(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】細胞搬送システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20230202BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230202BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 A
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2018203728
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】515177608
【氏名又は名称】ヨダカ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】城口 克之
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰策
(72)【発明者】
【氏名】平藤 衛
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/163687(WO,A1)
【文献】特開2018-068169(JP,A)
【文献】特開2018-148830(JP,A)
【文献】特開2000-089124(JP,A)
【文献】特表2004-509611(JP,A)
【文献】特許第5510463(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0179916(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
G02B
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細胞が収容されている第1の容器から1又は複数の細胞を吸引し、該1又は複数の細胞の各々を、それぞれ、1又は複数の第2の容器の各々に吐出するニードルと、
上記第1の容器内に上記ニードルの先端が位置する場合に、該先端近傍を観察する第1の顕微鏡と、
上記第2の容器内または該第2の容器の開口の上方に上記先端が位置する場合に、該先端近傍を観察する第2の顕微鏡と、を備え、
上記第1の顕微鏡および上記第2の顕微鏡の各々は、1つの光軸である共通光軸を共有しており、
上記共通光軸上に上記第1の容器または上記第2の容器を位置させるように、少なくとも上記第1の容器および上記第2の容器を移動させる移動機構を更に備えている、細胞搬送システム。
【請求項2】
複数の細胞が収容されている第1の容器から1又は複数の細胞を吸引し、該1又は複数の細胞の各々を、それぞれ、1又は複数の第2の容器の各々に吐出するニードルと、
上記第1の容器内に上記ニードルの先端が位置する場合
に該先端近傍を観察
し、上記第2の容器内または該第2の容器の開口の上方に上記ニードルの先端が位置する場合には該先端近傍を観察しない第1の顕微鏡と、
上記第2の容器内または該第2の容器の開口の上方に上記先端が位置する場合
に該先端近傍を観察
し、上記第1の容器内に上記ニードルの先端が位置する場合には該先端近傍を観察しない第2の顕微鏡と、を備えている細胞搬送システム。
【請求項3】
上記第2の容器内に上記先端が位置する場合に、上記第2の顕微鏡の少なくとも一部の位置を調整する第1の調整機構を更に備えている、請求項1
または2に記載の細胞搬送システム。
【請求項4】
上記第2の容器内に上記先端が位置する場合に、上記第2の容器の位置を調整する第2の調整機構を更に備えている、請求項1
~3の何れか一項に記載の細胞搬送システム。
【請求項5】
上記第2の容器内に上記先端が位置する場合に、上記先端の位置を調整する第3の調整機構を更に備えている、請求項1~
4の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項6】
上記第2の容器に対して照明光を照射する光源の位置を調整する第4の調整機構を更に備えている、請求項1~
5の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項7】
上記第2の容器に対して照明光を照射する、互いに異なる場所に配置された複数の光源と、
上記複数の光源のなかから点灯させる光源を選択する選択部と、を更に備えている請求項1~
6の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項8】
上記第2の顕微鏡は、倍率を切り替える切り替え機構を更に備えている、請求項1~
7の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項9】
上記1又は複数の第2の容器は、複数の第2の容器であって、
該複数の第2の容器の各々は、マトリクス状に配置された複数のPCRチューブであり、
上記ニードルは、上記第1の容器から複数の細胞を吸引し、且つ、該複数の細胞の各々を、上記複数のPCRチューブの各々に吐出する、請求項1~
8の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項10】
上記第1の顕微鏡の光軸である第1の光軸と、上記第2の顕微鏡の光軸である第2の光軸とは、互いに異なる場所に位置し、
上記第1の光軸上または上記第2の光軸上に上記先端を位置させるように、上記ニードルを移動させる移動機構を更に備えている、請求項
2~
9の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項11】
上記第1の顕微鏡は、複数のレンズと、該複数のレンズにより結像された画像を表す第1の画像データを生成する第1の撮像素子と、を備え、
上記第1の画像データを上記第1の撮像素子から取得する第1の画像データ取得部と、
上記第1の画像データが表す上記画像を参照して、上記先端から上記ニードル内に1つの細胞が吸引されたか否かを判定する第1の判定部と、
上記第1の判定部による判定結果が否である場合に、該第1の画像データに対して、1つの細胞が吸引されていない旨を示すフラグを付与する第1のフラグ付与部と、を備えた第1の制御部を更に備えている、請求項1~10の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項12】
上記第2の顕微鏡は、複数のレンズと、該複数のレンズにより結像された画像を表す第2の画像データを生成する第2の撮像素子と、を備え、
上記第2の画像データを上記第2の撮像素子から取得する第2の画像データ取得部と、
上記第2の画像データが表す上記画像を参照して、上記先端から上記第2の容器内に1つの細胞が吐出されたか否かを判定する第2の判定部と、
上記第2の判定部による判定結果が否である場合に、該第2の画像データに対して、1つの細胞が吐出されていない旨を示すフラグを付与する第2のフラグ付与部と、を備えた第2の制御部を更に備えている、請求項1~10の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項13】
上記第1の顕微鏡は、複数のレンズと、該複数のレンズにより結像された画像を表す第1の画像データを生成する第1の撮像素子と、を備え、
上記第1の画像データを上記第1の撮像素子から取得する第1の画像データ取得部と、
上記第1の画像データが表す上記画像を参照して、上記先端から上記ニードル内に吸引された細胞の数を判定する第1の判定部と、
該第1の画像データに対して、上記第1の判定部が判定した上記細胞の数を関連付ける第1の関連付け部と、を備えた第1の制御部を更に備えている、請求項1~10の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【請求項14】
上記第2の顕微鏡は、複数のレンズと、該複数のレンズにより結像された画像を表す第2の画像データを生成する第2の撮像素子と、を備え、
上記第2の画像データを上記第2の撮像素子から取得する第2の画像データ取得部と、
上記第2の画像データが表す上記画像を参照して、上記先端から上記第2の容器内に吐出された細胞の数を判定する第2の判定部と、
該第2の画像データに対して、上記第2の判定部が判定した上記細胞の数を関連付ける第2の関連付け部と、を備えた第2の制御部を更に備えている、請求項1~10の何れか1項に記載の細胞搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の容器から第2の容器へ細胞を搬送する細胞搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞解析のためには、細胞集団が培養されているシャーレ(第1の容器の一例)から、PCRプレートを構成する複数(例えば96ウェルや384ウェルなど)の各PCRチューブ(第2の容器の一例)に、細胞を規定した個数(例えば1個ずつ)単離・分注する必要がある。
【0003】
シャーレで培養中の細胞集団の中から目的の単一細胞を解析するためには、高機能且つ高精度の光学顕微鏡下でシャーレ内を観察し、目的の単一細胞をガラスニードルなどで吸引することによってピッキングし、ピッキングした単一細胞をPCRチューブに迅速に吐出する必要がある。ここで、実際に細胞を1個ずつ吐出できたか否かを確認するためには、細胞をPCRチューブに吐出するときにもPCRチューブ内を観察しておく必要がある。なお、以下においては、光学顕微鏡のことを単に顕微鏡と記載する。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載された細胞搬送システムにおいては、
図9に示されているように、シャーレ内における細胞集団の観察および細胞のピッキング時の観察と、PCRチューブ内における吐出時の観察とを、1台の顕微鏡を用いて実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-68169号公報(2018年5月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シャーレ内およびPCRチューブ内を1台の顕微鏡を用いて観察する場合、材質や形状などが異なる第1の容器および第2の容器のなかに存在する細胞を同じ1台の顕微鏡を用いて観察する。そのため、例えば特許文献1に記載されているような従来の細胞搬送システムには、吐出時に鮮明な画像を得ることが難しいという課題がある。
【0007】
本発明の一態様に係る細胞搬送システムは、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、第1の容器から第2の容器へ細胞を搬送する細胞搬送システムであって、第1の容器内において細胞をピッキングするときに加えて、第2の容器内において細胞を吐出するときにも鮮明な画像を得ることができる細胞搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る細胞搬送システムは、複数の細胞が収容されている第1の容器から1又は複数の細胞を吸引し、該1又は複数の細胞の各々を、それぞれ、1又は複数の第2の容器の各々に吐出するニードルと、上記第1の容器内に上記ニードルの先端が位置する場合に、該先端近傍を観察する第1の顕微鏡と、上記第2の容器内または該第2の容器の開口の上方に上記先端が位置する場合に、該先端近傍を観察する第2の顕微鏡と、を備えている。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る細胞搬送システムは、複数の細胞が収容されている第1の容器から1又は複数の細胞を吸引し、且つ、該1又は複数の細胞の各々を、それぞれ、1又は複数の第2の容器の各々に吐出するニードルと、上記第1の容器内に上記ニードルの先端が位置する場合に、該先端近傍を観察する第1の顕微鏡を配置する領域と、上記第2の容器内に上記先端が位置する場合に、該先端近傍を観察する第2の顕微鏡と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る細胞搬送システムは、第1の容器から第2の容器へ細胞を搬送する細胞搬送システムであって、第1の容器内において細胞を吸引するときに加えて、第2の容器内において細胞を吐出するときにも鮮明な画像を得ることができる細胞搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る細胞搬送システムの概略を示す断面矢視図である。(b)は、(a)に示した細胞搬送システムが備えているニードルの先端近傍を拡大した拡大断面図である。(c)は、第1の実施形態に係る細胞搬送システムにおいて用いるPCRプレートの平面図である。
【
図2】
図1の(a)に示した細胞搬送システムのブロック図である。
【
図3】
図1の(a)に示した細胞搬送システムが備えている第2の顕微鏡および光学ステージの斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る細胞搬送システムの概略を示す断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る細胞搬送システム1について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1の(a)は、細胞搬送システム1の概略を示す断面矢視図である。
図1の(b)は、細胞搬送システム1が備えているニードル33の先端332近傍を拡大した拡大断面図である。
図1の(c)は、細胞搬送システム1において用いるPCRプレートPPの平面図である。
図2は、細胞搬送システム1のブロック図である。
図3は、細胞搬送システム1が備えている顕微鏡13および光学ステージ43の斜視図である。
【0013】
<シャーレSHおよびPCRチューブPij>
細胞搬送システム1は、シャーレSHからPCRチューブPijへ細胞を搬送する細胞搬送システムである。
【0014】
特許請求の範囲に記載の第1の容器の一例であるシャーレSHは、後述する観察光L1に対して透光性を有する(本実施形態においては透明な)ガラス製である。シャーレSHには、複数の細胞(
図1には不図示)が培養液CF1とともに収容されている。
【0015】
特許請求の範囲に記載の第2の容器の一例であるPCRプレートPPは、後述する観察光L2に対して透光性を有する(本実施形態においては透明な)樹脂製であり、かつ、複数の凹部であるPCRチューブPijがm行n列のマトリクス状に形成された樹脂プレートである(
図1の(c)参照)。PCRプレートPPは、ウェルプレートと呼ばれることもある。なお、PCRプレートPP(ウェルプレート)は、樹脂製の代わりに透光性を有する(より好ましくは、透明な)ガラス製であってもよい。
【0016】
本実施形態においては、12行8列からなる計96個のPCRチューブPijを有するPCRプレートPPを用いる。すなわち、iは、1以上12以下の整数であり、jは、1以上8以下の整数である。なお、
図1の(a)には、m=3である行のPCRチューブP31~P38のうち、PCRチューブP33内にニードル33の先端332が位置する状態を示している。
【0017】
PCRプレートPPにおいて、隣接する行同士の間隔であるピッチPyは、全ての行間において共通であり、隣接する列同士の間隔であるピッチPxは、全ての列間において共通である。また、ピッチPyとピッチPxとは、共通である(
図1の(c)参照)。
【0018】
しかし、PCRプレートPPが備えているPCRチューブPijの数は、限定されるものではない。例えば、第2の容器の一例としては、12行32列からなる計384個のPCRチューブPijを有するPCRプレートPPであってもよい。なお、各PCRチューブPijには、それぞれ、培養液CF2が充填されている(
図1の(a)参照)。
【0019】
なお、第1の容器の一例であるシャーレSHおよび第2の容器の一例であるPCRチューブPijの各々は、細胞搬送システム1の構成要素ではない。当然のことながら、第1の容器および第2の容器の各々は、それぞれ、用途(例えば細胞解析)に応じて適宜選択することができる。
【0020】
<細胞搬送システム1の構成>
細胞搬送システム1は、
図1の(a)に示した、顕微鏡11,13、光源16a,16b,17a,17b,17c、ステージ21,22、および、細胞搬送ロボット30と、
図3に示した光学ステージ43と、
図1および
図3には示していない除振台を備えている。
【0021】
(顕微鏡11)
特許請求の範囲に記載の第1の顕微鏡の一例である顕微鏡11は、除振台上に載置されている。顕微鏡11は、
図2に示すように、複数のレンズにより構成されたレンズ群11aと、撮像素子11bとを備えている。レンズ群11aに含まれるレンズのうち一部の複数のレンズは、
図1の(a)に示した対物レンズ12を構成する。
【0022】
特許請求の範囲に記載の第1の撮像素子の一例である撮像素子11bは、レンズ群11aにより結像された画像を撮像し、該画像を表す第1の画像データを生成する。
【0023】
顕微鏡11は、細胞の詳細な観察および解析に好適なスペックを有する顕微鏡であって、後述する顕微鏡13と比較して、高倍率であり、かつ、高機能である。したがって、顕微鏡13と比較して、顕微鏡11は、開口数が大きく、ワーキングディスタンスが短い(
図1の(a)に示した観察光L1参照)。また、顕微鏡11の光軸AL1は、特許請求の範囲に記載の第1の光軸の一例である。
【0024】
顕微鏡11の一部を構成するステージ21は、シャーレSHを載置するためのステージである。ステージ21は、外枠21aと、プレート21bと、ステージ機構21cと、を備えている。
【0025】
プレート21bは、シャーレSHを載置するための板状部材であり、観察光L1に対して透光性を有するガラス製である。
【0026】
外枠21aは、プレート21bを支持するための枠状部材であって、プレート21bの外縁を取り囲む形状に整形されている。
【0027】
外枠21aは、
図1の(a)に模式的に示したステージ機構21cにより支持されている。外枠21aの位置は、ステージ機構21cを用いることにより調整することができる。
【0028】
本実施形態において、ステージ機構21cは、外枠21aをx軸方向、y軸方向、およびz軸方向の各々に並進させることができ、かつ、外枠21aの主面(プレート21bの主面)をxy平面に対して傾斜させることができるように構成されている。
【0029】
本実施形態において、ステージ機構21cは、手動および電動のいずれの方法でも外枠21aの位置を調整できるように構成されている。なお、電動でステージ機構21cを駆動するために、ステージ機構21cは、複数のモータを備えている。電動でステージ機構21cを駆動する場合、ステージ機構21cは、細胞搬送システム1の制御部10が備えている第1のステージ制御部10dにより制御される。なお、複数のモータの態様は限定されるものではなく、例えば、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよい。
【0030】
ステージ21が上述したように構成されていることによって、後述するニードル33の先端332にフォーカスが合うように顕微鏡11を調整した状態において、先端332と顕微鏡11との相対関係を変化させることなく(すなわちフォーカスが合った状態のまま)、シャーレSHの位置のみを調整することができる。したがって、作業者は、後述する細胞搬送ロボット30を用いて所望の細胞を容易に吸引することができる。
【0031】
(顕微鏡13)
特許請求の範囲に記載の第2の顕微鏡の一例である顕微鏡13は、
図3に示すように、主軸41と、アーム42と、光学ステージ43とを介して、除振台に固定されている。
【0032】
顕微鏡13は、
図2の示すように、複数のレンズにより構成されたレンズ群13aと、撮像素子13bとを備えている。また、顕微鏡13は、円筒形の筐体14に設けられたズームリング15を回転させることによって、得られる画像の倍率が可変なズームレンズである。
【0033】
なお、細胞搬送システム1では、顕微鏡13としてズームレンズを採用しているが、複数の倍率が異なる対物レンズと、これらの複数の対物レンズを切り替えるためのリボルバとを備えた顕微鏡を顕微鏡13として採用してもよい。
【0034】
顕微鏡13は、後述するニードル33の先端332からPCRチューブPij内に細胞を吐出するときの様子を観察するために好適なスペックを有する顕微鏡であって、顕微鏡11と比較して、低倍率であり、軽量であり、かつ、コンパクトである。
【0035】
顕微鏡13としてズームレンズを採用していることにより、顕微鏡を構成するレンズの一部(例えば対物レンズ)を交換する、または、リボルバを回転させるという観察が途切れる作業を行うことなく、倍率を変更することができる。すなわち、観察が途切れる作業を行うことなく、開口APの全域を引いた状態で観察したり、ニードル33の先端332近傍をズームした状態で観察したりすることができる。したがって、顕微鏡11と比較して、顕微鏡13は、開口数が小さく、ワーキングディスタンスが長い(
図1の(a)に示した観察光L2参照)。また、顕微鏡13の光軸AL2は、特許請求の範囲に記載の第2の光軸の一例である。
【0036】
主軸41は、金属製(本実施形態ではステンレス製)の柱状部材である。主軸41の中心軸A41が除振台の表面に対して垂直になるように、主軸41の下端部は、除振台の表面に固定されている。
【0037】
後述する光学ステージ43は、主軸41の上端部に固定されている、外形が直方体状の光学ステージである。光学ステージ43を構成する側面のうち1つの側面に対してアーム42の中心軸A42が垂直になるように、換言すれば、除振台の表面に対してアーム42の中心軸A42が平行になるように、アーム42の一方の端部は、光学ステージ43の一側面に固定されている。
【0038】
光軸AL2が除振台の表面に対して垂直になるように、撮像素子13bは、アーム42の他方の端部に固定されている。
【0039】
特許請求の範囲に記載の第2の撮像素子の一例である撮像素子13bは、レンズ群13aにより結像された画像を撮像し、該画像を表す第2の画像データを生成する。
【0040】
顕微鏡13の一部を構成するステージ22は、PCRプレートPPを載置するためのステージであり、特許請求の範囲に記載の第2の調整機構の一例である。ステージ22は、外枠22aと、プレート22bと、ステージ機構22cと、を備えている。
【0041】
ステージ22は、ステージ21と同様に構成されている。すなわち、ステージ22の外枠22aは、ステージ21の外枠21aと同様に構成されており、ステージ22のプレート22bは、ステージ21のプレート21bと同様に構成されており、かつ、外枠22aは、
図1の(a)に模式的に示したステージ機構22cにより支持されている。したがって、ここでは、ステージ22に関する詳しい説明を省略する。
【0042】
ステージ22がステージ21と同様に構成されていることによって、後述するニードル33の先端332にフォーカスが合うように顕微鏡13を調整した状態において、先端332と顕微鏡13との相対関係を変化させることなく(すなわちフォーカスが合った状態のまま)、PCRチューブPijの位置のみを調整することができる。したがって、作業者は、後述する細胞搬送ロボット30を用いて細胞を吐出する位置を容易に定めることができる。
【0043】
なお、
図1の(a)は、PCRチューブPij内に先端332が位置する状態で細胞を吐出する場合を描いている。しかし、細胞を吐出するときの先端332の位置は、PCRチューブPij内に限定されるものではなく、PCRチューブPijの開口APの上方であってもよい。開口APの上方から細胞を吐出する場合、先端332から吐出された後の細胞のz軸方向における位置は、先端332から吐出される前と比較して、大幅に下がる。したがって、吐出の前後に亘って細胞を鮮明な画像として捉えることは難しくなる。しかし、作業者は、先端332内から吐出される細胞を確認することができるので、開口APの上方から細胞を吐出する場合であっても1細胞が吐出されたことを確認することができる。
【0044】
なお、吐出の前後に亘って細胞を鮮明な画像として捉え続けることができるという点において、PCRチューブPij内に先端332が位置する状態で細胞を吐出する場合の方が、開口APの上方に先端332が位置する状態で細胞を吐出する場合より好ましい。
【0045】
(光学ステージ43)
図3に示す光学ステージ43は、顕微鏡13のレンズ群13aおよび撮像素子13bの位置を調整する第1の調整機構の一例である。
【0046】
光学ステージ43は、x軸方向に平行な矢印A3の方向、y軸方向に平行な矢印A4の方向、および、z軸方向に平行な矢印A5の各方向に、アーム42を並進可能なように構成されている。したがって、光学ステージ43を調整することにより、PCRチューブPij内に先端332が位置する場合に、細胞搬送システム1は、観察光L2の焦点をx軸方向、y軸方向、および、z軸方向に移動させることができる。
【0047】
また、光学ステージ43は、アーム42の中心軸A42の軸回り方向(矢印A6の方向)に、アーム42を回転可能なように構成されている。したがって、光学ステージ43を調整することにより、PCRチューブPij内に先端332が位置する場合に、細胞搬送システム1は、光軸AL2をyz平面に沿って傾斜させることができる。換言すれば、細胞搬送システム1は、撮像素子13bからPCRチューブPijを見た場合の俯角を変化させることができる。
【0048】
また、光学ステージ43は、除振台の表面に対する中心軸A42の角度θ42(仰角または俯角)を変化させることができるように構成されている(矢印A7参照)。したがって、光学ステージ43を調整することにより、PCRチューブPij内に先端332が位置する場合に、細胞搬送システム1は、光軸AL2をzx平面に沿って傾斜させることができる。換言すれば、細胞搬送システム1は、撮像素子13bからPCRチューブPijを見た場合の俯角を変化させることができる。
【0049】
本実施形態において、光学ステージ43は、手動および電動のいずれの方法でもアーム42の位置を調整できるように構成されている。なお、電動で光学ステージ43を駆動するために、光学ステージ43は、複数のモータを備えている。電動で光学ステージ43を駆動する場合、光学ステージ43は、細胞搬送システム1の制御部10が備えている光学ステージ制御部10bにより制御される。なお、複数のモータの態様は限定されるものではなく、例えば、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、光学ステージ43は、顕微鏡13を構成するレンズ群13a、撮像素子13b、筐体14、およびズームリング15の位置を一括して調整する。しかし、光学ステージ43は、顕微鏡13の少なくとも一部(例えば、レンズ群13aおよび撮像素子13bの何れか一方)の位置を調整するように構成されていてもよい。その場合、レンズ群13aと撮像素子13bとは、光学的には結合されているものの、物理的には、別個にその位置を調整可能なように構成されていればよい。
【0051】
(光源16a,16b,17a,17b,17c)
光源16a,16bは、顕微鏡11の一部を構成する光源であって、シャーレSHに対して照明光を照射する光源である(
図1の(a)参照)。同様に、光源17a,17b,17cは、顕微鏡13の一部を構成する光源であって、PCRチューブPijに対して照明光を照射する光源である。
【0052】
光源17aは、後述するニードル33の先端332を挿入されるPCRチューブPijを直下から照らす光源であって、ステージ22の下方、かつ、光軸AL2上に配置されている。光源17bは、先端332を挿入されるPCRチューブPijを斜め下から照らす光源であって、ステージ22の下方、かつ、ニードルを挿入されるPCRチューブPijから見た場合の俯角が所定の角度(例えば45度)である位置に配置されている。光源17cは、先端332を挿入されるPCRチューブPijを側方から照らす光源であって、ステージ22の上方、かつ、先端332を挿入されるPCRチューブPijから見た場合の仰角が所定の角度(例えば25度)である位置に配置されている。
【0053】
光源17aは、光源17aの位置を調整可能なマウントを介して、例えば、除振台に固定されている。ここで、光源17aの位置とは、除振台の表面内(xy平面内)における座標と、照明光の向きとを含む。すなわち、特許請求の範囲に記載の第4の調整機構であるマウントは、xy平面内における光源17aの座標、および、光源17aの照明光の向きのうち少なくとも何れか一方を調整可能なように構成されている。マウントは、例えば、除振台の表面に対して固定可能なマグネットベースと、マグネットベース上に固定されたヒンジとにより構成することができる。
【0054】
光源17bおよび光源17cの各々は、光源17aと同様に、光源17bおよび光源17cの各々の位置を調整可能なマウントを介して除振台に固定されている。
【0055】
また、光源17a,17b,17cの各々は、個別に点灯させるか否かを制御可能なように構成されている。光源17a,17b,17cのなかかから点灯させる光源を選択する手法は、限定されるものではない。本実施形態の細胞搬送システム1では、制御部10が備えている第2の選択部10hが点灯させる光源を選択する。また、光源17a,17b,17cに対して個別にスイッチを設け、作業者がそれらのスイッチを操作することによって、点灯させる光源を選択する構成であってもよい。なお、制御部10については、後述する。
【0056】
光源16aは、顕微鏡11がステージ21の下方に配置されていることに伴い、ステージ21の上方に配置されていることを除いて、光源17aと同様に構成されている。また、光源16bは、光源17cと同様に構成されている。したがって、ここでは、光源16aおよび光源16bに関する詳しい説明を省略する。
【0057】
なお、本実施形態において、顕微鏡11は、2つの光源16a,16bを備えており、顕微鏡13は、3つの光源17a,17b,17cを備えている。しかし、顕微鏡11および顕微鏡13の各々が備えている光源の数および光源の位置は、限定される物ではなく、適宜定めることができる。また、光源16a,16b,17a,17b,17cの各々が照射する照明光の波長も適宜定めることができる。特に、顕微鏡11において蛍光観察を行う場合には、光源16a,16bの何れかが照射する照明光の波長は、可視光領域に含まれていてもよいし、紫外線領域に含まれていてもよい。
【0058】
(細胞搬送ロボット30)
図1の(a)に示すように、細胞搬送ロボット30は、主軸31と、アーム32と、ニードル33とを備えている。また、細胞搬送ロボット30は、
図1の(a)に示していないポンプを更に備えている。
【0059】
主軸31は、金属製(本実施形態ではステンレス製)の柱状部材である。主軸31の中心軸A31が除振台の表面に対して垂直になるように、主軸31の下端部は、除振台の表面に、中心軸A31の軸回りに回転可能な状態で固定されている。したがって、主軸31は、
図1の(a)に示した矢印A2の方向に回転することができる。
【0060】
アーム32は、複数のリンクと、1又は複数のジョイント(本実施形態では複数のジョイント)とを備えたロボットアームである。
図1の(a)においては、複数のリンクおよび複数のジョイントのうち、一方の端部を構成するリンク32aと、他方の端部を構成するリンク32bとのみを図示し、アーム32の中間部分を構成する他のリンクおよび複数のジョイントの図示を省略している。アーム32を人の腕にたとえた場合、リンクは骨に対応し、ジョイントは関節に対応する。
【0061】
アーム32の一方の端部であるリンク32aは、主軸31の上端部に固定されている。アーム32の他方の端部であるリンク32bは、複数のリンクおよび複数のジョイントにより支持されている。リンク32bの位置は、複数のジョイントを制御することによって任意に制御可能である。したがって、リンク32bの位置(換言すれば後述するニードル33の先端332の位置)は、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向の各方向に沿って調整することができる。
【0062】
特に、先端332の位置をz軸方向に沿った矢印A1の方向に上下動させることができることによって、ステージ21およびステージ22の各々を動かすことなく、(1)先端332をシャーレSH内に挿入させたり、シャーレSH内から退避させたりすることができ、かつ、(2)先端332をPCRチューブPij内に挿入させたり、PCRチューブPijから退避させたりすることができる。
【0063】
本実施形態において、アーム32は、手動および電動のいずれの方法でもリンク32bの位置を調整できるように構成されている。なお、電動でアーム32を駆動するために、アーム32は、複数のモータを備えている。電動でアーム32を駆動する場合、アーム32は、細胞搬送システム1の制御部10が備えているアーム制御部10aにより制御される。なお、複数のモータの態様は限定されるものではなく、例えば、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよい。
【0064】
リンク32bは、両端が開放された管状部材であるニードル33の一方の端部を固定するとともに、その一方の端部に、ポンプに接続されている配管を気密された状態で接続する(ポンプおよびポンプに接続されている配管は、
図1の(a)に不図示)。なお、本実施形態においてポンプについての詳細な説明を省略するが、微小な体積の流体(気体または液体)を吸引および吐出可能なように構成されている。ポンプとニードル33とが気密された状態で接続されているので、ニードル33は、ポンプが行う流体の吸引又は吐出に応じて、培養液CF1または培養液CF2を吸引又は吐出することができる。
【0065】
ニードル33は、主部331と、先端332と、テーパ部333と、により構成されている(
図1の(a)および(b)参照)。ニードル33は、観察光L1および観察光L2に対して透光性を有する(本実施形態においては透明な)ガラス製である。なお、ニードル33を構成する材料は、ガラスに限定されるものではなく、観察光L1,L2に対して透光性を有する材料(例えば樹脂)であればよい。
【0066】
主部331は、ニードル33の一方の端部を含む。主部331は、全区間に亘って内径および外径が略一定となるように構成されている。主部331は、その中途区間において屈曲されている。主部331の屈曲されている角度は、ニードル33とPCRチューブPijの内壁とが干渉しない状態で、先端332をPCRチューブPij内に挿入可能な角度であればよい。
【0067】
先端332は、ニードル33の他方の端部を構成する。先端332は、全区間に亘って内径および外径が主部331の内径および外径よりも細くなるように構成されている。
【0068】
テーパ部333は、主部331と先端332とを滑らかに繋ぎつつ、主部331の中心軸A331と先端332の中心軸A332とが角度θ33をなすように屈曲されている。中心軸A331と中心軸A332とが角度θ33をなすことにより、ニードル33とPCRチューブPijの内壁とが干渉しない状態で、先端332をPCRチューブPij内に挿入することができ、かつ、顕微鏡11を用いて先端332の縦断面を観察することができる。したがって、シャーレSH内において細胞を吸引する前後、および、PCRチューブPij内において細胞を吐出する前後に亘って、細胞のz軸方向における変位を抑制することができるため、吸引の前後および吐出の前後に亘って、細胞の鮮明を得ることができる。角度θ33は、主部331の屈曲されている角度に応じて、中心軸A332とxy平面との成す角度が小さくなるように適宜定めることができる。
【0069】
(制御部10)
図2に示すように、細胞搬送システム1の制御部10は、アーム制御部10aと、光学ステージ制御部10bと、第1の選択部10cと、第1のステージ制御部10dと、第1の画像データ取得部10eと、第1の判定部10fと、第1のフラグ付与部10gと、第2の選択部10hと、第2のステージ制御部10iと、第2の画像データ取得部10jと、第2の判定部10kと、第2のフラグ付与部10lと、を備えている。
【0070】
アーム制御部10aは、アーム32を制御することによって、先端332の位置を調整する。
【0071】
光学ステージ制御部10bは、光学ステージ43を制御することによって、顕微鏡13を構成するレンズ群13a、撮像素子13b、筐体14、およびズームリング15の位置を一括して調整する。
【0072】
第1の選択部10cは、光源16a,16bのなかから点灯させる光源を選択する。
【0073】
第1のステージ制御部10dは、ステージ21のステージ機構21cを制御することによって、外枠21aおよびプレート21bの位置、すなわちシャーレSHの位置を調整する。
【0074】
顕微鏡11のレンズ群11aは、シャーレSH内に先端332が位置する場合に、先端332を含む近傍領域の画像を撮像素子11bの受光面に結像する。
【0075】
撮像素子11bは、レンズ群11aにより結像された先端332を含む近傍領域の画像を表す第1の画像データを生成する。
【0076】
第1の画像データ取得部10eは、撮像素子11bから第1の画像データを取得する。
【0077】
第1の判定部10fは、上記第1の画像データが表す、シャーレSH内の先端332を含む近傍領域の画像を参照して、先端332からニードル33内に1つの細胞が吸引されたか否かを判定する。
【0078】
第1のフラグ付与部10gは、第1の判定部10fによる判定結果が否である場合に、上記第1の画像データに対して、1つの細胞が吸引されていない旨を示すフラグを付与する。
【0079】
第2の選択部10hは、光源17a、17b,17cの中から点灯させる光源を選択する。
【0080】
第2のステージ制御部10iは、ステージ22のステージ機構22cを制御することによって、外枠22aおよびプレート22bの位置、すなわちPCRチューブPijの位置を調整する。
【0081】
顕微鏡13のレンズ群13aは、PCRチューブPij内に先端332が位置する場合に、先端332を含む近傍領域の画像を撮像素子13bの受光面に結像する。
【0082】
撮像素子13bは、レンズ群13aにより結像された先端332を含む近傍領域の画像を表す第2の画像データを生成する。
【0083】
第2の画像データ取得部10jは、撮像素子13bから第2の画像データを取得する。
【0084】
第2の判定部10kは、上記第2の画像データが表す、PCRチューブPij内の先端332を含む近傍領域の画像を参照して、先端332からPCRチューブPij内に1つの細胞が吐出されたか否かを判定する。
【0085】
第2のフラグ付与部10lは、第2の判定部10kによる判定結果が否である場合に、上記第2の画像データに対して、1つの細胞が吐出されていない旨を示すフラグを付与する。
【0086】
なお、第1の画像データ取得部10e、第1の判定部10f、および第1のフラグ付与部10gは、特許請求の範囲に記載の第1の選択部を構成し、第2の画像データ取得部10j、第2の判定部10k、および第2のフラグ付与部10lは、特許請求の範囲に記載の第2の選択部を構成している。
【0087】
(制御部10の第1の変形例)
制御部10の第1の変形例において、第1の判定部10fによる判定結果が否だった場合(すなわち、先端332からニードル33内に1つの細胞が吸引されていない場合)、第1の判定部10fは、先端332からニードル33内に吸引された細胞の数がいくつであるかを判定(例えば3個)するように構成されていてもよい。この場合、第1の変形例の制御部10は、上記第1の画像データに対して、第1の判定部10fが判定した細胞の数(例えば3個)を関連付ける第1の関連付け部(
図2には不図示)を、第1のフラグ付与部10gに代えて備えている。
【0088】
上記第1の関連付け部が上記第1の画像データと、上記細胞の数とを関連付ける方法は、限定されるものではない。例えば、(1)上記第1の関連付け部は、上記第1の画像データと、上記細胞の数とを関連付けるデータベースを作成し、該データベースをコンピュータの記憶媒体に格納しておき、(2)第1の判定部10fが細胞の数を判定するたびに、上記第1の関連付け部は、上記データベースを更新するように構成されていてもよい。また、例えば、上記第1の関連付け部は、第1の判定部10fが細胞の数を判定するたびに、上記細胞の数を上記第1の画像データのヘッダに追記するように構成されていてもよい。
【0089】
同様に、制御部10の第1の変形例において、第2の判定部10kによる判定結果が否だった場合(すなわち、先端332からPCRチューブPij内に1つの細胞が吐出されていない場合)、第2の判定部10kは、先端332からPCRチューブPij内に吐出された細胞の数がいくつであるかを判定(例えば3個)するように構成されていてもよい。この場合、第1の変形例の制御部10は、上記第2の画像データに対して、第2の判定部10kが判定した細胞の数(たとえば3個)を関連付ける第2の関連付け部(
図2には不図示)を、第2のフラグ付与部10lに代えて備えている。第2の関連付け部が上記第2の画像データと、上記細胞の数とを関連付ける方法は、第1の関連付け部の場合と同様に限定されるものではない。
【0090】
(制御部10の第2の変形例)
また、第1の判定部10fは、先端332からニードル33内に1つの細胞が吸引されたか否かを判定する工程を省略し、先端332からニードル33内に吸引された細胞の数がいくつであるかを判定するように構成されていてもよい。同様に、第2の判定部10kは、先端332からPCRチューブPij内に1つの細胞が吐出されたか否かを判定する工程を省略し、単に、先端332からPCRチューブPij内に吐出された細胞の数がいくつであるかを判定するように構成されていてもよい。これらの場合、上記第1の関連付け部は、上記第1の画像データに対して、第1の判定部10fが判定した細胞の数(例えば3個)を関連付け、上記第2の関連付け部は、上記第2の画像データに対して、第2の判定部10kが判定した細胞の数(たとえば3個)を関連付けるように構成されていればよい。
【0091】
なお、上記第1の画像データと、上記細胞の数とを上記第1の関連付け部が関連付ける方法、および、上記第2の画像データと、上記細胞の数とを上記第2の関連付け部が関連付ける方法は、上述した第1の変形例の場合と同様に、限定されるものではない。
【0092】
(制御部10の第3の変形例)
なお、上述した第1の変形例においては、第1の判定部10fによる判定結果が否だった場合に限り、第1の判定部10fは、上記細胞の数を判定し、第1のフラグ付与部10gは、上記第1の画像データに対して、上記細胞の数を関連付けるものとして説明した。しかし、第1の判定部10fによる判定結果に関わらず、第1の判定部10fは、上記細胞の数を判定し、第1のフラグ付与部10gは、上記第1の画像データに対して、上記細胞の数を関連付けるように構成されていてもよい。
【0093】
同様に、第2の判定部10kによる判定結果に関わらず、第2の判定部10kは、上記細胞の数を判定し、第2のフラグ付与部10lは、上記第2の画像データに対して、上記細胞の数を関連付けるように構成されていてもよい。
【0094】
なお、上記第1の画像データと、上記細胞の数とを上記第1の関連付け部が関連付ける方法、および、上記第2の画像データと、上記細胞の数とを上記第2の関連付け部が関連付ける方法は、上述した第1の変形例の場合と同様に、限定されるものではない。
【0095】
(第1の実施形態のまとめ)
第1の実施形態に係る細胞搬送システム1は、複数の細胞が収容されている第1の容器(シャーレSH)から1又は複数の細胞を吸引し、該1又は複数の細胞の各々を、それぞれ、1又は複数の第2の容器(PCRチューブPij)の各々に吐出するニードル33と、上記第1の容器(シャーレSH)内にニードル33の先端332が位置する場合に、先端332近傍を観察する第1の顕微鏡(顕微鏡11)と、上記第2の容器(PCRチューブPij)内または第2の容器(PCRチューブPij)の開口APの上方に先端332が位置する場合に、先端332近傍を観察する第2の顕微鏡(顕微鏡13)と、を備えている。
【0096】
上記の構成によれば、第1の容器(シャーレSH)内において細胞を観察する第1の顕微鏡(顕微鏡11)と、第2の容器(PCRチューブPij)内において細胞を観察する第2の顕微鏡(顕微鏡13)とを別個に用意することができるので、第1の顕微鏡(顕微鏡11)および第2の顕微鏡(顕微鏡13)の各々として、それぞれの用途に適した構成の顕微鏡を用意することができる。したがって、細胞搬送システム1は、第1の容器(シャーレSH)から第2の容器(PCRチューブPij)へ細胞を搬送する細胞搬送システム1であって、第1の容器(シャーレSH)内において細胞をピッキングするときに加えて、第2の容器(PCRチューブPij)内において細胞を吐出するときにも鮮明な画像を得ることができる。
【0097】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1は、上記第2の容器(PCRチューブPij)内に先端332が位置する場合に、上記第2の顕微鏡(顕微鏡13)の少なくとも一部の位置を調整する第1の調整機構(光学ステージ43)を更に備えている、ことが好ましい。
【0098】
細胞解析においては、第2の容器として、例えばPCRチューブPijのように、容器の開口APの大きさに対して深さが深かったり、底面の厚さが不均一であったりする容器を採用する場合がある。市販されているPCRチューブPijの底面には、PCRプレートPPを射出成形するときに生じる突出部が存在する。
【0099】
第2の顕微鏡(顕微鏡13)を用いて、このようなPCRチューブPij内に位置するニードル33の先端332近傍を観察している場合、第2の容器(PCRチューブPij)内におけるコントラストが強すぎるなどの理由により、細胞を含む鮮明な画像を得られない場合がある。細胞搬送システム1は、このような場合に、第1の調整機構(光学ステージ43)を用いて第2の顕微鏡(顕微鏡13)の少なくとも一部の位置を調整することができるので、第2の容器(PCRチューブPij)内において細胞を含む鮮明な画像を容易に得ることができる。
【0100】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1は、上記第2の容器(PCRチューブPij)内に先端332が位置する場合に、上記第2の容器(PCRチューブPij)の位置を調整する第2の調整機構(ステージ22)を更に備えていてもよい。
【0101】
また、第2の容器(PCRチューブPij)内におけるコントラストが強すぎるなどの理由により、細胞を含む鮮明な画像を得られない場合に、第1の調整機構(光学ステージ43)に代えて第2の調整機構(ステージ22)を用いて第2の容器(PCRチューブPij)の位置を調整してもよい。第2の調整機構(ステージ22)を用いても、第2の容器(PCRチューブPij)内において細胞を含む鮮明な画像を容易に得ることができる。
【0102】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1は、上記第2の容器(PCRチューブPij)内に先端332が位置する場合に、先端332の位置を調整する第3の調整機構(細胞搬送ロボット30)を更に備えていてもよい。
【0103】
また、第2の容器(PCRチューブPij)内におけるコントラストが強すぎるなどの理由により、細胞を含む鮮明な画像を得られない場合に、第1の調整機構(光学ステージ43)および第2の調整機構(ステージ22)に代えて第3の調整機構(細胞搬送ロボット30)を用いて先端332の位置を調整してもよい。第3の調整機構(細胞搬送ロボット30)を用いても、第2の容器(PCRチューブPij)内において細胞を含む鮮明な画像を容易に得ることができる。
【0104】
なお、細胞搬送ロボット30を用いて先端332の位置を調整した場合、アーム制御部10aは、調整前の先端332の位置を記憶部に格納しておき、次の第2の容器(例えばPCRチューブPij+1)へ先端332を挿入するときには、記憶部に格納しておいた調整前の先端332の位置に先端332を位置させるようにアーム32を制御することが好ましい。
【0105】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1は、上記第2の容器(PCRチューブPij)に対して照明光を照射する光源17a,17b,17cの少なくとも何れかの位置を調整する第4の調整機構を更に備えていてもよい。
【0106】
また、第2の容器内におけるコントラストが強すぎるなどの理由により、細胞を含む鮮明な画像を得られない場合に、第1~第3の調整機構(光学ステージ43、ステージ22、および細胞搬送ロボット30)に代えて第4の調整機構(例えばマグネットベースとヒンジとを備えたマウント)を用いて光源の位置を調整してもよい。第4の調整機構(例えばマグネットベースとヒンジとを備えたマウント)を用いても、第2の容器(PCRチューブPij)内において細胞を含む鮮明な画像を容易に得ることができる。
【0107】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1は、上記第2の容器(PCRチューブPij)に対して照明光を照射する、互いに異なる場所に配置された複数の光源17a,17b,17cと、複数の光源17a,17b,17cのなかから点灯させる光源を選択する第2の選択部10hと、を更に備えていてもよい。
【0108】
上記の構成によれば、細胞搬送システム1は、第4の調整機構(例えばマグネットベースとヒンジとを備えたマウント)を備えている場合と同様の効果を奏する。
【0109】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1において、上記第2の顕微鏡(顕微鏡13)は、倍率を切り替える切り替え機構(例えばズームレンズ)を更に備えていることが好ましい。
【0110】
上記の構成によれば、作業者は、第2の容器(PCRチューブPij)内を観察する場合の倍率を容易に切り替えることができる。例えば、第2の容器(PCRチューブPij)内の広い領域を観察したい場合には、作業者は、相対的に低い倍率を選択することができ、第2の容器(PCRチューブPij)内の狭い領域を観察したい場合には、作業者は、相対的に高い倍率を選択することができる。したがって、細胞搬送システム1,2は、作業者の使い勝手を向上させることができる。
【0111】
また、第1の一実施形態に係る細胞搬送システム1において、上記1又は複数の第2の容器は、複数の第2の容器であって、該複数の第2の容器の各々は、マトリクス状に配置された複数のPCRチューブPijであり、ニードル33は、上記第1の容器(シャーレSH)から複数の細胞を吸引し、且つ、該複数の細胞の各々を、上記複数のPCRチューブPijの各々に吐出する、ことが好ましい。
【0112】
上記の構成によれば、ニードル33を用いて複数の細胞を吸引したうえで、複数のPCRチューブPijの各々に細胞を1つずつ吐出することができる。例えば、シャーレSH内からニードル33を用いて8個の細胞を吸引したうえで、
図1に示したPCRチューブP31~P38の各々に細胞を1つずつ吐出することができる。そのため、多数の細胞を1つずつPCRチューブPijに単離・分注する場合に、第1の容器(シャーレSH)内に先端332が位置する状態と、第2の容器(PCRチューブPij)内に先端332が位置する状態とを切り替える回数を(上述した場合であれば、例えば8回から1回に)削減することができる。したがって、多数の細胞を1つずつPCRチューブPijに単離・分注する場合に要する手間および時間を削減することができる。
【0113】
なお、PCRプレートPPにおいて、隣接するPCRチューブPijとPCRチューブPij+1との間隔は、予め定められたピッチPxであり、隣接するPCRチューブPijとPCRチューブPi+1jとの間隔は、予め定められたピッチPyである。したがって、この場合には、PCRチューブPij内に位置する先端332から細胞を吐出するたびに、アーム制御部10aは、ニードル33を上方へ退避させるようにアーム32を制御し、第1のステージ制御部10dは、次のPCRチューブPij+1が予め定められた位置にくるように、ピッチPxだけ外枠22aを左方向へ移動させるようにステージ機構22cを制御し、アーム制御部10aは、ニードル33を下方へ移動させることによって先端332がPCRチューブPij+1内に位置するようにアーム32を制御してもよい。制御部10の各機能ブロックがこれらのように構成されていることによって、複数のPCRチューブPijの各々に細胞を連続して吐出する工程を自動化(機械化)することができる。
【0114】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1において、上記第1の顕微鏡(顕微鏡11)の光軸である第1の光軸(光軸AL1)と、上記第2の顕微鏡(顕微鏡13)の光軸である第2の光軸(光軸AL2)とは、互いに異なる場所に位置し、上記第1の光軸(光軸AL1)上または上記第2の光軸(光軸AL2)上に先端332を位置させるように、ニードル33を移動させる移動機構(細胞搬送ロボット30)を更に備えている、ことが好ましい。
【0115】
上記の構成によれば、第1の光軸(光軸AL1)と第2の光軸(光軸AL2)とが互いに異なる場所に位置しているため、第1の容器(シャーレSH)の位置および第2の容器(PCRチューブPij)の位置を交換することなく、第1の容器(シャーレSH)内に先端332が位置する状態と、第2の容器(PCRチューブPij)内に先端332が位置する状態とを切り替えることができる。したがって、上述した2つの状態を切り替える場合に、第1の容器(シャーレSH)に収容された液体(培養液CF1)および第2の容器(PCRチューブPij)に収容された液体(培養液CF2)がこぼれることを防ぎ、かつ、細胞の位置が移動してしまい改めて細胞を探す手間が生じることを抑制できる。
【0116】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1において、上記第1の顕微鏡(顕微鏡11)は、複数のレンズ(レンズ群11a)と、該複数のレンズ(レンズ群11a)により結像された画像を表す第1の画像データを生成する第1の撮像素子(撮像素子11b)と、を備え、上記第1の画像データを上記第1の撮像素子(撮像素子11b)から取得する第1の画像データ取得部10eと、上記第1の画像データが表す上記画像を参照して、先端332からニードル33内に1つの細胞が吸引されたか否かを判定する第1の判定部10fと、第1の判定部10fによる判定結果が否である場合に、該第1の画像データに対して、1つの細胞が吸引されていない旨を示すフラグを付与する第1のフラグ付与部10gと、を備えた第1の制御部(制御部10の一部)を更に備えている、ことが好ましい。
【0117】
上記の構成によれば、先端332からニードル33内に1つの細胞が吸引されたか否かを作業者に代わってコンピュータの制御部10が判定する。したがって、多数の細胞を1つずつ第1の容器から単離する場合に要する手間および時間を削減することができる。また、先端332からニードル33内に1つの細胞が吸引されなかった場合に、第1のフラグ付与部10gは、1つの細胞が吸引されていない旨を示すフラグを第1の画像データに対して付す。そのため、細胞解析を行う場合に、細胞を各第1の容器(シャーレSH)からニードル33に吸引したときに、そのニードル33に何個の細胞が吸引されていたかを特定することができる。
【0118】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1において、上記第2の顕微鏡(13)は、複数のレンズ(レンズ群13a)と、該複数のレンズ(レンズ群13a)により結像された画像を表す第2の画像データを生成する第2の撮像素子(撮像素子13b)と、を備え、上記第2の画像データを上記第2の撮像素子(撮像素子13b)から取得する第2の画像データ取得部10jと、上記第2の画像データが表す上記画像を参照して、先端332から上記第2の容器(PCRチューブPij)内に1つの細胞が吐出されたか否かを判定する第2の判定部10kと、第2の判定部10kによる判定結果が否である場合に、該第2の画像データに対して、1つの細胞が吐出されていない旨を示すフラグを付与する第2のフラグ付与部10lと、を備えた第2の制御部(制御部10の一部)を更に備えている、ことが好ましい。
【0119】
上記の構成によれば、先端332から第2の容器(PCRチューブPij)内に1つの細胞が吐出されたか否かを作業者に代わってコンピュータの制御部10が判定する。したがって、多数の細胞を1つずつ第2の容器(PCRチューブPij)に分注する場合に要する手間および時間を削減することができる。また、先端332から第2の容器(PCRチューブPij)内に1つの細胞が吐出されなかった場合に、第2のフラグ付与部10lは、1つの細胞が吐出されていない旨を示すフラグを第2の画像データに対して付す。そのため、細胞解析を行う場合に、細胞を各第2の容器(PCRチューブPij)内に吐出したときに、その第2の容器(PCRチューブPij)内に1つの細胞が吐出されたか否かを特定することができる。
【0120】
先端332からニードル33内に1つの細胞が吸引されたか否かを第1の判定部10fが判定するアルゴリズム、および、先端332から上記第2の容器(PCRチューブPij)内に1つの細胞が吐出されたか否かを第2の判定部10kが判定するアルゴリズムの各々としては、既存のアルゴリズム(例えば、Takashi Kamatani, et. al., "Construction of a system using a deep learning algorithm to count cell numbers in nanoliter wells for viable single-cell experiments", SCIENTIFIC REPORTS, 7: 16831, December 4, 2017,参照)を適宜採用することができる。
【0121】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1において、上記第1の顕微鏡(顕微鏡11)は、複数のレンズ(レンズ群11a)と、該複数のレンズ(レンズ群11a)により結像された画像を表す第1の画像データを生成する第1の撮像素子(撮像素子11b)と、を備え、上記第1の画像データを上記第1の撮像素子(撮像素子11b)から取得する第1の画像データ取得部10eと、上記第1の画像データが表す上記画像を参照して、先端332からニードル33内に吸引された細胞の数を判定する第1の判定部10fと、該第1の画像データに対して、第1の判定部10fが判定した上記細胞の数を関連付ける第1の関連付け部(不図示)と、を備えた第1の制御部を更に備えていてもよい。
【0122】
上記の構成によれば、先端332からニードル33内に吸引された細胞の数を、作業者に代わってコンピュータの制御部10が判定する。したがって、多数の細胞を1つずつ第1の容器から単離する場合に要する手間および時間を削減することができる。また、第1の関連付け部は、上記第1の画像データに対して、第1の判定部10fが判定した上記細胞の数を関連付ける。そのため、細胞解析を行う場合に、細胞を各第1の容器(シャーレSH)からニードル33に吸引したときに、そのニードル33に吸引された細胞の数を特定することができる。
【0123】
また、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1において、上記第2の顕微鏡(13)は、複数のレンズ(レンズ群13a)と、該複数のレンズ(レンズ群13a)により結像された画像を表す第2の画像データを生成する第2の撮像素子(撮像素子13b)と、を備え、上記第2の画像データを上記第2の撮像素子(撮像素子13b)から取得する第2の画像データ取得部10jと、上記第2の画像データが表す上記画像を参照して、先端332から上記第2の容器(PCRチューブPij)内に吐出された細胞の数を判定する第2の判定部10kと、該第2の画像データに対して、第2の判定部10kが判定した上記細胞の数を関連付ける第2の関連付け部(不図示)と、を備えた第2の制御部(制御部10)を更に備えていてもよい。
【0124】
上記の構成によれば、先端332から第2の容器(PCRチューブPij)内に吐出された細胞の数を、作業者に代わってコンピュータの制御部10が判定する。したがって、多数の細胞を1つずつ第2の容器(PCRチューブPij)に分注する場合に要する手間および時間を削減することができる。また、第2の関連付け部は、上記第2の画像データに対して、第2の判定部10kが判定した上記細胞の数を関連付ける。そのため、細胞解析を行う場合に、細胞を各第2の容器(PCRチューブPij)内に吐出したときに、その第2の容器(PCRチューブPij)内に吐出された細胞の数を特定することができる。
【0125】
第1の実施形態に係る細胞搬送システム1は、複数の細胞が収容されている第1の容器(シャーレSH)から1又は複数の細胞を吸引し、且つ、該1又は複数の細胞の各々を、それぞれ、1又は複数の第2の容器(PCRチューブPij)の各々に吐出するニードル33と、上記第1の容器(シャーレSH)内にニードル33の先端332が位置する場合に、先端332近傍を観察する第1の顕微鏡(顕微鏡11)を配置する領域と、上記第2の容器(PCRチューブPij)内に先端332が位置する場合に、先端332近傍を観察する第2の顕微鏡(顕微鏡13)と、を備えているとも表現できる。
【0126】
換言すれば、本発明の一態様は、第1の実施形態に係る細胞搬送システム1から顕微鏡11を省略した構成であってもよい。
【0127】
当該構成によれば、上記領域に第1の光軸(光軸AL1)が位置するように第1の顕微鏡(顕微鏡11)を配置することによって、第1の容器(シャーレSH)から第2の容器(PCRチューブPij)へ細胞を1個ずつ単離・分注する場合に、第1の容器(シャーレSH)内において細胞をピッキングするときに加えて、第2の容器(PCRチューブPij)内において細胞を吐出するときにも鮮明な画像を得ることができる。このように本発明の一態様は、細胞搬送システム1において、第1の顕微鏡(顕微鏡11)が配置されていない状態も含む。
【0128】
第1の顕微鏡(顕微鏡11)が配置されていない状態の細胞搬送システム1を入手した作業者は、所望のスペックに応じた顕微鏡を第1の顕微鏡(顕微鏡11)として選択し、上記領域に配置することができる。したがって、作業者の自由度を高めることができる。なお、第1の顕微鏡(顕微鏡11)は、市販されている顕微鏡の中から選択してもよいし、自作してもよい。
【0129】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る細胞搬送システム2ついて、
図4を参照して説明する。
図4は、細胞搬送システム2の概略を示す断面矢視図である。
【0130】
細胞搬送システム2は、細胞搬送システム1と同様に、シャーレSHからPCRチューブPijへ細胞を搬送する細胞搬送システムである。したがって、本実施形態では、シャーレSHおよびPCRチューブPijに関する説明を省略する。
【0131】
(細胞搬送システム2の構成)
細胞搬送システム2は、
図4に示した、顕微鏡61,63、光源67a,67b、ステージ70、および、細胞搬送ロボット80と、
図4に図示していない、光学ステージおよび除振台と、を備えている。
【0132】
細胞搬送システム2は、細胞搬送システム1の顕微鏡11,13、光源17a,17b、ステージ(ステージ21,22)、および、細胞搬送ロボット30の各々を、それぞれ、顕微鏡61,63、光源67a,67b、ステージ70、および、細胞搬送ロボット80に置き換えることによって得られる。
【0133】
顕微鏡61が備えている対物レンズ62は、顕微鏡61の対物レンズ12に対応し、顕微鏡63が備えている筐体64およびズームリング65は、顕微鏡13の筐体14およびズームリング15に対応し、ステージ70が備えている外枠70aは、ステージ21の外枠21aおよびステージ22の外枠22aを一体化したものであり、ステージ70が備えているプレート72およびプレート73は、ステージ21のプレート21bおよびステージ22のプレート22bに対応し、ステージ70が備えているステージ機構74は、ステージ21のステージ機構21cおよびステージ22のステージ機構22cを1つにまとめたものであり、細胞搬送ロボット80が備えている主軸81、アーム82、およびニードル83は、細胞搬送ロボット30の主軸31、アーム32、およびニードル33に対応する。
【0134】
細胞搬送システム1では、シャーレSH内にニードル33の先端332が位置する状態と、PCRチューブPij内に先端332が位置する状態とを、シャーレSHおよびPCRチューブPijの各々を移動させることなく、細胞搬送ロボット30を用いてニードル33の位置を移動させることによって切り替えている。換言すれば、細胞搬送システム1において、顕微鏡11の光軸AL1と、顕微鏡13の光軸AL2とは、互いに異なる場所に位置し、細胞搬送ロボット30は、アーム32を用いて、光軸AL1上または光軸AL2上に先端332を位置させるように、ニードル33を移動させる。
【0135】
一方、細胞搬送システム2では、シャーレSH内にニードル33の先端332が位置する状態と、PCRチューブPij内に先端332が位置する状態とを、ニードル83のxy平面内における位置を移動させることなく、ステージ70を用いてシャーレSHおよびPCRチューブPijの各々の位置を移動させることによって切り替えている。換言すれば、細胞搬送システム2において、顕微鏡61および顕微鏡63の各々は、1つの光軸である共通光軸ACを共有しており、特許請求の範囲に記載の移動機構であるステージ70は、共通光軸AC上にシャーレSHまたはPCRチューブPijを位置させるように、少なくともシャーレSHおよびPCRチューブPijを移動させる。
【0136】
細胞搬送システム2は、顕微鏡61と顕微鏡63とが共通光軸ACを共有するために、共通光軸ACの下側の端部を顕微鏡61側または顕微鏡63側に切り替えるミラー68を更に備えている。ミラー68は、y軸方向に沿った回転軸A68を有し、回転軸A68の軸回り方向に回転することによって、共通光軸ACの下側の端部を顕微鏡61側または顕微鏡63側に切り替える。
【0137】
また、顕微鏡63は、顕微鏡13と同様に、特許請求の範囲に記載の第1の調整機構の一例である光学ステージ(例えば
図3に示した光学ステージ43)により支持されている。
【0138】
ステージ70は、シャーレSHおよびPCRプレートPPを載置するためのステージである。外枠71は、プレート72およびプレート73を支持するとともに、ステージ機構74により支持されている。外枠71の位置は、ステージ機構74を用いることにより調整することができる。ステージ機構74は、細胞搬送システム1のステージ機構21cまたはステージ機構22cと同様に構成されている。
【0139】
細胞搬送ロボット80は、主軸81と、アーム82と、ニードル83とを備えている。また、細胞搬送ロボット80は、
図4に示していないポンプを更に備えている。
【0140】
主軸81、アーム82、およびニードル83の各々は、それぞれ、細胞搬送システム1の主軸31、アーム32、およびニードル33と同様に構成されている。ただし、細胞搬送システム2においては、ニードル83の先端(ニードル33の先端332に対応)のxy平面内における位置を移動させる必要がないため、主軸81は、その中心軸周りに回転しなくてもよい。すなわち、細胞搬送ロボット80は、少なくとも、ニードル83の先端の位置をz軸方向に沿った矢印A8の方向に上下動させることができればよい。
【0141】
(第2の実施形態のまとめ)
第2の実施形態に係る細胞搬送システム2は、第1の顕微鏡(顕微鏡61)と、第2の顕微鏡(顕微鏡63)とを備えている。
【0142】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2は、上記第2の顕微鏡(顕微鏡63)の少なくとも一部を調整する第1の調整機構(光学ステージ)を更に備えている、ことが好ましい。
【0143】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2は、上記第2の容器(PCRチューブPij)の位置を調整する第2の調整機構(ステージ70)を更に備えていてもよい。
【0144】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2は、ニードル83の先端の位置を調整する第3の調整機構(細胞搬送ロボット80)を更に備えていてもよい。
【0145】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2は、上記第2の容器(PCRチューブPij)に対して照明光を照射する光源67a,67bの少なくとも何れかの位置を調整する第4の調整機構を更に備えていてもよい。
【0146】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2は、上記第2の容器(PCRチューブPij)に対して照明光を照射する、互いに異なる場所に配置された複数の光源67a,67bと、複数の光源67a,67bのなかから点灯させる光源を選択する第2の選択部(例えば
図2に示した第2の選択部10hに対応)と、を更に備えていてもよい。
【0147】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2において、上記第2の顕微鏡(顕微鏡63)は、倍率を切り替える切り替え機構(例えばズームレンズ)を更に備えていることが好ましい。
【0148】
また、第2の一実施形態に係る細胞搬送システム2において、ニードル83は、上記第1の容器(シャーレSH)から複数の細胞を吸引し、且つ、該複数の細胞の各々を、上記複数のPCRチューブPijの各々に吐出する、ことが好ましい。
【0149】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2において、上記第1の顕微鏡(顕微鏡61)は、複数のレンズ(
図2に示したレンズ群11aに対応)と、該複数のレンズにより結像された画像を表す第1の画像データを生成する第1の撮像素子(
図2に示した撮像素子11bに対応)と、を備え、上記第1の画像データを上記第1の撮像素子から取得する第1の画像データ取得部(
図2に示した第1の画像データ取得部10eに対応)と、上記第1の画像データが表す上記画像を参照して、ニードル83の先端からニードル83内に1つの細胞が吸引されたか否かを判定する第1の判定部(
図2に示した第1の判定部10fに対応)と、第1の判定部による判定結果が否である場合に、該第1の画像データに対して、1つの細胞が吸引されていない旨を示すフラグを付与する第1のフラグ付与部(
図2に示した第1のフラグ付与部10g)と、を備えた第1の制御部(
図2に示した制御部10の一部に対応)を更に備えている、ことが好ましい。
【0150】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2において、上記第2の顕微鏡(63)は、複数のレンズ(
図2に示したレンズ群13aに対応)と、該複数のレンズにより結像された画像を表す第2の画像データを生成する第2の撮像素子(
図2に示した撮像素子13bに対応)と、を備え、上記第2の画像データを上記第2の撮像素子から取得する第2の画像データ取得部(
図2に示した第2の画像データ取得部10jに対応)と、上記第2の画像データが表す上記画像を参照して、ニードル83の先端から上記第2の容器(PCRチューブPij)内に1つの細胞が吐出されたか否かを判定する第2の判定部(
図2に示した第2の判定部10kに対応)と、第2の判定部による判定結果が否である場合に、該第2の画像データに対して、1つの細胞が吐出されていない旨を示すフラグを付与する第2のフラグ付与部(
図2に示した第2のフラグ付与部10lに対応)と、を備えた第2の制御部(制御部10の一部)を更に備えている、ことが好ましい。
【0151】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2において、上記第1の顕微鏡(顕微鏡61)は、複数のレンズ(
図2に示したレンズ群11aに対応)と、該複数のレンズにより結像された画像を表す第1の画像データを生成する第1の撮像素子(
図2に示した撮像素子11bに対応)と、を備え、上記第1の画像データを上記第1の撮像素子から取得する第1の画像データ取得部(
図2に示した第1の画像データ取得部10eに対応)と、上記第1の画像データが表す上記画像を参照して、ニードル83の先端からニードル93内に吸引された細胞の数を判定する第1の判定部(
図2に示した第1の判定部10fに対応)と、該第1の画像データに対して、第1の判定部が判定した上記細胞の数を関連付ける第1の関連付け部(不図示)と、を備えた第1の制御部(
図2に示した制御部10の一部に対応)を更に備えていてもよい。
【0152】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2において、上記第2の顕微鏡(63)は、複数のレンズ(
図2に示したレンズ群13aに対応)と、該複数のレンズ(レンズ群13a)により結像された画像を表す第2の画像データを生成する第2の撮像素子(
図2に示した撮像素子13bに対応)と、を備え、上記第2の画像データを上記第2の撮像素子から取得する第2の画像データ取得部(
図2に示した第2の画像データ取得部10jに対応)と、上記第2の画像データが表す上記画像を参照して、ニードル83の先端から上記第2の容器(PCRチューブPij)内に吐出された細胞の数を判定する第2の判定部(
図2に示した第2の判定部10kに対応)と、該第2の画像データに対して、第2の判定部が判定した上記細胞の数を関連付ける第2の関連付け部(不図示)と、を備えた第2の制御部(制御部10)を更に備えていてもよい。
【0153】
第2の実施形態に係る細胞搬送システム2は、ニードル83の先端近傍を観察する第1の顕微鏡(顕微鏡61)を配置する領域と、第2の顕微鏡(顕微鏡63)と、を備えているとも表現できる。
【0154】
第2の実施形態に係る細胞搬送システム2が上記のように構成されていることにより、細胞搬送システム2は、細胞搬送システム1と同様の効果を奏する。
【0155】
また、第2の実施形態に係る細胞搬送システム2において、上記第1の顕微鏡(顕微鏡61)および上記第2の顕微鏡(顕微鏡63)の各々は、1つの光軸である共通光軸ACを共有しており、共通光軸AC上に上記第1の容器(シャーレSH)または上記第2の容器(PCRチューブPij)を位置させるように、少なくとも上記第1の容器(シャーレSH)および上記第2の容器(PCRチューブPij)を移動させる移動機構(ステージ70)を更に備えていてもよい。
【0156】
上記の構成によれば、第1の顕微鏡(顕微鏡61)および第2の顕微鏡(顕微鏡63)が1つの光軸である共通光軸ACを共有しているため、第1の光軸(光軸AL1)と第2の光軸(光軸AL2)とが互いに異なる場所に位置している細胞搬送システム1と比較して、2つの顕微鏡を配置するための空間を狭くすることができる。すなわち、細胞搬送システム2は、細胞搬送システム1と比較してコンパクト化を図ることができる。
【0157】
〔第3の実施形態〕
(ソフトウェアによる実現例)
細胞搬送システム1の制御部10の制御ブロック(特に、第1の画像データ取得部10e、第1の判定部10f、第1のフラグ付与部、第2の画像データ取得部10j、第2の判定部10k、および第2のフラグ付与部10l)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0158】
後者の場合、細胞搬送システム1の制御部10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0159】
なお、細胞搬送システム2の制御部の制御ブロックについても、細胞搬送システム1の制御部10の制御ブロックと同様である。
【0160】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
1,2 細胞搬送システム
SH シャーレ(第1の容器)
PP PCRプレート
Pij,P31~P38 PCRチューブ(第2の容器)
AP 開口
10 制御部
10e,10j 第1の画像データ取得部,第2の画像データ取得部
10f,10k 第1の判定部,第2の判定部
10g,10l 第1のフラグ付与部,第2のフラグ付与部
10h 第2の選択部(選択部)
11,61 顕微鏡(第1の顕微鏡)
11a レンズ群(複数のレンズ)
11b 撮像素子
AL1 光軸(第1の光軸)
13,63 顕微鏡(第2の顕微鏡)
13a レンズ群(複数のレンズ)
13b 撮像素子
AL2 光軸(第2の光軸)
AC 共通光軸
16a,16b,17a,17b,17c,67a,67b 光源
21 ステージ
22 ステージ(第2の調整機構)
70 ステージ(第2の調整機構、移動機構)
30 細胞搬送ロボット(第3の調整機構、移動機構)
80 細胞搬送ロボット(第3の調整機構)
31,81 主軸
32,82 アーム
33,83 ニードル
43 光学ステージ(第1の調整機構)