(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】振動式軽量地盤調査機
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
E02D1/02
(21)【出願番号】P 2018173664
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501091006
【氏名又は名称】株式会社東設土木コンサルタント
(73)【特許権者】
【識別番号】503209526
【氏名又は名称】株式会社セロリ
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】山内 優
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲哉
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-314919(JP,A)
【文献】登録実用新案第3025256(JP,U)
【文献】特開平10-331142(JP,A)
【文献】特開2017-089204(JP,A)
【文献】特開2004-108135(JP,A)
【文献】登録実用新案第3022945(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真直棒状又は真直筒状に形成された貫入ロッドと、
前記貫入ロッドの先端部に装着され、調査地盤に貫入される先端コーンと、
前記貫入ロッドの頭部に装着された電動振動機と、
前記電動振動機を支持する支柱と、
前記支柱を支持するスタンド部と、
前記貫入ロッドの貫入速度を測定する貫入速度測定手段と、を有
し、
前記支柱には前記電動振動機を昇降させるための昇降チェーンが往復していて、
前記昇降チェーンには前記電動振動機が連結されていて、
前記スタンド部には前記昇降チェーンを駆動させるための昇降用モータを備えていることを特徴とする振動式軽量地盤調査機。
【請求項2】
前記貫入速度測定手段は、前記昇降チェーンの移動を検出するロータリーエンコーダを含むことを特徴とする
請求項1に記載の振動式軽量地盤調査機。
【請求項3】
前記スタンド部には、該スタンド部を傾けて地面から離した状態で地面に当接する移動用タイヤを備えていることを特徴とする
請求項1または2に記載の振動式軽量地盤調査機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬性は維持しつつ、貫入深度をさらに深くするとともに、作業性の向上を図った振動式軽量地盤調査機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳地に基礎構造物を建設するための地盤調査、例えば山の急斜面に送電鉄塔を建設するための地盤調査では、ボーリング機材や作業足場用の資材等を何らかの運搬手段で調査場所まで搬入し、地盤の硬さを判定するN値を求めるための標準貫入試験や室内力学試験を行うための試料採取等を伴うボーリング調査が行われている。
【0003】
山の急斜面に送電鉄塔を建設するような場合、調査地点(原位置)まで標準貫入試験装置及びその付帯設備等を運搬している。しかしながら、上記資機材の総重量は約1〔t〕にも及ぶため、山岳地の斜面への送電鉄塔の建設において、従来のように地盤調査を行うことは、非常に大掛かりな設備の設置と重量物の運搬を強いられることとなる。このため、作業日程の長期化、重労働化、高コスト化を招き、送電鉄塔の4脚全ての位置での地盤調査が困難であるという大きな課題があった。
【0004】
これに対し特許文献1には、貫入ロッドの頭部に装着されたノッキングヘッドと、ノッキングヘッドをその上方から一定の推力でかつ一定の振動数で振動打撃する振動打撃部と、機械動力を生じさせる機械動力発生部(エンジン)とを有する振動打撃式軽量地盤調査機が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載された発明によれば、振動打撃部によって、貫入ロッドのノッキングヘッドが一定の推力でかつ一定の振動数で振動打撃される。この振動打撃式軽量地盤調査機は軽量の構成要素で構成されているため、貫入ロッドを調査地盤に貫入させるための最低限の推力を確保しつつ、振動打撃式軽量地盤調査機を人肩で運搬可能な重量まで総重量を下げることが可能になると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1の構成においては、ノッキングヘッドと、振動打撃部とを備え、機械動力発生部(小型エンジン)で振動打撃部を回転駆動して打撃するように構成されている。この振動打撃部は回転する際の摩擦によって加熱しやすく、長時間連続して作業することは難しい。また回転駆動の反動によって振動打撃部が暴れるため、これを支える作業者の負担にもなっていた。また貫入のための推力が人力の簡易動的コーン貫入試験機よりは高いものの、貫入深度は10m程度に留まっていた。
【0008】
そこで本発明は、可搬性は維持しつつ、貫入深度をさらに深くするとともに、作業性の向上を図った振動式軽量地盤調査機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる振動式軽量地盤調査機の代表的な構成は、真直棒状又は真直筒状に形成された貫入ロッドと、貫入ロッドの先端部に装着され、調査地盤に貫入される先端コーンと、貫入ロッドの頭部に装着された電動振動機と、電動振動機を支持する支柱と、支柱を支持するスタンド部と、貫入ロッドの貫入速度を測定する貫入速度測定手段と、有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ノッキングヘッドを打撃するのではなく、電動振動機によって貫入ロッドを貫入させる。したがって振動打撃部のように著しく加熱することがなく、長時間連続して作業することが可能となる。また回転駆動による振動打撃部と比較すれば電動振動機の方が重量のあるものを選択することができるため、貫入深度を深くすることが可能となる。一方、振動打撃部と機械動力発生部(小型エンジン)をあわせた重量と、電動振動機の重量は同程度となるため、可搬性が損なわれることがない。さらに、回転駆動による打撃をしないため、装置が暴れることはない。
【0011】
支柱には電動振動機を昇降させるための昇降チェーンが往復していて、昇降チェーンには電動振動機が連結されていて、スタンド部には昇降チェーンを駆動させるための昇降用モータを備えていてもよい。
【0012】
貫入試験の際には、貫入ロッドを継ぎ足すために電動振動機を何度も持ち上げる必要がある。そして上記構成によれば、重量のある電動振動機をモータで持ち上げることができるため、作業者の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0013】
貫入速度測定手段は、昇降チェーンの移動を検出するロータリーエンコーダを含んでいてもよい。
【0014】
すなわち貫入深さを昇降チェーンの移動量で検出する。これにより貫入深さを数cm単位で細かく、かつ正確に検出することができる。
【0015】
スタンド部には、スタンド部を傾けて地面から離した状態で地面に当接する移動用タイヤを備えていてもよい。
【0016】
これにより、当該装置を車両から降ろした後も容易に移動し、目的の測定地点に移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可搬性は維持しつつ、貫入深度をさらに深くするとともに、作業性の向上を図った振動式軽量地盤調査機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態にかかる振動式軽量地盤調査機の構成を説明する図である。
【
図2】地盤調査するときの様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0020】
図1は本実施形態にかかる振動式軽量地盤調査機の構成を説明する図である。
図1に示す振動式軽量地盤調査機100は、貫入ロッド110と、先端コーン112と、電動振動機116を備えている。
【0021】
貫入ロッド110は、真直棒状(円柱状)又は真直筒状(円筒状)に形成されている。貫入ロッド110の長さは所定の長さに設定されており、複数本継ぎ足して使用するようになっている。
【0022】
貫入ロッド110の先端部には、先端コーン112が装着されている。先端コーン112は、円錐台形状に形成された上部112aと、円錐形状に形成された下部112bとが一体化されている。さらに、上部112aからは外周面に雄ねじが形成された円柱状の挿入部が一体に形成されている。貫入ロッド110の先端部の内周面には図示しない雌ねじが形成されており、先端コーン112の挿入部を貫入ロッド110の先端部内へ螺入させることにより、先端コーン112が貫入ロッド110の先端部に装着されるようになっている。
【0023】
電動振動機116は、電動モータを内蔵し、振動を生じる装置である。市販されているものとしては、コンクリートのハツリ作業などを行う電気ハンマやバイブレータと呼ばれる種類の装置を利用することができる。一例として工機ホールディングス株式会社(旧日立工機株式会社)のハンマH90SGを好適に採用することができる。
【0024】
電動振動機116は、特許文献1の振動打撃装置および機械動力発生部(小型エンジン)に代えて、貫入ロッド110に振動を入力する。したがって振動打撃部のように著しく加熱することがなく、長時間連続して作業することが可能となる。さらに、回転駆動による打撃をしないため、装置が暴れることはない。
【0025】
また回転駆動による振動打撃部と比較すれば電動振動機116の方が重量のあるものを選択することができるため、貫入深度を深くすることが可能となる。一方、振動打撃部と機械動力発生部(小型エンジン)をあわせた重量と、電動振動機116の重量は同程度となるため、可搬性が損なわれることがない。特に特許文献1では貫入ロッドに対して機械動力発生部と重さを釣り合わせるためにカウンターウエイトを備えていたが、電動振動機116は貫入ロッド110の直上に配置できるため、カウンターウエイトのような重力物は不要となり、その分はむしろ軽量化を図ることができる。
【0026】
電動振動機を支持する支柱120は、スタンド部130に支持されている。支柱120には上下に自由にスライド移動可能なスライダ122が取り付けられていて、スライダ122に電動振動機116が固定されている。
【0027】
支柱120には電動振動機116を昇降させるための昇降チェーン124が上下方向に往復して配置されている。昇降チェーン124はスライダ122に連結されている。したがって、昇降チェーン124にはスライダ122を介して電動振動機116が連結されている。
【0028】
スタンド部130には、昇降チェーン124を駆動させるための昇降用モータ126を備えている。貫入試験の際には、貫入ロッド110を継ぎ足すために電動振動機116を何度も持ち上げる必要がある。そして上記構成によれば、重量のある電動振動機116を昇降用モータ126で持ち上げることができるため、作業者の負担を大幅に軽減することが可能となる。なお貫入しているときには昇降用モータ126をフリー回転とする。
【0029】
貫入ロッド110の貫入速度を測定する貫入速度測定手段としては、本実施形態においては電動振動機116の位置を直接測定するのではなく、昇降チェーン124の移動を検出するロータリーエンコーダ140を用いている。ロータリーエンコーダ140の出力は昇降チェーン124が単位長さを移動するごとのパルスであるから、コンピュータ150によってこのパルス信号を受信し、貫入深さと経過時間を取得することができる。貫入深さを昇降チェーン124の移動量で検出することにより、貫入深さを数cm単位で細かく、かつ正確に検出することができる。
【0030】
スタンド部130の後方には、移動用タイヤ132が備えられている。移動用タイヤ132は、スタンド部130を平置きした場合には地面から離れている。そしてスタンド部130を傾けて地面から離した状態で、移動用タイヤ132が地面に当接する。これにより、当該装置を車両から降ろした後も容易に移動し、目的の測定地点に移動させることが可能となる。
【0031】
図2は地盤調査するときの様子を説明する図である。まず、振動式軽量地盤調査機100を車両や人肩にて山岳地等の調査地点まで運び込む。次いで、
図2(a)に示されるように、貫入ロッド110の先端に先端コーン112を装着し、貫入ロッド110を電動振動機116に装着する。これらの準備が整ったら、電動振動機116を駆動させる。すると
図2(b)に示されるように、電動振動機116の振動により、貫入ロッド110が地中へと貫入されていく。
【0032】
貫入ロッド110が1本50cmの場合を例にとって説明すると、貫入試験は貫入ロッド110の地表高さ1〔m〕から開始され、50〔cm〕貫入した時点で一旦停止される。停止後、電動振動機116から貫入ロッド110を取り外し、昇降用モータ126によって電動振動機116だけを引き上げる。そして貫入ロッド110を継ぎ足すと、ふたたび貫入ロッド110の上端を電動振動機116に装着し、次の50〔cm〕分の貫入試験が開始される。
【0033】
図3は地盤性状測定の原理を説明する図である。地盤の硬さを判定するN値を取得することが貫入試験の目的であるが、
図3を参照すると、N値と貫入時間との間で比例関係があることがわかる。具体的には、貫入時間に係数0.1をかけると、N値とすることができる。
【0034】
特許文献1の装置構成では振動打撃部からの衝撃荷重によって貫入させていたが、本実施形態の構成では重量のある電動振動機116を用いたことにより、貫入深度を深くすることができる。具体的には、特許文献1の装置構成では貫入深度は10m程度に留まっていたところ、本実施形態の構成では20m程度までは充分に貫入させることができた。どの程度まで貫入させられるかは地盤性状にも依るが、従来に比して倍程度まで深くできたことは飛躍的進歩である。
【0035】
この程度まで深く地盤調査をできるのであれば、山岳地の鉄塔の基礎のための地盤調査のみならず、市街地の鉄筋コンクリートのビルディングの杭基礎を対象とした地盤調査にも使用することができる。杭基礎の地盤調査には従来はボーリングを行っていたが、クレーンに匹敵する大きさのボーリングマシンを用いる必要があり、また作業中は大量の泥にまみれるという問題がある。市街地の地盤調査であっても小型軽量は運搬や保管のために利点があり、また貫入ロッドを打ち込むだけであるので泥まみれになることもない。したがって本発明にかかる振動式軽量地盤調査機は、広い場面で使用することができ、作業者の利便性や工事コストの低減を図ることができる。
【0036】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、可搬性は維持しつつ、貫入深度をさらに深くするとともに、作業性の向上を図った振動式軽量地盤調査機として利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
100 …振動式軽量地盤調査機
110 …貫入ロッド
112 …先端コーン
112a …上部
112b …下部
116 …電動振動機
120 …支柱
122 …スライダ
124 …昇降チェーン
126 …昇降用モータ
130 …スタンド部
132 …移動用タイヤ
140 …ロータリーエンコーダ
150 …コンピュータ