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特許72197732つの構成要素を結合するための方法及び結合装置、並びに2つの結合された構成要素の配置
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  • 特許-2つの構成要素を結合するための方法及び結合装置、並びに2つの結合された構成要素の配置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】2つの構成要素を結合するための方法及び結合装置、並びに2つの結合された構成要素の配置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230201BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20230201BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20230201BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
B29C65/02
B29C65/48
H05K3/32 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020544148
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2018081036
(87)【国際公開番号】W WO2019096770
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】102017126724.7
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519323089
【氏名又は名称】ナノワイヤード ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィッカー,サラ
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-141633(JP,A)
【文献】特開2009-123941(JP,A)
【文献】特開2005-294844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0081989(US,A1)
【文献】特表2009-539261(JP,A)
【文献】特表2011-518946(JP,A)
【文献】特開2014-209512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
B29C 65/02
B29C 65/48
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構成要素(2)を第2の構成要素(3)に結合するための方法であって、少なくとも以下の方法ステップ、
A)第1の結合領域(7)及び第2の結合領域(8)に、多数の金属製のナノワイヤ(1)を有する結合要素(6)を設けること、
B)前記結合要素(6)の前記第1の結合領域(7)における多数の前記ナノワイヤ(1)が前記第1の構成要素(2)の第1の接触領域(4)に直接接触するように、前記第1の構成要素(2)の前記第1の接触領域(4)を、前記結合要素(6)の前記第1の結合領域(7)と接合すること、
C)前記結合要素(6)の前記第2の結合領域(8)における多数の前記ナノワイヤ(1)が前記第2の構成要素(3)の第2の接触領域(5)に直接接触するように、前記第2の構成要素(3)の前記第2の接触領域(5)を、前記結合要素(6)の前記第2の結合領域(8)と接合すること、
D)少なくとも前記第1の接触領域(4)及び前記第2の接触領域(5)を、少なくとも150℃の温度まで加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記加熱は、最大270℃の温度までで実行されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の構成要素(2)及び前記第2の構成要素(3)が、前記加熱の少なくとも一部の間、少なくとも10MPa、及び最大100MPaの少なくとも一方の圧力で互いに押圧されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の結合領域(7)及び前記第2の結合領域(8)が、互いに反対側に形成されていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、前記結合要素(6)は、テープの形態で構成され、相互に反対側にある2つのテープ表面を含み、前記第1の結合領域(7)が第1の前記テープ表面に形成され、前記第2の結合領域(8)が第2の前記テープ表面に形成されることを特徴とする方法
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、前記結合要素(6)が、電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方であることを特徴とする方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電子機器からの構成要素に関連する、第1の構成要素を第2の構成要素に結合するための方法及び結合要素、並びに互いに結合された2つの構成要素の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を互いに結合することは、極めて多種多様な用途において必要とされる。例えば、異なる材料でできている2つの金属体又は2つの物体を、互いに結合することが必要とされる場合がある。これは、特に電子機器の場合である。そのような結合部を形成するために、極めて多くの異なる方法が、先行技術から知られている。例えば、溶着、硬ろう付け若しくは軟ろう付け、接着接合、ネジ締め、リベット締め、又はスタンピング加工によって、銅でできている電気伝導体又は物体を結合する方法が特に知られている。そのような方法では、作成される領域は互いに正確に位置合わせされて、互いに結合される。従って、結合される物体を正確に幾何学的に測定して、それらの範囲及びそれらの結合位置内で、長手方向に作成しければならない。さらにまた、例えば孔をあけたり、又は対応する結合要素を設けたりといった、結合部を確立するための準備を、事前に行わなければならない。接着接合、ネジ締め、リベット締めの結合技術は、この場合では室温でのプロセスである。これに対して、溶着、軟ろう付け及び硬ろう付けは、液体金属が生成される熱間プロセスであり、これらは接合部に導入され、またはその体積を充填して金属的に相互作用をするように機能する。
【0003】
溶着は、一般に最高1400℃となるその著しい入熱のため、一方で当該の物体がかなりの程度まで加熱され、その結果、可燃性材料に着火する危険性が発生するという問題点が存在する。さらに、結合される物体の表面に視覚的な変化が生じ、ラッカー、フィルム又はコーティングによって前処理される表面の場合、これは特に問題となる場合がある。さらに、多くの原料は溶着が可能ではない。
【0004】
例えば銅の硬ろう付けは、その著しい熱エネルギー入力のために、結合部に関係する構成部品が同様に著しく加熱される(特に400℃超まで)原因となる場合がある。これにより、引火性材料を発火させる可能性がある。
【0005】
例えば銅の軟ろう付けは、一方では結合部の剪断強度が必要とされるものよりも小さく、他方では軟ろうの変動する熱負荷が金属の偏析の原因となり、従って結合部の脆化の原因になるという問題点を有し得る。これにより、結合部に不都合が生じる原因となる可能性がある。さらに軟ろうは、結合部に、例えば純銅よりもはるかに高い接触抵抗があるという問題点を有する。軟ろう結合部のさらなる問題点は、一般に最大約120℃までのみに存在する、低い長期機械的強度にある。そのような結合部の、酸性媒質に対する腐食耐性もまた、不十分であることが多い。
【0006】
特に、伝導性構成部品、例えば銅構成部品の接着接合では、一般に、接触電気抵抗が、接着剤によってかなりの程度で悪影響を受けるという問題点がある。結合部の機械的強度のための機械的要件は、導電性接着剤によって必ずしも満たされ得るわけではない。また、一般に、十分な機械的強度は、最大でほんの120℃の温度範囲まででしか存在しない。このことは、特に、温暖若しくは高温環境における使用、及び高温媒質の使用の少なくとも一方を妨げる場合がある。
【0007】
ネジ締め及びリベット締めの場合は、特に正確に、部品を互いに接合しなければならない。必要とされる孔、及びネジ又はリベット継手を使用する実装形態はまた、一般に、全体的な設計における視覚的外観及び機械的外観に、視覚的な欠陥をもたらす。さらに、設計手段によって、結合を行うことが意図される正確な位置が、事前に確実にわかっていることが必要となる。これは、規定された長さを持たない構成部品が使いにくくなるか、又は使用不能になる可能性がある。さらに、そのような結合部の場合、一般に残存ギャップが構成要素の間に存在する。毛管現象により残存ギャップに水分が侵入し、その後に腐食が生じる可能性がある。結合部は、腐食によって損傷を受ける場合がある。結合部の接触電気抵抗及び接触熱抵抗の少なくとも一方もまた、増加する可能性がある。さらに、ネジ又はリベットのための孔は、結合部の領域において漏出の原因となる可能性がある。これは、特に必要とされる追加の密封手段により、例えば容器又は圧力システムに対してそのような結合部を使用することを困難にする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに基づき、本発明の目的は、先行技術に関連して説明される技術的問題を解決すること、又は少なくとも低減することである。特に、第1の構成要素を第2の構成要素に結合するための方法及び結合要素、並びに、互いに結合された2つの構成要素を含む配置を提供することが意図され、特に安定した機械的結合部、特に高度に電気伝導性の結合部、及び特に良好な熱伝導性の結合部の少なくとも一方が構成要素の間に形成されるが、これは、特に確実かつ直接的な方法で得ることができる。
【0009】
これらの目的は、独立特許請求項の特徴に従い、第1の構成要素を結合するための方法によって、結合要素によって、及び配置によって達成される。さらに有利な構成は、従属的に策定された特許請求項においてそれぞれ明記される。特許請求項において個々に参照される特徴は、任意の技術的に実行可能な方法で互いに組み合わせてもよく、本発明のさらなる代替実施形態が提示された、明細書からの説明的事実によって補足され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、第1の構成要素を第2の構成要素に結合するための方法が提供され、少なくとも以下の方法ステップ、
a)第1の構成要素の第1の接触領域に、多数のナノワイヤを設けること、
b)多数のナノワイヤが第2の構成要素の第2の接触領域と接触するように、第1の構成要素及び第2の構成要素を接合すること、及び、
c)少なくとも第2の接触領域を、少なくとも150℃の温度まで加熱することを含む。
【0011】
第1の構成要素及び第2の構成要素は、電子部品、例えば半導体デバイス、コンピュータチップ、マイクロプロセッサ又はプリント回路基板であることが好ましい。第1の構成要素及び第2の構成要素の少なくとも一方は、少なくとも部分的に、電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方であることが好ましい。しかしながら、記載された方法は、電子工学の分野における用途に制限されるものではない。例えば、記載された方法によって、(第2の構成要素としての)壁又はフレームに、(第1の構成要素としての)センサなどの構成要素を取り付けることも可能である。記載された方法によって、機械的に安定な電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方の結合部を、特に第1の構成要素と第2の構成要素との間に形成することができる。従って、記載された方法は、これらの特性のうち1つ以上を有する2つの構成要素の間で結合部を必要とする、すべての分野で使用することができる。記載された方法はまた、特定の構成要素の寸法に限定されるものではない。例えば、記載された方法は、(マイクロ)エレクトロニクスの分野における使用、又は巨視的レベルではるかに大きい構成要素の結合部に好適である。
【0012】
構成要素は、それぞれの接触領域を介して互いに結合される。接触領域は、特に、それぞれの構成要素の表面の、空間的に特徴づけられた領域である。特に、接触領域は、結合部の形成によって特徴づけられていることが好ましい。このことは、接触領域が最初は構成要素の残りの表面と異なっているわけではなく、接触領域はそこに結合部が形成される領域であるという点で、結合部が形成されることによってのみ区別されるということを意味する。この場合、接触領域は概念的に(すなわち、空間的に特徴づけられることなく)構成要素の表面の残りの部分から区分けされる。例えば、(第1の構成要素としての)平坦な電気伝導体の接触領域は、(第2の構成要素としての)第2の電気伝導体に対する平坦な結合部が、この平坦な伝導体の限られた領域にわたって(すなわち接触領域にわたって)形成されるという点で特徴づけることができる。
【0013】
好ましくは、接触領域はそれぞれ、各構成要素の表面の、単に結合された領域である。代替として、第1の接触領域及び第2の接触領域の少なくとも一方を、それぞれの構成要素の表面の、複数の相互に離れた部分領域にさらに分割することが可能である。例えば、接触領域は、それぞれの構成要素の表面の、2つ以上の相互に離れた区画を含んでもよい。
【0014】
好ましくは、構成要素は硬質であるか、又は少なくとも硬質表面を有するように構成され、そこに接触領域が設けられる。このことは特に、構成要素(又は少なくとも接触領域)は、可撓性ではないということを意味する。結合部は、記載された方法により、硬質の構成要素間、又は接触領域間で、特に良好に形成することができる。例えば、構成要素のうちの一方が可撓性であるように構成された場合、ナノワイヤを載せているために、結合部が破損する可能性がある。しかしながら、記載された方法は、特定の状況に応じて、可撓性の構成要素又は接触領域と共に有利に使用することもできる。
【0015】
記載された方法では、第1の構成要素と第2の構成要素との間の、又は、第1の接触領域と第2の接触領域との間の結合部が、多数のナノワイヤによって形成される。
【0016】
ナノワイヤは、ここでは、ワイヤに類似した形状と、数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲の寸法とを有する、任意の物理的物体を意味することが意図される。例えば、ナノワイヤは、円形、楕円、又は多角形の基部領域を有してもよい。ナノワイヤは、特に、六角形の基部領域を有してもよい。好ましくは、結合部に関係するすべてのナノワイヤは、同一材料から形成される。ナノワイヤは、全体的に電気伝導性材料から形成されることが特に好ましい。
【0017】
好ましくは、ナノワイヤは、100nm[ナノメートル]から100μm[マイクロメートル]の範囲、特に500nmから30μmの範囲の長さを有する。さらに、ナノワイヤは、10nmから10μmの範囲、特に30nmから2μmの範囲の直径を有することが好ましい。この場合、直径という用語は、円形の基部領域を意味しており、それとは異なる基部領域に関しては、比較可能な直径の定義を用いるべきである。使用されるすべてのナノワイヤは、同一の長さ及び同一の直径を有することが特に好ましい。
【0018】
結合部は、結合されるそれぞれの接触領域の間に設けられる、多数のナノワイヤによって形成されることが好ましい。ナノワイヤの寸法がナノメートルの範囲にあるため、結合部の表面(すなわち、ファンデルワールス力などの力が原子レベルで作用する領域)は、特に大きい。従って、結合部は、特に高度に電気伝導性、熱伝導性、及び機械的安定性の少なくとも一方があり得る。電気的及び熱的の少なくとも一方の、特に高度に伝導性の結合部のためには、ナノワイヤは電気伝導性材料及び熱伝導性材料の少なくとも一方から形成されることが好ましい。銅を使用することが、この場合特に好ましい。接触領域はまた、電気伝導性材料及び熱伝導性材料の少なくとも一方から、特に銅によって形成されることが好ましい。上記で記載したように、特に溶着結合の場合、銅を使用することはできない。記載された方法によって得られた結合部の表面が大きいために、結合部の電気伝導性だけでなく、結合部の熱伝導性も特に高くなり得る。これにより、例えば、結合部に関係する構成要素の冷却を向上させることができる。特に、この目的を達成するためには、ナノワイヤ及び接触領域の少なくとも一方に銅を使用することが好ましい。
【0019】
さらに、記載される結合部は、特に簡単で、かつ工具を使用せずに形成することが可能である。接触領域を互いに結合するように導き、それらを限られた程度まで加熱することが単に必要とされるだけである。必要不可欠というわけではないが、場合により圧力をかけてもよい。
【0020】
記載された方法のステップa)では、第1の接触領域、従って、第1の構成要素の表面の少なくとも一部に、多数のナノワイヤが設けられる。これは、特にナノワイヤの電気化学的成長によって行うことができる。設けることという用語は、この場合、一方では、ナノワイヤが本方法の一部として第1の接触領域に適用されるということを意味することが意図される。他方では、さらに、設けることとは、ナノワイヤが第1の接触領域にすでに設けられている第1の構成要素が使用されるということを意味することが意図される。例えば、それに応じて用意される第1の構成要素は、供給元から入手することができ、記載された方法で使用するために用いることができる。用意された構成要素をそのように入手することは、ここで使用される意味において、ナノワイヤを設けることでもある。記載された方法は、特に、ナノワイヤが、関係する接触領域の両方にではなく、そのうちの一方だけに設けられる必要があるという利点がある。従って、ナノワイヤは、第2の接触領域にではなく、第1の接触領域だけに設けられることが好ましい。
【0021】
ナノワイヤは、第1の接触領域に対して実質的に直角(好ましくは直角)となるような方法で、第1の接触領域に設けられることが好ましい。ステップa)によって設けられるナノワイヤの総数は、特に、ナノワイヤの芝(turf of nanowire)と称することが可能である。しかしながら、ナノワイヤはまた、任意の望ましい方向で第1の接触領域に設けられていてもよい。接触領域を、(互いに結合されるか、又は互いから離れた)多数の部分領域にさらに分割することも可能であり、ナノワイヤは、様々な部分領域で異なるように配向される。このようにして、特に安定な結合部を生成することができ、特にこれにより、剪断力に特に十分に耐えることも可能である。さらに、ナノワイヤを、第1の接触領域の異なる位置で、特にそれらの長さ、直径、材料及び密度(単位面積当たりに存在するナノワイヤの本数を規定しているナノワイヤの密度)に関して、異なるように構成することが可能である。
【0022】
記載された方法のステップb)では、構成部品、又は接触領域を接合、すなわち互いに接するように移動させる。従って、第1の接触領域のナノワイヤが第2の接触領域と接触する。第1の構成要素と第2の構成要素との間の結合部は、ステップb)によってすでに部分的に形成され得る。
【0023】
しかしながら、結合部の最終的な形成は、記載された方法のステップc)までは実行されない。このステップでは、少なくとも第2の接触領域は、(最低温度として)少なくとも150℃の温度まで、好ましくは(最低温度として)少なくとも170℃の温度まで加熱される。温度は、200℃であることが好ましい。
【0024】
この加熱によって、ナノワイヤが第2の接触領域に結合される。それに応じて、第2の接触領域だけを加熱することで十分である。実際には、そのような加熱において、第1の接触領域、第2の接触領域、ナノワイヤ、部分的な若しくは全体としての第1の構成要素、及び部分的な若しくは全体としての第2の構成要素の少なくとも一方が加熱されるかどうかを区別することは一般に必要ではない。これは特に、熱伝導性材料が使用されるときの場合である。結合部を形成するために、第2の接触領域以外の構成部品を(共)加熱することは必要ではないが、妨げになるものでもない。従って、ステップc)による加熱は、特に、第1の構成要素及び第2の構成要素を全体として、例えばオーブン内で加熱するというような方法で実行することができる。しかしながら、代替として、結合部の領域、特に第2の接触領域の領域に、熱を局所的に導入することが可能である。
【0025】
結合部を形成するためには、記載される最低温度に、少なくともただ一度だけ、短時間到達することで十分である場合がある。最低温度を維持する必要はない。しかしながら、ステップc)によって加熱が行われる温度は、少なくとも10秒間、好ましくは少なくとも30秒間維持されることが好ましい。それによって、確実に結合部を所望通りに形成することができる。温度をより長く維持することが、原理上有害というわけではない。
【0026】
結合部は、ナノワイヤ、特に、第2の接触領域に向かって面し、第2の接触領域に結合しているナノワイヤの端部によって形成される。この結合部は、原子レベルで形成される。原子レベルで生じているプロセスは、焼結中に生じるものと類似している。得られた結合部は、特に、ガス及び液体の少なくとも一方の漏出を防ぐことが可能であり、結果として、結合部及び結合部の領域において互いに結合される構成要素の少なくとも一方の腐食を防止、又は少なくとも制限することができる。特に、形成される結合部は、完全に金属性であると見なすことができる。記載された方法は、「バリ溶着」(burr welding)と称することも可能である。これは、結合部が、多数のナノワイヤ、従って多数の細長い毛髪状構造体により、加熱により得られるという事実を表している。接触領域の不均一性及び粗さは、多数のナノワイヤによって補うことができる。
【0027】
a)からc)の方法ステップは、示された順序で、特に連続的に実行することが好ましい。特に、ステップa)は、ステップb)及びc)を開始する前に実行することが好ましい。しかしながら、ステップb)及びc)は、少なくとも部分的に、経時的に重複して実行してもよい。例えば、ステップc)の一部と見なすことができる予熱を、ステップb)の前に、又はその間に実行してもよい。ステップb)によって接合する前に、結合部を形成するために必要とされる温度にすでに到達しているように、ステップb)の前に第2の接触領域を加熱することも可能である。特にステップc)はまた、このようにステップb)の前に開始してもよい。この場合、ステップc)によって必要とされる温度を、ステップb)が終了した後にも少なくとも一時的に到達させるというような方法で、ステップc)が実行される。
【0028】
さらなる態様として、第1の構成要素を第2の構成要素に結合するための方法が提供され、少なくとも以下の方法ステップ、
A)第1の結合領域及び第2の結合領域に、多数のナノワイヤを有する結合要素を設けること、
B)第1の構成要素の第1の接触領域を、結合要素の第1の結合領域と接合すること、
C)第2の構成要素の第2の接触領域を、結合要素の第2の結合領域と接合すること、
D)少なくとも第1の接触領域及び第2の接触領域を、少なくとも150℃の温度まで加熱することを含む。
【0029】
上記で記載された方法(ステップa)からc)を含む)に記載されている特定の利点及び構成的な特徴はまた、ここで記載された方法(ステップA)からD)を含む)に使用及び適用されてもよく、その逆もまた同様であってよい。
【0030】
上記で記載された方法によって、2つの構成要素を互いに直接結合することができる。この場合、ステップa)によって、ナノワイヤが構成要素のうちの一方に設けられる。これに対して、ここで記載された方法では、構成要素は結合要素によって間接的に互いに結合されている。これには、ナノワイヤが構成要素のどちらにも設けられる必要はないという利点がある。ナノワイヤは、結合要素に存在するということで十分である。特に、ナノワイヤが第1の接触領域及び第2の接触領域に設けられず、結合要素だけに設けられることが好ましい。これにより、本方法の実行を容易にすることが可能であり、特に、本方法の使用の範囲を、ナノワイヤの成長に好適でないか、又は単にあまり好適でない構成要素にまで拡大することもできる。さらに、構成要素とは別に、ナノワイヤの成長を局所的に実行することができる。
【0031】
ステップA)では、2つの結合領域を含む結合要素が設けられる。2つの結合領域はそれぞれ、多数のナノワイヤを含む。
【0032】
結合要素は特に、第1の構成要素と第2の構成要素との間の結合部の仲介物と見なすことができる。第1の構成要素の第1の接触領域と第2の構成要素の第2の接触領域との間に配置されるのに好適な任意の物理的対象物が、結合要素として特に想定され得る。
【0033】
結合領域は、特に、結合要素の表面の、空間的に特徴づけられた領域である。特に、結合領域は、結合部の形成によって特徴づけられていることが好ましい。このことは、結合領域が最初は結合要素の残りの表面と異なっているわけではなく、結合領域はそこに結合部が形成される領域であるという点で、結合部が形成されることによってのみ区別されるということを意味する。この場合、結合領域は概念的に(すなわち、空間的に特徴づけられることなく)結合要素の表面の残りの部分から区分けされる。例えば、平坦な結合要素の結合領域は、それぞれの構成要素に対する平坦な結合部が、この結合要素の限られた領域にわたって(すなわち結合領域にわたって)形成されるという点で特徴づけることができる。
【0034】
結合領域は、対応する接触領域と同じ大きさであることが好ましく、それらの形状を有することが特に好ましい。しかしながら、接触領域が対応する結合領域より大きい若しくは小さいこと、並びに、接触領域及び対応する結合領域が異なる形状を有すること、の少なくとも一方も可能である。
【0035】
好ましくは、結合領域はそれぞれ、結合要素の表面の、単に結合された領域である。代替として、第1の結合領域及び第2の結合領域の少なくとも一方を、結合要素の表面の、複数の相互に離れた部分領域にさらに分割することが可能である。例えば、結合領域は、結合要素の表面の、2つ以上の相互に離れた区画を含んでもよい。その場合、第1の結合領域又は第2の結合領域への区画の割り当ては、第1の接触領域又は第2の接触領域に対する結合部を形成するために結合領域が意図されているか、又はそのために使用されているかどうかによって実行される。
【0036】
ステップB)及びC)では、第1の接触領域を第1の結合領域と接合するか、又は第2の接触領域を第2の結合領域と接合する。
【0037】
方法ステップA)からD)は、示された順序で、特に連続的に実行することが望ましい。特に、ステップA)は、ステップB)からD)を開始する前に実行されることが好ましい。
【0038】
ステップB)及びC)は同時に、経時的に重複して、又は連続的に実行してもよい。
【0039】
ステップB)及びC)が連続的に実行される場合、接合することというのは、この場合、上記で記載された方法のステップb)によって接合することと対応する。このように、第1の接触領域を第1の結合領域と最初に接合、すなわち、第1の構成要素を結合要素と接合してもよい(ステップB))。その後、ステップB)によって第1の構成要素と接合される結合要素を、第2の接触領域と第2の結合領域とが接合される(ステップC))ような方法で、第2の構成要素と接合してもよい。
【0040】
ステップB)及びC)は、結合要素を2つの構成要素の間に保持し、2つの構成要素を同時に両側から結合要素へと移動させるというような方法で、例えば同時に、又は経時的に重複して実行されてもよい。
【0041】
ステップD)では、少なくとも第1の接触領域及び第2の接触領域が加熱される。これは、上記で記載された方法のステップc)による加熱に従って実行され、この場合、第1の接触領域も加熱される。加熱中に、結合要素を共加熱してもよい。これは必要不可欠ではないものの、実際には、その方がより容易であり得るか、又はそうすることが不可避である場合がある。
【0042】
ステップB)及びC)、並びにステップD)は、少なくとも部分的に、経時的に重複して実行してもよい。例えば、ステップD)の一部と見なすことができる予熱を、ステップB)及びC)の前に、又はその間に実行してもよい。ステップB)又はC)によって接合する前に、結合部を形成するために必要とされる温度にすでに到達しているように、ステップD)の前に第1の接触領域及び第2の接触領域の少なくとも一方を加熱することも可能である。特にステップD)はまた、このようにステップB)又はC)の前に開始してもよい。この場合、ステップD)によって必要とされる温度を、ステップB)又はC)が終了した後にも少なくとも一時的に到達させるというような方法で、ステップD)が実行される。
【0043】
ここで記載された方法(ステップA)からD)を含む)は、上記で記載された方法(ステップa)からc)を含む)を2回実行するものと見なすことができる。このように、1回目のステップa)では、多数のナノワイヤを、結合要素(この場合、第1の構成要素と見なされる)の第1の結合領域(この場合、第1の接触領域と見なされる)に設けることができる。2回目のステップa)では、多数のナノワイヤを、結合要素(この場合、第1の構成要素と見なされる)の第2の結合領域(この場合、同様に第1の接触領域と見なされる)に設けることができる。2回のステップa)は、共にステップA)を形成する。結合要素は、1回目のステップb)によって第1の構成要素と、及び2回目のステップb)によって第2の構成要素と接合することができる。これらは、ステップB)及びC)である。さらに、ステップc)又はD)によって加熱を実行する。この場合、記載されたステップa)及びb)を二重に実行することは、異なる順序で行われてもよい。例えば、最初に1回目及び2回目のステップa)を、続いて1回目及び2回目のステップb)、次いでステップc)を実行してもよい。例えば、最初に1回目のステップa)を、次いで1回目のステップb)を実行し、最後に1回目のステップc)によって加熱することも可能である。この場合、第2の結合領域のナノワイヤは、例えば保護ラッカーによって保護されていてもよい。次いで保護ラッカーを除去してもよく、2回目のステップa)、続いて2回目のステップb)を実行し、次いで2回目のステップc)によって再度加熱してもよい。
【0044】
下記に記載される好ましい実施形態は、最初に記載された方法(ステップa)からc)を含む)、及びその後に記載された方法(ステップA)からD)を含む)の両方に関するものである。
【0045】
本方法の1つの好ましい実施形態では、加熱は、最大270℃、特に最大240℃の温度までで実行される。
【0046】
記載された方法によって、例えば、溶着又は硬ろう付けの場合などのレベルで生じる温度を伴わずに、2つの構成要素の間で結合部を得ることができる。本実施形態では、不必要な範囲に対して加熱することが回避されるという点で、この利点を活用することができる。従って、例えば、構成要素に対する損傷を回避することができる。従って、記載された低温度により、可燃性材料の発火を防止することができる。それに応じて、特に、第1の構成要素及び第2の構成要素の少なくとも一方の温度は、記載された方法の間の任意の時間内において、270℃、特に240℃を超過しないことが好ましい。
【0047】
本方法の別の好ましい実施形態では、第1の構成要素及び第2の構成要素は、加熱の少なくとも一部の間、少なくとも10MPa、特に少なくとも15MPa、及び最大100MPa、特に70MPaの少なくとも一方の圧力で互いに押圧される。
【0048】
使用される圧力は、10MPaから100MPaの範囲、特に15MPaから70MPaの範囲にあることが好ましい。20MPaの圧力が特に好ましい。
【0049】
少なくとも、温度がそのために言及された下限値を超過する時間間隔内で、圧力が明記された下限値を上回ることが好ましい。従って、ナノワイヤ及び接触領域は、この程度まで、少なくともこの時間間隔内で、対応する圧力及び対応する温度の両方にさらされる。これにより、圧力及び温度の影響によって結合部を形成することができる。
【0050】
本方法の別の好ましい実施形態では、第1の結合領域及び第2の結合領域は、互いに反対側に形成されている。
【0051】
好ましくは、第1の結合領域及び第2の結合領域は、互いに平行に配置される。
【0052】
本実施形態では、結合される2つの構成要素の間に結合要素を配置してもよい。この場合、結合要素は(結合部の形成とは別に)、第1の接触領域及び第2の接触領域が互いに隣接して直接配置されずに、むしろ、結合要素の材料の厚さによって特に互いから離れて配置されるという影響が単にあるだけである。互いに対する第1の接触領域及び第2の接触領域の方向は、結合要素による影響を受けないままで維持される。
【0053】
代替として、第1の結合領域及び第2の結合領域はまた、例えば、結合要素の特に平坦な表面の、異なる位置に設けられていてもよい。この場合、第1のこれらの位置の第1の構成要素と、第2のこれらの位置の第2の構成要素とを、結合要素によって結合することができる。
【0054】
さらなる態様として、特に、ステップA)からD)を含む記載された方法によって、第1の構成要素を第2の構成要素に結合するための結合要素が設けられ、結合要素は、第1の結合領域及び第2の結合領域に多数のナノワイヤをそれぞれ含む。
【0055】
ステップA)からD)を含む方法の、上記に記載された特定の利点及び構成的な特徴はまた、記載された結合要素に使用及び適用されてもよく、その逆もまた同様であってよい。
【0056】
1つの好ましい実施形態では、結合要素はテープの形態で構成され、相互に反対側にある2つのテープ表面を含み、第1の結合領域が第1のテープ表面に形成され、第2の結合領域が第2のテープ表面に形成される。
【0057】
相互に反対側にあるテープ表面は、すべての他の表面に対してかなり大きな表面積を示す、テープの2つの表面である(これはテープの材料の厚さのために生じる)。好ましくは、テープの材料の厚さは、0.05mmから5mm[ミリメートル]の範囲、特に0.1mmから1mmの範囲にある。
【0058】
テープ材料は、例えば、ロールとして提供されてもよい。この場合、ナノワイヤは、テープ材料上にすでに設けられていてもよく、例えば、保護ラッカーによって保護されていてもよい。結合要素を使用する前に保護ラッカーを取り除いてもよく、これによりナノワイヤを露出させてもよい。テープ材料のそれぞれ必要とされる部分は、使用するためにロールから切り離してもよい。
【0059】
本実施形態では、結合要素は「結合テープ」と称することも可能である。
【0060】
別の好ましい実施形態では、結合要素は少なくとも部分的に電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方である。
【0061】
特に本実施形態では、形成される結合部は、特に高度に電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方であり得る。
【0062】
ここで使用される意味における電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方は、特に金属、例えば銅に存在し、これは一般に「電気伝導性である」又は「熱伝導性である」と称される。特に、電気的又は熱的に絶縁していると一般に考えられる材料は、ここではそれぞれ、電気伝導性又は熱伝導性であるものとは見なされない。
【0063】
さらなる態様として、配置であって、
-多数のナノワイヤによって結合要素の第1の結合領域に結合される、第1の構成要素、及び、
-多数のナノワイヤによって結合要素の第2の結合領域に結合される、第2の構成要素を少なくとも含み、
結合要素がテープの形態で構成され、第1の結合領域及び第2の結合領域が、結合要素の反対側にあるテープ表面である配置が提供される。
【0064】
ステップA)からD)を含む方法及び結合要素の、上記に記載された特定の利点及び構成的な特徴はまた、記載された配置に使用及び適用されてもよい。
【0065】
本発明及び技術分野を、図を使用して下記にてより詳細に説明する。図は特に好ましい実施形態を示すものであるが、但し、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、提示される図及び特に寸法比率は、概略にすぎないことを指摘すべきであろう。
以下、概略図として示している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】2つの構成要素を結合するための第1の方法の概略図を示している。
図2図1の方法によって互いに結合された2つの構成要素の配置の概略図を示している。
図3】2つの構成要素を結合するための第2の方法の概略図を示している。
図4図3の方法によって互いに結合された2つの構成要素の配置の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、第1の構成要素2を第2の構成要素3に結合するための、第1の方法を示すものである。これによって得られる、第1の配置9が図2で示される。図1による方法は、図2の参照を用いることにより説明される。
【0068】
図1による方法は、以下の方法ステップ、
a)第1の構成要素2の第1の接触領域4に、多数のナノワイヤ1を設けること、
b)多数のナノワイヤ1が第2の構成要素3の第2の接触領域5と接触するように、第1の構成要素2及び第2の構成要素3を接合すること、及び、
c)少なくとも第2の接触領域5を、少なくとも150℃の温度まで加熱することを含む。
【0069】
図3は、第1の構成要素2を第2の構成要素3に結合するための、第2の方法を示すものである。これによって得られる、第2の配置10が図4で示される。図3による方法は、図4の参照を用いることにより説明される。
【0070】
図3による方法は、以下の方法ステップ、
A)第1の結合領域7及び第2の結合領域8に、多数のナノワイヤ1を有する結合要素6を設けること、
B)第1の構成要素2の第1の接触領域4を、結合要素6の第1の結合領域7と接合すること、
C)第2の構成要素3の第2の接触領域5を、結合要素6の第2の結合領域8と接合すること、
D)少なくとも第1の接触領域4及び第2の接触領域5を、少なくとも150℃の温度まで加熱することを含む。
【符号の説明】
【0071】
1 ナノワイヤ
2 第1の構成要素
3 第2の構成要素
4 第1の接触領域
5 第2の接触領域
6 結合要素
7 第1の結合領域
8 第2の結合領域
9 第1の配置
10 第2の配置
図1
図2
図3
図4