(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】量子ドット分散体の製造方法及び量子ドット分散体
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20230202BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20230202BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20230202BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20230202BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230202BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230202BHJP
G02B 5/20 20060101ALN20230202BHJP
C09K 11/70 20060101ALN20230202BHJP
C09K 11/56 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C09D17/00
C09K11/02 Z
C09B67/46 B
B82Y20/00
B82Y40/00
G03F7/004 507
G03F7/004 501
G03F7/004 504
G02B5/20
C09K11/70
C09K11/56
(21)【出願番号】P 2018185557
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】本玉 直哉
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-512614(JP,A)
【文献】国際公開第2018/024592(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 15/00-17/00
C09C 1/00-3/12
G03F 7/004
G02B 5/20-5/28
B82Y 20/00,40/00
C09K 11/00-11/89
C09B 67/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸エステル系分散剤存在下で、非極性有機溶媒(A)と量子ドットを含む液中の非極性有機溶媒(A)を極性有機溶媒(B)に置換する溶媒置換工程を含
み、
リン酸エステル系分散剤は、アミン価が0mgKOH/gである、量子ドット分散体の製造方法。
【請求項2】
リン酸エステル系分散剤は、酸価が50~250mgKOH/gである請求項1記載の量子ドット分散体の製造方法。
【請求項3】
溶媒置換工程が、量子ドット、非極性有機溶媒(A)及び極性有機溶媒(B)を含み、リン酸エステル系分散剤を量子ドット100重量部に対して70~200重量部含むように混合液Aを調製する混合工程Aを含む、請求項1又は2に記載の量子ドット分散液の製造方法。
【請求項4】
溶媒置換工程が、混合工程Aの後、混合液Aから非極性有機溶媒(A)及び極性有機溶媒(B)の一部をそれぞれ除去し、得られた残渣物に極性有機溶媒(B)を混合液B100重量%に対して量子ドット
0.3~5重量%となるように添加して混合液Bを調製する混合工程Bを含む、請求項3に記載の量子ドット分散液の製造方法。
【請求項5】
非極性有機溶媒(A)が、芳香族炭化水素系溶媒である請求項1~4の何れか1項に記載の量子ドット分散体の製造方法。
【請求項6】
極性有機溶媒(B)が、フォトリソグラフィ用途の溶媒である請求項1~
5の何れか1項に記載の量子ドット分散体の製造方法。
【請求項7】
極性有機溶媒(B)が、インクジェット用途の溶媒である請求項1~
5の何れか1項に記載の量子ドット分散体の製造方法。
【請求項8】
量子ドット、リン酸エステル系分散剤及び極性有機溶媒(B)を含み、非極性有機溶媒(A)の含量が0.1~0.5重量%であ
り、
リン酸エステル系分散剤は、アミン価が0mgKOH/gである量子ドット分散体。
【請求項9】
請求項
8に記載の量子ドット分散体を含む硬化膜形成用組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化膜形成用組成物の硬化物を含む表示装置用発光性硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット分散体の製造方法及び量子ドット分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
量子ドットはナノメートルサイズの半導体結晶であるため、量子封じ込めによって電子エネルギー準位間にバンドギャップが生じる。このバンドギャップの大きさは、例えば量子ドットの大きさによって制御可能である。そのため、量子ドットの大きさを制御することで、光学的特性を高度に制御が可能である。例えば、量子ドットの大きさを制御することで、発光する蛍光波長を制御可能である。また、量子ドットは、スペクトル幅の狭い蛍光を発するという特徴を有する。このような特性を有する量子ドットは、例えば画像表示装置の発光表示素子の発光層等の構成材料として利用されている(特許文献1~4)。
【0003】
特許文献1には、バインダーポリマー、重合性化合物、半導体量子ドット(QD)、及び酸性官能基を含む分散剤を含有し、上記分散剤の酸価が5mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である硬化膜形成用組成物が開示されている。このような組成物によれば、QDを含むディスプレイ等においては、時間の経過とともにQDに酸素や水分等が付着することによって、青色発光有機EL素子からの青色光の強度に対して、緑色の蛍光を発するQDからの緑色の蛍光の強度及び赤色の蛍光を発するQDからの赤色の蛍光の強度が低下し、これによりディスプレイの色再現性が低下する場合があるという問題点を解決可能であるとされている。
【0004】
特許文献2には、第13族元素及び第15族元素を含有する半導体物質を含むコア、並びにこのコアの少なくとも一部を被覆し、第12族元素及び第16族元素を含有する化合物を含む1又は複数のシェルを有するコアシェルナノ結晶と、上記コアシェルナノ結晶の少なくとも一部を被覆する第1リガンドとを有するナノ粒子の集合体であって、所定の溶媒中、半値幅が45nmである456.2nmの波長の光で励起したとき、蛍光量子収率が70%以上であり、かつ蛍光半値幅が45nm以下である510nm以上650nm以下の波長の蛍光を発生することを特徴とするナノ粒子集合体及びこれを含む波長変換層が記載されている。このようなナノ粒子集合体及び波長変換層は、蛍光量子収率(PLQY)の低下、蛍光半値幅(FWHM)の悪化や、PLQY、FWHMの経時変化が起こる保存安定性の問題を従来技術よりも良好に回避することが可能であるとともに、感光性パターン形成用材料等に好適であるとされている。
【0005】
特許文献3には、量子ドット、散乱粒子、光重合性化合物、光重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂、および溶剤を含み、前記散乱粒子は、平均粒径が30~1000nmの金属酸化物であることを特徴とする自発光感光性樹脂組成物が記載されている。このような組成物によれば、従来の技術のように量子ドットと散乱粒子を用いてカラーフィルタの光効率の向上を図る際に生じる多層化や散乱粒子の粒径の大きさにより生じる膜厚の増加や塗膜品質の低下という問題点を解決可能であるとされている。
【0006】
特許文献4には、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]光酸発生体、および[C]半導体量子ドットを含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物が記載されている。このような組成物によれば、安全な材料からなる半導体量子ドットを含み、パターニング性を有して、蛍光特性に優れた高信頼性の硬化膜を簡便に形成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-25165号公報
【文献】国際公開第2017/086362号
【文献】特開2016-98375号公報
【文献】特開2014-174406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば前述の従来技術によれば、各特許文献に記載の各種の問題点を相応に解決可能であると考えられる。しかし、本発明者が検討したところ、例えば、市販品又は中間製品(以下、「市販品等」と称する。)として提供されている量子ドットを用いてフォトリソグラフィによる硬化膜形成用組成物及び硬化膜の調製(以下、「フォトリソグラフィ用途」又は「フォトリソグラフィ用」と称する場合がある。)やインクジェット方式による硬化膜形成用組成物及び硬化膜の調製(インクジェット用途」又は「インクジェット用」と称する場合がある。)に適用したところ、量子ドットの凝集が生じたり、或いは、所定の半値幅及び波長の励起光で励起した時に、蛍光の量子収率が低下したり、蛍光の半値幅が拡大したりする場合があることが判明した。
【0009】
さらに検討を進めると、市販品等の溶媒に分散された量子ドットの溶媒を各種用途に使用される溶媒に置換する際に、前述のような状況が生じることが判明した。溶媒の置換は、溶媒に分散された量子ドットを溶媒の沸点以上の温度で加熱乾燥して溶媒を除去した後、所望の溶媒を添加する方法、加熱乾燥させずに濾過等により溶媒を除去して所望の溶媒を添加する方法により行ったが、上記のような状況が生じた。また、市販品等の量子ドットの分散液の溶媒を検討したところ、非極性有機溶媒であることが多く、例えばフォトリソグラフィ用やインクジェット用の溶媒は、極性有機溶媒であることが多いことが判明した。
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、非極性有機溶媒中に分散されている量子ドットを、凝集させることなく、さらに、量子収率の低下及び半値幅の拡大を生じさせることなく、所望の極性有機溶媒中に分散させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題の解決のため、本発明者が鋭意検討を行った結果、リン酸エステル系分散剤の存在下で、溶媒の置換を行うことで上記課題が解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の第一は、リン酸エステル系分散剤存在下で、非極性有機溶媒(A)と量子ドットを含む液中の非極性有機溶媒(A)を極性有機溶媒(B)に置換する溶媒置換工程を含む、量子ドット分散体の製造方法に関する。
【0013】
本発明の実施形態では、リン酸エステル系分散剤は、酸価が50~250mgKOH/gであってよい。
【0014】
本発明の実施形態では、溶媒置換工程が、量子ドット、非極性有機溶媒(A)及び極性有機溶媒(B)を含み、リン酸エステル系分散剤を量子ドット100重量部に対して70~200重量部含むように混合液Aを調製する混合工程Aを含んでもよい。
【0015】
本発明の実施形態では、溶媒置換工程が、混合工程Aの後、混合液Aから非極性有機溶媒(A)及び極性有機溶媒(B)の一部をそれぞれ除去し、得られた残渣物に極性有機溶媒(B)を混合液B100重量%に対して量子ドット0.3~5重量%となるように添加して混合液Bを調製する混合工程Bを含んでもよい。
【0016】
本発明の実施形態では、極性有機溶媒(B)が、フォトリソグラフィ用途の溶媒であってもよいし、インクジェット用途の溶媒であってもよい。
【0017】
本発明の第二は、量子ドット、リン酸エステル系分散剤及び極性有機溶媒(B)を含み、非極性有機溶媒(A)の含量が0.1~0.5重量%である量子ドット分散体に関する。
【0018】
本発明の第三は、前述の量子ドット分散体を含む硬化膜形成用組成物に関する。
【0019】
本発明の第四は、前述の硬化膜形成用組成物の硬化物を含む表示装置用発光性硬化膜に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、量子ドットを分散させた非極性有機溶媒を、極性有機溶媒に置換する際に、量子収率の低下、半値幅の拡大及び量子ドットの凝集を抑制することができる。したがって、非極性有機溶媒中に分散させた状態で提供されることが多い量子ドットを、極性有機溶媒中に分散させる必要がある各種用途への適用を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る量子ドット分散体の製造方法及び量子ドット分散体の実施形態について説明する。
【0022】
本発明の実施形態に係る量子ドット分散体の製造方法は、リン酸エステル系分散剤存在下で、非極性有機溶媒(A)(以下、単に「溶媒A」と称する場合がある。)と量子ドットを含む液中の非極性有機溶媒(A)を極性有機溶媒(B)(以下、単に「溶媒B」と称する場合がある。)に置換する溶媒置換工程を含む。
【0023】
このように、リン酸エステル系分散剤の存在下で溶媒Aを溶媒Bに置換することで、量子ドットの凝集を抑制し、且つ、得られる量子ドット分散体の量子収率の低下及び半値幅の拡大を抑制することができる。
【0024】
量子ドットは非極性有機溶媒(A)に分散されたものを用いる。一般的には、このように非極性有機溶媒(A)に分散された状態で量子ドットが提供されているため、このような市販品等をそのまま使用することができる。
【0025】
量子ドットは、用途等に応じて、公知のものを使用することができる。例えば、特許文献1~4に記載のもの等を使用することができる。具体的には、例えば、2族元素、11~16族元素及びこれらの組み合わせを含む半導体物質が挙げられる。また、発光表示素子用途の場合は、500~600nmの緑色の波長領域に蛍光極大を有する化合物、600~700nmの赤色の波長領域に蛍光極大を有する化合物を含むものが好ましい。発光表示素子では、青色LEDから放出される青色光を励起光として利用することが多いためである。また、例えば、量子ドットによって青色光を補正する場合は、緑色及び赤色に加えて、400~500nmの青色の波長領域に蛍光極大を有する化合物も含むものが好ましい。
【0026】
量子ドットの構造は、特に限定はなく、例えば、均質な単相構造、コア-シェル構造等が挙げられる。また、単相構造やコア-シェル構造の半導体物質の表面の少なくとも一部が有機リガンドで被覆されたものであってもよい。
【0027】
リン酸エステル系分散剤は、例えば、XaP(=O)(OH)3-a(式中Xは、溶媒に親和性のある有機基であり、aが2、3の場合は、同一であっても異なってもよい。aは1~3の整数である。)で示されるリン酸エステル等を有効成分として含有するものが挙げられる。式中のXとしては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエステル基等が挙げられる。また、リン酸エステル系分散剤は、市販のものを使用することができる。例えば、日本ルーブリゾール株式会社製:ソルプラスD520、D540、ソルスパース26000、36000、41000、ビックケミー・ジャパン株式会社製:DISPERBYK(登録商標)-102、110、111、118、BYK W972、楠本化成株式会社製:HIPLAAD151、153、154、AQ-330、第一工業株式会社製:プライサーフAL、A212C、A215C、BASFジャパン株式会社製:Efka 5220、等が挙げられる。
【0028】
リン酸エステル系分散剤の酸価は、量子ドットの特性の低下を抑制し且つ良好に溶媒置換を行う観点から、110~250mgKOH/gであるのが好ましく、150~250mgKOH/gであるのがより好ましく、200~250mgKOH/gがさらに好ましい。アミン価は、30mgKOH/g以下が好ましく、0mgKOH/gがより好ましい。酸価(固形分換算したときの酸価)は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができ、アミン価(固形分換算したときのアミン価)は、例えば、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
【0029】
溶媒Aは、量子ドットが市販品等であれば、既に特定されたものになる。このような市販品等で使用されている量子ドットの分散溶媒である溶媒Aは、量子ドットを分散可能なものである傾向がある。このような溶媒Aは、本発明者の知る限り、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられる。このうち、量子ドットを分散可能であり且つ良好に溶媒置換を行う観点から、25℃における水への溶解性が、10g/L-水より低いのが好ましく、5g/L-水以下がより好ましい。
【0030】
溶媒Bは、溶媒Aと相溶性が低く、量子ドットを分散可能なものが好ましく、例えば、ケトン系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、アルコール系有機溶媒、アミド系極性有機溶媒、スルフィニル基(-SO-)又はスルホニル基(-S(=O)2-)を有する硫黄含有極性有機溶媒等が挙げられる。溶媒Bは、1種のみでもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。
【0031】
ケトン系有機溶媒としては、フォトリソグラフィ用途としては、例えば、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン(イソホロン)、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、等が挙げられる。
また、インクジェット用途としては、例えば、アセトン等が挙げられる。
【0032】
エステル系有機溶媒としては、フォトリソグラフィ用途としては、例えば、乳酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、n-プロピルアセテート、トリアセチン、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、二塩基酸エステル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピル、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)等が挙げられる。
また、インクジェット用途としては、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、α-エチルラクトン、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、ζ-エナンチオラクトン、η-カプリロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-ノナラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、2-ブチル-2-エチルプロピオラクトン、α,α-ジエチルプロピオラクトン、β-ブチロラクトン、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルジグリコールアセテート、BDGAC)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート等が挙げられる。
【0033】
エーテル系有機溶媒としては、フォトリソグラフィ用途としては、例えば、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、等が挙げられる。
また、インクジェット用途としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジメチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチレングリコールモノプロピルエーテル、ジメチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチレングリコールモノペンチルエーテル、ジメチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジメチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリメチレングリコールモノメチルエーテル、リメチレングリコールモノエチルエーテル、トリメチレングリコールモノプロピルエーテル、トリメチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチレングリコールモノペンチルエーテル、トリメチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリメチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジメチレングリコールモノフェニルエーテル、ジメチレングリコールモノベンジルエーテル、ジメチレングリコールモノトリルエーテル、トリメチレングリコールモノフェニルエーテル、トリメチレングリコールモノベンジルエーテル、トリメチレングリコールモノトリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノトリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノトリルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノトリルエーテル、プロピレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノトリルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノトリルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノベンジルエーテル、トリプロピレングリコールモノトリルエーテル、等が挙げられる。
【0034】
アルコール系有機溶媒としては、フォトリソグラフィ用途としては、例えば、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、メチルシクロヘキサノール、ダイアセトンアルコール(ジアセトンアルコール)、シクロヘキサノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシブタノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、等が挙げられる
また、インクジェット用途としては、例えば、フッ化アルコール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、数平均分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソブチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、等が挙げられる。
【0035】
アミド系極性有機溶媒としては、フォトリソグラフィ用途としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、等が挙げられる。
また、インクジェット用途としては、例えば、2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン、等が挙げられる。
【0036】
スルフィニル基(-SO-)又はスルホニル基(-S(=O)2-)を有する硫黄含有極性有機溶媒としては、インクジェット用途としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等が挙げられる。
【0037】
量子ドットのより良好な分散性、量子収率及び半値幅を得る観点、より良好な溶媒置換を行う観点から、溶媒Bは、25℃における水への溶解性が、10~1000g/L-水であるのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、エステル系溶媒である、PMA、DPMA、BDGAC等が挙げられる。また、溶媒Bは用途に応じて適宜選択することができる。
【0038】
溶媒Bは、量子ドット分散体の用途に応じて適宜選択することができる。フォトリソグラフィ用としては、前述のような有機溶媒を用いることができ、より好適なものは、例えば、PMA、乳酸エチル等が挙げられる。また、インクジェット用としては、前述のような有機溶媒を用いることができ、より好適なものは、例えば、BDGAC、DPMA、1,3-BDGA、EDGAC等が挙げられる。
【0039】
溶媒置換工程では、例えば、量子ドット、溶媒A、B、リン酸エステル系分散剤を含む混合液Aを調製する。溶媒Aは、量子ドットを分散している分散液由来のものが含まれるが、必要に応じて、溶媒Aを別途添加してもよい。混合液Aの調製は、各成分を撹拌槽等に添加して、撹拌する混合工程Aを行うことで行われる。各成分の添加順は特に限定はない。
【0040】
混合液Aを調製する際のリン酸エステル系分散剤の添加量は、量子ドットを溶媒B中で良好に分散させ、量子収率の低下及び半値幅の拡大を抑制し、良好に溶媒置換を行う観点から、量子ドット100重量部に対して70~200重量部含むように配合するのが好ましい。混合液A中の溶媒Aの含量は、量子ドット100重量に対して500~30000重量部が好ましい。また、溶媒Aと溶媒Bの比(重量基準)は、B/Aが1.0以下であるのが好ましい。
【0041】
混合工程Aにおける処理温度は、溶媒Bの沸点未満で行えばよい。撹拌処理は、公知の撹拌槽を用いて行うことができる。撹拌時間も特に限定はない。
【0042】
混合工程Aの後、溶媒A及びBを除去する溶媒除去工程Aを行うことで、溶媒Aの一部が溶媒Bに置換された量子ドット分散体が得られる。溶媒A及びBの除去は、減圧することで溶媒を留去してもよいし、ろ過により濾別してもよいし、遠心分離を行って、沈殿物を回収してもよいし、これらを組み合わせて行ってもよい。得られる量子ドット分散体中の溶媒A及びBの合計含量は、用途等に応じて適宜決定することができる。
【0043】
得られる量子ドット分散体中の溶媒Aの含量をより低減する場合は、混合工程Aの後、混合液Aから溶媒A及び溶媒Bの一部をそれぞれ除去し、得られた残渣物に溶媒Bを混合液B100重量%に対して量子ドット0.2~2重量%となるように添加して混合液Bを調製する混合工程Bを行ってもよい。混合工程Bにおける処理温度、撹拌処理も混合工程Aの場合と同様である。
【0044】
混合工程Bの後、溶媒A及びBを除去する溶媒除去工程Bを行うことで、溶媒Aの含量がより低減された溶媒Bに置換された量子ドット分散体が得られる。
【0045】
以上のようにして得られる量子ドット分散体は、溶媒Aの含量が0.1~0.5重量%である。そのため、溶媒Aの影響なく、各種用途に良好に適用可能である。また、溶媒置換しても、量子ドットが良好に分散しており、量子収率の低下及び半値幅の拡大が抑制されている。
【0046】
このように、本発明の実施形態に係る量子ドット分散体は、量子ドット、リン酸エステル系分散剤及び極性有機溶媒(B)を含み、非極性有機溶媒(A)の含量が0.1~0.5重量%である得る。このような量子ドット分散体は、そのまま、例えば、発光表示素子の発光層の原材料として好適である。
【0047】
量子ドット分散体を、例えば、発光表示素子の発光層の原料に用いる場合は、前述の量子ドット分散体に、硬化膜形成成分、アルカリ可溶性樹脂、散乱粒子、分散剤(但し、前述のリン酸エステル系分散剤を除く。)、分散助剤、顔料、染料、その他の公知の成分を所定量添加して撹拌混合することで、フォトリソグラフィ用の硬化膜形成用組成物とすることができる。また、インクジェット方式により硬化膜を形成する場合は、アルカリ可溶性樹脂を除き、フォトリソグラフィ用の組成物と同様の成分を所定量添加して、インクジェット用の硬化膜形成用組成物とすることができる。尚、硬化膜形成成分、散乱粒子、分散剤、分散助剤、顔料、染料その他の公知の成分は、フォトリソグラフィ用、インクジェット用の各用途に応じて適宜決定することができる。
【0048】
硬化膜形成成分としては、硬化膜の形成が可能な成分であれば、特に限定はなく、重合性の成分でもよいし、重合体でもよいし、それらの混合物でもよい。重合性の成分としては、現像(ネガ現像)により、パターニングを施すことが容易であることから、光重合性成分が好ましい。また、重合体としては、例えば、熱可塑性ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン・マレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂、カルド樹脂などが挙げられる。重合体の分子量は適宜決定することができる。また、重合性成分と重合体とを併用した場合、架橋性が向上し硬化膜の強度が向上する傾向にある。また、例えば、エポキシ系樹脂等を含むことで、発光特性が向上する傾向にある。
【0049】
使用可能な光重合性成分としては、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む。このような光重合性化合物及び光重合開始剤は、例えば、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。詳述すると、このような光重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該技術分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。光重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0050】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0051】
尚、これらの具体例は、概ね特開2009-179789号公報に記載の通りであるが、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0052】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な硬化膜形成用組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。
例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
【0053】
また、硬化膜形成用組成物中の他の成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂などのバインダーポリマー、光重合開始剤、着色剤(量子ドット、顔料など))との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
【0054】
また、基材等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。光重合性化合物は、硬化膜形成用組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5~70重量%、より好ましくは10~60重量%含まれる。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、光重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
【0055】
前記光重合開始剤としても、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。
例えば、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、オキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等である。
これらの具体例は、ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0056】
光重合開始剤の硬化膜形成用組成物中における含有量としては、硬化膜形成用組成物の全固形分に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5.0質量%である。光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0057】
硬化膜形成成分として光重合性成分を含む場合は、アルカリ可溶性樹脂を含有させてもよい。アルカリ可溶性樹脂を含有すると、例えばフォトリソグラフィ工程において、パターン形成に硬化膜形成用組成物を適用した際に、パターン形成性をより向上させることができる。
【0058】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。簡単に述べると、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0059】
アルカリ可溶性樹脂の好適なものとしては、特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸とを合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
【0060】
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0061】
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0062】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH2=CR5R6、CH2=C(R5)(COOR7)(ここで、R5は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、R6は炭素数6~10の芳香族炭化水素環を表し、R7は炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~12のアラルキル基を表す。)、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート等を挙げることができる。
【0063】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、現像性の観点からは、5000~50000が好ましい。
【0065】
アルカリ可溶性樹脂は、前述の単量体等から定法に従って調製することが可能である。また、市販のものを用いることもできる。市販のものの具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
昭和高分子株式会社製:リポキシSPC-2000、
三菱レイヨン株式会社製:ダイヤナ-ルNRシリーズ、
Diamond hamrock Co.Ltd.,製:Photomer6173(COOH含有Polyurethane acrylic oligomer)、
大阪有機化学工業株式会社製:ビスコートR-264、KSレジスト106、SOP-005、
ダイセル化学工業株式会社製:サイクロマーPシリーズ、プラクセルCF200シリーズ、
ダイセルユーシービー株式会社製:Ebecryl 3800、
株式会社日本触媒:アクリキュアー(登録商標)RD-Y-503、RD-Y-702-A等。
【0066】
アルカリ可溶性樹脂の硬化膜形成用組成物中における含有量としては、硬化膜形成用組成物の全固形分中で、1~20重量%が好ましく、より好ましくは、2~15重量%であり、特に好ましくは、3~12重量%である。顔料分散体に分散樹脂として含まれる場合は、合計量である。
【0067】
硬化膜形成用組成物には、量子ドット分散体に由来する溶媒Bが含まれるが、所望の固形分濃度にするために、溶媒を添加してもよい。溶媒は、例えばフォトリソグラフィ用及びインクジェット用の場合、硬化膜形成用組成物中の全固形分(不揮発成分)含量が15~50重量%となるように含まれるのが好ましい。
【0068】
散乱粒子としては、例えば、特許文献3に記載の金属酸化物等を含有させることができる。
【0069】
前述の公知の成分としては、例えば、増感剤(増感色素)、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等の各種の添加剤が挙げられる。
【0070】
硬化膜形成用組成物は、各種用途の硬化膜の形成に好適に用いることができる。このような硬化膜の用途としては、例えば、液晶表示装置のカラーフィルタ、表示装置の発光表示素子の発光層である波長変換層、等が挙げられる。硬化膜は、硬化膜形成用組成物を基材の表面に塗布し、所定条件にて硬化させることで形成することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づき説明する。
【0072】
[量子ドット分散体]
(実施例1)
量子ドット(コアシェル構造型半導体量子ドットであるInP/ZnS、分散媒:トルエン、固形分3重量%):10重量部、非極性有機溶媒Aとしてトルエン(水溶性526mg/L):40重量部、分散剤1(ルーブリゾール社製、製品名ソルプラス520、リン酸エステル系分散剤、酸価220mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分100重量%):0.3重量部、極性有機溶媒Bとしてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA):49.7重量部をLナスフラスコに投入した。その後、0.1atm、70℃に設定したロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製、NVC-2000)で重量が50重量部になるまで濃縮し、量子ドット分散体を得た。この時のトルエンの残存率を後述のように測定したところ、15~20%であった。
【0073】
濃縮後、ナスフラスコにPMAを50重量部添加して合計重量を100重量部とし、0.06atm、70℃の設定で、重量が10重量部になるまで濃縮し、量子ドット分散体を得た。この時のトルエンの残存率は、GC/MS(Agilent社製7000Dトリプル四重極GC/MS)で確認したところ、0.2%であった。
【0074】
(実施例2~5、比較例1~8)
表1、2に示す成分組成(単位:重量部)になるようにした以外は、実施例1と同様にして量子ドット分散体を得た。
【0075】
(実施例6)
量子ドット(コアシェル構造型半導体量子ドットであるInP/ZnS、分散媒:トルエン、固形分3重量%):10重量部、非極性有機溶媒Aとしてトルエン(水溶性526mg/L):40重量部、分散剤1:0.3重量部、極性有機溶媒Bとしてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC):49.7重量部をLナスフラスコに投入した。その後、0.1atm、70℃に設定したロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製、NVC-2000)で重量が50重量部になるまで濃縮し、量子ドット分散体を得た。
【0076】
(実施例7)
極性有機溶媒Bとして、BDGACに替えて、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)を用いた以外は、実施例6と同様にして、量子ドット分散体を得た。
【0077】
実施例2~7及び比較例1~8において使用した成分は以下のとおりである。
分散剤2:日本ルーブリゾール社製、製品名ソルプラス540、リン酸エステル系分散剤、酸価235mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分100重量%、
分散剤3:ビックケミー・ジャパン社製、製品名BYK111、リン酸エステル系分散剤、酸価129mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分100重量%、
分散剤4:第一工業製薬社製、製品名プライサーフAL、酸価115mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分100重量%、
分散剤5:日本ルーブリゾール社製、製品名ソルスパース41000、リン酸エステル系分散剤、酸価50mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分100重量%、
分散剤6:楠本化成社製、製品名ディスパロン2150、酸型アクリル系分散剤、酸価85mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分50重量%、
分散剤7:ビックケミー・ジャパン社製、製品名BYKJET-9151、塩酸基型分散剤、酸価8mgKOH/g、アミン価18mgKOH/g、固形分100重量%、
分散剤8:第一工業製薬社製、アクリル樹脂、酸価115mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分100重量%、
分散剤9:昭和電工社製、製品名SPC-2000、アミド系分散剤、酸価0mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、固形分37.4重量%、
分散剤10:ビックケミー・ジャパン社製、製品名Disperbyk LPN-6919、アミン系分散剤、酸価0mgKOH/g、アミン価120mgKOH/g、固形分60重量%、
分散剤11:味の素ファインテクノ社製、製品名プレンアクトKR-41B、チタネートカップリング剤、固形分70重量%、
分散剤12:信越シリコーン社製、製品名SZ-31、ヘキサメチルジシラザン、固形分100重量%、
BDGAC:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、極性有機溶媒、水溶性17g/1L-水
DPMA:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、極性有機溶媒、水溶性160g/1L-水
【0078】
(評価1)
<残存率>
実施例1~7、比較例1~8において調製した量子ドット分散体中の溶媒Aの残存率をGC/MS(Agilent社製7000Dトリプル四重極GC/MS)を用いて算出した。評価結果を表1、2に示す。GC/MSの条件は下記のとおりである。
カラム:DB-FFAP(J&W Scientific) 30m×0.25mmID df=0.25um
試料注入量:1ul
注入方式:スプリット(1:20, パージ流量 3.0ml/min)
オーブン温度:40℃(5min)→110℃(10℃/min)→250℃(20℃/min)→250℃(2min)
気化室温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム(109kPa, カラム流量 1.4ml/min)
制御モード:コンスタントフロー
トランスファーライン:280℃
イオン源温度:300℃
CFT使用 流量1.6mL/min カラム1.2m×0.15mm
コリジョンガスOFF
【0079】
<溶剤置換>
実施例1~7、比較例1~8において最終的に得られた量子ドット分散体の外観を目視により観察した。評価基準は、透明なものを○、懸濁が見られたものを×とした。評価結果を表1、2に示す。
【0080】
<量子収率>
実施例1~7、比較例1~8において最終的に得られた量子ドット分散体に対して、波長448nmにおける吸光度がAbs0.04~0.1の範囲となるように、各実施例及び比較例で使用した溶媒Aを添加した。その際、吸光度の測定には、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計、V-670を用いた。また、ローダミン6G(東京化成工業社製):0.1gをエタノール(和光純薬社製、特級、エタノール99.5%):1000gに溶解した液に対して、上記と同様にして溶媒Aを添加し、標準試料とした。そして、これらの液の励起波長(448nm)における吸光度を、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計、V-670を用いて測定した。次いで、株式会社日立ハイテクサイエンス製、分光蛍光光度計、F-7000を用いて蛍光スペクトル面積を測定した。これらの値を下記式(a)に代入して蛍光量子収率(Φx)を算出した。
【0081】
【0082】
式(a)中の記号は下記を示す。
Φst:標準資料の量子収率、
Φx:未知資料の量子収率(蛍光量子収率)、
Ast:標準資料の励起波長における吸光度、
Ax:未知資料の励起波長における吸光度、
Fst:標準資料の蛍光スペクトル面積、
Fx:未知資料の蛍光スペクトル面積、
nst:標準資料の溶媒の平均屈折率、
nx:未知資料の溶媒の平均屈折率、
Dst:標準資料の希釈率、
Dx:未知資料の希釈率。
【0083】
評価基準は、溶媒置換前後の蛍光量子収率の低下を-5%以内に抑えれば○、-5%を超えれば×とした。標準試料、溶媒置換前の試料(表3中「置換前」と記載)、実施例、比較例の式(a)中の各値(量子収率を除く)及び相対量子収率(Φx/Φst)を表3に示す。尚、溶媒置換前の試料は、実施例1に記載の量子ドット(各実施例、比較例において共通の試料)を用いた。
【0084】
<半値幅>
実施例1~7において最終的に得られた量子ドット分散体について、株式会社日立ハイテクサイエンス製、分光蛍光光度計、F-7000を用いて蛍光スペクトルを測定し、スペクトルの半値幅を算出した。評価基準は、低下を-10%以内に抑えれば○、-10%を超えれば×とした。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表1、2より、リン酸エステル系分散剤を用いることで、溶剤置換が可能で、かつ、量子収率、半値幅の低下が抑制されていることが分かる。
【0089】
[フォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物及び硬化膜]
実施例1~5の量子ドット分散体を用いて、フォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物1~5を調製した。次いで、それらを用いて硬化膜1~5を形成し、評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0090】
(製造例1:アクリル樹脂1の調製)
反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70重量部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でベンジルメタクリレート12.3重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6重量部、メタクリル酸5.3重量部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10重量部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続けて、透明樹脂溶液を得た。室温まで冷却した後、透明樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した透明樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加してアクリル樹脂1を得た。
【0091】
(実施例8)
下記の各成分を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過してフォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物1を調製した。
・実施例1の量子ドット分散体:40.0重量部
・アクリル樹脂1(アルカリ可溶性樹脂):47.9重量部
・熱硬化性樹脂(株式会社ダイセル製「EHPE3150」(多官能脂環式エポキシ樹脂、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物))(硬化膜形成成分):2.2重量部
・光重合性モノマー(東亞合成社製「M402」)(硬化膜形成成分):5.4重量部
・光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアーOXE02」)(硬化膜形成成分):0.9重量部
・有機溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3.7重量部
【0092】
(実施例9)
実施例1の量子ドット分散体に替えて実施例2の量子ドット分散体を用いた以外は実施例8と同様にして、フォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物2を調製した。
【0093】
(実施例10)
実施例1の量子ドット分散体に替えて実施例3の量子ドット分散体を用いた以外は実施例8と同様にして、フォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物3を調製した。
【0094】
(実施例11)
実施例1の量子ドット分散体に替えて実施例4の量子ドット分散体を用いた以外は実施例8と同様にして、フォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物4を調製した。
【0095】
(実施例12)
実施例1の量子ドット分散体に替えて実施例5の量子ドット分散体を用いた以外は実施例8と同様にして、フォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物5を調製した。
【0096】
(硬化膜1~5の作製)
得られたフォトリソグラフィ用途の硬化膜形成用組成物1~5を、スピンコートでガラス基板に塗布し、70℃で1分間乾燥の後、50μmのストライプ状のパターンを有するフォトマスクを介して高圧水銀灯の光を100mJ/cm2照射し、アルカリ現像液にて80秒間現像を行った。その後、180℃で20分間、加熱乾燥処理して、硬化膜形成用組成物1~5からそれぞれ硬化膜1~5を得た。
【0097】
なお、硬化膜1~5の調製に用いたアルカリ現像液の成分組成は以下のとおりである。
・炭酸ナトリウム 1.5質量%
・炭酸水素ナトリウム 0.5質量%
・陰イオン系界面活性剤(花王・ペリレックスNBL) 8.0質量%
・水 90.0質量%
【0098】
(評価2)
<パターニング性評価1>
得られた硬化膜1~5を、光学顕微鏡(Nikon社製、製品名ECLIPSE LV100、倍率200倍)を用いて観察した。現像残渣がなく、パターンに画素あれやカケなどの外観異常がない場合を、パターニング特性良好と判断し、現像残渣及び/又は前記の外観異常がある場合をパターニング特性不良と判断した。
【0099】
その結果、硬化膜1~5のパターニング特性は良好であった。
【0100】
[インクジェット用途の硬化膜形成用組成物及び硬化膜]
実施例6、7の量子ドット分散体を用いて、インクジェット用途の硬化膜形成用組成物6、7を調製した。次いで、それらを用いて硬化膜6、7を形成し、評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0101】
(製造例2:アクリル樹脂2の調製)
メタクリル酸20重量部、メチルメタクリレート10重量部、ブチルメタクリレート55重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部を乳酸ブチル300gに溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75部を加え、70℃にて5時間の反応により、アクリル樹脂を得た。得られたアクリル樹脂を樹脂濃度が10%になるようにブチルジグリコールアセテート(BDGAC)で希釈し、アクリル樹脂2とした。
【0102】
(実施例13)
下記の各成分を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過してインクジェット用途の硬化膜形成用組成物6を調製した。
・実施例6の量子ドット分散体:15重量部
・アクリル樹脂2(硬化膜形成成分):20重量部
・ブチルジグリコールアセテート(BDGAC):70重量部
【0103】
(実施例14)
実施例6の量子ドット分散体に替えて実施例7の量子ドット分散体を用いた以外は実施例13と同様にして、インクジェット用途の硬化膜形成用組成物7を調製した。
【0104】
(硬化膜6、7の作製)
<ブラックマトリクスの形成>
無アルカリガラス(コーニング社製「#1737」)上にカーボンブラックを含有したレジスト材(新日鐵化学社製ブラックマトリクス用ネガ型レジストインキ「V-259 VK739P」)に感光性シリコン化合物であるジメチルポリシランを10%添加したものをスピンコートし、プレベークを行った。その後、露光、現像、ポストベーク処理を行って、開口面積30000μm2の開口部を有し、膜厚6μmのブラックマトリクスを形成した。
【0105】
<硬化膜形成用組成物の塗布および硬化>
次に、インクジェット印刷装置により、上記ブラックマトリクスの開口部にインクジェット用途の硬化膜形成用組成物6、7をそれぞれ適量付与し、180℃で20分間、加熱乾燥させ、パターン状の画素部を形成し、それぞれ硬化膜6、7を得た。
【0106】
(評価3)
<パターニング性評価2>
得られた硬化膜6、7のパターニング性評価として、光学顕微鏡及びSEM(日立ハイテクノロジーズ社製、製品名S-4800)により隣接部への混色有無を観察し、混色のないものを○、混色のあるものを×とした。また、画素形状の中央部と周辺部の膜厚測定を行い、最大膜厚差が0.1μm以下のものを○、それ以上のものを×とした。混色及び最大膜厚差による判定が両方○であるものをパターニング性良好と判断し、何れか、または両方で×の場合をパターニング性不良と判断した。
【0107】
【0108】
表4より、硬化膜6、7のパターニング性は良好であった。