(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】感圧転写修正テープ
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B43L19/00 Z
(21)【出願番号】P 2018045133
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶太朗
(72)【発明者】
【氏名】青木 一央
(72)【発明者】
【氏名】阪本 昭弘
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126241(JP,A)
【文献】特開2012-193250(JP,A)
【文献】実開平01-139598(JP,U)
【文献】特開2017-071198(JP,A)
【文献】特開2013-208898(JP,A)
【文献】特開2014-195994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00- 7/50
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又はプラスチックフィルムよりなる剥離基材の片面に、少なくとも、修正被覆層と、粘着層とが順次積層されてなる感圧転写層を有する感圧転写修正テープであって、
前記修正被覆層が、吸油量が100~
230ml/100gの範囲である多孔質シリカと、酸価が180mgKOH/g以上である酸変性ロジンを含有
し、かつ、前記酸変性ロジンを、修正被覆層を形成する固形分の総量に対して0.2~10質量%含有することを特徴とする感圧転写修正テープ。
【請求項2】
多孔質シリカと酸変性ロジンの比率が、99/1~10/90(質量比)である請求項1に記載の感圧転写修正テープ。
【請求項3】
修正被覆層中の多孔質シリカの含有量が0.3~20質量%である請求項1
または2に記載の感圧転写修正テープ。
【請求項4】
多孔質シリカが、珪酸もしくは珪酸塩をゲル化させてなるコロイド状シリカである請求項1~
3のいずれかに記載の感圧転写修正テープ。
【請求項5】
修正被覆層が、さらに、合成ゴム及びエラストマーから選択される少なくとも一種のバインダー樹脂を含有する請求項1~
4のいずれかに記載の感圧転写修正テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙面などに記録された文字などを隠蔽修正するために使用される感圧転写修正テープに関する。詳細には、ボールペンインクなどの耐ブリード性に優れる感圧転写修正テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン、万年筆、マーキングペンなどの筆記具による筆記描線やタイプライター、PPCコピーによるコピー描線など、消しゴムなどでは消せないものを消去・修正する際には、一般に修正液や自動巻き取り機構を持ったカセットタイプの感圧転写修正テープが用いられている。修正液でこのような誤字などを修正した際には、修正液の乾燥時間が長いことや、修正箇所が平滑になり難いために再筆記・再印字し難いという問題があり、現在では感圧転写修正テープが多用されている。
【0003】
感圧転写修正テープは、紙やプラスチックフィルムよりなる剥離基材の片面に、修正被覆層を形成する塗工用インク(以下、「修正被覆層インク」と称する。)を塗布・乾燥して修正被覆層を形成した後、その上に粘着層を形成することにより製造される。修正被覆層インクは、白色顔料として酸化チタン、充填剤として炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、カオリン、珪藻土などの体質顔料、バインダー樹脂などを、分散剤を用いて溶媒に分散させたものが一般的である。
【0004】
しかしながら、修正被覆層に含まれているバインダー樹脂や分散剤は溶剤系修正被覆層インクが多いことに対応して非極性のものが多い。そのため、特に極性有機溶剤を主成分とする高極性、高表面張力のボールペンインクなどの筆記線を感圧転写修正テープで隠蔽した際に、使用環境によって、隠蔽した筆記線が経時で修正被覆層表面に浮き出る現象(ブリード現象)が生じることがある(すなわち、耐ブリード性不良となる)。結果として、隠蔽したはずの文字が読み取れてしまう、あるいは、修正被覆層の上に書き込んだ文字と重なり合って読み取りにくくなってしまう。
【0005】
さらに、近年、インクの粘度を低下させることで書き味(例えば、潤滑性、筆記時カスレなど)を向上させた油性ボールペンインクが開発されている。特許文献1に記載の発明では、主溶剤として従来使用されていた芳香環を含むアルコール類溶剤ではなく、分子内に芳香環を持たないアルコール類溶剤(すなわち、より高極性の有機溶剤)を用いることで、書き出し時の筆記カスレの抑制や滑らかな筆記感に優れた油性ボールペンインクが得られている。このような油性ボールペンインクに使用される有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3ブタンジオール、3―メトキシブタノール、3―メトキシ―3―メチル―1―ブタノールなどが挙げられる。
【0006】
このような、より高極性の有機溶剤が使用されている油性インクの筆記線に対しては、修正被覆層におけるブリード現象はより顕著なものとなってしまう。
【0007】
特許文献2には、バインダー樹脂として、酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂、充填剤として、吸油量が280~430ml/100gのシリカを隠蔽層(修正被覆層)中に3~35質量%含有させることで、「隠蔽した紙面上の筆記などからインクがブリードして、隠蔽層を通して視認できるようになるのを防止する」(すなわち、耐ブリード性を向上させる)方法が提案されている。
【0008】
かかる構成では、吸油量の大きい多孔質シリカの添加により耐ブリード性を向上しているが、同時にバインダー樹脂のバインド力も低下するため、隠蔽層が脆弱になり粉々に崩れやすくなるという問題を生じる。また、この問題を解決するために、ポリエステル樹脂を添加しているが、柔軟性が低く塗膜追従性や耐クラック性が低下するおそれがある。
【0009】
特許文献3には、充填剤として、吸油量が150g/100g以下のシリカを隠蔽層(修正被覆層)中に3~50重量%含有させることにより、耐ブリード性を向上させる方法が提案されており、表面積が小さく、液体の吸収性の少ないシリカを添加することで、水性インクの浸透、着色剤の表面への移行を防止する方法が提案されている。しかし、吸油量が低いシリカでは、前述のような高極性油性インクに対する耐ブリード性は不十分なままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-107595号公報
【文献】特開2013-208898号公報
【文献】特開2007-083627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、離型処理が施された紙やプラスチック基材(以下、剥離基材と称する。)に少なくとも修正被覆層と粘着層が順次積層されてなる感圧転写層を有する感圧転写修正テープであって、修正被覆層の柔軟性、切れ性、再筆記性を良好に保ちつつ、ボールペンなど、油性インクや水性インクを搭載した筆記具による筆記線の耐ブリード性を向上させた感圧転写修正テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、修正被覆層に、多孔質シリカと酸変性ロジンを含有させることにより、とくに油性インクを用いた筆記具の筆記線の耐ブリード性が向上するとともに、修正被覆層インクの塗工性、塗膜の柔軟性、切れ性、再筆記性も良好であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0014】
(1)紙又はプラスチックフィルムよりなる剥離基材の片面に、少なくとも、修正被覆層と、粘着層とが順次積層されてなる感圧転写層を有する感圧転写修正テープであって、
前記修正被覆層が、吸油量が100~230ml/100gの範囲である多孔質シリカと、酸価が180mgKOH/g以上である酸変性ロジンを含有し、かつ、前記酸変性ロジンを、修正被覆層を形成する固形分の総量に対して0.2~10質量%含有することを特徴とする感圧転写修正テープ。
(2)多孔質シリカと酸変性ロジンの比率が、99/1~10/90(質量比)である前記(1)に記載の感圧転写修正テープ。
(3)修正被覆層中の多孔質シリカの含有量が0.3~20質量%である前記(1)または(2)に記載の感圧転写修正テープ。
(4)多孔質シリカが、珪酸もしくは珪酸塩をゲル化させてなるコロイド状シリカである前記(1)~(3)のいずれかに記載の感圧転写修正テープ。
(5)修正被覆層が、さらに、合成ゴム及びエラストマーから選択される少なくとも一種のバインダー樹脂を含有する前記(1)~(4)のいずれかに記載の感圧転写修正テープ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボールペンなど、油性インクや水性インクを搭載した筆記具で筆記した筆記線が、修正被覆層表面に浮き出ることを防止でき、耐ブリード性に優れる感圧転写修正テープを提供することができる。また、修正被覆層インクの塗工性(特にチキソトロピー性)、成膜性(乾燥性)が良好であり、修正被覆層の柔軟性、耐クラック性、切れ性、再筆記性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の感圧転写修正テープは、紙またはプラスチックフィルムよりなる剥離基材の片面に、少なくとも修正被覆層と粘着層が順次積層されてなる感圧転写層を有する感圧転写修正テープであって、前記修正被覆層が多孔質シリカと、酸変性ロジンを含有することを特徴とするものである。
【0018】
多孔質シリカは、その吸油量が100ml/100g以上であることが好ましい。そうであれば、修正被覆層のインクの吸収性、特に油性インクの吸収性が向上するため、高温・高湿条件下における耐ブリード性が良好なものとなり、隠蔽した筆記線が経時で浮き出る現象が生じるのを防止できる。また、多孔質シリカの吸油量が320ml/100g以下であることが好ましい。そうであれば、修正被覆層インクの塗工性及び修正被覆層の柔軟性、耐クラック性が著しく悪化することがない。
【0019】
多孔質シリカの吸油量は、インクの吸収性、塗工性、耐クラック性のバランスを考慮すると、160~230ml/100gであることがより好ましく、180~230ml/100gであることが特に好ましい。
【0020】
多孔質シリカの吸油量は、JIS K5101-13-1:2004「顔料試験方法-第13部:吸油量-第1節:精製あまに油法」により測定される。
【0021】
多孔質シリカの平均粒径は、2~10μm程度が好ましい。この平均粒径は、レーザー散乱法により計測される値である。
【0022】
多孔質シリカとしては、ゾルゲル法、沈降法などで製造されたものを、それぞれ単独で、または、同一もしくは異なる製法で製造されたものを2種以上組み合わせて用いることができる。多孔質シリカとしては、例えば、富士シリシア化学株式会社製の「サイリシア」、「サイロホービック」、水澤化学工業株式会社製の「Mizukasil」、PQ Corporation製の「GASIL」、AGCエスアイテック株式会社製の「サンスフェア Hシリーズ、Lシリーズ、ETシリーズ」、東ソー・シリカ株式会社製の「NIPGEL」などが挙げられる。
【0023】
上記多孔質シリカのなかでも、ゾルゲル法で製造されたものが好ましい。例えば、珪酸もしくは珪酸塩(例えば、珪酸ソーダ)を、硫酸などの無機酸と反応させてシリカゾルを得、該シリカゾルを水洗した後、乾燥したものを好適に使用できる。乾燥したものを所定の粒度となるように粒度調整したものがより好ましい。ゾルゲル法による多孔質シリカとそれ以外の製法による多孔質シリカを併用する場合は、ゾルゲル法による多孔質シリカを50質量%以上用いることが望ましい。
【0024】
多孔質シリカの配合量は、修正被覆層を形成する固形分の総量に対して、0.3~20質量%であることが好ましく、より好ましくは1~10質量%、特に好ましくは2~5質量%である。多孔質シリカの配合量が0.3質量%以上であると、修正被覆層のインク吸収性が不十分となり耐ブリード性向上効果が不十分となる恐れがない。また、多孔質シリカの配合量が20質量%以下であると、修正被覆層の隠蔽性が保持され、隠蔽力不十分となる恐れがないうえ、さらにビヒクルの吸収や多孔質シリカの凝集に起因する粘度増加による塗工性悪化の恐れもない。
【0025】
酸変性ロジンは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの原料ロジンと、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)シトラコン酸、(無水)イタコン酸などの不飽和カルボン酸を、ディールス・アルダー反応(付加反応)させて得られるものである。原料ロジンは、蒸留、再結晶、抽出などにより金属などの不純物を除去し、樹脂の色調向上のために精製したものを用いることが好ましい。また、酸変性ロジンは、水添することにより、透明な色調の酸変性ロジンにすることができる。このような酸変性ロジンとしては、パインクリスタル(登録商標)KE-604、パインクリスタル(登録商標)KR-120(以上、荒川化学工業株式会社)が挙げられる。
【0026】
これらの酸変性ロジンは、カルボキシル基を2個以上有しているため、染料捕獲性に優れている。また、顔料分散剤としても機能するため、より均一な顔料分散系を得る事が出来る。そのため、耐ブリード性が向上し、酸価が高いほど高い効果が期待できる。酸変性ロジンの酸価は、180mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは230mgKOH/g以上、特に好ましくは250mgKOH/g以上である。また、詳しい作用は定かになっていないが、このような酸変性ロジンを修正被覆層インクに配合することによりインク粘度が低下する現象が見られる。
【0027】
酸変性ロジンの酸価とは、酸変性ロジン1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数と定義される数値であり、JIS K5902(1969)「5.4 酸価」にて規定された方法により測定することができる。酸変性ロジン2gを三角フラスコ300mLに正確にはかり採り、エチルアルコール・ベンゼン混合液50mLに溶かし、フェノールフタレインを指示薬として1/2規定(28.05g/L)のエチルアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、30秒間微紅色の消失しないときを中和の終点とし、滴定に用いたエチルアルコール性水酸化カリウム溶液の体積と濃度から中和に要した水酸化カリウムのmg数を算出する。
【0028】
酸変性ロジンの色調は、ハーゼン色調で200以下であることが好ましい。色調が良好であることにより、修正被覆層の着色、経時劣化による変色を防止することができる。また、酸変性ロジンの軟化点は、100℃以上であることが好ましい。軟化点が高い酸変性ロジンを用いることにより、修正被覆層の耐熱性向上、耐経時劣化性、切れ性が良好になる。軟化点は、環球法(JIS K5902)による測定値である。
【0029】
酸変性ロジンの配合量は、修正被覆層を形成する固形分の総量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~5質量%、特に好ましくは0.4~2質量%である。酸変性ロジンの配合量が0.1質量%以上であれば、修正被覆層のインクの良好な塗工性及び耐ブリード性を確保することができ、10質量%以下であれば、修正被覆層の柔軟性が失われることによる転写性の低下やクラックの発生が生じにくくなる。
【0030】
酸変性ロジンを前記多孔質シリカと併用することで、インクの塗工性及びチキソトロピー性が良好になり、耐ブリード性を良好に保ちつつ、均一で柔軟性に富んだ修正被覆層を得ることができる。この場合、多孔質シリカと酸変性ロジンの併用比は、各成分の特性にもよるが、多孔質シリカ/酸変性ロジン=99/1~10/90(質量比)の範囲が好ましく、より好ましくは98/2~20/80(質量比)、特に好ましくは95/5~40/60(質量比)の範囲である。
【0031】
本発明の感圧転写修正テープにおける修正被覆層は、さらに、顔料(色材)、体質顔料、分散剤及びバインダー樹脂を含有する。
【0032】
バインダー樹脂は、顔料や体質顔料のバインダーとして用いられる。例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンゴム(SEBS)、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、ウレタンゴムなどの合成ゴムやエラストマー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、飽和あるいは不飽和の脂環族炭化水素樹脂、ロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂などが挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を組合せて使用することができる。
前記バインダー樹脂の中でも、伸び率が高く、修正被覆層の柔軟性を良好にできるという理由から、合成ゴムやエラストマーの使用が好ましく、特に、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンゴム(SEBS)、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBS)から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0033】
バインダー樹脂の配合量は、修正被覆層を形成する固形分の総量に対して、5~45質量%であることが好ましく、より好ましくは10~30質量%、特に好ましくは15~25質量%である。バインダー樹脂の配合量が5質量%以上であれば、顔料及び体質顔料をまとめることができ、45質量%以下であれば、修正被覆層として柔軟性・切れ性が良好なものとなる。
【0034】
顔料としては、二酸化チタンなどの高隠蔽性白顔料が好ましい。二酸化チタンとしては、高い隠蔽性を示すルチル型、アナターゼ型のいずれも用いることができる。具体的には、チタニックスJR-300、同JR-600A、同JR-801(以上、テイカ株式会社製)、タイピュアR-706、同R-900、同R-901、同R-931(以上、デュポン・ジャパン・リミテッド社製)、タイトーンSR-1、同R-310、同R-650、同R-3L、同A-110、同A-150、同R-5N(以上、堺化学工業株式会社製)、タイペークR-550、同R-580、同R-615、同R-630、同R-830、同R-930、同A-100、同A-220、同CR-58(以上、石原産業株式会社製)、クロノスKR-310、同KR-380、同KR-480、同KA-10、同KA-20、同KA-30(以上、チタン工業株式会社製)、バイエルチタンR-FD-1、同R-FD-2、同R-FB-1、同R-FB-3、同R-KB-3、同R-CK-20(以上、独国、バイエル社製)などが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0035】
体質顔料としては、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸塩、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、上記以外のシリカなどを1種または2種以上混合して用いることができる。例えば、ケイ酸アルミニウムとしては、キョーワード700(協和化学工業株式会社製)などが挙げられ、アルミノケイ酸塩としては、アルミニウムシリケートP-820A(以上、独国、エヴォニック・インダストリーズ社製)などが挙げられ、炭酸マグネシウムとしては、軽質炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製)、炭酸マグネシウムTT(ナイカイ塩業株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
顔料及び体質顔料は、合計で、修正被覆層中に45~85質量%含むことが好ましく、45質量%以上であれば、修正被覆層に十分な隠蔽性を付与することができ、85質量%以下であれば、修正被覆層の塗膜形成性が良好となる。
【0037】
顔料は、修正被覆層中に40質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは50~80質量%である。顔料が40質量%以上であれば、修正被覆層に十分な隠蔽性を付与することができ、80質量%以下であれば修正被覆層の表面が平滑となることで、剥離基材に順次積層された修正被覆層と粘着層とが剥離基材背面に移行するブロッキング現象が生じる恐れがない。
【0038】
分散剤(顔料分散剤)は、顔料の二酸化チタンや体質顔料の分散性を向上させるものであり、使用する顔料や体質顔料の種類に応じて、公知の高分子化合物や界面活性剤などを選択して使用することができる。分散剤として用いる界面活性剤は、ノニオン系、アニオン系及びカチオン系を問わない。例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルノニルフェノールなどのノニオン系界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキルエーテルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤;アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;が挙げられる。
【0039】
さらに、必要に応じて、ベンゾトリアゾールやエチレンジアミン四酢酸塩などの防錆剤、尿素やエチレン尿素などの湿潤剤、ベンゾチアゾリン系やオマジン系などの防腐剤、シリコーン系やアクリル系などの消泡剤、フッ素系界面活性剤などのレベリング剤などの添加剤、あるいはカーボンブラックや酸化鉄、コバルトブルー、群青、クロムグリーン、酸化クロムなどの無機顔料や有機顔料、無機蛍光顔料、有機蛍光顔料、着色樹脂粉、着色樹脂球、加工顔料などの着色剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択して使用することができる。
【0040】
修正被覆層は、剥離基材の片面に修正被覆層インクを塗工し、乾燥して形成する。修正被覆層インクは、有機溶剤、顔料、多孔質シリカ、体質顔料、酸変性ロジン、バインダー樹脂、分散剤、その他所望に応じて加えられる各種添加剤を、所定の割合で混合して調製することが好ましい。調製方法としては、ディスパーザー、サンドミル、ビーズミルなどの分散機を用いれば良い。
【0041】
有機溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、アセトンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は単独または2種以上を組合せて使用することができる。
【0042】
本発明の感圧転写修正テープを構成する剥離基材としては、自動巻取り機構をもつ転写具に適合する曲げ剛性を有するプラスチックフィルム又は紙が好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムを挙げることができる。剥離基材の厚さは3~30μmが好ましく、剥離基材の片面もしくは両面には、必要に応じてシリコーン樹脂、無機顔料や有機顔料を分散させたシリコーン樹脂などの離型層が形成されている。
【0043】
本発明の感圧転写修正テープは、剥離基材の片面に、修正被覆層インクと粘着剤を通常の方法により順次塗工・乾燥して形成される。修正被覆層の厚さは、描線や描画などを修正した際の隠蔽性を確保するために、乾燥後において10~30μmの厚さを有することが好ましい。剥離基材と修正被覆層の厚さの比率は特に限定されないが、一般的には、剥離基材の厚さと修正被覆層の厚さの比が1:0.4~1:4.2の範囲に調整することが好ましい。
【0044】
修正被覆層の上に形成する粘着層は、粘着剤を従来公知の方法で塗工・乾燥することで形成される。粘着剤としては公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂系、ロジン系、ゴム系、ビニル系の粘着剤を挙げることができる。これらの粘着剤は溶剤タイプ、水性タイプのいずれも使用できるが、樹脂エマルジョン系が好ましく、特にアクリル樹脂エマルジョン系粘着剤が好ましい。粘着層の厚さは乾燥後において0.3~5μm程度が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
(実施例1~24及び比較例1~4)
表1に示す割合で、有機溶剤(トルエン)、添加剤、分散剤、酸変性ロジン、バインダー樹脂(ゴム状樹脂、不飽和炭化水素樹脂)を混合し、加温して樹脂類を溶解させた後、多孔質シリカ、顔料(酸化チタン)、体質顔料(炭酸マグネシウム)を加えて攪拌、ディスパーザーにて分散させたミルベースを、さらにビーズミルで分散させて、修正被覆層インク(塗工液)を調製した。また、実施例1を基準として、酸変性ロジンの増量・減量は同質量分の不飽和炭化水素樹脂との代替、多孔質シリカの増量・減量は同質量分の炭酸マグネシウムとの代替にて行った。
【0047】
調製した塗工液を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離基材上に、75μmアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが20~30μmになるように塗工、乾燥して修正被覆層を形成した。形成した修正被覆層の塗膜状態を目視観察し、修正被覆層インクの塗工性を評価した。
【0048】
評価終了後、修正被覆層の上に、アクリルエマルジョン粘着剤を、バーコーターを用いて乾燥後の厚みが0.5~0.8μmになるように塗工・乾燥し、感圧転写修正テープを得た。
【0049】
得られた感圧転写修正テープを裁断小巻し、幅6mm、長さ10mのロール状に巻き付け、市販の感圧転写修正テープカセット(CT-CA6、株式会社トンボ鉛筆製)に装填した。
【0050】
[酸変性ロジン]
・パインクリスタルKR-120(酸価320(mgKOH/g)、軟化点120℃、色調150ハーゼン、荒川化学工業株式会社製)
・パインクリスタルKE-604(酸価240(mgKOH/g)、軟化点130℃、色調150ハーゼン、荒川化学工業株式会社製)
・ハリマックT-80(酸価185(mgKOH/g)、軟化点85℃、色調8以下ガードナー、ハリマ化成株式会社製)
[ロジンエステル]
・エステルガムAA-L(酸価7(mgKOH/g)以下、軟化点82℃以上、色調WW以上USDA、荒川化学工業株式会社製)
【0051】
[多孔質シリカ]
・サイシリア350(吸油量320(ml/100g)、ゾルゲル法、富士シリシア化学株式会社製)
・サンスフェア(吸油量300(ml/100g)、ゾルゲル法、AGCエスアイテック社製)
・サイシリア370(吸油量280(ml/100g)、ゾルゲル法、富士シリシア化学株式会社製)
・MizukasilP-78F(吸油量230(ml/100g)、ゾルゲル法、水澤化学工業社製)
・サイシリア470(吸油量200(ml/100g)、ゾルゲル法、富士シリシア化学株式会社製)
・MizukasilP-73(吸油量180(ml/100g)、ゾルゲル法、水澤化学工業社製)
・サイシリア550(吸油量160(ml/100g)、ゾルゲル法、富士シリシア化学株式会社製)
・サイシリア710(吸油量100(ml/100g)、ゾルゲル法、富士シリシア化学株式会社製)
・MizukasilP-803(吸油量240(ml/100g)、沈降法、水澤化学工業社製)
【0052】
<評価方法>
(1)修正被覆層インクの塗工性
修正被覆層インクの塗工性を、下記の基準で評価した。
○:修正被覆層インクが均一に塗工された修正被覆層を得ることができる。
△:修正被覆層インクの一部が均一に塗工されず、修正被覆層の一部にヒビ割れが生じる。
×:修正被覆層インクが均一に塗工されず、修正被覆層全体にヒビ割れが生じる。
【0053】
(2)耐クラック性
感圧転写修正テープを上質紙に転写し、23℃-60%RHの環境下にて24hr保存した後、修正被覆層の表面を観察し、下記の基準で評価した。
○:修正被覆層にクラック(ヒビ)の発生が見られない。
△:修正被覆層の一部もしくは端面にクラック(ヒビ)が見られる。
×:修正被覆層全体にクラック(ヒビ)が見られる。
【0054】
(3)再筆記性
感圧転写修正テープを上質紙に転写し、その上よりゲルインクボールペン(サラサ、ボール径0.7mm、インク色・黒、ゼブラ株式会社製)にて筆記、5秒経過後に指で擦過した際の状態を下記の基準で評価した。
○:修正被覆層表面、上質紙表面、および指のいずれにもインクの伸び・付着は無かった。
△:修正被覆層表面、上質紙表面、および指へのインクの伸び・付着は僅かであった。(実使用上差し支え無し)
×:修正被覆層表面、上質紙表面、および指へのインクの伸び・付着が多かった。(実使用上問題あり)
【0055】
(4)耐ブリード性
上質紙上に油性ボールペン(JETSTREAM、ボール径0.7mm、インク色・黒、三菱鉛筆株式会社製)を用いて直線を筆記し、感圧転写修正テープを筆記線上に転写し、60℃-80%RHの環境下にて3hr保存した後、下記の基準で評価した。
◎:修正被覆層表面に、隠蔽したボールペンの直線の浮き出しが無い。
○:修正被覆層表面に、隠蔽したボールペンの直線の一部が極僅かに浮きだしている。
△:修正被覆層表面に、隠蔽したボールペンの直線全体が薄く浮き出している。
×:修正被覆層表面に、隠蔽したボールペンの直線全体が濃く浮き出しており、容易に視認出来る。(実使用上差し支えあり)
【0056】
調製した修正被覆層インクについて、得られた感圧転写修正テープの評価結果を表1、2に示す。
【0057】
表1、表2に示す実施例1~24、比較例1~4の結果より、修正被覆層に多孔質シリカと酸変性ロジンを含有することにより、修正被覆層インクの塗工性を良好に保ちながら、耐クラック性及び再筆記性、さらには耐ブリード性に優れた修正被覆層を備えた感圧転写修正テープが得られることが判った。
【0058】
また、表1に示す実施例1~24の結果より、前記多孔質シリカの吸油量が100ml/100g以上、320ml/g以下である場合に、修正被覆層の耐ブリード性が良好になる傾向が見られた。さらに、前記多孔質シリカの配合割合は、修正被覆層中の固形分質量総量に対して、0.3質量%以上、特に1%質量以上、20%質量以下、特に10質量%以下である場合に、塗工性及び耐ブリード性に優れる修正被覆層となる傾向が見られた。
【0059】
また、表1に示す実施例1~24の結果より、前記酸変性ロジンの酸価は180mgKOH/g以上のものを使用できることが判った。
【0060】
【0061】