(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】同心軸多層構造地中熱交換器設置用機材、同心軸多層構造地中熱交換器及び地中熱交換器設置方法
(51)【国際特許分類】
E21B 7/20 20060101AFI20230202BHJP
F28D 21/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
E21B7/20
F28D21/00 Z
(21)【出願番号】P 2020128695
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】300032628
【氏名又は名称】有限会社ジェイディエフ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博
(72)【発明者】
【氏名】豊島 佑佳
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-233031(JP,A)
【文献】特開2012-127580(JP,A)
【文献】特開2000-356433(JP,A)
【文献】特開2019-073931(JP,A)
【文献】特開平01-269862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
F28D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中熱交換器であって、
地中熱交換器は、浅部地中熱交換器と、深部地中熱交換器とを有し、
浅部地中熱交換器の外管は、深部地中熱交換器の外管より大口径であり、
内管に熱媒体を流通させ先端から吐出させた熱媒体を内管と外管の間を循環時に周囲の地盤と外管の間で熱交換を行うものであり、
外管の先端を閉塞して外管を無削孔の地盤に回転圧入により無排土で地中に埋設されることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項2】
地中熱交換器であって、
地中熱交換器は、浅部地中熱交換器と、深部地中熱交換器とを有し、
浅部地中熱交換器の外管は、深部地中熱交換器の外管より大口径であり、
内管に熱媒体を流通させ先端から吐出させた熱媒体を内管と外管の間を循環時に周囲の地盤と外管の間で熱交換を行うものであり、
外管の先端を閉塞して外管を無削孔の地盤に回転圧入により無排土で地中に埋設され、
地表から地中に向けて回転圧入された外管は、該異径による地中熱交換器と浅部地中熱交換器との接続を行う事で大径の浅部地中熱交換器により熱媒体の循環速度を深部より低速にする事により、浅部地中熱交換器内の滞留時間を長くすることで浅部地中熱交換部における熱交換機能を高めることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項3】
前記外管は、第1の熱伝導度を有するパイプで構成され、
前記内管は、前記第1の熱伝導度よりも小さい第2の熱伝導度を有するホースで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地中熱交換器。
【請求項4】
前記外管、浅部地中熱交換器の地表側の端部から所定の範囲を覆う管状の断熱部材及び保護外皮を有することを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の地中熱交換器。
【請求項5】
地中熱交換器の設置方法であって、
地中熱交換器は、浅部地中熱交換器と、深部地中熱交換器とを有し、
浅部地中熱交換器の外管は、深部地中熱交換器の外管より大口径であり、
内管に熱媒体を流通させ先端から吐出させた熱媒液を内管と外管の間を循環時に周囲の地盤と外管の間で熱交換を行うものであり、
外管の先端を閉塞して外管を無削孔の地盤に回転圧入により無排土で地中に埋設することを特徴とする地中熱交換器の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設され、熱媒体を流通させて周囲の地盤との間で熱交換を行う地中熱交換器を設置するための地中熱交換器設置用機材、これを用いて設置される地中熱交換器、及びこれを設置するための地中熱交換器設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設され、熱媒体を流通させて周囲の地盤との間で熱交換を行うための地中熱交換器として、地盤を掘削して設けた穴に外筒を挿入し、外筒の内側に内筒を挿入し、外筒の下端部を閉塞し、内筒の下端部を開口し、外筒と内筒とで熱媒体の流通路を形成したものが知られている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
特許文献1の地中熱交換器は、次のようにして設置されている。すなわち、まず掘削用ドリルで地中に縦孔を掘削する。その際、縦孔への側壁土の崩落を防止するため、掘削した部分に、数メートルの長さの外筒部分を順次継ぎ足しながら外筒を設置してゆく。
【0004】
掘削が終了すると、外筒の内部を通して掘削用ドリルを抜き取り、内筒を外筒の内部に挿入する。内筒の下端部に固着した円板が外筒下端の棚部に達すると、該円板により外筒下端部が閉塞される。そして、縦孔と外筒の外周面との間に珪砂が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の地中熱交換器によれば、ドリルで掘削する事、掘削した部分に、数メートルの長さの外筒部分を順次継ぎ足して形成される事、外筒と内筒の空隙へ珪砂を挿入しながら外筒を引き抜く事等、ドリル掘削で外筒を設置する為に、掘削土の発生処理、既存の地中熱交換機材の熱特性と設置形状による効率低下の発生する地中熱採熱管設置作業で多岐にわたる工種等で、地中熱交換機材の設置にかかる施工コストの低廉化は困難である。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点解決に鑑み、簡便な工程で設置することができて熱伝導度の異なる複数機材を多層同心軸配置によって高い性能を有する地中熱交換器を設置するための地中熱交換器設置用機材、これを用いて設置される地中熱交換器、及びこれを設置するための地中熱交換器設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る地中熱交換器設置用機材は、同心軸多層構造熱交換器としての構造を特色として地中に埋設され、熱媒体を流通させて周囲の地盤との間で熱交換を行う地中熱や太陽熱の自然エネルギーを利用するための地中熱交換器設置用機材であって、
施工対象地盤の既往資料もしくは予め地盤調査(地盤工学会基準JGS1437-2014)により地盤性状を把握し、地中熱交換器設置をする目的で地盤に回転圧入が可能で有効な管径を選択し、地盤強度に適合する採熱管口径を構成し製作する。地盤性状から選定した前述地中熱交換器は無削孔の地盤に拡孔と同時に回転圧入するので掘削土の発生が伴わない為、
地中熱交換器設置用機材の設置は先端を閉塞している状態に拡孔ビットを装着した機材を施工機械の回転力と押し込み力を施工車両重量等の反力を利用して回転圧入による排土は無く施工可能な採熱管の機材の口径を選択する。
【0009】
支持基盤までの地盤強度に到達する場合は地中熱交換器設置用機材の口径を適宜選択することで目的の深度までの施工を行う。
【0010】
沖積層表層部の比較的軟らかい層においては、概、採熱管の施工可能な口径の大きなものが選択する事ができるため、
浅部採熱管は深部採熱管口径より該大口径となり浅部採熱管の先端部に拡孔羽を数枚溶接し拡孔羽回転によって挿入孔を拡孔されるため回転圧入が排土することなく地中熱交換器設置用機材の埋設施工が行える。
【0011】
また、概大径の浅部採熱管の外管内に配置した内管の間に頂部フランジから懸垂された鞘管の外部同心軸に収納される熱媒ガス管に大気熱空調機等の熱媒ガス回路と接続可能な構造が内包される事により地中熱と熱交換が可能となる。深部地中熱の冷熱温熱の熱媒水回路と太陽熱集熱機材を地中熱採熱管の循環液回路に接続する事で、地中熱、太陽熱、と空調機器等の室外機で再生可能エネルギーの利用効果が期待できる。
【0012】
深部の採熱管は回転圧入可能な口径を選択する事で深部への施工が容易になり深部採熱が可能とする構造。概大径の浅部の地中熱交換器は深部採熱管と比較して循環液の地中滞留時間の延伸が可能な口径を有する事及び熱媒ガスや太陽熱利用の熱媒水等複数の熱媒体利用可能な採熱効果の優れた特徴とする浅部の同心軸多層構造熱交換器と深部異径採熱管の同心軸構造を有する地中熱交換器設置用機材。
【0013】
第2発明によれば、地中熱交換器設置時に浅部外管頂部付近は予め断熱材と遮熱材を保護管覆って設置したものを任意の深度まで第1の発明による回転圧入施工後、螺子接合した頂部フランジを開け先端を解放したホース状の内管をリールに巻いた状態から懸垂された鞘管の内を介して所定の計画長さを挿入し熱媒体の外管と内管の流通路が形成される事で周囲の地盤との間で熱交換を行うための地中熱交換器であって狭小地でも小規模な地中熱交換器を設置でき、外管と内管の熱媒体の流通路の分離と採熱効果を発揮可能な構造を具備する且つ汎用性の高い地中熱交換器を設置できる。
【0014】
第3発明に係る同心軸多層構造地中熱交換器設置用機材は、
第1発明によれば、予め地中に埋設される外管の製作を浅部採熱管の外管と内管の間に頂部フランジに脱着自在に螺子接続により懸垂された鞘管外部へ同心軸に収納可能な熱媒ガス回路を組み込み、大気熱空調機の熱媒回路と接続可能な構造とする。
【0015】
ホース状の内管による深部地中熱採熱管の熱媒水と太陽熱集熱機材の循環液回路の接続により浅部地中熱交換器内部に組み込まれた熱媒ガス回路を通過後に熱媒ガス空調機の回路に接続する事で三種の再生可能エネルギー利用可能となる為、著しい省エネルギー効果が期待できる。
【0016】
この発明は新設既設に寄らず接続対象物が大規模小規模にかかわらず、施工数量の調整により既存の空調施設等に再生可能エネルギーの利用構造を付加する事が可能で、狭小地に施工できる小型の在来マシーンの調査ボーリング機械や建柱車により施工可能な小口径で且つ汎用性の高い同心軸多層構造地中熱交換器機材である。
【0017】
第4発明に係る地中熱交換機材は、第1 ̄第2のいずれの発明において、地中熱交換器設置時に前記浅部地中熱交換器外管の地表面側の端部から所定の長さの範囲を覆う管状の断熱材と遮熱材を保護管内に固定し、保護管は地表面端部と任意の長さに決めた浅部採熱管に固定金具の下端部に拡孔羽根数枚を溶接合によって施工時回転に拡孔羽根により拡孔され、地盤による損傷の影響無く地中熱交換器設置を拡孔と同時に埋設する機能を有する事を特徴とする。
【0018】
第4発明によれば、地表近傍とそれより深い地中との温度差が、該地中深部との熱交換の結果を希釈して地中熱交換器の性能が劣化するのを断熱材と遮熱材で防止する事が出来、地中熱交換器の構造を有する。
【0019】
第5発明に係る地中熱交換器設置方法は、
地中に埋設され、熱媒体を流通させて周囲と熱交換を行うための地中熱交換器を設置する地中熱交換器設置方法であって
地中熱交換器外管の回転圧入を行う為、事前に対象地盤の特性を把握し施工可能な深度を調査後、深部熱交換施工と浅部熱交換施工の管長と管径を設定する。異なる口径の接続部材により接続し施工する地中熱交換器設置方法で、深部口径の地中熱交換器を回転圧入によって所定の深度に到達後、浅部の口径の地中熱交換器と接続してさらに回転圧入を当初計画の深度まで行う。
【0020】
施工機械反力により回転圧入できるモーターのアタッチメントに嵌合された熱交換器に、予め取り付けられた拡孔羽回転により地中に無排土で押し込む事が可能な地中熱交換器の施工方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明一実施形態に係る地中熱交換器を設置する地中熱交換器設置方法を示す断面図でありAは地盤性情を把握後、孔口保孔管を設置するため掘削機械による大型油圧モーターで掘削し後に孔口保孔管を設置した位置に小型モーターにより深部採熱管の施工後次の深部採熱管を接続し回転圧入状態を示す。
【0022】
Bは小型モーターで深部口径の回転圧入の施工後を示す。
【0023】
Cは大型油圧モーターアタッチメントに嵌合された浅部熱交換器を深部熱交換器に接続して多層熱交換器を所定施工深度まで行う為、深部地中熱交換器に接続した状況を示す。
【0024】
Dは所定の深度までの施工が終了し、浅部採熱管内の頂部に溶接固定した有孔のフランジに螺子で接続した閉塞フランジを外し、浅部採熱管内に懸垂された熱媒ガス熱交換機の鞘管内を介してリールに巻かれた内管を深部採熱管の底部付近まで挿入。
【0025】
Eは所定の深度まで施工した浅部採熱管の同心軸多層熱交換器内部から熱媒液及び熱媒ガスの循環回路を介して同軸ヘッダーから熱媒液出し入れと熱媒ガス出し入れの循環回路を示す。
【0026】
【
図2】Aは同心軸多層構造熱交換構造を持つ地中熱交換器の浅部外管の外皮部に断熱材と遮熱材を保護管内に施工固定した状態を示す。内管と外管の間に、浅部地中熱交換器の頂部フランジより懸垂収納された鞘管と同心軸に配置された冷媒ガス管回路を示す断面図。
【0027】
Bは浅部採熱管頂部に溶接されたフランジに螺子接合した閉塞フランジに取り付けられた浅部の地中熱交換器の内管と外管の同軸部から外部取り出した循環液出入を示す、同じ閉塞フランジの2つの偏心小口径は熱媒ガスの回路の出入を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る地中熱交換器は熱媒体を流通させて周囲の地盤との間で熱交換を行うものであり、
図1と
図2に示されているような機材を用いて設置される。
【0029】
地中熱交換器の機材は予め地盤調査によって、地中熱交換器設置対象地盤40、50、60の特性を把握し、地中熱交換器の施工は地中熱交換器の回転圧入を無排土で行うため、予め1孔口管を設置し、深部外管2に掘削ビット8を取り付け、先端閉塞3を小型モーター10施工機械により地表から地中に向けて回転拡孔圧入により無排土で所定の深度に順次接続施工する。
【0030】
浅部外管5の先端部に拡孔翼4及び保護管固定金具15に拡孔翼4’を取り付け、浅部外管5の頂部フランジに螺子で取り付けられた突起金物つき鋼管アタッチメント9に大型オーガーモーター14に嵌合して予定深度まで地中に回転拡孔圧入する。
【0031】
地中熱交換器の浅部は大気熱からの保温のために予め取り付けた断熱材遮熱材及び外皮保護材6を地表部からの熱影響の範囲に取り付けた構造、浅部地中熱交換器は回転圧入するための浅部外管5の頂部に穴あきフランジ18を溶接したものに螺子接合フランジ19に同軸熱媒液回路20と熱媒ガス30の回路に接続され浅部採熱管内6で地中熱及び太陽熱の熱媒液21と熱媒ガス31の循環回路より熱交換が可能とする。
【0032】
螺子接合蓋に溶接穴あきフランジに溶接した鋼管アタッチメント9の外周に固定された突起物9’を介して施工機械のオーガーモーター10の着脱自在可能となるアタッチメント管9と突起物9’で嵌合し回転圧入により所定の深度に施工する。
【0033】
(6)
地中熱交換器浅部採熱管5の内部に収納固定される熱媒液回路21、22と熱媒ガス回路31、32を組み大気熱空調機の熱媒ガス回路と接続可能な構造により、地中熱交換器の深部採熱管2の循環する熱媒液21、22の冷熱温熱と太陽熱集熱機材の循環液回路の接続により太陽熱の利用が可能となる。
【0034】
深部採熱管2は地盤が硬質の場合を考慮して回転圧入可能な口径を選択する構造と浅部地中熱交換器5の熱媒液回路21、22を採熱管口径差による滞留時間の延長が可能な口径構造を有する地中熱交換器内に内包接続された熱媒ガス熱交換器14の熱媒ガス31、32が、浅部採熱管5の中で熱媒液21、22の循環により熱交換が行われる採熱効果の優れた特徴とする深部浅部異径の構造を有する同心軸多層熱交換構造設機材。
【0035】
以下は、実施形態に係る地中熱交換器及び地中熱交換器設置方法に関して、無軌道車両の施工機械の自重反力により深部地中熱交換器2の外管を回転圧入行うため、深部先端閉塞部3に地盤の拡孔ビット8が取り付けられている事等、深部地中熱交換器2の施工時に発生する掘削土は土中で拡散圧密の為無い。深部口径と浅部口径の接続は口径調整金物により接続される。
【0036】
浅部地中熱交換器5の地中先端部及び端部に取り付けられた拡孔翼4、4’により浅部地中熱交換器5も土中に回転拡孔圧入され掘削土の発生はない。
【0037】
浅部地中熱交換器5の頂部に溶接有孔フランジに螺子で固定された無孔フランジ蓋に螺子接続させた大型モーターに嵌合可能な鋼管アタッチメント9に突起金具9’により回転させる。
【0038】
オーガーモーター10に嵌合されたアタッチメント9により機械重力で反力回転圧入する事によって掘削土の発生することなく浅部地中熱交換器5と深部地中熱交換器2の施工が行える。
【符号の説明】
【0039】
1…孔口保孔管 2…深部地中熱交換器 3…深部地中熱交換器閉塞及び掘削金物 4…拡孔翼 4’…拡孔翼 5…浅部地中熱交換器 6…遮熱断熱材保護外皮 7…内管 8…掘削ビット 9…フランジ式鋼管アタッチメント 9’…突起物 10…子型モーター 12…内管リール 13…鞘管 14…大型オーガーモーター 15…断熱材固定金物 18…浅部採熱管頂部溶接フランジ 19…熱媒取り出し接続フランジ 20…熱媒液同軸ヘッダー 21…浅部熱媒液入口 22…浅部熱媒液出口 25… 熱媒液往き(内管) 26…熱媒液戻り(外管) 30…浅部熱媒ガス管路部 31…熱媒ガス入口 32…熱媒ガス出口 40…浅部地盤 50…深部地盤 60…基盤