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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ミシン縫い用ガイド具
(51)【国際特許分類】
   D05B 35/12 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
D05B35/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018189756
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020058411
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000105039
【氏名又は名称】クロバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー エル.ジーマン
(72)【発明者】
【氏名】河崎 裕次
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 千紘
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-244542(JP,A)
【文献】実開昭58-115175(JP,U)
【文献】実開昭60-109581(JP,U)
【文献】特開2001-300174(JP,A)
【文献】実開昭53-047941(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針通し孔から前方端に通じるスリットが形成された底壁、および上記底壁の後方側につながる後方支持部、を有する押えと、
ミシンの押え棒に対して着脱可能に取り付けられ、かつ上記押えを前後方向に直交する水平軸心の周りに回動可能に支持するホルダと、
上記後方支持部に対して前後方向に直交する水平な方向である第1方向にスライド移動可能に支持されており、寸法表示がされた表示面を含む寸法表示板、およびこの寸法表示板から延出するガイド部、を有するゲージと、
上記寸法表示板のスライド移動に節度感を与える係止手段と、を備え、
上記寸法表示板は、鉛直方向において上記底壁よりも上位に配置されており、
上記表示面は、後方に向かうにつれて上方に位置するように傾斜しており、
上記寸法表示板には、直線状の凹凸が形成されており、
上記係止手段は、上記凹凸に弾性的に係合する係合部と、上記係合部が上記凹凸に係合する状態と係合しない状態とに切り替え操作するボタン部と、を含むことを特徴とする、ミシン縫い用ガイド具。
【請求項2】
上記ガイド部は、上記寸法表示板の上記第1方向における一方端から前方に向かって延びており、
上記ガイド部の先端側部位は、上記ガイド部の基端側部位と比べて上記第1方向の一方側端が凹んでいる、請求項1に記載のミシン縫い用ガイド具。
【請求項3】
上記押えは、上記底壁における上記第1方向の一方側の端縁から上方に延びる横壁を有する、請求項2に記載のミシン縫い用ガイド具。
【請求項4】
上記ガイド部の上記先端側部位は、上記第1方向の他方側端に張り出しており、
上記横壁の上記第1方向の一方側端は、上記ガイド部の上記先端側部位に対応して部分的に凹んでいる、請求項3に記載のミシン縫い用ガイド具。
【請求項5】
上記ボタン部は、上記第1方向において上記底壁を挟んで上記ガイド部とは反対側に設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載のミシン縫い用ガイド具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミシンに取り付けて使用するミシン縫い用ガイド具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンによる縫製の際に使用するミシン縫い用ガイド具が提案されている(たとえば特許文献1を参照)。同文献に開示されたガイド具は、ミシンの押え棒と押えとの間に介在するホルダに取り付けられている。より具体的には、上記従来のガイド具は、ミシンの上記ホルダを包囲するように取り付けられる定規ホルダ(4)と、この定規ホルダに一端が固定された案内棒(5)とを備える。案内棒には、ガイド部を支持する可動定規ホルダ(6)がスライド移動可能に装着されており、可動定規ホルダはネジ止により案内棒に対する位置決めが可能とされている。このようなミシン縫い用ガイド具の使用時には、ミシン針による縫い位置から所定距離の位置にガイド部を位置決め固定する。ガイド部にステッチの縫い目を合わせてミシン縫いを行う。これにより、所定間隔で並ぶステッチラインを形成することができる。
【0003】
ミシンの押え棒と押えとの間に介在する上記ホルダは一般的にミシンの付属部品であり、ミシンの機種によって上記ホルダの形状等が異なる場合がある。上記従来のミシン縫い用ガイド具は、ミシンの上記ホルダに取り付けるように構成されているが、ミシンの機種によっては取り付けが困難または不可能な場合があり、汎用性を高める観点からは、未だ改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3616233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、このような事情のもとで考え出されたものである。その課題は、様々な機種のミシンに適用可能とすることで汎用性を高めて、使い勝手をよくするのに適したミシン縫い用ガイド具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本開示では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本開示の一実施形態によって提供されるミシン縫い用ガイド具は、針通し孔から前方端に通じるスリットが形成された底壁、および上記底壁の後方側につながる後方支持部、を有する押えと、ミシンの押え棒に対して着脱可能に取り付けられ、かつ上記押えを前後方向に直交する水平軸心の周りに回動可能に支持するホルダと、上記後方支持部に対して前後方向に直交する水平な方向である第1方向にスライド移動可能に支持されており、寸法表示がされた表示面を含む寸法表示板、およびこの寸法表示板から延出するガイド部、を有するゲージと、を備え、上記寸法表示板は、鉛直方向において上記底壁よりも上位に配置されており、上記表示面は、後方に向かうにつれて上方に位置するように傾斜することを特徴としている。
【0008】
好ましい実施の形態においては、上記ガイド部は、上記寸法表示板の上記第1方向における一方端から上記前方に向かって延びており、上記ガイド部の先端側部位は、上記ガイド部の基端側部位と比べて上記第1方向の上記一方側端が凹んでいる。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記押えは、上記底壁における上記第1方向の上記一方側の端縁から上方に延びる横壁を有する。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記ガイド部の上記先端側部位は、上記第1方向の他方側端に張り出しており、上記横壁の上記第1方向における上記一方側端は、上記ガイド部の上記先端側部位に対応して部分的に凹んでいる。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記寸法表示板のスライド移動に節度感を与える係止手段を備える。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記寸法表示板には、直線状の凹凸が形成されており、上記係止手段は、上記凹凸に弾性的に係合する係合部と、上記係合部が上記凹凸に係合する状態と係合しない状態とに切り替え操作するボタン部と、を含む。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記ボタン部は、上記第1方向において上記底壁を挟んで上記ガイド部とは反対側に設けられている。
【0014】
本開示によるミシン縫い用ガイド具のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係るミシン縫い用ガイド具を示す斜視図である。
図2図1に示すミシン縫い用ガイド具の平面図である。
図3図1に示すミシン縫い用ガイド具の正面図である。
図4図1に示すミシン縫い用ガイド具の側面図である。
図5図1に示すミシン縫い用ガイド具の背面図である。
図6図2のVI-VI線に沿う拡大断面図である。
図7図2のVII-VII線に沿う拡大断面図である。
図8図4のVIII-VIII線に沿う拡大断面図である。
図9図1に示すミシン縫い用ガイド具の使用状態の一例を示す平面図である。
図10図1に示すミシン縫い用ガイド具の使用状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ミシン縫い用ガイド具の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1図8は、一実施形態に係るミシン縫い用ガイド具を示している。図示されたミシン縫い用ガイド具Aは、押え1と、この押え1を支持するホルダ2と、ゲージ3と、係合部材4と、を備えている。なお、図1図8において、方向yは前後方向である。方向xは、左右方向であり、方向yに直交する水平な方向(本開示で言う第1方向)である。方向zは鉛直方向である。
【0018】
押え1は、底壁11と、一対の横壁12,13と、後方支持部14と、を備える。底壁11は、縫製時に布を押さえ付ける部分である。底壁11は、先端部を除き、ほぼ平坦である。底壁11には、ミシン針を上下動させるための針通し孔111とともに、スリット112が形成されている。針通し孔111は、厚さ方向(方向z)に底壁11を貫通している。針通し孔111は、左右方向(方向x)に延びる長孔である。押え1は、長孔状の針通し孔111を有することにより、左右方向に振り幅を有する縫い方(ジグザグ縫いなど)に対応しうる。これとは異なり、例えば直線縫い専用の押えの場合、針通し孔は方向xに長状ではない構成(例えば実質的に円形)としてもよい。
【0019】
スリット112は、針通し孔111に連通するとともに、当該針通し孔111から前方(図2の下方)に延び、底壁11の前端に達している。スリット112は、底壁11の方向xにおける略中央に設けられている。図3図4に示すように、底壁11は、スリット112によって分断された部分の先端側が上方に向かって傾斜している。また、図2図3に示すように、スリット112の方向xにおける間隔は、先端側において前方に向かうほど大きくされている。
【0020】
一対の横壁12,13は、方向xにおいて互いに離間している。横壁12,13は、底壁11の上面に対して一体的に形成されており、底壁11の方向xの両側縁に起立状に設けられている。横壁12は底壁11の方向xにおける一方側端(図2図3の右端)に位置し、横壁13は底壁11の方向xにおける他方側端(図2図3の左端)に位置する。本実施形態において、各横壁12,13は、底壁11に対し例えば90°の角度で交差して方向zに沿って延びる。図1図2に示すように、横壁12,13は、方向yに長状の形態であり、実質的に底壁11(延いては押え1)の前方端から後方端まで延びている。各横壁12,13の高さ(底壁11の上面を基準とする方向zの寸法)は、方向yに沿ういずれの位置においてもほぼ等しくされている。
【0021】
後方支持部14は、底壁11の後方側につながっている。図1図4図7に示すように、後方支持部14は、全体として板状であり、後方(図4の左方、図7の右方)に向かうにつれて上方に位置するように傾斜している。後方支持部14は、底壁11の後方から方向xの他方側(図2図3の左方)に延びている。後方支持部14は、ゲージ3を支持しており、一対のレール部141、寸法読取り部142および抜止め突起143を有する。後方支持部14の詳細については後述する。
【0022】
ホルダ2は、押え1に対して回動可能に連結されている。ホルダ2は、連結部21およびミシン取付部22を備える。連結部21には連結用孔が形成されており、この孔に、例えば金属製の軸部材113が挿通される(図7参照)。一方、横壁12,13には、軸部材113の両端部をそれぞれ固定支持する孔が形成されている。このような構成により、連結部21(延いてはホルダ2)は、方向xに延びる軸部材113を介して横壁12,13に回動可能に支持される。図1図2および図4等には、軸部材113の回動軸心Oxが示されている。
【0023】
ミシン取付部22は、連結部21につながっており、ホルダ2(延いてはミシン縫い用ガイド具A)をミシンの押え棒8に取り付けるための部位である。具体的には、ミシン取付部22は、凹溝221と切欠き222を有する。図2において仮想線で示すように、押え1の使用時には、凹溝221に押え棒8を嵌挿させる。そして、切欠き222を通じて、押え棒8のネジ孔81に取付ネジ9のネジ軸91を螺合させる。取付ネジ9を締め付けることにより、ミシン取付部22の一部が取付ネジ9のヘッドと押え棒8との間に挟まれた状態となる。このようにして、ホルダ2(延いてはミシン縫い用ガイド具A)を押え棒8に対し着脱可能に取り付けることができる。なお、ミシンの押え棒8は、いわゆるローシャンクのミシンにおいてその形状およびサイズが共通している。
【0024】
ゲージ3は、寸法表示板31およびガイド部32を備える。寸法表示板31は、全体として平板状であり、方向xに延びている。寸法表示板31は、表示面311、凹凸312、および抜止め片313を有する。
【0025】
寸法表示板31は、押え1の後方支持部14に支持されている。具体的には、寸法表示板31は、後方支持部14に重ねられており、底壁11よりも上位に位置する。寸法表示板31は、方向xにおいて長状であり、後方に向かうにつれて上方に位置するように傾斜している。寸法表示板31の前方側(斜め上方)を向く傾斜面が表示面311とされている。表示面311には、長手方向(方向x)に沿って寸法を測るための目盛りが付されている。当該目盛りは、インチあるいはミリメートル(mm)等の所定の寸法単位を基準としている。
【0026】
寸法表示板31の幅方向における両端は、一対のレール部141により挟まれている。これらレール部141は、方向xに沿って延びており、寸法表示板31の幅方向において互いに離間している。各レール部141は、寸法表示板31の幅方向における端縁の一部と表示面311の一部とを覆っている。このような構成により、寸法表示板31は、方向xに沿ってスライド移動可能である。
【0027】
図5図6図8に示すように凹凸312は、寸法表示板31の後方側を向く面に形成されている。凹凸312は、寸法表示板31の下方寄りに位置し、方向xに沿って直線状に形成されている。凹凸312は、凸部および凹部が方向xに沿って一定間隔で交互に並んだ構成とされている。凹凸312の意義については後述する。
【0028】
抜止め片313は、寸法表示板31の方向xにおける他端部(図2図3の左端部)に設けられている。抜止め片313は、周囲に切欠きが形成されることにより弾性変形可能とされている。図4に示すように、抜止め片313は、自然状態において当該抜止め片313の周辺部よりも後方側(図4の左斜め下方)に突出する部分を含む。一方、後方支持部14の抜止め突起143は、後方支持部14の方向xにおける他端部(図8参照)に設けられており、周辺部よりも前方側(図4の右斜め上方)に突出する。寸法表示板31が後方支持部14にスライド移動可能に支持された状態において、後方支持部14に対して寸法表示板31を方向xの他端側に移動させると抜止め片313が抜止め突起143に当接し、寸法表示板31の抜け出しが防止される。なお、抜止め片313を前方側(図4の右斜め上方)に押圧変形させることで、寸法表示板31は後方支持部14に対して着脱可能となる。
【0029】
ガイド部32は、寸法表示板31の方向xにおける一方端(図2の右端)から前方(図2の下方)に向かって延びている。ガイド部32は、ミシン縫いを行う際にステッチの縫い目を合わせる部分である。
【0030】
本実施形態において、ガイド部32の先端側部位322は、ガイド部32の基端側部位321と比べて方向xの一方側端(図2の右端)が凹んでいる。これにともない、先端側部位322は、方向xの他方側端(図2の左端)が張り出している。基端側部位321および先端側部位322は、それぞれ方向yに沿って延びている。
【0031】
本実施形態において、図2に示すように、横壁12の方向xにおける一方側端(図2の右端)は、上記先端側部位322の形状に対応して部分的に凹んでいる。寸法表示板31を方向xの他端側に可能な限りスライドさせると、先端側部位322は、底壁11ないし横壁12と、当接するか、または殆ど隙間がなく当接し得る状態になる。ここで、針通し孔111の中心から横壁12の一方側端(図2の右端)までの方向xにおける寸法L1は、例えば、1/4インチあるいは7mmとされている。針通し孔111の中心から先端側部位322の一方側端(図2の右端)までの方向xにおける寸法L2は、例えば、3/8インチあるいは10mmとされている。
【0032】
係合部材4は、寸法表示板31の方向Xへのスライド移動に対して一定間隔ごとの節度感を与えるものである。図2図3図6図8に示すように、係合部材4は、係合部41と、ボタン部42と、弾性片43と、を含む。係合部41は、後方支持部14の適所に形成された開口を通じて寸法表示板31の後方側を向く面と重なる部分に設けられている。図6図8から理解されるように、係合部41は、凹凸312のピッチと対応する凹凸部を有し、当該凹凸312に係合する。弾性片43は、ボタン部42を挟んで方向xにおいて対をなして配置されている。寸法表示板31が所定位置に装着されて凹凸312に係合部41が係合する状態において、弾性片43は、係合部41を凹凸312に弾性圧接させている。これにより、係合部41は、凹凸312に弾性的に係合している。
【0033】
寸法表示板31を後方支持部14に対して方向xにスライドさせると、係合部材4の係合部41が寸法表示板31の凹凸312に弾性係脱を繰り返す。そして、寸法表示板31のスライド移動に対し一定間隔ごとの節度感がともなう所定の抵抗が与えられる。このような構成の係合部材4は、本開示で言う係止手段の役割を担う。
【0034】
このような構成によれば、寸法表示板31は、後方支持部14に対し、凹凸312のピッチに応じて一定間隔ごとにずらすことができる。凹凸312のピッチは、例えば、1/8インチあるいは1mmとされる。寸法表示板31の表示面311に付された目盛りは、凹凸312のピッチに対応する寸法間隔で設けられている。図面においては、1/8インチ間隔で目盛りが設けられる場合を示している。
【0035】
図1図3に示すように、ボタン部42は、方向xにおいて底壁11を挟んでガイド部32とは反対側に設けられている。ボタン部42は、係合部41が凹凸312に係合する状態と係合しない状態とに切り替えるものである。図8から理解されるように、ボタン部42を押圧すると、弾性片43の復元力に抗して係合部41が凹凸312から離れるように移動し、係合部41が凹凸312に係合しない状態となる。図8においてボタン部42を押圧した状態の係合部材4を仮想線で表す。
【0036】
後方支持部14の寸法読取り部142は、寸法表示板31の目盛りを指し示すものであり、例えばレール部141から表示面311に重なるように突き出る部分により構成される。寸法読取り部142が指し示す目盛りの位置は、針通し孔111の中心からガイド部32の先端側部位322の一方側端(図2の右端)までの方向xにおける寸法を表している。本実施形態において、例えば、押え1の後方支持部14を構成する部材は、底壁11を構成する部材とは別の部材からなり、両部材は嵌合されて一体的につなげられる。これとは異なり、押え1において、後方支持部14および底壁11が単一の部材により一体形成されるように構成してもよい。
【0037】
上記したミシン縫い用ガイド具Aは、例えば、適度な強度を有する合成樹脂からなる。押え1、ホルダ2、ゲージ3、および係合部材4は、例えば樹脂成形品であり、互いに別体形成されている。本実施形態において、押え1の後方支持部14を構成する部材は、底壁11を構成する部材とは別の部材からなり、両部材は嵌合されて一体的につなげられる。これとは異なり、押え1において、後方支持部14および底壁11が単一の部材により一体形成されるように構成してもよい。
【0038】
上述したミシン縫い用ガイド具Aの使用例および作用効果について、図9を参照して説明する。
【0039】
ミシンを使用する際には、上述した手法によりミシン縫い用ガイド具Aをミシンの押え棒8に取り付ける。ミシン縫い用ガイド具Aは、押え棒8に着脱可能に取り付けられるホルダ2を備える。ミシンの押え棒8は、いわゆるローシャンクのミシンにおいて共通である。本実施形態のミシン縫い用ガイド具Aによれば、ローシャンクのミシンにおいて、ミシンの機種が異なる場合においても共通して使用することができる。したがって、様々な機種のミシンに適用可能であり、汎用性が高められる。
【0040】
ミシン縫い用ガイド具Aの使用時には、図9に示すように、ゲージ3の寸法表示板31を後方支持部14に対して方向xにスライド移動させて、ミシン針による縫い位置から所定距離の位置にガイド部32を配置する。ガイド部32に、布地Cに形成されたステッチSの縫い目を合わせてミシン縫いを行う。
【0041】
寸法表示板31の表示面311は、後方に向かうにつれて上方に位置するように傾斜している。このような構成によれば、縫い作業を行う作業者は目視により表示面311を見やすく、使い勝手がよい。また、寸法表示板31は、底壁11よりも上位において後方支持部14に支持されている。このような構成によれば、縫い作業の際に寸法表示板31を布地から確実に離すことができ、布送りの抵抗や妨げになるといった不都合を回避することができる。
【0042】
ガイド部32の先端側部位322は、基端側部位321と比べて方向xの一方側端(図2の右端)が凹んでいる。このような構成によれば、寸法表示板31を方向xの他端側に最も寄せたときに、針通し孔111の中心から先端側部位322の一方側端(図2の右端)までの方向xにおける寸法を小さくすることができる。これにより、例えば、図2を参照して上述したように、針通し孔111の中心から先端側部位322の一方側端までの方向xにおける寸法を、ステッチ縫いとしてよく利用される間隔(3/8インチや10mmなど)と同一に設定することが可能である。
【0043】
ガイド部32の先端側部位322は、方向xの他方側端(図2の左端)に張り出している。また、横壁12の方向xにおける一方側端(図2の右端)は、上記先端側部位322の形状に対応して部分的に凹んでいる。このような構成によれば、ガイド部32の先端側部位322の方向xにおける寸法を基端側部位321と同程度確保しつつ、針通し孔111の中心から横壁12の一方側端(図2の右端)までの方向xにおける寸法L1(例えば1/4インチあるいは7mm)を比較的小さくすることができる。例えば図10に示すように、横壁12に、布地Cに形成されたステッチSの縫い目を合わせてミシン縫いを行う。これにより、ステッチ縫いとしてよく利用される狭い間隔(上述の1/4インチや7mmなど)でステッチSを形成することが可能である。
【0044】
ミシン縫い用ガイド具Aは、係合部材4(係止手段)を具備している。係合部材4により寸法表示板31のスライド移動に対して節度感を与えることができ、寸法表示板31の位置合わせを容易に行うことができる。また、寸法表示板31は、方向xにおいて長状であり、針通し孔111の中心からガイド部32までの寸法については、比較的広範囲での寸法調整が可能である。
【0045】
寸法表示板31には直線状の凹凸312が形成されており、係合部材4には、凹凸312に弾性的に係合する係合部41が設けられている。このような構成によれば、針通し孔111の中心からガイド部32までの寸法について、一定ピッチでの正確な寸法調整が可能である。また、係合部材4のボタン部42を押圧することで凹凸312と係合部41との係合状態を解除することができ、寸法表示板31のスライド移動を迅速に行うことが可能である。
【0046】
本開示のミシン用押えは、上記した実施形態に限定されるものではない。ミシン縫い用ガイド具の各部の具体的な構成は、特許請求の範囲に記載の内容から逸脱しない範囲内で種々、変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
A ミシン縫い用ガイド具
C 布地
S ステッチ
Ox 回動軸心
x 方向(第1方向)
y 方向(前後方向)
z 方向(鉛直方向)
1 押え
11 底壁
111 針通し孔
112 スリット
113 軸部材
12 横壁
13 横壁
14 後方支持部
141 レール部
142 寸法読取り部
143 抜止め突起
2 ホルダ
21 連結部
22 ミシン取付部
221 凹溝
222 切欠き
3 ゲージ
31 寸法表示板
311 表示面
312 凹凸
313 抜止め片
32 ガイド部
321 基端側部位
322 先端側部位
4 係合部材
41 係合部
42 ボタン部
43 弾性片
8 押え棒
81 ネジ孔
9 取付ネジ
91 ネジ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10