(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】電線支持部材
(51)【国際特許分類】
H02G 7/10 20060101AFI20230202BHJP
G01N 3/32 20060101ALI20230202BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20230202BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20230202BHJP
D01F 6/84 20060101ALI20230202BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20230202BHJP
H02G 7/18 20060101ALI20230202BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H02G7/10
G01N3/32 N
G01N3/08
D01F6/62 302A
D01F6/84 306A
D01F6/92 307B
H02G7/18
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2018233118
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000219288
【氏名又は名称】東レ・モノフィラメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友和
(72)【発明者】
【氏名】岩見 哲郎
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/10
G01N 3/32
G01N 3/08
D01F 6/62
D01F 6/84
D01F 6/92
H02G 7/18
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続螺旋状のポリエステル系樹脂線材からなる電線支持部材であって、
前記ポリエステル系樹脂線材が、リン化合物をリン原子換算で0.08~1質量%含み、前記ポリエステル系樹脂線材がJIS L1091E法の規定に準じ測定した燃焼試験時の酸素指数が26以上であり、下記評価方法によって測定された振動試験後の引張強力が3000~10000Nである、電線支持部材。
[振動試験後の引張強力]
(1)振動試験
連続螺旋状のポリエステル系樹脂線材の螺旋の内径が20mmとなるように伸長した状態での試料長さ2mとしてポリエステル系樹脂線材の両端部を固定治具に固定し、ポリエステル系樹脂線材の固定治具の間の中央部を振動試験装置と連結し、固定治具を結ぶ直線に垂直な方向に、振幅5mm、周波数20Hzで1000万回ポリエステル系樹脂線材を振動させる。
(2)引張試験
振動試験後、固定治具から取り外した無張力状態のポリエステル系樹脂線材を長さ500mmに切断した試料をつかみ間隔:250mmで引張試験機に固定し、引張速度:300mm/分の条件で引張試験し、試料破断時の強力を振動試験後の引張強力とする。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂線材を構成するポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基濃度が5~40当量/トンである、請求項
1に記載の電線支持部材。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂線材が非円形断面であり、長手方向に撚りを有する、請求項1
または2に記載の電線支持部材。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂線材に含まれるポリエステル系樹脂がポリカルボジイミド化合物を0.01~1質量%含む、請求項1~
3のいずれかに記載の電線支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線破断時の電線の垂下りを防止するために架設する電線支持部材に関する。更に詳しくは、難燃性と耐久性を共に有する電線支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空電線は落雷、強風、降雪等による疲労破断、応力腐食断線や、配電工事事故による断線が発生した時、充電されたままの電線が地上に落下したり垂れ下がった場合には、感電事故等の人災が起こる懸念があった。そこで、これらの電線落下による災害を防止するための落下防止部材が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、引張強度が大きく、耐熱性の良い化学繊維紐上に絶縁被覆を施してなる支持線を絶縁電線周りに螺旋状に巻き付けてなることを特徴とする支持線付架空絶縁電線が提案されている。
【0004】
特許文献2には、架空絶縁電線を支持物で支持させて架設した架空配電線路において、支持物に架設された架空絶縁電線のほぼ全長にわたり、その外周上に電線落下防止用線材をスパイラル状に巻き付け、その両端を支持物または架空絶縁電線に固定してなることを特徴とする架空配電線路が提案されており、電線落下防止用線材として芯線に芳香環を持つアラミド繊維を用い該芯線の上にオレフィン系樹脂の被覆層を押し出し被覆して得られるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】公開実用新案昭56-100816
【文献】特開2002-281649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明では、化学繊維の芯材に絶縁被覆した支持線の用いているため、落雷や断線時の短絡等による発火時の延焼により支持線が焼け落ち、架空電線が地上に落下する可能性があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明では、芯線として、芳香環を持つアラミド繊維等を使用しているので、線材の難燃性はある程度高いものと推測されるが、本発明者らの検討によれば、被覆層を有する線材は、使用時に繰り返し摩耗などの強い外力が加わった場合に、被覆層の割れ、亀裂および剥がれにより芯線が露出し、強度および耐候性が低下しやすい、すなわち耐久性が低いという問題があった。
【0008】
本発明は上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。したがって本発明の目的は、落雷や断線時の短絡等による発火時に延焼し難く、かつ耐久性が高い電線支持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明によれば、連続螺旋状のポリエステル系樹脂線材からなる電線支持部材であって、前記ポリエステル系樹脂線材がJIS L1091E法の規定に準じ測定した燃焼試験時の酸素指数が26以上であり、下記評価方法によって測定された振動試験後の引張強力が3000~10000Nである電線支持部材である。
[振動試験後の引張強力]
(1)振動試験
連続螺旋状のポリエステル系樹脂線材の螺旋の内径が20mmとなるように伸長した状態での試料長さを2mとしてポリエステル系樹脂線材の両端部を固定治具に固定し、ポリエステル系樹脂線材の固定治具の間の中央部を振動試験装置と連結し、固定治具を結ぶ直線に垂直な方向に、振幅5mm、周波数20Hzで1000万回ポリエステル系樹脂線材を振動させる。
【0010】
P=π(D0
2-202)1/2
P:螺旋の内径が20mmとなる螺旋のピッチ[mm]
D0:無伸長状態の螺旋の内径[mm]
(2)引張試験
振動試験後、固定治具から取り外した無張力状態のポリエステル系樹脂線材を長さ500mmに切断した試料をつかみ間隔:250mmで引張試験機に固定し、引張速度:300mm/分の条件で引張試験し、試料破断時の強力を振動試験後の引張強力とする。
【0011】
本発明の電線支持部材においては、
前記ポリエステル系樹脂線材が、リン化合物をリン原子換算で0.08~1質量%含むこと、
前記ポリエステル系樹脂線材を構成するポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基濃度が5~40当量/トンであること、
前記ポリエステル系樹脂線材が非円形断面であり、長手方向に撚りを有すること、
前記ポリエステル系樹脂線材に含まれるポリエステル系樹脂がポリカルボジイミド化合物を0.01~1質量%含むこと、
がいずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たした場合には、さらに優れた効果を取得することができる。
【0012】
振動試験において、試料長さとは、螺旋状態での両端の距離をいう。螺旋の内径が20mmとなるように伸長した状態は、螺旋のピッチを下記(I)式から算出される長さに設定することにより得ることができる。・・・(I)
P=π(D0
2-202)1/2・・・(I)
P:螺旋の内径が20mmとなる螺旋のピッチ[mm]
D0:無伸長状態の螺旋の内径[mm]
(I)式は、ポリエステル系樹脂線材の太さを0に近似した計算であるが、電線支持部材に用いられるポリエステル系樹脂線材の径及び無伸長状態での螺旋の内径はそれぞれ、通常3~10mm及び40~400mm程度であり、上記近似適用による測定値への影響は無視できるものである。ここで無伸長状態とは螺旋を圧縮しポリエステル系樹脂線材の間の隙間を最小とした状態をいう。
【0013】
引張試験において、無張力状態のポリエステル系樹脂線材とは、振動試験後固定治具から取り外したポリエステル系樹脂線材を水平に静置し、24時間経過後のポリエステル系樹脂線材をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、落雷や断線時の短絡等による発火時に延焼し難く、かつ耐久性が高い電線支持部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の電線支持部材の非伸長時の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は本発明の電線支持部材を使用した架空電線の状態の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は本発明の電線支持部材の架設時の寸法測定方法を説明するための概略図である。
【
図4】
図4は本発明で使用するポリエステル系樹脂線材の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電線支持部材は、連続螺旋状のポリエステル系樹脂線材からなる電線支持部材であって、
前記ポリエステル系樹脂線材がJIS L1091E法の規定に準じ測定した燃焼試験時の酸素指数が26以上であり、下記評価方法によって測定された振動試験後の引張強力が3000~10000Nである、電線支持部材である。
[振動試験後の引張強力]
(1)振動試験
連続螺旋状のポリエステル系樹脂線材の螺旋の内径が20mmとなるように伸長した状態での試料長さを2mとしてポリエステル系樹脂線材の両端部を固定治具に固定し、ポリエステル系樹脂線材の固定治具の間の中央部を振動試験装置と連結し、固定治具を結ぶ直線に垂直な方向に、振幅5mm、周波数20Hzで1000万回ポリエステル系樹脂線材を振動させる。
【0017】
ここで試料長さとは、螺旋状態での両端の距離をいう。螺旋の内径が20mmとなるように伸長した状態は、螺旋のピッチを下記(I)式から算出される長さに設定することにより得ることができる。・・・(I)
P=π(D0
2-202)1/2・・・(I)
P:螺旋の内径が20mmとなる螺旋のピッチ[mm]
D0:無伸長状態の螺旋の内径[mm]
(2)引張試験
振動試験後、固定治具から取り外した無張力状態のポリエステル系樹脂線材を長さ500mmに切断した試料をつかみ間隔:250mmで引張試験機に固定し、引張速度:300mm/分の条件で引張試験し、試料破断時の強力を振動試験後の引張強力とする。
【0018】
かかる構成を採ることにより、落雷や断線時の短絡等による発火時に延焼し難く、かつ耐久性が高い電線支持部材を得ることができる。
【0019】
電線支持部材とは、架空電線が破断した時に電線の垂下りを防止するために架設されるものである。具体例について図をベースに説明するが、本発明は本図の態様のみに限定されるものではない。
図1は、本発明の電線支持部材の非伸長時の一例を示す概略図である。
図1に示すように、本発明の電線支持部材1は、後述するポリエステル系樹脂線材が連続螺旋状の形状を有するものである。かかる形態を有することにより伸縮性を有するものとなる。このような電線支持部材1は、架設工事に使用する前の無負荷の非伸長状態から、架空電線2に使用されたときは、電柱間の1スパンに相当する長さに伸長して、
図2に示すような架空電線の状態になる。なお、本発明の電線支持部材1の両端部の固定方法としては、スリーブを介して架空電線に連結してもよく、あるいはスリーブを介することなく電柱3などにクランプ等により直接固定してもよい。
【0020】
架空電線2は電線支持部材1の螺旋状のループ内に挿通されて電柱間に架設された状態になっていると共に、その電線支持部材1が電柱間の1スパンに渡り伸長した状態になっている。このように電線支持部材1を伸長状態にして外挿したことにより、架空電線2が電線支持部材本体の螺旋状ループを介して一定間隔に懸架された状態となる。架空電線が破断した時に電線の垂下りを防止する方式には各種あるが、このように連続螺旋状の電気絶縁性の線材を電線に巻き付けるものが、電線支持部材1を電柱間に伸長させる一度の操作だけで、架空電線2を連続螺旋状ループを介して一定間隔に懸架するための懸架点を全て形成し、架空電線2の支持を行うことができることから好ましい。ここで、連続螺旋状とは、ポリエステル系樹脂線材が回転面に垂直方向へ幾重にも回っている曲線形状であって、少なくとも10回以上の回転を有するものである。
【0021】
電線支持部材を構成するポリエステル系樹脂線材の直径や断面形状、螺旋の内径等は、適用する架空電線の太さ等によって適宜選択すればよく、詳細については後述する。
【0022】
本発明の電線支持部材1を構成する線材は、ポリエステル系樹脂線材である。これは、架空電線が破断したときに支えうる力学特性、長期にわたってその力学特性を保つ必要があることから摩擦や繰り返し変形に対する耐久性、屋外で使用されることから耐候性や耐光性といった諸特性を有する必要があり、これらを満たしうる素材として選択した。ポリエステル系樹脂線材に用いられるポリエステル系樹脂は上記特性を満たす限り、特に限定されないが、熱収縮性と熱固定性を有する熱可塑性のポリエステル系樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンナフタレートなどが挙げられる。これらは単独あるいは混合物を用いても良い。中でも、安価で経年劣化が少なく、寸法安定性、靭性および可撓性に優れている点で、ポリエステル樹脂の固有粘度が0.7~1.4であることが好ましい。固有粘度が高い程ポリエステル系樹脂線材の靱性が高いものとなる傾向がある。かかる観点から、更に好ましくは固有粘度0.9~1.4の範囲である。固有粘度とは、オルソクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度より求めた固有粘度であり、[η]で表される値である。
【0023】
ここで、ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸と、グリコールとを脱水縮合して形成される構造を有する樹脂であり、その構造について述べるときには、ジカルボン酸由来の構造を、ジカルボン酸成分、グリコール由来の構造をグリコール成分と便宜上呼ぶことにする。なお、ここで、便宜上と示したのは、ジカルボン酸成分、グリコール成分とは、ポリエステル樹脂の構造を特定するためであって、原料を限定するものではないためである。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分とグリコール成分を適宜組み合わせて得られる構造を採用することができる。また、前記のジカルボン酸成分の一部をアジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、スルホン酸金属塩置換イソフタル酸などで置き換えてもよく、また、前記のグリコール成分の一部を、ジエチレングリコールなどで置き換えてもよい。さらに、グリコール成分に代えてペンタエリストール、トリメチロールプロパンなどの、ジカルボン酸成分に代えてトリメリット酸、トリメシン酸、硼酸などの、分岐構造を導入する成分を少量含有することもできる。さらに、ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルも含むものとする。
【0024】
これらの中でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の90%以上がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレートの場合、得られる電線支持部材1が環境変化による特性変化を起こし難く、寸法安定性に優れるために好適である。
【0025】
また、ポリエステル系樹脂線材として、ポリエステル系樹脂をモノフィラメントに加工したものを用いることが、高強力で耐候性に優れる電線支持部材が得られるという観点から好ましい。
【0026】
本発明の電線支持部材1を構成するポリエステル系樹脂線材は、JIS L1091E法の規定に準じ測定した燃焼試験時の酸素指数が26以上である。かかる構成を満たすことで、電線支持部材が落雷や断線時の短絡等による発火時に延焼し難いものとなる。
【0027】
酸素指数が26に満たないと自己消火性が劣り、火災時に延焼の可能性が高まるため不適である。かかる観点から、JIS L1091E法の規定に準じ測定した燃焼試験時の酸素指数は、28以上が好ましく、30以上がより好ましい。なお、JIS L1091E法の規定に準じ測定した燃焼試験時の酸素指数の上限は、高ければ高いほど好ましいが、通常、40以下である。酸素指数が40を超えるポリエステル系樹脂線材を得るには、難燃剤を増量することなどが必要であり、結果として成型性が悪く、機械的特性に劣るものになる傾向がある。
【0028】
本発明の電線支持部材1を構成するポリエステル系樹脂線材に用いられる難燃剤は上記特性を満たす限り、特に限定されないが、前記ポリエステル系樹脂線材が、リン化合物をリン原子換算で0.08~1質量%含むことが好ましい。
【0029】
リン化合物を含むことで難燃性が付与されるが、リン化合物としては、一般に難燃剤として用いられるリン含有難燃剤が挙げられる。例えば、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドが好ましい例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも溶融混練や溶融成形時に分解や飛散を伴わない耐熱性の高いものが好ましく、これら化合物の中でも、ホスフィンオキシド類がポリエステルとの共重合反応性が良いこと、および重合反応時の飛散が少ないことから好適に使用される。また、本発明で用いられるポリエステル系樹脂線材を構成するポリエステル系樹脂としては、上記リン化合物を共重合した共重合ポリエステル樹脂でも良いし、左記共重合ポリエステルと通常のポリエステル樹脂の混合物であってもよい。
【0030】
前記ポリエステル系樹脂線材のリン化合物の含有量は、リン化合物がポリエステル樹脂線材全体の質量を100質量%とした時にリン原子の量が0.08~1質量%であることが好ましく、0.4~0.9質量%がより好ましい。リン原子の量が1質量%を超えると、成形性が悪くなり、仮にポリエステル系樹脂線材が得られたとしてもポリエステル系樹脂線材の機械的特性、耐熱性が十分ではないものとなる場合があり、逆に、0.08質量%未満では難燃効果が不十分となる場合がある。
【0031】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂線材は、下記評価方法によって測定された振動試験後の引張強力が3000~10000Nである。
【0032】
[振動試験後の引張強力]
(1)振動試験
連続螺旋状のポリエステル系樹脂線材の螺旋の内径が20mmとなるように伸長した状態での試料長さを2mとしてポリエステル系樹脂線材の両端部を固定治具に固定し、ポリエステル系樹脂線材の固定治具の間の中央部を振動試験装置と連結し、固定治具を結ぶ直線に垂直な方向に、振幅5mm、周波数20Hzで1000万回ポリエステル系樹脂線材を振動させる。
(2)引張試験
振動試験後、固定治具から取り外した無張力状態のポリエステル系樹脂線材を長さ500mmに切断した試料をつかみ間隔:250mmで引張試験機に固定し、引張速度:300mm/分の条件で引張試験し、試料破断時の強力を振動試験後の引張強力とする。
【0033】
かかる範囲の振動試験後の引張強力を有することで、耐久性が高い電線支持部材を得ることができる。振動試験後の引張強力が3000N未満である場合には、強度および耐久性が不足し、強風、降雪などの強い衝撃を繰り返し受けることで変形しやすくなる傾向がある。逆に、引張強力が10000Nを超えると、割れやフィブリル化が発生しやすくなる。かかる観点から、振動試験後の引張強力の下限については、3500N以上が好ましく、5000N以上がより好ましく、上限については、8000N以下が好ましく、6500N以下がより好ましい。なお、本発明の電線支持部材1を構成するポリエステル系樹脂線材は既知である溶融紡糸法によって得ることが可能であり、ポリエステル系樹脂線材の引張強力はポリエステル系樹脂線材製造時の延伸倍率によって制御することができる。
【0034】
本発明に用いられるポリエステル系樹脂線材を構成するポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基濃度は、5~40当量/トンであることが好ましい。ここで、末端カルボキシル基濃度とは、Pohlにより、ANALYTICAL CHEMISTRY、第26巻、1614頁に記載された方法で測定した値である。ポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基濃度が5~40当量/トンであると、溶融時のポリエステル系樹脂の粘度低下が抑制され、これを電線支持部材に用いた場合には、落雷や断線時の短絡等による発火時に延焼し難く、溶融滴下物による火傷などの二次災害を防止する効果を高めることができる。
また、40当量/トンを超えると、耐加水分解性が低く、燃焼時にドリップしやすくなる場合がある。かかる観点から、ポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基濃度が5~20当量/トンであることがより好ましい。
【0035】
ポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ポリエステル系樹脂を溶融状態とし、カルボジイミド化合物などの公知の化合物を適量反応させて低下させることができる。
【0036】
カルボジイミド化合物としては、例えば、アルキル置換フェニルカルボジイミドを繰り返し単位とするポリカルボジイミド化合物を用いることができる。かかる際の組成としては、ポリエステル系樹脂線材に含まれるポリエステル系樹脂がポリカルボジイミド化合物を0.01~1質量%含むことが好ましい。
【0037】
また、本発明の電線支持部材に用いられるポリエステル系樹脂線材には、少量の酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子、各種金属粒子などの粒子類のほか、既知の抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐候剤、各種着色剤、帯電防止剤、ワックス類、各種界面活性剤、各種強化繊維類、および各種可塑剤などを含有していてもよい。
【0038】
本発明の電線支持部材1の形状について
図1および
図3を用いて説明する。
図1は本発明の電線支持部材の非伸長時の一例を示す概略図であり、
図3は本発明の電線支持部材の伸長時の形状を説明するための概略図である。本発明の電線支持部材1の非伸長時の螺旋の外径Wは、小さすぎると太径の架空電線に外挿できず、大きすぎると架空電線への取り付けが困難になるため、本発明の電線支持部材の非伸長時の螺旋の外径Wは50~400mmであることが好ましい。更に好ましくは100~200mmの範囲である。
【0039】
また、電線支持部材1の架設時の螺旋のピッチPは、小さい方が架空電線2を懸架するための懸架点は多くなり、架空電線破断時の電線の把持力が増すため好ましいが、架設のため伸長したときの電線支持部材1の長さとしては、少なくとも電柱間の1スパンまで延長できるようにすることで架設作業性を良好にすることができる。これらの観点から、本発明の電線支持部材1の架設時の螺旋のピッチPと螺旋の内径Dの比P/D=5~65であることが好ましく、更に好ましくはP/D=7~35の範囲である。P/Dが65を超えると、架空電線2を懸架するための懸架点が少なくなり把持力が減少し、断線時に架空電線が電線支持部材から抜けて垂下りやすい傾向がある。
【0040】
本発明の電線支持部材1に用いられるポリエステル系樹脂線材の形状について
図4を用いて説明する。
図4は、本発明で使用するポリエステル系樹脂線材の一例を示す概略図である。本発明の電線支持部材1に使用するポリエステル系樹脂線材の断面形状は、その使用環境に応じて適宜選択することができ、例えば円形、楕円形、扁平、正多角形および不定形な形状を含む多角形など様々な形状を挙げることができる。
【0041】
ポリエステル系樹脂線材の直径には特に制限はなく、使用環境に応じて適宜選択されるが、直径3~10mmの範囲にあると好ましく使用できる。本発明におけるモノフィラメント断面の直径とは、次の通り定義したものである。つまり、長方形断面糸、正方形断面糸および三角形断面糸などにおける最も短い長さとなる径を示し、例えば、長方形断面糸および正方形断面糸においては、断面の重心を通り、相対する辺と辺を結んだ直線のうち、最も短い直線の長さであり、三角断面糸においては、三角形の重心を通り、1つの頂点から相対する辺に垂直に下ろした直線の長さである。
【0042】
その中で、断面形状が非円形断面のポリエステル系樹脂線材に撚り回転を付与して外面にらせん状稜線を形成した撚り線(
図4の1a)とした場合には、線材全体の重量および使用材料を大きくすることなく、優れた圧縮強度が得られるため、曲がり易く所定の伸長性を備えながら折れ難いため耐久性に優れ、かつ、雪の付着や風切り音の発生を抑制する効果が得られ、電線支持部材として好ましく使用できる。
【0043】
上記線材に与える撚り回数については特に制限はなく、これらの回数が増加することで伸長性が高まる傾向にあるが、線材に適度な剛性と伸長性を与えるためには、5~20回/mの範囲である場合が好ましく、線材断面の直径や素材によって適宜選択することができる。線材の捩り回数は、線材の両端を1mの間隔で固くつまみ、撓まない程度に緊張し、異形断面の特定の位置、例えば多角形断面の頂点の線材中心軸に対する回転数(回/m)で評価することができる。
【0044】
次に、本発明の電線支持部材1の製造方法について詳細を説明する。
【0045】
本発明の電線支持部材1を構成するポリエステル系樹脂線材の製造は、何ら特殊な製造装置を使用する必要はなく、例えば1軸または2軸のエクストルーダー型溶融押出機を使用することができ、樹脂温度を200~350℃、押出圧力1~50MPa、押出ノズル孔径0.1~20mm、紡糸速度0.3~100m/分などの条件を適宜選択することができる。
【0046】
次に、各々の押出機から紡出された溶融物は、短い気体ゾーンを通過した後、引き続き冷却媒体中に導かれて冷却固化される。なお、冷却媒体としては、例えば水やポリエチレングリコールなど挙げることができるが、線材の表面から容易に除去でき、化学的、物理的に本質的な変化を与えないものであれば特に限定しない。
【0047】
そして、ポリエステル系樹脂線材が延伸されたモノフィラメントの場合は、冷却固化された未延伸線材は、所定の強度を得るために、加熱1段延伸または多段延伸される。この際に使用される熱媒体についても、空気、温水、蒸気、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびシリコーンオイルなどが挙げられるが、線材の表面から容易に除去でき、化学的、物理的に本質的な変化を与えないものであれば特に限定しない。
【0048】
また、延伸条件については、使用する樹脂によって異なるが、総合延伸倍率3~7倍で延伸することが、ポリエステル系樹脂線材として十分な強度を得る上で好ましい。ここでいう総合延伸倍率は、1段目の延伸倍率と再延伸時の延伸倍率との積である。
【0049】
1段、多段いずれのプロセスにおいても延伸に続いて乾熱浴中で弛緩熱処理されるが、その温度および弛緩熱処理倍率も使用する樹脂により適宜選択できる。
【0050】
この弛緩熱処理により、延伸工程で生じた線材内部の不安定構造(横方向の歪み、伸びの低下、クラック)が是正される。この弛緩熱処理後、必要に応じて仕上げ油剤を付着して巻き取る。
【0051】
このようにして一旦巻き取られた線材を解舒し、緊張状態で走行させ、線材のガラス転移点以上、融点以下の温度に予熱した後、直ちに回転する賦形軸に巻き取ることにより、連続螺旋状に成形した伸縮自在のポリエステル系樹脂線材からなる本発明の電線支持部材1を製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の電線支持部材1について実施例に基づいて説明するが、本発明の電線支持部材1はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
また、実施例における電線支持部材1および電線支持部材1を構成するポリエステル系樹脂線材の評価は以下の方法で行った。
【0054】
[繊度]
JIS L1013:2010に規定される初荷重をかけて正確に500mmの試料4本を取り、質量を測定して、次の式によって繊度を算出した。
【0055】
繊度[dtex]=質量[g]×10000/2。
【0056】
[引張強力]
JIS L1013:2010 8.5.1に準じて、長さ500mmに切断した試料を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置した後、(株)オリエンテック製“テンシロン(登録商標)”UTM-4-100型引張り試験機を用い、試料つかみ間隔:250mm、引張速度:300mm/分の条件で測定し、試料が切断した時の引張強力[N]を求めた。
【0057】
[ポリエステルの固有粘度]
溶解用に準備した試験管に25mLのオルトクロロフェノール(以下、OCPと略称する)とポリエステルの樹脂試料2g±0.001gを入れる。試料を投入した試験管をドライ・ブロックバスにセットし100℃で30分間加熱しながらポリエステルの樹脂試料をOCPに溶解しOCP溶液とし、このOCP溶液を試験管中で流水にて15分間冷却後、OCP溶液20mLをホールピペットで計量しオストワルド粘度管に採取する。25℃に温度調整した恒温水槽にOCP溶液を採取したオストワルド粘度管をセットし30分間放置後、定法に従いオストワルド粘度管内を流下するOCP溶液の流下時間を測定し固有粘度を算出した。
【0058】
[末端カルボキシル基濃度]
溶解用に準備した試験管に試料1gとo-クレゾール水溶液20mlを入れる。試料を投入した試験管をドライ・ブロックバスにセットし100℃で30分間加熱しながら樹脂試料を溶解後、液温が25℃になるまで冷却する。1/25N水酸化ナトリウム・エタノール水溶液を用いて滴定を行い、滴定に要した1/25N水酸化ナトリウム・エタノール水溶液の滴定量から試料1トン当たりの末端カルボキシル基当量[当量/トン]を算出した。
【0059】
[酸素指数]
JIS L1091E法に準じて、長さ150mmに切断した試料を燃焼円筒の上端部から100mm以上の距離に位置するように垂直に試験片支持具に取り付ける。酸素および窒素流量調節バルブを開き、燃焼円筒内に約30秒間ガスを放出した後、試料の上端に点火する。試料の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、または着火後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な最低の酸素流量とそのときの窒素流量を決定し、次の式によって酸素指数を求める。試験回数は3回とし、その平均値を算出した。
【0060】
酸素指数=[O2]/([O2]+[N2])
[O2]:酸素の流量[リットル/分]
[N2]:窒素の流量[リットル/分]
[原料]
回転型真空乾燥機を用い、リン化合物を共重合したポリエチレンテレフタレートチップ(東レ社製 リン原子の量0.67質量%、固有粘度0.75)を乾燥温度110℃で水分率が60ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Aとした。
【0061】
回転型真空乾燥機を用い、リン化合物を共重合したポリエチレンテレフタレートチップ(東レ社製 リン原子の量0.67質量%、固有粘度1.07)を乾燥温度110℃で水分率が60ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Bとした。
【0062】
原料Aを固相重合したポリエチレンテレフタレートチップ(東レ社製 リン原子の量0.67質量%、固有粘度1.20)を乾燥温度110℃で水分率が60ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Cとした。
【0063】
回転型真空乾燥機を用い、リン化合物を共重合したポリエチレンテレフタレートチップ(東レ社製 リン原子の量0.85質量%、固有粘度0.75)を乾燥温度110℃で水分率が60ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Dとした。
【0064】
回転型真空乾燥機を用い、リン化合物を共重合したポリエチレンテレフタレートチップ(東レ社製 リン原子の量1.4質量%、固有粘度0.75)を乾燥温度110℃で水分率が60ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Eとした。
【0065】
回転型真空乾燥機を用い、ポリエチレンテレフタレートチップ(東レ社製 酸化チタン含有量0.1質量%、固有粘度1.21)を乾燥温度110℃で水分率が60ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Fとした。
原料Dに加工温度285℃の2軸押出機を用いてカーボンブラック20重量%を添加して得られたチップを、乾燥温度110℃で水分率が550ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Gとした。
ポリカルボジイミド化合物(平均分子量10000のStabaxol(登録商標)P100)を15質量%含有するポリエチレンテレフタレートチップ(ラインケミー社製 Stabaxol KE7646)を、回転型真空乾燥機を用い乾燥温度110℃で水分率が350ppm以下となるまで乾燥したチップを原料Hとした。
【0066】
[実施例1]
原料A、原料Gを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0067】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0068】
[実施例2]
原料B、原料Gを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0069】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0070】
[実施例3]
原料C、原料F、原料Gを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0071】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0072】
[実施例4]
原料C、原料Gを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0073】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0074】
[実施例5、7~8]
原料C、原料G、原料Hを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0075】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0076】
[実施例6]
原料C、原料G、原料Hを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0077】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径75mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが90mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0078】
[実施例9]
原料D、原料Gを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0079】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0080】
[実施例10]
原料D、原料G、原料Hを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0081】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0082】
[比較例1]
原料C、原料F、原料Gを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0083】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0084】
[比較例2]
原料E、原料Gを表1のブレンド率となるようにブレンドした混合原料をφ50mmの1軸型エクストルーダー型溶融押出し機に連続供給して、280~300℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに70℃の温水浴中で冷却固化せしめた未延伸糸を150℃のポリエチレングリコール液浴中で4.0倍に延伸した後、水洗工程にてモノフィラメント表面に付着しているポリエチレングリコールを洗い落とし三角形断面形状(
図4の1a)のポリエステル系樹脂線材を作製しボビンに巻き取った。
【0085】
次に、一旦巻き取られたポリエステル系樹脂線材を解舒し、緊張状態で走行させながら80℃以上の温度に予熱した後、直ちに回転する直径100mmの賦形軸に巻き取った。巻き取られた螺旋状物を押えロールで押圧しながら流水で急冷することにより、螺旋の外径Wが115mmの連続螺旋状に成形した電線支持部材を作製した。このようにして得られたポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材の特性を表1に示した。
【0086】
【0087】
表1より明らかなように、本発明の電線支持部材に使用されるポリエステル系樹脂線材、および電線支持部材は自己消火性に優れ、かつ実使用を想定した振動試験後の引張強力が高く耐久性に優れた特性を有するものであった。
【0088】
一方、本発明の範囲を外れるものは、本発明の電線支持部材に使用可能なポリエステル系樹脂線材を得難く、自己消火性と耐久性を同時に満足するものは得られず実用性の低いものであった。
すなわち、比較例1に記載のように、燃焼試験時の酸素指数が本発明の範囲を下回る場合は、点火後に燃焼が継続し自己消火性に劣るものであった。
【0089】
また、比較例2に記載のように、振動試験後の引張強度が本発明の範囲を下回る電線支持部材を架空電線に取り付けた場合は、変形や破断が生じる結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、難燃性を有し既設の架空電線への取り付けが容易な電線支持部材を得ることができるため、これを落雷、強風、降雪等による疲労破断、応力腐食断線や、配電工事事故による断線が発生した時の電線落下による災害を防止する目的で利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電線支持部材
1a ポリエステル系樹脂線材
2 架空電線
3 電柱
W 螺旋の外径
P 螺旋のピッチ
D 螺旋の内径