(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】船舶上の低温流体を貯蔵及び輸送するためのシステム
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20230201BHJP
F17C 3/04 20060101ALI20230201BHJP
B63B 25/08 20060101ALI20230201BHJP
B63J 2/08 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B63B25/16 P
F17C3/04 A
B63B25/08 G
B63J2/08 A
B63B25/16 103
(21)【出願番号】P 2020543966
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 FR2019050301
(87)【国際公開番号】W WO2019162594
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-11-24
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】コロー セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ドラノエ セバスティアン
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0363253(US,A1)
【文献】特表2010-539405(JP,A)
【文献】特表2017-512953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0138536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
F17C 3/04
B63B 25/08
B63J 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(1)上の低温流体を貯蔵及び輸送するための設備であって、
二相的な液相-蒸気相平衡の状態の低温流体を貯蔵するよう構成された密閉断熱タンク(2)と、
密閉ライン(14)と、を備え、
前記密閉断熱タンク(2)は天井壁を有し、
前記天井壁は、当該天井壁の厚さ方向に沿って前記密閉断熱タンク(2)の外部から内部に、1次断熱バリア(11)と、前記低温流体と接触するよう構成された1次密閉メンブレン(10)と、を備え、
前記密閉ライン(14)は、前記密閉断熱タンク(2)の内部から外部に前記低温流体の蒸気相を排出するための通路を画定するように前記密閉断熱タンク(2)の前記天井壁を貫通しており、
前記密閉ライン(14)は、下部(15)及び上部(16)を備え、
前記下部(15)は、前記密閉断熱タンク(2)の前記天井壁の内部に位置する第1端と、前記密閉断熱タンク(2)の前記天井壁の外部に位置する第2端と、を前記天井壁の厚さ方向に有し、
前記上部(16)は、前記下部(15)の前記第2端に固定されており、
前記低温流体と接触する前記下部(15)は、低熱膨張係数を有する合金から構成されており、
前記上部(16)はステンレス鋼から構成されており、
前記低熱膨張係数を有する合金は、前記ステンレス鋼よりも熱膨張係数が低く、
前記1次密閉メンブレン(10)は前記密閉ライン(14)の周囲において前記密閉ライン(14)の前記下部(15)にしっかりと固定されている、設備。
【請求項2】
前記密閉ライン(14)の前記下部(15)及び前記1次密閉メンブレン(10)は、熱膨張係数が1.2×10
-6から2.0×10
-6K
-1の間である鉄ニッケル合金から構成されている、請求項1に記載の設備。
【請求項3】
前記下部(15)はフランジリング(17)を介して前記1次密閉メンブレン(10)にしっかりと溶接されている、請求項1又は2に記載の設備。
【請求項4】
前記密閉断熱タンク(2)の前記天井壁は、前記天井壁の厚さ方向において前記1次断熱バリア(11)の外に、2次断熱バリア(13)及び2次密閉メンブレン(12)を備える、請求項1~3の何れか一項に記載の設備。
【請求項5】
前記1次断熱バリア(11)及び前記2次断熱バリア(13)は、各々、複数の断熱ケーソン(18)から構成されており、
前記密閉ライン(14)は、前記1次断熱バリア及び前記2次断熱バリアの各々の前記複数の断熱ケーソン(18)のうちの1つを通過している、請求項4に記載の設備。
【請求項6】
前記1次密閉メンブレン(10)及び/又は前記2次密閉メンブレン(12)は、複数の細長のストレーキ(20)を備え、
前記複数の細長のストレーキ(20)の立ち上がり縁同士が前記ストレーキの長手方向において縁と縁が合うように溶接されており、
各前記ストレーキ(20)は、前記長手方向にある2つの前記立ち上がり縁間に平坦領域を有し、
前記密閉ライン(14)は、前記ストレーキ(20)の前記平坦領域を介して前記1次密閉メンブレン及び/又は前記2次密閉メンブレン(12)を通過している、請求項4又は5に記載の設備。
【請求項7】
前記1次密閉メンブレン(10)及び/又は前記2次密閉メンブレン(12)の前記ストレーキ(20)は、補強部(32)を有し、
前記補強部(32)は、前記ストレーキ(20)の他の部分よりも厚さが大きいとともに、2つの長手方向立ち上がり縁間に平坦領域を有し、
前記密閉ライン(14)は、前記補強部(32)の前記平坦領域を通過している、請求項6に記載の設備。
【請求項8】
前記設備は、前記密閉ライン(14)を径方向に間隔を空けて囲むシース(21)であって、前記密閉ライン(14)の前記上部(16)に固定されたシース(21)を備え、
前記シース(21)は、前記上部(16)から少なくとも前記2次密閉メンブレン(12)まで延在しており、
前記2次密閉メンブレン(12)は前記シース(21)の全周において前記シース(21)にしっかりと固定されている、請求項4~7の何れか一項に記載の設備。
【請求項9】
前記シース(21)は、フランジリング(17)を介して前記2次密閉メンブレン(12)に溶接されている、請求項8に記載の設備。
【請求項10】
前記密閉断熱タンク(2)の前記天井壁は、前記天井壁の厚さ方向において前記1次断熱バリア(11)の外に、2次断熱バリア(13)及び2次密閉メンブレン(12)を備え、
前記1次密閉メンブレン(10)及び/又は前記2次密閉メンブレン(12)は、複数の細長のストレーキ(20)を備え、
前記複数の細長のストレーキ(20)の立ち上がり縁同士が前記ストレーキの長手方向において縁と縁が合うように溶接されており、
各前記ストレーキ(20)は、前記長手方向にある2つの前記立ち上がり縁間に平坦領域を有し、
前記密閉ライン(14)は、前記ストレーキ(20)の前記平坦領域を介して前記1次密閉メンブレン及び/又は前記2次密閉メンブレン(12)を通過しており、
前記フランジリング(17)は、前記ストレーキ(20)よりも厚さが大きい、請求項3
又は請求項9に記載の設備。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の設備を備えた船舶(1)であって、
前記天井壁は前記船舶(1)の中間デッキ(8)の底表面に取り付けられている、船舶。
【請求項12】
前記密閉ライン(14)は、前記下部(15)から離れた位置にある前記上部(16)の端部上に蛇腹状のコンペンセータ(25)を備え、
前記コンペンセータ(25)は、前記船舶(1)の上デッキ(9)の上表面に前記密閉ライン(14)を確実に固定するように構成され、
前記コンペンセータ(25)には、前記密閉ライン(14)の熱収縮を可能にするように構成されたコルゲーションが設けられている、請求項11に記載の船舶(1)。
【請求項13】
前記密閉ライン(14)には、前記密閉ライン(14)の前記上部(16)の一部を囲むとともに前記船舶(1)の前記中間デッキ(8)と前記船舶(1)の上デッキ(9)との間に位置する断熱スリーブ(26)が設けられている、請求項11又は12に記載の船舶(1)。
【請求項14】
前記中間デッキ(8)及び前記上デッキ(9)は開口(27,28)を有し、
前記開口(27,28)の直径は、前記密閉ライン(14)の前記上部(16)の外径よりも大きく、
前記密閉ライン(14)は、前記中間デッキの前記開口(27)及び前記上デッキの前記開口(28)を介して前記中間デッキ(8)及び前記上デッキ(9)それぞれを通過している、請求項13に記載の船舶(1)。
【請求項15】
前記中間デッキ(8)は、前記中間デッキ(8)の上表面上に縁材(22)を有し、
前記縁材(22)は前記中間デッキ(8)の前記開口(27)を囲み、当該縁材(22)を前記密閉ライン(14)が通過しており、
前記密閉ライン(14)は前記縁材(22)に固定されている、請求項14に記載の船舶(1)。
【請求項16】
請求項11~15の何れか一項に記載の船舶(1)に対して荷役するための方法であって、
浮体若しくは陸上貯蔵設備(44)から前記船舶(1)のタンク(2)に又は前記船舶(1)のタンク(2)から浮体若しくは陸上貯蔵設備(4)に、断熱パイプライン(40,43,46,48)を介して低温流体を送る工程を備える、方法。
【請求項17】
低温流体を輸送するシステムであって、
請求項11~15の何れか一項に記載の船舶(1)と、
前記船舶(1)の二重船体(7)内に設置された前記密閉断熱タンク(2)を浮体又は陸上貯蔵設備(44)に接続するよう配された断熱パイプライン(40,43,46,48)と、
前記浮体若しくは陸上貯蔵設備から前記船舶(1)の前記密閉断熱タンク(2)に又は前記船舶(1)の前記密閉断熱タンク(2)から前記浮体若しくは陸上貯蔵設備に、前記断熱パイプラインを介して低温流体の流れを送るためのポンプと、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶上の低温流体を貯蔵及び/又は輸送するため設備であって、1つ又は複数の密閉断熱メンブレンタンクを備える設備の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク又は複数のタンクは、低温流体を輸送するように又は船舶を推進させるための燃料として使用される低温流体を受け取るように構成することができる。
【0003】
液化天然ガス輸送船舶は、貨物を貯蔵するための複数のタンクを有する。液化天然ガスは、大気圧で約-162℃でしたがって二相的な液相-蒸気相平衡状態でこれらのタンクに貯蔵され、タンクの壁を介して与えられる熱流束により蒸発しやすくなっている。
【0004】
タンク内部で過剰圧力が生じることを避けるために各タンクは液化天然ガスの蒸発によって生成された蒸気を排出するための密閉排出ラインと結合されている。このような密閉蒸気排出ラインは例えば文献WO2013093261に記載されている。このラインはタンクの壁を通過してタンクの内部空間の上部に出てくるよう構成され、タンクの内部空間とタンク外に配置された蒸気コレクタとの間の蒸気通路を画定する。このように回収された蒸気を、タンク内に流体を再投入するために再液化装置に、あるいは船舶のデッキ上に設けられたエネルギー生産設備又は排出ライザに送ることができる。
【0005】
一部の座礁状態において、タンクの充填レベルが最大のときに船舶が大きな傾斜角度(list inclination)及び/又はトリム傾斜角度の姿勢で座礁した場合、蒸気排出ラインが液相にさらされてタンク内に貯蔵された蒸気相と接触しなくなるというリスクがある。こうした状況では、蒸気相の分離した気孔がタンク内部に形成されやすくなる。このような気孔はタンクに損傷を与え得る及び/又は上記の蒸気排出ラインを介してタンクから液相を排出させ得る過剰圧力を生じさせる可能性がある。
【0006】
しかしながら、従来技術による密閉気体排出ラインは寸法が大きく、非常に複雑で、大きな温度のばらつきに適したものではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の背景にある発想は、比較的シンプルでかつ周囲温度と低温流体貯蔵温度の間の温度のばらつきに耐えることができる密閉ラインをメンブレンタンクの壁に通すための解決手段を提案するというものである。
【0008】
本発明の背景にある別の発想は、特に船体梁の湾曲といった海上輸送における船舶の変形に耐えることができる解決手段を提案するというものである。
【0009】
本発明の背景にある別の発想は、既存の貯蔵タンク構造に容易に適用可能な解決手段を提案するというものである。
【0010】
本発明の背景にある別の発想は、上述の蒸気相の分離した気孔がタンク内部から排出されずにタンク内部で形成されるリスクを低減可能な船舶上の低温流体を貯蔵及び輸送するための設備を提案するというものである。
【0011】
一実施形態によれば、本発明は船舶上の低温流体を貯蔵及び輸送するための設備に関し、前記設備は、二相的な液相-蒸気相平衡の状態の低温流体を貯蔵するよう構成された密閉断熱タンクと、密閉ラインと、を備え、前記密閉断熱タンクは天井壁を有し、前記天井壁は、当該天井壁の厚さ方向に沿って前記密閉断熱タンクの外部から内部に、1次断熱バリアと、前記低温流体と接触するよう構成された1次密閉メンブレンと、を備え、前記密閉ラインは、前記密閉断熱タンクの内部から外部に前記低温流体の蒸気相を排出するための通路を画定するように前記密閉断熱タンクの前記天井壁を貫通しており、前記密閉ラインは下部及び上部を備え、前記下部は、前記密閉断熱タンクの前記天井壁の内部に位置する第1端と、前記密閉断熱タンクの前記天井壁の外部に位置する第2端と、を前記天井壁の厚さ方向に有し、前記上部は前記下部の前記第2端に固定されており、前記下部は、低熱膨張係数を有する合金から構成されており、前記1次密閉メンブレンは前記密閉ラインの周囲において前記密閉ラインの前記下部にしっかりと固定されている。
【0012】
これらの特徴により、前記壁を貫通する密閉ラインによって排出通路を画定することで蒸気相の分離した気孔がタンク内部に形成されるリスクを低減することが可能となる。さらに、低温流体と接触する密閉ラインの下部が低熱膨張係数を有する材料から構成されていることによって、密閉ラインの変形を抑制することで密閉ラインが周囲温度と低温流体貯蔵部温度の間の温度のばらつきに耐えることが可能となる。
【0013】
他の有利な実施形態によれば、そのような設備は以下の特徴のうちの1つ又は複数を有することができる。
【0014】
一実施形態によれば、密閉ラインは天井壁の端部において天井壁を通過する。
【0015】
一実施形態によれば、密閉ラインは第1のラインであり、貯蔵設備は第1のラインと類似した第2のラインを備えており、第2のラインは、第1のラインが通過している端部とは反対側にある端部において天井壁を通過している。
【0016】
一実施形態によれば、貯蔵設備は天井壁の中央に位置するガスドームを備えている。
【0017】
一実施形態によれば、密閉ラインの下部の第1端は、タンク内部に配されて液化ガスの蒸気相を回収する回収端である。そのようなタンク内の蒸気相を回収するためのラインは、比較的小さい直径、例えば100mm未満の直径を有している。
【0018】
一実施形態によれば、密閉ラインの上部の第2端は、タンクのガスドーム及び/又はメインガスコレクタ及び/又はタンクの圧力リリーフバルブに連結されている。
【0019】
一実施形態によれば、密閉ラインの下部及び1次密閉メンブレンは熱膨張係数が1.2×10-6K-1から2.0×10-6K-1の間である鉄ニッケル合金又は膨張係数が典型的には7×10-6K-1のオーダーの高マンガン含有鉄合金から構成されている。
【0020】
一実施形態によれば、前記下部は、Niを36重量パーセント含む鉄ニッケル合金から構成されている。
【0021】
一実施形態によれば、前記上部はステンレス鋼から構成されている。
【0022】
一実施形態によれば、前記上部は前記下部よりも厚さが大きい。
【0023】
一実施形態によれば、前記下部はフランジリングを介して1次密閉メンブレンにしっかりと溶接されている。
【0024】
したがって、密閉ラインの下部と1次密閉メンブレンをフランジリングによってしっかりと連結することができる。
【0025】
一実施形態によれば、タンクの天井壁は、天井壁の厚さ方向において1次断熱バリアの外に、2次断熱バリア及び2次密閉メンブレンを備える。
【0026】
これらの特徴によって、1次密閉メンブレン及び2次密閉メンブレンの2つの密閉メンブレンの層と、1次断熱バリア及び2次断熱バリアの2つの断熱バリアの層により、貯蔵タンクの断熱性及び密閉性を確保することができる。
【0027】
一実施形態によれば、1次密閉メンブレン及び2次密閉メンブレンは、熱膨張係数が1.2×10-6K-1から2.0×10-6K-1の間である、Niを36重量パーセント含む鉄ニッケル合金から構成されており、あるいは、膨張係数が典型的には7×10-6K-1のオーダーの高マンガン含有鉄合金から構成されている。
【0028】
一実施形態によれば、1次断熱バリア及び2次断熱バリアは、各々、複数の断熱ケーソンから構成されており、密閉ラインは、1次断熱バリア及び2次断熱バリアの各々の複数の断熱ケーソンのうちの1つを通過している。
【0029】
一実施形態によれば、密閉ラインはケーソンの中央領域においてケーソンを通過している。
【0030】
一実施形態によれば、複数のケーソンのうちのケーソンは格子状ネットワークを形成する合板シートから構成されており、ケーソンは、格子状ネットワークの内部に、膨張パーライト又はグラスウール又は他の断熱材料が充填されている。
【0031】
一実施形態によれば、1次密閉メンブレン及び/又は2次密閉メンブレンは複数の細長のストレーキを備え、複数の細長のストレーキの立ち上がり縁同士がストレーキの長手方向において縁と縁が合うように溶接されており、各ストレーキは、長手方向にある2つの立ち上がり縁間に平坦領域を有し、密閉ラインは細長のストレーキの平坦領域を介して1次密閉メンブレン及び/又は2次密閉メンブレンを通過している。
【0032】
一実施形態によれば、1次密閉メンブレン及び/又は2次密閉メンブレンのストレーキは補強部を有し、補強部は、ストレーキの他の部分よりも厚さが大きいとともに、2つの長手方向立ち上がり縁間に平坦領域を有し、密閉ラインは補強部の平坦領域を通過している。
【0033】
したがって、補強部によって、1次密閉メンブレン又は2次密閉メンブレンと密閉ライン又はシースとの間の結合部がそれぞれ強固となり補強される。
【0034】
例えば、ストレーキの厚さが1mm未満、例えば0.7mmの場合、補強部の厚さは1mmと等しいかそれ以上であり、例えば1.5mmである。
【0035】
一実施形態によれば、密閉ラインは、補強部の平坦領域を介して1次密閉メンブレン及び/又は2次密閉メンブレンの補強部を通過している。
【0036】
これらの特徴によって、密閉ラインとストレーキをしっかりと連結することがより簡単な領域内で密閉ラインが補強部を通過する。さらに、これによってストレーキの立ち上がり縁と密閉ラインの干渉を回避することができる。
【0037】
一実施形態によれば、前記設備は、密閉ラインを径方向に間隔を空けて囲むシースであって、密閉ラインの上部に固定されたシースを備え、シースは上部から少なくとも2次密閉メンブレンまで延在しており、2次密閉メンブレンはシースの全周においてシースにしっかりと固定されている。
【0038】
したがって、密閉ラインを囲むシース上で2次密閉メンブレンの固定がされており、シース自体は上部に固定されていることで、密閉ラインの下部全体に沿って二重壁を設けることができるので、密閉ラインの破損時に低温流体が貯蔵タンクから吐き出されることを回避することができる。したがってシースは2次密閉メンブレンの連続性を確保する機能を果たす。さらに、密閉ラインの上部にシースを固定することによってメンテナンス作業が簡単になる。最後に、シースと密閉ラインの間の径方向の間隔によって、シースの柔軟性(密閉ラインよりも大きい)に起因するシースのより大きな変形を考慮に入れることができる。
【0039】
一実施形態によれば、シースは上部から少なくとも2次密閉メンブレンまで、そして2次密閉メンブレンを超えて延在している。
【0040】
一実施形態によれば、2次密閉メンブレンはシースの全周においてシースにしっかりと溶接されている。
【0041】
一実施形態によれば、シースと密閉ラインの間には断熱材の詰め物が設けられている。
【0042】
一実施形態によれば、シースはフランジリングを介して2次密閉メンブレンに溶接されている。
【0043】
したがって、フランジリングによって密閉ラインの下部を2次密閉メンブレンにしっかりと連結することができる。
【0044】
一実施形態によれば、(複数の)フランジリングは、ストレーキよりも厚さが大きい。例えば、ストレーキの厚さが1mm未満、例えば0.7mmの場合、フランジリングの厚さは1~2mmであり、好ましくは1.5mmである。
【0045】
したがって、フランジリングによって、1次密閉メンブレン又は2次密閉メンブレンと密閉ライン又はシースとの間の結合部がそれぞれ強固となり補強される。
【0046】
一実施形態によれば、フランジリングは、好適には環状かつ平坦な形の基部と、基部から突出したフランジと、を有する。基部はストレーキよりも厚さが大きくてもよく、好ましくは1~2mmの厚さ、より好ましくは1.5mmの厚さを有してもよい。フランジはストレーキよりも厚さが大きくてもよく、好ましくは1~2mmの厚さ、より好ましくは1.5mmの厚さを有してもよい。
【0047】
一実施形態によれば、シースは、熱膨張係数が1.2×10-6K-1から2.0×10-6K-1の間である、Niを36重量パーセント含む鉄ニッケル合金から構成されており、あるいは、膨張係数が典型的には7×10-6K-1のオーダーの高マンガン含有鉄合金から構成されている。
【0048】
一実施形態によれば、本発明は、本発明に係る設備を備えた船舶であって、前記天井壁が船舶の中間デッキの底表面に取り付けられている船舶を提供する。
【0049】
一実施形態によれば、密閉ラインは、下部から離れた位置にある上部の端部上に蛇腹状のコンペンセータを備え、コンペンセータは船舶の上デッキの上表面に密閉ラインを確実に固定するように構成され、コンペンセータには密閉ラインの熱収縮を可能にするように構成されたコルゲーションが設けられている。
【0050】
これらの特徴により、蛇腹状のコンペンセータによって密閉ライン、特にその上部が、その固定位置において連結の遊びを有することで、密閉ラインは、密閉ライン又は連結部の破損のリスクなしに熱収縮/熱膨張可能となる。
【0051】
一実施形態によれば、蛇腹状のコンペンセータはステンレス鋼から構成されている。
【0052】
一実施形態によれば、密閉ラインには、密閉ラインの上部の一部を囲むとともに船舶の中間デッキと船舶の上デッキとの間に位置する断熱スリーブが設けられている。
【0053】
したがって、断熱スリーブによって上部の一部において熱を遮断することで、デッキ間、即ちこの位置にある機器がダメージを受けるリスクがあるデッキ間の中に低温流体の低い温度が伝わらないようにすることができる。
【0054】
一実施形態によれば、中間デッキ及び上デッキは開口を有し、この開口の直径は密閉ラインの上部の外径よりも大きく、密閉ラインは中間デッキの開口及び上デッキの開口を介して中間デッキ及び上デッキそれぞれを通過している。
【0055】
これらの特徴により、密閉ラインと、上デッキの開口及び中間デッキの開口と、の間に隙間が存在することとなり、これによって、密閉ラインと2つのデッキ間に取り付けの遊びを与えることができる。とりわけ、取り付けの遊びがあることによって、取り付けを簡単化できるとともに、密閉ラインにダメージを与えずにデッキの変形を許容することができる。
【0056】
一実施形態によれば、中間デッキは中間デッキの上表面上に縁材を有し、縁材は中間デッキの開口を囲んでおり、密閉ラインが縁材を通過しており、密閉ラインは縁材に固定されている。
【0057】
したがって、縁材によって密閉ラインの中間デッキへの固定をオフセットすることができるので、固定に柔軟性が与えられる。このように固定をオフセットすることによって、密閉ラインへのダメージを回避することで密閉ラインが中間デッキの変形をよりサポートすることが可能となる。
【0058】
一実施形態によれば、密閉ラインは周囲全体において縁材にしっかりと溶接されている。
【0059】
一実施形態によれば、縁材は上部と、上部を中間デッキに連結する側部と、を有し、密閉ラインは縁材の上部に固定されている。
【0060】
一実施形態によれば、縁材は金属から構成されており、特にステンレス鋼から構成されている。
【0061】
一実施形態によれば、本発明は、本発明に係る船舶に対して荷役するための方法を提供し、この方法は、浮体若しくは陸上貯蔵設備から船舶のタンクに又は船舶のタンクから浮体若しくは陸上貯蔵設備に断熱パイプラインを介して低温流体を送る工程を備える。
【0062】
一実施形態によれば、本発明は低温流体を輸送するシステムを提供し、このシステムは、本発明に係る船舶と、船舶の二重船体内に設置された密閉断熱タンクを浮体又は陸上貯蔵設備に接続するよう配された断熱パイプラインと、浮体若しくは陸上貯蔵設備から船舶の密閉断熱タンクに又は船舶の密閉断熱タンクから浮体若しくは陸上貯蔵設備に、断熱パイプラインを介して低温流体の流れを送るためのポンプと、を備える。
【0063】
説明を目的としており限定を意図していない本発明の数々の具体的な実施形態に関する以下の記載を図面を参照して読むことによって、本発明はより良く理解され、本発明のさらなる目的、詳細、特徴及び利点がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】低温流体貯蔵タンクを備える船舶の切り取り略図である。
【
図2】船舶上の低温流体を貯蔵及び輸送するための設備の部分略図である。
【
図3】
図2の貯蔵設備の詳細IIIの部分の拡大略図である。
【
図4】
図2の貯蔵設備の詳細IVの部分の拡大略図である。
【
図5】タンク壁、特に2次断熱バリア及び2次密閉メンブレンの展開図である。
【
図6】タンク壁、特に1次断熱バリア及び1次密閉メンブレンの展開図である。
【
図7】傾斜した低温流体貯蔵タンクの断面略図である。
【
図8】低温流体貯蔵タンクを備える船舶及びこのタンクに対する荷役を行うためのターミナルの切り取り略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
慣例に倣って、「上部」、「下部」、「上」及び「下」との用語は、船舶1のタンク2から上デッキ9に向かう方向での、要素又は要素の一部の別の要素又は要素の一部に対する相対位置を定義するために用いられる。
【0066】
図1は、特に液化天然ガスといった低温流体を貯蔵及び輸送するための設備であって複数の密閉断熱タンク2を有する設備を備えた船舶1を示す。各タンク2は、船舶1の上デッキ9の上に設けられた、関連するタンク2の内部に過剰圧力を生じさせないように蒸気相の気体を逃がす排出ライザ4に関連付けられている。
【0067】
船舶1の後部には、ディーゼル燃料の燃焼又はタンク2からの蒸発ガスの燃焼によって動作可能なハイブリッド供給蒸気タービンを通常備える機械室3がある。
【0068】
タンク2は船舶1の長手方向に沿う長手方向寸法を有する。各タンク2は、その長手方向端部の各々において、「コファダム」6として知られる密閉分離空間を区切る一対の横隔壁5によって境されている。
【0069】
したがってタンクは横コファダム6によって互いに分離されている。したがって、一方で船舶1の二重船体7から構成されるとともに他方でタンク2を境するそれぞれのコファダム6の横隔壁5のうちの1つから構成される支持構造の内部で、各タンク2が形成されていることがわかる。
【0070】
図2は、タンク2の内部から外部に低温流体の蒸気相を通す排出通路を画定可能なライン14を概略的に示し、ライン14は、タンク2、船舶1の中間デッキ8及び船舶1の上デッキ9を連続的に通過する。
【0071】
密閉断熱タンク2は中間デッキ8に取り付けられた天井壁を有し、この壁は、この壁の厚さ方向においてタンク2の外部から内部に向かって、2次断熱バリア13と、2次密閉メンブレン12と、1次断熱バリア11と、1次密閉メンブレン10と、を有する。
【0072】
ライン14は下部15及び上部16から形成されている。下部15は、膨張係数が典型的には1.2×10-6K-1から2×10-6K-1の間の鉄とニッケルの合金から形成されているか、あるいは膨張係数が典型的には7×10-6K-1の即ち低熱膨張係数の高マンガン含有鉄合金から形成されている。下部15は、第1端がタンク2の内部に位置し、第2端がタンク2の外部に位置する。
【0073】
上部16は、ステンレス鋼から形成され、第1端において下部15の第2端に溶接されており、これによりライン14の連続性が得られる。上部16の第2端は船舶1のパイプラインに連結されている。上部16は下部15よりも壁厚が大きい。
【0074】
ライン14の下部15は、まず1次密閉メンブレン10及び1次断熱バリア11を通過する。1次密閉メンブレン10は下部15の全周にしっかりと溶接されており、これにより1次密閉メンブレン10の厳封の連続性が保証されている。
【0075】
シース21は、径方向に間隔を空けてライン14を囲むとともに、ライン14の上部16に固定されている。シースは、上部16から少なくとも2次密閉メンブレン12まで延在している。2次密閉メンブレン12はシース21の全周にしっかりと溶接されており、これにより2次密閉メンブレン12の厳封の連続性が保証されている。したがって、ライン14は、シース21を介して2次密閉メンブレン12及び2次断熱バリア13を通過する。
【0076】
したがって、下部15はシース21内で上部16に溶接されており、シース21によって、下部15が例えば溶接部においてダメージを受けた際に2次メンブレンの厳封が保証される。
【0077】
このように下部15は1次密閉メンブレン10の一部として機能し、一方でシース21は2次密閉メンブレン12の一部として機能する。したがって、ライン14においても、常に2つのメンブレンの層が存在していることとなる。
【0078】
次にライン14は中間デッキ開口27において船舶1の中間デッキ8を通過する。中間デッキ開口27は直径がシース21の外径よりも大きく、中間デッキ8がシース21及びライン14を変形させずに変形可能となるよう連結の遊びが存在するようになっている。
【0079】
中間デッキ8は、その上表面に縁材22を備える。縁材22は、上部23と、上部23を中間デッキ8に連結する側部24と、を備える。ライン14の上部16は縁材22の上部23を通過する。ライン14の上部16は全周において縁材22の上部23にしっかりと溶接されている。
【0080】
次にライン14は、中間デッキ8と上デッキ9との間に位置するデッキ間と呼ばれる空間を通過し、この空間ではラインは断熱スリーブ26で被覆されており、これによりライン14内に収容された低温ガスの低い温度によってデッキ間で大きな熱的な漏れが生じないようになっている。
【0081】
最終的にライン14は上デッキ開口28において船舶1の上デッキ9を通過する。上デッキ開口28は直径がライン14の外径よりも大きく、上デッキ9がライン14を変形させずに変形可能となるよう連結の遊びが存在するようになっている。
【0082】
ライン14は、下部15から離れた位置にある上部16の第2端において蛇腹状のコンペンセータ25を備える。コンペンセータによって、船舶1の上デッキ9の上表面にライン14が確実に固定される。蛇腹状のコンペンセータ25は、ライン14の熱収縮、特に下部15の合金と比べて膨張係数が高い材料であるステンレス鋼から作成された上部16の熱収縮を可能にするコルゲーションを有する。
【0083】
図3及び
図4は
図2に示す詳細III及び詳細IVの拡大図である。
【0084】
図3において、1次密閉メンブレン10のライン14への固定及び2次密閉メンブレン12のシース21への固定がはっきりと示されている。1次密閉メンブレン10は、基部及びフランジを有するフランジリング17を用いてライン14に固定されている。リング17のフランジはライン14に溶接されており、リング17の基部は1次密閉メンブレン10に溶接されており、これによりしっかりとした固定を達成できる。
【0085】
同様に、2次密閉メンブレン12は、基部及びフランジを有するフランジリング17を用いてシース21に固定されている。リング17のフランジはシース21に溶接されており、リング17の基部は2次密閉メンブレン12に溶接されており、これによりしっかりとした固定を達成できる。
【0086】
フランジリング17の基部は、とりわけ、内径及び外径を有する平坦環状形態とすることができる。フランジリング17のフランジはフランジリング17の基部の内径から突出している。フランジリングの基部及びフランジの厚さは1.5mmであり、1次密閉メンブレン10及び2次密閉メンブレン12の厚さである0.7mmよりも厚い。
【0087】
図4において、ライン14の下部15と上部16間の接続部及びシース21の上部16への固定がはっきりと示されている。ライン14の下部15の第2端と上部16の第1端とは、ライン14の2つの部分15,16の厚さが等しいところで溶接固定される。そのために、上部16の第1端の厚さを、上部16の厚さから下部15の厚さまで例えば線形的に減少させており、これにより、これら2つの部分15,16の溶接が簡単になるとともに固定強度が高まるよう構成されている。
【0088】
シース21は、上部16の第1端がちょうど終わる箇所にて上部16の全周に溶接されて上部16に固定され、これにより、上部16の厚さが最大でかつ上部16の第1端に近いポイントにおいてシース21が上部16に固定されることとなり、シース21が2次密閉メンブレン12として機能する必要のないところでシース21の長さが最小限となるように構成されている。
【0089】
図5及び
図6は、1次密閉メンブレン10及び2次密閉メンブレン12と1次断熱バリア11及び2次断熱バリア13の略図である。1次密閉メンブレン10及び2次密閉メンブレン12と1次断熱バリア11及び2次断熱バリア13は、特に文献WO2012072906A1に記載されたNO96方式技術によって製造されたものである。
【0090】
したがって、1次断熱バリア11及び2次断熱バリア13は、例えば、断熱ケーソン18と、断熱ケーソン18の厚さ方向に沿って離隔した互いに平行な底パネル及びカバーパネルと、前記厚さ方向に沿って延在するベアリング部19と、オプションで周辺仕切部と、断熱ケーソン内に収容された断熱裏張りと、によって形成されている。底パネル、カバーパネル、周辺仕切部及びベアリング部19は、例えば合板などの木材又は複合熱可塑性材料から作成されている。断熱裏張りは、グラスウール、コットンウール又はポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム若しくはポリ塩化ビニルフォームなどのポリマーフォーム又は粒状若しくは粉末材料(パーライト、バーミキュライト又はグラスウールなど)又はエアロゲルタイプのナノ多孔性材料から構成することができる。また、1次密閉メンブレン10及び2次密閉メンブレン12は、立ち上がり縁を有する金属ストレーキ20の連続的なシートを備えており、このストレーキ20はその立ち上がり縁によって断熱ケーソン18に固定された平行溶接支持部の上に溶接されている。金属ストレーキ20は、例えば、インバー(登録商標)から作成されており、即ち膨張係数が典型的には1.2×10-6K-1から2×10-6K-1の間の鉄とニッケルの合金又は膨張係数が典型的には7×10-6K-1の高マンガン含有鉄合金から形成されている。
【0091】
図5及び
図6において、ライン14が密閉メンブレン10,12及び断熱バリア11,13を通過する箇所がはっきりと示されている。ケーソン18の構造の脆化を避けるために、ライン14がケーソン18の端部においてケーソンを通過することは避けることが好ましい。好適には、ライン14は、複数のベアリング部19間のケーソン18の中央領域において1次断熱バリア11及び2次断熱バリア13を通過する。
【0092】
1次密閉メンブレン10とライン14をしっかり固定させること及び2次密閉メンブレン12とシース21をしっかり固定させることを容易にするために、ライン14がストレーキ20の立ち上がり縁において密閉メンブレンを通過することは避けることが好ましい。実際、縁が立ち上がっている領域は形状が複雑であるとともに2つの隣接ストレーキと支持ウェブを連結する溶接がすでに施されている。このような理由から、ライン14は、2つの立ち上がり縁間のストレーキ20の平坦領域を介して密閉メンブレン10,12を通過する構成となっている。
【0093】
ライン14が通過する1次密閉メンブレン10及び2次密閉メンブレン12のストレーキ20は、1次密閉メンブレン及び2次密閉メンブレンの連続性を維持するように補強部32を備えている。実際には、補強部32はライン14が通過するストレーキ20の一部に相当する。
【0094】
補強部32の厚さはストレーキ20のその他の部分の厚さよりも大きく、例えばストレーキの厚さ0.7mmと比べて厚さ1.5mmである。補強部32は、2つの長手方向立ち上がり縁の間にある平坦領域を備える。ライン14は、平坦領域を介して1次密閉メンブレン10の補強部32と2次密閉メンブレン12の補強部32とを通過している。シース21も平坦領域を介して2次密閉メンブレン12の補強部32を通過している。
【0095】
図7は、液化ガスが充填された、船舶1により輸送される密閉断熱タンク2を示し、船舶は例えば座礁によって15度傾斜している。
【0096】
通常の使用においては、船舶の傾斜がゼロ度であるときには、タンク2内に過剰圧力が生じることを回避するために、タンク2は、タンク2の天井壁をその中央で通過するガスドーム29を介して蒸発した液化ガスを排出する。
【0097】
船舶が15度傾斜して座礁した上記の場合では、ガスドーム29は液化ガス内に完全に浸かってしまい、もはや蒸発した液化ガスを排出するという機能を果たすことができなくなる。過剰圧力によるタンク2へのダメージを回避するために、天井壁の端部であってガスドーム29の両側に位置する2つのライン14が、天井壁を通過してタンク2内に配置されている。これらのライン14は次にエンジン室3及び/又は再液化装置にガスを運ぶ船舶1のメインガスコレクタ30に連結される。ライン14は圧力リリーフバルブ31にも連結されており、圧力リリーフバルブは圧力が過剰となったときに開いてガスの一部を排出ライザ4に送るよう構成されている。
【0098】
好適には、ライン14は、二重船体7の外部にあるガスドーム29を介してメインガスコレクタ30及び圧力リリーフバルブ31に連結されている。
【0099】
ガス排出ラインの数及び位置に関するその他の詳細はWO2016120540A1に記載されている。
【0100】
図8を参照すると、メタンタンカー船舶1の切り取り図において、船舶1の二重船体7に塔載された全体形状が角柱状の密閉断熱タンク2が示されている。
【0101】
それ自体知られているように、タンク2から又はタンク2に液化ガス貨物を輸送するために、船舶1の上デッキ9上に配置された荷役パイプライン40を適切なコネクタを用いて沖合ターミナル又はポートターミナルに接続することができる。
【0102】
図8は、荷役ステーション42、海中ライン43及び陸上設備44を有する沖合ターミナルの例を示す。荷役ステーション42は、可動アーム41及び可動アーム41を支えるライザ45を備える固定沖合設備である。可動アーム41は、荷役パイプライン40に接続可能な断熱可撓パイプ46の束を支持する。方向付け可能な可動アーム41は、メタンタンカーの全テンプレートに適応する。図示しない連結ラインがライザ45内部に延在している。荷役ステーション42は、陸上設備44からメタンタンカー1への積み込み又はメタンタンカー1から陸上設備44への積み降ろしを可能にする。陸上設備44は、液化ガス貯蔵タンク47と、海中ライン43によって荷役ステーション42に接続された連結ライン48と、を備える。海中ライン43は、荷役ステーション42と陸上設備44との間で例えば5kmなどの長距離にわたって液化ガスを輸送することを可能とし、これにより荷役作業中にメタンタンカー船舶1を陸地から長距離離れた位置に維持することができる。
【0103】
液化ガスの輸送に必要な圧力を生成するために、船舶1に搭載されたポンプ及び/又は陸上設備44に備えつけられたポンプ及び/又は荷役ステーション42に備えつけられたポンプが使用される。
【0104】
本発明について複数の具体的な実施形態に基づき記載したが、本発明はこれらに限定されず、記載したものと技術的に等価なもの全て及びこれらの組み合わせも本発明の範囲に含まれる。
【0105】
「備える」又は「含む」との動詞の使用及びその活用形は、特許請求の範囲に記載されたもの以外の構成要素又は工程の存在を除外するものではない。
【0106】
特許請求の範囲において、括弧内に記載された参照符号は何れも特許請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。