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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】耕耘爪
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/10 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A01B33/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019235700
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021103945
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598087818
【氏名又は名称】日本ホーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 亮人
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-345828(JP,A)
【文献】特開昭51-085904(JP,A)
【文献】特開2017-201915(JP,A)
【文献】実開昭56-020403(JP,U)
【文献】特許第6298573(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00 - 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機の回転軸に取り付けられる耕耘爪であって、
爪本体部と、
前記爪本体部の表面及び裏面に設けられ、前記爪本体部よりも硬質な硬質部とを備え、
前記爪本体部は、
刃縁側に位置し、表面及び裏面が互いに平行状に形成された薄板部分と、
峰縁側に位置し、前記薄板部分よりも厚い厚板部分とを有し、
前記硬質部は、
前記薄板部分の表面から前記厚板部分の表面にわたって設けられた表面硬質部分と、
前記薄板部分の裏面から前記厚板部分の裏面にわたって設けられた裏面硬質部分とを有し、
前記爪本体部は、断面T字状又は断面逆L字状に形成されている
ことを特徴とする耕耘爪。
【請求項2】
農作業機の回転軸に取り付けられる耕耘爪であって、
爪本体部と、
前記爪本体部の表面及び裏面に設けられ、前記爪本体部よりも硬質な硬質部とを備え、
前記爪本体部は、
刃縁側に位置し、表面及び裏面が互いに平行状に形成された薄板部分と、
峰縁側に位置し、前記薄板部分よりも厚い厚板部分とを有し、
前記硬質部は、
前記薄板部分の表面から前記厚板部分の表面にわたって設けられた表面硬質部分と、
前記薄板部分の裏面から前記厚板部分の裏面にわたって設けられた裏面硬質部分と、
前記薄板部分の刃縁側の端面に設けられた端面硬質部分とを有する
ことを特徴とする耕耘爪。
【請求項3】
爪本体部における薄板部分と厚板部分との段差は、硬質部の存在によって外部から認識不能となっている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の耕耘爪。
【請求項4】
表面硬質部分は、薄板部分の表面の全部及び厚板部分の表面の少なくとも一部にわたって設けられ、
裏面硬質部分は、薄板部分の裏面の全部及び厚板部分の裏面の少なくとも一部にわたって設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の耕耘爪。
【請求項5】
薄板部分の厚さ寸法は、0.5mmよりも大きく6mm以下である
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一記載の耕耘爪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機の回転軸に取り付けられる耕耘爪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された耕耘爪が知られている。
【0003】
この従来の耕耘爪は、金属材料からなる爪本体部と、この爪本体部の表面及び裏面に溶着等により設けられ、当該爪本体部の金属材料よりも硬質な金属材料からなる硬質金属部を備えている。このため、硬質金属部が爪本体部に設けられていない構成に比べて、耐久性は良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】意匠登録第1561894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の耕耘爪においては、例えば爪本体部(母材)が先に摩耗して硬質金属部(溶着金属)がそれに連られて欠けて摩耗してしまう場合等があり、より良好な耐久性が求められている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、耐久性の向上を図ることができる耕耘爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の耕耘爪は、農作業機の回転軸に取り付けられる耕耘爪であって、爪本体部と、前記爪本体部の表面及び裏面に設けられ、前記爪本体部よりも硬質な硬質部とを備え、前記爪本体部は、刃縁側に位置し、表面及び裏面が互いに平行状に形成された薄板部分と、峰縁側に位置し、前記薄板部分よりも厚い厚板部分とを有し、前記硬質部は、前記薄板部分の表面から前記厚板部分の表面にわたって設けられた表面硬質部分と、前記薄板部分の裏面から前記厚板部分の裏面にわたって設けられた裏面硬質部分とを有するものである。
【0008】
請求項2記載の耕耘爪は、請求項1記載の耕耘爪において、爪本体部における薄板部分と厚板部分との段差は、硬質部の存在によって外部から認識不能となっているものである。
【0009】
請求項3記載の耕耘爪は、請求項1又は2記載の耕耘爪において、表面硬質部分は、薄板部分の表面の全部及び厚板部分の表面の少なくとも一部にわたって設けられ、裏面硬質部分は、薄板部分の裏面の全部及び厚板部分の裏面の少なくとも一部にわたって設けられているものである。
【0010】
請求項4記載の耕耘爪は、請求項1ないし3のいずれか一記載の耕耘爪において、薄板部分の厚さ寸法は、0.5mmよりも大きく6mm以下であるものである。
【0011】
請求項5記載の耕耘爪は、請求項1ないし4のいずれか一記載の耕耘爪において、爪本体部は、断面T字状又は断面逆L字状に形成されているものである。
【0012】
請求項6記載の耕耘爪は、請求項1ないし5のいずれか一記載の耕耘爪において、硬質部は、薄板部分の刃縁側の端面に設けられた端面硬質部分を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る耕耘爪を備えた農作業機の側面図である。
図2】同上耕耘爪の側面図である。
図3】同上耕耘爪の平面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る耕耘爪の断面図である。
図6】本発明のさらに他の実施の形態に係る耕耘爪の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図1ないし図4を参照して説明する。
【0016】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、当該トラクタの走行により圃場を進行方向である前方に移動しながら耕耘整地作業(農作業)をするロータリー耕耘機である。
【0017】
農作業機1は、図1に示すように、トラクタの後部の3点リンクに脱着可能に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられ、水平な左右方向の回転中心軸線Xを中心として所定方向(例えばダウンカット方向の回転方向)に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(ロータリー)3と、機体2に上下方向に回動可能に設けられ、耕耘体3の後方で整地作業する整地体(均平板)4とを備えている。
【0018】
機体2は、図示しないトラクタの後部の3点リンクに脱着可能に連結される3点連結部(走行車連結部)11を有している。3点連結部11は、1本のトップマスト12及び左右1対で2本のロワーアーム13等によって構成されている。
【0019】
また、機体2は、トラクタのPTO軸にジョイントを介して接続される入力軸16を回転可能に保持する軸保持部であるミッションケース部17を有している。このミッションケース部17の左右両側には、左右方向に延びるフレーム部であるフレームパイプ部18の内端部が取り付けられている。
【0020】
さらに、左側のフレームパイプ部18の外端部には、一方側の耕耘体支持部であるチェーンケース部19が取り付けられ、また、右側のフレームパイプ部18の外端部には、他方側の耕耘体支持部であるブラケット部(図示せず)が取り付けられている。そして、これら互いに離間対向するチェーンケース部19及びブラケット部間には、耕耘体3が回転中心軸線Xを中心として回転可能に架設されている。なお、チェーンケース部19及びブラケット部には、側板部であるサイドカバー板20が固設されている。
【0021】
また、機体2は、耕耘体3の上方部を覆う耕耘カバー部21を有し、この耕耘カバー部21の後端部には、整地体4が左右方向の軸22を中心として上下方向に回動可能に設けられている。なお、整地体4と機体2との間には、圃場面に対する整地体4の接地圧を調整する接地圧調整手段23が架設されている。また、機体2の前部には、ゲージ輪24が設けられている。
【0022】
耕耘体3は、図1に示すように、入力軸16側からの動力(回転動力)に基づいて回転する水平な左右方向の回転軸である耕耘軸31を有している。この耕耘軸31は、左右方向に細長い丸軸状の軸本体部32と、この軸本体部32の外周面に突設された複数の爪取付部であるフランジ部33を有している。
【0023】
そして、耕耘軸31の各フランジ部33には、耕耘軸31とともに回転中心軸線Xを中心として所定の回転方向に回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪35が取付手段(例えばボルト、ナット等)によって脱着可能に取り付けられている。
【0024】
ここで、耕耘体3の耕耘爪35について詳細に説明する。
【0025】
耕耘爪35は、図2ないし図4に示すように、回転中心P(回転中心軸線X)を中心として所定の回転方向(図中の矢印方向)に回転しながら耕耘作業をする湾曲板状の爪本体部41と、この爪本体部41のうち少なくとも表面及び裏面に溶着等により設けられ、当該爪本体部41よりも硬質で耐摩耗性に優れた肉盛状の摩耗抑制部である硬質部(硬質金属部)42とを備えている。
【0026】
爪本体部(母材)41は、所定の金属材料(例えばSUP6等のばね鋼鋼材)からなるものである。他方、硬質部(溶着金属)42は、爪本体部41を構成する所定の金属材料よりも硬質な金属材料(例えば鋼材にカーバイト、タングステン、クロム、ニッケル等を混合した金属材料等)からなるものである。
【0027】
そして、例えば溶着によって硬質部42を爪本体部41に設ける場合においては、硬質部42を構成することとなる硬質な金属材料の粉末を曲げ加工前の平板状の爪本体部41上に所定の厚さで載置した後、当該粉末を熱で溶かして溶着する方法を利用する。なお、例えば溶射、プラズマ粉末溶接、レーザ粉末溶接等によって硬質部42を設けるようにしてもよい。
【0028】
爪本体部41は、回転方向に対して交差する方向に長手方向を有する湾曲板状のもので、例えば長手方向一端側である基端側(耕耘体3の回転中心P側)から長手方向他端側である先端側(耕耘体3の外周側)に向かって順に連続して位置する3つの部分、すなわち取付基部46、縦刃部47及び横刃部48によって構成されている。
【0029】
換言すると、爪本体部41は、耕耘軸31のフランジ部33に脱着可能に取り付けられる取付基部46と、この取付基部41の先端側の端部に連設された縦刃部47と、この縦刃部47の先端側の端部に連設された横刃部48とを有している。
【0030】
そして、爪本体部41は、縦刃部47から横刃部48にかけて反回転方向側(回転方向とは反対側)に湾曲し、かつ、横刃部48が立ち上げ線Lを基端として一方側である表面側(図2において図面手前側)に徐々に立ち上がるように湾曲している。なお、横刃部48が表面側への湾曲を開始する湾曲開始線である立ち上げ線Lは、縦刃部47と横刃部48との境界線である。
【0031】
また一方、爪本体部41は、回転方向側である刃縁側(回転方向前側)に位置する薄肉状の薄板部分51と、反回転方向側である峰縁側(回転方向後側)に位置し、薄板部分51よりも厚く形成された厚肉状の厚板部分52とを有している。
【0032】
つまり、爪本体部41は、縦刃部47から横刃部48にわたって位置する長手状で断面T字状のT字状部50を有し、このT字状部50が刃縁側の薄板部分51と峰縁側の厚板部分52とで構成されている。なお、図示した例では、爪本体部41のT字状部50は、縦刃部47の中間位置から横刃部48の先端位置までにわたって形成された構成であるが、この構成には限定されず、例えば縦刃部47の基端位置から横刃部48の先端位置までにわたって形成された構成でもよく、また縦刃部47及び横刃部48のいずれか一方の全部又は一部のみに形成された構成等でもよい。
【0033】
そして、図4に示す如く、薄板部分51は、互いに平行状(略平行状を含む)に形成された表面56及び裏面57と、これら表裏面56,57に対して直交する刃縁側の端面58とを有している。つまり、爪の母材の刃縁側が峰側よりも薄く加工されることで爪本体部41には薄板部分51が形成され、この薄板部分51は、表裏相互に平行で平坦な部分(平行な表裏面56,57)を持ったものであって、傾斜状の刃付面を有していない(刃付けなし)。なお、表面56は横刃部48が立ち上げ線Lを基端として立ち上がるように湾曲した側である表面側の面であり、他方、裏面57は当該湾曲した側とは反対側の面である(後述する厚板部分等でも同様である)。
【0034】
また、厚板部分52は、厚さが一定である第1厚板部分(厚さ一定部)61と、厚さが変化する第2厚板部分(厚さ変化部)62とで構成されている。第1厚板部分61は、互いに平行状(略平行状を含む)に形成された表面63及び裏面64と、これら表裏面63,64に対して直交する峰縁側の端面65とを有している。第2厚板部分62は、当該第2厚板部分62の厚さ寸法が薄板部分51側に向かって徐々に減少するようにそれぞれが傾斜状に形成された表面66及び裏面67を有している。そして、第2厚板部分(段差形成部)62によって薄板部分51と第1厚板部分61とが一体に連結され、両表面56,63間及び両裏面57,64間にそれぞれ段差が形成されている。なお、例えば薄板部分51と第1厚板部分61との間に第2厚板部分62が存在しない構成等でもよい。
【0035】
ここで、厚さが一定である薄板部分51の厚さ寸法(図4中のA)は、例えば0.5mmよりも大きく6mm以下で、好ましくは例えば3mmである。厚さが一定である第1厚板部分61の厚さ寸法(図4中のB)は、例えば6mmよりも大きく12mm以下で、好ましくは例えば6mmである。第1厚板部分61の表面63に対する表面硬質部分71の突出寸法(図4中のC)は、例えば1mmよりも大きく5mm以下で、好ましくは例えば3mmである。第1厚板部分61の裏面64に対する裏面硬質部分72の突出寸法(図4中のD)は、例えば1mmよりも大きく5mm以下で、好ましくは例えば3mmである。なお、図示した例では、突出寸法のCとDは等しいが、互いに異なるようにしてもよい。
【0036】
硬質部42は、爪本体部41の薄板部分51の表面の全部(略全部を含む)及び厚板部分52の表面の少なくとも一部にわたって設けられて当該部分を覆う表面硬質部分71と、爪本体部41の薄板部分51の裏面の全部(略全部を含む)及び厚板部分52の裏面の少なくとも一部にわたって設けられて当該部分を覆う裏面硬質部分72とを有している。
【0037】
表面硬質部分71は、第1厚板部分61の表面63にまで延在したものであって、薄板部分51の表面56の全部と、第2厚板部分62の表面66の全部と、第1厚板部分61の表面63の一部(傾斜状の表面66に隣接した表面部分63a)とにわたって連続して設けられている。それゆえ、薄板部分51の表面56と第1厚板部分61の表面63との間の段差(表面側の段差)は、表面硬質部分71の存在によって外部から認識不能である。
【0038】
同様に、裏面硬質部分72は、第1厚板部分61の裏面64にまで延在したものであって、薄板部分51の裏面57の全部と、第2厚板部分62の裏面67の全部と、第1厚板部分61の裏面64の一部(傾斜状の裏面67に隣接した表面部分64a)とにわたって連続して設けられている。それゆえ、薄板部分51の裏面57と第1厚板部分61の裏面64との間の段差(裏面側の段差)は、裏面硬質部分72の存在によって外部から認識不能である。
【0039】
また、表面硬質部分71は、凸状に緩やかに湾曲した湾曲表面73を有しており、この湾曲表面73の一部は第1厚板部分61の表面63よりも表面側に突出して位置する。さらに、この表面硬質部分71のうち、薄板部分51の表面56に設けられた部分、すなわち薄板部分51の表面56を覆う薄板部分被覆部74の厚さ寸法は、刃縁側に向かって徐々に減少しており、刃縁位置では略ゼロである。なお、第1厚板部分61の表面63の表面部分63aを覆う第1厚板部分被覆部75は、第2厚板部分62の表面66を覆う第2厚板部分被覆部76よりも薄く形成されている。
【0040】
同様に、裏面硬質部分72は、凸状に緩やかに湾曲した湾曲表面83を有しており、この湾曲表面83の一部は第1厚板部分61の裏面64よりも裏面側に突出して位置する。さらに、この裏面硬質部分72のうち、薄板部分51の裏面57に設けられた部分、すなわち薄板部分51の裏面57を覆う薄板部分被覆部84の厚さ寸法は、刃縁側に向かって徐々に減少しており、刃縁位置では略ゼロである。なお、第1厚板部分61の裏面64の表面部分64aを覆う第1厚板部分被覆部85は、第2厚板部分62の裏面67を覆う第2厚板部分被覆部86よりも薄く形成されている。
【0041】
また一方、図2に示されるように、爪本体部41の取付基部46には、複数、例えば2つのボルト用孔90が表裏面に貫通して形成されている。同様に、耕耘軸31のフランジ部33にもボルト用孔が表裏面に貫通して形成されており、これら両ボルト用孔にボルトが挿入されてそのボルトにナットが螺合されることで、耕耘爪35が耕耘軸31のフランジ部33に取り付けられる。なお、図2及び図3において、ハッチング部は硬質部(溶着加工部)42である。
【0042】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0043】
農作業機1をトラクタの後部に連結し、このトラクタの走行により農作業機1を前方に移動させると、耕耘体3の耕耘爪35が耕耘軸31とともに回転しながら耕耘作業をし、その後方で整地体4が整地作業をする。
【0044】
そして、この農作業機1の耕耘爪35によれば、爪本体部41よりも硬質な硬質部42は、薄板部分51の表面から厚板部分52の表面にわたって設けられた表面硬質部分71と、薄板部分51の裏面から厚板部分52の裏面にわたって設けられた裏面硬質部分72とを有することから、例えば両硬質部分71,72で挟まれた薄板部分51は摩耗しにくく残るため、両硬質部分71,72が従来に比べて欠けにくくなり、よって、耐久性の向上を図ることができる。
【0045】
しかも、爪本体部41における薄板部分51と厚板部分52との段差は、表面硬質部分71及び裏面硬質部分72からなる硬質部42の存在によって外部から認識不能となっているため、耐久性の向上をより適切に図ることができる。
【0046】
なお、耕耘爪35は、爪本体部41の所定部分が断面T字状に形成された構成には限定されず、例えば図5に示すように、断面T字状のT字状部50に代えて断面逆L字状の逆L字状部100を形成した構成でもよい。
【0047】
この図5に示す耕耘爪35の爪本体部41は、縦刃部47から横刃部48にわたって位置する長手状で断面逆L字状の逆L字状部100を有し、この逆L字状部100が刃縁側の薄板部分51と峰縁側の厚板部分52とで構成されている。そして、この逆L字状100の厚板部分52において、第2厚板部分62は、当該第2厚板部分62の厚さ寸法が薄板部分51側に向かって徐々に減少するように、表面66のみが傾斜状に形成されている。この第2厚板部分62の裏面67は、他の部分の裏面57,64と同一面上に位置しており、裏面側には段差が形成されていない。
【0048】
また、図5に示す硬質部42の表面硬質部分71は、薄板部分51の表面56の全部と、第2厚板部分62の表面66の全部と、第1厚板部分61の表面63の一部(傾斜状の表面66に隣接した表面部分63a)とにわたって連続して設けられており、薄板部分51の表面56と第1厚板部分61の表面63との間の比較的大きな段差が当該表面硬質部分71の存在によって外部から認識不能となっている。
【0049】
さらに、図5に示す硬質部42の裏面硬質部分72は、薄板部分51の裏面57の全部と、第2厚板部分62の裏面67の全部と、第1厚板部分61の裏面64の一部(非傾斜状の裏面67に隣接した表面部分64a)とにわたって連続して設けられているが、この裏面硬質部分72は、表面硬質部分71とは異なり、段差を埋めるものではなく、爪本体部41が有する平坦な裏面に肉盛状(膨出状)に設けられている。なお、段差を埋めた表面硬質部分71は、裏面硬質部分72に比べて厚く形成されている。
【0050】
そして、このような図5に示す耕耘爪35でも、図4に示すものと同様、耐久性の向上を図ることができ、特に表面硬質部分71が裏面硬質部分72に比べて厚く形成されているため、耕耘爪35の表面側の耐久性がより一層良好である。なお、耕耘爪35の表面側が摩耗しやすい場合には上記図5に示す構成が好ましいが、例えば耕耘爪35の裏面側が摩耗しやすい場合には、表裏逆の構成として薄板部分51の裏面57と第1厚板部分61の裏面64との間の比較的大きな段差を裏面硬質部分72の存在で外部から認識できないようにしてもよい。
【0051】
また、図4図5に示す耕耘爪35では、爪本体部41の薄板部分51の刃縁側の端面58には硬質部42が設けられていないが、より一層の耐久性向上のために、当該薄板部分51の刃縁側の端面58にも硬質部(耐摩耗性金属層)42を溶着等により設けてもよい。
【0052】
すなわち、例えば図6に示す耕耘爪35の硬質部42は、爪本体部41の薄板部分51の刃縁側の端面58に設けられた端面硬質部分101を有している。この図6に示す例では、例えば溶着金属が刃縁側の端面(母材板厚部)58にも施工されることにより、爪本体部41の薄板部分51の全体が硬質部42によって覆い隠されているため、耐久性がより一層良好である。
【0053】
なお、上記各実施形態において、例えば耕耘爪35の外面全体に塗装層を設けてもよく、その場合に、例えば爪本体部41と硬質部42とで色が異なるように2色の塗装層を設けるようにしてもよい。
【0054】
また、上記各実施形態に係る耕耘爪35は、耕耘作業を伴う農作業を行う各種の農作業機に用いることが可能である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 農作業機
31 回転軸である耕耘軸
35 耕耘爪
41 爪本体部
42 硬質部
51 薄板部分
52 厚板部分
71 表面硬質部分
72 裏面硬質部分
101 端面硬質部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6