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特許7219781化粧料用顔料の水分散体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】化粧料用顔料の水分散体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230201BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20230201BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/29
A61K8/27
A61K8/26
A61Q17/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020572239
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2020005045
(87)【国際公開番号】W WO2020166544
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019025591
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-266503(JP,A)
【文献】特開2007-197545(JP,A)
【文献】特開2006-232674(JP,A)
【文献】特開2013-091625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルトリアルコキシシランで表面シリル化された化粧料用顔料と、水と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートとを有する水分散体を、化粧料用顔料の量として0.3~15質量%で含む、化粧料(但し、デオドラント化粧料を除く)。
【請求項2】
前記アルキルトリアルコキシシランのアルキルが炭素数1~5を有する、請求項1記載の化粧料
【請求項3】
前記化粧料用顔料が酸化チタン、酸化亜鉛、群青、及び雲母チタンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2記載の化粧料
【請求項4】
前記化粧料用顔料100質量部に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの量が0.5~15質量部であり、及び、アルキルトリアルコキシシランの量が0.1~20質量部である、請求項1~3のいずれか1項記載の化粧料
【請求項5】
液状である、請求項1~4のいずれか1項記載の化粧料
【請求項6】
日焼け止め化粧料、メイクアップ化粧料、及び毛髪化粧料から選ばれる、請求項1~5のいずれか1項記載の化粧料
【請求項7】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを含む水中で、化粧料用顔料とアルキルトリアルコキシシランとを反応させて、表面シリル化された前記化粧料用顔料を含む水分散体を得る工程を含むことを特徴とする、化粧料用分散体の製造方法。
【請求項8】
前記化粧料用顔料が酸化チタン、酸化亜鉛、群青、及び雲母チタンから選ばれる少なくとも1種である、請求項記載の製造方法。
【請求項9】
前記化粧料用分散体は表面シリル化された前記化粧料用顔料を化粧料用顔料の量として1~30質量%含み、該化粧料用分散体中、前記化粧料用顔料100質量部に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの量が0.5~15質量部であり、及び、アルキルトリアルコキシシランの量が0.1~20質量部である、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記水分散体から成る塗膜が、該塗膜に0.1μLの水滴を滴下してから30秒後の水接触角71°以上を有する、請求項1~5のいずれか1項記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料用顔料の水分散体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機系UV吸収材である酸化チタン、酸化亜鉛などは有機系UV吸収材に比べ、UV吸収性能が高い事が良く知られており、また刺激性や毒性が低く人体・環境への負荷が小さいという点でも優れており、日焼け止めクリームなどに使用されている。また群青、雲母チタンなどの無機顔料はアイライナーなどに使用されており、有機系顔料に比べて皮膚への刺激性・人体への有害性が低いため、化粧料用顔料として非常に有効である。
【0003】
しかしながら、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料は水への分散が困難である。酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料の水分散が困難である理由として、それ自体の比重が水より大きく沈降しやすい事、また表面を疎水化すると水中では凝集しやすくなってしまう事があげられる。多くの場合、界面活性剤や水溶性高分子を併用する事で水への分散を達成しているが、化粧用としては水系特有のさわやかでべたつかない触感などを得られないという不具合がある事が多かった。また界面活性剤や水溶性高分子は経時で安定な水分散体を作成するために大量に使用しなければならない場合が多く、耐水性はほとんど望めない。
【0004】
例えば、特開平10-251125(特許文献1)は、酸化チタンの分散剤として各種水溶性高分子を利用して水分散することを記載している。しかし、水溶性高分子は耐水性を阻害し、また塗った時の水系特有のさわやかでべたつかない触感を阻害してしまうため、化粧用としての応用は難しい。
【0005】
上記問題を解決するために様々な提案がなされている。例えば、特開2008-150328(特許文献2)は、水溶性高分子を低添加量にして触感を改良することを記載している。含水シリカの酸化チタン水分散体を使用しており、塗膜化後の撥水性は発現しないため、耐水性という点で課題が残る。また水溶性高分子が低添加量であるため、保存安定性に改良の余地を残す。
【0006】
特開2015-105257(特許文献3)は、酸化チタンの表面をポリグリセリン鎖で修飾して塩化ナトリウムを加える事で安定な水分散液を得ることを記載している。しかし、当該水分散液から得られる塗膜も耐水性が十分でない。
【0007】
特開2007-224050(特許文献4)は、化粧料組成物としてタルクや雲母チタンの水分散体を記載している。当該水分散液は、比較的極性で不揮発性の油及び非極性で不揮発性の油から成る群から選択される溶媒(シクロメチコンなど)を主成分に含むため、水系特有のさわやかでべたつかない触感は得られない。またポリオキシアルキレン単位を有しているため、得られる塗膜は耐水性に劣る。
【0008】
特表平8-505624(特許文献5)は、シリコーンなどで疎水化表面処理した酸化チタン、酸化亜鉛、又は群青などを分散した水中油型エマルジョン組成物及び化粧料を記載している。しかし、該組成物は、尿素などの大量の保湿剤を添加することを前提としており、日焼け止めなど化粧料として塗った場合に十分な耐水性を得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平10-251125号公報
【文献】特開2008-150328号公報
【文献】特開2015-105257号公報
【文献】特開2007-224050号公報
【文献】特表平8-505624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、化粧料用顔料を含む水分散体であって、水分散液が経時で安定であり、且つ、得られる塗膜が十分な耐水性(撥水性)を有し、かつ、ケーキングなどを起こさない安定な化粧料を与える水分散体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、化粧料用顔料をアルキルトリアルコキシシランでシリル化すること、及び、該表面シリル化処理された化粧料用顔料を含む水分散体の製造において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを分散剤として使用することにより、長期間凝集せず分散安定性に優れ、且つ耐水性を有する塗膜を形成する水分散体が得られることを見出し、本発明を成すに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、アルキルトリアルコキシシランで表面シリル化された化粧料用顔料と、水と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートとを有する、水分散体を提供する。好ましくは、前記化粧料用顔料が酸化チタン、酸化亜鉛、群青、及び雲母チタンの群から選ばれる少なくとも1種である前記水分散体を提供する。更に本発明は、アルキルトリアルコキシシランで表面シリル化された上記化粧料用顔料を含む水分散体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水分散体は、分散安定性に優れており、得られる塗膜に優れた耐水性を付与できる。更には、ケーキングなどの経時変化を抑制した化粧料を与えることができるため、化粧料用の水分散体として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は化粧料用顔料を含む水分散体、及びその製造方法に関する。該水分散体は、上記化粧料用顔料の表面がアルキルトリアルコキシシランでシリル化されていることを特徴の一つとする。化粧料用顔料表面をシリル化することにより、化粧料用顔料の凝集を抑制し、長期安定性を有する水分散体を与える。さらに、該表面シリル化処理された化粧料用顔料を含む水分散体の製造方法において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを分散剤として含むことを特徴とする。
【0015】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは化粧料用顔料を水中に分散させるために有効に機能する。また、シリル化反応後にヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートをクエン酸などの酸で中和することにより、得られる水分散体は撥水性が向上するため、該水分散体を含む液状化粧料は良好な耐水性(撥水性)を有する塗膜を形成することができる。さらに、該ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを含む液状化粧料は石鹸などで容易に落とすことができる。
【0016】
本発明の水分散体に含まれる化粧料用顔料としては、粉体または粒子形状を有する公知の化粧料用顔料であればよい。例えば、無機顔料、有機顔料、及び複合顔料等が挙げられる。好ましくは体質顔料、着色顔料、白色顔料、及びパール顔料などの無機顔料である。より詳細には、酸化チタン、酸化亜鉛、群青(ウルトラマリン)、雲母チタン、コンジョウ、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等が挙げられる。但し、黒酸化鉄は除かれうる。中でも、特に、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、及び雲母チタンが好ましい。また、アルミナ、シリカ、水溶性高分子等で表面処理されていてもよい。
【0017】
酸化チタンとしては、例えば、STR-100(表面未処理)、STR-100C(アルミナ処理)、STR-100W(シリカ処理)(以上、堺化学工業社製)、MT-500B(未処理)、MT-100AQ(アルギン酸Na)、及びMT-100SA(シリカ、アルミナ)(以上、テイカ社製)等が挙げられる。
【0018】
酸化亜鉛としては、例えば、FINEX-50M(表面未処理)、FINEX-30M(含水シリカ)(以上、堺化学工業社製)、XZ-100F―LP、及びMZ-500(以上、テイカ社製)等が挙げられる。
【0019】
群青としては、例えば、17、Ultramarine TR(VENATOR社製)、ウルトラマリンブルー(富士フィルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0020】
雲母チタンとしては、例えば、Timiron Super Red(メルク社製)、ファンタスパール1060T-WR、ファンタスパール1060T-GA、プロミネンスSF、及びプロミネンスRF(日本光研工業社製)等が挙げられる。
【0021】
上記化粧料用顔料は微粒子であることが好ましい。酸化チタン及び酸化亜鉛の場合、発色性もしくは紫外線カットの観点より、平均粒子径は1~100nmが好ましく、10~50nmがさらに好ましい。群青及び雲母チタンの場合は、平均粒子径は1~100μmが好ましく、2~70μmがさらに好ましい。尚、本発明において、該平均粒子径はレーザー回折/散乱式法により測定される値である。該平均粒子径を有するものであれば化粧料用顔料の粒子形状は特に制限されるものでない。例えば、針状、球状等、いずれの形状であってもよい。
【0022】
本発明の水分散体は表面シリル化された化粧料用顔料を化粧料用顔料の量として1~30質量%含む。ここで化粧料用顔料の量とは、表面にあるシリルを含まない化粧料用顔料の量を意味する。該水分散体中の化粧料用顔料の量は、水分散体全体の質量に対し1~30質量%であり、好ましくは10~27質量%であり、より好ましくは15~23質量%であるのがよい。該範囲内であることにより良好な分散安定性を有することができる。
【0023】
アルキルトリアルコキシシランはシリル化剤として知られている化合物である。アルキルは炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5を有するのがよい。アルコキシ基は炭素数1~5、好ましくは1~3を有するのがよい。例えば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。このうち、アルキルトリエトキシシランは化粧料用顔料と反応しやすく、且つ、副生するエタノールは安全であり留去しやすいため、化粧料用顔料のシリル化剤として扱いやすく、好ましい。
【0024】
シリル化反応に付するアルキルトリアルコキシシランの量は、化粧料用顔料100質量部に対して0.1~20質量部、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1~13質量部となる量であればよい。該範囲内となる量で化粧料用顔料表面をシリル化することにより、化粧料用顔料の凝集を効果的に抑制し、長期安定性を有する水分散体を与える。アルキルトリアルコキシシランの量が上記下限値未満では当該効果が十分に得られず、上記上限値超えでは粒子間凝集が起きて発色性が悪くなるため好ましくない。また、上記範囲内の量でシリル化に付することにより、アルキルトリアルコキシシランのほぼ全量が化粧料用顔料の表面に付着するが、本発明の水分散体はシリル化反応しなかったアルキルトリアルコキシシランを含んでいてもよい。従って、本発明の水分散体においても、アルキルトリアルコキシシランの量は、化粧料用顔料100質量部に対して0.5~20質量部、好ましくは1~15質量部、より好ましくは3~10質量部であればよい。
【0025】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの粘度は、適宜選択すればよいが、成分1%水溶液で20℃にて10~200mPa・sが好ましく、さらに好ましくは10~100mPa・sである。尚、本発明において該ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの粘度はB型粘度計により測定されるものである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは市販品であればよく、例えば、信越化学工業株式会社製のHP-55等が挙げられる。
【0026】
水分散体中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの量は、化粧料用顔料100質量部に対して0.5~15質量部となる量が好ましく、さらに好ましくは0.2~5質量部となる量である。含有量が上記下限値未満では、得られる分散体の分散性が著しく低下するおそれがあるため好ましくない。また含有量が上記上限値を超えると、水分散体の粘度が大幅に増加し、低粘度の化粧料への添加が困難となり、また撥水性も低下するという不具合が生じる場合がある。
【0027】
なお、本発明の水分散剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートと併せてヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを使用してもよい。この場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの配合量は、化粧料用顔料100質量部に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートとの合計で好ましくは0.1~10質量部であるのがよい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートは粘度(20℃)1~200mPa・sを有するのが好ましい。例えば、市販品Shin-Etsu AQOAT(信越化学工業社製)が使用できる。
【0028】
以下、水分散体の製造方法について、より詳細に説明する。
本発明の化粧料用顔料含有水分散体は、水中で、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの存在下で化粧料用顔料とアルキルトリアルコキシシランとをシリル化反応させることにより得られる。反応溶液のpHは塩基性であるのが好ましく、pHを塩基性にするために炭酸ソーダ等を添加してもよい。また、該反応にはアルカリ触媒を添加するのが好ましい。すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートと化粧料用顔料を、アンモニア水中にてホモジナイザーなどの攪拌機で攪拌しながら、アルキルトリアルコキシシランを滴下して化粧料用顔料とシリル化反応させ、水中に分散させる。反応温度は適宜調整すればよく、好ましくは室温~80℃で行うとよい。次いで、アンモニアと副生するエタノールを留去した後、クエン酸などの酸で中和して水分散体を得る。得られる水分散体のpHは6~8であるのが好ましい。必要に応じて湿式微粒化装置(スターバースト)などで解砕する工程を含んでも良い。また得られた水分散体には必要に応じて防腐剤や抗菌剤を加えてもよい。
【0029】
本発明の水分散体において分散媒は水(イオン交換水、精製水、蒸留水、純水など)が好ましく、必要により有機溶媒を配合しても構わない。上記本発明の製造方法により得られる化粧料用顔料は表面がシリル化されることにより疎水化し、化粧料用顔料の凝集が抑制されるため、水中での分散安定性が向上する。尚、化粧料用顔料の表面がシリル化されていることは、例えば塗膜の撥水性が向上することにより確認することができる。また、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)等によって表面構造を観察することによっても確認できる。
【0030】
本発明はさらに、上記水分散体を含有する液状化粧料を提供する。液状化粧料に含まれる本発明の水分散体の配合量は、化粧料用顔料の含有量として化粧料中に0.3~15質量%となる量が好ましく、さらに好ましくは7~12質量%である。該範囲内で水分散体を含有することにより、長期間保存安定性に優れ、且つ、撥水性に優れる塗膜を与える液状化粧料を与えることができる。含有量が上記下限値未満では、発色が薄くて化粧料として十分な機能を発揮しない。また上記上限値超では粘度が高くなりすぎて好ましくない場合がある。
【0031】
また、本発明の液状化粧料には、さらに皮膜形成性ポリマーエマルジョンを配合することができる。皮膜形成性ポリマーエマルジョンの配合量は、液状化粧料に対して固形分(すなわち、皮膜形成性ポリマーの量)で5~25質量%であることが好ましい。皮膜形成性ポリマーエマルジョンを配合することにより、耐水性にすぐれ、例えば、汗などで崩れることのない持続性に優れたアイライナー等の液状化粧料を提供できる。より好ましくは、皮膜形成性ポリマー量が、液状化粧料に対して5~15質量%が好ましく、より好ましくは7~12質量%であるのがよい。上記下限値未満では、塗膜にひび割れが発生し化粧料としてうまく機能しないため好ましくない。また、上記上限値超では、塗膜乾燥時に応力が発生し、肌に違和感が残るため好ましくない。
【0032】
本発明に用いる皮膜形成性ポリマーエマルジョンは化粧料に使用される公知の物であればよい。アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのアルキルエステルまたは誘導体、スチレン、酢酸ビニルの中の一種または二種以上のモノマーからなる(共)重合体のエマルジョン樹脂が挙げられる。例えば、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、スチレン・アクリル酸アルキル共重合体エマルション、スチレン・メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、酢酸ビニル重合体エマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、メタクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキルジメチコン共重合体エマルション等が挙げられる。特には、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのアルキルエステルまたは誘導体を含むアクリルポリマーエマルジョンが好ましい。
【0033】
本発明の液状化粧料には性能を損なわない範囲で、液状化粧料に配合されるその他の成分をさらに含むことができる。例えば、pH中和剤、防腐剤、増粘剤などが挙げられる。さらに溶剤としての多価アルコール、上記表面シリル化された化粧料用顔料以外の粉体、及び、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート以外の分散剤を含むこともできる。
【0034】
pH中和剤としては例えばクエン酸、アスコルビン酸、炭酸ナトリウム、AMP(アミノメチルプロパノール)などが挙げられる。防腐剤としては例えばフェノキシエタノール、ペンチレングリコール、エタノールなどが挙げられる。増粘剤としては例えばカルボマー、キサンタンガム、パルミチン酸デキストリンなどが挙げられる。これらの含有量は特に制限されるものでなく、本発明の効果を損ねない範囲において適宜調整されればよい。
【0035】
多価アルコールは、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず、いずれのものも使用できる。多価アルコールとしては、例えば、グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコールなどが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で使用しても良いしまた、2種類以上を組み合わせて用いることができる。グリコール類は化粧料全量に対して1~20質量%が好ましく、より好ましくは3~15質量%である。
【0036】
上記表面シリル化された化粧料用顔料以外の粉体としては、化粧料に使用される一般的なものであれば特に限定されない。例えば、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、及び無孔質等の粒子構造等を有するものであってよい。例えば、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、及び複合粉体類等が挙げられる。より詳細には、コンジョウ、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、無水ケイ酸被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N- アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられる。これらを1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート以外の分散剤としては、主に表面シリル化された化粧料用顔料以外の上記粉体の分散のために用いられるものが好ましい。例えば、ポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸塩、及び水溶性のアクリル酸系ポリマーおよびその塩類が用いられる。
【0038】
該液状化粧料の製造方法は特に制限されるものでなく、従来公知の方法に従えばよい。例えば、本発明の水分散体を容器に入れ、プロペラ式撹拌機などの公知の攪拌方法によって攪拌しながら、水(純水またはイオン交換水)、多価アルコール(例えば、グリコール)、pH中和剤、防腐剤、増粘剤、及び皮膜形成剤等を加えて、一定時間混合する。攪拌時間は任意に設定すればよいが、30分間~60分間攪拌混合すればよい。
【0039】
本発明の液状化粧料は所望の化粧品容器に挿入又は充填して使用することができる。本発明の液状化粧料の25℃における粘度は、BM型粘度計(No.1ローター、6rpm)により測定される25℃での粘度10mPa・s以下を有することが好ましく、さらに好ましくは粘度2~10mPa・sであり、より好ましくは粘度4~7mPa・sの範囲がよい。粘度が上記上限値を超えるとスプレータイプ日焼け止めとして使用困難であったり、ペン型容器に充填して使用する際に、ペン先から出てこなくなるため好ましくない。
【0040】
本発明の水分散液を含む化粧料としては、例えば、日焼け止め化粧料、リキッドファンデーション、アイライナー、マスカラ、及びアイシャドーなどのメイクアップ化粧料、並びに、スタイリングジェルなどの毛髪化粧料等が挙げられる。本発明の水分散液はケーキングを起こさないためリキッドタイプのみならず、スプレータイプにも使用できる。また、ペン型容器に充填して使用することもできる。
【実施例
【0041】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0042】
下記実施例及び比較例で使用した化粧料用顔料は以下の通りである
酸化チタン1:STR-100C(堺化学工業社製、Al処理酸化チタン、平均粒子径16nm)
酸化チタン2:MT-100AQ(テイカ社製、アルギン酸Na表面処理酸化チタン、平均粒子径15nm)
酸化亜鉛:FINEX-30W(堺化学工業株式会社製、平均粒子径35nm)
群青:ウルトラマリンブルー(富士フィルム和光純薬社製、平均粒子径3~5μm)
雲母チタン:Timiron Super Red(メルク社製、平均粒子径10~60μm)
【0043】
下記実施例及び比較例で使用したその他の成分は、以下の通りである。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート1:(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55、20℃溶液粘度40mPa・s(成分1%水溶液として))
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート2:(信越化学工業株式会社製 商品名HP-50、20℃溶液粘度55mPa・s(成分1%水溶液として))
【0044】
ポリアスパラギン酸ナトリウム水(成分30%):アクアデュウSPA-30(味の素ヘルシーサプライ社製)
カルボキシメチルセルロース:セロゲンF-SB(エーテル化度(0.85~0.95)、第一工業製薬社製)
メチルトリエトキシシラン:KBE-13(信越化学工業社製)
【0045】
[実施例1] 酸化チタンの水分散体1の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水30gに上記1質量%HP-55水溶液を130g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンSTR-100C(堺化学工業株式会社製)70.2gとイオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約297gの水性分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散体1を得た。なお、水分散体1中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは0.4質量%(計算値)である。なお、酸化チタンの表面がシリル化されていることはTEMにより観察した。
【0046】
[実施例2] 酸化チタンの水分散体2の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
上記1質量%HP-55水溶液200gを加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンSTR-100C(堺化学工業株式会社製)70.2gとアクアデュウSPA-30(味の素社製、ポリアスパラギン酸Na)6.3g、イオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約313gの水性分散液を得た。なお洗浄用に20gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散体2を得た。なお、水分散体2中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは0.6質量%(計算値)である。
【0047】
[実施例3] 酸化チタンの水分散体3の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
上記1質量%HP-55水溶液200gを加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンMT-100AQ(テイカ株式会社製)70.2gとアクアデュウSPA-30(味の素社製、ポリアスパラギン酸Na)6.3g、イオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン4.5gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約313gの水性分散液を得た。なお洗浄用に20gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散体3を得た。なお、水分散体3中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは0.6質量%(計算値)である。
【0048】
[実施例4] 酸化チタンの水分散体4の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-50)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-50水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水30gに上記1質量%HP50水溶液を130g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンSTR-100C(堺化学工業株式会社製)70.2gとイオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約297gの水性分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散体4を得た。なお、水分散体4中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは0.4質量%(計算値)である。
【0049】
[実施例5] 酸化亜鉛の水分散体5の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水30gに上記1質量%HP55水溶液を130g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化亜鉛FINEX-30W(堺化学工業株式会社製)70.2gとイオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約297gの水性分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化亜鉛約23質量%)の水分散体5を得た。なお、水分散体5中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは0.4質量%(計算値)である。
【0050】
[実施例6] 群青の水分散体6の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水30gに上記1質量%HP55水溶液を130g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、ウルトラマリンブルー(富士フィルム和光純薬社製)70.2gとイオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約297gの水性分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(群青約23質量%)の水分散体6を得た。なお、水分散体6中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは0.4質量%(計算値)である。
【0051】
[実施例7] 雲母チタンの水分散体7の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水30gに上記1質量%HP55水溶液を130g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、雲母チタン Timiron Super Red(メルク社製)70.2gとイオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約297gの水性分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(雲母チタン約23質量%)の水分散体7を得た。なお、水分散体7中のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは0.4質量%(計算値)である。
【0052】
[比較例1]酸化チタンの水分散体8の製造
イオン交換水155gをホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンSTR-100C(堺化学工業株式会社製)70.2gとアクアデュウSPA-30(味の素ヘルシーサプライ社製、ポリアスパラギン酸Na)6.3g、イオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約294gの水分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散液8を得た。
【0053】
[比較例2]酸化チタンの水分散体9の製造
セロゲンFS-B(第一工業製薬株式会社製 カルボキシメチルセルロース)2g、イオン交換水198gを混合溶解して1質量%のセロゲンFS-B水溶液をあらかじめ作製した。
上記1質量%セロゲンFS-B水溶液を100gとイオン交換水60gを加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンSTR-100C(堺化学工業株式会社製)70.2gとイオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えた。25℃で攪拌しながら、メチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約292gの水分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散液9を得た。
【0054】
[比較例3]酸化チタンの水分散体10の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水25gに上記1質量%HP55水溶液を200g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンSTR-100C(堺化学工業株式会社製)70.2gを加え、約274gの水分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。こに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散体10を得た。
【0055】
[比較例4]酸化チタンの水分散体11の製造
イオン交換水30gを加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化チタンSTR-100C(堺化学工業株式会社製)70.2gとイオン交換水200gを加えた。25℃で攪拌しながら、イオン交換水53gと25%アンモニア水22.5gを加えたメチルトリエトキシシラン9gを30分間かけて連続滴下した。ついで、60℃に昇温して1時間熟成反応したのちに60~70℃に保ちながら真空にして系からアンモニアとエタノールを含む水80mlを留去して系外へ抜き出し、約310gの水分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化チタン約23質量%)の水分散体11を得た。
【0056】
[比較例5]酸化亜鉛の水分散体12の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水25gに上記1質量%HP-55水溶液を200g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、酸化亜鉛FINEX-30W(堺化学工業株式会社製)70.2gを加え、約274gの水分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(酸化亜鉛約23質量%)の水分散体12を得た。
【0057】
[比較例6]群青の水分散体13の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水25gに上記1質量%HP-55水溶液を200g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、ウルトラマリンブルー(富士フィルム和光純薬社製)70.2gを加え、約274gの水分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(群青約23質量%)の水分散体13を得た。
【0058】
[比較例6]雲母チタンの水分散体14の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製 商品名HP-55)2g、炭酸ソーダ2gとイオン交換水196gを混合溶解して1質量%のHP-55水溶液をあらかじめ作製した。
イオン交換水25gに上記1質量%HP55水溶液を200g加え、ホモミキサー(回転数5000rpm)で攪拌しながら、雲母チタン Timiron Super Red(メルク社製)70.2gを加え、約274gの水分散液を得た。なお洗浄用に50gのイオン交換水を使用した。ここに10質量%クエン酸水溶液を12g加えpHを6.0~8.0に中和し、固形分約25質量%(雲母チタン約23質量%)の水分散体14を得た。
【0059】
塗膜の撥水性(耐水性)評価
上記実施例及び比較例の各水分散液1~14を、2MILのバーコーターを使用してスライドガラスに塗布し、25℃×2h乾燥させて塗膜を作成した。該塗膜に0.1μLの水滴を滴下してから30秒後の接触角を協和界面化学社製自動接触角計DCA-VZにて測定した。結果を表1及び2に示す。
【0060】
経時安定性
水分散液100mlをPEボトルに入れて静置した。40℃×1ケ月静置後の水分散体について、再分散化可能であるか、及びケーキングの有無を確認した。
結果を下記表1及び2に示す。容器を良く振ったときに沈降物がなく、再分散できたものは良好と記載した。容器を良く振っても沈降物があるものは、ケーキングありと記載した。
【0061】
触感
10人の専門パネラーにより水分散体の触感を評価した。水分散液を指先に少しつけて、手の甲で広げた時の触感を下記指標にて評価し、10人の総得点から、40点以上を○、40点未満15点以上は△、15点未満を×とした。結果を表1及び2に示す。
べたつきが感じられず瑞々しい滑る様な心地よい触感:5点
滑るがややひっかかりを感じる触感:3点
ひっかかりやべたつきを感じる触感:1点
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1及び2に示す通り、酸化チタンの分散剤としてヒドロキシプロピルメチルメチルセルロースフタレートに代えてポリアスパラギン酸ナトリウムを用いた比較例1の水分散体は、膜撥水性に劣り、また経時でケーキングが生じた。これは分散安定性に劣ることを意味する。また、増粘剤としてセロゲンF-SBを添加した比較例2の水分散体も、膜撥水性及び分散安定性に劣った。比較例3、及び5~7に示す通り、メチルトリエトキシシランで表面処理していない酸化チタン、酸化亜鉛、群青、又は雲母チタンを含む水分散体も、膜撥水性及び分散安定性に劣った。さらに、ヒドロキシプロピルメチルメチルセルロースフタレート及び何れの分散剤も含まない比較例4の水分散体は、膜撥水性及び分散安定性に劣り、さらに触感評価も悪かった。
これに対し、表1及び2の実施例1~7に示す通り、本発明の水分散体は膜撥水性及び分散安定性に優れ、さらに触感も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の水分散体は分散安定性に優れる。該水分散体は耐水性に優れる塗膜を付与でき、経時安定性に優れるため、化粧料用として良好に使用できる。