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特許7219969植物の栽培システム、繊維糸条、及び、繊維糸条の製造方法
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  • 特許-植物の栽培システム、繊維糸条、及び、繊維糸条の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】植物の栽培システム、繊維糸条、及び、繊維糸条の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/44 20180101AFI20230202BHJP
【FI】
A01G24/44
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019112472
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020202788
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-07-01
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391050215
【氏名又は名称】ハニースチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】廣津 俊昭
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-097746(JP,A)
【文献】特開2004-218261(JP,A)
【文献】特開2002-315433(JP,A)
【文献】国際公開第2008/108295(WO,A1)
【文献】実開昭50-046637(JP,U)
【文献】国際公開第2013/054859(WO,A1)
【文献】特開2014-117163(JP,A)
【文献】特開2011-033311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の栽培システムであって、
前記植物を入れる容器(2)と、この容器(2)内で植物を支える繊維糸条(4)に成る繊維糸条体(3)を有し、
この繊維糸条体(3)は、ブランク繊維糸条によって構成されていて捲縮して螺旋状の外観を呈している繊維糸条(4)によって構成されており、
前記繊維糸条(4)の捲縮率が10%以上であることを特徴とする栽培システム。
【請求項2】
前記繊維糸条(4)に構成されている繊維糸条体(3)の空隙率は、80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の栽培システム。
【請求項3】
ブランク繊維糸条によって構成される繊維糸条(4)であって、
前記繊維糸条(4)は、捲縮して螺旋状の外観を呈しており、
前記繊維糸条(4)の捲縮率が10%以上であることを特徴とする繊維糸条。
【請求項4】
繊維糸条(4)の製造方法であって、
ブランク繊維糸条をパイル糸に用いて基布にタフト(植設)した繊維糸条(4)の先駆パイル布帛を形成する第1工程(T1)と、前記先駆パイル布帛を解体して前記先駆パイル布帛から捲縮して螺旋状の外観を呈している前記繊維糸条(4)を取り出す第2工程(T2)とを順次経ること、
前記第1工程(T1)と前記第2工程(T2)とを順次経る過程において、繊維糸条(4)に捲縮率(K)が10%以上の捲縮をセットすること
を特徴とする螺旋状の外観を呈している繊維糸条(4)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培システム、繊維糸条から構成される繊維糸条体、及び、繊維糸条体を構成する繊維糸条の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の栽培装置が知られている(特許文献1参照)。
この植物の栽培装置は、栽培槽の上部に植物支持板を備え、上記栽培槽の下部に養液を留保するとともに、上記栽培槽内の上部は相対湿度95%以上の水蒸気で満たされた空気空間とし、上記植物支持板に支えられた植物の根の一部は上記空間内に、根の他部は上記養液中に留置するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-195514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された植物の栽培装置は、栽培槽内で、空気空間や下部での養液留保を必須とし、別途、養液タンクやポンプも用いる場合もあることから、装置の大型化・複雑化が問題である。
又、特許文献1の植物の栽培装置は、植物を栽培するために、空気空間を有し且つ下部での養液留保を可能とする栽培槽や、養液タンクやポンプなどを必要とするため、栽培する植物のコストアップや、利益の低減等に繋がる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、容器内で植物を支える繊維糸条体の捲縮した繊維糸条の捲縮率を10%以上とすること等によって、「システムの小型化・簡素化」や「コストの低減」などを実現できる植物の栽培システム、繊維糸条体、及び、繊維糸条の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る栽培システム1は、植物の栽培システムであって、前記植物を入れる容器2と、この容器2内で植物を支える繊維糸条体3を有し、この繊維糸条体3を構成する繊維糸条4は、捲縮して螺旋状の外観を呈しており、前記繊維糸条4の捲縮率Kが10%以上であることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る植物の栽培システム1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記繊維糸条体3の空隙率Gが80%以上である点にある。
【0008】
本発明に係る植物の栽培システム1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記容器2内に土は入っておらず、前記植物の根が、前記繊維糸条体3における繊維糸条4の間に存在する点にある。
【0009】
これらの特徴により、容器2内で植物Sを支える繊維糸条体3の捲縮して螺旋状の外観を呈している繊維糸条4の捲縮率Kを10%以上とすることによって、特許文献1とは異なり、空気空間を有し且つ下部での養液留保を可能とする栽培槽や、養液タンク、ポンプなどは必要ないことから、栽培システム1の小型化や簡素化が図れる(「システムの小型化・簡素化」)。
これに加え、捲縮率Kが10%以上である繊維糸条4で構成される繊維糸条体3は非常に安価であり、栽培する植物Sにかかるコストが低く抑えられ、利益アップに繋がる(「コストの低減」など)。
【0010】
又、捲縮して螺旋状の外観を呈している繊維糸条4で構成された繊維糸条体3の空隙率Gを80%以上とすることによって、繊維糸条体3内に貯えられた水で、植物S(根N等)を水蒸気が漂う水蒸気雰囲気下に置くことが可能となり、非常に単純且つ簡潔な構造で、植物Sの生長をより促進できる(更なる「システムの小型化・簡素化」や「コストの低減」などが図れる)。
【0011】
更に、容器2内に土は入れない(つまり、栽培システム1において土を一切用いない)ことによって、土中に存在する菌によって植物Sの生長が妨げられることがなくなり、土のみを用いて栽培した植物より生長スピードが上がって(図7参照)利益の増加に繋がると共に、自治体によっては土が廃棄できなかったり、廃棄できるとしても土の廃棄に費用が発生するが、その土が不要となり、廃棄コスト等のコストの低減が図れる。
これと同時に、植物Sの根Nを植物支持体3繊維糸条4の間に存在させることによって、根Nを、高い水蒸気濃度の雰囲気下に置くことが可能となり、植物Sの生長を更に促進できる。
これによっても、更なる「システムの小型化・簡素化」や「コストの低減」などが実現される。
【0012】
本発明に係る繊維糸条体3は、繊維糸条4から構成される繊維糸条体であって、前記繊維糸条は、捲縮して螺旋状の外観を呈しており、前記繊維糸条4の捲縮率Kが10%以上であることを第1の特徴とする。
【0013】
この特徴により、繊維糸条体3の捲縮した繊維糸条4の捲縮率Kを10%以上とすることによって、特許文献1とは異なり、当該繊維糸条体3を植物Sの栽培システム1に用いた場合には、空気空間を有し且つ下部での養液留保を可能とする栽培槽などは必要ないことから、栽培システム1の小型化や簡素化が図れると共に、捲縮率Kが10%以上である繊維糸条4で構成される繊維糸条体3は非常に安価であり、栽培する植物Sにかかるコストが低く抑えられ、利益アップに繋がる(つまり、「システムの小型化や簡素化」や「コストの低減」などが実現する)。
【0014】
本発明に係る繊維糸条の製造方法は、ブランク繊維糸条を一旦基布に植設して先駆パイル布帛とする第1工程T1と、この第1工程T1の先駆パイル布帛から、一旦植設された繊維糸条4を解く第2工程T2を有し、この解かれた繊維糸条4は、捲縮して螺旋状の外観を呈しており、前記解かれた繊維糸条4の捲縮率Kが10%以上であることを第1の特徴とする。
尚、本発明における「ブランク繊維糸条を一旦基布に植設して先駆パイル布帛とする」とは、ブランク繊維糸条を一旦基布に植設する操作を行って先駆パイル布帛とすることを意味する。
【0015】
この特徴によっても、ブランク繊維糸条が一旦基布に植設された先駆パイル布帛を解いて、捲縮率Kが10%以上の捲縮した繊維糸条4を製造することによって、特許文献1とは異なり、当該繊維糸条4を植物Sの栽培システム1に用いた場合には、空気空間を有し且つ下部での養液留保を可能とする栽培槽などは必要ないことから、栽培システム1の小型化や簡素化が図れると共に、この製造方法で製造される繊維糸条4は非常に安価であり、栽培する植物Sにかかるコストが低く抑えられ、利益アップに繋がる(「システムの小型化・簡素化」や「コストの低減」など)。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る植物の栽培システム1、繊維糸条4、及び、繊維糸条4の製造方法によると、容器内で植物を支える繊維糸条体3の捲縮した繊維糸条4の捲縮率を10%以上とすること等により、「システムの小型化・簡素化」や「コストの低減」などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る植物の栽培システム、繊維糸条体を例示する斜視の図面代用写真である。
図2】植物の栽培システム、繊維糸条体を例示する平面視の図面代用写真である。
図3】植物と、繊維糸条体を例示する側面視の図面代用写真である。
図4】植物と、繊維糸条体を例示する底面視の図面代用写真である。
図5】別の繊維糸条体を例示する斜視の図面代用写真である。
図6捲縮して螺旋状の外観を呈している繊維糸条を例示する平面視の図面代用写真である。
図7】本発明に係る栽培システムにおいて土を一切用いなかった場合と、土のみを用いた場合における植物の生育状況の差を例示する図面代用写真である。
図8】本発明に係る繊維糸条の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<栽培システム1>
図1~7には、本発明に係る植物Sの栽培システム1(以下、「栽培システム1」とも言う)が示されている。
この栽培システム1は、植物Sを入れる容器2と、この容器2内の繊維糸条体3を有している。
【0019】
栽培システム1は、何れの場所に設けられても良く、例えば、田畑、庭、農場などの屋外や、ビニールハウス内だけでなく、リビングや台所、玄関、ベランダなどの一般住宅に設けられたり、飲食店内やオフィス内、工場内などに設けられても良い。
栽培システム1では、土を用いずとも良く、土を一切用いなかった栽培システム1と、土のみを用いた場合では、同時に種を播き(種播し)、同じ環境にて栽培したにも拘わらず、栽培システム1にて栽培した植物Sは、土のみを用いて栽培した植物Sより背丈(生長高さ)が明らかに高く、緑もより濃く、枝や葉もより広く張っている(図7参照)。
以下では、栽培システム1に栽培される植物Sについて、まず述べる。
【0020】
<植物S、根N>
図1~4、7に示したように。植物Sは、上述した栽培システム1に栽培される。
栽培される植物Sは、特に限定はなく、例えば、ニンニクやチューリップなど球根植物であったり、トマト、ケール、レタス等や、豆苗やブロッコリー等のスプラウト(新芽)など種を播いて(種播して)栽培する植物であったり、又、ベラなどの多肉植物や、ジャガイモ等を種芋から育てる場合などでも良い。
【0021】
植物Sは、その他の野菜や果物(果実)であったり、稲、麦などの穀物類や、キノコ類であったり、草や木、花、その他の観葉植物などであっても良い。
このような植物Sは、当然、根Nを有するが、その根Nは、後述する繊維糸条体3における繊維糸条4の間に存在している。
【0022】
ここで、「根Nが繊維糸条4の間に存在している」とは、根Nが、ある繊維糸条4と別の繊維糸条4の間に存在している場合だけでなく、1本の繊維糸条4の内部における、ある繊維と別の繊維の間に存在している場合も含む。
尚、植物Sがキノコ類である場合、その植物Sの根Nには、キノコ類の菌糸を含む。
又、栽培システム1で栽培されたニンニクは、その匂いが抑えられ、特に、栽培システム1(容器2内)に土を用いなかった場合には、その匂いは更に抑えられるとも言える。
【0023】
1つの栽培システム1において栽培される植物Sの数も、特に限定はなく、1つの栽培システム1に、1つずつ植物Sを栽培しても良いし、1つの栽培システム1に、複数の植物Sを栽培しても構わない。
尚、1つの栽培システム1に複数の植物Sを栽培する場合、後述する容器2が、複数の植物Sを栽培できる構成となっている。
【0024】
容器2>
図1、2、7に示したように、容器2は、上述した植物Sを入れるものであり、後述する繊維糸条体3も、その内部に入っている。
容器2は、植物Sや繊維糸条体3を入れられるのであれば、何れの形状であっても良いが、例えば、複数の凹部2aを有したプレート状やトレー(トレイ)状であっても構わない。この場合、それぞれの凹部2aの開口形状は、略円形状や略正方形状であったり、略楕円状や略矩形状、その他、略多角形状であっても良い。
【0025】
この場合、各凹部2aには, 1つずつ植物Sが入っても良いが、複数入っていても良く、仮に、各凹部2aに1つずつ植物Sが入っていれば、植物S同士の根Nが絡まないとも言える。
容器2は、凹部2aが1つのみの形状であっても良く、ポット状(丸くて深い形状)であったり、鉢状(開口形状が略円形に限らないもの)や、プランター状(略直方体状)等であるなど、特に限定はなく、この場合の開口形状も、略円形状や略正方形状であったり、略楕円形状や略矩形状、その他、略多角形状であっても良い。
【0026】
この場合も、1つの凹部2aには、1つずつ植物Sが入っても良いが、複数入っていても良く、仮に、1つの凹部2aに1つだけ植物Sが入っていれば、植物S同士の根Nが絡まないとも言える。
容器2には、支柱や覆い、棚仕立て等が設けられていたり、容器2自体が金網や壁、柵等の傍らに配置されていても良い。
その他、容器2は、上述した飲食店等の床に凹部2aを設けたり、田畑や庭等における土を掘って設けた凹部2aであっても良いとも言え、この場合、凹部2aを囲む当該床や土自体が容器2であるとも言える。
【0027】
容器2の大きさも、特に限定はなく、何れの大きさでも構わないが、容器2が複数の凹部2aを有したプレート状等であれば、例えば、長手方向長さが10cm以上200cm以下、短手方向長さが5cm以上100cm以下などであったり、各凹部2aの深さが1cm以上30cm以下であったり、凹部2aの開口形状が例えば略正方形状であれば、各辺の長さが3cm以上30cm以下であっても良い。
その他、容器2がポット状等であれば、その直径や各辺の長さが3cm以上100cm以下で、容器2の深さが5cm以上150cm以下であっても良い。
【0028】
容器2の素材も、特に限定はないが、例えば、合成樹脂(プラスチック)製であったり、素焼き(テラコッタ)製や、陶磁器製、ガラス製、木製、ブリキ(銅板に錫をメッキしたもの)製、鉄等の金属製、コンクリート製、セメント製、FRP(繊維強化プラスチック)製などであっても良い。
その他、容器2の素材は、フェルト生地(不織布)や織地、編地等の布帛であっても良く、この場合の形状は、上述したポット状等以外に、バック状などであっても構わない。又、容器2の色も、当然に特に限定されないが、例えば、白色系、黒色系、赤色系、茶色系、青色系、黄色系、緑色系、水色系などであっても良い。
【0029】
繊維糸条体3>
図1~7に示した如く、繊維糸条体3は、上述した容器2内で植物Sを支えるものであって、後述する繊維糸条4で構成され、所定量の繊維糸条4が集まった1つの塊であると言える。
ここで、「植物Sを支える」とは、植物Sの全体又は少なくとも一部が、繊維糸条体3の上にある(上に載っている)場合だけでなく、植物Sの全体又は少なくとも一部が、繊維糸条体3の内部にある(内部に埋まっている)場合なども含む。
繊維糸条体3を構成する繊維糸条4の本数は、特に限定はないが、1本又は複数本であっても良く、例えば、1本以上100000本以下であっても構わない。
【0030】
尚、繊維糸条体3が1本の繊維糸条4で構成される場合、その1本が非常に長いとも言え、又、繊維糸条体3が複数本の繊維糸条4で構成される場合、各繊維糸条4の長さは、略同じであっても良いし、それぞれが異なっていても良い。
繊維糸条体3は、その形状が不定形であり、何れの容器2(又は、その凹部2a)にもその形状に応じて入れられ、容器2(凹部2a)内を充填するとも言える。
【0031】
尚、植物支持体3が1つの容器2(凹部2a)内を占める割合(充填率とも言える)についても、特に限定はないが、例えば、10%以上100%以下、好ましくは30%以上95%以下、更に好ましくは50%以上90%以下であっても良い。
又、1つの栽培システム1に対して、繊維糸条体3は1つ又は複数存在していても良く、複数の凹部2aを有したプレート状の容器2の場合には、その凹部2aと同じ数だけ、繊維糸条体3が存在しているとも言える。
【0032】
繊維糸条体3における所定量の繊維糸条4が集まった1つの塊(つまり、本発明に係る繊維糸条体3)としての大きさ(嵩)についても、特に限定はないが、例えば、1cm3以上1000000cm3 以下などであっても良い。
本発明に係る繊維糸条体3としての重さも、特に限定はないが、例えば、0g以上10000g以下であっても良い。
【0033】
本発明に係る繊維糸条体3として含む繊維糸条4の本数も、特に限定はないが、例えば、1本以上100000本以下であっても良い。
本発明に係る繊維糸条体3は、袋に入れられていたり、包装されていても構わない。
【0034】
繊維糸条4>
図1~7に示したように、繊維糸条4は、上述した繊維糸条体3を構成するものであり、繊維糸条4は、捲縮している。
【0035】
このように捲縮した繊維糸条4は、編物から繊維糸条4を解いた場合には、デニット糸であるとも言える
【0036】
繊維糸条4を形成する素材は、具体的には、何れであっても良いが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維であったり、レーヨン繊維やキュプラ繊維、アセテート繊維などの合成繊維であったり、木綿や麻などの天然繊維であっても良く、その他、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維や、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても構わない。
【0037】
繊維糸条4の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、20dtex以上3000dtex以下であっても良い。
繊維糸条4におけるフィラメント数も、特に限定はなく、例えば、複数(マルチフィラメント)であったり、単数(モノフィラメント)であっても良い。
【0038】
繊維糸条4の長さは、容器2の凹部2aに装填されて整えられて使用状態にある繊維糸条体3を解いて捲縮の形状を崩すことなく取り出した繊維糸条4を、その捲縮の形状を崩すことなく平坦に支持された粘着シートの粘着面に粘着し固定して測定する。
測定する繊維糸条4の測定単位長さは、繊維糸条4を緊張して捲縮の形状(山と谷)を崩して一直線状に変形し、その変形して一直線状に続く繊維糸条4の長さ方向において隣り合って観取される2個の捲縮の痕跡間(2個の捲縮の山と山の間、又は、谷と谷の間)の距離を測定し得る長さであれば良い。
【0039】
繊維糸条4が加燃糸であれば、その撚方向はS・Zの何れの方向でも良く、単なる右撚(S撚)と左撚(Z撚)や、S撚の繊維糸条4自体を更にZ撚したものや、逆に、Z撚の繊維糸条4自体を更にS撚したものなどであっても良い。
【0040】
捲縮数の読み方は、捲縮の形状の山と谷とを全部数え、2で除して求める。
繊維糸条4の具体的な色も、当然、特に限定はないが、例えば、白色系、水色系、黒色系、赤色系、茶色系、青色系、黄色系、緑色系などであっても構わない。
【0041】
繊維糸条4の捲縮率K>
ここまで述べた繊維糸条4の捲縮率Kは、隣り合う2個の捲縮の形状(山と谷)を崩して一直線状に変形して伸長し、その伸長して一直線状に続く繊維糸条4の長さ方向において隣り合って観取される2個の捲縮の痕跡間(2個の捲縮の山と山の間、又は、谷と谷の間)の距離の長さ(M)と、伸長前の元の捲縮状態の繊維糸条4の長さ(L)との差(M-L)を、元の捲縮状態の繊維糸条4の長さ(L)で除した値の商の百分率(X)、即ち、(X)=100×(M-L)/(L)(%)として算定することが出来る。
【0042】
このように、容器2内で植物Sを支える繊維糸条体3の捲縮した繊維糸条4の捲縮率Kを、少なくとも10%以上とすることによって、植物Sを増殖させ、輸送過程では鮮度を保持することが出来るとも言え、又、栽培するとしても輸送するとしても数十個の繊維糸条体3を、トレイ等に装填して効率的に取り扱うことが出来たり、栽培過程や輸送過程での施肥管理が簡略化され楽になったり、水蒸気雰囲気下(又は、水蒸気漂流層の下層部)が貯水性容器で包まれていれば、栽培過程や輸送過程で水蒸気漂流層が乾燥状態になる危険が回避され、灌水管理が簡略化され楽になるとも言える。
又、繊維糸条体3における繊維糸条4を構成する繊維に囲まれた隙間が、植物Sの根Nや茎を水蒸気雰囲気下に包み込むように構成されており、栽培して得られる果実等の作物の含水率が抑えられ、新鮮で味わいのある果実が収穫されるとも言える。
【0043】
繊維糸条体3の空隙率G>
このような繊維糸条4で構成される繊維糸条体3については、その空隙率Gについても、以下でふれる。
本発明における「空隙率G」とは、「単位体積当たりの隙間(空間)の割合を百分率で表したもの」を意味し、多孔度や間隙率、気孔率とも言う。
【0044】
繊維糸条体3の空隙率Gは、下記の式(1)や式(2)を用いて算出される。
尚、式(1)を用いて算出する方法は、アルキメデス法とも言える。
【0045】
【数1】
【0046】
【数2】
【0047】
繊維糸条体3の空隙率Gは、80%以上(100%未満)であっても良く、好ましくは90%以上(100%未満)、更に好ましくは95%以上(100%未満)、より更に好ましくは99%以上(100%未満)であっても構わない。
このような空隙率Gを持つ繊維糸条体3であれば、栽培する植物Sの根Nが、当該繊維糸条体3を構成する繊維糸条4の間に存在し易くなるとも言える。
【0048】
繊維糸条4の製造方法>
図8に示したように、繊維糸条4の製造方法は、第1工程T1と第2工程T2を有している。
この2つの工程T1、T2のみで、上述した繊維糸条4を製造できるとも言える。
【0049】
<第1工程T1>
図8で示したように、第1工程T1は、繊維糸条4の製造方法における最初の工程であって、ブランク繊維糸条(後に繊維糸条4となるもの)を一旦基布に植設して先駆パイル布帛とする工程である。
ここで、「ブランク繊維糸条を一旦基布に植設して先駆パイル布帛とする」とは、上述したように、ブランク繊維糸条を一旦基布に植設して先駆パイル布帛とする操作を行うことである。
【0050】
<先駆パイル布帛>
先駆パイル布帛は、ブランク繊維糸条(後に繊維糸条4となるもの)を、一旦基布に植設して作られる品物である。
ブランク繊維糸条を一旦基布に植設して先駆パイル布帛とする操作を行って作られるのであれば、先駆パイル布帛は、例えば、ブランク繊維糸条を一旦植設した(ブランク繊維糸条をパイル糸として基布に植設した(タフトした)敷物(タフトしたカーペット、マット、人工芝生等を含む)であっても良い。
【0051】
先駆パイル布帛が、ブランク繊維糸条(後に繊維糸条4となるもの)を、一旦基布に植設して作られる品物であれば、先駆パイル布帛は、タフトしたカーペット等の裏面などに編物を貼り付けたものや、編物である基布11にブランク繊維糸条をタフトしたもの等であっても良く、また、タフトしたカーペット等の裏面などに織物を貼り付けたものや、織物である基布11にブランク繊維糸条をタフトしたもの等であっても良く、更に又、タフトしたカーペット等の裏面などに織物及び編物を貼り付けたものや、織物及び編物である基布11にブランク繊維糸条をタフトしたもの等であっても良い。
【0052】
尚、先駆繊維製品が植設した敷物であれば、上述したように、基布11に、ブランク繊維糸条をパイルとしてタフトしたカーペット等であるが、これは、立毛布帛やパイル布帛とも言える。
尚、繊維糸条4であるパイルは、ループパイルとする。
【0053】
パイルの立毛高さ(毛足)も、何れの値であっても良い。
又、第1工程では、次の第2工程を行う前に、先駆パイル布帛に熱セットせず(熱をかけず)とも良く、また、第2工程を行う前に、先駆パイル布帛に熱セットしても構わない。
【0054】
<第2工程T2>
図8で示したように、第2工程T2は、繊維糸条4の製造方法における2番目の工程であって、上述した第1工程T1で作った先駆パイル布帛から、一旦基布に植設された繊維糸条を解く(ほどく)工程である。
この解かれた糸条が、上述した繊維糸条4であり、上述したように、捲縮しており、その捲縮率Kが10%以上である。
【0055】
本発明における「先駆パイル布帛から繊維糸条4を解く」とは、詳解すれば、上述した第1工程T1において、ブランク繊維糸条を一旦基布に植設して先駆パイル布帛とする操作の作業で作られた先駆パイル布帛であれば、ブランク繊維糸条をパイルとして基布に一旦植設した敷物から、当該パイルとして植設した繊維糸条4を取り出すことを意味し、この解体作業は、作業者が手や道具で行っても装置によって(例えば、タフト機のルーパー等を用いて)行っても良い
【0056】
<その他>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。栽培システム1、繊維糸条4、繊維糸条4の製造方法等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
栽培システム1では、土を用いても良い。
栽培システム1では、繊維糸条体3に液肥を含ませたり、固形の肥料等を用いても良く、固形の肥料を用いる場合には、当該固形の肥料を、容器2(凹部2a)内で繊維糸条体3と共に、水等に浸けておくこととなる。
栽培システム1は、容器2を、更に別の容器2’内に入れていても良く、この際、容器2(凹部2a)の底には、繊維糸条体3は通さず、水等の液体を通す孔が設けられていても良い。
【0057】
容器2は、袋状であっても良く、この袋状の容器2は、合成樹脂製等のフィルムなどで構成されていても良い。
繊維糸条体3は、当該繊維糸条体3と植物Sを有するのみであっても良い。
繊維糸条4は、捲縮した状態の繊維糸条自体が、蛇行したり、波を打つ等の状態であっても良い。
繊維糸条4の製造方法としては、上述した第1工程T1と第2工程T2を有した製造方法以外によって製造されていても良く、例えば、ブランク繊維糸条(後に繊維糸条4となるもの)に撚りをかける工程を有するのみであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る植物の栽培システムは、上述したように、田畑、庭、農場などの屋外や、ビニールハウス内だけでなく、リビングや台所、玄関、ベランダなどの一般住宅にて用いられたり、飲食店内やオフィス内、工場内などにて用いられても良いが、その他、IoT(Internet of Things) 化された農場等や、IoT化されたビニールハウス内、IoT化された一般住宅や飲食店内、オフィス内、工場内などにも利用可能であり、又、生鮮植物の輸送手段に用いれば、貯水手段を要せずに植物を育成可能な活性状態で消費者に届けることに利用できるとも言える。
本発明に係る繊維糸条体3は、当然に、上述した植物の栽培システムに用いられるが、上述した植物の栽培システム以外の栽培システムに用いられたり、その他、栽培システムではなく、寝具やクッション材、梱包時の衝撃吸収材、保温材などにも利用可能であり、又、生鮮植物の輸送手段に用いれば、貯水手段を要せずに植物を育成可能な活性状態で消費者に届けることに利用できるとも言える。
本発明に係る繊維糸条4の製造方法は、上述した植物の栽培システムにおける繊維糸条体3の製造に用いられるが、上述した植物の栽培システム以外の栽培システムにおける繊維糸条体3の製造に用いられたり、その他、栽培システムではなく、寝具やクッション材、梱包時の衝撃吸収材、保温材などの製造にも利用可能であり、又、生鮮植物の輸送手段に用いれば、貯水手段を要せずに植物を育成可能な活性状態で消費者に届けることに利用できるとも言える。
【符号の説明】
【0059】
1 栽培システム
容器
2a 凹部
繊維糸条体
繊維糸条
植物
繊維糸条の捲縮率
G 繊維糸条体の空隙率
N 植物の根
T1 第1工程
T2 第2工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8