】
WO2015/185677A1号は、CsCO又はCsHCOの存在下でPt/C触媒を用いた不均一触媒反応によるアルキル化又はフルオロ、クロロ及びフルオロクロロアルキル化化合物の調製方法を記載している。Pt/C触媒の使用は不均一触媒反応を可能にするが、Ptは高価な金属であるため、工業規模でのアルキル化又はハロアルキル化化合物の製造方法にかなりのコストをもたらす。
【0008】
したがって、アルキル化又はハロアルキル化、特にペルフルオロアルキル化化合物の調製のための不均一に触媒される方法であって、高収率をもたらす方法が必要である。この方法は多種多様な基材に適用可能であり、多種多様な官能基に適合するであろう。さらに、この方法はアルキル化剤としてヨウ化物のみに限定されるのではなく、他のハロゲン化物、特に臭化物と共に機能するであろう。この方法は、過フッ化アルキルハライドだけでなく、フッ化及び塩素化アルキルハライドでも機能するであろう。さらに、これまで使用されてきた貴金属触媒は高価であるため、貴金属を用いずに効果的に機能する触媒系が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第0114359号明細書
【文献】国際公開第93/16969号
【文献】欧州特許出願公開第1947092号明細書
【文献】国際公開第2015/185677号
【発明の概要】
【0010】
驚くべきことに、これらの要件は、触媒として本明細書においてCATとも呼ばれ、Co-L1/Cとも略される、炭素上に担持されるコバルト1,10-フェナントロリンを使用する本発明による方法によって達成することができ、L1は1,10-フェナントロリンである。
【0011】
Co-L1/C及びその調製は、Westerhausら、Nature Chemistry、2013、5、537-543、特にその中の図1、及び「S1.Catalyst preparation」の章の下にDOI:10.1038/NCHEM.1645の下で入手可能な本稿の補足情報に記載されている。
【0012】
本発明によれば、本明細書ではCOMPSUBSTとも呼ばれる基材を、CATの存在下でハロゲン化物、本明細書ではALKHALとも呼ばれるアルキル化剤と反応させて、アルキル、フルオロアルキル、クロロアルキル又はフルオロクロロアルキル残基をCOMPSUBSTに導入し、それによって、本明細書ではALKYLCOMPSUBSTとも呼ばれるアルキル化、フルオロアルキル化、クロロアルキル化又はフルオロクロロアルキル化化合物である生成物を形成する。
【0013】
触媒としてのCo-L1/Cの使用は予想外の利点を提供する。特に、触媒は再利用でき、反応によって失活されることはない。
【0014】
この方法は芳香族及び非芳香族化合物の両方に適用可能である。また、複素環化合物を変換することができ、非活性化チオフェンでも同等の低温で円滑に反応する。
【0015】
本発明による方法の特別な利点は、ヨウ化物をアルキル化剤、すなわちALKHALとして用いることができることのみならず、アルキル化剤としての臭化物と共に良好な結果が得られることである。触媒Co-L1/Cの使用により、臭化物をALKHALとして使用しても、異なる基材を用いても高い選択性及び高い収率が得られたことは驚くべきことであった。これは実際には本質的な利点がある。なぜなら、臭化物はヨウ化物と比較して非常に好都合であるため、この方法ははるかに効率的に行うことができるからである。さらに、ヨウ化物の使用から生じる副生成物は処理がより難しい。
【0016】
さらに、貴金属触媒の代わりにコバルト含有触媒を使用することにより、かなりのコスト削減が達成される。
【0017】
本文中では、特に記載がない場合、以下の意味を使用する:
【0018】
アルキル:直鎖又は分枝鎖アルキル、好ましくは直鎖アルキル;
「のいずれも」:「各場合に」と同義的に使用され、例えば、「R24、R34、R28及びR38のいずれも同一であるか又は異なり、互いに独立して~からなる群から選択される」は、「R24、R34、R28及びR38は、各場合に同一であるか又は異なり、互いに独立して~からなる群から選択される」と同義的に使用される;
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン;
ハロゲン化物:F、Cl、Br又はI、好ましくはCl、Br、及びI、より好ましくはBr及びI、さらにより好ましくはBr
ハロゲン又はハロ:F、Cl、Br又はI、好ましくはF、Cl又はBr、より好ましくはF又はCl;
HRMS EI:高分解能質量分析電子衝撃;
「直鎖状」及び「n-」:アルカンのそれぞれの異性体に関して同義的に使用される;
L1:1,10-フェナントロリン;
Co-L1/C:炭素上に担持させたコバルト1,10-フェナントロリン、より正確には1,10-フェナントロリン/炭素上に担持される酸化コバルトであり、したがってCo-L1/Cと略すこともできる;
RT:室温、これは周囲温度という表現と同義的に使用される;
TEA:トリエチルアミン;
「wt.%」、「重量%」及び「重量-%」:同義的に使用され、重量パーセントを意味する。
【0019】
本発明の主題は、化合物COMPSUBSTを、触媒CATの存在下でアルキル化剤ALKHALと反応させることによる、不均一触媒反応を用いたアルキル化、フルオロアルキル化、クロロアルキル化又はフルオロクロロアルキル化化合物ALKYLCOMPSUBSTの調製方法であり、
ALKHALは式(III):
R3-X(III)
[式中、
Xは、Br又はIであり、
R3は、C1-20アルキルであり、
ここで、ALKHALのR3のC1-20アルキル残基は、非置換であるか、又はALKHALのR3のC1-20アルキル残基の少なくとも1つの水素残基が、F又はClで置換されている。]
の化合物であり、
CATは、Co-L1/Cであり、
L1、は1,10-フェナントロリンであり、
COMPSUBSTは、化合物COMPSUBST-I、式(II)の化合物、式(IV)の化合物、ポリスチレン、エテン及びエチンからなる群から選択され、
COMPSUBST-Iは、環RINGAであるか、又は環RINGBと縮合しているRINGAであり、
RINGAは、5又は6員の炭素環又は複素環であり、
RINGAが複素環である場合、RINGAは、N、O及びSからなる群から互いに独立して選択される、1、2若しくは3個の同一の若しくは異なる環内ヘテロ原子を有し、
RINGAが5員環である場合、RINGAは置換されていないか、又は1、2、3若しくは4つの同一の又は異なる置換基で置換されており、
RINGAが6員環である場合、RINGAは置換されていないか、又は1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
RINGAの置換基はいずれも、他のRINGAの置換基から独立しており、前記RINGAの置換基は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0020】
【化1】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGBは、5又は6員の炭素環又は複素環であって、その結果、全体で8、9又は10環員を有する二環を生じ、
RINGBが複素環である場合、RINGBは、N、O及びSからなる群から互いに独立して選択される、1、2若しくは3個の同一の若しくは異なる環内ヘテロ原子を含み、
RINGBは、置換されていないか、又はRINGBが5員環である場合には、1、2若しくは3つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、RINGBが6員環である場合1、2、3若しくは4つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、前記これらの同一の若しくは異なる置換基は、互いに独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R17)R18、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y2、S(O)R51、CH=C(H)R38、
【0021】
【化2】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGA又はRINGBの置換基であるC1-10アルキルはいずれも、置換されていないか、又はハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)―C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
RINGA又はRINGBの置換基である、ベンジル、フェニル及びナフチルはいずれも互いに独立して、置換されていないか、又は、ハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
m及びnは同一であるか若しくは異なり、互いに独立して0~10の整数であり、
式(II)の化合物及び式(IV)の化合物は次の通りであり、
【0022】
【化3】
R40及びR41は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、-(CH-C(O)R13及び-CNからなる群から選択され、
R42、は-(CH-C(O)R13、-CN及びR13からなる群から選択され、
qは独立して0~10の整数であり、
エテンは置換されていないか、又はC1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0023】
【化4】
ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される、1、2若しくは3つの置換基によって置換されており、
エチンは、置換されていないか、又はC1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0024】
【化5】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される1つの置換基によって置換されており、
pは独立して0~10の整数であり、
R24、R34、R28及びR38はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、C1-10アルキル、C(R25)(R26)-O-R27からなる群から選択され、
R25、R26及びR27はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H及びC1-10アルキルからなる群から選択され、
R50及びR51はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、OH、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシからなる群から選択され、
Y1、Y2及びR13はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C1-6アルキル、O-C1-6アルキル、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル及びN(R19)R20からなる群から選択され、
R14、R15及びR16はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、F、Cl及びBrからなる群から選択され、
R10、R11、R17、R18、R19及びR20はいずれも、同一であるか若しくは異なり、互いに独立してH若しくはC1-6アルキルであるか、又は、R10及びR11、R17及びR18、若しくはR19及びR20、は一緒になってテトラメチレン又はペンタメチレンを表す、方法
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましくは、XはBrである。
【0026】
好ましくは、RINGAが複素環である場合には、RINGAは、互いに独立してN及びSからなる群から選択される、1、2又は3個の同一の又は異なる環内ヘテロ原子を有する。
【0027】
好ましくは、RINGBが複素環である場合には、RINGBは、互いに独立してN及びSからなる群から選択される、1、2又は3個の同一の又は異なる環内ヘテロ原子を有する。
【0028】
好ましくは、RINGAは芳香環である。
【0029】
好ましくは、RINGBは芳香環である。
【0030】
より好ましくは、RINGA及びRINGBは芳香環である。
【0031】
好ましくは、COMPSUBSTは、COMPSUBST-I、
【0032】
【化6】
、ポリスチレン エテン及びエチンからなる群から選択され、
ここで、COMPSUBST-I、エテン及びエチンは、本明細書、それらの全ての実施形態で定義される通りである。
【0033】
一実施形態において、COMPSUBST-Iは、RINGAであるか、又はRINGBと縮合しているRINGAであり、並びに、以下からなる群から選択され、
【0034】
【化7】
、好ましくは、COMPSUBST-Iは、RINGAであるか、又はRINGBと縮合したRINGAであり、以下からなる群から選択され、
【0035】
【化8】
、より好ましくは、COMPSUBST-Iは、RINGAであるか、又はRINGBと縮合したRINGAであり、以下からなる群から選択され、
【0036】
【化9】
、さらにより好ましくは、COMPSUBST-Iは、RINGAであるか、又はRINGBと縮合したRINGAであり、以下からなる群から選択され、
【0037】
【化10】
、特に、COMPSUBST-Iは、RINGAであり、以下からなる群から選択され、
【0038】
【化11】
、より特別には、COMPSUBST-Iは、RINGAであり、以下からなる群から選択され、
【0039】
【化12】
、RINGA、若しくはRINGBと縮合しているRINGAは、置換されていないか、又は
RINGAが、5個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2、3若しくは4つの同一若しくは異なる置換基で置換され、
RINGAが6個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2、3、4若しくは5つの同一若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合したRINGAが5又は6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3、4、5若しくは6つの同一若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合したRINGAが2つの6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3、4、5、6若しくは7つの同一若しくは異なる置換基で置換され、
前記置換基は、互いに独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0040】
【化13】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
前記C1-10アルキル置換基は置換されていないか、又は、ハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
前記ベンジル、フェニル及びナフチル置換基は、互いに独立して置換されていないか、又はハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
R10及びR11は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H若しくはC1-6アルキルであるか、又はR10及びR11は一緒になってテトラメチレン若しくはペンタメチレン基を表し、
R24及びR28は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、OH、C1-10アルキル、C(R25)(R26)-O-R27であり、前記R25、R26及びR27は同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H若しくはC1-10アルキルであり、
R50は、OH、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシであり、
Y1はH、OH、C(R14)(R15)R16、C1-6アルキル、O-C1-6、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル又はN(R19)R20であり、前記R14、R15、R16は同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、F、Cl又はBrであり、
R19及びR20は、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H又はC1-6アルキルであるか、又はR19及びR20は一緒になってテトラメチレン若しくはペンタメチレン基を表し、
mは独立して0~10の整数である。
【0041】
本明細書では、好ましくは、各場合において、m、n、p及びqは同一であるか若しくは異なり、互いに独立して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10の整数であり、
より好ましくは、各場合において、m、n、p及びqは同一であるか若しくは異なり、互いに独立して0~4の整数、特に0、1、2、3若しくは4であり、
さらにより好ましくは、各場合において、m、n、p及びqは、独立して0又は4である。
【0042】
好ましい実施形態では、各場合において、Y1、Y2及びR13が、同一であるか若しくは異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C2-6アルキル、O-C1-6アルキル、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル及びN(R19)R20からなる群から選択され、
より好ましくは、各場合において、Y1、Y2及びR13が、同一であるか若しくは異なり、互いに独立してH、OH、C1-2アルキル及びO-C1-2アルキルからなる群から選択される。
【0043】
より好ましくは、RINGA又はRINGBと縮合しているRINGAが、置換されていないか、又は
RINGAが、5個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2若しくは3つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGAが6個の環内原子を有する単環式化合物である場合には、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合しているRINGAが、5又は6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3、4若しくは5つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
RINGBと縮合しているRINGAが、2つの6員環がオルト縮合している二環式化合物である場合には、1、2、3若しくは4つの同一の若しくは異なる置換基で置換され、
前記置換基は、互いに独立して、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50からなる群から選択され、
前記C1-4アルキル置換基は、置換されていないか、又はハロゲンからなる群から選択される、1、2若しくは3つの同一の若しくは異なる置換基で置換されており、
R10、R11、Y1及びR50は上記、それらの全ての実施形態で定義の通りである。
【0044】
一実施形態において、COMPSUBSTは、ベンゼン、ピラゾール、
【0045】
【化14】
、からなる群から選択され、
ここで、
R1は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0046】
【化15】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
Y1、R10、R11、m、R50、R28及びR24が、本明細書、それらの全ての実施形態に定義される通りであり、
好ましくは、Y1及びR1は独立してC1-6アルキル又はOC1-6アルキルである。
【0047】
好ましい実施形態において、COMPSUBSTは、
【0048】
【化16】
、からなる群から選択され、
R1は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0049】
【化17】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
Y1、R10、R11、m、R50、R28及びR24、本明細書、それらの全ての実施形態に定義される通りであり、
好ましくは、Y1及びR1が、独立してC1-6アルキル又はO-C1-6アルキルである。
【0050】
より好ましい実施形態において、COMPSUBSTは、
【0051】
【化18】
、からなる群から選択され、
ここで、
Y1は本明細書、それらの全ての実施形態で定義される通りであり、
好ましくは、Y1は、C1-6アルキル又はO-C1-6アルキルであり、
より好ましくは、Y1は、メチル、エチル、メトキシ又はエトキシであり、
さらにより好ましくは、エチル又はエトキシである。
【0052】
さらにより好ましい実施形態において、COMPSUBSTは、
【0053】
【化19】
、からなる群から選択される。
【0054】
特に好ましい実施形態において、COMPSUBSTは、
【0055】
【化20】
、からなる群から選択される。
【0056】
より特に好ましい実施形態では、COMPSUBSTは、
【0057】
【化21】
、からなる群から選択される。
【0058】
さらに好ましい実施形態において、COMPSUBSTは式(II)の化合物、又は式(IV)の化合物であり、ここで、残基は上記、それらの全ての実施形態のように定義される。
【0059】
さらなる好ましい実施形態において、COMPSUBSTは、
置換されていないか、若しくはC1-10アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される1又は2つの置換基で置換されているエテン、
置換されていないか、若しくはC1-10アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル及びフェニルからなる群から選択される1つの置換基で置換されているエチンであり、
より好ましくは、エテンは置換されていないか、若しくはC1-10アルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、ベンジル及びフェニルからなる群から選択される若しくは12つの置換基によって置換されており、
より好ましくは、エチンは置換されていないか、若しくはC1-10アルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、ベンジル及びフェニルからなる群から選択される1つの置換基によって置換されており、
R10、R11、m、Y1及びR50は上記、それらの全ての実施形態で定義された通りである。
【0060】
置換されたエテンの実施形態は、プロペン、エテン-1,1-ジイルジベンゼン及び3,3-ジメチルブタ-1-エンである。
【0061】
置換されたエチンの実施形態は、1-オクチンである。
【0062】
さらに好ましい実施形態において、COMPSUBSTは式(V)の化合物又は式(VI)の化合物から選択される。
【0063】
【化22】
[式中、
R43は、H若しくはCHであり、
R44は、C1-10アルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50からなる群から選択され、
R10、R11、m、Y1及びR50は上記、それらの全ての実施形態で定義された通りである。]
【0064】
好ましくは、ALKHALは式(III):
【0065】
R3-X(III)
[式中、
Xは、Br又はIであり、好ましくは、XはBrであり、
R3は、C1-20アルキル、又はアルキル鎖において、少なくとも1つの水素がF又はCl、好ましくはFによって置換されているC1-20アルキルであり、
より好ましくは、R3は、C1-15アルキル、又はアルキル鎖において、少なくとも1つの水素がF又はCl、好ましくはFによって置換されているC1-15アルキルであり、
さらにより好ましくは、R3は、C1-10アルキル、又はアルキル鎖において、少なくとも1つの水素がF又はCl、好ましくはFによって置換されているC1-10アルキルである。]
の化合物である。
【0066】
特に、R3は、全ての水素原子がCl若しくはFによって独立して置換されている、C1-20アルキル、より特別にはC1-15アルキル、さらにより特別にはC1-10アルキルであり、 好ましくは、すべての水素原子がFによって置換されている、すなわちペルフルオロアルキルであり、
特に、アルキルは直鎖のペルフルオロアルキルである。
【0067】
好ましくは、
Xは、Br又はIであり、
一実施形態において、XはIであり、
好ましい実施態様において、XはBrであり、
また、R3はその全ての実施形態におけるものである。
【0068】
好ましい実施態様において、ALKHALは、ペルフルオロアルキルハライド、FHC-Cl又はFHC-Brであり、好ましくは、ALKHALは、ペルフルオロアルキルブロマイド又はヨーダイト、FHC-Cl又はFHC-Brであり、
好ましくは、XはBr又はIであり、及び
R3は、ペルフルオロC1-20アルキルであるか、若しくは
ALKHALは、FHC-Cl又はFHC-Brであり、
さらにより好ましくは、Xは、Br又はIであり、及び
R3は、ペルフルオロC1-15アルキルであるか、若しくは
ALKHALは、FHC-Cl又はFHC-Brであり、
特にXは、Br又はIであり、及び
R3は、ペルフルオロC1-10アルキルであるか、若しくは
ALKHALは、FHC-Cl又はFHC-Brである。
【0069】
特に、ALKHALは、F2110-I、F17-I、F13-I、F-I、FC-I、F2110-Br、F17-Br、F13-Br、F-Br、FC-Br、FC-Cl、FHC-Cl及びFHC-Brからなる群から選択され、
より特別には、ALKHALは、n-F2110-I、n-F17-I、n-F13-I、n-F-I、FC-I、n-F2110-Br、n-F17-Br、n-F13-Br、n-F-Br、FC-Br、FC-Cl、FHC-Cl及びFHC-Brからなる群から選択される。
【0070】
さらに好ましい実施形態では、ALKHALは、F2110-I、F17-I、F13-I、F-I、FC-I、FC-Br、及びFHC-Brからなる群から選択され、
より特別には、ALKHALは、n-F2110-I、n-F17-I、n-F13-I、n-F-I、FC-I、FC-Br、及びFHC-Brからなる群から選択される。
【0071】
さらに好ましい実施形態では、ALKHALは、F2110-Br、F17-Br、F13-Br、F-Br、FC-Br、及びFHC-Brからなる群、
特にn-F2110-Br、n-F17-Br、n-F13-Br、n-F-Br、FC-Br、及びFHC-Brからなる群から選択される。
【0072】
反応は触媒CATの存在下又は使用下で行われ、CATはCo-L1/Cであり、これは炭素上に担持されたコバルト1,10-フェナントロリンであり、
好ましくは、CATはグラフェン上に担持されたコバルト1,10-フェナントロリンである。
【0073】
Co-L1/Cは、Westerhausら、Nature Chemistry、2013、5、537-543の補足情報におけるS1.Catalyst preparationに従って、特にその中の図1に模式的に記載されているように、すなわちCo(OAc).4HOを1,10-フェナントロリンと反応させ、それにより錯体Co(phen)(OAc)を形成し、これを次いでカーボンブラック上に吸収し、例えばアルゴン下、800℃で2時間維持して、Co-L1/Cを提供することにより調製され、Co-L1/Cは1,10-フェナントロリン/カーボンブラック上に担持された酸化コバルトを含む。
【0074】
好ましくは、CAT中のCoの量は、CATの総重量に基づいて、0.1~20%、より好ましくは0.5~15%、さらにより好ましくは1~12.5%、特に2~12.5%である。
【0075】
好ましくは、反応におけるCoの量は、ALKHALの重量に基づいて、0.001~20%、より好ましくは0.01~15%、さらにより好ましくは0.025~12.5%、特に0.05~10%である。
【0076】
好ましくは、1~20モル当量、より好ましくは1~15モル当量、さらにより好ましくは1~10モル当量のCOMPSUBSTを反応に使用し、モル当量はALKHALのモル量に基づく。
【0077】
反応の反応温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは20~150℃、さらにより好ましくは40~150℃、特に70~150℃、より特別には70~140℃、さらにより特別には100~140℃である。
【0078】
反応の反応時間は、好ましくは30分~72時間、より好ましくは6時間~60時間、さらにより好ましくは10時間~55時間である。
【0079】
好ましくは、反応は塩基BASの存在下で行われ、BASはCsCO、CsHCO、KCO、KPO、KHPO、KOAc、KOH、Mg(OH)、TEA、DBU、及びHNEtからなる群から選択される。
【0080】
より好ましくは、BASは、CsCO、KCO、KPO、KHPO、KOAc、KOH、Mg(OH)、TEA、DBU、及びHNEtからなる群から選択され、
さらにより好ましくは、BASはCsCO又はKCOであり、
特にBASはCsCOである。
【0081】
好ましくは、反応におけるBASの量は0.1~10モル当量、より好ましくは0.5~5モル当量、さらにより好ましくは0.75~2.5モル当量であり、モル当量はALKHALのモル量に基づく。
【0082】
好ましくは、反応は不活性雰囲気で行われる。好ましくは、不活性雰囲気は、好ましくはアルゴン、別の希ガス、低沸点アルカン、窒素及びそれらの混合物からなる群から選択される不活性ガスの使用によって達成される。
【0083】
低沸点アルカンは、好ましくはC1-3アルカン、すなわちメタン、エタン又はプロパンである。
【0084】
この反応は閉鎖系で行うこともできるし、閉鎖系で選択された温度によって生じる圧力で行うこともできる。前記不活性ガスで圧力を印加することも可能である。また、周囲圧で反応を行うことも可能である。例えばCFBrの場合のように、ALKHALがガス状の物質である場合、例えばALKHALを仕込む場合のように、所望の圧力を加えるためにALKHALを使用することができる。
【0085】
圧力が印加されると、好ましくは1~1000bar、より好ましくは1~500bar、さらにより好ましくは1~200bar、特に1~100bar、より特別には1~50barの圧力で反応が行われる。
【0086】
ALKHALがガス状物質である場合、例えばCFBrの場合、圧力を印加し、好ましくは反応を2~1000bar、より好ましくは2~500barの圧力、さらにより好ましくは2~200barの圧力、特に2~100barの圧力、より特別には2~50barの圧力で行う。
【0087】
周囲温度でのCFBrの蒸気圧は約14barであるため、CFBrをALKHALとして用いる場合は、最初に14bar以上の圧力で反応を行うことが好ましい。
【0088】
この反応は、溶媒SOLを用いて行うことができる。SOLは、好ましくは、アルカン、塩素化アルカン、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ニトリル、脂肪族アミド、スルホキシド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0089】
より好ましくは、SOLは、C5-8アルカン、C-C10シクロアルカン、塩素化C1-8アルカン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、バレロニトリル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサンイソプロパノール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0090】
さらにより好ましくは、SOLは、アセトン、MEK、ヘプタン、シクロヘキサン、DMSO、ジクロロメタン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、DMF、ジオキサン、THF、イソプロパノール、NMP、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0091】
特にSOLは、アセトン又はメチルエチルケトンであり、
より特別には、SOLは、アセトンである。
【0092】
また、COMPSUBSTを、基材及び溶媒として、同時に使用することも可能である。
【0093】
代替として、溶媒の不存在で、すなわち「物質中」においても反応を行うことができる。この場合、好ましくは、COMPSUBSTが溶媒として機能する。この手順は、特に、室温で液体であるか、又は40℃未満の低融点を有する化合物COMPSUBSTに適用可能である。
【0094】
SOLの量は、ALKHALの重量の好ましくは0.1~100倍、より好ましくは1~50倍、さらにより好ましくは1~25倍、特に1~15倍である。
【0095】
反応後、ALKYLCOMPSUBSTは、当業者にそれ自体既知である揮発性成分の蒸発、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、クロマトグラフィー及びそれらの任意の組合せなどの標準的な方法によって単離することができる。
【0096】
COMPSUBST、CAT、ALKHAL及びBASは市販されており、既知の手順に従って調製することができる。
【0097】
一実施形態において、反応は化合物COMPSALTの存在下で行われ、
COMPSALTは、NaI、KI、CsI、NaBr、KBr、CsBr、N(R30)(R31)(R32)(R33)I、及びN(R30)(R31)(R32)(R33)Brからなる群から選択され、
R30、R31、R32及びR33は同一であるか若しくは異なり、互いに独立してH及びC1-10アルキルからなる群から選択され、
好ましくは、R30、R31、R32及びR33は同一であるか若しくは異なり、互いに独立してH及びC2-6アルキルからなる群から選択され、
より好ましくは、COMPSALTは、NaI、(n-Bu)NI、NaBr、及び(n-Bu)NBrからなる群から選択される。
【0098】
反応は化合物COMPSALTの存在下で行われることが好ましく、XはBrである。
【実施例
【0099】
<収率>
本明細書で用いた収率は、ALKHALのモル量に基づく生成物ALKYLCOMPSUBSTのモル収率として与えられ、特に記載がない場合は、内部標準としてヘキサデカンを用いた定量的GC分析により、又はNMR収率として決定した。
【0100】
特に、収率=転化率×選択率。
【0101】
<転化率>
本明細書で使用する転化率は、残りのALKHALのモル量から計算し(例えば、ヘキサデカンを内部標準とする定量的GC分析を決定する)、特に転化率は、反応中に反応したALKHALの量を表す。
【0102】
<選択率>
選択率は、反応した出発物質に基づく所望の生成物ALKYLCOMPSUBSTのモル量を示す。
【0103】
<異性体の比率及びアルキル化の位置>
この比はNMR分光法により決定した。本明細書で与えられた選択率とは、特に記載のない限り、ALKYLCOMPSUBSTの全ての異性体の総量及びアルキル化の位置に常に言及する。
【0104】
<CATの調製>
Co-L1/C及びその調製は、Westerhausら、Nature Chemistry、2013、5、537-543、特にその中の図1及びDOI: 10.1038/NCHEM.1645の下で入手可能である本稿の補足情報における「S1.Catalyst preparation」の章に記載されており、これを以下に引用する。
【0105】
<S1.Catalyst preparation(触媒調製)> 酢酸コバルト(II)四水和物(Sigma-Aldrich、≧98%、126.8mg、0.5mmol)及び1,10-フェナントロリン(Sigma-Aldrich、≧99%,183.5mg,1.0mmol)(Co:フェナントロリン=1:2モル比)を、室温で約30分間エタノール(50mL)中で撹拌した。次いで、炭素粉末(689.7mg)(VULCAN(R) XC72R、Cabot Corporation Prod.Code XVC72R;CAS No.1333-86-4)を加え、全反応混合物を4時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、エタノールを真空で除去した。得られた固体試料を60℃で12時間乾燥した後、微細な粉末に粉砕した。その後、粉砕した粉末をセラミックるつぼに移し、オーブンに入れた。オーブンを約5mbarに排気した後、アルゴンでフラッシングした。オーブンを毎分25℃の速度で800℃に加熱し、アルゴン雰囲気下、800℃で2時間保持した。加熱のスイッチを切った後、オーブンを室温に戻した。全過程で常にオーブンにアルゴンを通した。Co-フェナントロリン/C(重量%)の元素分析:C=92.28、H=0.20、N=2.70、Co=3.05、O=1.32
【0106】
Westerhausら、Nature Chemistry、2013、5、537-543は、540頁で開示しているように、活性触媒系Co-L1/Cにおいて、粒径は、2~10nmの粒子の画分並びに20~80nmの範囲の粒子及び凝集体を伴う広いサイズ分布を有していた。ときには800nmまでのさらに大きな構造が存在した。表面近傍領域の全コバルト原子と全窒素原子の間の比は1:4.7であった。
【0107】
<プロトコル1:一般的な手順1「物質中」>
基材COMPSUBST(20当量、40mmol)、ALKHAL(1当量、2mmol)、Co-L1/C(好ましくは10mol%Co、400mg、3wt%Co-L1/C、特に明記しない限り、Westerhausら、Nature Chemistry、2013、5、537-543の補足情報におけるS1.Catalyst preparationによって調製)及びBAS、好ましくはCsCO(1当量、2mmol、652mg)の混合物を、磁気撹拌棒を有する厚壁パイレックス管に入れた。パイレックス管内のガス雰囲気を窒素でフラッシングし、スクリューキャップで管を閉じ、記載されているような反応温度、好ましくは130℃で、記載されているような反応時間、好ましくは24時間、攪拌しながら加熱した。得られた混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン、エーテル又はメタノール(10ml)で希釈した。固体は遠心分離(3000rpm、15分)又は濾過により除去した。得られた生成物溶液を、定量的GC分析(内部標準ヘキサデカン)又は内部標準1,2-ジフルオロベンゼン又は1,4-ジフルオロベンゼンを用いる19F-NMR分析により分析した。
【0108】
生成物の単離は、長鎖フルオロアルキル鎖(10個以上の炭素原子を含むアルキル鎖)に対し、FluoroFlash(R)逆相シリカゲル(Sigma Aldrich No.00866)及びグラジエント溶媒溶出(1.MeOH:HO(4:1v/v、10mL)2.MeOH(100%、10mL)3.アセトン(100%、10mL)を用いるピペットカラムクロマトグラフィにより、又は10個未満の炭素原子を含むフルオロアルキル鎖に対し、シリカゲル(Sigma Aldrich No.236802)及びグラジエント溶媒溶出(1.n-ペンタン(100%)2.ペンタン:ジエチルエーテル(1:1v/v、10mL)を用いる順相シリカゲルクロマトグラフィーにより行った。
【0109】
<プロトコル2:一般的な手順「溶液中」>
基材COMPSUBST(2当量、4mmol)、溶媒SOL(2ml)、ALKHAL(1当量、2mmol)、Co-L1/C(10mol%Co、400mg、3重量%Co/C、Westerhausら、Nature Chemistry、2013、5、537-543の補足情報におけるS1.Catalyst preparationによって調製)及びCsCO(2当量、4mmol、1.3g)の混合物を、磁気撹拌棒を有する厚壁パイレックス管に入れた。パイレックス管内のガス雰囲気を窒素でフラッシングし、スクリューキャップで管を閉じ、記載されているような反応温度、好ましくは130℃で、記載されているように反応時間、好ましくは24時間、攪拌しながら加熱した。得られた混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン、エーテル又はメタノール(10ml)で希釈した。固体は遠心分離(3000rpm、15分)又は濾過により除去した。得られた生成物溶液を、定量的GC分析(内部標準ヘキサデカン)又は内部標準1,2-ジフルオロベンゼン又は1,4-ジフルオロベンゼンを用いる19F-NMR分析により分析した。
【0110】
生成物の単離は、長鎖フルオロアルキル鎖(10個以上の炭素原子を含むアルキル鎖)に対し、FluoroFlash(R)逆相シリカゲル(Sigma Aldrich No.00866)及びグラジエント溶媒溶出(1.MeOH:HO(4:1v/v、10mL)2.MeOH(100%、10mL)3.アセトン(100%、10mL)を用いるピペットカラムクロマトグラフィにより、又は10個未満の炭素原子を含むフルオロアルキル鎖に対し、シリカゲル(Sigma Aldrich No.236802)及びグラジエント溶媒溶出(1.n-ペンタン(100%)2.ペンタン:ジエチルエーテル(1:1v/v、10mL)を用いる順相シリカゲルクロマトグラフィーにより行った。
【0111】
<プロトコル3:周囲温度でガス状であるALKHALを用いる「物質中」の一般的な手順3>
基材COMPSUBST(1当量、2.5mmol)、Co-L1/C(10mol%、0.25mmol、0.49g、3重量%Co/C、Westerhausら、Nature Chemistry、2013、5、537-543の補足情報におけるS1.Catalyst preparationによって調製)、及びCsCO(1.1当量、2.5mmol、0.894g)の混合物を、磁気撹拌されたParrオートクレーブ(Parr Instruments 4560シリーズ)に入れた。オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、ALKHALガスを用いてオートクレーブ内の圧力を15barに上昇させ、オートクレーブを密封し、攪拌しながら130℃で48時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した後、オートクレーブから圧力を開放し、ジエチルエーテル25ml及び1,2-ジフルオロベンゼン(300mg)で希釈した反応混合物を内標準物質として加えた。固体を遠心分離(3000rpm、15分)又は濾過により除去した。定量的GC-MS及び19F-NMR分析のためにアリコートを採取した。ろ液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー及びグラジエント溶出(1.ペンタン(100%、10ml)2.ペンタン:ジエチルエーテル(1:1v/v、10ml))により生成物を単離し、生成物ALKYLCOMPSUBSTを得た。
【0112】
<プロトコル4:周囲温度でガス状であるALKHALを用いる「溶液中」の一般的な手順4>
基材COMPSUBST(1当量、2.5mmol)、Co-L1/C(10mol%、0.25mmol、0.49g、3重量%Co/C、Westerhausら,Nature Chemistry,2013,5,537-543の補足情報のS1.Catalyst prparationに従って調製)、及びCsCO(1.1当量、2.5mmol、0.894g)及び5mlのアセトン(乾燥、Sigma Aldrich No.1.00299)の混合物を、磁気的に撹拌されたParrオートクレーブ(Parr Instruments 4560シリーズ)に入れた。オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、ALKHALガスを用いてオートクレーブ内の圧力を15barに上昇させ、オートクレーブを密封し、攪拌しながら130℃で48時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した後、オートクレーブから圧力を開放し、25mlのジエチルエーテル及び1,2-ジフルオロベンゼン(300mg)で希釈した反応混合物を内部標準として加えた。固体は遠心分離(3000rpm、15分)又は濾過により除去した。定量的GC-MS及び19F-NMR分析のためにアリコートを採取した。ろ液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー及びグラジエント溶出(1.ペンタン(100%、10ml)2.ペンタン:ジエチルエーテル(1:1v/v、10ml))により生成物を単離し、生成物ALKYLCOMPSUBSTを得た。
【0113】
[実施例1:1,3,5-トリメトキシベンゼン]
1,3,5-トリメトキシベンゼン(1当量、2.5mmol,0.420g)、Co-L1/C(10mol%、0.25mmol、0.49g、3重量%Co/C、Westerhausら,Nature Chemistry,2013,5,537-543の補足情報のS1.Catalyst prparationに従って調製)、及びCsCO(1.1当量、2.5mmol、0.894g)及び5mlのアセトン(乾燥、Sigma Aldrich No.1.00299)の混合物を、磁気的に撹拌されたParrオートクレーブ(Parr Instruments 4560シリーズ)に入れた。オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、CFBrガスを用いてオートクレーブ内の圧力を15barに上昇させ、オートクレーブを密封し、攪拌しながら130℃で48時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した後、オートクレーブから圧力を開放し、25mlのジエチルエーテル及び1,2-ジフルオロベンゼン(300mg)で希釈した反応混合物を内部標準として加えた。固体は遠心分離(3000rpm、15分)又は濾過により除去した。定量的GC-MS及び19F-NMR分析のためにアリコートを採取した。ろ液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー及びグラジエント溶出(1.ペンタン(100%、10ml)2.ペンタン:ジエチルエーテル(1:1v/v、10ml))により、基材1,3,5-トリメトキシベンゼンをベースとする1,3,5-トリメトキシ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.5mmol、343mg、収率58%)及び1,3,5-トリメトキシ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.1mmol、338mg、収率42%)を得た。生成物の同定は、HRMS EI(m/z)を用いて確認し、[M]+はC1011に対し、計算値236.06603、実測値236.06621及びC1110に対し、計算値304.05341、実測値304.05351であった。
【0114】
[実施例2]
BASはCsCOであった。
【0115】
転化率、選択率及び収率はそれぞれの制限試薬の消費量に基づく。プロトコル1(ニート)の場合、出発物質は溶媒でもあるので、フルオロアルキル試薬は制限的であり、収率はそれに基づいている。
【0116】
表1及び表2では、以下の略語を使用する。
ac:アセトン
CONV:転化率
PROT:プロトコル
SEL:選択率
SOL:溶媒
T:処理温度
t:処理時間
特に記載のない限り、ALKHALは直鎖を有する。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
[実施例3]
#はエントリー番号を与える。
【0120】
CSはCOMPSUBSTを意味する。
AHはALKHALを意味する。
ACSは、ALKYLCOMPSUBSTを意味する。
YDは収率を意味する。
ISは異性体を意味する。
REMは備考を意味する。観察結果を与え、構造及び収率の測定に用いた分析法を記載したところである。GC-MSは、質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィーを意味する。NMRは19F-NMRであった。
【0121】
表3の反応はプロトコル1に従って行った。
反応時間が20時間であったエントリー6を除き、反応時間は16時間であった。
BASはCsCOであった。
CATは5重量%Co-L1/Cであった。
全てのアルキル鎖は、特に記載のない限り、直鎖状のアルキル鎖である。
収率は観察されたあらゆる生成物又は異性体の合計収率であった。
【0122】
【表3】