IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱化工機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱化工機アドバンス株式会社の特許一覧

特許7219840閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構
<>
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図1A
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図1B
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図2
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図3
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図4A
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図4B
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図5A
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図5B
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図6
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図7
  • 特許-閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230201BHJP
   B08B 9/027 20060101ALI20230201BHJP
   B08B 9/04 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C12M1/00 E
B08B9/027
B08B9/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022105378
(22)【出願日】2022-06-30
【審査請求日】2022-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522263024
【氏名又は名称】三菱化工機アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】三枝 哲
(72)【発明者】
【氏名】大森 一樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】増田 吉兼
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187318(JP,A)
【文献】特開2019-187348(JP,A)
【文献】特開2012-115236(JP,A)
【文献】特開2005-224720(JP,A)
【文献】特開2018-061951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
B08B 9/027
B08B 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構であって、
藻類を含む培養液を内部に収容する循環タンクと、
前記藻類を光合成により培養するガラス管式のリアクターと
前記循環タンクの培養液前記リアクターへと流入さる流路としての第1接続管と、
前記リアクター内を通過した培養液前記循環タンクへと流出さる流路としての第2接続管と、
前記第1接続管に備えられ、前記リアクターの管内を移動し管内の前記藻類の培養を行うとともに前記藻類を刮ぎ取り洗浄するピグを挿入するピグ送入機構と、
前記第2接続管に備えられ、前記リアクターの管内を通過したピグを回収するピグ回収機構と、
前記第一接続管において、前記ピグの移動方向後端に水圧を掛けて前記ピグを移動させるポンプと、を含み、
前記ピグは、前記リアクターのガラス管内径よりも大きな外径を有し、先端側には丸みの曲面形状を有すると共に、後端側にはピグ下流側に液体が漏れないように止水する所定の厚みを持つ止水部材を有し、かつ前記止水部材寄りの外周面には、複数本の回転切れ込み溝がそれぞれ傾斜して形成された砲弾型であって、
前記ピグには、複数個の磁石が等間隔で円周方向に埋め込まれており、
前記ピグ回収機構は、
第1バルブ、第2バルブ及び磁気センサーとを備え、
前記第1バルブは、前記リアクターの流路出口側寄りに設けられ、
前記第2バルブは、前記第1バルブと前記循環タンク側との間に設けられ、前記培養液が前記循環タンクに戻される一方の流路と、汚水や藻類を高濃度に含んだ有価物としての固形分を取り出す他方の流路とに切り替え可能な三方弁とされ、
前記磁気センサーは、前記リアクターの流路出口側と前記第1バルブとの間に設けられ、
前記ピグが前記磁気センサーに近づくと、前記磁気センサーが前記ピグの磁石を感知して前記第2バルブの前記一方の流路から前記他方の流路に切り替えられることを特徴とする閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構。
【請求項2】
前記リアクターのガラス管内径よりも大きな外径を有するとともに、所定の厚みを持つ止水部材を両端側に有してなる円柱形状のピグを含み、
前記円柱形状のピグには、前記磁気センサーにて感知可能な複数個の磁石が等間隔で円周方向に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構。
【請求項3】
前記円柱状のピグは、所定間隔をあけて複数個挿入されており、前記円柱状のピグとピグの間には洗浄用の薬液が投入されていることを特徴とする請求項2に記載の閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構。
【請求項4】
前記磁気センサーは、前記砲弾型のピグと前記円柱状のピグのいずれか一方又は双方が接近すると前記磁石の磁力を感知し、前記リアクターの管内における前記各ピグの管内移動速度が制御可能とされることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類培養装置の洗浄機構、特に、閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)の管の汚れを取り除くための治具であるピグによる閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構に関する。
【背景技術】
【0002】
培養装置の閉鎖系フォトバイオリアクターは、特許文献1に記載されているように、その構造は、藻類培養中のセルを最適量の可視光線に均一に露光するための手段を提供することによって、光合成の過程を最適化するように設計される。そして、光合成反応によって生成される酸素分子を除去する手段と、光バイオリアクターへの反応ガス(例えば二酸化炭素等)の追加を制御する手段とを含む構成がとられている。
【0003】
このような配管を用いた閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)では、レースウェイなどのオープンポンドと異なり、デッキブラシなどで擦って洗浄するわけにはいかない。そこで、現状においては、洗浄液等の薬品でバイオマスを溶かし、殺菌する方法がもっとも一般的とされている一方、配管の曲がりや距離に関係なく効率的に行うために管内スケールを除去する治具であるピグを用いたピグ洗浄が洗浄機構として用いられている。
【0004】
このようなピグ洗浄とは、一般的には非特許文献1にて説明されているように、配管内にピグと呼ばれる清掃材を通過させ、管壁に付着したスケールを回収させる水処理装置における通常工法であり、ピグをランチャー内へセットした後、圧送を開始し、回収されたスケールやピグの状態を確認して洗浄が完了される。
【0005】
また、特許文献2では、ピグを製品移送管に出入り可能に収容保持するステーションに隣接して、該ステーションよりも内径の大きな洗浄室を設けておいて、ピグやステーションの洗浄が必要になったら、ステーション内のピグを洗浄室に移動させて、ステーション側から洗浄室に洗浄液を通して、ピグとステーションとの洗浄を実施するピグ洗浄方法が開示されている。この発明によれば、ステーションやピグを洗浄する場合には、ピグ移動機構を作動させてステーション内のピグをステーションに隣接された洗浄室に移し、次いで、洗浄液送給機構を作動させてステーション及び洗浄室に洗浄液を流せばよく、ステーションを分解してピグを取り出したりせずとも、管路をクローズド状態に保ったままで、ステーションやピグ自体の洗浄を実施できるとしている。
【0006】
また、特許文献3では、洗浄の対象となる管の内径より大きな直径を有し、且つ一列に配置された複数の球形ピグと、複数のピグに一体的に被せられたネットと、ピグ洗浄具を管の他端部側から送入し管内のピグ洗浄具を管の一端部側から真空吸引して一端部側に移動させるピグ洗浄方法が開示されている。この発明によれば、軟質性の材料で形成され、管の内径より大きな直径を有する複数のピグにネットを被せたピグ洗浄具を管に送入し、このピグ洗浄具を真空吸引によって移動させるので、管内の洗浄液や汚れ物質に圧力が作用しない。従って、洗浄対象の管と洗浄対象外の管との間に設けられた弁に隙間がある場合でも、洗浄中の管内における洗浄液や汚れ物質等が洗浄対象外の管に流れ込むのを抑制できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表平5-502158
【文献】特開平9-192620号公報
【文献】特開2010-051885号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】配管ポリピグ洗浄、オンライン[令和4年5月18日検索]インターネット<URL:https://www.xn--vzz623b.jp/others/piging.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のピグを用いた洗浄方法は、ピグ洗浄時は配管を外して、装置を使用していない状況で行われ閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)を考慮したピグ洗浄とはなっていない。すなわち、培養を行いながらもピグ洗浄できるようするために培養液を維持しつつ、ピグの送入・回収ができる構造とするのが好ましい。
【0010】
そこで、本発明の閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)で微細藻類等の光合成生物を培養するにあたり、透明の管の汚れを取り除いて、透明の管内部に常に光が透過するように洗浄・維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構であって、
藻類を含む培養液を内部に収容する循環タンクと、
前記藻類を光合成により培養するガラス管式の閉鎖系のリアクターと
前記循環タンクの培養液前記リアクターへと流入さる流路としての第1接続管と、
前記リアクター内を通過した培養液前記循環タンクへと流出さる流路としての第2接続管と、
前記第1接続管に備えられ、前記閉鎖系のリアクターの管内を移動し管内の前記藻類の培養を行うとともに、前記藻類を刮ぎ取り洗浄するピグを挿入するピグ送入機構と、
前記第2接続管に備えられ、前記リアクターの管内を通過したピグを回収するピグ回収機構と、
前記第一接続管において、前記ピグの移動方向後端に水圧を掛けて前記ピグを移動させるポンプと、を含み、
前記ピグは、前記リアクターのガラス管内径よりも大きな外径を有し、先端側には丸みの曲面形状を有すると共に、後端側にはピグ下流側に液体が漏れないように止水する所定の厚みを持つ止水部材を有し、かつ前記止水部材寄りの外周面には、複数本の回転切れ込み溝がそれぞれ傾斜して形成された砲弾型であって、
前記ピグには、複数個の磁石が等間隔で円周方向に埋め込まれており、
前記ピグ回収機構は、
第1バルブ、第2バルブ及び磁気センサーとを備え、
前記第1バルブは、前記リアクターの流路出口側寄りに設けられ、
前記第2バルブは、前記第1バルブと前記循環タンク側との間に設けられ、前記培養液が前記循環タンクに戻される一方の流路と、汚水や藻類を高濃度に含んだ有価物としての固形分を取り出す他方の流路とに切り替え可能な三方弁とされ、
前記磁気センサーは、前記リアクターの流路出口側と前記第1バルブとの間に設けられ、
前記ピグが前記リアクターから前記磁気センサーに近づくと、前記磁気センサーが前記ピグの磁石を感知して前記第2バルブの前記一方の流路から前記他方の流路に切り替えられる閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構であることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記リアクターのガラス管内径よりも大きな外径を有するとともに、所定の厚みを持つ止水部材を両端側に有してなる円柱形状のピグを含み、
前記円柱形状のピグには、前記磁気センサーにて感知可能な複数個の磁石が等間隔で円周方向に埋め込まれている閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構であることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記円柱状のピグは、所定間隔をあけて複数個挿入されており、前記円柱状のピグとピグの間には洗浄用の薬液が投入されている閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構であることを特徴とする。
第4の発明は、第2の発明又は第3の発明において、前記磁気センサーは、前記砲弾型のピグと前記円柱状のピグのいずれか一方又は双方が接近すると前記磁石の磁力を感知し、前記リアクターの管内における前記各ピグの管内移動速度が制御可能とされる閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)で微細藻類等の光合成生物を培養するにあたり、透明の管の培養液接液部の汚れを取り除き、透明の管内部に常に光が透過するように簡便に洗浄・維持を可能とする閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本実施形態に係る藻類培養装置を模式的に示す図である。
図1B】他の実施形態に係る藻類培養装置を模式的に示す図である。
図2】本実施形態に係るピグの一形態の形状を示す図で、(a)は側方の図で、(b)は後方の図である。
図3】本実施形態に係るピグの他の一形態の形状を示す図で、(a)は側方の図で、(b)は後方の図である。
図4A】本実施形態に係るピグ送入機構の概略図である。
図4B図4Aの本実施形態において、(a)は、ピグ送入が実施されていない通常時を、(b)はピグ送入機構のピグ送入の状態を、(c)はピグ送入機構のピグ送りによる洗浄開始の状態をそれぞれ示す図である。
図5A】他の実施形態に係るピグ送入機構の概略図である。
図5B図5Aの他の実施形態において、(a)は、ピグ送入が実施されていない通常時を、(b)はピグ送入機構のピグ送入の状態を、(c)はピグ送入機構のピグ送りによる洗浄開始の状態をそれぞれ示す図である。
図6】本実施形態に係るピグ洗浄機構の他のピグ送入機構を示す図である。
図7】本実施形態に係るピグ洗浄機構の他のピグ送入機構を示す図である。
図8】本実施形態に係るピグ洗浄機構のピグ移動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[閉鎖系フォトバイオリアクター]
本実施形態に係る藻類を培養する装置は、管型の閉鎖系フォトバイオリアクターで、例えば太陽光やLEDの照射を十分に受けることが可能な屋外や屋内場所に設置される。このような閉鎖系フォトバイオリアクターのピグ洗浄機構は、藻類を含む培養液を内部に収容する循環タンクと、藻類を光合成により培養するガラス管式のリアクターと循環タンクの培養液がリアクターに流入される流路の第1接続管と、リアクターの培養液が循環タンクに流出される流路の第2接続管と、第1接続管には、リアクターの管内を洗浄するピグを挿入するピグ送入機構と、第2接続管には、リアクターの管内から排出されるピグを回収するピグ回収機構と、を備えている。
なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、藻類を含んだ培養液M(以下、単に「培養液M」ともいう。)の供給と貯留のための循環タンク2と、微細藻類を培養するリアクター3と、培養液Mをリアクター3に圧送するポンプ4と、培養液Mに二酸化炭素(CO)を供給するガス溶解管5とを備える。循環タンク2の底方から出た循環液を圧送するポンプ4と、さらにポンプ4からとリアクター3の入口とは第1接続管6で連通しており、リアクター3の流路出口から循環タンク2とは第2接続管7で連通している。ガス溶解管5は、循環タンク2寄りに位置して第2接続管7とU字形状として連通している。
また、第2接続管7におけるガス溶解管5とリアクター3との中間位置に、液中のpH(水素イオン指数)、溶存酸素濃度、液温を測定するための測定槽9が備えられている。
【0016】
培養液Mは、微細藻類を培養するための液で、例えば窒素、リン等の養分及び二酸化炭素を含んだ水である。
【0017】
循環タンク2は、タンク本体21と、タンク蓋22と、排気管23と、ジャケット24とを有する。タンク本体21は、槽状の空間で、その底面2aには、タンク本体21内部の清掃時のドレン溜めとして用いられる第1ドレン弁26が設けられている。タンク本体21は、フレーム25により支持されている。
また、タンク蓋22は、例えば板状で、ごみ等の異物が入らないようにタンク本体21の上部を閉塞している。
また、循環タンク2には、図1の記号「▽」まで藻類を含んだ培養液Mで満たされている。このため、液位レベル計(図示せず。)が循環タンク2内の培養液Mの液位を検出して、この液位レベル計の検出結果に基づいて、培養液Mの液位(記号「▽」)が絶えず所定値範囲となるように制御可能とされる。また、温度計(図示せず。)が循環タンク2内の培養液Mの液温を検出している。そして、この温度計の検出結果に基づいて、培養液Mの温度が絶えず所定値範囲となるように制御可能とされる。
【0018】
排気管23は、タンク蓋22から突出したU字管が設けられている。これにより、循環タンク2内の培養液Mに悪影響を及ぼす不純物、例えば、本実施形態では、ガス溶解管5から供給されるガス(気体)が化石燃料を燃焼させた際に発生する排気ガスであった場合等、二酸化炭素以外の気体窒素や酸素が大気中に放出される。
また、外部からの異物混入が無いように排気管23の外側先端にネット23aが設けられている。
【0019】
また、ジャケット24は、循環タンク2内の培養液Mの温度を所定の温度に保つために、温水の配管にて円筒状に覆われている。そして、ジャケット24には温水を流入・流出する加熱用温水流入口24aと加熱用温水流出口24bとを有する。加熱用温水流入口24aは、循環タンク2よりも鉛直方向の高さが高く、加熱用温水流出口24bはそれよりも低い位置に配置される。
これにより、冬場の寒さにより循環タンク2の培養液Mの温度が低くなると藻類の育成が阻害され、逆に夏場の暑さにより循環タンク2の培養液Mの温度が高くなっても、やはり藻類の育成が阻害されるため、所定の温度として例えば約20℃以上に保たれるようになっている。なお、藻類の培養温度の好ましくは約23℃とされる。所定の温度の設定については、一例であり、藻類に適した温度に設定することが好ましい。
【0020】
第1ドレン弁26は、循環タンク2内の培養液Mを排出する弁である。循環タンク2内の清掃時の排液に使用する。また、レベル計(図示せず。)の検出結果に基づいて、培養液Mの液位が所定値を超える場合、第1ドレン弁26から培養液Mを回収し、調整することも可能である。
第2ドレン弁27は、循環タンク2内の培養液Mをサンプリングする弁である。循環タンク2内の状況の確認検査に使用する。
また、第1ドレン弁26の手前にポンプ4との流路(第1接続管6)を開閉する止水弁28が設けられている。この止水弁28はポンプ4を長期停止してメンテナンス作業の際に使用する。
【0021】
リアクター3は、培養液Mに含まれる藻類に光合成を行うための光を透過可能な材料を用いて円筒の管状に形成され、例えば免振構造のリアクターフレーム31により支持される。また、円筒の管端部をU字管で繋ぎ、上下方向に多段的に管路(流路)が形成される。このようなリアクター3の管路の繋目は、ピグが管内を止まらずに円滑に進むように隙間や段差が発生しないように結合されている。
このようなリアクター3は、管路(流路)が長さ例えば30m、50mの規模が大きい屋外用の閉鎖系フォトバイオリアクターの場合であっても、多段式の螺旋形状とすることによりリアクター3の設置面積を抑えつつ、リアクター3の表面積を増やすことができる。この結果、藻類に対して光合成可能な波長の光をより多く照射することができる。
また、藻類が光合成可能な波長の光を照射する光源部(図示せず。)を備えて光を効率的に供給することができるようにしても良い。
【0022】
ここでのリアクター3のガラス管32は、軟化温度が高く熱膨張係数が小さく化学的に安定であるケイ酸(SiO)ガラス管が用いられているが、これに限定されることはなくソフトプラスチック(LDPE)等の樹脂製のものを用いても良い。
また、最下段の管路には、第1接続管6と接続されて培養液Mが供給されリアクター3への流路入口3aと、第2接続管7と接続されて培養液Mがリアクター3から排出される流路出口3bとが設けられている。
【0023】
ポンプ4は、培養液M及び後述する刮取り用ピグ及び薬液洗浄用ピグをリアクター3に圧送するものである。本実施形態のポンプ4は、回転数の高い回転式ポンプではなく、回転数の低い容積式ポンプが用いられる。これは、回転式ポンプの強い流れによって培養液Mが供給されると、その強い流れによって培養される微細藻類の種類によっては藻類がちぎれて死滅するおそれがある。これを回避するため、一定容積にある分量だけ流れる容積式ポンプであれば微細藻類の育成に沿った緩やかな流れとしている。
【0024】
ガス溶解管5はU字管で、リアクター3の流路出口3b側に配置され第2接続管7と接続された第1配管5aと、循環タンク2側に配置され第2接続管7と接続された第2配管5bとからなり、それぞれ鉛直方向の上下に延在している。上方向は第2接続管7に接続され、下方向は第1配管5aと第2配管5bとが屈曲して互いに接続されている。これにより、第1配管5aの流路と第2配管5bの流路がU字状の流路となる。
【0025】
また、第1配管5aのU字状近傍には、培養液Mに二酸化炭素ガスを供給して液中に溶解させるための二酸化炭素ガス供給部5cが備えられている。二酸化炭素ガス供給部5cの供給口5dから供給される二酸化炭素は、培養液M中で気泡となるが、溶解しやすくするため、気泡の径が例えば、例えば5mm以下であることが望ましい。また、二酸化炭素ガス供給部5cから培養液Mに供給される第1配管5aの流路の断面積における気体量は、例えば、2.0NL(ノルマルリットル)/cm/min以下であることが好ましく、1.0NL(ノルマルリットル)/cm/min以下となることがより好ましい。
【0026】
ガス溶解管5から供給されるガス(気体)は、例えば化石燃料を燃焼させた際に発生する排気ガスであっても良い。例えば、水素製造装置を用いて都市ガスから水素を製造する際に排出する二酸化炭素をフォトバイオリアクターに直接投入することもできる。このような排気ガスは、二酸化炭素を含んでいるため、大気中に放出する二酸化炭素の量を低減でき、カーボンニュートラルに貢献可能とされる。ここで、光合成により生成する酸素分子を効率よく培養液M中から取り除くために、排気ガス中に含まれる酸素の濃度は、10%以下となることが望ましい。
【0027】
二酸化炭素ガス供給部5cの供給口5dは、第1配管5aの下部に配置されていることから、二酸化炭素の微細な気泡が下部側で生成される。そして、生成された気泡が上昇すると、第1配管5a内の培養液Mは、上向きの推進力を受ける。よって、第1配管5a内の培養液Mは上昇して第2接続管7へ流れる。一方で、第2配管5b内の培養液Mは、第2接続管7内から引き込まれる。
さらに第2配管5b内の培養液Mが下向きに流れるために、第2接続管7を流れる培養液Mの一部が第2配管5b内に引き込まれる。これにより、第1配管5a内から第2接続管7内に戻った培養液Mの一部は、ガス溶解管5内に再度引き込まれるようになっており、二酸化炭素の溶解効率が向上する。
【0028】
ガス溶解管5の供給口5dから第2接続管7の液面までの距離は、1.5m以上、好ましくは、1.5m以上6m未満、さらに好ましくは1.5m以上、2.5m未満である。これによれば、気泡サイズが例えば5mm以下の場合、二酸化炭素の溶解率が90%以上となり、効率的な溶解が可能となる。すなわち、ガス溶解管5の供給口5dから第2接続管7の液面までの距離を所定距離確保することで、二酸化炭素が溶解するのに十分な距離が確保されていることから培養液Mに溶解する二酸化炭素の量が従来と比べて格段に増加する。
【0029】
また、ガス溶解管5の第1配管5a及び第2配管5bは、鉛直方向に対して傾斜していない。よって、配管の内面に気泡が付着しにくい。仮に気泡が付着すると気泡同士が接触して径が大型化した気泡が形成され、二酸化炭素の溶解効率が低下するが、そのような事態が避けられる。
【0030】
第1接続管6には、ポンプ4からの流量を測定する流量計61と、第1接続管内部の清掃時のドレン溜めとして用いられるドレン弁62が設けられている。
また、ガス溶解管5とリアクター3とを接続連通する第2接続管7上で、ピグ10が衝突しないようにピグ回収機構82の川下の場所に、リアクター3のガラス管32内の液中のpH、溶存酸素濃度、液温を測定するための測定槽9が備えられている。
【0031】
この測定槽9は、液貯留タンクであり、リアクター3から培養液Mが流れ込むと共に、ガス溶解管5に向かって流れ出て、一定の液面の高さまで満たされている。そして、測定槽9には溶存酸素濃度(Dissolved Oxygen:DO)を測定する溶存酸素濃度計91、pHを測定するpH計92、液中の温度(T)を測定する液温計93が設けられている。
溶存酸素濃度計91は、微細藻類に光があたると、二酸化炭素を吸収して酸素を生成するので、その溶存酸素量を測定する。
pH計92は、光合成によって二酸化炭素を吸収するとpH値が上昇するので、そのpH値を測定する。
溶存酸素濃度計91は、水中に溶解している酸素を計測でき、その濃度は単位容積当たりの酸素量(mg/L)で表す。光合成による培養プロセスにおいて溶存酸素を計測することは、培養経過を監視する基本的かつ重要な仕様とされる。
液温計93は、例えば、二種類の異なる金属導体で構成された温度センサーを用いた熱電対式の工業用温度計温度計である。これにより、循環タンク2内の培養液Mの温度が所定の温度(T)を維持しているか測定され、モニター監視により適温に維持制御される。
【0032】
そして、これらの測定結果は、図示しない無線通信手段を介して作業管理者に通知され、時間スケール毎にグラフ化されて常時モニター監視される。
なお、測定槽9に限定されないで、第2接続管への埋め込みセンサーを用いて監視することでも構わない。これらのモニター監視を常時することによって、微細藻類の光合成効率(生産効率)を最適化することができる。
【0033】
[ピグ洗浄機構]
本実施形態に係るピグ洗浄機構8は、ピグ送入機構81とピグ回収機構82とで構成されている。
図1Aに示すように、藻類培養装置のピグ洗浄機構は、藻類を含む培養液Mを内部に収容する循環タンク2と、藻類を光合成により培養するガラス管式のリアクター3と、循環タンクの培養液Mがリアクター3に流入される流路の第1接続管6と、リアクター3の培養液M循環タンク2に流出される流路の第2接続管7と、第1接続管6には、リアクター3内を洗浄するピグ10を挿入するピグ送入機構81と、第2接続管には、前記リアクターの管内から排出されるピグ10を回収するピグ回収機構82と、を備えている。
【0034】
次に、図4Aを用いてピグ送入機構81の概略について説明する。
図4Aに示すように、ピグ送入機構81は、ピグ後方より水圧をかけピグ10を移動させるポンプ4と前記リアクター3との間に設けられ、ピグ10が入る着脱自在のアタッチメント(付属部材ともいう、以下同じ。)81cの両端側の流路に止水可能なバルブ81a、81bを備えている(図1の点線の囲い参照)。
そして、ピグ送入機構81は、ピグが設置された際、ピグ後方より水圧をかけピグを移動させるポンプ4とリアクター3の流路入口3aとの間の第1接続管6に設けられており、ピグ10が入るアタッチメント(81cの両端側の流路に止水可能なバルブ81a、81bの2つを備えている。
【0035】
次に、図5Aを用いてピグ回収機構82の概略について説明する。
図5Aに示すように、ピグ回収機構82は、リアクター3の流路出口3b側の第1接続管6に設けられ、ピグ10が入る着脱自在のアタッチメント81cの両端側の流路に止水可能なバルブ82a、82bを備えている。
【0036】
また、ピグ10は、図2に示すように、藻類の刮ぎ取り用の砲弾形状のピグ11と、図3に示すように、薬液洗浄用の円柱形状のピグ12と、2つのタイプを使い分けている。また、ピグ回収機構82のバルブ82bは三方弁(三方切替弁ともいう。)を用いているが本発明はこれには限定されるものではない。
【0037】
本実施形態でのピグ10は、リアクター3のガラス管32の内部を洗浄するための砲弾型形状若しくは円柱型形状とする担体で、ピグ玉とも呼ばれる。砲弾型形状は、光合成により培養された微細藻類の刮ぎ取り用に用いられ、また、円柱型形状は、薬液洗浄用に用いられる。
使用時にはピグ10に水を含ませる他、付着物は生物由来なので洗浄の場合、次亜塩素酸塩やアルカリ(例えば水酸化ナトリウム、重曹等)、界面活性剤等の洗剤等を溶かした液体が使われる。
【0038】
ピグ10の素材は、スポンジ状で、材質が例えばポリエチレン、ポリウレタン、メラニン、ゴムなどの樹脂の発泡体や成型体である。ピグ10のサイズは、円柱径(d)がリアクター3のガラス管32の場合、第1接続管6及び第2接続管7の内径の約1.1倍から1.5倍に、また、ピグ10の長さ(L)は円柱径(D)の約1.5倍から3倍にしている。
このように円柱径(D)をリアクター3のガラス管32、第1接続管6及び第2接続管7の内径よりも大きくしていることで、菅内の内周面との当接が適度に増し、微細藻類の刮ぎ取りや洗浄に漏れが無いようにしている。
【0039】
ピグ10の内、微細藻類の刮ぎ取り用のピグ11は、図2(a)に示すように、先端側が丸みの曲面形状で、後端側に回転切れ込み溝11bが傾斜線に入った砲弾型である。このように、ピグ11の先端側が丸みの形状とすることで、リアクター3のU字部分を通過する際には曲がりやくなる。さらに、後端側に斜めの回転切れ込み溝11bが入っていることで、ピグ11の回転により刮ぎ取りの効果を増した機構となる。
【0040】
また、ピグ11の後端部には、止水(止液)加工された所定の幅を持った止水部材11cを有している。この止水部材11cを有していることで、ピグ11がリアクター3の管内を移動する際、スポンジ内にあった液体がピグ11の後ろ側に漏れないようにしている。この止水加工の材質としては、引っ張りに強く裂けにくい素材が好ましく、例えば、スポンジと接着剤で接着される柔軟な例えば塩化ビニル樹脂やポリエチレン等が素材として用いられる。これにより、ピグ11の後方より、水圧をかけ、リアクター3の管内部でピグ11を押し出し移動させるためにも、このような止水加工が効果を奏している。
【0041】
洗浄用のピグ12は、図3(a)に示すように、円柱状で、両端に所定の厚みを持った止水(止液)加工の止水部材12bを有している。特に、図2(a)に示すようなピグ11のように先端側が丸みの形状としないのは、洗浄用のピグ12の角部で管の内周面の固形物を剥離して洗浄できるからである。
【0042】
また、図2(a)(b)及び図3(a)(b)に示すように、刮ぎ取り用のピグ11、洗浄用のピグ12の中間部よりも先端側においては、円周内面状に粒上の磁石12aが等間隔で例えば12個埋め込まれている。なお、磁石個数が12個に限定されることはなく、ピグ10(11、12)の大きさや磁力強度によって、その個数を変えても良い。磁石素材は、優れた耐食・耐熱性がある例えばサマリウムコバルト磁石を用いるのが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
ピグ10(11、12)にこのような磁石11a,12aを埋め込むことにより、リアクター3の配管外側の磁気センサー82cによる磁力を使って検出対象に接触することなくスイッチ操作ができる機構としている。この機構によればリアクター3の配管内のピグ10(11,12)の管内移動速度を任意に制御できる。例えば、また、汚れの強い曲がり場所があれば、ピグ10(11,12)を回収する位置手前で速度を落とすように、ポンプ4に制御信号を送り、ピグ10後方より水圧をかけている管内の押し出しについて、移動の速度を弱めて念入りに洗浄できるように、ポンプ4に制御信号を送り水圧を弱めることができる。
なお、磁気センサー82cは、リードスイッチ、ホール素子、磁気抵抗素子を使った方式があり、いずれの方式でも構わない。
【0044】
次に、ピグ送入機構81は、リアクター3と、リアクター3へ培養液を送るポンプ4との間に設置され、ピグ10が入る長さの管(以下、アタッチメントともいう。)の左右で止水できるようにバルブ(弁)81a、81bが設置されている。本ピグ送入機構81は、ヘルール接続やユニオンナット継手で簡便にバルブ間の配管を取り外せる機構である。ヘルールとは配管同士、または配管とバルブを接続するときの接続方式の一つで、クランプ金輪で接続部同士を挟み込んで留めるもので接続が簡単とされる。ユニオンナット継手は、分割式でパッキン内蔵の配管のメンテナンス作業が容易であるとされる。
【0045】
ピグ回収機構82は、リアクター3からの流路出口3bに設置され、ピグ10を回収し取り出す機構である。ピグ10が入る長さの管アタッチメント81cが外せるように左右で止水できるようにバルブ(弁)82a、82bを設置し、ヘルール接続やユニオンナット継手で簡便にバルブ間の配管を取り外せる。このバルブ弁82bは、排出弁を止水弁と一体となった三方弁を用い、培養液Mが循環タンク2に戻される方向と、汚れ・固形分を取り出す分割形(切替形)としている。このように三方弁は、ピグ10が洗浄した汚れ・固形分を分離回収する切り替えの構造を有する。
【0046】
バルブ弁82bの循環タンク2側に戻る方向にある二酸化炭素が不足気味となった培養液Mにあっては、ガス溶解管5で二酸化炭素溶解されてリッチな培養液Mにして戻される。バルブ弁82bの他方の排出される方向(図1の矢印符号kで示す。)には汚水や固形分を分離回収するスクリーン等固液分離装置(図示せず。)が接続される。また、固形分等を取り除いた培養液Mは循環タンク2に戻して利用することにしても良い。なお、スクリーン等固液分離装置は、閉鎖系フォトバイオリアクターに必ずしも必須ではない。
【0047】
[ピグ送入及び回収の手順]
先ず、図4Bを用いて、ピグ送入して洗浄を開始するまでの手順を説明する。図4B(a)は、ピグ送入が実施されていないピグ送入機構81の状態(ここでは「通常時」という。)を、図4B(b)はピグ送入機構81のピグ送入の状態を、図4B(c)はピグ送入機構81のピグ送りによる洗浄開始の状態を、それぞれ示している。
第1バルブ81aは第1接続管6のポンプ4側に、第2バルブ81bはリアクター3側に備えられ、流路を開閉し流体をコントロールするゲートバルブ(ゲート弁)またはボールバルブ(ボール弁)である。そして、第1バルブ81aと第2バルブ81bとの間にアッタチメント81cが取り付けられる。なお、ここでのピグ10は、薬液洗浄用の円柱状のピグ12を図示しているが、砲弾形状のピグ11でも本実施範囲である。
【0048】
先ず、図4B(a)において、ピグ10送入がされていない通常時は、ピグ送入機構のバルブ81aとバルブ81bとの間には、空洞のアタッチメント81cが取り付けられ、ボルブ81aとバルブ81bと共に開栓されてポンプ4から培養液Mが圧送されてくる。
【0049】
次に、図4B(b)において、ピグ送入機構81において、ピグ10を送入する前に、ポンプ4を停止して培養液Mの全ての循環を停止させる。次いで、バルブ81a及びバルブ81bをと閉栓し培養液Mが漏れないようにした後に、アタッチメント81cの空洞にピグ10を挿入する。アタッチメント81cに砲弾用ピグ11を挿入する場合は、先端側がリアクター3側に向けて装填され、洗浄用の円柱ピグ12の挿入する場合は、ピグ12内の磁石12aが先端に近い側をリアクター3側に向けて装填される。
【0050】
その後、図4B(c)において、第1バルブ81a、第2バルブ81bを開栓状態としてポンプを作動させ、ポンプ4の圧送により、ピグ10がアタッチメント81cから第2バルブ81bを通過し、リアクター3へと順次移動させる。そして、ピグ10がリアクター3内を移動することにより、リアクター3のガラス管32内壁を摺動し、ガラス管32の内壁に付着した微細藻類の剥離固形物や異物が除去される。
【0051】
次に、図5Bを用いて、ピグを回収する手順を説明する。
図5B(a)は、ピグ回収が実施されていないピグ回収機構82の状態(ここでは「通常時」という。)を、図5B(b)はピグ回収機構82のピグ回収の状態を、図5B(c)はピグ回収機構82のピグ回収による洗浄完了の状態を、それぞれ示している。第1バルブ82aはリアクター3側に、第2バルブ82bは循環ポンプ3側に備えられ、第1バルブ82aは第1バルブ81a、第2バルブ81bと同じく単に流路を開閉し培養液M流れをコントロールするゲートバルブ(ゲート弁)またはボールバルブ(ボール弁)であるが、第2バルブ82bは流路を分割する三方弁である。第2バルブ82bは、三方弁であるが、通常状態での流路は循環タンク2側のみで分割されていない。これは、ピグ洗浄がまだ完了されていないからである。
【0052】
図5(b)において、ピグ回収機構82の第1バルブ82aは、開栓されたままで、ピグ10がリアクター3から回収機構の第2バルブ82b(三方弁)に近づくと、磁気センサー82cがピグ10の磁石11a(12a)を感知して第2バルブ82bの循環タンク2への流路を閉栓するように指令制御し、汚水や藻類を高濃度に含んだ有価物としての固形分を分離回収するスクリーン等固液分離装置(図示せず。)側に切り替えられる。
【0053】
そして、図5B(c)において、ピグ10がピグ回収機構82の第1バルブ82aと第2バルブ82bとの間の空洞のアタッチメント81c内にピグ10が止まったときに、ポンプ4を停止するようにして培養液Mの循環を一時停止させる。次いで、第2バルブ82bを閉栓し培養液Mが漏れないようにした後に、アタッチメント81cを取り外しピグ10が回収される。
【0054】
ピグ10を回収した後、第1バルブ82aと第2バルブ82bとの間に空洞になったアタッチメント81cを装着し、第1バルブ82a、第2バルブ82bを再び開栓状態とし、ポンプ4を作動させることでリアクター3に培養液Mを充填させる。このように、リアクター3のガラス管32内部にピグ10を流通させることで、リアクター3を分解することなくリアクター3の内部を容易に清掃することができる。
【0055】
本実施形態の発明によれば、管型の閉鎖系のリアクター3で微細藻類等の光合成生物を培養するにあたり、透明の管の培養液接液部の汚れ、付着藻類等を取り除き、透明の管内部に常に光が透過するように簡便に洗浄・維持を可能とすることができる。
【0056】
また、リアクター3の水平のガラス管のガス泡溜りも除去することができる。
また、透明の管の内部の汚れの除去は、例えばタイマーや自動弁により発射回収することができる。
さらに、ピグ10により刮ぎ取った藻類は培養液Mに較べて、高濃度に藻類が濃縮されているので、次工程での濃縮工程の負荷を軽減することができる。
【0057】
[ピグを用いた薬液洗浄の他の実施形態]
今まで説明してきたピグ洗浄機構のアタッチメント81cには、1個のピグ10が挿入されているが、ここでは複数個のピグ10が一つのアタッチメント83に挿入される他の実施形態を図6及び図7を用いて説明する。これにより、刮ぎ取りと洗浄が一度で可能となり、一度の洗浄であっても複数のピグ列によりプレ洗浄から仕上げ洗浄までが一体され簡便に行うことができ、合理的である。
図6のピグ送入機構において、循環タンク2から培養液Mが流れる第1接続管6に三方弁83aを設け、三方弁の一つを本線である培養液Mの入力流れ(矢印符号83a1)に、三方弁の他の一つに複数個のピグ10(11,12)の入力流れ(矢印符号83a2)に、これらの流れが合流した出力流れ(矢印符号83a3)を説明している。
【0058】
また、三方弁83aの他の一つの入力流れ(矢印符号83a2)には、図6に示すように、一つのアタッチメント83のアタッチメント本体83bには5個のピグが連続して挿入されており、最先頭の一番目は刮ぎ取り用の砲弾形状のピグ111、2番目以降5番目までは薬液洗浄用の円柱形状のピグ121~124である。
一番目砲弾形状のピグ111としているのは、進行する方向からの圧力が少ない流線形とすること、円柱形状よりもガラス管32の90度ある屈曲部の箇所もスムーズに流れるからである。
【0059】
また、アタッチメント83のアタッチメント本体83bの三方弁方向にはゲート弁が設けられ、アタッチメント本体83bの三方弁と反対方向には、ピグ10(111,121~124)がポンプ圧送又は水道水圧送により順次押出される。
【0060】
これらのピグ10(111,121~124)の間には洗浄用の薬液が投入されるため、その方法について説明する。薬液は、付着物は生物由来なので洗浄の場合、次亜塩素酸塩やアルカリ、洗剤等を溶かした液体が使われる。
図6に示すように、アタッチメント本体83bにおける砲丸形状のピグ111と円柱形状のピグ121との間にプレ洗浄液を入れるには、ピグ111が近接センサー83eに近づくと、これに反応し仕切り電磁弁83cを開いて、アタッチメント本体83b内からエア抜きを行う。エア抜きが終了されると仕切り電磁弁83cを閉じた後、仕切り電磁弁83dが開き所定量の洗浄液が順次入れられる。洗浄液が入れられたのが終わると仕切り電磁弁83dを閉じる。同様な方法で、ピグ121とピグ122との間、ピグ122とピグ123との間、ピグ123とピグ124との間に、全ての洗浄液の注入が終了したらゲート弁84が開き、アタッチメント本体83bの三方弁と反対方向にあるポンプ圧送又は水道水圧送により順次押出される。そして、三方弁83aと流れ83a2、第1接続管6を通過してリアクター3のガラス管32へと導かれる。
【0061】
ピグ111からピグ124までの全てが、第1接続管6の本線側に移動したら、アタッチメント本体83bに本線からの培養液が流入しないように仕切り電磁弁84が閉じられ、アタッチメント本体83b内のドレンを抜くために仕切り電磁弁83dが開き、ドレンが抜き終えたら閉じられる。
【0062】
次の他の実施形態として、図7のピグ送入機構81は、第1接続管6に三方弁83fを別に配置し、アタッチメント本体83bにも仕切り電磁弁85を設けている点で、図6のピグ送入機構81とは異なっている。内容的には記載が重複する記載があるが同様に説明をする。
図7に示すように、循環タンク2から藻類培養液が流れる第1接続管6に2つの三方弁83aと83fを設け、先ず、三方弁83fの一つを本線である藻類培養液の入力流れ(矢印符号83f2)が、分岐して、藻類培養液の入力流れ(矢印符号83f2)がそのまま本線のままの流れ(矢印符号83f1)となる。また、第1接続管6に三方弁83aを設け、三方弁の一つを本線である藻類培養液の入力流れ(矢印符号83a1)に、三方弁の他の一つに複数個のピグ10(11,12)の入力流れ(矢印符号83a2)に、これらの流れが合流した出力流れ(矢印符号83a3)となる。
【0063】
アタッチメント本体83bにおける砲丸形状のピグ111と円柱形状のピグ121との間にプレ洗浄液を入れるには、ピグ111が近接センサー83eに近づくと、これに反応し仕切り電磁弁83cを開いて、アタッチメント本体83b内からエア抜きを行う。エア抜きが終了されると仕切り電磁弁83cを閉じた後、仕切り電磁弁83dが開き所定量の洗浄液が順次入れられる。洗浄液が入れられたのが終わると仕切り電磁弁83dを閉じる。同様な方法で、ピグ121とピグ122との間、ピグ122とピグ123との間、ピグ123とピグ124との間に、全ての洗浄液の注入が終了したら仕切り電磁弁84と仕切り電磁弁85が開き、アタッチメント本体83bの三方弁83fの流れ83f3のとおり、圧送ポンプの液圧により順次押出される。そして、三方弁83aと流れ83a2、第1接続管6を通過してリアクター3のガラス管32へと導かれる。
【0064】
ピグ111からピグ124までの全てが、第1接続管6に移動したら、アタッチメント本体83bに本線からの培養液が流入しないように仕切り電磁弁84と仕切り電磁弁85が閉じられ、アタッチメント本体83b内のドレンを抜くために仕切り電磁弁83dが開き、終えたら閉じられる。
【0065】
図8は、図6及び図7のピグ送入機構により、リアクター3にピグ10(11,12)と薬液が入っている状態の説明である。図8に示すように、刮ぎ取り用の1番目の砲丸形状のピグ111と2番目の円柱形状のピグ121との間にはプレ洗浄水が、2番目の円柱形状のピグ121と3番目の円柱形状のピグ122との間には洗浄液・洗浄剤等が、3番目の円柱形状のピグ122と4番目の円柱形状のピグ123との間には洗浄液・次亜塩素酸等が、4番目の円柱形状のピグ123と5番目の円柱形状のピグ124との間には水等のリンスが投入されている。これにより、刮ぎ取りと洗浄が一度で可能となり、一度の洗浄であっても複数のピグ列によりプレ洗浄から仕上げ洗浄までが一体され簡便に行うことができ、合理的である。
【0066】
[ピグ洗浄機構の他の実施形態]
図1Aに示すような先の実施形態では、ピグ送入機構81とピグ回収機構82が別々であったが、ピグ送入機構81からピグ回収機構82へ連通させることにより、ピグ10がリアクター3の管内を含めループ状にしてピグ洗浄する実施形態について図1Bを用いて説明する。
図1Bに示すように、他の実施形態の閉鎖系フォトバイオリアクター1では、ピグ送入機構81のバルブ81aをゲート弁でなく三方弁に置き換え、バルブ81aの三方弁の一つをピグ回収機構のバルブ82bの三方弁の一つと連通させる配管を設ける。これにより、ピグ回収機構82で回収されたピグ10が配管88を移動して、ピグ送入機構81のアタッチメントに81cにピグ10を戻すことができる環状経路を構築することができる。これにより、連続して、又はタイマー等により間欠してピグ洗浄を継続することができる。
【0067】
さらに、リアクター3の管内のスケールの除去状況を確認しながら、洗浄が必要との判断があれば、ピグ10がこのような環状経路を連続して移動することができる。このように、リアクター3の内部を複数回移動することで、リアクター3のガラス管32内壁に固く付着したスケールや固形物をさらに回収することができる。なお、スケールの除去状況の確認がAI等を用いた自動判定手段を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 閉鎖系フォトバイオリアクター(藻類培養装置)
2 循環タンク
3 リアクター
4 ポンプ
5 ガス溶解管
5a 第1配管
5b 第2配管
6 第1接続管
7 第2接続管
8 ピグ洗浄機構
81 ピグ送入機構
82 ピグ回収機構
9 測定槽
10 ピグ(ピグ玉)
11、111 砲弾形状ピグ
11a 磁石
11b 回転切れ込み溝
11c 止水部材
12、121,122,123,124 円柱形状ピグ
12a 磁石
12b 止水部材
21 タンク本体
22 タンク蓋
23 排気管
24 ジャケット
24a 加熱用温水流入口
24b 加熱用温水流出口
25 フレーム
26、27 ドレン弁
28 止水弁
32 ガラス管
81 ピグ洗浄機構
81a、81b バルブ
81c アタッチメント(付属部材)
82 ピグ回収機構
82a、82b バルブ
82c 磁気センサー
84、85 仕切り電磁弁
91 溶存酸素濃度計
92 pH計
93 液温計
M 藻類を含む培養液


【要約】
【課題】管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)で微細藻類等の光合成生物を培養するにあたり、透明の管の培養液接液部の汚れを取り除いて透明の管内部に常に光が透過するように簡便に洗浄・維持可能とする培養装置の洗浄機構を提供する。
【解決手段】藻類を含む培養液Mを内部に収容する循環タンク2と、藻類を光合成により培養するガラス管式のリアクター3と循環タンク2の培養液Mがリアクター3に流入される流路の第1接続管6と、リアクター3の培養液Mが循環タンク2に流出される流路の第2接続管7と、第1接続管6にはリアクター3の管内を洗浄するピグ10を挿入するピグ送入機構81と、第2接続管7にはリアクター3の管内から排出されるピグ10を回収するピグ回収機構82とを備えている。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8