(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230201BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2021038255
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美馬 一真
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】中井 晴也
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-035488(JP,A)
【文献】特開2020-087653(JP,A)
【文献】特開2012-221672(JP,A)
【文献】特表2018-534747(JP,A)
【文献】国際公開第2019/168035(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極と電解質とを含み、
前記正極は、正極基材と正極活物質層とを含み、
前記正極活物質層は、前記正極基材の表面に配置されており、
前記正極活物質層は、第1層と第2層とを含み、
前記第1層は、前記正極基材と前記第2層との間に介在しており、
前記第1層は、前記正極基材の前記表面に直接接触しており、
前記正極活物質層は、正極活物質とカーボンナノチューブとを含有し、
前記第1層は、質量分率で0.4%以上の前記カーボンナノチューブを含有し、
前記第2層は、前記カーボンナノチューブを含有せず、
前記カーボンナノチューブは、4000以上のアスペクト比を有する、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記第1層は、質量分率で0.6%以下の前記カーボンナノチューブを含有する、
請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブは、13333以下のアスペクト比を有する、
請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016/024394号(特許文献1)は中間層を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)の正極は、正極基材と正極活物質層とを含む。正極活物質層は、正極基材の表面にスラリーが塗布され、乾燥されることにより形成され得る。従来、正極活物質層と正極基材との間の界面抵抗を低減するため、正極活物質層と正極基材との間に下地層を形成することが提案されている。下地層は、特許文献1の中間層に相当する。
【0005】
下地層はカーボンブラック(CB)を含有する。CBは導電材である。CBは微粒子の集合体である。下地層は正極活物質を含有しない。下地層は電池容量に寄与しない。エネルギー密度の観点から、下地層は可及的に薄く形成されることが求められる。
【0006】
カーボンナノチューブ(CNT)が導電材として検討されている。CNTは、CBに比して高い導電性を示す。下地層がCNTを含有することにより、界面抵抗の低減が期待される。
【0007】
しかしながら、下地層がCNTを含有することにより、正極活物質層と正極基材との間の界面抵抗が却って増加することがある。さらに正極活物質層と正極基材との間の密着性が低下することもある。薄い下地層に、繊維状のCNTを均一に分散させることが困難であるためと考えられる。
【0008】
本技術の目的は、正極活物質層と正極基材との間の界面抵抗を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本技術の範囲を限定しない。
【0010】
〔1〕非水電解質二次電池は、正極と負極と電解質とを含む。正極は、正極基材と正極活物質層とを含む。正極活物質層は正極基材の表面に配置されている。正極活物質層は、第1層と第2層とを含む。第1層は、正極基材と第2層との間に介在している。第1層は、正極基材の表面に直接接触している。正極活物質層は、正極活物質とカーボンナノチューブとを含有する。第1層は、質量分率で0.4%以上のカーボンナノチューブを含有する。第2層は、カーボンナノチューブを含有しない。カーボンナノチューブは4000以上のアスペクト比を有する。
【0011】
本技術の第1層は、いわば下層である。第1層は、正極活物質層と正極基材との界面を含む。本技術の新知見によると、正極活物質層と正極基材との界面において、4000以上のアスペクト比を有するCNTと、正極活物質とが共存することにより、CNTの分散性が向上し得る。その結果、界面抵抗の低減が期待される。さらに正極活物質層と正極基材との密着性の向上も期待される。
【0012】
本技術の第2層は、いわば上層である。第2層はCNTを含有しない。現時点においてCNTは高価である。正極活物質層全体にCNTを含有させた場合、製造コストが増大し得る。正極基材との界面(第1層)にCNTを局所的に配置することにより、製造コストの増大が軽減され得る。
【0013】
〔2〕第1層は、例えば質量分率で0.6%以下のカーボンナノチューブを含有していてもよい。
【0014】
〔3〕カーボンナノチューブは、例えば13333以下のアスペクト比を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における正極の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の実施形態(本明細書においては「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。例えば本明細書中の作用効果についての言及は、当該作用効果を全て奏する範囲内に、本技術の範囲を限定しない。
【0017】
本明細書において、「備える、含む(comprise, include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(encompass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry, support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に…からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須要素に加えて追加要素をさらに含んでいてもよい。例えば、本技術の属する分野において通常想定される要素(例えば不可避不純物等)が、追加要素として含まれていてもよい。
【0018】
本明細書において、「…してもよい(may)、…し得る(can)」との表現は、義務的な意味「…しなければならない(must)の意味」ではなく、許容的な意味「…する可能性を有するの意味」で使用されている。
【0019】
本明細書において、単数形(a, an, the)は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も含み得る。
【0020】
本明細書において、例えば「0.4%から0.6%」および「0.4~0.6%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「0.4%から0.6%」および「0.4~0.6%」は、「0.4%以上0.6%以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0021】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。また微量元素によるドープ、置換も許容され得る。
【0022】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「垂直」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「垂直」は、厳密な意味での「垂直」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0023】
<非水電解質二次電池>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両等において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。電池100は、例えば1~200Ahの定格容量を有していてもよい。
【0024】
電池100は外装体90を含む。外装体90は角形(扁平直方体状)である。ただし角形は一例である。外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えば円筒形であってもよいし、パウチ形であってもよい。外装体90は、例えばAl合金製であってもよい。外装体90は、電極体50と電解液(不図示)とを格納している。外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ溶接等により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。
【0025】
封口板91に、正極端子81と負極端子82とが設けられている。封口板91に、注入口(不図示)と、ガス排出弁(不図示)とがさらに設けられていてもよい。注入口から外装体90の内部に電解液が注入され得る。電極体50は、正極集電部材71によって正極端子81に接続されている。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。電極体50は、負極集電部材72によって負極端子82に接続されている。負極集電部材72は、例えばCu板等であってもよい。
【0026】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
電極体50は巻回型である。電極体50は、正極10、セパレータ30および負極20を含む。すなわち電池100は、正極10と負極20と電解質とを含む。正極10、セパレータ30および負極20は、いずれも帯状のシートである。電極体50は複数枚のセパレータ30を含んでいてもよい。電極体50は、正極10、セパレータ30および負極20がこの順に積層され、渦巻状に巻回されることにより形成されている。正極10または負極20の一方がセパレータ30に挟まれていてもよい。正極10および負極20の両方がセパレータ30に挟まれていてもよい。電極体50は、巻回後に扁平状に成形されていてもよい。なお巻回型は一例である。電極体50は、例えば積層(スタック)型であってもよい。
【0027】
《正極》
正極10は、正極基材11と正極活物質層12とを含む。正極基材11は導電性シートである。正極基材11は、例えばAl合金箔等であってもよい。正極基材11は、例えば10~30μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、正極基材11の表面に配置されている。正極活物質層12は、例えば正極基材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、例えば正極基材11の表裏両面に配置されていてもよい。正極10の幅方向(
図2のX軸方向)において、一方の端部に正極基材11が露出していてもよい。正極基材11が露出した部分には、正極集電部材71が接合され得る。
【0028】
(正極活物質層)
正極活物質層12は、例えば10~200μmの厚さを有していてもよいし、50~150μmの厚さを有していてもよいし、50~100μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、例えば3.3~3.8g/cm3の密度を有していてもよい。正極活物質層12の密度は、正極活物質層12の質量が正極活物質層12の見かけ体積で除されることにより求められる。
【0029】
正極活物質層12は正極活物質と導電材とを含有する。導電材はCNTを含有する。すなわち正極活物質層12は正極活物質とCNTとを含有する。導電材は、例えばCBをさらに含有していてもよい。正極活物質層12は、例えばバインダをさらに含有していてもよい。
【0030】
(正極活物質)
正極活物質は粒子である。正極活物質は任意のサイズを有し得る。正極活物質は、例えば1~30μmのD50を有していてもよいし、5~20μmのD50を有していてもよい。本明細書における「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%になる粒子径と定義される。体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
【0031】
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを吸蔵し、放出し得る。正極活物質は任意の結晶構造を有し得る。正極活物質は、例えば層状岩塩型構造、スピネル型構造、オリビン型構造等を有していてもよい。正極活物質は任意の化学組成を有し得る。正極活物質の化学組成は、例えばICP―AES(inductively coupled plasma-atomic emission spectrometry)等により測定され得る。正極活物質は、例えばニッケル(Ni)を含有していてもよい。
【0032】
正極活物質は、例えば下記式(I)により表される化学組成を有していてもよい。
Li1-aNixMe1-xO2 …(I)
上記式(I)中、「a」は「-0.3≦a≦0.3」の関係を満たす。「x」は「0.3≦x≦1.0」の関係を満たす。「Me」は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、珪素(Si)、バナジウム(V)、クロム(Cr)およびゲルマニウム(Ge)からなる群より選択される少なくとも1種を示す。
【0033】
正極活物質は、例えば下記式(II)により表される化学組成を有していてもよい。
Li1-aNixCoyMn1-x-yO2 …(II)
上記式(II)中、「a」は「-0.3≦a≦0.3」の関係を満たす。「x」は「0.5≦x≦0.8」の関係を満たす。「y」は「0.2≦y≦0.5」の関係を満たす。
【0034】
(カーボンナノチューブ)
CNTは導電材である。CNTは、中空状炭素繊維の集合体である。CNTは実質的に炭素からなっていてもよい。CNTは、例えばSWNT(single-walled carbon nanotube)、DWNT(double-walled carbon nanotube)、およびMWNT(multi-walled carbon nanotube)からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
【0035】
CNTは4000以上のアスペクト比を有する。CNTが4000以上のアスペクト比を有することにより、正極活物質層12と正極基材11との界面におけるCNTの分散性が向上し得る。CNTは、例えば13333以下のアスペクト比を有していてもよい。CNTは、例えば4000~10000のアスペクト比を有していてもよいし、6000~8000のアスペクト比を有していてもよい。
【0036】
アスペクト比は、直径に対する長さの比である。本明細書における「アスペクト比」は、CNTの平均長さがCNTの平均直径で除されることにより求められる。平均長さおよび平均直径は、それぞれ10本のCNTにおける測定値の算術平均値であり得る。個々のCNTの長さおよび直径は、SEM(scanning electron microscope)画像において測定され得る。SEMの加速電圧は5kV程度であり得る。SEM画像の倍率は5万倍(画素数 1024×1280)程度であり得る。
【0037】
CNTは、例えば1~100μmの平均長さを有していてもよいし、10~50μmの平均長さを有していてもよい。CNTの平均長さは、例えば正極活物質のD50に比して大きくてもよい。CNTの平均長さが正極活物質のD50に比して大きいことにより、例えば、界面抵抗の低減が期待される。CNTは、例えば1~100nmの平均直径を有していてもよいし、5~10nmの平均直径を有していてもよい。
【0038】
(カーボンブラック)
CBは導電材である。CBは電子伝導性を有する。CBは微粒子の集合体である。CBは無定形炭素の一種である。CBは実質的に炭素からなっていてもよい。CBは、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびサーマルブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。CBの一部が黒鉛化していてもよい。
【0039】
(バインダ)
バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0040】
《多層構造》
図3は、本実施形態における正極の一例を示す概略断面図である。
正極活物質層12は多層構造を有する。すなわち正極活物質層12は、第1層1と第2層2とを含む。第1層1は、正極基材11と第2層2との間に介在している。
【0041】
第1層1および第2層2を含む限り、正極活物質層12は追加の層(不図示)を含んでいてもよい。追加の層は、第1層1および第2層2と異なる組成を有する。例えば、第1層1と第2層2との間に追加の層が形成されていてもよい。例えば、正極活物質層12の表面と、第2層2との間に追加の層が形成されていてもよい。
【0042】
第1層1は、いわば下層である。第1層1は正極基材11との界面を含む。すなわち第1層1は、正極基材11の表面に直接接触している。第2層2は、いわば上層である。第2層2は、第1層1に比して正極活物質層12の表面側に配置されている。第2層2は、正極活物質層12の表面に露出していてもよい。第2層2が正極活物質層12の表面を形成していてもよい。
【0043】
第1層1は、第2層2と異なる導電材組成を有する。すなわち第1層1はCNTを含有する。第2層2はCNTを含有しない。第1層1は質量分率で0.4%以上のCNTを含有する。第1層1におけるCNTの質量分率が0.4%未満であると、例えば界面抵抗が増加する可能性がある。第1層1は正極活物質を含有する。正極活物質層12と正極基材11との界面において、CNTと正極活物質とが共存することにより、界面抵抗の低減と、密着性の向上とが期待される。例えば第1層1は、実質的に、質量分率で0.4~0.6%のCNTと、0.1~5%のバインダと、残部の正極活物質とからなっていてもよい。ここでの質量分率は、第1層1全体の質量を100%として定義される。
【0044】
なお、正極活物質層12に含有されるCNTのうち、全てのCNTが第1層1に含有されていてもよいし、一部のCNTが第1層1に含有されていてもよい。
【0045】
第2層2がCNTを含有しないことにより、製造コストの増大が軽減され得る。第2層2は、例えばCBを含有していてもよい。例えば第2層2は、実質的に、質量分率で0.1~5%のCBと、0.1~5%のバインダと、残部の正極活物質とからなっていてもよい。ここでの質量分率は、第2層2全体の質量を100%として定義される。
【0046】
第1層1の厚さは、例えば正極活物質のD50に比して大きくてもよい。第1層1は、例えば10~50μmの厚さを有していてもよいし、20~32.5μmの厚さを有していてもよい。第2層2は、第1層1と同一の厚さを有していてもよいし、異なる厚さを有していてもよい。例えば第1層1の厚さがT1と定義され、かつ第2層2の厚さがT2と定義される時、「0.1≦T1/T2≦1」の関係が満たされていてもよいし、「0.1≦T1/T2≦0.5」の関係が満たされていてもよい。第2層2に比して、第1層1が薄いことにより、例えば製造コストの低減が期待される。
【0047】
《負極》
負極20は、例えば負極基材21と負極活物質層22とを含んでいてもよい。負極基材21は導電性シートである。負極基材21は、例えばCu合金箔等であってもよい。負極基材21は、例えば5~30μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、負極基材21の表面に配置されていてもよい。負極活物質層22は、例えば負極基材21の片面のみに配置されていてもよい。負極活物質層22は、例えば負極基材21の表裏両面に配置されていてもよい。負極20の幅方向(
図2のX軸方向)において、一方の端部に負極基材21が露出していてもよい。負極基材21が露出した部分には、負極集電部材72が接合され得る。
【0048】
負極活物質層22は、例えば10~200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は負極活物質を含有する。負極活物質は任意の成分を含有し得る。負極活物質は、例えば黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、Si、SiO、Si基合金、Sn、SnO、Sn基合金、およびLi4Ti5O12からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
【0049】
負極活物質層22は負極活物質に加えて、例えばバインダ等をさらに含有していてもよい。例えば負極活物質層22は、実質的に、質量分率で0.1~10%のバインダと、残部の負極活物質とからなっていてもよい。バインダは任意の成分を含有し得る。バインダは、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
【0050】
《セパレータ》
セパレータ30の少なくとも一部は、正極10と負極20との間に介在している。セパレータ30は、正極10と負極20とを分離している。セパレータ30は、例えば10~30μmの厚さを有していてもよい。
【0051】
セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は電解液を透過する。セパレータ30は、例えば100~400s/100mLの透気度を有していてもよい。本明細書における「透気度」は、「JIS P 8117:2009」に規定される「透気抵抗度(air resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定される。
【0052】
セパレータ30は電気絶縁性である。セパレータ30は、例えばポリオレフィン系樹脂等を含有していてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよい。セパレータ30は、例えば単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ30は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えばPP層とPE層とPP層とがこの順に積層されることにより形成されていてもよい。セパレータ30の表面に、例えば耐熱層(セラミック粒子層)等が形成されていてもよい。
【0053】
《電解質》
電解液は液体電解質である。電解液は溶媒と支持電解質とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含有し得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
【0054】
支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO2)2からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよい。支持電解質は、例えば0.5~2.0mоl/Lのモル濃度を有していてもよいし、0.8~1.2mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。
【0055】
電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、任意の添加剤をさらに含有していてもよい。例えば電解液は、質量分率で0.01~5%の添加剤を含有していてもよい。添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、フルオロスルホン酸リチウム(FSO3Li)、およびリチウムビスオキサラトボラート(LiBOB)からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
【0056】
なお、電解質は非水系である限り、例えばゲル電解質であってもよいし、固体電解質であってもよい。固体電解質はセパレータとしても機能し得る。すなわち固体電解質層が正極と負極とを分離していてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、本技術の実施例(本明細書においては「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0058】
<正極の製造>
No.1~7に係る正極が製造された。
【0059】
《No.1》
下記材料が準備された。
正極活物質:LiNi0.55Co0.20Mn0.25O2
導電材:CB(アセチレンブラック)
CNT(平均直径 7.5nm、アスペクト比 4000)
バインダ:PVdF(重量平均分子量 110万)
分散媒:N-メチル-2-ピロリドン
正極基材:Al箔(厚さ 15μm)
【0060】
正極活物質とCNTとバインダと分散媒とが混合されることにより、第1スラリーが調製された。固形分の配合比は「正極活物質/バインダ/CNT=97.5/0.4/0.6(質量比)」であった。
【0061】
正極活物質とCBとバインダと分散媒とが混合されることにより、第2スラリーが調製された。固形分の配合比は「正極活物質/バインダ/CB=97.5/1/1.5(質量比)」であった。
【0062】
ダイコータにより第1スラリーが正極基材の表面に塗布され、乾燥されることにより第1層が形成された。ダイコータにより第2スラリーが第1層の表面に塗布され、乾燥されることにより第2層が形成された。これにより正極活物質層が形成された。第2スラリーの吐出量は、第1スラリーの吐出量と同等であった。正極活物質層の目付量(第1層と第2層との合計目付量)は220mg/10cm2であった。同様に正極基材の裏面にも、正極活物質層が形成された。すなわち正極基材の表裏両面に正極活物質層が形成された。圧延機により正極活物質層が圧縮された。圧縮後の正極活物質層(片側)は65μmの厚さを有していた。以上よりNo.1に係る正極が製造された。
【0063】
《No.2~6》
第1スラリー(第1層)におけるCNTの配合量とアスペクト比とが変更されることを除いては、No.1に係る正極と同様に、各種正極が製造された(下記表1参照)。
【0064】
《No.7》
正極活物質とCBとバインダと分散媒とが混合されることにより、第2スラリーが調製された。ダイコータにより第2スラリーが正極基材の表面に塗布され、乾燥されることにより、正極活物質層が形成された。正極活物質層の目付量は220mg/10cm2であった。同様に正極基材の裏面にも、正極活物質層が形成された。すなわち正極基材の表裏両面に正極活物質層が形成された。圧延機により正極活物質層が圧縮された。圧縮後の正極活物質層は65μmの厚さを有していた。以上よりNo.7に係る正極が製造された。No.7に係る正極活物質層は単層構造である。
【0065】
<評価>
《界面抵抗》
正極活物質層と正極基材との界面における面積抵抗率(単位 Ω・cm2)によって、界面抵抗が評価された。面積抵抗率は、日置電機社製の電極抵抗測定システム「製品名 RM2610」により測定された。圧縮後の正極活物質層に対して膨潤処理が施された。膨潤後の正極活物質層が再度乾燥された。正極活物質層の乾燥後、正極活物質層と正極基材との界面における面積抵抗率が測定された。面積抵抗率が低い程、界面抵抗が低いと考えられる。
【0066】
《密着性》
90°引きはがし粘着力(単位 mN/cm)によって密着性が評価された。90°引きはがし粘着力は、「JIS Z 0237:2009」に準拠して測定された。正極から試験片が切り出された。試験片の平面サイズは「25mm×20mm(幅×長さ)」であった。両面テープ(幅 15mm)により、正極活物質層が金属板に貼り付けられた。金属板はSUS304鋼板であった。引張試験機により、試験片が金属板から90°の角度で引き剥がされた。引き剥がし中、所定の間隔で張力が測定された。張力の算術平均値が粘着力とみなされた。粘着力が大きい程、密着性が良好であると考えられる。
【0067】
【0068】
<結果>
本実施例においては、面積抵抗率が0.16Ω・cm2以下である時、界面抵抗が低減しているとみなされる。また粘着力が115mN/cm以上である時、密着性が十分であるとみなされる。
【0069】
No.1、2においては、界面抵抗が低減している。さらにNo.1、2においては、十分な密着性も得られている。No.1、2においては、CNTが4000以上のアスペクト比を有する。No.1、2においては、第1層(下層)が質量分率で0.4%以上のCNTを含有する。
【0070】
本実施形態および本実施例は全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0071】
1 第1層、2 第2層、10 正極、11 正極基材、12 正極活物質層、20 負極、21 負極基材、22 負極活物質層、30 セパレータ、50 電極体、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池(非水電解質二次電池)。