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特許7219894水素溶存液製造装置及び水素溶存液製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】水素溶存液製造装置及び水素溶存液製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20230101AFI20230202BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20230202BHJP
   B01F 31/25 20220101ALI20230202BHJP
【FI】
C02F1/68 520B
C02F1/68 510A
C02F1/68 530A
C02F1/68 530K
B01F21/00
B01F31/25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019035267
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138130
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592248363
【氏名又は名称】ユキエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】井上 吾一
(72)【発明者】
【氏名】中島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 陽
(72)【発明者】
【氏名】山本 清美
(72)【発明者】
【氏名】中村 光治
(72)【発明者】
【氏名】梅田 康一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081888(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122463(WO,A1)
【文献】特開2015-167926(JP,A)
【文献】特開2011-177242(JP,A)
【文献】登録実用新案第3203597(JP,U)
【文献】特開2006-263615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/66-1/68
B01F21/00-25/90
A61J1/00-19/06
A23L2/00-2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体とエアが封入された液体容器を保持するための容器保持部と、水素ガスを供給する水素供給部を備え、前記水素供給部から前記液体容器に対して水素ガスを供給して水素溶存液を製造する水素溶存液製造装置であって、
前記液体容器が、柔軟性を有する液体バッグで構成されたものであり、
前記水素供給部に、水素ガスを前記容器保持部に保持した前記液体バッグに向けて導入する導入路が設けられ、
前記導入路の先端には、前記液体バッグに対して着脱可能であるとともに前記導入路と前記液体バッグの内部空間を互いに連通させる接続部が設けられ、
前記導入路の長手方向の途中には、当該導入路内のエアを抜くエア抜き弁が設けられるとともに、
前記液体バッグを収縮変形させるエア抜き手段と、前記容器保持部を振とうする振とう手段が備えられた
水素溶存液製造装置。
【請求項2】
前記導入路における前記接続部と前記エア抜き弁の間に、液体を検知する液体検知センサを備えた
請求項1に記載の水素溶存液製造装置。
【請求項3】
前記容器保持部に、前記液体バッグを押圧して押し縮める押圧部材が備えられた
請求項1または請求項2に記載の水素溶存液製造装置。
【請求項4】
前記容器保持部が前記振とう手段の上に設けられ、
前記容器保持部に、前記液体バッグを押圧する押圧部材が備えられ、
前記押圧部材が、前記液体バッグを収縮変形させる押圧動作と、前記振とう手段による振とう中に前記液体バッグの内圧を高める押圧動作を行う制御部に接続された
請求項1または請求項2に記載の水素溶存液製造装置。
【請求項5】
前記容器保持部が、前記液体バッグにおける前記接続部との接続部位を上に向けて支持する縦置き型である
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の水素溶存液製造装置。
【請求項6】
内部に液体とエアが封入された液体容器を保持する容器保持部と、水素ガスを供給する水素供給部を備え、前記水素供給部から前記液体容器に対して水素ガスを供給して水素溶存液を製造する水素溶存液製造方法であって、
前記液体容器が、柔軟性を有する液体バッグで構成されたものであり、
前記液体バッグ内のエアを抜くエア抜き工程と、
エアを抜いた前記液体バッグ内に水素ガスを封入する封入工程と、
水素ガスが封入された前記液体バッグを振とうして液体に水素ガスを溶解するガス溶解工程を有し、
前記エア抜き工程を、前記水素供給部から前記液体バッグに水素ガスを導入する導入路に設けられたエア抜き弁から行う
水素溶存液製造方法。
【請求項7】
前記ガス溶解工程を、前記液体バッグを加圧した状態で行う
請求項6に記載の水素溶存液製造方法。
【請求項8】
前記エア抜き工程を、前記液体バッグを押圧して行う
請求項6または請求項7に記載の水素溶存液製造方法。
【請求項9】
前記エア抜き工程を、前記液体バッグを押圧して行い、
前記ガス溶解工程を、前記エア抜き工程で前記液体バッグを押圧した手段を用いて前記液体バッグを押圧して前記液体バッグの内圧を高めた状態で行う
請求項6に記載の水素溶存液製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器に充填された液体に水素を溶存させて水素溶存液を製造する水素溶存液製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器サイズを問わず簡便な手法で液体に対して高濃度の水素を添加する方法が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この方法は、液体を収容した液体容器に水素貯蔵合金を収容した水素貯蔵合金容器を接続するとともに、水素貯蔵合金を所定温度に加温することで当該容器内の水素ガス圧を高めて、液体容器内の液体に対して水素を添加するというものである。この方法によれば、ガスボンベを利用した大掛かりな装置にならずにすむのでコンパクトな装置で簡便に水素の添加ができる、ガス圧に応じた添加量が実現できるので高濃度の水素添加が行える、とされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、液体容器を加熱する電気式の保温器が必要である。また水素の添加に際しては、まず保温器の加熱温度を所定温度に設定して水素貯蔵合金を加熱し、水素貯蔵合金から水素が放出されて容器内のガス圧が上昇するのを待って、つぎにバルブを開けて水素ガスの添加を行い、水素ガスが液体に溶けるのを待つことになる。このため、水素の添加には時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-167926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、コンパクトに構成できるうえに、必要に応じてその都度、短時間で水素溶存液を製造できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段は、内部に液体とエアが封入された液体容器を保持する容器保持部と、水素ガスを供給する水素供給部を備え、前記水素供給部から前記液体容器に対して水素ガスを供給して水素溶存液を製造する水素溶存液製造装置であって、前記液体容器が、柔軟性を有する液体バッグで構成されたものであり、前記水素供給部に、水素ガスを前記容器保持部に保持した前記液体バッグに向けて導入する導入路が設けられ、前記導入路の先端には、前記液体バッグに対して着脱可能であるとともに前記導入路と前記液体バッグの内部空間を互いに連通させる接続部が設けられ、前記導入路の長手方向の途中には、当該導入路内のエアを抜くエア抜き弁が設けられるとともに、前記液体バッグを収縮変形させるエア抜き手段と、前記容器保持部を振とうする振とう手段が備えられた水素溶存液製造装置である。
【0008】
この構成では、水素供給部の水素ガスは、液体バッグを押圧したり内部のエアを吸引したりするエア抜き手段でエアが抜かれた液体バッグに対して封入されたのち、振とう手段による振とうで積極的に液体と混合され、液体に溶解する。水素供給部の水素供給源には、純水素ガス或いは高濃度の水素ガスを充てんした小型のガスボンベが使用され得る。導入路はエア抜き弁を有しており、液体バッグに対するエア抜きと水素ガス封入は、接続部を液体バッグに接続した状態のまま行える。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、水素ガスは液体バッグ内において液体とのみ接触した状態での振とうにより混合されるので、溶解効率が極めてよく、短時間で水素溶存液を製造できる。また水素ガスを液体バッグに供給する導入路を利用してエア抜きを行う構成であるので、構成の簡素化、コンパクト化に資する。そのうえ、エア抜きと水素ガス封入が導入路を液体バッグに接続した状態のまま行えるので、操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】水素溶存液製造装置の正面図。
図2】水素溶存液製造装置の左側面図。
図3】容器保持部を有する部分で切断した水素溶存液製造装置の縦断面図。
図4】エア抜き弁と振とう手段を示す断面図。
図5】全体の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0012】
この例では、水素溶存液製造装置11(以下、「製造装置」という)として、輸液バッグ12内の輸液に対して水素ガスを溶解させる装置をとりあげる。水素を溶存させる液体は、輸液のほか、例えば飲料水や洗浄液など他の液体であってもよい。
【0013】
図1に、液体容器としての輸液バッグ12に水素ガスを溶解する製造装置11の正面図を、図2にその左側面図を示す。
【0014】
製造装置11は、輸液バッグ12を保持する容器保持部13と、水素ガスを供給する水素供給部14を備え、水素供給部14から輸液バッグ12に対して水素ガスを供給して水素溶存液としての水素溶存輸液を製造するものである。なお、製造装置11の電源は、一般的なものでよくAC100VやDC24V等を使用できる。また、災害時や停電時の場合に備え、バッテリー駆動としてもよい。
【0015】
輸液バッグ12は、透明の合成樹脂製で柔軟性を有する液体バッグで構成されており、内部に液体としての輸液と、エアが封入されている。また、輸液バッグ12は縦に長い長方形状の偏平な形状であり、上端の口部12aには、ゴム栓(図示せず)が取り付けられている。
【0016】
容器保持部13は、前述のような輸液バッグ12を、口部12aを上にして立てて保持する構造、換言すれば縦置き型である。
【0017】
水素供給部14の水素供給源には、市販されている小型の水素ガスボンベ15が使用される。水素ガスボンベ15には、水素ガスが圧縮して充填されており、水素ガスの濃度がおよそ100%の高濃度のものを使用する。
【0018】
製造装置11の外観上の概略構造は次のとおりである。すなわち、製造装置11は卓上における大きさであり、平板状の土台21の上に、容器保持部13や水素供給部14が設けられる本体部22が立設され、本体部22の上に、制御や入出力を司る制御操作ボックス23が設けられている。
【0019】
土台21は、平面視長方形であり、下面の4つの角部に長さ調節可能な複数の脚部24を有している。
【0020】
本体部22は、土台21の上面における背面側に立設されており、本体部22の前面における左右に、容器保持部13と水素供給部14が分けて配設されている。図示例の製造装置11では、製造装置11の正面に向かって左側に容器保持部13が、右側に水素供給部14が設けられている。
【0021】
制御操作ボックス23は、本体部22よりも厚く形成されており、制御操作ボックス23の前面は、本体部22の前面よりもせり出している。このような制御操作ボックス23の前面に、入出力のためのタッチパネル25が備えられている。
【0022】
つづいて、本体部22に備えられる容器保持部13と水素供給部14について説明する。
【0023】
容器保持部13は、本体部22の前面に振とう手段31を介して備えられる。つまり、容器保持部13は振とう手段31の上に設けられており、振とう手段31に接している容器保持部13は、振とう手段31によって振とうされる構成である。また容器保持部13は、保持した輸液バッグ12を収縮変形させるエア抜き手段61を有している。
【0024】
振とう手段31は、容器保持部13を有する部分の断面図である図3に示したように、本体部22の前面を構成する前面板26と適宜の間隔を隔てて平行な揺動板32と、揺動板32を揺動させる揺動機構33と、揺動板32の外周縁を囲むとともに揺動機構33を隠ぺいする包囲体34を有している。
【0025】
揺動板32は、揺動板32の正面を示す断面図である図4にみられるように、輸液バッグ12の正面視形状よりも大きい縦長の長方形板状である。揺動板32の4つの角部32aは面取り状に切り欠かれている。揺動板32の前面が、容器保持部13を一体に固定する部位である。
【0026】
揺動機構33は、揺動板32を図4に矢印Aで示したように、正面視右へ、下へ、左へ、上へと、順に回転するように駆動させる装置であり、次の部材で構成される。すなわち、回転力を入力するアクチュエータ35と、アクチュエータ35の回転軸35aに対応する位置と異なる位置に設けられて回転を偏心して伝える偏心軸部36と、揺動板32の背面に固定されて偏心軸部36を受ける軸受け部37と、レールとスライダを有し縦に延びるリニアガイド部38と、レールとスライダを有し横に延びるリニアガイド部39である。アクチュエータ35には、ステッピングモータが好適に使用できる。
【0027】
包囲体34は、前面板26の前面における揺動板32の揺動範囲より外側に立設された4本の支柱41と、これら支柱41の先端に固定された枠体42で構成されている。支柱41は丸棒形状であり、支柱41の長さは揺動板32の前面の高さよりも若干突出する長さに設定される。枠体42は、支柱41の高さよりも若干短い周壁部43と、周壁部43の先端から内側に張り出す突片部44を有している。周壁部43は、内側面が支柱41の外周面に接する程度の4つの片を有する長方形枠状である。突片部44も同様に長方形枠状であり、突片部44の幅(張り出し長さ)は、揺動する揺動板32の端を隠せる幅である。枠体42は、その突片部44の4つの角部が支柱41の先端に対して固定されている。
【0028】
容器保持部13は、輸液バッグ12を収容可能な大きさの箱状であり、具体的には輸液バッグ12の一部、つまり上端の口部12aより下側の部分全体を収容する縦に長く薄い直方体形状である。容器保持部13は本体部材51と蓋部材52を有し、蓋部材52は本体部材51の一側に対して開閉可能に枢着により取り付けられている。
【0029】
本体部材51の上端における左右方向の中間部には、内外に連通する切欠部53が形成されており、輸液バッグ12の口部12aより下の首部12bを保持するホルダの一方54が設けられている。蓋部材52におけるホルダの一方54に対向する部位には、ホルダの一方54と対をなすホルダの他方55が設けられて、蓋部材52で本体部材51の前面の開口を閉じたときに、輸液バッグ12の首部12bを保持するように構成されている。
【0030】
蓋部材52は、本体部材51の前面の開口を塞ぐ長方形板状に形成され、本体部材51に対して枢着した枢着軸56とは反対側に、閉鎖状態を保持する留め具の一方57を有している。本体部材51における留め具の一方57に対応する位置には、留め具の一方57と対をなす留め具の他方58が備えられる。
【0031】
蓋部材52の前面には、内部を視認可能にする窓部52aが複数形成されている。また、蓋部材52の内側面には、シート状の緩衝材59が備えられている。緩衝材59にはウレタンスポンジなどが使用でき、緩衝材59は蓋部材52に対して貼り付けて固定される。
【0032】
容器保持部13の本体部材51内における背面側に、前述したエア抜き手段61を有している。エア抜き手段61は、輸液バッグ12を押圧して押し縮める押圧部材62を用いる構成である。
【0033】
押圧部材62は、板状の押圧板で構成され、本体部材51の背面板51aとの間に適宜の間隔を隔てて保持されている。押圧部材62は輸液バッグ12を十分に支持可能な大きさである。つまり、少なくとも輸液バッグ12の首部12bより下に対応する大きさ以上の大きさをなす長方形である。
【0034】
押圧部材62は、その4つの角部に形成された貫通穴(図示せず)を貫通する支持軸63で支持されており、支持軸63の長手方向に沿って、背面板51aに対して接離する方向に移動可能である。支持軸63における押圧部材62よりも前面側には、付勢手段としてのコイルばね64が保持されており、押圧部材62が背面板51a側に移動するように付勢されている。
【0035】
本体部材51の背面板51aと押圧部材62の間には、押圧部材62を移動させるためのエアバッグ65が保持されている。エアバッグ65は偏平な長方形の袋状であり、内部にエアが供給されて膨張したときに、コイルばね64の付勢力に抗して押圧部材62を支持軸63の先端側に向けて押し上げるものである。
【0036】
エアバッグ65には、図5に示したように、エア流路66を介してコンプレッサ67が接続されている。エア流路66には、エアバッグ65内から通じる流路内のエアを抜く電磁弁68が設けられ、電磁弁68とエアバッグ65との間には、逆止弁付きのカプラ69が設けられている。具体的には、エア流路66の一部は、図1に示したように、容器保持部13における枢着軸56がわの近傍、具体的には包囲体34の枠体42の突片部44に一部が敷設され、カプラ69が、容器保持部13の上端部に対応する位置に設けられている。カプラ69は、ソケット69aからプラグ69bを外すと逆止弁が作用してエアバッグ65内の気密状態を維持し、ソケット69aに対してプラグ69bを接続すると流通状態になる構成である。
【0037】
容器保持部13に並んで設けられる水素供給部14は、前述した水素ガスボンベ15を着脱可能に接続するボンベ接続部71を有している。ボンベ接続部71は、水素ガスボンベ15の噴射口15a(図5参照)を保持するものであり、ガスの導入と停止を切り替える元バルブ72が設けられている。
【0038】
また、ボンベ接続部71には、容器保持部13に保持した輸液バッグ12に向けて水素ガスを導入するための導入路73が設けられている。導入路73は、図1に示したように先端側の部分をフレキシブルなチューブ73aで構成し、チューブ73aを製造装置11の上端面から延ばしている。
【0039】
導入路73の先端には、輸液バッグ12に対して着脱可能であるとともに導入路73と輸液バッグ12の内部空間を互いに連通させる接続部74を有している。前述のように液体容器(液体バッグ)は輸液バッグ12であり、輸液バッグ12における接続部74との接続部位である上端の口部12aにゴム栓を有しているので、接続部74は中空穴を有する針部材で構成される。図1中、75は導入路73の接続部74を、製造装置11の制御操作ボックス23の前面に保持する接続部ホルダである。
【0040】
導入路73の長手方向の途中で、製造装置11の本体部22内に位置する部位には、電磁弁からなり導入路73内のエアを抜くエア抜き弁76が設けられる。また導入路73におけるエア抜き弁76よりボンベ接続部71に近い位置には、水素ガスの供給と遮断を切り替える電磁弁77が設けられている。この電磁弁77とエア抜き弁76との間には、導入路73内の圧力を検知する圧力センサ78が接続されている。
【0041】
導入路73における接続部74とエア抜き弁76との間には、液体を検知する液体検知センサ79が直接または間接に備えられる。この例では、間接に備えられる例を示している。つまり、液体検知センサ79は、製造装置11の制御操作ボックス23の前面における容器保持部13のホルダ54,55の上方に対応する位置に設けられている。液体検知センサ79は、導入路73の先端側部分を構成するチューブ73aを上下方向に延ばした状態で着脱可能に保持できるチューブ保持部81に設けられており、例えば光電式のものが用いられる。
【0042】
チューブ保持部81は、制御操作ボックス23に固定された保持部本体82と、保持部本体82に枢着され、保持部本体に対して枢着された保持蓋83を有している。保持蓋83は、チューブ73aを保持した保持部本体82の前面を覆って、液体検知センサ79やチューブ73aを覆う。保持蓋83の中心部には、保持したチューブ73aを視認できる貫通穴83aが形成されている。
【0043】
以上の構成要素のうち、図5に示したように、振とう手段を31構成するアクチュエータ35と、エア抜き手段61を構成するコンプレッサ67と、エア流路66の電磁弁68と、導入路73に間接的に備えられる液体検知センサ79、エア抜き弁76、圧力センサ78及び電磁弁77は、制御操作ボックス23に内蔵される制御部91に接続されて、あらかじめ記憶されたプログラムに従って駆動制御される。制御部91には、前述したタッチパネル25が接続され、制御部91に対して信号の入出力がなされる。
【0044】
制御部91は、輸液バッグ12を押圧する押圧部材62の制御動作について、エア抜き手段61として輸液バッグ12を圧縮変形させる押圧動作と、振とう手段31による振とう中に輸液バッグ12の内圧を高める押圧動作がなされるように構成されている。
【0045】
以上のように構成された製造装置11は、輸液バッグ12内のエアを抜くエア抜き工程と、エアを抜いた輸液バッグ12内に水素ガスを封入する封入工程と、水素ガスが封入された輸液バッグ12を振とうして輸液に水素ガスを溶解するガス溶解工程を順に行う。ガス溶解工程は、輸液バッグ12を加圧した状態で行う。
【0046】
具体的には、まず、水素供給部14に水素ガスボンベ15を接続して、元バルブ72を開ける。次に、容器保持部13に輸液バッグ12を収納して蓋部材52を閉じる。つづいて、輸液バッグ12の口部12aのゴム栓に導入路73の先端の接続部74を刺して接続する。また、導入路73のチューブ73aにおける接続部74に近い部分を液体検知センサ79が備えられたチューブ保持部81に取り付ける。
【0047】
このあと、タッチパネル25から、水素ガス封入の圧力などの駆動に必要な設定を行い、準備を完了する。
【0048】
スタートスイッチを押すと、制御部91は、コンプレッサ67を駆動してエアバッグ65を膨張させる(エア抜き工程開始)。同時に、導入路73のエア抜き弁76を開く。エアバッグ65が押圧部材62を輸液バッグ12側に移動して輸液バッグ12を圧縮変形させると、輸液は接続部74を通ってチューブ73a内を上昇する。輸液バッグ12から押し出されたエアは、導入路73に設けられたエア抜き弁76を通して排出される。これに伴って液体検知センサ79がチューブ73a内の輸液を検知すると、制御部91はコンプレッサ67を停止し、エア抜き弁76を閉じる(エア抜き工程終了)。なお、エア抜き工程について、エアバッグ65内にエアが無い或いは極少量の場合には省略しても良い。
【0049】
つづいて、封入工程に移行する。つまり制御部91は、導入路73の電磁弁77を開いて水素ガスボンベ15内の水素ガスを輸液バッグ12内に送り込む。圧力センサ78があらかじめ設定された所定圧力を検知すると、制御部91は導入路の電磁弁77を閉じて、水素ガスの封入を停止する(封入工程終了)。
【0050】
つぎに、バッグ固定工程に移行する。つまり制御部91は、エア抜き工程で膨張させたエアバッグ65を、その状態からさらに膨張させるべくコンプレッサ67を駆動する。つまり、エア抜き工程で輸液バッグ12を押圧した押圧部材62を用いて輸液バッグ12を更に押圧して輸液バッグ12の内圧を高める。換言すれば、バッグ固定工程は、加圧工程でもある。導入路73の圧力センサ78があらかじめ設定された所定の圧力(輸液バッグ12の内圧)を検知すると、制御部91はコンプレッサ67を停止する。これによって輸液バッグ12は加圧された状態になる。このとき蓋部材52の内側面に備えた緩衝材59は、輸液バッグ12にかかる負荷を低減して保護する。
【0051】
このあと、導入路73の接続部74を輸液バッグ12から外す。またカプラ69のプラグ69bをソケット69aから外す。
【0052】
つぎに、揺動回数や揺動時間などの必要な駆動条件をタッチパネル25から設定した後、スタートスイッチを押すと、ガス溶解工程に移行して、制御部91は振とう手段31のアクチュエータ35の駆動を開始する。揺動時間は5分程度でよい。輸液バッグ12内部の輸液と水素ガスは加圧状態下で撹拌されて互いに接し合って混ざり合い、効率よく水素ガスが輸液に溶解する。あらかじめ設定された駆動内容を実行すると、制御部91はアクチュエータ35を停止する(ガス溶解工程終了)。
【0053】
最後に、カプラ69のプラグ69bをソケット69aに接続して、輸液バッグ12を加圧しているエアバッグ65内のエアを抜いて収縮させて輸液バッグ12の圧力を下げる。押圧部材62が輸液バッグ12と蓋部材52を押圧している状態が解かれたら、輸液バッグ12を容器保持部13から取り出す。
【0054】
以上のように、水素溶存輸液の製造は、輸液バッグ12内のエアを抜いて水素ガスを封入し、しかも、加圧状態にしたうえで振とう手段により積極的に輸液と水素ガスを混ぜ合わせるので、溶解効率は極めてよく、水素溶存輸液を短時間で製造できる。
【0055】
そのうえ、水素ガスボンベはおよそ100%の高濃度の水素ガスを充てんしたものを使用するので、高濃度の水素溶存輸液を製造できる。
【0056】
また、輸液バッグ12からのエア抜きは、水素供給部14から輸液バッグ12に水素ガスを供給する導入路を一部利用して行う構成であり、エア抜きと水素ガス封入の操作に際しては、エア抜き弁を切り替えればよい。このため、製造装置11の構成を簡素にでき、コンパクト化にも資する。
【0057】
製造装置11のコンパクト化に関しては、水素供給源として小型の水素ガスボンベを用いることができることと、縦置き型であって占有面積を小さくできること、エア抜き手段61の押圧部材62をバッグ固定工程(加圧工程)に兼用することからも、コンパクト化に大いに貢献できるといえる。
【0058】
しかも、エア抜きはエア抜き弁の開放で円滑に行えるうえに、水素ガスを封入した後はそのまま、つまり輸液バッグ12の姿勢を変更せずに振とうできるので、この点からも製造装置11の小型化ができ、操作を簡単にできる。
【0059】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0060】
たとえば、液体容器の形態は、前述のような偏平な袋状で一端に口部を有する形態であるほか、偏平な袋状の偏平な面に口部を有する形態のものや、ペットボトルなどのような適宜の立体形状のものであってもよい。また、導入路の接続部は液体容器の口部の態様に応じて適宜設定され、流路や逆止弁、着脱機能を有するキャップ形態のものなど、適宜構成できる。
【0061】
導入路73は、前述のようなチューブ73aを有さずに、導入路73に直接液体検知センサを備えてもよい。
【0062】
エア抜き手段61の押圧部材62は板状以外の形態のものであってもよい。またエア抜き手段61は、液体容器を押圧して行うほか、吸引や減圧によって行うこともできる。
【0063】
振とう手段31は、容器保持部13とは別に設けてもよく、振とう手段の構成も、前述のもの以外の適宜の構成にすることができる。また振とうは、液体容器を加圧しない状態で行ってもよい。液体容器の加圧は、液体容器を押圧するほか、高い圧力のガスを封入して行うこともできる。
【0064】
水素ガスを封入する封入工程では、水素ガス量を測定するガス流量計を設け、液体容器の容量に応じて予め設定した水素ガス量を流体容器に封入するようにしても良い。また、前記の水素ガスの圧力による封入と組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0065】
11…水素溶存液製造装置
12…輸液バッグ
13…容器保持部
14…水素供給部
15…水素ガスボンベ
31…振とう手段
61…エア抜き手段
62…押圧部材
73…導入路
74…接続部
76…エア抜き弁
79…液体検知センサ
図1
図2
図3
図4
図5