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特許7219922食品の誤った取り扱いおよび誤用の検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】食品の誤った取り扱いおよび誤用の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G01N23/223
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019515793
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 IL2017051073
(87)【国際公開番号】W WO2018055625
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】62/399,561
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518274043
【氏名又は名称】セキュリティ マターズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SECURITY MATTERS LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】518274054
【氏名又は名称】ソレク ニュークリア リサーチ センター
【氏名又は名称原語表記】SOREQ NUCLEAR RESEARCH CENTER
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヨラン,ナダヴ
(72)【発明者】
【氏名】キスレヴ,ツェマフ
(72)【発明者】
【氏名】グロフ,ヤイル
(72)【発明者】
【氏名】アロン,ハッギ
(72)【発明者】
【氏名】カプリンスキー,モア
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/027738(WO,A1)
【文献】特表2008-528443(JP,A)
【文献】特開2011-241312(JP,A)
【文献】特開2005-308713(JP,A)
【文献】特表2009-503521(JP,A)
【文献】特開平11-316200(JP,A)
【文献】特表2007-510796(JP,A)
【文献】特開2005-348667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G06K 19/00-G06K 19/18
C09D 11/00-C09D 13/00
G01N 21/00-G01N 21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間または動物用の製品にXRF同定可能なマークを付ける方法において、前記製品が食品、治療薬および化粧品のなかから選択されるものであり、当該方法が、
前記製品の少なくとも1つの領域上に、少なくとも1つのXRF同定可能な材料のパターンを形成するステップであって、前記パターンが人間の裸眼で見ることができず、前記パターンが、化学組成、組成物に含まれる1または複数の成分の濃度、パターンの構造、パターンのサイズ、およびパターンの形状から選択される予め設定された同定可能な特性を有し、予め設定された特性がXRFにより同定可能なものであるステップ、を含み、
前記XRF同定可能な材料が、人間または動物の使用に安全でXRFにより同定可能な1つ以上の成分を含む組成物の形態であり、
前記パターンを形成するステップおいて、前記XRF同定可能な材料を、前記製品中に添加または混合するステップ;または前記製品の表面、包装材料、もしくは前記製品に付された当該製品に関するラベルに適用するステップ、を含み、
前記マークが、10%~20%の大豆タンパク質と、塩化亜鉛であるマーカーとを含む水溶液から形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記製品が食品であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記XRF同定可能な材料が、溶液中に1%の濃度で存在することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記マークが冷凍前に肉製品に取り付けられることを特徴とする方法。
【請求項5】
人間または動物用の製品を認証するために用いられる請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、当該方法が、
製品の貯蔵および輸送の前に前記パターンを前記製品上に形成するステップと、
前記パターンの少なくとも1つのXRF同定可能な特性を読み取り、参照用に記憶するステップと、
製品の貯蔵および輸送の後に前記パターンを読み取って、前記パターンを同定するとともに、少なくとも1のXRF同定可能な特性が変化したか否かを判定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、XRFにより同定可能な化合物を含むマーカーによって、人間または動物の消費または使用に適した製品をマーキングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品管理プロトコルは、典型的には、製品の安全性を確保するとともに、製造、出荷、貯蔵および使用前の取扱中に製品が維持される条件の破壊を最小限に抑えるために、人間の消費または使用に適した製品に添付される。食品および治療用材料に関する限り、そのようなプロトコルは、製品の完全性および最終的な使用上の安全性に影響を与える、温度の維持および日光への曝露、酸化性物質への曝露および外部刺激を定めている。
【0003】
既存の複雑なグローバルサプライチェーンは消費者が生鮮食品や食料製品を購入することを可能にするが、出荷中の温度の変動やサプライチェーン全体にわたる標準化されていない不連続な管理方法により、エンドユーザが、彼等の健康に対するリスクのある製品を消費または使用する可能性が高まる。
【0004】
製品に存在するXRFマーキングに基づいて製品を識別するために、蛍光X線(XRF)が過去に利用されている。XRFでは、一次X線またはガンマ線放射によって励起された材料からの特徴的な「二次」(または蛍光)X線の放射が検出される。「蛍光」という用語は、特定のエネルギーの放射線を吸収して、異なる(典型的には、より低い)エネルギーの放射線を再放出することを指している。XRF現象は、材料が短波長のX線やガンマ線に曝されるときに、それらが原子の内殻軌道から電子を追い出し、それによってより高い軌道の電子がより低い/内側の軌道に「落ち」、その過程で、関係する2つの軌道間のエネルギー差に等しいエネルギーで光子を放出する、という事実に基づくものである。
【0005】
異なる化学元素は異なる特性エネルギーの電子軌道/殻を有することから、対象物/材料からのXRF応答のスペクトルプロファイルは、化学元素を示し、さらには材料/対象物に含まれる各元素の量を示すものと考えられる。
【0006】
食品、医薬品および化粧品を含む様々な材料のXRFマーキングおよび認証を教示するいくつかの文献(特許文献1-4)が知られているが、既知の方法は何れも、改ざんされた食品や、貯蔵中、取扱中または輸送中に望ましくない取り扱いを受けた製品、または他の方法で鮮度および有用性の1または複数の指標を排除または除外するように改変された製品を検出するのに必要な手段を提供していない。このため、食品などの製品のチルチェーンの変化だけでなく、そのような製品の再パッケージ化または他の方法で完全性を改ざんする試みを監視する能力を有する安全で頑強な方法論の必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2003/0194052号
【文献】米国特許第8,864,038号
【文献】米国特許出願公開第2002/0173042号
【文献】米国特許第8,590,800号
【発明の概要】
【0008】
本明細書に開示の発明は、製品履歴、例えば、製品が、貯蔵中、取扱中または輸送中に改ざんされたか否か、または望ましくない取り扱いを受けたか否か、または他の方法で鮮度および有用性の1または複数の指標を排除または除外するように改変されたか否かについての表示を与えるXRFで同定可能なマーカーによって、人間または動物用の製品またはそのパッケージをマーキングする方法に関するものである。
【0009】
本明細書に開示の技術は、人間または動物による消費のための製品のマーキングのみに限定されるものではなく、取扱、貯蔵および輸送の繋がりが緊密に監視される他の任意の製品も対象とされる。そのような製品はさらに、医薬品、化粧品、動物用製品などであってもよい。
【0010】
マーキング方法は、食品または食品包装、化粧品および医薬製品に対してFDAグレードの材料(または経口摂取可能な物質、特にGRASグレードの物質、または食品着色料または風味増強剤としての使用が認められている物質)の適用または付加に基づくものであり、それにより、それらを認証し、すなわち、製造者の詳細または識別コード、製造日、製造場所、有効期限などのうちの1または複数を有する製品を識別する。マーキングは、追加的または代替的に、マーカーの構成(組成および相変化)、形状および位置の変化を検出および測定することによって以前に製品が受けた相変化が検出されるように、調整されるものであってもよい。特に、本方法は、食品、例えば食肉製品(凍結状態であるか否かにかかわらず)が、以前に解凍を受けたかどうか、あるいはマーキング(抽象的なマーキングまたは特別なマーキング)の有効期限または消費期限が改ざんされたかどうか、または製品の有効期限よりも後の日付に期限を延長するために再適用されたかどうかを検出することを可能にする。
【0011】
すなわち、一態様では、人間または動物用の製品にXRFパターンを付ける方法が提供され、この方法が、製品の少なくともある領域上に、XRFにより同定可能な少なくとも1のFDAグレードの材料のパターンを形成するステップを含み、そのパターンが、人間の裸眼では少なくとも部分的に任意には見ることができず、かつ予め設定された同定可能な特性を有する。
【0012】
本発明はさらに、人間または動物用の製品を認証する方法を提供し、この方法が、商品化の前に製品に少なくとも1のXRF同定可能なマークを形成するステップと、前記マークの少なくとも1のXRF同定可能な特性を読み取って参照用に記憶するステップと、製品の商品化後の任意の時点で前記マークを読み取って、前記マークを同定するとともに、少なくとも1のXRF同定可能な特性が変化したか否かを判定するステップとを含む。マークが形成された後に測定されたものからの、商品化された日より後の時点でのマークの特性の変化は、許可されていない取り扱いまたは誤用、例えばそれによる改ざんを示している。
【0013】
XRFパターンによりマーキングされる製品は、典型的には人間または動物によって使用される製品であり、食品から選択されるものであり、あるいは一般的に、人間または動物の消費のための製品、治療薬、化粧品または他の任意の製品であり、その誤用、誤った取り扱いまたは改ざんが、人間や動物による使用を安全ではないものとする可能性がある製品である。
【0014】
いくつかの実施形態では、製品が食品である。
【0015】
マークは、製品の製造中の任意の時点で、または製品の商品化の前の任意の時点で、製品、例えば食品に形成することができる。本明細書において、「製品の商品化」とは、製品の最終販売前の任意の段階を指し、それには、その製品の貯蔵、取扱および輸送が含まれる。製品上にマークが形成された後の任意の時点、または商品化後の任意の時点、すなわち最終販売前に貯蔵、輸送または一般に取り扱われた後の任意の時点で、製品を認証することができ、または改ざんの可能性について分析することができる。
【0016】
例えば食品のような製品上に形成されたマークは、XRFによって同定可能であり、例えば許可されていない取扱または誤用の判定を可能にする予め設定された特徴を有すると言える。予め設定された特性は、マークの化学組成、組成物に含まれる1または複数の成分の濃度、マークの構造、サイズおよび形状のなかから選択することができる。マークが、その構造的特徴または形状とは無関係に、その成分によって同定可能である場合、マークの組成物は、製品の製造日、製品の製造場所、製品の有効期限などを規定する1または複数の成分を含むように選択されるものであってもよい。このため、例えば、製品に、例えば特定の有効期限を特定する視認可能なマークと、特定の異なる有効期限を同定可能なXRFマークとが添付されている場合、その製品は改ざんされたと言える。
【0017】
同様に、元のマークが、構造または組成とは無関係に、XRFにより同定可能な少なくともFDAグレードの材料で作られており、かつ第1の強度の元の同定可能な信号を有する場合に、XRFにより同定可能なFDAグレードの材料の濃度が低下して元の同定可能な信号の変化に影響を与えるように、元のマークが変化するとき、その製品は改ざんされたと言える。
【0018】
XRFマークが、肉眼で見えるかどうかにかかわらず、特別なマークである場合、それは、製品、製造元、製造日、有効期限、「使用期限」を特定するロゴまたは任意のマークの形態、または他の任意のテキストまたは非テキストのマークであってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、製品内/上に形成されたマークまたはパターンが、温度、酸素、水分、機械的処理、再包装などのような少なくとも1つの外部刺激に反応する。いくつかの実施形態では、XRFにより同定可能な少なくとも1のFDAグレードの材料のパターンが、外部刺激に曝されたときに変化する、予め設定された形状、サイズおよび材料構成(すなわち、どのマーカー材料がどの濃度で使用されるか)を有するように選択されるようにしてもよい。すなわち、予め規定されたパターンは、製品の取り扱いを誤ると、その形成された形状、サイズおよび構成から、異なる予測不可能なパターンに移行する認証マークとして選択される第1の特性を有する。
【0020】
すなわち、本発明はさらに、人間または動物用の製品にXRFパターンでマークを付ける方法を提供し、その方法が、製品の少なくともある領域上に、XRFにより同定可能な少なくとも1のFDAグレードの材料のパターンを形成するステップを含み、そのパターンが第1の特性を有し、この第1の特性が、当該第1の特性から第2の特性への遷移によって外部刺激に応答するものであり、前記遷移が、XRFにより同定可能であり、前記外部刺激への曝露を示すものとなる。
【0021】
本発明に係るマーカーに使用されるFDAグレードの材料は、蛍光X線(XRF)サインによって同定可能な少なくとも1の化合物または元素を含む物質であり、すなわちXRF分析によって(例えば、エネルギー分散蛍光X線分析によって)同定可能である。XRFサインは、XRF分析装置のような適切な分光計によって同定することができる。XRF分析装置は、引用により本明細書中に援用する米国仮特許出願第62/396,412号に記載のXRF分析装置のような、制御されていない環境(例えば、真空条件なし)で動作することができる手持ち式の携帯デバイスである。
【0022】
本発明に従って利用されるマーカーは、極性溶媒または非極性溶媒に可溶性であるか、または製品若しくは包装材料の表面上で一旦乾燥されると不溶性となるものであってもよい。
【0023】
FDAグレードの材料は、製品の構成、安定性、貯蔵寿命、使用性、毒性などに影響を与えることなく、製品に添加することができる任意の材料または添加剤とすることができる。材料は、塩または有機材料の形態、金属イオンの形態または金属-配位子の形態、またはそれらの任意の組合せの形態とすることができる。いくつかの実施形態において、FDAグレードの材料は、XRFサインを有する材料であり、米国の連邦食品医薬品化粧品法(法)のセクション201(s)および409の下でいわゆる一般に安全と認められた(GRAS)材料の中から選択される。GRASリストは、引用により本明細書中に援用される。
【0024】
FDAグレードの材料は、人間または動物の使用において安全であり、同時にXRFによって同定可能である1または複数の元素を含む化合物の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、FDAグレードの材料が、X線またはガンマ線(一次放射線)放射線に応答して、元素に特有のスペクトル特性(すなわち、特定のエネルギー/波長におけるピーク)を有するX線信号(二次放射線)(XRFサインとしてのX線応答信号)を放出する元素の周期表の少なくとも1つの元素であるか、またはそのような元素を含む。そのような応答信号を有する元素は、XRFに反応すると見なされる。
【0025】
いくつかの実施形態では、FDAグレード材料が、元素、または1または複数の元素を含む材料であり、その元素が、同定可能なX線信号を生成する原子エネルギー準位間の電子遷移を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、材料が少なくとも1の金属イオンを含む。いくつかの実施形態では、FDAグレードの材料が、Si、P、S、Cl、K、Ca、Br、Ti、Fe、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、As、Fe、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、LaおよびCeのなかから選択される元素である。他の実施形態では、FDAグレードの材料が、Si、P、S、Cl、K、Ca、Br、Ti、Fe、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、As、Fe、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、LaおよびCeのなかから選択される1または複数の元素を含む材料である。
【0027】
いくつかの実施形態では、FDAグレードの材料が、Cu、K、Zn、Ca、Co、Fe、Mg、NaおよびLiのなかから選択される少なくとも1の元素である。
【0028】
いくつかの実施形態では、FDAグレードの材料が、2またはそれ以上の元素を含むマーカーの組合せであり、各々が、異なる酸化状態において、異なる金属錯体として、異なる配位子として、異なる濃度で存在するものであっても、またはマーキング組成物中の異なる担体に存在するものであってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、FDAグレードの材料の組合せが複数のマーカー元素を含み、各々が、異なる濃度または形態で存在し、組合せ中の特定の元素に特有のスペクトル特性だけでなくそれらの相対濃度にも特有のスペクトル特性を有する固有のサインを可能にする。
【0030】
マーカーの組合せ中のFDAグレードの材料または組成物中の他のマーカーとは無関係のFDAグレードの材料は、金属形態、塩形態、酸化物形態、(化学的または物理的相互作用において)前記1または複数の元素を含むポリマー、有機金属化合物、前記元素の1または複数を含む錯体であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、材料が有機材料の中から選択される。
【0032】
FDAグレードの材料は、とりわけマーキングされる製品およびマーキングの場所に応じて、その溶解度に基づいて選択されるものであってもよい。例えば、製品がその最も外側の表面にマーキングされる場合、材料が有機溶媒に可溶であるように選択されるようにしてもよい。マーキングが製品自体、例えば食品に影響を及ぼす場合、材料は水に可溶であるように選択されるようにしてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、FDAグレードの材料が、製品自体に由来するものではない材料であり、すなわち、それは典型的には食品またはその包装材料の一部を形成しない。材料が製品またはその包装中に存在するような場合、マーキング材料として添加される材料は、存在するものとは異なるものであっても、あるいは製品またはその包装中に通常存在しない量であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、FDAグレードの材料が、以下の表1に記載の材料から選択される。
【0035】
マーカー材料であるFDAグレードの材料は、1または複数のマーキング材料、液体担体および1または複数の添加剤を含む、「インク」配合物もしくはマーキング配合物または組成物に配合することができる。これらの「インク」配合物は、決して1つの適用形態に限定されるものではなく、XRFパターンを形成する何れかの形態に限定されるものではない。マーカーは、液体またはペーストの形態で、またはミンチした状態またはすりつぶした状態(例えば、ひき肉製品)で、製品に添加または混合することができる。さらに、マーカーは、製品のバルク材料と混合することができ、または製品の表面上に、印刷(例えば、卵のような固体製品)、スタンプ押しまたはプレス加工(例えば、肉製品および家禽製品上、および果物および野菜上)により適用することができ、または製品上に噴霧することができる。マーカーは包装およびラベルにも適用することができる。さらに、マーカーは、製品をマーキングするために使用される様々な染料およびインクに加えることができる。
【0036】
本発明の任意のマーキング組成物中のFDAグレード材料の濃度または量は、予め選択されたコードに従って設定することができ、それは、認証段階で、例えば食品上に組成物を適用した後に、XRF分析によって測定することができる。一般に、マーキング組成物は、0.1~10,000ppmの範囲内の予め選択された濃度を有する1または複数のFDAグレードの材料を含むことができ、予め選択された濃度は、特定の製品識別子、製造日や有効期限などの製品に関連する特定の日付、製造場所、製品の内容などについて符号化するように適合されるか、または予め設定されるものであってもよい。いくつかの実施形態では、組成物が、0.1~1,000ppm、0.1~900ppm、0.1~800ppm、0.1~700ppm、0.1~600ppm、0.1~500ppm、0.1~400ppm、0.1~300ppm、0.1~200ppm、0.1~100ppm、0.1~10ppm、0.1~9ppm、0.1~8ppm、0.1~7ppm、0.1~6ppm、0.1~5ppm、0.1~4ppm、0.1~3ppm、0.1~2ppm、0.1~1ppm、1~1,000ppm、1~900ppm、1~800ppm、1~700ppm、1~600ppm、1~500ppm、1~400ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~100ppm、1~90ppm、1~80ppm、1~70ppm、1~60ppm、1~50ppm、1~40ppm、1~30ppm、1~20ppm、1~10ppm、1~9ppm、1~8ppm、1~7ppm、1~6ppm、1~5ppm、1~4ppm、1~3ppm、または1~2ppmの濃度で、少なくとも1つのFDAグレードの材料を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、組成物が、単一の製品をマーキングするのに十分な濃度で少なくとも1のFDAグレードの材料を含む。そのような実施形態では、濃度が、製品の表面上、製品を取り囲む包装材料の表面上、または製品の直ぐ表面上にフィルムを得るのに適したものであり、そのフィルムが本明細書に開示の一形態であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、フィルムが、約0.1~1,000ppm、0.1~900ppm、0.1~800ppm、0.1~700ppm、0.1~600ppm、0.1~500ppm、0.1~400ppm、0.1~300ppm、0.1~200ppm、0.1~100ppm、0.1~10ppm、0.1~9ppm、0.1~8ppm、0.1~7ppm、0.1~6ppm、0.1~5ppm、0.1~4ppm、0.1~3ppm、0.1~2ppm、0.1~1ppm、1~1,000ppm、1~900ppm、1~800ppm、1~700ppm、1~600ppm、1~500ppm、1~400ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~100ppm、1~90ppm、1~80ppm、1~70ppm、1~60ppm、1~50ppm、1~40ppm、1~30ppm、1~20ppm、1~10ppm、1~9ppm、1~8ppm、1~7ppm、1~6ppm、1~5ppm、1~4ppm、1~3ppm、または1~2ppmである。
【0039】
FDAグレードの材料の濃度は、製品の大きさ、製品上に形成されるフィルムまたはマークの特性、並びに、マーキング組成物の安定性と関係がある他のパラメータに基づいて決定されるものであってもよい。任意の典型的な目的に対して、平均して、FDAグレードの材料の量は、製品当たり0.1~10,000ppmとすることができる。マーカーの量は、製品の表面上に均一に分布していてもよく、またはプロセスの表面全体にわたって材料の増分で分布していてもよい。例えば、単一の製品への塗布に適した組成物中のFDAグレードの材料の量が100ppmである場合、10の等しい部分が製品の10の異なる領域に塗布されるように組成物を塗布することができ、各部分が10ppmのマーカー材料を含むことができる。
【0040】
水溶性のマーカーは、製品または包装の表面上の限定された/局所的な領域に、それが冷凍される前または冷凍プロセス中の予め選択された時間に塗布されるものであってもよい。例えば、肉製品または家禽製品は、凍結前に1または複数のマーカーを含むインクでスタンプすることができる。同様に、マーカーは、冷凍される食品に付けられる紙のラベルまたは果物または野菜に印刷されるものであってもよい。食品が(包装の内側または外側で)冷凍されると、マーカーはそれらが最初に適用された表面領域に無限に留まり、製品上のそれらの形状および位置を維持する。しかしながら、一旦食品が解凍されると、水滴が食品上に凝縮して、表面およびマーカーを濡らす。マーカーは水中で溶解可能であるため、解凍プロセスは最初に局所的にあったマーカーをより広い領域にわたって広げ、それによって最初のマークされた領域上のその濃度を減少させ、マークされた領域の近傍内(以前にマークされていない領域上)のマーカーの濃度を増加させる。この影響は、マーカーの濃度を測定することができるリーダ(すなわち、XRF分析装置)を使用して測定することができる。
【0041】
肉製品または家禽製品のようなある種の製品では、マークされた表面領域の濡れは食品自体によっても引き起こされ、冷凍および解凍プロセスが、製品内に最初に保持されている水性または油性の液体を表面にも移動させる。例えば、肉または家禽では、冷凍が細胞壁に損傷を与え、その結果、解凍時に、新鮮な肉において組織内に保持されている水性液体が肉の表面に運ばれて、マーカーを溶かす可能性がある。
【0042】
マーカーの溶解および拡散の不可逆過程により、本発明の方法は、食品の種類およびその表面を考慮してXRFリーダを較正することによって、予め選択された閾値温度より高い温度に食品が留まる時間の測定を可能にする。
【0043】
本発明のマーキングは、様々な方法によって正確かつ局所的に施すことができる。すなわち、XRF読取装置によって読取/測定される表面領域と比較して比較的細い境界線による領域である。したがって、食品が相変化を受けたかどうか(例えば、解凍されたかどうか)を検出する際に、マークされた領域におけるマーカーの濃度が減少したかどうか、あるいは(マーカーがより広い領域に拡散したことを示す)マークされた領域の近傍におけるマーカーの濃度が増加したかどうかを測定することができる。測定の精度を向上させるために、両方の領域を測定することもできる。
【0044】
食品の局所的な表面領域に塗布されたマーカーが溶けてより広い領域に広がったという目に見える表示を提供するために、マーカーを染料およびインクと混合することができる。
【0045】
本発明に従って利用されるマーカーは、食品の表面上またはバルク内でのそれらの濃度が予め選択されたコードに従って設定されるように、食品に添加または適用されるものであってもよい。したがって、マーカーを用いて情報を符号化することができる。特に、製造日および/または製品が冷凍または解凍された日のようなサプライチェーンまたは製造プロセスに関する情報である。
【0046】
上述したように、マーカーは、液体またはペーストの形態の食品、化粧品または医薬品のバルク材料中、あるいは粒状形態のそのような製品、または粉砕された製品に、機械的混合またはスプレーによって混合することができる。製品のバルク材料をマーキングすることにより、製品が希釈されているか否か、または(マークされていない)より低い品質の製品または望ましくない添加物と混合されているか否かを検出することが可能となる。例えば、液体食品、特にアルコール製品、香水またはクリームなどの化粧品および医薬品などである。
【0047】
別の例では、ひき肉のような粒状食品または粉砕食品は、ミンチプロセス中またはミンチプロセス後に、エアロゾル形態のマーカーを噴霧することができ、あるいはマーカーと機械的に混合することができる。例えば、ひき肉のマーキングは、ひき肉が冷凍されるように、あるいは新鮮な状態で販売されるように選択されるのか否かに関する情報を含むことができる。そのようなマーキングは、解凍した期限切れの肉を新鮮なひき肉と一緒にミンチにするという違法な慣行(一部の国では一般的)により、新鮮な肉に含まれるマーカーの濃度が低下するため、そのような違法な慣行に対する対策として使用することができる。
【0048】
上述したように、パターンを形成する方法は、パターンのあらゆる変化、すなわち予め設定された特性、例えば上記の第1の特性からのあらゆる逸脱の容易な検出を可能にする。したがって、第1および第2の特性が異なる場合、その製品は誤って取り扱われたか、または改ざんされたと言うことができ、よって人間または動物が使用する場合に安全ではない可能性がある。第1および第2の特性が同じである場合、その製品は意図した通りに取り扱われたと言える。検出の感度およびマーカーの濃度の測定の分解能は、XRFリーダにより受信されるXRF信号を処理および強化するための様々な方法によって高めることができ、例えば、信号対雑音比を改善することができる。例えば、そのような方法が、本明細書に引用により援用されるPCT/IL2016/050340に記載されている。
【0049】
すなわち、本発明は、関連する少なくとも1のXRF同定可能なマーキングを有する製品を提供するものであり、マーキングが、マーキングの化学組成、マーキングに含まれる1または複数の成分の濃度、マーキングの位置、形状などのうちの1または複数に基づいて、製品を特定するコードとしての予め設定された特性を有する。予め設定された特性は、その表面の形状、質感および/または滑らかさなどのマークされた製品の特徴、並びに、製品の表面と、製品および/または製品を照射するエミッタから到来するX線信号を検出する検出器との間の距離や、エミッタおよび検出器などに対する製品の表面の向きなどのXRF信号の測定パラメータにも依存し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、予め設定された特性が、当該予め設定された(第1の)特性から第2の特性に遷移することによって外部刺激に応答するものであり、前記遷移が、XRFによって同定可能であり、前記外部刺激への曝露を示すものとなる。
【0051】
本発明はさらに、製品の取り扱いの誤りを判定するための方法を提供し、その方法が:
- 製品上にXRF同定可能パターンを形成するステップであって、そのパターンが外部刺激に反応する第1の特性を有する、ステップと、
- 製品にX線またはガンマ線放射を照射するステップと、
- 製品に適用されたX線またはガンマ線放射に応答して製品から到来するX線信号を検出するステップと、
- 検出したX線信号にスペクトル処理を適用して、第1の特性の存在、不存在または任意の変化を示すデータを取得するステップとを備える。
【0052】
XRF法はさらに、(i)波長スペクトルプロファイルからの周期成分およびトレンドを抑制してフィルタリングされたプロファイルを得るために、製品に適用されたX線またはガンマ線放射に応答して製品から到来するX線信号の検出部分の波長スペクトルプロファイルをフィルタリングするステップと、(ii)予め設定された特性を満たすフィルタリングされたプロファイル内の1または複数のピークを識別し、それにより1または複数のピークの波長を利用して製品に含まれる材料のサインを識別することを可能にするステップとを含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、この方法が、製品にX線またはガンマ線放射を照射するステップと、製品に適用された放射に応答して製品から到来するX線信号の一部を検出するステップと、検出したX線信号にスペクトル処理を適用して、あるX線帯域内のその波長スペクトルプロファイルを示すデータを取得するステップとを備える。
【0054】
いくつかの実施形態では、波長と、任意選択的には1または複数のピークの大きさとを使用して、製品に含まれる材料の種類および場合によっては濃度も示す材料データを判定し、それによって製品が受けた変化または誤用を判定する。
【0055】
すなわち、一態様では、本発明が、人間または動物用の製品にXRF同定可能マークを付ける方法を提供し、この方法が、製品の少なくともある領域上に、XRFにより同定可能な少なくとも1のFDAグレードの材料のパターンを形成するステップを含み、そのパターンが、人間の裸眼では少なくとも部分的に任意には見ることができず、かつ予め設定された同定可能な特性を有し、前記製品が、食品、治療薬および化粧品のなかから選択される。
【0056】
さらに、人間または動物用の製品を認証する方法が提供され、この方法が、商品化の前に製品に少なくとも1のXRF同定可能なマークを形成するステップと、前記マークの少なくとも1のXRF同定可能な特性を読み取って参照用に記憶するステップと、製品の商品化後の任意の時点で前記マークを読み取って、前記マークを同定するとともに、少なくとも1のXRF同定可能な特性が変化したか否かを判定するステップとを含み、製品が、食品、治療薬および化粧品のなかから選択される。
【0057】
本発明はさらに、食品、治療薬および化粧品のなかから選択される製品にXRFパターンでマークを付ける方法を提供し、この方法が、製品の少なくともある領域上に、XRFにより同定可能な少なくとも1のFDAグレードの材料のパターンを形成するステップを含み、そのパターンが第1の特性を有し、この第1の特性が、当該第1の特性から第2の特性への遷移によって外部刺激に応答するものであり、前記遷移が、XRFにより同定可能であり、前記外部刺激への曝露を示すものとなる。
【0058】
本発明のすべての方法のいくつかの実施形態では、製品が食品である。
【0059】
本発明のすべての方法のいくつかの実施形態では、FDAグレードの材料が少なくとも1のGRAS材料である。
【0060】
いくつかの実施形態では、材料が、Cu、K、Zn、Ca、Co、Fe、Mg、NaおよびLiのなかから任意に選択される少なくとも1の金属イオンを含む。
【0061】
本発明はさらに、少なくとも1のFDAグレード材料と、少なくとも1の担体とを含むインク配合物を提供し、少なくとも1のFDAグレード材料が、XRFによって識別可能であり、インク配合物が、任意選択的には少なくとも1の食品に適用するためのものである。
【0062】
すなわち、製品の取り扱いの誤りを判定するための方法が提供され、この方法が:
- 製品上にXRF同定可能パターンを形成するステップであって、前記パターンが外部刺激に反応する第1の特性を有する、ステップと、
- 前記製品にX線またはガンマ線放射を照射するステップと、
- 前記製品に適用されたX線またはガンマ線放射に応答して製品から到来するX線信号を検出するステップと、
- 検出したX線信号にスペクトル処理を適用して、第1の特性の存在、不存在または任意の変化を示すデータを取得するステップとを備える。
【0063】
本発明はさらに、XRF同定可能マークを人間用の卵に付ける方法を提供し、この方法が、卵の少なくともある領域上に、XRFにより同定可能な少なくとも1のFDAグレードの材料のパターンを形成するステップを含み、前記パターンが、人間の裸眼では少なくとも部分的に任意には見ることができず、かつ予め設定された同定可能な特性を有する。
【0064】
人間用の卵を認証する方法が提供され、この方法が、商品化の前に卵に少なくとも1のXRF同定可能なマークを形成するステップと、前記マークの少なくとも1のXRF同定可能な特性を読み取って参照用に記憶するステップと、卵の商品化後の任意の時点で前記マークを読み取り、前記マークを同定するとともに、少なくとも1のXRF同定可能な特性が変化したか否かを判定するステップとを含む。
【0065】
また、卵にXRFパターンでマークを付ける方法が提供され、この方法が、卵の少なくともある領域上に、XRFにより同定可能な少なくとも1のFDAグレードの材料のパターンを形成するステップを含み、そのパターンが第1の特性を有し、この第1の特性が、当該第1の特性から第2の特性への遷移によって外部刺激に応答するものであり、前記遷移が、XRFにより同定可能であり、かつ前記外部刺激への曝露を示すものとなる。
【0066】
本発明のすべての方法のいくつかの実施形態では、マークが、Cu、Co、FeおよびMnのなかから選択される1~30%の金属を含む溶液から形成される。金属は、錯体または金属イオンとして存在するものであってもよい。
【0067】
本発明はさらに、人間用の肉製品を認証する方法を提供し、この方法が、商品化の前に製品に少なくとも1のXRF同定可能なマークを形成するステップと、前記マークの少なくとも1のXRF同定可能な特性を読み取って参照用に記憶するステップと、製品の商品化後の任意の時点で前記マークを読み取り、前記マークを同定するとともに、少なくとも1のXRF同定可能な特性が変化したか否かを判定するステップとを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、マークが、大豆タンパク質などの10%~20%の担体と、マーカーとを含む水溶液から形成され、マーカーが、任意選択的には塩化亜鉛である。
【0069】
いくつかの実施形態では、マーカーが1%の濃度で存在し、任意選択的には、冷凍前に肉製品に取り付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0070】
実施例1:肉製品のマーキング
肉をマーキングするために、10%~20%の大豆タンパク質(粉の形態で)を含む溶液を、マーカーである塩化亜鉛を肉に結合させるためのバインダとして水に溶解する。マーカーを1%の濃度で溶液に添加する。
【0071】
冷凍する前に、溶液を、ゴム製スタンプを使用してスタンプすることにより、新鮮な肉に塗布する。溶液は肉組織の表面に結合する。その後、肉を冷凍し、冷凍の間、溶液はそのまま肉の表面に残る。マーカーの亜鉛および/または塩化物成分の濃度は、蛍光X線分析によって読み取ることができる。肉が解凍されると、溶液が希釈されて、塩化亜鉛マーカーが、マークされた領域近傍の以前にマークされていない領域へと移動する。その結果、マーク中の亜鉛および/または塩化物の濃度が、それらの領域で増加し、最初にマークされた領域で減少する。一方または両方のマーカー成分の濃度のそれら変化は、XRF分析によって読み取ることができる。
【0072】
同じ大豆タンパク質溶液に使用できる代替的なマーカーは、クエン酸亜鉛である。
【0073】
実施例2:肉のマーキングに使用できる追加的な溶液
前の実施例で使用されたマーカー、すなわち塩化亜鉛およびクエン酸亜鉛は、代替的には、ブドウ糖果糖液糖(HFCS)(コーンスターチから製造された甘味料)に添加されるものであってもよい。溶液は、HFCSに溶解した約1%のマーカーを含有する。
【0074】
実施例3:冷凍食品中の温度変化を検出するための溶液
水中のプロピレングリコール(E1520)の溶液を、10%~60%の範囲の濃度で使用する。不凍剤としてプロピレングリコールを使用する。溶液の融解/凍結温度は、以下の表2に示すように、プロピレングリコールの濃度に従って設定される。
【0075】
例えば、水中に36%のプロピレングリコールおよび1%の塩化亜鉛(または代替的にはクエン酸亜鉛)を含む溶液を使用して、-18℃の温度で輸送すべき肉製品に、マークを付けることができる。マークは、新鮮である間に様々な手段、例えばゴム印によって肉に付けられ、その後、-18℃で凍結される。次いで、スタンプされた領域およびその近傍におけるマーカーの濃度を読み取って、参照のために記憶する。例えば不適切な輸送条件下において、肉の温度が-18℃を超えて上昇した場合、溶液は液体へと相転移することとなる。液体形態では、溶液が少なくとも最初にマークされた領域の近傍へと移動し、それにより、最初にマークされた領域内のマーカーの濃度が減少し、その領域の近傍における濃度が上昇する。マーカー濃度のそれらの変化は、XRF分析によって測定可能である。溶液中のプロピレングリコールの濃度を調整することによって、溶液の融解温度を調整することが可能である。したがって、この方法を使用することにより、貯蔵中または輸送中の温度が予め選択された温度から逸脱したか否かを検出することができる。
【0076】
上記溶液に対して、(E102およびE103)のような食品着色剤を約10%の濃度で添加してマーキングを見えるようにすることが可能である。
【0077】
実施例4:卵のマーキング
卵をマーキングするために、1%~30%の濃度の表1の化合物の1または複数を、水とアルコールの混合物、または一般に使用される水ベースまたはアルコールベースの卵インク(通常、水、アルコールおよび有機顔料の混合物を含む)に添加する。例えば、緑色食品着色剤として使用される最大10%の銅錯体クロロフィル(E141)の溶液を、水とアルコールの混合物に、または水、アルコールおよび有機顔料を含む卵インクに添加することができる。溶液は、一般的に使用されている卵印刷デバイス、卵スタンプ機、または手動印刷によって卵殻に印刷することができる。マーカー(銅錯体クロロフィル)は、XRF分析を使用して検出することができ、よって、例えば卵の素性を認証するために使用することができる。マーカー(E141)を複数の濃度で混合することにより、かつ/または表1の追加の化合物を水/アルコール混合物に添加することにより、例えば卵の生産日や追加情報を示すことができるコードを溶液に導入することができる。