(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】対空標識固定治具及びそれを利用した測量方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G01C15/06 T
(21)【出願番号】P 2019010874
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-12-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592159379
【氏名又は名称】株式会社カクマル
(74)【代理人】
【識別番号】100196760
【氏名又は名称】大野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 馨
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3212102(JP,U)
【文献】登録実用新案第3205097(JP,U)
【文献】特開平09-021642(JP,A)
【文献】実開昭63-084700(JP,U)
【文献】特開2007-047139(JP,A)
【文献】特開平08-086653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/02 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量杭の上頭部への取付部と、対空標識を水平方向に支持固定する支持固定部を備え、
測量杭の上頭部に配置された基準部位と、対空標識の中心を位置合わせして取り付け可能とした対空標識固定治具であって、
測量杭の頂部に打ち込まれた基準部位を示す釘を露出した状態で対空標識を取り付け可能とし、
前記取付部は、測量杭の側面をボルトによって締め付ける構成とされており、
前記支持固定部は、測量杭の頂部に載置される上面によって構成され、
四方の側面と、その四方の側面の上に配置される正方形の上面とを備え、
正方形の上面の中心には釘の露出孔が形成されており、
側面には間隔をおいて複数のボルトの挿通孔が形成されていることを特徴とする対空標識固定治具。
【請求項2】
請求項1記載の対空標識固定治具によって、測量杭に対空標識を取り付け、その対空標識を利用した航空測量を行うことを特徴とする測量方法。
【請求項3】
ドローンによる写真測量またはレーザー測量を行うことを特徴とする
請求項2記載の測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対空標識固定治具及びそれを利用した測量方法に関し、特に、測量杭へ対空標識を取付ける構成とし、既設の測量杭を利用可能とし、対空標識の設置容易性と、上空からの認識確実性を実現した対空標識固定治具及びそれを利用した測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築工事等の地形測量や急斜面の3次元形状の測量においては、パルス式レーザーを使用したレーザースキャナによる測量が行われる。
このレーザースキャナによる測量は、スキャナ装置から多数のレーザーパルスを対象範囲ならびに対象物に照射し,そのレーザーパルスが地形・地物に反射し機器に戻ってくるレーザーを計測して詳細な3次元データを得る手法である。
【0003】
また、山間部等の広域の測量に際しては、ドローン(無人飛行体)に写真撮影機器またはレーザー機器を搭載し、上空から地表の状態を計測する手法が採用されている。
そして、これら航空測量に際しては、対象範囲に予め複数の対空標識あるいはターゲット板を設置し、それらの対空標識やターゲット板の位置を基準として計測精度を高めるシステムが採用されている。
このような航空測量に関する技術として、特許文献1の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術は航空測量に関する技術であるが、対空標識を設置する点についての記載がなく、対空標識を設置する場合には別途測量が必要であり、特に、傾斜地、凹凸、植生等の状況により場所によっては対空標識の設置が困難という問題があった。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、測量杭へ対空標識を取付ける構成とし、既設の測量杭を利用可能とし、対空標識の設置容易性と、上空からの認識確実性を実現した対空標識固定治具及びそれを利用した測量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための手段として本発明請求項1記載の対空標識固定治具では、 測量杭の上頭部への取付部と、対空標識を水平方向に支持固定する支持固定部を備え、測量杭の上頭部に配置された基準部位と、対空標識の中心を位置合わせして取り付け可能とした対空標識固定治具であって、測量杭の頂部に打ち込まれた基準部位を示す釘を露出した状態で対空標識を取り付け可能とし、前記取付部は、測量杭の側面をボルトによって締め付ける構成とされており、前記支持固定部は、測量杭の頂部に載置される上面によって構成され、四方の側面と、その四方の側面の上に配置される正方形の上面とを備え、正方形の上面の中心には釘の露出孔が形成されており、側面には間隔をおいて複数のボルトの挿通孔が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の測量方法では、請求項1記載の対空標識固定治具によって、測量杭に対空標識を取り付け、その対空標識を利用した航空測量を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の測量方法では、請求項2記載の測量方法において、ドローンによる写真測量またはレーザー測量を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の対空標識固定治具においては、測量杭の上頭部への取付部と、対空標識を水平方向に支持固定する支持固定部を備えているので、基準点測量が完了した既設の測量杭に対空標識を取り付けることができる。
また、測量杭の上頭部に配置された基準点と、対空標識の中心を位置合わせして取り付けるので、詳細に計測された基準点を対空標識の中心として利用できる。
【0014】
請求項1記載の対空標識固定治具においては、測量杭の頂部に打ち込まれた基準点を示す釘を露出した状態で取り付け可能としたので、基準点と対空標識の中心を確実に一致させることができると共に、基準点に合わせて対空標識の中心が取付けられていることを目視でも確認可能である。
【0015】
請求項1記載の対空標識固定治具においては、取付部は、測量杭の側面をボルトによって締め付ける構成とされているので、ボルトによって測量杭に本体が確実に固定される。
また、前記支持固定部は、測量杭の頂部に載置された盤面を備えているので、頂部の上に載せられた状態で対空標識の荷重が支えられ、対空標識が水平方向に支持固定される。
【0016】
請求項1記載の対空標識固定治具では、四方の側面と、その四方の側面の上に配置される正方形の上面とを備え、正方形の上面の中心には釘の露出孔が形成されており、側面には間隔をおいて複数のボルトの挿通孔が形成されているので、測量杭及び対空標識の取付けが容易であり、しかも確実な支持構造が実現される。
【0017】
請求項2記載の測量方法では、請求項1記載の対空標識固定治具によって、測量杭に対空標識を取り付け、その対空標識を利用した航空測量を行うので、測量が完了した既設の測量杭に対空標識を取り付けて測量を行うことができる。
【0018】
請求項3記載の測量方法では、ドローンによる写真測量またはレーザー測量を行うので、安定した低空飛行により精度の高い測量を行うことができる。
特に、レーザー測量を行うので、地形の詳細なデジタルデータが取得可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】測量杭への対空標識固定治具の取付方法を示す説明図である。
【
図10】ドローンを利用した測量方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
本発明の第1実施例に係る対空標識固定冶具は、
図1~9に示すように、側面2及び上面3を有する外郭(本体1)を有しており、側面2には2か所にボルト挿通孔4を備えている。
前記上面3は平面視形状が正方形に形成されており、それぞれ四方の縁から側面2が垂下している。
底面は開口されており、本体1の全体形状は側面2及び上面3によって囲われた箱状体とされている。
【0021】
本体1の材質は一例として樹脂等の硬材から形成されており、その形状は、厚さ5mm前後、上面の一辺の長さ100~110mm、側面の高さ60mmの形状とされている。
この材質・形状については適用する測量杭5、対空標識6の形状、大きさ等に応じて適宜設定される。
側面2及びボルト挿通孔4は取付部として機能する部位であり、上面3は対空標識の支持固定部として対空標識6が取り付けられる部位である。
【0022】
側面2にはそれぞれ左右方向に間隔をおいて2か所にボルト挿通孔4が形成されている。
このボルト挿通孔4は、側面上下方向の中央やや下側に配置されている。
ボルト挿通孔4には金属製ナット7(
図8参照)が樹脂製の本体1に埋め込まれて固定されている。
側面から直角にボルト8をねじ込むと、ボルト先端が内部の測量杭5の側面を抑え付けるように機能する。
本体1を測量杭5に取り付ける際には、後述する露出孔9と釘10の位置を合わせながら、測量杭5の上頭部に本体の上面3を重ね合わせて本体1をセットする。そして、測量杭5の位置を確認しながら2か所のボルト挿通孔4のいずれか選択してボルト8をねじ込む。ボルト挿通孔4は横方向(水平方向)に間隔を開けて2か所に形成されているので、本体1の隅に測量杭5が位置した場合でも、測量杭5が位置する側のボルト挿通孔4からボルト8をねじ込むことにより、内部の測量杭5は四方からボルト8によって抑え付けられ、本体1が固定される。
【0023】
前記正方形の上面3の中心に釘の露出孔9が形成されている。ここで、中心とは正方形の上面の4隅からの対角線が交わる位置である。
この露出孔9は短く上へ突出した円筒形状をなしており、円筒内を釘10が通過してその頭部が露出するようになっている。
この釘10は広大な造成地等における測量に不可欠な基準点を示すものであり、対空標識6の中心と位置を合わせて取り付けられる。
本体1を取り付ける場合には、釘10の位置を露出孔9に挿入して位置合わせを行い、上面3を測量杭5の頂部面に載置する。
【0024】
本体1が取り付けられる測量杭5は、1辺45mmの断面正方形、長さ450mm~600mmの木製の杭であり、上等部は赤に着色され、頂部は平らであり、下部は地面に打ち込まれるため、先鋭形状とされている。
地上に設置された測量杭5の頂部にはさらに基準を表す釘10が打ち込まれる。この釘は正確な位置座標情報を示す基準部位であり、この釘10に対空標識6の中心を合わせて取付ける。
【実施例2】
【0025】
次に、第2実施例に係る対空標識固定治具を利用した測量方法を説明する。
地上用地測量により基準となる地点に測量杭5を設置する。この測量杭は計測地の広さ・地形等の状況に応じて複数の箇所に設置する。
測量杭5を設置した後、さらに詳細な基準部位を示す釘10を頭部に打ち込む。この釘が測量の正確な基準点である。
次に対空標識固定治具を測量杭5の上から被せ、露出孔9と釘10の位置を合わせながら、測量杭5の頂部面に本体1の上面3を重ね合わせて本体1をセットする。そして、杭の位置を確認しながら2か所のボルト挿通孔4のいずれか選択して、ボルト8をねじ込む。ボルト挿通孔4は横方向(水平方向)に間隔を開けて2か所に形成されているので、本体1の隅に測量杭5が位置した場合でも、測量杭5が位置する側のボルト挿通孔4からボルト8をねじ込むことにより、内部の測量杭5は四方からボルト8によって抑え付けられ、本体1が固定される。
【0026】
本体1を測量杭5に固定した後は、露出孔9の釘10と、対空標識6の中心を位置合わせして本体上面3に対空標識6を取り付ける。本願では支持固定部が測量杭の頂部に支えられる共に、ボルト8によって固定されているので、対空標識6を水平方向に確実に支持固定できる。
本体上面3と対空標識6の固定に際しては面ファスナー、両面テープ、その他公知の着脱構造による。
【0027】
機器を搭載したドローン11(無人飛行体)により上空より写真測量を行う(
図10参照)。
ドローン11の飛行位置により周辺部に歪が生じる場合であっても、対空標識6はそれぞれ固有の識別模様を有しており、複数の対空標識6を重ね合わせることにより、歪を解消して正確なデータを取得可能である。
本実施例では作業員が入れない危険な場所や広大な商業施設造成にドローン11を活用でき、上空(30m~150m以下)より数千点の測量データを15分程度の飛行できる。それにより、今まで長期間かかっていた測量業務を省力化できる。
また、レーザー測量においては、ドローン11に搭載したレーザー機器からレーザーを放射し、地上に反射したレーザーと機体のGPS位置情報を組み合わせて、正確な三次元地形データを取得可能である。
【0028】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では正方形の箱状体の対空標識固定治具について説明したが、これに限らず、測量杭への取付部と、対空標識を水平方向に支持固定する支持固定部を備えた構成であれば本発明に含まれる。
また、前記実施例ではボルト挿通孔は2か所に設定したが、ボルト挿通孔の数、位置は適用する本体及び測量杭の大きによって適宜設定することが可能であり、ボルト挿通孔の左右間隔についても、本体の形状及び測量杭の大きさに応じ、測量杭が本体内のどこへ位置しても、ボルトによって抑え付けられる左右間隔であれば本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 本体
2 側面
3 上面
4 ボルト挿通孔
5 測量杭
6 対空標識
7 ナット
8 ボルト
9 露出孔
10 釘