(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ヘッドセット
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20230202BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20230202BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61B5/256 110
A61B5/291
A61H1/02 K
(21)【出願番号】P 2018197242
(22)【出願日】2018-10-19
【審査請求日】2020-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2017204096
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業ニューロリハビリシステム」「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発/先端医療機器の開発/麻痺した運動や知覚の機能を回復する医療機器・システムの研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】521564571
【氏名又は名称】株式会社LIFESCAPES
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松脇 寛
(72)【発明者】
【氏名】井澤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】森川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】平本 美帆
(72)【発明者】
【氏名】奥山 航平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】石井 哲
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2015/0112153(EP,A1)
【文献】特開2017-23754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A61H 1/00-5/00
A61H99/00
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の頭部に装着可能であって、前記頭部に装着された状態で前記対象者の正中中心部から左耳介及び右耳介に向かう第1方向に延びた形状を有するフレームと、
前記フレームに設けられて、前記対象者の脳波を採取するために用いられる電極部を保持可能な取付部と、
前記フレームの前記第1方向の両端に繋がっており、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記頭部に接触する一対の保持部と、を備え、
前記一対の保持部の各々は、
前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記頭部に接触する第1端部と、
前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記第1端部とは異なる位置で前記頭部に接触する第2端部と、
前記第1方向と交差する第2方向にて前記第1端部及び前記第2端部と並んでおり、前記第1端部と前記第2端部との間に位置する中間部と、を有し、
前記第1端部及び前記第2端部の少なくとも一方は、前記中間部よりも前記第1方向の寸法が大きく、
前記中間部は、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記頭部から離れる向きに窪んだ凹部を有
し、
前記保持部は、
基部と、
前記基部に取り付けられて、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記基部と前記頭部との間に位置するパッドと、を有し、
前記パッドは、前記基部よりも硬度が低く、かつ、前記基部に取り付けられた状態で、前記基部における前記パッドとの対向面の外周縁から突出する部位を有している
ヘッドセット。
【請求項2】
前記パッドは、前記基部に対して着脱可能である
請求項1に記載のヘッドセット。
【請求項3】
前記第2端部の前記頭部に接触する接触面の面積は、前記第1端部の前記頭部に接触する接触面の面積よりも大きい
請求項
1又は2に記載のヘッドセット
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にヘッドセットに関し、より詳細には、対象者の頭部の一部である測定箇所に配置される電極部にて採取される脳波を表す脳波情報を取得するヘッドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者(対象者)の脳波を測定する脳波計(ヘッドセット)が知られており、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の脳波計は、ヘッドフォン形状であり、患者の頭に装着される。脳波計は、帯状の本体フレームと、本体フレームに取り付けられる電極部と、を備えている。電極部は、患者が脳波計を頭部に装着したときに、患者の運動意図に関連する脳波を測定し易い位置に配置される。
【0003】
本体フレームの長手方向の両端部の内側には、それぞれ押さえ部(保持部)が取り付けられている。これらの押さえ部は、患者の頭部のこめかみに接触する接触部を有している。そして、これらの押さえ部の接触部が患者のこめかみの位置となるように、接触部の位置が調整されることで、脳波計が患者の頭部に対して移動することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のヘッドセットでは、保持部が対象者の頭部の側頭部(特に、こめかみ)を圧迫することで、側頭部にある動脈を圧迫し、動脈の拍動が大きくなる可能性がある。そして、このヘッドセットでは、対象者に装着された状態で脳波を採取する際に、電極と対向する位置にある血管の拍動を脈波として電極が拾い易くなり、脈波がノイズとして脳波に混入し易くなる可能性がある、という問題があった。
【0006】
本開示は、上記の点に鑑みてなされており、対象者に装着された状態で脳波を採取する際に、血管の拍動による脈波がノイズとして脳波に混入し難いヘッドセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るヘッドセットは、フレームと、取付部と、一対の保持部と、を備える。前記フレームは、対象者の頭部に装着可能であって、前記頭部に装着された状態で前記対象者の正中中心部から左耳介及び右耳介に向かう第1方向に延びた形状を有する。前記取付部は、前記フレームに設けられて、前記対象者の脳波を採取するために用いられる電極部を保持可能である。前記一対の保持部は、前記フレームの前記第1方向の両端に繋がっており、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記頭部に接触する。前記一対の保持部の各々は、第1端部と、第2端部と、中間部と、を有している。前記第1端部は、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記頭部に接触する。前記第2端部は、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記第1端部とは異なる位置で前記頭部に接触する。前記中間部は、前記第1方向と交差する第2方向にて前記第1端部及び前記第2端部と並んでおり、前記第1端部と前記第2端部との間に位置する。前記第1端部及び前記第2端部の少なくとも一方は、前記中間部よりも前記第1方向の寸法が大きい。前記中間部は、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記頭部から離れる向きに窪んだ凹部を有する。前記保持部は、基部と、前記基部に取り付けられて、前記フレームが前記頭部に装着された状態で前記基部と前記頭部との間に位置するパッドと、を有する。前記パッドは、前記基部よりも硬度が低く、かつ、前記基部に取り付けられた状態で、前記基部における前記パッドとの対向面の外周縁から突出する部位を有している。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、対象者に装着された状態で脳波を採取する際に、血管の拍動による脈波がノイズとして脳波に混入し難い、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、本開示の一実施形態に係るヘッドセットの使用状態を示す要部斜視図である。
図1Bは、本開示の一実施形態に係るヘッドセットの使用状態を示す要部上面図である。
【
図2】
図2は、同上のヘッドセットを含む脳波測定システム、及びそれを備えたリハビリテーション支援システムの使用状態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、同上のヘッドセットの概略斜視図である。
【
図4】
図4Aは、同上のヘッドセットの使用状態を示す概略上面図である。
図4Bは、同上のヘッドセットの使用状態を示す概略正面図である。
【
図5】
図5は、同上の脳波測定システム及びリハビリテーション支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6Aは、同上のヘッドセットの保持部における基部を示す概略正面図である。
図6Bは、同上のヘッドセットの保持部を示す概略正面図である。
【
図7】
図7Aは、本開示の一実施形態の第1変形例に係るヘッドセットの使用状態を示す要部斜視図である。
図7Bは、本開示の一実施形態の第1変形例に係るヘッドセットの使用状態を示す要部上面図である。
【
図8】
図8Aは、本開示の一実施形態の第2変形例に係るヘッドセットの使用状態を示す要部斜視図である。
図8Bは、本開示の一実施形態の第2変形例に係るヘッドセットの使用状態を示す要部上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)概要
本実施形態に係るヘッドセット1を説明するにあたり、まず、ヘッドセット1を用いた脳波測定システム10の概要について、
図2を参照して説明する。脳波測定システム10は、対象者5の脳波を測定するためのシステムであって、対象者5の頭部52の一部である測定箇所51に対応する位置に配置される電極部11から、脳波情報を取得する。本開示でいう「脳波」(Electroencephalogram:EEG)とは、大脳の神経細胞(群)の発する電気信号(活動電位)を体外に導出し、記録した波形を意味する。本開示においては、特に断りが無い限り、大脳皮質の多数のニューロン群(神経網)の総括的な活動電位を対象として、これを体表に装着した電極部11を用いて記録する頭皮上脳波を「脳波」という。
【0011】
脳波測定システム10は、電極部11(
図1A参照)を有するヘッドセット1と、情報処理装置2と、を備えている。ヘッドセット1は、対象者5の頭部52の表面(頭皮)に電極部11を接触させた状態で、対象者5の頭部52に装着される。本開示では、電極部11は、頭部52の表面に塗布されたペースト(電極糊)上に載せられることで、頭部52の表面に接触する。このとき、電極部11は、毛髪をかき分けることにより、毛髪を介さずに頭部52の表面に接触する。もちろん、電極部11は、ペーストを塗布することなく、頭部52の表面に直接、接触してもよい。つまり、本開示では、「電極部11を頭部52の表面に接触させる」とは、電極部11を直接、頭部52の表面に接触させることの他、中間物を介して電極部11を間接的に頭部52の表面に接触させることも含む。中間物は、ペーストに限定されず、例えば導電性を有するゲルであってもよい。
【0012】
ヘッドセット1は、電極部11にて対象者5の脳の活動電位を測定することで対象者5の脳波を測定し、脳波を表す脳波情報を生成する。ヘッドセット1は、例えば、無線通信により、脳波情報を情報処理装置2に送信する。
【0013】
情報処理装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムを主構成とする。情報処理装置2は、例えば、無線通信により、ヘッドセット1からの脳波情報を受信し、ヘッドセット1から取得した脳波情報に対して、種々の処理を施したり、脳波情報を表示したりする。本実施形態では、対象者5が随意運動(voluntary movement)を行おうとする際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波の検出、及びキャリブレーション(calibration)処理等は、情報処理装置2にて行われる。本開示でいう「キャリブレーション処理」は、脳波情報の解析、つまり検出対象となる脳波の検出に用いる各種のパラメータを決定するための処理である。
【0014】
次に、ヘッドセット1について
図1A、
図1B、
図3~
図4Bを用いて説明する。なお、図面に示す「D1」及び「D2」の矢印は、いずれも説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0015】
ヘッドセット1は、フレーム17と、取付部19と、一対の保持部18と、を備えている。フレーム17は、対象者5の頭部52に装着可能であって、頭部52に装着された状態で対象者5の正中中心部(vertex)から左耳介及び右耳介に向かう第1方向D1に延びた形状を有している。本開示でいう「正中中心部」は、国際10-20法において電極記号「Cz」で表される位置であって、対象者5の頭部52において、対象者5の鼻根と後頭結節とを結ぶ線と、左耳521の耳介前点と右耳522の耳介前点とを結ぶ線が交差する部位である。また、本開示でいう「第1方向」は、フレーム17が頭部52に装着された状態において、対象者5の正中中心部、左耳介、及び右耳介を頭部52に沿って結ぶ曲線と平行な方向である。
【0016】
取付部19は、フレーム17に設けられて、対象者5の脳波を採取するために用いられる電極部11を保持可能である。電極部11は、フレーム17が頭部52に装着された状態で、頭部52の表面の測定箇所51に対応する位置に接触する。本実施形態では、フレーム17には、一対の取付部19が設けられている。
【0017】
一対の保持部18は、フレーム17の第1方向D1の両端に繋がっており、フレーム17が頭部52に装着された状態で頭部52に接触する。言い換えれば、フレーム17の第1方向D1の両端には、それぞれ保持部18が設けられている。そして、これら保持部18は、フレーム17が頭部52に装着された状態で頭部52に接触することにより、頭部52に対してフレーム17を保持する。
【0018】
一対の保持部18の各々は、第1端部181と、第2端部182と、中間部183と、を有している。第1端部181は、フレーム17が頭部52に装着された状態で頭部52に接触する。第2端部182は、フレーム17が頭部52に装着された状態で、第1端部181とは異なる位置で頭部52に接触する。中間部183は、第1方向D1と交差する第2方向D2にて第1端部181及び第2端部182と並んでおり、第1端部181と第2端部182との間に位置する。本実施形態では、第2方向D2は、第1方向D1と直交する方向、つまり対象者5の鼻根と後頭結節とを頭部52に沿って結ぶ曲線と平行な方向である。
【0019】
そして、第1端部181及び第2端部182の少なくとも一方は、中間部183よりも第1方向D1の寸法が大きくなっている。本実施形態では、第1端部181及び第2端部182は、いずれも中間部183よりも第1方向D1の寸法が大きくなっている。
【0020】
本実施形態では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、ヘッドセット1から加わる力を、一対の保持部18の中間部183に比べて第1端部181及び第2端部182で受け易くなる。このため、本実施形態では、中間部183が頭部52を圧迫し難くなる。そして、頭部52の側頭部(例えば、こめかみ)に中間部183が対向するようにフレーム17を頭部52に装着すれば、側頭部が圧迫され難くなり、その結果、側頭部に存在する動脈が圧迫され難くなる。したがって、本実施形態では、ヘッドセット1が対象者5に装着された状態で脳波を採取する際に、ヘッドセット1により動脈が圧迫され難いことから、動脈(血管)の拍動による脈波がノイズとして脳波に混入し難い、という利点がある。
【0021】
(2)詳細
以下、本実施形態のヘッドセット1、及びリハビリテーション支援システム100について詳細に説明する。
【0022】
(2.1)リハビリテーション支援システム
リハビリテーション支援システム100は、ヘッドセット1を含む脳波測定システム10を用いて、対象者5のリハビリテーションを支援するためのシステムである。リハビリテーション支援システム100は、例えば、脳卒中等の脳疾患又は事故等によって、身体の一部に運動麻痺又は運動機能の低下等が生じた人を対象者5として、運動療法によるリハビリテーションを支援する。このような対象者5においては、対象者5が自己の意思又は意図に基づいて行う運動である随意運動が、不能又はその機能の低下により満足にできないことがある。本開示でいう「運動療法」は、対象者5の身体のうち、このような随意運動の不能部位又は機能の低下が生じた部位(以下、「障害部位」という)を運動させることにより、障害部位について随意運動の機能の回復を図る方法を意味する。
【0023】
リハビリテーション支援システム100は、
図2及び
図5に示すように、脳波測定システム10(ヘッドセット1を含む)と、運動補助装置3と、制御装置4と、を備えている。
【0024】
運動補助装置3は、対象者5に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、対象者5の運動を補助する装置である。本実施形態では、対象者5の左手指のリハビリテーションにリハビリテーション支援システム100が用いられるので、
図2に示すように、運動補助装置3は、対象者5の左手に装着される。
【0025】
本実施形態では、対象者5の左手指による把持動作及び伸展動作のリハビリテーションに、リハビリテーション支援システム100が用いられる場合を例示する。本開示でいう「把持動作」は、物をつかむ動作のことを意味する。また、本開示でいう「伸展動作」は、第1指(親指)を除く4本の手指53(第2指~第5指)の伸展により、手を開く動作、つまり把持動作によりつかんでいる状態の「物」を放す動作のことを意味する。つまり、この対象者5においては左手指が障害部位であって、リハビリテーション支援システム100は、左手指による把持動作及び伸展動作という随意運動についてのリハビリテーションに用いられる。ただし、実際には、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の把持動作を直接的に補助するのではなく、対象者5の手指の伸展動作を補助することで、間接的に把持動作のリハビリテーションを行う。
【0026】
そのため、リハビリテーション支援システム100では、対象者5が随意運動として伸展動作を行う際に、対象者5の左手に装着された運動補助装置3が、対象者5の左の手指53に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、随意運動を補助する。本実施形態では、対象者5が、ペグ101(
図2参照)を左手指でつかんだ姿勢から、手指53の伸展動作によりペグ101を放す際の随意運動(伸展動作)を、リハビリテーション支援システム100にて補助する場合について説明する。ただし、この例に限らず、リハビリテーション支援システム100は、例えば、対象者5の右手指のリハビリテーションに用いられてもよい。
【0027】
運動補助装置3は、
図5に示すように、手指駆動装置31と、電気刺激発生装置32と、を有している。
【0028】
手指駆動装置31は、第1指(親指)を除く4本の手指53(第2指~第5指)を保持し、これら4本の手指53に機械的な刺激(外力)を与えることによって、4本の手指53を動かす装置である。手指駆動装置31は、例えば、モータ又はソレノイド等の動力源を含み、動力源で発生した力を4本の手指53に伝えることによって、4本の手指53を動かす。手指駆動装置31では、保持した4本の手指53を、第1指から離れる向きに移動(つまり伸展動作)させる「開動作」と、第1指に近づく向きに移動(つまり把持動作)させる「閉動作」と、の2種類の動作が可能である。手指駆動装置31の開動作により対象者5の伸展動作が補助され、手指駆動装置31の閉動作により対象者5の把持動作が補助される。
【0029】
電気刺激発生装置32は、対象者5の手指53を動かすための部位に、電気的な刺激を与える装置である。ここで、対象者5の手指53を動かすための部位は、対象者5の手指53の筋肉と神経との少なくとも一方に対応する部位を含む。例えば、対象者5の手指53を動かすための部位は、対象者5の腕の一部である。電気刺激発生装置32は、例えば、対象者5の身体(例えば腕)に貼り付けられるパッドを含む。電気刺激発生装置32は、パッドから対象者5の身体に電気的な刺激(電流)を与えることによって、手指53を動かすための部位へ刺激を与える。
【0030】
制御装置4は、脳波測定システム10にて取得された脳波情報に基づいて、運動補助装置3を制御する。言い換えれば、制御装置4は、ヘッドセット1の電極部11にて採取された対象者5の脳波に応じて、運動補助装置3を制御する。本実施形態では、制御装置4は、脳波測定システム10の情報処理装置2、及び運動補助装置3に対して電気的に接続されている。制御装置4には、運動補助装置3及び制御装置4の動作用電力を供給するための電源ケーブルが接続されている。制御装置4は、運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動するための駆動回路、及び電気刺激発生装置32を駆動するための発振回路を含んでいる。制御装置4は、例えば、有線通信により、情報処理装置2から制御信号を受信する。
【0031】
制御装置4は、情報処理装置2から第1の制御信号を受信すると、駆動回路にて運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動し、手指駆動装置31にて「開動作」が行われるように運動補助装置3を制御する。また、制御装置4は、情報処理装置2から第2の制御信号を受信すると、駆動回路にて運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動し、手指駆動装置31にて「閉動作」が行われるように運動補助装置3を制御する。また、制御装置4は、情報処理装置2から第3の制御信号を受信すると、発振回路にて運動補助装置3の電気刺激発生装置32を駆動し、対象者5の身体に電気的な刺激が与えられるように運動補助装置3を制御する。
【0032】
このように、制御装置4は、脳波測定システム10から出力される制御信号に基づいて、運動補助装置3を制御することによって、脳波測定システム10にて取得された脳波情報に基づいて運動補助装置3を制御することが可能である。また、制御装置4は、制御装置4に備えられた操作スイッチの操作に応じて、手指駆動装置31にて「開動作」及び「閉動作」が行われるように運動補助装置3を制御することもできる。
【0033】
本実施形態では、例えば、理学療法士又は作業療法士等の医療スタッフが、対象者5の手指53を持って対象者5の随意運動を補助する場合と同様に、リハビリテーション支援システム100にて、随意運動の補助が可能になる。そのため、リハビリテーション支援システム100によれば、医療スタッフが補助する場合と同様に、対象者5が単独で随意運動を行う場合に比べて効果的な、運動療法によるリハビリテーションを実現可能となる。
【0034】
ところで、上述のようなリハビリテーションを支援するためには、リハビリテーション支援システム100は、対象者5が随意運動を行おうとする場合に、運動補助装置3にて対象者5の随意運動を補助することが望ましい。リハビリテーション支援システム100は、脳波測定システム10にて測定された対象者5の脳波(脳波情報)に、運動補助装置3を連動させることにより、対象者5の随意運動に合わせた運動補助装置3での随意運動の補助を実現する。言い換えれば、リハビリテーション支援システム100は、脳活動(脳波)を利用して機械(運動補助装置3)を操作する、ブレイン・マシン・インタフェース(Brain-machine Interface:BMI)の技術を利用して、運動療法によるリハビリテーションを実現する。
【0035】
対象者5が随意運動を行う際には(つまり、対象者5が随意運動を行う過程で)、脳波に特徴的な変化が生じ得る。つまり、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際には、随意運動の対象となる部位に対応する脳領域の活性化が起き得る。このような脳領域の例としては、体性感覚運動皮質が挙げられる。このような脳領域の活性化が起こるタイミングに合わせて、運動補助装置3にて対象者5の随意運動を補助すると、より効果的なリハビリテーションが期待できる。このような脳領域の活性化は、脳波の特徴的な変化として検出され得る。そのため、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の脳波にこの特徴的な変化が発生するタイミングに合わせて、運動補助装置3にて対象者5の随意運動の補助を実行する。このような特徴的な変化は、随意運動が実際に行われなくても、対象者5が随意運動を想起(image)した際(つまり運動企図中)に生じ得る。つまり、このような脳波の特徴的な変化は、随意運動が実際に行われなくても、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)したことによって対応する脳領域が活性化すれば、生じ得る。そのため、随意運動が不能な状態の対象者5についても、リハビリテーション支援システム100による随意運動の補助が可能である。
【0036】
本実施形態の脳波測定システム10は、事象関連脱同期(Event-Related Desynchronization:ERD)が生じることで脳波に生じる特定の周波数帯域の強度変化を、特徴的な変化として検出する。本開示でいう「事象関連脱同期」は、随意運動時(随意運動の想起時を含む)に運動野付近で測定される脳波において、特定の周波数帯域のパワーが減少する現象を意味する。本開示でいう、「随意運動時」は、対象者5が随意運動の企図(想起)をしてから随意運動が成功又は失敗するまでの過程を意味する。「事象関連脱同期」は、この随意運動時に、随意運動の企図(想起)をトリガとして、生じ得る。事象関連脱同期によりパワーが減少する周波数帯域は、主としてα波(一例として8Hz以上13Hz未満の周波数帯域)及びβ波(一例として13Hz以上30Hz未満の周波数帯域)である。
【0037】
このような構成のリハビリテーション支援システム100によれば、医療スタッフの負担を軽減しながらも、対象者5においては、効果的な、運動療法によるリハビリテーションを実現可能となる。また、リハビリテーション支援システム100によれば、例えば、対象者5の随意運動の補助を行う医療スタッフの熟練度等の人的要因によって随意運動の補助のタイミングがばらつくことがなく、リハビリテーションの効果のばらつきが低減される。特に、リハビリテーション支援システム100では、脳波に特徴的な変化が生じたタイミング(つまり、脳領域が実際に活性化したタイミング)で、対象者5の随意運動を補助することができる。このように、リハビリテーション支援システム100では、脳活動のタイミングに合わせた訓練が可能となるから、正しい脳活動の学習と及び定着への貢献が期待できる。特に、脳波に特徴的な変化が起きたかどうかは、対象者5及び医療スタッフだけでは判別が困難である。したがって、リハビリテーション支援システム100を用いることで、対象者5又は医療スタッフだけでは実現が難しい効果的なリハビリテーションが可能となる。
【0038】
本実施形態では、対象者5がリハビリテーション支援システム100を利用する際に、理学療法士又は作業療法士等の医療スタッフが対象者5に付き添い、リハビリテーション支援システム100の操作等については医療スタッフが行うことと仮定する。ただし、リハビリテーション支援システム100を利用する対象者5に医療スタッフが付き添うことは必須ではなく、例えば、リハビリテーション支援システム100の操作等を対象者5、又は対象者5の家族等が行ってもよい。
【0039】
(2.2)ヘッドセット
ヘッドセット1は、
図3~
図4Bに示すように、本体15と、フレーム17と、を備えている。本実施形態では、ヘッドセット1は、電極部11を更に備えている。本体15は、箱状であって、内部に信号処理部12と、通信部13と、電池14と、を有している。本実施形態では、ヘッドセット1は電池駆動式であって、信号処理部12及び通信部13等の動作用電力が電池14から供給される。
【0040】
電極部11は、対象者5の脳波(脳波信号)を採取するための電極であって、例えば、銀-塩化銀電極である。電極部11は、銀、金、又は白金等でもよい。電極部11は、第1電極111と、第2電極112と、を有している。本実施形態では、
図4Bに示すように、対象者5の頭部52の表面に設定された測定箇所51は、第1測定箇所511及び第2測定箇所512を含んでいる。第1電極111は、第1測定箇所511に対応する電極であって、第1測定箇所511上に配置される。第2電極112は、第2測定箇所512に対応する電極であって、第2測定箇所512上に配置される。具体的には、第1測定箇所511及び第2測定箇所512は、頭部52の正中中心部と右耳522の耳介前点とを結ぶ線上に、正中中心部側(上側)から第1測定箇所511、第2測定箇所512の順に並んで配置されている。
【0041】
対象者5が随意運動を行おうと企図した際には、身体の随意運動を行う部位に対応する運動野にて、特徴的な変化を含む脳波が発生する。そこで、脳波測定システム10は、リハビリテーションの対象である障害部位に対応する運動野付近から採取される脳波を測定対象とする。ここで、左手指に対応する運動野は対象者5の右脳にあり、右手指に対応する運動野は対象者5の左脳にある。そのため、本実施形態のように対象者5の左の手指53をリハビリテーションの対象とする場合には、対象者5の頭部52の右側に接触させた電極部11(第1電極111及び第2電極112)にて取得される脳波が、脳波測定システム10での測定対象となる。すなわち、電極部11(第1電極111及び第2電極112)は、
図4Bに示すように、対象者5の頭部52の右側表面の一部からなる測定箇所51上に配置される。一例として、国際10-20法において電極記号「C4」で表される位置に電極部11(第1電極111及び第2電極112)が配置される。対象者5の右の手指をリハビリテーションの対象とする場合には、対象者5の頭部52の左側表面の一部からなる測定箇所、一例として、国際10-20法において電極記号「C3」で表される位置に電極部11(第1電極111及び第2電極112)が配置される。
【0042】
また、本実施形態では、ヘッドセット1は、参照電極113と、アース電極114と、を更に備えている。参照電極113は、第1電極111及び第2電極112の各々で測定される脳波信号の基準電位を測定するための電極である。参照電極113は、頭部52における左耳521又は右耳522のいずれかの後方位置に配置される。具体的には、参照電極113は、頭部52において第1電極111及び第2電極112が配置されている側の耳の後方位置に配置される。本実施形態では、第1電極111及び第2電極112は、頭部52の右側表面に配置されているので、参照電極113は、右耳522の後方位置に配置される。アース電極114は、頭部52における左耳521又は右耳522のうち参照電極113が配置されていない方の耳の後方位置に配置される。本実施形態では、参照電極113が右耳522の後方位置に配置されるので、アース電極114は、左耳521の後方位置に配置される。参照電極113及びアース電極114の各々は、ヘッドセット1の本体15に対して電線16にて電気的に接続されており、頭部52の表面(頭皮)に貼り付けられる。なお、参照電極113及びアース電極114を配置する位置は、上述したような耳の後方位置ではなく、耳たぶであってもよい。耳の後方位置及び耳たぶは、頭部において脳活動由来の生体電位の影響を受けにくい場所である。つまり、参照電極113及びアース電極114は、頭部において脳活動由来の生体電位の影響を受けにくい場所に配置されることが好ましい。
【0043】
信号処理部12は、電極部11に電気的に接続されており、電極部11から入力される脳波信号(電気信号)に対して信号処理を実行し、脳波情報を生成する。脳波信号は、第1電極111の電位と、参照電極113の電位との電位差である電圧信号、及び第2電極112の電位と、参照電極113の電位との電位差である電圧信号と、を含む。つまり、ヘッドセット1は、電極部11にて対象者5の脳の活動電位を測定することで対象者5の脳波を測定し、信号処理部12にて脳波を表す脳波情報を生成する。信号処理部12は、少なくとも脳波信号を増幅する増幅器、及びA/D変換するA/D変換器を含んでおり、増幅後のディジタル形式の脳波信号を、脳波情報として出力する。
【0044】
通信部13は、情報処理装置2との通信機能を有している。通信部13は、少なくとも信号処理部12で生成された脳波情報を情報処理装置2に送信する。本実施形態では、通信部13は、情報処理装置2と双方向に通信可能である。通信部13の通信方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)等に準拠した無線通信である。通信部13からは、随時、脳波情報が情報処理装置2に送信される。
【0045】
フレーム17は、馬蹄状(言い換えれば、カチューシャ(Alice band)状)である。つまり、フレーム17は、頭部52に装着された状態において、正中中心部から左耳介及び右耳介に向かう第1方向D1に延びる形状である。本実施形態では、フレーム17は、第1方向に長い帯状の金属板と、金属板の少なくとも一部を覆う樹脂製のカバーと、で構成されている。フレーム17は、可撓性を有している。このため、フレーム17を撓ませることで、フレーム17の第1方向D1の両端間の間隔を広げることが可能である。したがって、フレーム17を頭部52に装着する際には、頭部52の大きさに応じてフレーム17を適宜撓ませることで、フレーム17の第1方向D1の両端間に頭部52を通すことが可能である。
【0046】
フレーム17の第1方向D1における中央部には、本体15が取り付けられている。ここで、本体15には、
図4Aに示すように、フレーム17を頭部52に装着したときに、本体15が正中中心部に対して適切な位置に配置されているかを確認するための開口部151が設けられている。開口部151は、本体15を第1方向D1及び第2方向D2の両方に交差する(直交する)方向に貫通している。例えば、医療スタッフは、ヘッドセット1を対象者5の頭部52に装着する際に、本体15の開口部151を通して頭部52の正中中心部が視認できる位置に本体15が配置されるように、ヘッドセット1の装着位置を調整することが可能である。
【0047】
フレーム17の第1方向D1の両端には、それぞれ保持部18が繋がっている。言い換えれば、フレーム17が頭部52に装着された状態において、フレーム17の左耳介側の一端と、右耳介側の一端とに、それぞれ保持部18が繋がっている。保持部18は、フレーム17に対して第1方向D1に沿って移動可能に構成されている。つまり、保持部18と、フレーム17の第1方向D1の一端との間の距離は、調整可能である。
【0048】
保持部18は、
図6A及び
図6Bに示すように、基部18Aと、パッド18Bと、を有している。基部18A及びパッド18Bは、いずれもフレーム17が頭部52に装着された状態において頭部52に沿うように、湾曲している。
【0049】
基部18Aは、第2方向D2に長い扁平な直方体状であって、フレーム17と繋がっている。基部18Aの第2方向D2の一端(ここでは、頭部52の後頭結節側の一端)は、基部18Aの他の部位と比較して第1方向D1の寸法が大きくなっている。基部18Aのうち頭部52と対向する部位には、パッド18Bの一部が嵌り込む取付凹部18Cが設けられている。取付凹部18Cは、フレーム17が頭部52に装着された状態において、頭部52から離れる向きに窪んでいる。取付凹部18Cの底部には、面ファスナー18Dが貼り付けられている。
【0050】
パッド18Bは、第2方向D2に長い扁平な直方体状であって、基部18Aに取り付けられる。パッド18Bは、フレーム17が頭部52に装着された状態で基部18Aと頭部52との間に位置し、頭部52に接触する。パッド18Bは、例えばウレタン樹脂製であって、基部18Aよりも硬度が低い。したがって、パッド18Bは、フレーム17が頭部52に装着された状態において頭部52に接触することにより、ヘッドセット1及び頭部52に挟まれたパッド18Bが変形し、ヘッドセット1から頭部52に加わる力を低減する。
【0051】
パッド18Bのうち基部18Aと対向する部位には、面ファスナーが貼り付けられている。そして、パッド18Bの面ファスナーを、取付凹部18Cの面ファスナー18Dに結合させることで、パッド18Bが基部18Aに取り付けられる。このように、本実施形態では、パッド18Bは、基部18Aに対して着脱可能である。
【0052】
また、本実施形態では、パッド18Bは、フレーム17が頭部52に装着された状態において、頭部52を左側方又は右測方から見た場合に、基部18Aよりも寸法が大きくなっている。つまり、パッド18Bは、基部18Aに取り付けられた状態で、基部18Aにおけるパッド18Bとの対向面の外周縁から突出する部位を有している。
【0053】
保持部18(ここでは、パッド18B)は、
図1A及び
図1Bに示すように、第1端部181と、第2端部182と、中間部183と、一対の引掛け部184と、を有している。第1端部181は、保持部18の第2方向D2の第1端(ここでは、頭部52の鼻根側の一端)に位置し、フレーム17が頭部52に装着された状態で頭部52に接触する部位である。第2端部182は、保持部18の第2方向D2の第2端(ここでは、頭部52の後頭結節側の一端)に位置し、フレーム17が頭部52に装着された状態で頭部52に接触する部位である。つまり、第2端部182は、フレーム17が頭部52に装着された状態で、第1端部181とは異なる位置で頭部52に接触する。以下、フレーム17が頭部52に装着された状態において、第1端部181の頭部52と接触する面を「接触面A1」、第2端部182の頭部52と接触する面を「接触面A2」、という。
【0054】
本実施形態では、第2端部182は、フレーム17が頭部52に装着された状態において、頭部52を左側方又は右側方から見た場合に、第1端部181よりも第1方向D1の寸法が大きくなっている。つまり、フレーム17が頭部52に装着された状態において、第2端部182の接触面A2の面積は、第1端部181の接触面A1の面積よりも大きくなっている。
【0055】
中間部183は、第1端部181と第2端部182とを繋ぐ部位である。言い換えれば、中間部183は、第2方向D2にて第1端部181及び第2端部182と並んでおり、第1端部181と第2端部182との間に位置する部位である。中間部183は、第1端部181及び第2端部182と同様に、フレーム17が頭部52に装着された状態で頭部52に接触する。以下、フレーム17が頭部52に装着された状態において、中間部183の頭部52と接触する面を「接触面A3」という。
【0056】
本実施形態では、第1端部181及び第2端部182は、フレーム17が頭部52に装着された状態において、頭部52の側頭部における、こめかみ(temple)を挟んだ両側の部位に接触するのが好ましい。また、中間部183は、フレーム17が頭部52に装着された状態において、頭部52の側頭部における、こめかみに接触するのが好ましい。頭部52の大きさ及び形状等には個人差があるが、本体15の開口部151を通して正中中心部を視認できるようにフレーム17を頭部52に装着することで、概ね上記の位置に第1端部181、第2端部182、及び中間部183を配置することが可能である。
【0057】
ここで、保持部18(ここでは、パッド18B)において、第1端部181及び第2端部182は、いずれも中間部183よりも第1方向D1の寸法が大きくなっている。このため、フレーム17が頭部52に装着された状態において、第1端部181の接触面A1の面積、及び第2端部182の接触面A2の面積は、いずれも中間部183の接触面A3の面積よりも大きくなっている。
【0058】
一対の引掛け部184は、保持部18の第2方向D2の両端にそれぞれ設けられている。引掛け部184は、フック状に形成されており、バンド6(
図2参照)の一端が引っ掛かるように構成されている。バンド6は、頭部52の周方向(第2方向D2)に沿って長い形状であって、弾性を有している。バンド6は、その両端をそれぞれ一対の保持部18の前頭部側及び/又は後頭部側の引掛け部184に引っ掛けることにより、頭部52に装着される。バンド6を装着することにより、ヘッドセット1が頭部52により強固に固定される。このため、対象者5の姿勢の変化等によってヘッドセット1の位置ずれが生じるのを抑制することができる。
【0059】
フレーム17には、
図3に示すように、一対の取付部19が更に設けられている。一対の取付部19は、第1方向D1において、本体15を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。一対の取付部19のうち少なくとも一方は、第1電極111及び第2電極112を有している。本実施形態では、一対の取付部19のうち対象者5の右耳522側の取付部19が第1電極111及び第2電極112を有している。
【0060】
取付部19は、ベース190と、第1ケース191と、第2ケース192と、ハンドル193と、を有している。ベース190は、フレーム17を第2方向D2において挟み込む形状を有している。ベース190は、フレーム17に沿って第1方向D1に移動可能に構成されている。したがって、第1方向D1においてフレーム17に対するベース190の位置を調整することにより、結果として電極部11(第1電極111及び第2電極112)の位置を調整することが可能である。
【0061】
ハンドル193は、ベース190に設けられている。ハンドル193は、ベース190がフレーム17に対して固定された状態と、ベース190がフレーム17に対して移動可能な状態とを択一的に切り替えるために用いられる。具体的には、ハンドル193を締め付けることにより、ベース190がフレーム17に対して固定された状態となり、ハンドル193を緩めることにより、ベース190がフレーム17に対して移動可能な状態となる。
【0062】
第1ケース191及び第2ケース192は、いずれも楕円形状の底部を有する筒体である。第1ケース191は、第1底部(頭部52と対向する底部)がベース190に取り付けられており、内部に第1電極111及び第2電極112が保持されている。第1電極111及び第2電極112は、いずれも第1端(頭部52と対向する一端)が第1ケース191から突出している。第1電極111及び第2電極112は、いずれも第1ケース191からの突出量を変更できるように、第1ケース191に対して相対的に移動可能に構成されている。第1ケース191には、コイルスプリングが収納されている。コイルスプリングは、第1電極111及び第2電極112の第2端と、第1ケース191の第2底部(第1底部と反対側の底部)との間に配置されている。コイルスプリングの一端は、第1ケース191の底部に固定されている。
【0063】
第2ケース192は、第1端(頭部52と対向する一端)が開口しており、第1ケース191よりも頭部52の法線方向から見たときの外形が大きい。第2ケース192は、開口を通して内側に第1ケース191の一部を収納するように、第1ケース191と組み合わされている。第2ケース192は、コイルスプリングが伸縮する方向において、第1位置と第2位置との間で、第1ケース191に対して相対的に移動可能に構成されている。第1位置では、第2ケース192からの第1ケース191の突出量が最小となり、第2位置では、第2ケース192からの第1ケース191の突出量が最大となる。第2ケース192の第2端(第1端と反対側の一端)の内底部には、第1ケース191の第2底部を貫通するシャフトの第1端が固定されている。シャフトの第2端は、第1電極111及び第2電極112に固定されている。したがって、第2ケース192を第1ケース191に対して第1位置と第2位置との間で移動させることにより、第2ケース192及びシャフトの移動に伴って第1電極111及び第2電極112も移動する。つまり、第2ケース192を第1ケース191に対して移動させることにより、第1電極111及び第2電極112の第1ケース191からの突出量を調整することが可能である。
【0064】
更に、第2ケース192は、第2位置において、第1ケース191に対して第2方向D2に移動可能に構成されている。そして、第2ケース192を第2位置において第2方向D2に移動させることにより、第2ケース192の第1端が第1ケース191の第2底部に引っ掛かる。ここで、第2ケース192を引っ張ることで、第2ケース192を第1位置から第2位置に移動させると、第1電極111及び第2電極112が第1ケース191の内側へと移動してコイルスプリングが圧縮される。そして、第2ケース192を引っ張る力を解除すると、コイルスプリングの弾性力により第1電極111及び第2電極112が元の状態に復帰する。一方、上述のように第2ケース192を第1ケース191に引っ掛けた場合、第2ケース192の第2位置から第1位置への移動が規制されるので、コイルスプリングが圧縮した状態を維持させることができる。つまり、この場合、第1電極111及び第2電極112が第1ケース191の内側へ移動した状態を維持させることができる。
【0065】
(3)ヘッドセットの装着方法
以下、本実施形態のヘッドセット1を対象者5の頭部52に装着する方法について説明する。ヘッドセット1を対象者5に装着する作業は、対象者5自身が行ってもよいし、医療スタッフが行ってもよい。対象者5自身が行う場合には、対象者5は、例えば鏡などを用いて自身の頭部52を見ながら、ヘッドセット1の装着位置を調整するのが好ましい。以下では、医療スタッフがヘッドセット1を対象者5の頭部52に装着すると仮定して説明する。
【0066】
まず、医療スタッフは、フレーム17を対象者5の頭部52に装着する。このとき、一対の取付部19の各々において、第2ケース192を第2位置まで移動させ、かつ、第2ケース192を第2方向D2に移動させることで、第2ケース192を第1ケース191に引っ掛けておくのが好ましい。この場合、第2ケース192が第1ケース191に対してロックされ、一対の取付部19の各々において、第1電極111及び第2電極112の大部分が第1ケース191の内側へ移動した状態で保持される。この状態であれば、フレーム17を頭部52に装着する際に、第1電極111及び第2電極112が頭部52に接触し難くなるので、第1電極111及び第2電極112が装着作業の妨げとなり難い。
【0067】
医療スタッフは、一対の保持部18間の間隔を広げるようにしてフレーム17を撓ませた状態で、フレーム17を頭部52に被せる。その後、医療スタッフがフレーム17から手を放すことで、一対の保持部18が頭部52に接触し、一対の保持部18によりフレーム17が頭部52に装着される。
【0068】
次に、医療スタッフは、対象者5の正中中心部に本体15の開口部151を合わせるように、フレーム17の装着位置を調整する。このとき、医療スタッフは、例えば対象者5の鼻根から後頭結節までの距離を計測し、計測した距離の半分の位置を正中中心部として予め推定する。また、このとき、正中中心部には、予めマーキング材を貼り付けておくのが好ましい。この場合、開口部151を通して正中中心部に位置するマーキング材を視認できるようにフレーム17の位置を調整することで、フレーム17を頭部52の適切な位置に装着することが可能である。このとき、医療スタッフは、中間部183が対象者5の側頭部のこめかみに対向するように、一対の保持部18の各々の位置を調整する。
【0069】
そして、医療スタッフは、測定箇所51となる頭部52の右側表面の一部に第1電極111及び第2電極112を対向させた状態で、第2ケース192を第2方向D2に移動させ、第1ケース191に対する第2ケース192のロックを解除する。すると、第1電極111及び第2電極112は、コイルスプリングの弾性力により頭部52に接触する。上述のようにしてヘッドセット1を頭部52に装着することで、ヘッドセット1は、リハビリテーション中にずれたり外れたりしないように頭部52に適宜固定される。なお、頭部52に更にバンド6を装着するか否かは任意である。
【0070】
ところで、ヘッドセット1を頭部52に装着した状態においては、ヘッドセット1の重量の少なくとも一部が、頭部52に接触する電極部11(第1電極111及び第2電極112)と、一対の保持部18に掛かる。本実施形態のように、ヘッドセット1が電池駆動式である場合には、更に電池14の重量の少なくとも一部が、電極部11及び一対の保持部18に掛かる。このため、ヘッドセット1を頭部52に装着した状態においては、頭部52には、電極部11及び一対の保持部18を介して、ヘッドセット1からの力が伝わる。また、バンド6を用いる場合は、バンド6によりヘッドセット1を締め付ける力が、電極部11及び一対の保持部18を介して頭部52に伝わる。
【0071】
ここで、電極部11と、一対の保持部18とにヘッドセット1等から加わる力が分散することにより、電極部11のみでヘッドセット1等からの力を受ける場合と比較して、頭部52の頭皮が圧迫され難くなる。しかしながら、一対の保持部18が頭部52の側頭部、特にこめかみに位置すると、側頭部に存在する動脈(血管。例えば、浅側頭動脈)が一対の保持部18により圧迫され得る。そして、側頭部に存在する動脈が圧迫されると、動脈の拍動が強くなり、電極部11と対向する位置まで延びた動脈の拍動を電極部11が拾い易くなり、脈波がノイズとして脳波に混入し易くなる。
【0072】
そこで、本実施形態のヘッドセット1では、
図1A及び
図1Bに示すように、一対の保持部18の各々において、第1端部181及び第2端部182の少なくとも一方は、中間部183よりも第1方向D1の寸法が大きくなっている。このため、本実施形態では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、ヘッドセット1等から頭部52に加わる力は、主として第1端部181及び第2端部182を介して頭部52に伝わる。したがって、頭部52において中間部183と対向する部位に加わる力は、頭部52において第1端部181及び第2端部182と対向する部位に加わる力よりも小さくなる。
【0073】
つまり、本実施形態では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、中間部183を側頭部のこめかみに対向するように配置すれば、一対の保持部18の各々により側頭部に存在する動脈が圧迫され難くなる。したがって、本実施形態では、ヘッドセット1等が対象者5に装着された状態で脳波を採取する際に、ヘッドセット1等により動脈が圧迫され難いことから、動脈(血管)の拍動による脈波がノイズとして脳波に混入し難い、という利点がある。
【0074】
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0075】
(4.1)第1変形例
第1変形例では、
図7A及び
図7Bに示すように、一対の保持部18の各々において、中間部183が凹部185を有している点で、上述の実施形態と相違する。凹部185は、フレーム17が頭部52に装着された状態で、頭部52から離れる向きに窪んでいる。また、凹部185の第1方向D1の両端は閉じておらず、開放されている。中間部183の凹部185を除いた部位は、接触面A3となっている。凹部185の第2方向D2の寸法は、フレーム17が頭部52に装着された状態において、頭部52を左側方又は右側方から見た場合に、頭部52の側頭部のこめかみが凹部185の内側に収まる程度の寸法であるのが好ましい。
【0076】
本変形例では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、凹部185を側頭部のこめかみに対向するように配置すれば、中間部183により側頭部に存在する動脈(血管)が圧迫され難くなる。つまり、中間部183における凹部185が形成された部位は、頭部52から浮いた状態となり頭部52に接触しないので、中間部183が側頭部に存在する動脈を圧迫し難くなる。その結果、本変形例では、血管の拍動が強くなり難いので、血管の拍動による脈波がノイズとして脳波により混入し難い、という利点がある。
【0077】
(4.2)第2変形例
第2変形例では、
図8A及び
図8Bに示すように、一対の保持部18の各々において、中間部183が接触面A3を有していない点で、上述の実施形態と相違する。本変形例では、中間部183の頭部52と対向する全面に凹部185が設けられている。このため、本変形例では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、第1端部181及び第2端部182が頭部52に接触する一方、中間部183は頭部52に接触しない。
【0078】
本変形例では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、中間部183を側頭部のこめかみに対向するように配置すれば、中間部183により側頭部に存在する動脈(血管)が圧迫され難くなる。つまり、中間部183が頭部52に接触しないので、中間部183が側頭部に存在する動脈を圧迫し難くなる。その結果、本変形例では、血管の拍動が強くなり難いので、上述の実施形態と比較して、血管の拍動による脈波がノイズとして脳波により混入し難い、という利点がある。
【0079】
(5)その他の変形例
以下、その他の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、「(4)変形例」に列挙した変形例を含めて、適宜組み合わせて適用可能である。
【0080】
上述の実施形態では、一対の保持部18の各々において、第1端部181及び第2端部182は、いずれも中間部183よりも第1方向D1の寸法が大きいが、これに限定する趣旨ではない。つまり、一対の保持部18の各々において、第1端部181及び第2端部182のいずれか一方のみが、中間部183よりも第1方向D1よりも寸法が大きい構成であってもよい。
【0081】
上述の実施形態では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、頭部52を左側方又は右側方から見た場合に、第2端部182の第1方向D1の寸法が第1端部181よりも大きくなっているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、上記のように見た場合に、第1端部181が第2端部182の寸法よりも大きくてもよいし、第1端部181及び第2端部182の寸法が同じであってもよい。
【0082】
上述の実施形態では、一対の保持部18の各々は、基部18Aと、パッド18Bとは別体で構成されているが、一体に構成されていてもよい。
【0083】
上述の実施形態において、一対の保持部18の各々は、パッド18Bを有していなくてもよい。この態様では、フレーム17が頭部52に装着された状態において、一対の保持部18の各々の基部18Aが直接、頭部52に接触することになる。また、この態様では、基部18Aのうち、フレーム17が頭部52に装着された状態において頭部52と接触する部位は、対象者5の頭皮を圧迫し過ぎないように、パッド18Bと同様の硬度を有しているのが好ましい。
【0084】
上述の実施形態において、第2方向D2は、第1方向D1と直交する方向、つまり対象者5の鼻根と後頭結節とを結ぶ線と平行な方向であるが、これに限定する趣旨ではない。例えば、第2方向D2は、第1方向D1と所定の角度(鈍角)で交差する方向であってもよい。ここで、一対の保持部18の各々において、第1端部181、第2端部182、及び中間部183は、第2方向D2に並んでいる。つまり、第1端部181、第2端部182、及び中間部183は、第1方向D1と直交する方向に並んでいなくてもよい。
【0085】
上述の実施形態において、一対の保持部18の各々は、第1端部181と第2端部182との間の距離を調整可能な機構を有していてもよい。つまり、対象者5の個人差により、頭部52における側頭部のこめかみの位置、又は大きさは異なり得る。そこで、第1端部181と第2端部182との間の距離を調整し、中間部183の第2方向D2の長さを変えることにより、中間部183をこめかみに対向させ易くすることが可能である。
【0086】
上述の実施形態において、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の手指のリハビリテーションに限らず、例えば、肩、肘、上腕、腰、下肢、又は上肢等、対象者5の身体の任意の部位のリハビリテーションに用いられてもよい。対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る脳波の特徴的な変化の仕方は、リハビリテーションの対象部位及び運動内容等によって異なる場合がある。例えば、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に事象関連同期(Event-Related Synchronization:ERS)が生じる場合には、随意運動時に運動野付近で測定される脳波において、特定の周波数帯域のパワーが増加する。この場合、脳波測定システム10では、特定の周波数帯域のパワーが増加することをもって、脳波の特徴的な変化を検出する。
【0087】
上述の実施形態において、リハビリテーション支援システム100は、対象者5に電気的又は機械的(力学的)な刺激を与える構成に限らず、例えば、映像を表示することで、対象者5に視覚的な刺激を与える構成であってもよい。この場合、リハビリテーション支援システム100は、例えば、対象者5が随意運動を行おうと企図した場合に、障害部位が正常に動いているような映像を対象者5に見せることで、対象者5の随意運動を補助することができる。
【0088】
上述の実施形態において、運動補助装置3と制御装置4とは別体に限らず、例えば、運動補助装置3と制御装置4とが1つの筐体内に収容され一体化されていてもよい。
【0089】
上述の実施形態において、ヘッドセット1と情報処理装置2との間の通信方式は、無線通信に限らず、例えば、有線通信であってもよいし、中継器等を介した通信方式であってもよい。また、制御装置4と情報処理装置2との間の通信方式は、有線通信に限らず、例えば、無線通信であってもよいし、中継器等を介した通信方式であってもよい。
【0090】
上述の実施形態において、ヘッドセット1は電池駆動式に限らず、信号処理部12及び通信部13等の動作用電力が、例えば、情報処理装置2から供給される構成であってもよい。
【0091】
上述の実施形態において、対象者5の頭部52に対する電極部11(第1電極111及び第2電極112)の位置は、国際10-20法において電極記号「C3」、「C4」で表される位置であるが、これに限定する趣旨ではない。つまり、頭部52に対する第1電極111及び第2電極112の位置は、リハビリテーション支援システム100によりリハビリテーションを支援する対象者5の障害部位に応じて、適宜変更してもよい。
【0092】
また、基部18Aに対するパッド18Bの取付構造は、面ファスナーに限らず、例えば、スナップボタン、又は両面テープ等の取付構造であってもよい。
【0093】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係るヘッドセット(1)は、フレーム(17)と、取付部(19)と、一対の保持部(18)と、を備える。フレーム(17)は、対象者(5)の頭部(52)に装着可能であって、頭部(52)に装着された状態で対象者(5)の正中中心部から左耳介及び右耳介に向かう第1方向(D1)に延びた形状を有する。取付部(19)は、フレーム(17)に設けられて、対象者(5)の脳波を採取するために用いられる電極部(11)を保持可能である。一対の保持部(18)は、フレーム(17)の第1方向(D1)の両端に繋がっており、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態で頭部(52)に接触する。一対の保持部(18)の各々は、第1端部(181)と、第2端部(182)と、中間部(183)と、を有している。第1端部(181)は、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態で頭部(52)に接触する。第2端部(182)は、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態で第1端部(181)とは異なる位置で頭部(52)に接触する。中間部(183)は、第1方向(D1)と交差する第2方向(D2)にて第1端部(181)及び第2端部(182)と並んでおり、第1端部(181)と第2端部(182)との間に位置する。第1端部(181)及び第2端部(182)の少なくとも一方は、中間部(183)よりも第1方向(D1)の寸法が大きい。又は、中間部(183)は、頭部(52)に接触する接触面(A3)を有していない。
【0094】
この態様によれば、対象者(5)に装着された状態で脳波を採取する際に、血管の拍動による脈波がノイズとして脳波に混入し難い、という利点がある。
【0095】
第2の態様に係るヘッドセット(1)では、第1の態様において、保持部(18)は、基部(18A)と、パッド(18B)と、を有している。パッド(18B)は、基部(18A)に取り付けられて、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態で基部(18A)と頭部(52)との間に位置する。パッド(18B)は、基部(18A)よりも硬度が低い。
【0096】
この態様によれば、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態においてパッド(18B)が頭部(52)に接触することにより、パッド(18B)が変形し、ヘッドセット(1)から頭部(52)に加わる力をパッド(18B)が低減する。したがって、この態様によれば、保持部(18)がパッド(18B)を有していない場合と比較して、ヘッドセット(1)が対象者(5)の頭部(52)に与える圧迫感を低減することができる、という利点がある。
【0097】
第3の態様に係るヘッドセット(1)では、第2の態様において、パッド(18B)は、基部(18A)に対して着脱可能である。
【0098】
この態様によれば、例えば対象者(5)の要望に応じて、パッド(18B)を使用するか否かを選択することが可能である、という利点がある。
【0099】
第4の態様に係るヘッドセット(1)では、第2又は第3の態様において、パッド(18B)は、基部(18A)に取り付けられた状態で、基部(18A)におけるパッド(18B)との対向面の外周縁から突出する部位を有している。
【0100】
この態様によれば、パッド(18B)が上記突出する部位を有していない場合と比較して、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態において、パッド(18B)が頭部(52)に接触する面積を大きくすることができる。したがって、この態様によれば、パッド(18B)が上記突出する部位を有していない場合と比較して、ヘッドセット(1)が対象者(5)の頭部(52)に与える圧迫感をより低減することができる、という利点がある。
【0101】
第5の態様に係るヘッドセット(1)では、第1~第4のいずれかの態様において、第2端部(182)の接触面(A2)の面積は、第1端部(181)の接触面(A1)の面積よりも大きい。
【0102】
この態様によれば、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態において、ヘッドセット(1)から加わる力を第2端部(182)で受け易くなる。したがって、この態様によれば、例えば第2端部(182)が対象者(5)の後頭部に接触するように一対の保持部(18)を配置すれば、ヘッドセット(1)から加わる力を対象者(5)の後頭部で受け易くすることが可能になる、という利点がある。
【0103】
第6の態様に係るヘッドセット(1)では、第1~第5のいずれかの態様において、中間部(183)は、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態で頭部(52)から離れる向きに窪んだ凹部(185)を有している。
【0104】
この態様によれば、フレーム(17)が頭部(52)に装着された状態において、頭部(52)の血管が凹部(185)と対向するように一対の保持部(18)を配置すれば、血管にヘッドセット(1)からの力が加わり難くなる、という利点がある。その結果、この態様によれば、血管の拍動が強くなり難いので、血管の拍動による脈波がノイズとして脳波により混入し難い、という利点がある。
【0105】
第7の態様に係るリハビリテーション支援システム(100)は、第1~第6のいずれかの態様のヘッドセット(1)と、運動補助装置(3)と、制御装置(4)と、を備える。運動補助装置(3)は、対象者(5)に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加える。制御装置(4)は、ヘッドセット(1)の電極部(11)にて採取された対象者(5)の脳波に応じて、運動補助装置(3)を制御する。
【0106】
この態様によれば、対象者(5)に装着された状態で脳波を採取する際に、血管の拍動による脈波がノイズとして脳波に混入し難い、という利点がある。その結果、この態様では、対象者(5)が随意運動を行おうと企図した際に、随意運動の対象となる部位に対応する脳領域の活性化が実際に起きたタイミングに合わせて、運動補助装置(3)にて対象者(5)の随意運動を補助し易く、リハビリテーションの効果を向上し易い、という利点がある。
【0107】
第2~第6の態様に係る構成については、ヘッドセット(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 ヘッドセット
11 電極部
17 フレーム
18 保持部
181 第1端部
182 第2端部
183 中間部
185 凹部
18A 基部
18B パッド
19 取付部
3 運動補助装置
4 制御装置
5 対象者
52 頭部
A1~A3 接触面
D1 第1方向
D2 第2方向