(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20230202BHJP
B62D 61/10 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B62B3/02 H
B62D61/10
(21)【出願番号】P 2021565695
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047537
(87)【国際公開番号】W WO2021125348
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/049795
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】半田 健
(72)【発明者】
【氏名】平山 洋介
(72)【発明者】
【氏名】内山 俊文
(72)【発明者】
【氏名】津田 賢一郎
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208411980(CN,U)
【文献】特開平6-40204(JP,A)
【文献】米国特許第4740004(US,A)
【文献】特開2013-244763(JP,A)
【文献】実開昭62-30971(JP,U)
【文献】特開平10-181330(JP,A)
【文献】特開2010-5347(JP,A)
【文献】特表2008-505797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/02
B62D 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な路面において、停車中に自立し且つ旋回中に傾斜しない車体本体と、
前記車体本体に支持され、進行方向が前後方向に固定された左後車輪及び右後車輪と、
前記車体本体に支持される左前車輪及び右前車輪と、
を備えた車両であって、
左右方向に延びる部材であり、左右方向の中央部が、前記車体本体に、前記車体本体の前後方向に延びる第1中央揺動軸線回りに揺動可能に支持される第1揺動レバーと、
左右方向に延びる部材であり、左右方向の中央部が、前記第1揺動レバーよりも下で前記車体本体に、前記車体本体の前後方向に延びる第2中央揺動軸線回りに揺動可能に支持される第2揺動レバーと、
上下方向に延びる部材であり、前記第1揺動レバーの左端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第1左揺動軸線回りに揺動可能に支持され、且つ、前記第2揺動レバーの左端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第2左揺動軸線回りに揺動可能に支持され、前記左前車輪を支持する左前車輪支持体と、
上下方向に延びる部材であり、前記第1揺動レバーの右端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第1右揺動軸線回りに揺動可能に支持され、且つ、前記第2揺動レバーの右端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第2右揺動軸線回りに揺動可能に支持され、前記右前車輪を支持する右前車輪支持体と、
前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制するストッパと、を含み、
前記左前車輪及び前記右前車輪を前記車体本体に対して上下方向に変位可能な状態で前記車体本体に支持し、前記左前車輪及び前記右前車輪が前記車体本体に対して上下方向に変位することにより、前記車体本体の左右方向の傾斜を抑制する前車輪変位リンク機構を備え、
前記ストッパは、前記ストッパにより前記前車輪変位リンク機構の動作が規制された状態で、平面視で、前記左前車輪の接地点と、前記右前車輪の接地点と、上下方向において前記左後車輪及び前記右後車輪のうち下に位置する後車輪の接地点とで形成される第1三角形の範囲内に前記車両の重心が位置するように、前車輪変位リンク機構及び前記車体本体の少なくとも一方に設けられている、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記ストッパは、平面視で、前記第1三角形の範囲内で、且つ、前記左前車輪の接地点及び前記右前車輪の接地点の中間地点と、前記左後車輪の接地点と、前記右後車輪の接地点とで形成される第2三角形よりも外の範囲内に、前記車両の重心が位置する場合に、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制する、車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記ストッパは、平面視で、前記第1三角形の範囲内で、且つ、左右方向において、前記第2三角形の外形線のうち上下方向において前記左後車輪及び前記右後車輪のうち下に位置する前記後車輪の接地点と前記中間地点とを結ぶ外形線よりも、前記第1三角形の外形線のうち上下方向において前記左後車輪及び前記右後車輪のうち下に位置する前記後車輪の接地点と上下方向において前記左前車輪及び前記右前車輪のうち下に位置する前車輪の接地点とを結ぶ外形線に近い位置に、前記車両の重心が位置する場合に、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制する、車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両において、
前記ストッパは、前記前車輪変位リンク機構の動作によって前記車体本体に対して移動する部材と移動しない部材との間に設けられる、車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両において、
前記左前車輪支持体または前記右前車輪支持体は、
前記前車輪変位リンク機構の動作による前記左前車輪支持体または前記右前車輪支持体の移動方向に延びる支持部材と、
前記支持部材に所定の間隔を空けて支持される第1接触部材と第2接触部材と、を備え、
前記ストッパは、
前記第1接触部材と前記第2接触部材との間に位置するように前記車体本体に設けられ、前記左前車輪支持体または前記右前車輪支持体の移動に伴う前記支持部材の移動によって前記第1接触部材または前記第2接触部材が接触する、車両。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の車両において、
前記左前車輪は、前記車両を前から見て、前記第1中央揺動軸線及び前記第2中央揺動軸線よりも前記左後車輪の近くに位置し、
前記右前車輪は、前記車両を前から見て、前記第1中央揺動軸線及び前記第2中央揺動軸線よりも前記右後車輪の近くに位置する、車両。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両において、
前記前車輪変位リンク機構は、
前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動範囲及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動範囲において、前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーが揺動する際に、前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーに対して、前記車体本体に作用するエネルギーを低減する抵抗力を付与するばね要素または緩衝要素の少なくとも一方を備え、
前記ストッパは、前記ばね要素または緩衝要素の少なくとも一方により前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーに対して前記抵抗力が付与された状態で、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
平坦な路面において、停車中に自立し且つ旋回中に傾斜しない車体本体と、前記車体本体に支持され、進行方向が前後方向に固定された左後車輪及び右後車輪と、前記車体本体に支持された前車輪と、を備えた車両が知られている。
【0003】
このような車両として、例えば、特許文献1には、一つのキャスター式の前車輪を有する3輪車両が開示されている。例えば、特許文献2には、左右の前車輪を有する4輪車両が開示されている。
【0004】
3輪車両の車輪の数は、4輪車両より少ない。よって、3輪車両の機動性は、4輪車両に比べて高い。一方、4輪車両の車輪の数は、3輪車両より多い。よって、4輪車両の車体の左右の揺れは、3輪車両より小さい。
【0005】
3輪車両の車体は、段差のある路面を走行する際に、路面の段差によって上下動する。3輪車両の前車輪は、一輪である。よって、3輪車両の車体は、左右方向に傾きにくい。一方、4輪車両は、左右の前車輪を有する。よって、4輪車両の前車輪の片輪が路面の凹凸に位置する場合に、4輪車両の車体は左右方向に傾く。しかしながら、4輪車両の車体の中央部の上下動の動きは少ない。
【0006】
このように、3輪車両の挙動と4輪車両の挙動とは異なる。よって、車体の上下動を抑制する点では、3輪車よりも4輪車が好ましい。車体の左右方向の傾きを抑制する点では、4輪車よりも3輪車が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5138231号公報
【文献】特許第6378991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の車両では、段差を乗り越える場合、傾斜している路面上に停車する場合などのように様々な走行の利用が考えられる。しかしながら、上述のように、3輪車両の挙動と4輪車両の挙動とは異なる。よって、上述の車両においては、車体の上下動の抑制と車体の傾きの抑制との両立を図ることは難しい。これに対し、段差を乗り越える場合、傾斜している路面上に停車する場合など、様々な利用シーンで快適性を保つことができる車両が求められている。
【0009】
本発明は、様々な走行シーンなどにおいて、車体の上下動及び車両の傾きを抑制して快適性を保つことができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、車体の左右方向に対して路面が傾斜している時に車体の傾き等を抑制して快適性を保つ構成について検討した。鋭意検討の結果、本発明者らは、以下のような構成に想到した。
【0011】
本発明の一実施形態に係る車両は、平坦な路面において、停車中に自立し且つ旋回中に傾斜しない車体本体と、前記車体本体に支持され、進行方向が前後方向に固定された左後車輪及び右後車輪と、前記車体本体に支持される左前車輪及び右前車輪と、を備えた車両である。この車両は、左右方向に延びる部材であり、左右方向の中央部が、前記車体本体に、前記車体本体の前後方向に延びる第1中央揺動軸線回りに揺動可能に支持される第1揺動レバーと、左右方向に延びる部材であり、左右方向の中央部が、前記第1揺動レバーよりも下で前記車体本体に、前記車体本体の前後方向に延びる第2中央揺動軸線回りに揺動可能に支持される第2揺動レバーと、上下方向に延びる部材であり、前記第1揺動レバーの左端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第1左揺動軸線回りに揺動可能に支持され、且つ、前記第2揺動レバーの左端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第2左揺動軸線回りに揺動可能に支持され、前記左前車輪を支持する左前車輪支持体と、上下方向に延びる部材であり、前記第1揺動レバーの右端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第1右揺動軸線回りに揺動可能に支持され、且つ、前記第2揺動レバーの右端部に、前記車体本体の前後方向に延びる第2右揺動軸線回りに揺動可能に支持され、前記右前車輪を支持する右前車輪支持体と、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制するストッパと、を含み、前記左前車輪及び前記右前車輪を前記車体本体に対して上下方向に変位可能な状態で前記車体本体に支持し、前記左前車輪及び前記右前車輪が前記車体本体に対して上下方向に変位することにより、前記車体本体の左右方向の傾斜を抑制する前車輪変位リンク機構を備える。前記ストッパは、前記ストッパにより前記前車輪変位リンク機構の動作が規制された状態で、平面視で、前記左前車輪の接地点と、前記右前車輪の接地点と、上下方向において前記左後車輪及び前記右後車輪のうち下に位置する後車輪の接地点とで形成される第1三角形の範囲内に前記車両の重心が位置するように、前記前車輪変位リンク機構及び前記車体本体の少なくとも一方に設けられている。
【0012】
前記車体本体の左右方向に傾斜している路面上に車両が停車している時、前記車両変位リンク機構を備えた車両では、前記左後車輪及び右後車輪のいずれか一方が路面に対して浮き上がる場合がある。前記左後車輪及び右後車輪のいずれか一方が路面に対して浮き上がると、前記車両変位リンク機構が動作する。前記車両変位リンク機構が動作する時、前記左前車輪支持体及び前記右前車輪支持体を揺動可能に支持する前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーが、前記車体本体に対して揺動する。これにより、前記左前車輪支持体によって支持される前記左前車輪及び前記右前車輪支持体によって支持される前記右前車輪が、前記車体本体に対して上下方向に変位する。よって、路面の高さが前記車両の左右方向で異なる場合に、前記車両は、路面の傾斜に対して、路面の高さが低い方向に傾く。
【0013】
上述のように、前記車両が路面の傾斜に沿って傾くと、前記車両変位リンク機構の動作は継続する。これにより、前記車両の重心が、平面視で、各車輪の接地点を結ぶことで形成される三角形の範囲の外に位置する可能性がある。
【0014】
これに対し、上述の構成では、平面視で、前記車両の重心が前記第1三角形の範囲内に位置するように、前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーの揺動を前記ストッパによって規制し、前記左前車輪及び前記右前車輪の上下方向の変位を規制する。これにより、前記車体本体の傾きを抑制しつつ平面視で車両の重心位置を好適な範囲内に位置付けることができる。
【0015】
したがって、上述の構成により、車体本体の傾き等を抑制することができるとともに、快適性を保つことができる車両が得られる。
【0016】
他の観点によれば、本発明の一実施形態に係る車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記ストッパは、平面視で、前記第1三角形の範囲内で、且つ、前記左前車輪の接地点及び前記右前車輪の接地点の中間地点と、前記左後車輪の接地点と、前記右後車輪の接地点とで形成される第2三角形よりも外の範囲内に、前記車両の重心が位置する場合に、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制する。
【0017】
上述の構成により、前記車両の重心位置を考慮して、ストッパを動作させる位置が決められる。
【0018】
したがって、上述の構成により、車体本体の傾き等を抑制することができるとともに、快適性を保つことができる。
【0019】
他の観点によれば、本発明の一実施形態に係る車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記ストッパは、平面視で、前記第1三角形の範囲内で、且つ、左右方向において、前記第2三角形の外形線のうち上下方向において前記左後車輪及び前記右後車輪のうち下に位置する前記後車輪の接地点と前記中間地点とを結ぶ外形線よりも前記第1三角形の外形線のうち上下方向において前記左後車輪及び前記右後車輪のうち下に位置する前記後車輪の接地点と上下方向において前記左前車輪及び前記右前車輪のうち下に位置する前車輪の接地点とを結ぶ外形線に近い位置に、前記車両の重心が位置する場合に、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制する。
【0020】
上述の構成により、ストッパを有することによる前記車両変位リンク機構の動作範囲に及ぼす影響を少なくして、前記左前車輪または前記右前車輪の上下方向の移動に対応しつつ車体本体の傾き等を抑制することができる。
【0021】
他の観点によれば、本発明の一実施形態に係る車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記ストッパは、前記前車輪変位リンク機構の動作によって前記車体本体に対して移動する部材と移動しない部材との間に設けられる。
【0022】
前車輪変位リンク機構が作動すると、前記前車輪変位リンク機構を構成する部材が車体本体に対して移動する。上述の構成により、前記ストッパによって、前記車体本体に対する前記前車輪変位リンク機構の動きを規制することができる。これにより、前記車両は、前記車体本体等の移動しない部分を基準として移動する部分の移動量を制限することができる。したがって、前記車両は、前記前車輪変位リンク機構の動作によって移動する前記車両の重心を所定の範囲内に容易に位置付けることができる。よって、前記車体本体の傾き等を容易に抑制することができる。
【0023】
他の観点によれば、本発明の一実施形態に係る車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記前記左前車輪支持体または前記右前車輪支持体は、前記前車輪リンク機構の作動による前記前記左前車輪支持体または前記右前車輪支持体の移動方向に延びる支持部材と、前記支持部材に所定の間隔を空けて支持される第1接触部材と第2接触部材と、を備える。前記ストッパは、前記第1接触部材と前記第2接触部材との間に位置するように前記車体本体に設けられ、前記左前車輪支持体または前記右前車輪支持体の移動に伴う前記支持部材の移動によって前記第1接触部材または前記第2接触部材が接触する。
【0024】
上述の構成により、前記前車輪変位リンク機構の動作に伴って移動する前記左前車輪を支持する前記左前車輪支持体または前記右前車輪を支持する前記右前車輪支持体の移動を前記ストッパで直接規制する。前記車両は、前記左前車輪または前記右前車輪の移動を規制した際に、前記前車輪変位リンク機構に生じるたわみによる前記左前車輪または前記右前車輪の変位を抑制することができる。また、前記左前車輪支持体または前記右前車輪支持体の移動範囲を、前記ストッパに対する第1接触部材及び第2接触部材の位置によって規定することができる。これにより、前記前車輪変位リンク機構が作動できる範囲を容易に規制することができる。したがって、前記車両の重心の位置を所定の範囲内に容易に位置付けることができる。よって、車体本体の傾き等を容易に抑制することができる。
【0025】
他の観点によれば、本発明の一実施形態に係る車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記左前車輪は、前記車両を前から見て、前記第1中央揺動軸線及び前記第2中央揺動軸線よりも前記左後車輪の近くに位置し、前記右前車輪は、前記車両を前から見て、前記第1中央揺動軸線及び前記第2中央揺動軸線よりも前記右後車輪の近くに位置する。
【0026】
これにより、前記車両を前から見て、前記左前車輪を前記左後車輪に近づけることができるとともに、前記右前車輪を前記右後車輪に近づけることができる。よって、前記車両を前から見て、前記左前車輪が前記第1中央揺動軸線及び前記第2中央揺動軸線に近い場合及び前記右前車輪が前記第1中央揺動軸線及び前記第2中央揺動軸線に近い場合に比べて、左右方向の横揺れに強い車両を実現できる。
【0027】
したがって、上述の構成により、前記車体本体の傾き等を抑制することができるとともに、快適性を保つことができる。
【0028】
他の観点によれば、本発明の一実施形態に係る車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記前車輪変位リンク機構は、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動範囲及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動範囲において、前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーが揺動する際に、前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーに対して、前記車体本体に作用するエネルギーを低減する抵抗力を付与するばね要素または緩衝要素の少なくとも一方を備え、前記ストッパは、前記ばね要素または緩衝要素の少なくとも一方により前記第1揺動レバー及び前記第2揺動レバーに対して前記抵抗力が付与された状態で、前記第1揺動レバーの第1中央揺動軸線回りの揺動及び前記第2揺動レバーの第2中央揺動軸線回りの揺動を規制する。
【0029】
これにより、前記車体本体は、前記ばね要素または緩衝要素の少なくとも一方の抵抗力により、前記ストッパの規制による前記車体本体に作用するエネルギーが低減される。
【0030】
これにより、本実施形態は、衝撃が少ない状態で前記ストッパが動作され、快適性が向上する。
【0031】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0032】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0033】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0034】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
【0035】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0036】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0037】
本発明の説明においては、いくつもの技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てとともに使用することもできる。
【0038】
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0039】
本明細書では、本発明に係る車両の実施形態について説明する。
【0040】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0041】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0042】
[前車輪]
本明細書において、前車輪とは、車両が有する複数の車輪のうち、前記車両の進行方向において前記車両の前部に位置する車輪を意味する。前記車両の前後は、前記車両の進行方向によって決まる。このように、本明細書では、前記前車輪は、前記車両が有する複数の車輪の中から前記車両の走行方向によって決まる。よって、例えば、前記車両の走行形態を、一方向に走行可能な第1走行形態と、前記一方向とは反対方向に走行可能な第2走行形態とに切り替え可能な場合には、前記第1走行形態と前記第2走行形態とで、前記車両の前部と後部とが入れ替わる。そのため、例えば、前記車両の前記第1走行形態において車両の前部で前車輪を支持する前車輪変位リンク機構は、前記車両の前記第2走行形態では前記車両の後部で後車輪を支持する。また、例えば、前記車両の前記第1走行形態において車両の後部で後車輪を支持する前車輪変位リンク機構は、前記車両の前記第2走行形態では前記車両の前部で前車輪を支持する。
【0043】
[ストッパ]
本明細書において、ストッパとは、第1揺動レバー及び第2揺動レバーの揺動を規制することを意味する。
【0044】
[路面の傾斜]
本発明書において、路面の傾斜とは、路面が水平面に対して傾斜角を有する状態を意味する。
【0045】
[上下方向において左車輪及び右車輪のうち下に位置する車輪]
本明細書において、上下方向において左車輪及び右車輪のうち下に位置する車輪とは、例えば、車両が左右方向に傾斜している場合に、上下方向において、他の車輪より低い位置の車輪を意味する。すなわち、左車輪及び右車輪のうち下に位置する車輪とは、前記左車輪及び前記右車輪の水平面からの高さを比較した場合、高さが低い車輪を意味する。
【発明の効果】
【0046】
本発明は、進行方向が前後方向に固定された左後車輪及び右後車輪と、左前車輪及び右前車輪とを備えた車両において、様々な走行シーンなどにおいて、車体の上下動及び車両の傾きを抑制して快適性を保つことができる車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る車両の全体構成を模式的に示す左側面図である。
【
図2】
図2は、車両を前から見た場合の車両前部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、路面の凹凸により上下方向において車両の左前車輪が右前車輪よりも上に位置する場合のリンク機構の動作を模式的に示す
図2相当図である。
【
図4】
図4は、路面の凹凸により上下方向において車両の右前車輪が左前車輪よりも上に位置する場合のリンク機構の動作を模式的に示す
図2相当図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る車両に設けられたストッパがリンク機構の動作を規制していない場合の各車輪と車両の重心の位置との関係を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る車両に設けられたストッパがリンク機構の動作を規制していない状態を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る車両のリンク機構が動作する場合の各車輪の関係を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る車両のリンク機構が動作する場合の各車輪の関係を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る車両に設けられたストッパがリンク機構の動作を規制している状態を模式的に示す正面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る車両に設けられたストッパがリンク機構の動作を規制している場合の各車輪と車両の重心の位置との関係を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、実施形態3に係る車両に設けられたストッパを模式的に示す拡大正面図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る車両に設けられたストッパがリンク機構の動作を規制している状態を模式的に示す拡大正面図である。
【
図13】
図13は、実施形態3に係る車両に設けられたストッパの他の例を模式的に示す拡大正面図である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係る車両に設けられたストッパがリンク機構の動作を規制している状態の他の例を模式的に示す拡大正面図である。
【
図15】
図15は、実施形態4に係る車両の全体構成を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、実施形態4に係る車両を前から見た場合の車両前部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図17】
図17は、路面の傾斜によってリンク機構が動作した状態を模式的に示す正面図である。
【
図18】
図18は、車両を前から見た場合の前車輪と後車輪との位置関係を模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態5に係る車両の全体構成を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、実施形態6に係る車両を前から見た場合の車両前部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図21】
図21は、路面の傾斜によってリンク機構が動作した状態を模式的に示す正面図である。
【
図22】
図22は、実施形態1に係る車両の正面図及び左側面図を並べて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下で、実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0049】
以下、図中の矢印Fは、車両1の前方向を示す。図中の矢印Bは、車両1の後方向を示す。図中の矢印Uは、車両1の上方向を示す。図中の矢印Dは、車両1の下方向を示す。図中の矢印Rは、車両1の右方向を示す。図中の矢印Lは、車両1の左方向を示す。以下の説明では、車両1の進行方向を前方向とする。よって、車両1の前後方向、左右方向及び上下方向は、それぞれ、車両1の操縦者が車両1の前方向(進行方向)を向いた状態での前後、左右及び上下の各方向を意味する。
【0050】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、実施形態1に係る車両1の構成を模式的に示す図である。
図2は、車両1を前から見た場合の車両前部の構成を模式的に示す図である。車両1は、車体本体2と、左右一対の前車輪3と、左右一対の後車輪4と、リンク機構5(前車輪変位リンク機構)と、操作ハンドル6と、ストッパ7とを備える。本実施形態において、車両1は、4輪車である。左右一対の前車輪3は、リンク機構5を介して車体本体2に前後方向に回転可能に支持されている。左右一対の後車輪4は、車体本体2に前後方向に回転可能に支持されている。操作ハンドル6は、車体本体2に接続されている。
【0051】
車両1は、操縦者が操作ハンドル6を介して車体本体2に対し、前に力を加えることにより、前進する。車両1は、操縦者が操作ハンドル6を介して車体本体2に対し、後ろに力を加えることにより、後進する。車両1は、操縦者が操作ハンドル6を介して車体本体2に対し、左に旋回する力を加えることにより、左に旋回する。車両1は、操縦者が操作ハンドル6を介して車体本体2に対し、右に旋回する力を加えることにより、右に旋回する。
【0052】
すなわち、車両1は、駆動源を有していない。また、車両1は、操作ハンドル6によって左右一対の前車輪3及び左右一対の後車輪4の少なくとも一方を操舵する操舵機構を有していない。
【0053】
左右一対の前車輪3は、左前車輪31と、右前車輪32とを含む。左前車輪31は、後述するリンク機構5の左サイド部材53の下端部に、路面に対して平行に延びる左前車輪回転軸線P31を中心として回転可能に支持されている。右前車輪32は、後述するリンク機構5の右サイド部材54の下端部に、路面に対して平行に延びる右前車輪回転軸線P32を中心として回転可能に支持されている。左前車輪31及び右前車輪32は、左右方向に並んで位置する。
【0054】
なお、路面に対して平行とは、左前車輪回転軸線P31及び右前車輪回転軸線P32がそれぞれ路面に対して完全に平行な状態に限らず、車体本体2の左右方向の傾斜姿勢に影響を与えない程度に、左前車輪回転軸線P31及び右前車輪回転軸線P32がそれぞれ路面に対して傾いている状態も含む。以下の各回転軸線に関する説明においても同様である。
【0055】
左右一対の後車輪4は、左後車輪41と、右後車輪42とを含む。左後車輪41は、車体本体2の後部に、路面に対して平行に延びる左後車輪回転軸線P41を中心として回転可能に支持されている。右後車輪42は、車体本体2の後部に、路面に対して平行に延びる右後車輪回転軸線P42を中心として回転可能に支持されている。左後車輪41及び右後車輪42は、左右方向に並んで位置する。左右一対の後車輪4は、車体本体2に対し、進行方向が前後方向になるように固定されている。
【0056】
車体本体2は、左右一対の後車輪4を支持する車体フレーム21と、リンク機構(前車輪変位リンク機構)5を支持するリンク機構支持部22とを有する。
【0057】
車体フレーム21は、リンク機構支持部22及び左右一対の後車輪4を支持する。車体フレーム21は、例えば、パイプ状の部材によって構成される。車体フレーム21は、板状の部材によって構成されてもよい。
【0058】
リンク機構支持部22は、車体フレーム21の前に位置する。リンク機構支持部22は、車体フレーム21に対して上下方向に延びる部材である。例えば、リンク機構支持部22は、パイプ状の部材によって構成される。リンク機構支持部22は、板状の部材によって構成されてもよい。
【0059】
リンク機構支持部22は、リンク機構5の動作によって車体本体2に対して移動しない車体フレーム21の前端部に接続されている。つまり、リンク機構支持部22は、リンク機構5の動作によって車体本体2に対して移動しない部材である。リンク機構支持部22は、車体フレーム21の前端部に支持されている。なお、リンク機構支持部22は、車体フレーム21に対してどの位置で接続されていてもよい。
【0060】
後述するように、リンク機構支持部22は、リンク機構5の上クロス部材51を、第1中央揺動軸線UIを中心として揺動可能に支持し、且つ、下クロス部材52を、第2中央揺動軸線DIを中心として揺動可能に支持する。
【0061】
リンク機構支持部22の下端部は、下クロス部材52より下に位置する。リンク機構支持部22の下端部には、ストッパ7が接続されている。
【0062】
操作ハンドル6は、車体フレーム21に接続されている。操作ハンドル6は、車両1を前から見て、車体フレーム21から上に向かって延びている。特に図示しないが、操作ハンドル6は、上部に、操縦者が把持する把持部を有する。
【0063】
前車輪リンク機構であるリンク機構5は、車体本体2の前部に位置するリンク機構支持部22に、車両1を前から見て上下方向に揺動可能に支持されている。リンク機構5は、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ばれる)方式のリンク機構である。リンク機構5は、左右一対の前車輪3よりも上に位置する。
【0064】
リンク機構5は、上クロス部材51(第1揺動レバー)と、下クロス部材52(第2揺動レバー)と、左サイド部材53(左前車輪支持体)と、右サイド部材54(右前車輪支持体)とを含む。
【0065】
上クロス部材51は、左右方向に延びている。上クロス部材51の左右方向の中央部は、リンク機構支持部22に対し、第1中央揺動軸線UI回りに揺動可能に支持されている。第1中央揺動軸線UIは、前後方向に延びている。
【0066】
上クロス部材51は、リンク機構支持部22よりも前に位置していてもよいし、リンク機構支持部22よりも後ろに位置していてもよい。上クロス部材51は、リンク機構支持部22に対して前及び後ろの両方に位置していてもよい。
【0067】
下クロス部材52は、左右方向に延びている。下クロス部材52は、上クロス部材51よりも下に位置する。下クロス部材52の左右方向の中央部は、リンク機構支持部22に対し、第2中央揺動軸線DI回りに揺動可能に支持されている。第2中央揺動軸線DIは、前後方向に延びている。
【0068】
下クロス部材52は、リンク機構支持部22よりも前に位置していてもよいし、リンク機構支持部22よりも後ろに位置していてもよい。下クロス部材52は、リンク機構支持部22に対して前及び後ろの両方に位置していてもよい。
【0069】
左サイド部材53は、リンク機構支持部22の左に位置する。左サイド部材53は、リンク機構支持部22が延びる方向に延びている。すなわち、左サイド部材53は、リンク機構支持部22に対して平行である。本実施形態では、左サイド部材53は、上下方向に延びている。
【0070】
なお、平行とは、部材同士が完全に平行な場合だけでなく、部材同士がリンク機構5の動作に影響を与えない程度に傾いている状態も含む。
【0071】
右サイド部材54は、リンク機構支持部22の右に位置する。右サイド部材54は、リンク機構支持部22が延びる方向に延びている。すなわち、右サイド部材54は、リンク機構支持部22に対して平行である。本実施形態では、右サイド部材54は、上下方向に延びている。
【0072】
以上の構成により、左サイド部材53、リンク機構支持部22及び右サイド部材54は、互いに平行である。
【0073】
上クロス部材51の左端部は、左サイド部材53に対し、第1左揺動軸線UL回りに揺動可能に接続されている。第1左揺動軸線ULは、前後方向に延びている。第1左揺動軸線ULは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0074】
下クロス部材52の左端部は、左サイド部材53に対し、第2左揺動軸線DL回りに揺動可能に接続されている。第2左揺動軸線DLは、前後方向に延びている。第2左揺動軸線DLは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0075】
上クロス部材51の右端部は、右サイド部材54に対し、第1右揺動軸線UR回りに揺動可能に接続されている。第1右揺動軸線URは、前後方向に延びている。第1右揺動軸線URは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0076】
下クロス部材52の右端部は、右サイド部材54に対し、第2右揺動軸線DR回りに揺動可能に接続されている。第2右揺動軸線DRは、前後方向に延びている。第2右揺動軸線DRは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0077】
第1中央揺動軸線UI、第1左揺動軸線UL、第1右揺動軸線UR、第2中央揺動軸線DI、第2左揺動軸線DL及び第2右揺動軸線DRは、互いに平行に延びている。第1中央揺動軸線UI、第1左揺動軸線UL、第1右揺動軸線UR、第2中央揺動軸線DI、第2左揺動軸線DL及び第2右揺動軸線DRは、左前車輪31及び右前車輪32よりも上に位置する。
【0078】
上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53及び右サイド部材54は、上クロス部材51と下クロス部材52とが相互に平行な姿勢を保ち、且つ、左サイド部材53と右サイド部材54とが相互に平行な姿勢を保つように、車体本体2に支持されている。すなわち、上述のように、上クロス部材51及び下クロス部材52がリンク機構支持部22に対して回転可能に支持されている。また、左サイド部材53及び右サイド部材54は、車体本体2に対し、上下方向に移動する。
【0079】
リンク機構5の形状は、左前車輪31または右前車輪32の上下方向の移動によって、変化する。すなわち、リンク機構5は、リンク機構5の動作によって、形状が変化する。
図2に示すように、リンク機構5が動作していない場合には、車両1を前から見て、リンク機構5は長方形状である。
【0080】
例えば、路面に凹凸等があり、左前車輪31及び右前車輪32のどちらか一方の車輪が他方の車輪よりも上下方向において上または下に位置した場合に、リンク機構5は動作する。
図3及び
図4に示すように、リンク機構5が動作している場合には、車両1を前から見て、リンク機構5は平行四辺形状である。すなわち、リンク機構5の動作によって、車両1を前から見た時のリンク機構5の形状は変化する。なお、
図22は、
図1及び
図3を並べて示す図である。
【0081】
リンク機構5の変形は、車両1を前から見て、リンク機構支持部22に対し、上クロス部材51及び下クロス部材52がそれぞれ第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIを中心として(第1中央揺動軸線UI回り及び第2中央揺動軸線DI回りに)回転し、且つ、上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53及び右サイド部材54がそれぞれ第1左揺動軸線UL、第1右揺動軸線UR、第2左揺動軸線DL及び第2右揺動軸線DRを中心として(第1左揺動軸線UL回り、第1右揺動軸線UR回り、第2左揺動軸線DL回り及び第2右揺動軸線DR回りに)回転することにより、生じる。このように、リンク機構5は、左前車輪31及び右前車輪32を車体本体2に対して上下方向に変位可能な状態で車体本体2に支持されている。
【0082】
例えば、
図3に示すように、左前車輪31が路面の段差などに乗り上げた場合、左前車輪31を支持する左サイド部材53は、リンク機構支持部22に対して上に移動する。このように、左サイド部材53が上に移動すると、上クロス部材51は、第1中央揺動軸線UIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て反時計回りに回転する。このとき、下クロス部材52も、第2中央揺動軸線DIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て反時計回りに回転する。
図3に、上クロス部材51及び下クロス部材52の回転方向を実線矢印で示す。
【0083】
上述のように上クロス部材51及び下クロス部材52が回転する際にも、上クロス部材51と下クロス部材52とは平行状態を維持し、且つ、左サイド部材53及び右サイド部材54も平行状態を維持する。これにより、リンク機構5の形状は、長方形から平行四辺形に変化する。
【0084】
同様に、例えば、
図4に示すように、右前車輪32が路面の段差などに乗り上げた場合、右前車輪32を支持する右サイド部材54は、リンク機構支持部22に対して上に移動する。このように右サイド部材54が上に移動すると、上クロス部材51は、第1中央揺動軸線UIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て時計回りに回転する。このとき、下クロス部材52も、第2中央揺動軸線DIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て時計回りに回転する。
図4に、上クロス部材51及び下クロス部材52の回転方向を実線矢印で示す。
【0085】
上述のように上クロス部材51及び下クロス部材52が回転する際にも、上クロス部材51と下クロス部材52とは平行状態を維持し、且つ、左サイド部材53及び右サイド部材54も平行状態を維持する。これにより、リンク機構5の形状は、長方形から平行四辺形に変化する。
【0086】
左前車輪31及び右前車輪32のいずれか一方が路面の段差などに乗り上げた場合、上述のようなリンク機構5が動作することにより、前記路面の段差などに乗り上げた前車輪が車体本体2に対して上方向に変位する。これにより、車体本体2は、左右方向の傾斜が抑制される。また、上述のようなリンク機構5が動作する時において、左前車輪31及び右前車輪32は、左右方向に傾くことなく、上下方向の相対位置が変化する。左前車輪31及び右前車輪32は、リンク機構5の動作時にも、車体本体2に対して直立状態で維持される。
【0087】
このように、路面に凹凸等があり、左前車輪31及び右前車輪32のどちらか一方の車輪が他方の車輪よりも上下方向において、上または下に位置した場合には、リンク機構5は、左前車輪31または右前車輪32が車体本体2に対して上下方向に変位することにより、車体本体2の左右方向の傾斜を抑制する前車輪変位リンク機構として機能する。
【0088】
リンク機構支持部22の下端部には、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動をそれぞれ規制するストッパ7が設けられている。ストッパ7は、左右方向に延びる部材である。ストッパ7は、車両1を前から見てリンク機構支持部22の左及び右にそれぞれ突出するように、リンク機構支持部22の下端部に固定されている。
【0089】
ストッパ7の右端部7Rは、車両1を前から見て、下クロス部材52が第2中央揺動軸線DIを中心として反時計回りに回転する際に、下クロス部材52に接触する。これにより、下クロス部材52の反時計回りの回転が規制される(
図3参照)。すなわち、下クロス部材52とストッパ7の右端部7Rとは、下クロス部材52が第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制するように接触する。
【0090】
ストッパ7の左端部7Lは、車両1を前から見て、下クロス部材52が第2中央揺動軸線DIを中心として時計回りに回転する際に、下クロス部材52に接触する。これにより、下クロス部材52の時計回りの回転が規制される(
図4参照)。すなわち、下クロス部材52とストッパ7の左端部7Lとは、下クロス部材52が第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制するように接触する。
【0091】
このように、ストッパ7は、リンク機構5の動作によって車体本体2に対して移動する部材である下クロス部材52と移動しない部材であるリンク機構支持部22との間に設けられる。移動しない部材に支持されているストッパ7が移動する部材である下クロス部材52の揺動を規制することにより、リンク機構5の動作が規制される。
【0092】
次に、車両1が、車体本体2の左右方向に傾斜している路面RS上で停車している時の各車輪、車両1の重心の位置、及び、リンク機構5の動作の関係について説明する。
図5は、実施形態1に係る車両1に設けられたストッパ7がリンク機構5の動作を規制していない場合の各車輪と車両1の重心の位置との関係を模式的に示す平面図である。
【0093】
リンク機構5が動作していない時は、車両1は、左前車輪31と右前車輪32と左後車輪41と右後車輪42とを有する4輪車として機能する。
【0094】
車両1において、リンク機構5が動作する条件は、路面RSに凹凸等があり、左前車輪31及び右前車輪32のどちらか一方の車輪が他方の車輪よりも上下方向において上または下に位置した時と(
図3、
図4参照)、車両1が車体本体2の左右方向に傾斜している路面RSで停車し、且つ路面RSの傾斜により車両1の重心Gが後述する第2三角形T2の範囲の外に位置する時である。
【0095】
リンク機構5が動作し、ストッパ7がリンク機構5の動作を規制していない時には、車両1は、左前車輪31の接地点及び右前車輪32の接地点の中間地点に、仮想の前車輪33を有する構成と同等の構成を有する。よって、車体本体2に設けられたストッパ7がリンク機構5の動作を規制していない状態においては、車両1を、仮想の前車輪33と、左後車輪41と、右後車輪42とを有する仮想3輪車とみなしてもよい。
【0096】
これにより、ストッパ7がリンク機構5の動作を規制していない時には、車両1において、仮想の前車輪33の接地点と、左後車輪41の接地点と、右後車輪42の接地点によって、平面視で第2三角形T2を構成する。
【0097】
図5に示す例では、路面RSが平坦又は傾斜が殆どない場合には、車両1の重心Gは、G1に示す位置にある。車両1の重心GがG1に示す位置にある場合における路面RSの傾斜よりも路面RSの傾斜が大きい場合、車両1の重心Gは、G1の位置よりも左右方向の外方のG2の位置にある。
【0098】
車両1の重心Gが、平面視で、上記の第2三角形T2の範囲内に位置する場合、重心Gは、仮想の前車輪33、左後車輪41及び右後車輪42に囲まれている。したがって、車両1は、仮想の前車輪33、左後車輪41及び右後車輪42の少なくとも一つを支点とし、重心Gを力点として発生する重力によるモーメントを仮想の前車輪33、左後車輪41及び右後車輪42で互いに支持している。つまり、車両1には、前記モーメントが車両1を傾けるように作用していない。これにより、リンク機構5は動作しない。よって、車両1は、路面RSに対して垂直方向に自立した状態で停車している。
【0099】
図6は、車両1の重心Gが第2三角形T2の範囲内に位置する場合、例えば、車両1の重心Gが
図5のG2に位置する場合の正面図である。
図6においては、路面RSの傾斜により、車両1は、上下方向において左前車輪31と左後車輪41が右前車輪32と右後車輪42よりも上に位置している状態で停車している。
【0100】
図6に示すように、車両1の重心Gが、平面視で、上記の第2三角形T2の範囲内に位置する場合には、リンク機構5は動作しない。
【0101】
路面RSの傾斜により、車両1の重心Gが、上記の第2三角形T2の範囲の外に位置する場合(
図5のG3参照)、重心Gは、仮想の前車輪33、左後車輪41及び右後車輪42に囲まれていない。車両1は、仮想の前車輪33、左後車輪41及び右後車輪42の少なくとも一つを支点とし、重心Gを力点として発生する重力によるモーメントを仮想の前車輪33、左後車輪41及び右後車輪42で支持できない。つまり、車両1には、前記モーメントが車両1を傾けるように作用している。これにより、リンク機構5は動作する。よって、
図7に示すように、車両1は、仮想の前車輪33と上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する車輪とを結ぶ線回りに傾いている。
図7に示す例においては、車両1は、仮想の前車輪33と右後車輪42を結ぶ線回りに、図中実線矢印に示す方向に傾いている。
【0102】
車両1の傾きにより、車両1は、上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち上に位置する車輪が路面RSに対して浮き上がる。
図7に示す例では、車両1は、左後車輪41が路面RSに対して浮き上がる(破線参照)。
【0103】
図9は、左後車輪41が路面RSに対して浮き上がった時の車両1を前から見た場合の車両前部の構成を模式的に示す正面図である。
図9に示すように、左後車輪41が路面RSに対して浮き上がると、左前車輪31は、左後車輪41に対して下に位置する。これにより、車両1のリンク機構5は、作動する。
【0104】
図9に示すように、リンク機構5が作動すると、上クロス部材51は、第1中央揺動軸線UIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て時計回りに回転する。このとき、下クロス部材52も、第2中央揺動軸線DIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て時計回りに回転する。
図9に、上クロス部材51及び下クロス部材52の回転方向を実線矢印で示す。
【0105】
リンク機構5が作動すると、車両1はさらに傾く。これにより、左後車輪41の路面RSに対する浮き上がり量は大きくなり、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動が大きくなる。車両1が傾くことにより、車両1の重心Gは、第2三角形T2からさらに遠ざかる位置に移動する。
【0106】
このように、車両1は、リンク機構5の動作により、車両1の傾きが大きくなる。これにより、車体本体2の傾きは大きくなる。
【0107】
本発明の実施形態1においては、車両1の傾きが大きくなることを抑制し、車体本体2の傾きを抑制するため、ストッパ7によりリンク機構5の動作を規制している。
【0108】
図9に示すように、左後車輪41が路面RSに対して浮き上がると、リンク機構5が作動する。ストッパ7の左サイド部材53方向に延びる左端部7Lは、下クロス部材52が第2中央揺動軸線DIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て時計回りに回転して揺動を規制する位置に到達した場合に接触する。これにより、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動が規制される。
【0109】
ストッパ7によりリンク機構5の動作が規制された場合、前車輪3は、左前車輪31及び右前車輪32の2輪の機能を果たす。例えば、
図9に示すように、ストッパ7によりリンク機構5の動作が規制され、且つ左後車輪41が浮き上がっている状態においては、車両1は、左前車輪31と右前車輪32と右後車輪42とを有する3輪車両として機能する。この場合、車両1の重量は、左前車輪31と右前車輪32と右後車輪42とで支えられる。
【0110】
図8に示すように、ストッパ7によりリンク機構5の動作が規制された場合は、平面視で、左前車輪31の接地点と、右前車輪32の接地点と、上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する車輪の接地点とを結ぶ第1三角形T1が構成される。車両1の重心Gの位置が、上記の第2三角形T2の範囲外で上記の第1三角形T1の範囲内に位置する場合、重心Gは、左前車輪31、右前車輪32及び右後車輪42に囲まれている。したがって、車両1は、左前車輪31、右前車輪32及び右後車輪42の少なくとも一つを支点とし、重心G(
図9の実線矢印参照)を力点として発生する重力によるモーメントを左前車輪31、右前車輪32及び右後車輪42で支持している。これにより、車両1は、ストッパ7が規制した時の車両1の傾きが維持される。
【0111】
本実施形態においては、
図8に示すように、平面視で、車両1の重心Gが第1三角形T1の範囲内に位置するように、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動をストッパ7で規制し、左前車輪31及び右前車輪32の上下方向の変位を規制する。これにより、車両1は、車体本体2の傾きを抑制することにより、平面視で車両1の重心Gの位置を第1三角形T1の範囲内に位置付けることができる。
【0112】
図8及び
図9に示す例においては、路面RSの傾斜により、車両1は、上下方向において、左前車輪31及び左後車輪41が右前車輪32及び右後車輪42よりも上に位置する状態で停車している。これに対して、路面RSの傾斜により、車両1が、右前車輪32及び右後車輪42が左前車輪31及び左後車輪41よりも下に位置する状態で停車している場合、リンク機構5が動作すると、上クロス部材51は、第1中央揺動軸線UIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て反時計回りに回転する。同時に、下クロス部材52は、第2中央揺動軸線DIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て反時計回りに回転する。
【0113】
本実施形態においては、平面視で、車両1の重心Gが第1三角形T1の範囲内に位置するように、ストッパ7の右端部7R及びストッパ7の左端部7Lが下クロス部材52に接触する。ストッパ7の右端部7R及びストッパ7の左端部7Lと下クロス部材52が接触した際に、平面視で、車両1の重心Gが第1三角形T1の範囲内に位置するように、ストッパ7の左右方向に延びる部材の大きさ及びストッパ7のリンク機構支持部22に取り付ける位置は、決められている。ストッパ7の左右方向に延びる部材の大きさ及びストッパ7のリンク機構支持部22に対する取り付け位置は、車両1の重量配分等と左前車輪31及び右前車輪32の上下方向の変位との関係を考慮して、決定される。
【0114】
このように、ストッパ7は、リンク機構5の動作がストッパ7により規制された状態で、平面視で、車両1の重心Gが第1三角形T1の範囲内に位置するように、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。
【0115】
図9においては、ストッパ7の左サイド部材53方向に延びる左端部7Lは、下クロス部材52が第2中央揺動軸線DIを中心として、リンク機構支持部22に対して、車両1を前から見て時計回りに回転して揺動を規制する位置に到達した時に接触する。これにより、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動が規制される。よって、車体本体2の傾きを抑制しつつ平面視で車両1の重心Gの位置を第1三角形T1内に位置付けることができる。
【0116】
したがって、上述の構成により、リンク機構5が動作した場合においても、ストッパ7が規制した時の車両1の傾きが維持され、車体本体2の傾き等を抑制することができるとともに、快適性を保つことができる車両が得られる。
【0117】
[実施形態2]
図10は、実施形態2に係る車両1に設けられたストッパによりリンク機構5の動作が規制されている状態での車輪の関係と車両1の重心の位置を模式的に示す平面図である。
【0118】
実施形態2に係る車両1においてもストッパ7が設けられ、ストッパ7は、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。この時、平面視で、車両1の重心Gが第1三角形T1の範囲内で、且つ、第2三角形T2よりも外の範囲内に位置するように、ストッパ7の右端部7R及びストッパ7の左端部7Lは、下クロス部材52に接触する。ストッパ7の右端部7R及びストッパ7の左端部7Lと下クロス部材52が接触した際に、平面視で、車両1の重心Gが第1三角形T1の範囲内で、且つ、第2三角形T2よりも外の範囲内に位置するように、ストッパ7の左右方向に延びる部材の大きさ及びストッパ7のリンク機構支持部22に取り付ける位置は、決められている。ストッパ7の左右方向に延びる部材の大きさ及びストッパ7のリンク機構支持部22に対する取り付け位置は、車両1の重量配分等と左前車輪31及び右前車輪32の上下方向の変位との関係を考慮して、決定される。
【0119】
図10に示すように、ストッパ7の左右方向に延びる部材の大きさは、ストッパ7の右端部7Rまたはストッパ7の左端部7Lと下クロス部材52が接触した際に、ハッチングを施している領域内に、車両1の重心Gが位置するように決定される。具体的には、ストッパ7の左右方向に延びる部材の大きさは、平面視で、第1三角形T1の範囲内で、且つ第2三角形T2の外形線のうち上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する後車輪の接地点と仮想の前車輪33とを結ぶ外形線と、第1三角形T1の外形線のうち上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する後車輪の接地点と上下方向において左前車輪31及び右前車輪32のうち下に位置する前車輪の接地点とを結ぶ外形線との間の領域内に車両1の重心Gが位置するように決定される。これにより、ストッパ7は、ハッチングを施している領域内に、車両1の重心Gが位置するように、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。
【0120】
これにより、実施形態2の構成では、車体本体2の傾き等を抑制することができる。
【0121】
さらに、ストッパ7は、平面視で、第1三角形T1の範囲内で、且つ、左右方向において、第2三角形T2の外形線よりも第1三角形T1の外形線に近い位置に、車両1の重心が位置するように、決定される。具体的には、ストッパ7の左右方向に延びる部材の大きさは、平面視で、第1三角形T1の範囲内で、且つ、左右方向において、第2三角形T2の外形線のうち上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する後車輪の接地点と仮想の前車輪33とを結ぶ外形線よりも、第1三角形T1の外形線のうち上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する後車輪の接地点と上下方向において左前車輪31及び右前車輪32のうち下に位置する前車輪の接地点とを結ぶ外形線に近い位置に車両1の重心Gが位置するように決定される。これにより、ストッパ7は、平面視で、第1三角形T1の範囲内で、且つ、左右方向において、第2三角形T2の外形線よりも第1三角形T1の外形線に近い位置に、車両1の重心が位置するように、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。
【0122】
これにより、リンク機構5の動作がストッパ7により規制された状態で、平面視で、車両1の重心Gは、第1三角形T1の範囲内で、且つ、左右方向において、第2三角形T2の外形線よりも第1三角形T1の外形線に近い位置に位置づけられる。これにより、左前車輪31または右前車輪32の上下方向の移動に対応できるリンク機構5の動作範囲に及ぼす影響を少なくして、車体本体2の傾き等を抑制することができる。
【0123】
[実施形態3]
実施形態3においては、
図11~
図14に示すように、ストッパ7a、7bは、車体本体2に作用するエネルギーを低減する抵抗力を付与するばね要素または緩衝要素の少なくとも一方を備えている。
【0124】
図11及び
図12に示すように、ストッパ7aは、緩衝要素として弾性部材71を有する。弾性部材71は、リンク機構支持部22に固定された板状のベース72に、下クロス部材52に対向するように設けられている。
【0125】
ストッパ7aの弾性部材71は、ストッパ7aが上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する際に、下クロス部材52と接触する。ストッパ7aは、弾性部材71が変形しつつ下クロス部材52と接触し、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。
【0126】
ストッパ7aは、弾性部材71が変形しつつ下クロス部材52と接触している間、すなわち、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りを揺動する際に、弾性部材71の変形により、上クロス部材51及び下クロス部材52に対して、車体本体2に作用するエネルギーを低減する抵抗力が与えられる。
【0127】
図12に示すように、車両1の傾きにより、ストッパ7aは、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。この時、ストッパ7aは、弾性部材71を介して下クロス部材52と接触する。このように、ストッパ7aは、下クロス部材52に対して弾性部材71の変形による抵抗力が付与された状態で、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。
【0128】
これにより、車体本体2は、弾性部材71の変形により、ストッパ7aの規制による車体本体2に作用するエネルギーを低減することができる。これにより、本実施形態は、ストッパ7aによるリンク機構5の動作の規制を衝撃が少ない状態で行うことができ、快適性が向上する。
【0129】
図11及び
図12に示す実施形態においては、弾性部材71は、ストッパ7に設けられているが、下クロス部材52に設けられてもよい。
【0130】
図13及び
図14に示す実施形態3の他の例では、ストッパ7bは、ばね部材77を有する。ばね部材77は、リンク機構支持部22に固定された板状のベース75と下クロス部材52と接触する接触部76との間に、設けられている。
【0131】
ストッパ7bの接触部76は、ストッパ7bが上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する際に、下クロス部材52と接触する。この際、ストッパ7bのばね部材77は縮んで接触部76が下クロス部材52と接触し、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。
【0132】
ストッパ7bの接触部76は、ばね部材77が変形しつつ下クロス部材52と接触している間、すなわち、上クロス部材51が第1中央揺動軸線UI回りに揺動し且つ下クロス部材52が第2中央揺動軸線DI回りに揺動する際に、ばね部材77の変形により、上クロス部材51及び下クロス部材52に対して、車体本体2に作用するエネルギーを低減する抵抗力を与える。
【0133】
図14に示すように、車両1の傾きにより、左前車輪31及び右前車輪32の車体本体2に対する上下方向の変位が一定の値を超えると、ストッパ7bは、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。この時、ストッパ7の接触部76は、下クロス部材52と接触する。これにより、ばね部材77は、縮む。このように、ストッパ7は、下クロス部材52に対してばね部材77の抵抗力が付与された状態で、上クロス部材51の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制する。
【0134】
これにより、車体本体2は、ばね部材77の抵抗力により、ストッパ7bの規制による車体本体2に作用するエネルギーが低減される。これにより、本実施形態では、ストッパ7bによるリンク機構5の動作の規制が衝撃の少ない状態で行われるため、快適性が向上する。
【0135】
図13及び
図14に示す実施形態では、ばね部材77は、ストッパ7bに設けられているが、下クロス部材52に設けられてもよい。
【0136】
[実施形態4]
図15は、実施形態4に係る車両101の概略構成を示す斜視図である。
図16は、実施形態4に係る車両を前から見た場合の車両前部の構成を模式的に示す正面図である。この車両101では、リンク機構105の左サイド部材153及び右サイド部材154は、それぞれ、上部が下部よりも後ろに位置するように上下方向且つ前後方向に延びている点で、実施形態1の車両1とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0137】
車両101は、車体本体102と、左右一対の前車輪3と、左右一対の後車輪4と、リンク機構105と、操作ハンドル106と、ストッパ107と、シート110とを有する。
【0138】
シート110は、車体本体102によって支持されている。シート110は、例えば、乳幼児等が着座可能なバケットタイプのシートである。車両101は、例えば、乳幼児等を載せるためのベビーカーである。なお、シート110は、バケットタイプ以外の形状であってもよい。
【0139】
車体本体102は、左右一対の後車輪4を支持する車体フレーム121と、リンク機構105を支持するリンク機構支持部122とを有する。
【0140】
車体フレーム121は、リンク機構支持部122及び左右一対の後車輪4を支持する。車体フレーム121は、例えば、パイプ状の部材によって構成される。
【0141】
車体フレーム121は、左メインフレーム121aと、右メインフレーム121bと、下接続フレーム121cと、上接続フレーム121eを有する。
【0142】
左メインフレーム121aは、車両101を前から見て上下方向に延びる部材である。左メインフレーム121aは、下端部で、左後車輪41を、左後車輪回転軸線P41を中心として回転可能に支持する。右メインフレーム121bは、車両101を前から見て上下方向に延びる部材である。右メインフレーム121bは、下端部で、右後車輪42を、右後車輪回転軸線P42を中心として回転可能に支持する。
【0143】
左メインフレーム121a及び右メインフレーム121bには、それぞれ、操作ハンドル106が接続されている。操作ハンドル106は、左メインフレーム121a及び右メインフレーム121bから、それぞれ、後ろに向かうほど上に位置するように上方向で且つ後方向に延びている。なお、
図15において、符号106aは、把持部である。
【0144】
下接続フレーム121c及び上接続フレーム121eは、左右方向に延びる部材である。下接続フレーム121c及び上接続フレーム121eは、それぞれ左メインフレーム121aと右メインフレーム121bとを左右方向に接続する。上接続フレーム121eは、下接続フレーム121cよりも上に位置する。下接続フレーム121cは、補強フレーム121dによって、リンク機構支持部122の下部に接続されている。上接続フレーム121eは、リンク機構支持部122の上端部を支持する。
【0145】
リンク機構支持部122は、車体フレーム121の前に位置する。リンク機構支持部122は、上下方向に延びる部材である。リンク機構支持部122の上端部は、上接続フレーム121eの左右方向の中央部に接続されている。本実施形態では、リンク機構支持部122は、例えば、パイプ状の部材によって構成される。リンク機構支持部122は、板状の部材によって構成されてもよい。
【0146】
後述するように、リンク機構支持部122は、リンク機構5の上クロス部材151を、第1中央揺動軸線UIを中心として揺動可能に支持し、且つ、下クロス部材152を、第2中央揺動軸線DIを中心として揺動可能に支持する。上接続フレーム121eは、左サイド部材153及び右サイド部材154を、それぞれ上下方向に移動可能に支持する。
【0147】
リンク機構支持部122の下端部は、下クロス部材152より下に位置する。リンク機構支持部122の下端部には、ストッパ107が設けられている。
【0148】
リンク機構105(前車輪変位リンク機構)は、上クロス部材151(第1揺動レバー)と、下クロス部材152(第2揺動レバー)と、左サイド部材153(左前車輪支持体)と、右サイド部材154(右前車輪支持体)とを含む。実施形態1と同様、リンク機構105は、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ばれる)方式のリンク機構である。リンク機構105は、左右一対の前車輪3よりも上に位置する。本実施形態では、左サイド部材153の下端部には左前車輪支持部155が接続されている。右サイド部材154の下端部には、右前車輪支持部156が接続されている。
【0149】
リンク機構105は、実施形態1のリンク機構5と配置以外は同様の構成を有する。そのため、リンク機構105の詳しい構成の説明は省略する。
【0150】
リンク機構支持部122は、上部が下部よりも後ろに位置するように上下方向且つ前後方向に延びている。左サイド部材153及び右サイド部材154も、それぞれ、上部が下部よりも後ろに位置するように上下方向且つ前後方向に延びている。すなわち、本実施形態でも、実施形態1と同様、左サイド部材153、右サイド部材154及びリンク機構支持部122は、平行である。
【0151】
上クロス部材151の左端部は、左サイド部材153に対し、第1左揺動軸線UL回りに揺動可能に接続されている。第1左揺動軸線ULは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第1左揺動軸線ULは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0152】
下クロス部材152の左端部は、左サイド部材153に対し、第2左揺動軸線DL回りに揺動可能に接続されている。第2左揺動軸線DLは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第2左揺動軸線DLは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0153】
上クロス部材151の右端部は、右サイド部材154に対し、第1右揺動軸線UR回りに揺動可能に接続されている。第1右揺動軸線URは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第1右揺動軸線URは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0154】
下クロス部材152の右端部は、右サイド部材154に対し、第2右揺動軸線DR回りに揺動可能に接続されている。第2右揺動軸線DRは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第2右揺動軸線DRは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0155】
実施形態1と同様、第1中央揺動軸線UI、第1左揺動軸線UL、第1右揺動軸線UR、第2中央揺動軸線DI、第2左揺動軸線DL及び第2右揺動軸線DRは、互いに平行に延びている。第1中央揺動軸線UI、第1左揺動軸線UL、第1右揺動軸線UR、第2中央揺動軸線DI、第2左揺動軸線DL及び第2右揺動軸線DRは、左前車輪31及び右前車輪32よりも上に位置する。
【0156】
実施形態1と同様、上クロス部材151、下クロス部材152、左サイド部材153及び右サイド部材154は、上クロス部材151と下クロス部材152とが相互に平行な姿勢を保ち、且つ、左サイド部材153と右サイド部材154とが相互に平行な姿勢を保つように、車体本体102に支持されている。すなわち、上述のように、上クロス部材151及び下クロス部材152がリンク機構支持部122に対して回転可能に支持されている。また、左サイド部材153及び右サイド部材154は、車体本体102に対し、車両101を前から見て上下方向に移動する。
【0157】
リンク機構105の動作は、実施形態1のリンク機構5の動作と同様である。よって、リンク機構105の動作に関する詳しい説明は、省略する。
【0158】
左前車輪31は、リンク機構105の左サイド部材153の下端部に接続された左前車輪支持部155に、路面RSに対して平行に延びる左前車輪回転軸線P31を中心として回転可能に支持されている。右前車輪32は、リンク機構105の右サイド部材154の下端部に接続された右前車輪支持部156に、路面RSに対して平行に延びる右前車輪回転軸線P32を中心として回転可能に支持されている。
【0159】
左前車輪支持部155は、左サイド部材153に、上下方向に延びる左回転軸線WLを中心として回転可能に支持されている。これにより、左前車輪31は、左回転軸線WLを中心として回転可能である。すなわち、左前車輪31は、キャスター式の車輪である。左前車輪31の回転角度範囲は、360度であってもよいし、360度よりも小さい範囲であってもよい。
【0160】
右前車輪支持部156は、右サイド部材154に、上下方向に延びる右回転軸線WRを中心として回転可能に支持されている。これにより、右前車輪32は、右回転軸線WRを中心として回転可能である。すなわち、右前車輪32は、キャスター式の車輪である。右前車輪32の回転角度範囲は、360度であってもよいし、360度よりも小さい範囲であってもよい。
【0161】
なお、左前車輪支持部155と右前車輪支持部156とは、接続されていてもよい。すなわち、左前車輪支持部155及び右前車輪支持部156は、一体で回転してもよい。
【0162】
ストッパ107は、実施形態1のストッパ7と同様の構成を有する。そのため、ストッパ107の詳しい構成の説明は省略する。
【0163】
図17は、路面RSの傾斜によってリンク機構が動作した状態を示す図である。車体本体102の左右方向に傾斜している路面RS上を車両が停車している時に、リンク機構105が動作する場合がある。路面RSの傾斜により、車両101の重心Gが、上記の第2三角形T2の範囲の外に位置する場合(
図5のG3参照)、車両101は、仮想の前車輪33と上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する車輪(
図7の場合では、右後車輪42)とを結ぶ線回りに傾く(
図7参照)。
【0164】
車両101の傾きにより、車両101は、上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち上に位置する車輪が路面RSに対して浮き上がる。左後車輪41または右後車輪42が路面RSに対して浮き上がると、車両101のリンク機構105は、動作する。
【0165】
例えば、車両101の傾きに応じて、上クロス部材151の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材152の第2中央揺動軸線DI回りの揺動をストッパ107で規制し、左前車輪31及び右前車輪32の上下方向の変位を規制する。
【0166】
これにより、車体本体2の傾き等を抑制することができる。
【0167】
図18に示すように、本実施形態では、車両101を前から見て、左前車輪31は、リンク機構105の第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIよりも左後車輪41の近くに位置する。すなわち、車両101を前から見て、左前車輪31の左右方向中央と左後車輪41の左右方向中央との左右方向の距離X1は、左前車輪31の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離X2よりも小さい。
【0168】
本実施形態では、車両101を前から見て、左前車輪31の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離X2は、左後車輪41の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離X1+X2よりも小さい。
【0169】
なお、車両101を前から見て、左前車輪31の左右方向中央と左後車輪41の左右方向中央との左右方向の距離X1は、左前車輪31の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離X2と同じでもよい。
【0170】
同様に、車両101を前から見て、右前車輪32は、第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIよりも右後車輪42の近くに位置する。すなわち、車両101を前から見て、右前車輪32の左右方向中央と右後車輪42の左右方向中央との左右方向の距離Y1は、右前車輪32の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離Y2よりも小さい。
【0171】
本実施形態では、車両101を前から見て、右前車輪32の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離Y2は、右後車輪42の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離Y1+Y2よりも小さい。
【0172】
なお、車両101を前から見て、右前車輪32の左右方向中央と右後車輪42の左右方向中央との左右方向の距離Y1は、右前車輪32の左右方向中央と第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIとの左右方向の距離Y2と同じでもよい。
【0173】
すなわち、リンク機構105は、車両101を前から見て、車両101の左右方向において、左前車輪31が第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIよりも左後車輪41の近くに位置し、且つ、右前車輪32は、第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIよりも右後車輪42の近くに位置するように構成されている。よって、車両101を前から見て、車両101の左右方向において、左前車輪31を左後車輪41に近づけることができるとともに、右前車輪32を右後車輪42に近づけることができる。
【0174】
ところで、車両1の左前車輪31または右前車輪32が段差等を乗り越える際には、リンク機構105の動作によって、左前車輪31及び右前車輪32の左右方向の間隔が変化する。これに対し、左前車輪31及び右前車輪32を上述のように配置することによって、左前車輪31が第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIに近い場合及び右前車輪32が第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIに近い場合に比べて、左前車輪31または右前車輪32が同じ高さの段差等を乗り越える際にリンク機構105の動作に起因して生じる、左前車輪31及び右前車輪32の左右方向の間隔の変化が抑制される。
【0175】
以上のような本実施形態の構成により、車両101を前から見て、左前車輪31が第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIに近い場合及び右前車輪32が第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIに近い場合に比べて、左右方向の横揺れに強い車両を実現できる。
【0176】
[実施形態5]
図19は、実施形態5に係る車両201の概略構成を示す図である。この車両201は、荷台221の前部に、リンク機構205を介して左右一対の前車輪203が設けられている点で、実施形態4の車両101とは異なる。以下では、実施形態1、4と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1、4と異なる構成についてのみ説明する。
【0177】
図19に示すように、車両201は、車体本体202と、左右一対の前車輪203と、左右一対の後車輪204と、リンク機構205と、操作ハンドル206と、ストッパ207とを有する。車両201は、例えば、車体本体202の後述する荷台221上に載置された荷物などを運搬可能な台車である。
【0178】
車体本体202は、荷物などを載置可能な荷台221と、リンク機構205を支持するリンク機構支持部222とを有する。
【0179】
荷台221は、平面視で長方形状の板状部材である。荷台221の後部の下部には、左右一対の後車輪204が設けられている。左右一対の後車輪204は、左後車輪241と、右後車輪242とを含む。左後車輪241は、荷台221の後部の下部における左部に設けられている。右後車輪242は、荷台221の後部の下部における右部に設けられている。荷台221が、車体本体202の車体フレームを構成する。
【0180】
荷台221の後部の上部には、上に向かって延びるように操作ハンドル206が接続されている。操作ハンドル206は、車両201を前から見てU字状に形成されている。操作ハンドル206は、折曲部分が上に位置するように、荷台221の後部の上部に接続されている。
【0181】
荷台221の前部には、左右一対の前車輪203を支持するリンク機構支持部222が設けられている。なお、荷台221の前部における左右端部には、リンク機構支持部222によって支持された左右一対の前車輪203が後述するように上下方向に移動した際に、左右一対の前車輪203と干渉するのを防止するために、切り欠き部221aが設けられている。
【0182】
リンク機構支持部222は、車両201を前から見て、荷台221の前部の上部から上に向かって延びている。詳しくは、リンク機構支持部222は、上部が下部よりも後ろに位置するように、荷台221の前部から上方向で且つ後方向に向かって延びている。
【0183】
リンク機構支持部222は、荷台221の左右方向の中央に固定されている。リンク機構支持部222は、リンク機構205の後述する上クロス部材251を、第1中央揺動軸線UIを中心として揺動可能に支持し、且つ、後述する下クロス部材252を、第2中央揺動軸線DIを中心として揺動可能に支持する。リンク機構支持部222の下端部は、下クロス部材252より下に位置する。リンク機構支持部222の下端部には、ストッパ207が設けられている。
【0184】
リンク機構205(前車輪変位リンク機構)は、上クロス部材251(第1揺動レバー)と、下クロス部材252(第2揺動レバー)と、左サイド部材253(左前車輪支持体)と、右サイド部材254(右前車輪支持体)とを含む。実施形態1、2と同様、リンク機構205は、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ばれる)方式のリンク機構である。リンク機構205は、左右一対の前車輪203よりも上に位置する。
【0185】
リンク機構205は、実施形態1のリンク機構5と配置以外は同様の構成を有する。そのため、リンク機構205の詳しい構成の説明は省略する。
【0186】
左サイド部材253及び右サイド部材254は、それぞれ、上部が下部よりも後ろに位置するように上下方向且つ前後方向に延びている。よって、本実施形態でも、実施形態1、2と同様、左サイド部材253、右サイド部材254及びリンク機構支持部222は、平行である。
【0187】
上クロス部材251は、左右方向に延びている。上クロス部材251の左右方向の中央部は、リンク機構支持部222に対し、中立位置に戻るための付勢部材が設けられることなく、第1中央揺動軸線UI回りに揺動可能に支持されている。第1中央揺動軸線UIは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。
【0188】
下クロス部材252は、左右方向に延びている。下クロス部材252の左右方向の中央部は、リンク機構支持部222に対し、中立位置に戻るための付勢部材が設けられることなく、第2中央揺動軸線DI回りに揺動可能に支持されている。第2中央揺動軸線DIは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。
【0189】
上クロス部材251の左端部は、左サイド部材253に対し、第1左揺動軸線UL回りに揺動可能に接続されている。第1左揺動軸線ULは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第1左揺動軸線ULは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0190】
下クロス部材252の左端部は、左サイド部材253に対し、第2左揺動軸線DL回りに揺動可能に接続されている。第2左揺動軸線DLは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第2左揺動軸線DLは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0191】
上クロス部材251の右端部は、右サイド部材254に対し、第1右揺動軸線UR回りに揺動可能に接続されている。第1右揺動軸線URは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第1右揺動軸線URは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0192】
下クロス部材252の右端部は、右サイド部材254に対し、第2右揺動軸線DR回りに揺動可能に接続されている。第2右揺動軸線DRは、後ろから前に向かうほど上方に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。第2右揺動軸線DRは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0193】
実施形態5においては、リンク機構支持部222の下端部は、下クロス部材252より下に位置する。リンク機構支持部222の下端部には、上クロス部材251の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材252の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制するストッパ207が設けられている。
【0194】
実施形態1と同様、第1中央揺動軸線UI、第1左揺動軸線UL、第1右揺動軸線UR、第2中央揺動軸線DI、第2左揺動軸線DL及び第2右揺動軸線DRは、互いに平行に延びている。第1中央揺動軸線UI、第1左揺動軸線UL、第1右揺動軸線UR、第2中央揺動軸線DI、第2左揺動軸線DL及び第2右揺動軸線DRは、左前車輪231及び右前車輪232よりも上に位置する。
【0195】
実施形態1と同様、上クロス部材251、下クロス部材252、左サイド部材253及び右サイド部材254は、上クロス部材251と下クロス部材252とが相互に平行な姿勢を保ち、且つ、左サイド部材253と右サイド部材254とが相互に平行な姿勢を保つように、車体本体202に支持されている。すなわち、上述のように、上クロス部材251及び下クロス部材252がリンク機構支持部222に対して回転可能に支持されている。また、左サイド部材253及び右サイド部材254は、車体本体202に対し、車両201を前から見て上下方向に移動する。
【0196】
リンク機構205の動作は、実施形態1のリンク機構5及び実施形態2のリンク機構105の動作と同様である。よって、リンク機構205の動作に関する詳しい説明は、省略する。
【0197】
左右一対の前車輪203は、左前車輪231及び右前車輪232を含む。左前車輪231は、リンク機構205の左サイド部材253に、上下方向に延びる左回転軸線WLを中心として回転可能に支持されている。左前車輪231は、キャスター式の車輪である。右前車輪232は、リンク機構205の右サイド部材254に、上下方向に延びる右回転軸線WRを中心として回転可能に支持されている。右前車輪232は、キャスター式の車輪である。
【0198】
ストッパ207は、実施形態1のストッパ7と同様の構成を有する。そのため、ストッパ207の詳しい構成の説明は省略する。
【0199】
以上より、本実施形態によれば、台車の構成を有する車両201も、車体本体202の左右方向に傾斜している路面RS上を車両が停車している時に、リンク機構205が動作する場合がある。路面RSの傾斜により、車両201の重心Gが、上記の第2三角形T2の範囲の外に位置すると(
図5のG3参照)、車両201は、仮想の前車輪33と上下方向において左後車輪41及び右後車輪42のうち下に位置する車輪(
図7の場合では、右後車輪42)とを結ぶ線回りに傾く(
図7参照)。
【0200】
車両201の傾きにより、車両201は、上下方向において左後車輪241及び右後車輪242のうち上に位置する車輪が路面RSに対して浮き上がる。左後車輪241または右後車輪242が路面RSに対して浮き上がると、車両201のリンク機構205は、動作する。
【0201】
例えば、車両201の傾きに応じて、上クロス部材251の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材252の第2中央揺動軸線DI回りの揺動をストッパ207で規制し、左前車輪231及び右前車輪232の上下方向の変位を規制する。
【0202】
これにより、車体本体202の傾き等を抑制することができる。
【0203】
[実施形態6]
図20は、実施形態6に係る車両301を前から見た場合の車両前部の構成を模式的に示す図である。この車両301では、上クロス部材351の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材352の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制するストッパ307の構成が実施形態4に係る車両101とは異なる。以下では、実施形態4と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態4と異なる構成についてのみ説明する。
【0204】
車両301は、車体本体302と、左右一対の前車輪3と、左右一対の後車輪4(
図15参照)と、リンク機構305と、操作ハンドル106と、シート110とを有する。
【0205】
車体本体302は、左右一対の後車輪4を支持する車体フレーム321と、リンク機構305(前車輪変位リンク機構)を支持するリンク機構支持部322とを有する。
【0206】
車体フレーム321は、リンク機構支持部322及び左右一対の後車輪4を支持する。車体フレーム321は、例えば、パイプ状の部材によって構成される。車体フレーム321は、
図15に示す左メインフレーム121aと、右メインフレーム121bと、下接続フレーム121cと、
図20に示す上接続フレーム321eとを有する。左メインフレーム121a、右メインフレーム121b、下接続フレーム121c及び上接続フレーム321eの構成は、実施形態4と同様である。そのため、左メインフレーム121a、右メインフレーム121b、下接続フレーム121c及び上接続フレーム321eの構成についての詳しい説明は省略する。なお、上接続フレーム321eは、左端部がストッパ307として機能する。上接続フレーム321eのストッパ307としての機能の詳細は後述する。
【0207】
リンク機構支持部322は、車体フレーム321の前に位置する。リンク機構支持部322の上部は、上接続フレーム321eの左右方向の中央部に接続されている。上接続フレーム321eは、左メインフレーム121aと、右メインフレーム121bとに接続されている。つまり、上接続フレーム321eは、リンク機構支持部322を介してリンク機構305を支持している。上接続フレーム321eは、ストッパ307を有している。ストッパ307は、ある程度の強度を持った金属等から構成されている。本実施形態において、ストッパ307は、左メインフレーム121aの近傍に設けられている。
【0208】
後述するように、リンク機構支持部322は、リンク機構305の上クロス部材351を、第1中央揺動軸線UIを中心として揺動可能に支持し、且つ、下クロス部材352を、第2中央揺動軸線DIを中心として揺動可能に支持する。
【0209】
車体フレーム321の上記以外の構成は、実施形態4の車体フレーム121と同様である。そのため、車体フレーム321の詳しい説明は省略する。
【0210】
リンク機構305は、リンク機構支持部322に、車両301を前から見て上下方向に揺動可能に支持されている。リンク機構305は、上クロス部材351(第1揺動レバー)と、下クロス部材352(第2揺動レバー)と、左サイド部材353(左前車輪支持体)と、右サイド部材354(右前車輪支持体)とを含む。リンク機構305は、実施形態4と同様、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ばれる)方式のリンク機構である。
【0211】
リンク機構305の上クロス部材351、下クロス部材352及び右サイド部材354の構成は、実施形態4のリンク機構105の上クロス部材151、下クロス部材152及び右サイド部材154の構成と同様である。本実施形態では、左サイド部材153には上接触部材382(第1接触部材)と、下接触部材383(第2接触部材)とが接続されている。また、リンク機構305の左サイド部材353の一部が、後述する支持部材381の一部を構成する。それ以外の左サイド部材353の構成は、実施形態4のリンク機構105の左サイド部材153の構成と同様である。
【0212】
すなわち、上クロス部材351は、リンク機構支持部322に第1中央揺動軸線UIを中心として揺動可能に支持されている。下クロス部材352は、リンク機構支持部322に第2中央揺動軸線DIを中心として揺動可能に支持されている。
【0213】
上クロス部材351の左端部は、左サイド部材353に対し、第1左揺動軸線UL回りに揺動可能に接続されている。第1左揺動軸線ULは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0214】
下クロス部材352の左端部は、左サイド部材353に対し、第2左揺動軸線DL回りに揺動可能に接続されている。第2左揺動軸線DLは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0215】
上クロス部材351の右端部は、右サイド部材354に対し、第1右揺動軸線UR回りに揺動可能に接続されている。第1右揺動軸線URは、第1中央揺動軸線UIに対して平行である。
【0216】
下クロス部材352の右端部は、右サイド部材354に対し、第2右揺動軸線DR回りに揺動可能に接続されている。第2右揺動軸線DRは、第2中央揺動軸線DIに対して平行である。
【0217】
実施形態4と同様、上クロス部材351、下クロス部材352、左サイド部材353及び右サイド部材354は、上クロス部材351と下クロス部材352とが相互に平行な姿勢を保ち、且つ、左サイド部材353と右サイド部材354とが相互に平行な姿勢を保つように、車体本体302に支持されている。すなわち、上クロス部材351及び下クロス部材352は、リンク機構支持部322に対して上述のように回転可能に支持されている。また、左サイド部材353及び右サイド部材354は、車体本体302に対し、車両301を前から見て上下方向に移動する。
【0218】
リンク機構305の動作は、実施形態4のリンク機構105の動作と同様である。よって、リンク機構305の動作に関する詳しい説明は、省略する。また、リンク機構305による一対の前車輪3の支持構造は、実施形態4のリンク機構105による一対の前車輪3の支持構造と同様である。よって、リンク機構305による一対の前車輪3の支持構造に関する詳しい説明は、省略する。
【0219】
支持部材381は、左サイド部材353または右サイド部材354から左サイド部材353または右サイド部材354の移動方向に延びる部材である。本実施形態において、支持部材381は、第1左揺動軸線ULよりも上部に位置する左サイド部材353の部分から構成されている。支持部材381は、リンク機構305が動作すると、左サイド部材353及び右サイド部材354と平行な姿勢を保った状態で、上下方向に移動する。支持部材381は、上下方向に移動する範囲において、上接続フレーム321eが有するストッパ307に対して前方向に見て重複するように構成されている。支持部材381には、上接触部材382及び下接触部材383を取り付けるための複数の取付部を有する。前記複数の取付部は、支持部材381の移動方向に並んで位置している。前記複数の取付け部は、例えばネジ孔である。なお、左サイド部材353の第1左揺動軸線ULより上に、左サイド部材353とは別体の支持部材381が接続される構成であってもよい。以下では、説明のため、支持部材381として機能する左サイド部材353の部分を、支持部材381と呼ぶ。
【0220】
上接触部材382及び下接触部材383は、ストッパ307が接触する部材である。上接触部材382及び下接触部材383は、支持部材381に、所定の間隔を空けて任意の位置に接続されている。上接触部材382は、ストッパ307よりも上に位置している。下接触部材383は、ストッパ307よりも下に位置している。上接触部材382及び下接触部材383は、例えば、弾性部材によって構成される。なお、上接触部材382及び下接触部材383は、支持部材381に固定できる材質及び形状であればよい。
【0221】
上接触部材382は、上接続フレーム321eに対して左サイド部材353が下方向に所定量だけ移動した場合、ストッパ307に接触する。つまり、上接触部材382は、左サイド部材353の下方向の移動量を規制する。下接触部材383は、上接続フレーム321eに対して左サイド部材353が上方向に所定量だけ移動した場合、ストッパ307に接触する。つまり、上接触部材382は、左サイド部材353の上方向の移動量を規制する。このように、ストッパ307は、リンク機構305の動作によって車体本体302に対して移動する部材である支持部材381と移動しない部材である上接続フレーム321eとの間に設けられる。
【0222】
上接触部材382及び下接触部材383の取り付け位置は、車両301の重量配分等と左前車輪31及び右前車輪32の上下方向の変位との関係を考慮して、決定される。
【0223】
次に、ストッパ307、上接触部材382及び下接触部材383によるリンク機構305の動作の規制について説明する。なお、車両301の重心Gの位置の変化に対するリンク機構305の動作は、実施形態4の車両101の場合と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0224】
上クロス部材351及び下クロス部材352が第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIを中心として揺動すると、左サイド部材353及び右サイド部材354は、車体フレーム321に対して上下方向に移動する。よって、左サイド部材353の一部である支持部材381は、左サイド部材353の移動に伴って車体フレーム321に対して上下方向に移動する。
【0225】
左サイド部材353が上方に移動すると、ストッパ307の下面に下接触部材383の上面が接触する。左サイド部材353が下方に移動すると、ストッパ307の上面に上接触部材382の下面が接触する。これにより、上クロス部材351の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材352の第2中央揺動軸線回りの揺動が規制される。
【0226】
図21は、路面RSの傾斜によって、車両301が右に傾くことによりリンク機構305が動作した状態を示す図である。リンク機構305が動作すると、ストッパ307の上面に上接触部材382の下面が接触する。これにより、車体本体302の傾きを規制することができる。
【0227】
本実施形態では、車体本体302に対して移動する左前車輪31を支持している左サイド部材353をストッパ307、上接触部材382及び下接触部材383で直接規制している。車両301は、上接触部材382または下接触部材383がストッパ307に接触した際にリンク機構305を構成している各部材に生じるたわみによる左前車輪31の変位を抑制することができる。また、左サイド部材353の移動範囲を、ストッパ307に対する上接触部材382及び下接触部材383の位置によって規定することができる。これにより、車両の重心を容易に所定の範囲内に位置付けることができる。したがって、車体本体の傾き等を容易に抑制することができる。
【0228】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0229】
前記各実施形態では、車両1、101、201、301は、左右一対の前車輪3、203を支持するリンク機構5、105、205、305を有する。しかしながら、車両は、左右一対の後車輪を支持するリンク機構を有していてもよい。車両は、左右一対の前車輪を支持する前リンク機構と、左右一対の後車輪を支持する後リンク機構とを有していてもよい。
【0230】
前記各実施形態では、車両1、101、201、301は、車輪を駆動させるための駆動源を有しない。しかしながら、車両は、車輪を駆動させるための駆動源を有していてもよい。
【0231】
前記実施形態4、5、6では、リンク機構105、205、305の第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIは、後ろから前に向かうほど上に位置するように前後方向且つ上下方向に延びている。しかしながら、第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIは、実施形態1と同様、前後方向且つ略水平に延びていてもよい。また、実施形態1の構成において、実施形態4、5、6と同様、リンク機構の第1中央揺動軸線及び第2中央揺動軸線は、後ろから前に向かうほど上に位置するように前後方向且つ上下方向に延びていてもよい。
【0232】
前記実施形態4、5、6では、一対の前車輪3、203は、キャスター式の車輪である。しかしながら、一対の前車輪のうち一方の車輪のみが、キャスター式の車輪であってもよい。一対の前車輪は、車体フレームに対し、上下方向に延びる回転軸線を中心として回転しなくてもよい。一対の後車輪のうち少なくとも一方の車輪が、キャスター式の車輪であってもよい。また、実施形態1の構成において、一対の前車輪のうち少なくとも一方の車輪が、キャスター式の車輪であってもよい。実施形態1において、一対の後車輪のうち少なくとも一方の車輪が、キャスター式の車輪であってもよい。
【0233】
前記実施形態4では、操作ハンドル106は、左メインフレーム121a及び右メインフレーム121bから、それぞれ、後ろに向かうほど上に位置するように上方向で且つ後方向に延びている。しかしながら、操作ハンドルは、車体フレームに対し、後ろに向かうほど上に位置するように上方向で且つ後方向に延びる第1位置と、前に向かうほど上に位置するように上方向で且つ前方向に延びる第2位置とに切り換え可能に構成されていてもよい。これにより、車両の操縦者の操縦位置を、シートに着座した乳幼児に対する背面位置と前面位置とに切り替えることができる。
【0234】
上述のように、前記操作ハンドルを前記第1位置と第2位置とに切り替える構成の場合、車両の走行形態は、一方向に走行可能な第1走行形態と、前記一方向とは反対方向に走行可能な第2走行形態とに切り替えられる。すなわち、前記操作ハンドルが前記第1位置に位置している場合には、車両の走行形態は前記第1走行形態であり、前記操作ハンドルが前記第2位置に位置している場合には、車両の走行形態は前記第2走行形態である。
【0235】
よって、例えば、前記第1走行形態では前車輪として機能する車輪が、前記第2走行形態では後車輪として機能する。したがって、上述のように前記操作ハンドルの位置を切り替え可能な場合には、前記実施形態2の構成において、前記車両の走行形態が前記第1走行形態の際には、リンク機構は前記車両の走行方向の前部で機能する一方、前記車両の走行形態が第2の走行形態の際には、リンク機構は前記車両の走行方向の後部で機能する。
【0236】
または、車両の左右一対の前車輪だけでなく左右一対の後車輪も、リンク機構によって車体フレームに支持されていてもよい。この場合、前記車両は、上述のように操作ハンドルの位置に応じて、車両の走行方向の後部に位置するリンク機構が機能しないようにロックするロック機構を有する。このロック機構は、リンク機構における一対のクロス部材と一対のサイド部材とが相対移動しないように、クロス部材とサイド部材とをロック、または、一対のクロス部材同士をロック、または、一対のサイド部材同士をロックする。
【0237】
以上のような構成により、操作ハンドルを前記第1位置と第2位置とに切り替えた場合でも、実施形態2と同様の作用効果が得られる。
【0238】
なお、上述のように前記操作ハンドルの位置を切り替え可能な場合には、前記実施形態4の構成において、左右一対の後車輪のみがリンク機構によって車体フレームに支持されていてもよい。この場合には、前記操作ハンドルが前記第2位置に位置付けられた際に、前記左右一対の後車輪が前車輪として機能するため、前記実施形態4と同様の作用効果が得られる。
【0239】
上述のような操作ハンドルの位置を切り替え可能な構成は、実施形態1、5、6の車両に適用されてもよい。
【0240】
前記実施形態4、5では、左前車輪31、231及び右前車輪32、232は、それぞれ、上下方向に延びる回転軸線を中心として回転するキャスター式の車輪である。しかしながら、左前車輪及び右前車輪の少なくとも一方は、上下方向に延びる回転軸線を中心として回転しない車輪であってもよい。また、左後車輪及び右後車輪の少なくとも一方が、上下方向に延びる回転軸線を中心として回転する車輪であってもよい。
【0241】
前記実施形態4では、リンク機構105は、車両101を前から見て、車両101の左右方向において、左前車輪31が第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIよりも左後車輪41の近くに位置し、且つ、右前車輪32は、第1中央揺動軸線UI及び第2中央揺動軸線DIよりも右後車輪42の近くに位置するように構成されている。しかしながら、リンク機構は、車両を前から見て、車両の左右方向において、左前車輪が左後車輪よりも第1中央揺動軸線及び第2中央揺動軸線の近くに位置し、且つ、右前車輪は、右後車輪よりも第1中央揺動軸線及び第2中央揺動軸線の近くに位置するように構成されていてもよい。すなわち、左前車輪及び右前車輪の構成は、実施形態4の構成に限定されない。なお、実施形態1、5の構成において、実施形態4と同様に、左前車輪及び右前車輪を配置してもよい。
【0242】
前記実施形態6では、ストッパ307は、上接続フレーム321eの左端部に位置している。しかしながら、ストッパは、上接続フレームの右端部に位置してもよい。支持部材381は、左サイド部材353に位置している。しかしながら、支持部材は、右サイド部材に位置してもよい。また、上接続フレームの両端部にストッパを配置し、左サイド部材及び右サイド部材の両方に支持部材を配置する構成でもよい。前記実施形態6のストッパ及び支持部材の構成は、実施形態1、5の車両に構成されてもよい。
【0243】
前記実施形態6では、ストッパ307は、上接続フレーム321eの左端部に設けられている。しかしながら、ストッパは、上接続フレームと一体に設けられていてもよい。
【0244】
前記各実施形態では、リンク機構5、105、205、305は、リンク機構支持部22、122、222、322よりも前に位置する上クロス部材51、151、251、351を有する。しかしながら、リンク機構は、上クロス部材及びリンク機構支持部の後ろに、後上クロス部材を有していてもよい。リンク機構は、リンク機構支持部の前に位置する前上クロス部材と、リンク機構支持部の後ろに位置する後上クロス部材とを有していてもよい。
【0245】
前記実施形態1から5では、ストッパ7、7a、7b、107、207は、下クロス部材52、152、252に接触するように、リンク機構支持部22、122、222の下端部に設けられている。しかしながら、ストッパは、上クロス部材に接触するようにリンク機構支持部の上端部に設けられていてもよい。
【0246】
前記実施形態1から5では、ストッパ7、7a、7b、107、207は、リンク機構5、105、205の動作によって車体本体2、102、202に対して移動する部材である下クロス部材52、152、252と、移動しない部材であるリンク機構支持部22、122、222との間に設けられている。前記実施形態6では、ストッパ307は、リンク機構305の動作によって車体本体302に対して移動する部材である支持部材381と、移動しない部材である上接続フレーム321eとの間に設けられている。しかしながら、ストッパは、車両の重心が所定の範囲内に位置するように上クロス部材の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制することができれば、リンク機構の動作によって車体本体に対して移動する他の部材と、移動しない他の部材との間に設けられてもよい。
【0247】
例えば、前記実施形態6の構成において、車両は、上接続フレームから下方向に延びる支持部材を有してもよい。前記支持部材は、リンク機構支持部と平行に延びる。前記支持部材は、前方向に見て、上クロス部材と重複するように構成されている。前記支持部材には、前記実施形態6と同様、上接触部材及び下接触部材が接続されている。前記上接触部材は、上クロス部材よりも上に位置している。下接触部材は、上クロス部材よりも下に位置している。上クロス部材は、ストッパを有している。ストッパは、前方向に見て、前記支持部材と重複するように位置している。前記リンク機構が動作すると、前記上クロス部材は、前記支持部材に対して揺動する。すなわち、リンク機構が動作すると、前記上クロス部材は、前記支持部材に対して前記上接触部材及び前記下接触部材の間で上下方向に移動する。したがって、前記上接触部材及び前記下接触部材は、前記上クロス部材の上下方向の移動を規制する。よって、前記車両は、重心が所定の範囲内に位置するように、ストッパによって前記上クロス部材の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び前記下クロス部材の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制することができる。
【0248】
前記各実施形態では、ストッパ7、7a、7b、107、207、307は、リンク機構5、105、205、305の動作によって車体本体2、102、202、302に対して移動する部材と、移動しない部材との間に設けられている。しかしながら、ストッパは、リンク機構の動作によって車体本体に対して移動する部材同士の間に設けられてもよい。
【0249】
例えば、車両は、リンク機構の動作によって変動する下クロス部材と上クロス部材との間隔を規制するストッパを有してもよい。前記ストッパは、前記下クロス部材または前記上クロス部材に支持されている。前記ストッパは、下クロス部材に支持されている場合、リンク機構の動作によって上クロス部材に接触するように構成される。また、前記ストッパは、上クロス部材に支持されている場合、リンク機構の動作によって下クロス部材に接触するように構成される。平行四節リンク方式のリンク機構では、リンク機構が動作すると、上クロス部材と下クロス部材の間の上下方向の間隔は短くなる。すなわち、車体本体が左または右に傾くと、前記上クロス部材は前記連結部材に対して上下方向に移動する。したがって、前記ストッパは、前記上クロス部材の上下方向の移動を規制する。よって、前記ストッパは、車両の重心が所定の範囲内に位置するように前記上クロス部材の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び前記下クロス部材の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制することができる。
【0250】
また、例えば、車両は、リンク機構支持部に固定され、上クロス部材または下クロス部材を揺動可能に支持している揺動軸に対して上クロス部材または下クロス部材の揺動範囲を規制するストッパを有していてもよい。また、車両は、上クロス部材または下クロス部材に固定され、リンク機構支持部に揺動可能に支持されている揺動軸のリンク機構支持部に対する揺動範囲規制するストッパを有していてもよい。
【0251】
また、ストッパは、左サイド部材53、153、253または右サイド部材54、154、254の少なくとも一方に設け、上クロス部材51、151、251の第1中央揺動軸線UI回りの揺動及び下クロス部材52の第2中央揺動軸線DI回りの揺動を規制するように構成してもよい。
【0252】
前記実施形態3では、車体本体に作用するエネルギーを低減する抵抗力を付与するばね要素(ばね部材77)または緩衝要素(弾性部材71)は、ストッパ7に設けられている。しかしながら、ばね要素(ばね部材)または緩衝要素(弾性部材)は、リンク機構5に設けられていてもよいし、ストッパ7とリンク機構5の双方に設けられていてもよい。また、ばね要素(ばね部材)または緩衝要素(弾性部材)は、上クロス部材と左サイド部材または右サイド部材との間に設けられていてもよい。同様に、ばね要素(ばね部材)または緩衝要素(弾性部材)は、下クロス部材と左サイド部材または右サイド部材との間に設けられていてもよい。
【0253】
前記各実施形態の構成を、車いすなどの他の車両に適用してもよい。すなわち、前記各実施形態の構成は、車体本体の左右方向に傾斜している路面上を車両が走行または停車している時に、車体本体の傾きを抑制することが求められている4輪の車両であれば、どのような種類の車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0254】
1、101、201、301 車両
2、102、202、302 車体本体
3、203 前車輪
4、204 後車輪
5、105、205、305 リンク機構(前車輪変位リンク機構)
6、106、206 操作ハンドル
7、7a、7b、107、207、307 ストッパ
21、121、221、321 車体フレーム
22、122、222、322 リンク機構支持部
31、231 左前車輪
32、232 右前車輪
41、241 左後車輪
42、242 右後車輪
51、151、251、351 上クロス部材(第1揺動レバー)
52、152、252、352 下クロス部材(第2揺動レバー)
53、153、253、353 左サイド部材(左前車輪支持体)
54、154、254、354 右サイド部材(右前車輪支持体)
106a 把持部
110 シート
121a 左メインフレーム
121b 右メインフレーム
121c 接続フレーム
121d 補強フレーム
121e、321e 上接続フレーム
221 荷台
381 支持部材
382 上接触部材(第1接触部材)
383 下接触部材(第2接触部材)
UI 第1中央揺動軸線
DI 第2中央揺動軸線
UL 第1左揺動軸線
DL 第2左揺動軸線
UR 第1右揺動軸線
DR 第2右揺動軸線
G 重心
P31 左前車輪回転軸線
P32 右前車輪回転軸線
P41 左後車輪回転軸線
P42 右後車輪回転軸線
WL 左回転軸線
WR 右回転軸線